(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029231
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】発泡性洗剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/75 20060101AFI20161114BHJP
C11D 3/18 20060101ALI20161114BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20161114BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
C11D1/75
C11D3/18
C11D3/20
C11D17/04
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-228138(P2012-228138)
(22)【出願日】2012年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-80476(P2014-80476A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】大島 務
(72)【発明者】
【氏名】菅本 和志
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】
古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−092795(JP,A)
【文献】
特開2000−273497(JP,A)
【文献】
国際公開第00/042163(WO,A1)
【文献】
特開2003−176497(JP,A)
【文献】
特開2012−046725(JP,A)
【文献】
特表2009−501285(JP,A)
【文献】
特表2000−503328(JP,A)
【文献】
国際公開第97/025408(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0015675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/75
C11D 3/18
C11D 3/20
C11D 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非イオン界面活性剤であるアミンオキシドを0.1〜10質量%、
(B)油剤であるC10−C20のイソパラフィン系炭化水素及び/又はリモネンを0.5〜4.0質量%、
(C)ジエチレングリコールn−ブチルエーテル(ブチルカルビトール)及び/又はジプロピレングリコールn−ブチルエーテル(DPnB)を1.0〜10質量%、
(D)アルカリ剤を1.0〜10質量%及び
(E)水を含有し、且つエタノールを含まない洗浄液と、
(F)液化ガスとをエアゾール容器に充填してなる発泡性洗剤組成物であって、
前記エアゾール容器から噴霧された泡状体を噴霧対象物に付着させた後、消泡せしめることによって前記噴霧対象物の洗浄効率及び拭き取り性を高めた、台所のレンジ周りの洗浄に用いられる発泡性洗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所のレンジ周り等の油汚れの洗浄をするにあたり、エアゾールの形態で使用される洗剤組成物であって、噴霧された泡状体が噴霧対象物に付着し、その泡状体を消泡せしめることによって噴霧対象物の洗浄効率を高めた発泡性洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
台所のレンジ周りの洗浄剤はシャワータイプ、トリガースプレータイプ、エアゾールスプレータイプなど各種市販されている。発泡させて洗浄液を付着させるタイプは、洗浄剤を処理した部分をわかりやすくする効果がある一方、泡のままで残っていると拭き取りにくいという欠点があり、泡で付着した後、速やかに消泡することが望まれる。更に、特許文献1、及び特許文献2(特公平6−72239号公報、及び特公平7−30360号公報等)には、付着した泡状体が、消泡することで一層、洗浄力を高め得ることも知られている。
【0003】
ところで、液剤をエアゾールで発泡し、スプレー後消泡させる製剤の提案としては、例えば、特許文献3(特開2012−46725)には、起泡剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、水溶性溶剤として炭素数2または3の1価アルコール、ポリオール、水、及び油分を含有する原液と液化ガスとからなり、対象物上で発泡後あるいは泡状に付着した後で、泡がはじけるように破泡する発泡性エアゾール組成物が開示されており、又、特許文献4(特許第3558393号公報)には、低級アルコール、水、油成分、特定のノニオン界面活性剤を含有する原液と、蒸気圧が25℃で2〜7kg/cm
2・Gの噴射剤からなり、噴射させたときに泡状となり、破泡させなくても自ら消泡する起泡性エアゾール組成物が開示されているが、両発明の原液には、引火点を低下させる低級アルコールが配合されており、火気のあるレンジ周りでの使用には向かない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−72239号公報
【特許文献2】特公平7−30360号公報
【特許文献3】特開2012−46725号公報
【特許文献4】特許第3558393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低級アルコールのように原液の引火点を著しく低下させる溶剤を含まず、十分な発泡力を有し噴霧された泡状体がレンジ周り等の油汚れに付着した後、その泡状体を速やかに消泡せしめることによって、噴霧対象物の洗浄効率を高め、その後の拭き取り作業を容易にすることができ、レンジ周りで使用しても安全性の高い発泡性洗剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。
(A)非イオン界面活性剤
であるアミンオキシドを0.1〜10質量%、
(B)油剤
であるC10−C20のイソパラフィン系炭化水素及び/又はリモネンを0.5〜4.0質量%、
(C)
ジエチレングリコールn−ブチルエーテル(ブチルカルビトール)及び/又はジプロピレングリコールn−ブチルエーテル(DPnB)を1.0〜10質量%、
(D)アルカリ剤
を1.0〜10質量%及び
(E)水を含有し、
且つエタノールを含まない洗浄液と、
(F)液化ガスとをエアゾール容器に充填してなる発泡性洗剤組成物であって、
前記エアゾール容器から噴霧された泡状体を噴霧対象物に付着させた後、消泡せしめることによって前記噴霧対象物の洗浄効率及び拭き取り性を高めた
、台所のレンジ周りの洗浄に用いられる発泡性洗剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発泡性洗剤組成物は、低級アルコールのように原液の引火点を著しく低下させる溶剤を含まず、十分な発泡力を有し噴霧された泡状体がレンジ周り等の油汚れに付着した後、その泡状体を速やかに消泡せしめることによって噴霧対象物の洗浄効率を高め、その後のふき取り作業も容易にでき、レンジ周りでも安心して使用できるので、その実用性は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いられる成分(A)非イオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤としては、十分な発泡性と洗浄力を有する限り、通常液体洗浄剤に使用される非イオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤のいずれであってもよい。非イオン界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸アルカノールアミド、アミンオキシドなどが挙げられ、アミンオキシド又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい、アニオン界面活性剤としては、例えば脂肪酸石けん、アルキルベンゼンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、α―オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルりん酸塩などが挙げられる。これらの界面活性剤は1種以上を組み合わせて用いることができ、洗浄液中に0.1〜10質量%配合されるのが好ましい。
【0009】
成分(B)の油剤としては、IPソルベント1620、IPソルベント2028、IPソルベント2835(以上出光興産社製)、アイソパーA、アイソパーC、アイソパーD、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーK、アイソパーL、アイソパーM(以上、エクソン社製)、ネオチオゾールなどのパラフィン系炭化水素;流動パラフィン、ワセリン、スクワラン、α−オレフィンオリゴマー、スクワレンなどの炭化水素類;オリーブ油、アーモンド油、ホホバ油、落花生油、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、サフラワー油、ヒマワリ油、綿実油、アボカド油、ツバキ油、トウモロコシ油、小麦胚芽油、コメヌカ油、カカオ油、ゴマ油、月見草油、紅花油、サザンカ油、大豆油、ナタネ油などの植物油;ラノリン、ラノリン誘導体、タートル油、ミンク油、ミツロウ、プリスタン、卵黄油などの動物油;ブチルステアレート、ヘキシルラウレート、イソプロピルミリステート、オクチルドデシルミリステート、イソプロピルパルミテート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケートなどの脂肪酸エステル;l−メントール、リモネン、シネオール、リナロール、ピネン、カンファーなどの精油、天然および合成香料などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができるが、とくにC
10−C
20のパラフィン系炭化水素、なかでもイソパラフィン系炭化水素、及び/又は精油、なかでもリモネンが好ましく用いられる。(B)油剤は洗浄液中に0.5〜4.0質量%配合されるのが好ましい。この範囲では、消泡性や当初の泡立ち性にも優れている。
【0010】
成分(C)は、下記一般式Iで表される化合物である。
R
1 −(O−R
2)
m−OH (I)
(ここに、R
1はC
3−C
6のアルキル基又は置換してもよいフェニル基を表わし、R
2はC
2−C
3のアルキレン基を表わし、mは1〜3の整数である。)
例えば、エチレングリコールn−プロピルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル等が挙げられる。それぞれ単独で、又は組み合わせて用いることができ、洗浄液中に1.0〜10質量%配合されるのが好ましい。
【0011】
成分(D)アルカリ剤は、例えば、水酸化物として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩や水酸化テトラメチルアンモニウム等が挙げられる。アミン類では、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、β−アミノアルカノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−(メチルアミノ)エタノール、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの
アルカノールアミン類、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミンなどのアルキルアミン類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等のアルキレンアミン類
及びその他類似の物質が挙げられる。これらの化合物を1.0〜10質量%配合し、pH10〜14の範囲に調整することによって洗浄力を高め得ることができる。
【0012】
本発明の発泡性洗剤組成物の洗浄液には、(E)水と共に、更に、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ニトリロ酢酸などのアミノカルボン酸およびそれらの塩等に代表されるキレート剤、pH調整剤、防錆剤(安息香酸ナトリウムなど)、除菌剤、消臭剤、香料等を適宜配合してもよい。
【0013】
本発明に用いられる(F)液化ガスとしては、20℃における圧力が0.23〜0.50MPaの液化石油ガス(LPG)を主体としたものがよく、もちろんこれにジメチルエーテル(DME)や圧縮ガス(窒素など)を必要に応じて添加しても構わない。
【0014】
本発明で用いられる噴射ボタンとしては、泡を形成するボタンであればいずれであってもよいが、ステムから噴口先端までの距離が5〜50mmであることが好ましい。50mmを超えるとボタンの噴口付近に泡がたまるアフタードローが多くなるなど不都合を生じる恐れがある。
【0015】
次に、具体的実施例に基づいて、本発明の発泡性洗剤組成物をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
(A)成分としてのヤシアルキルアミンオキシドを3.0質量%、(B)成分としてのIPクリーンLX(イソパラフィン)を1.0質量%及びD−リモネンを1.0質量%、(C)成分としてジエチレングリコールn−ブチルエーテル3.0質量%及びジプロピレングリコールn−ブチルエーテル5.0質量%、(D)成分としてモノエタノールアミンを5.0質量%と、残部として(E)水を含有する洗浄液を調製した。この洗浄液のpHは11.5であった。
エアゾール容器に上記洗浄液100gと噴射剤としてのLPG12gとを加圧充填して本発明の発泡性洗剤組成物を得た。
このときのLPGの圧力は0.29MPa(20℃)で、また、噴射ボタンはプリシジョンバルブ株式会社製フレアー孔径0.51mmを使用した。
【0017】
レンジ周りの樹脂化した油汚れが付着したタイル壁に対し、本発明の発泡性洗剤組成物をまんべんなく処理したところ、噴霧された泡状体がタイル壁に付着して優れた洗浄効果を発揮した。その泡状体は順次消泡して汚れに密着し、3分後、布で軽く拭き取ることができた。かかる油汚れの付着したタイル壁の洗浄作業は、効率的で極めて実用性の高いものであった。
【0018】
[試験例1]
実施例1に準じ、表1に示す組成の発泡性洗剤組成物を調製し、下記の洗浄力試験、泡性能試験及び洗浄液の引火点測定を行った。また、比較例として表2に示す組成物を調製し、同様に評価を行った。
(1)洗浄力試験
市販のサラダオイルとコバルトドライヤーを質量比95:5で混合して、室温で90分撹拌したものを5×10cmのステンレス板に0.1g塗布した。120℃で60分加熱後、室温で冷却したものに各種発泡性洗剤組成物をスプレーした。3分間放置後、洗浄力試験機で150gの加重をかけ、水を含ませたウレタンスポンジで1往復こすり洗いした。流水ですすいだ後、乾燥させ、洗浄前後の重さから、式(1)で洗浄率を求め、以下の評価基準で評価した。
○:洗浄率80%以上
△:洗浄率50〜80%
×:洗浄率50%未満
洗浄率(%)=(A−B)/(A−C)×100 (1)
A:洗浄前のステンレス板の重さ
B:洗浄後のステンレス板の重さ
C:ステンレス板の重さ
(2)泡性能
市販のサラダオイルとコバルトドライヤーを質量比95:5で混合して、室温で1日撹拌したものを30×40cmの塩ビ板の長辺方向に10cmの巾で塗布した。60℃で1時間加熱後、室温まで冷却したものを垂直に立て、各種発泡性洗剤組成物をスプレーしたときの、発泡性及び消泡性・密着性を観察し、以下の基準で評価した。
<発泡性>
○:発泡性がよい
△:発泡はするが、十分ではない
×:ほとんど発泡しない
<消泡・密着性>
○:スプレー後消泡して、汚れに密着する。
△:スプレー後、消泡するが、不十分で泡が多く残る。
×:消泡しない
(3)洗浄液の引火点
洗浄液の引火点をJIS K 2665−1:2007の方法で測定し、以下の評価基準で評価を行った。
○:引火点が40℃以上
×:引火点が40℃未満
【0019】
【表1】
(注)*1 ヤシアルキルジメチルアミンオキシド
*2 α―オレフィンスルホン酸ナトリウム
*3 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
*4 IPクリーンLX 出光製
*5 エクソールD40 エクソンモービル製
*6 ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル
*7 エチレングリコールフェニルエーテル
【0020】
【表2】
【0021】
試験の結果、本実施例の発泡性洗剤組成物(実施例2ないし10)はいずれも油汚れに対して良好な洗浄力を示し、スプレー時に発泡性が良く、垂直面の汚れに対しては消泡することにより密着し、効率的に汚れを落とすことが確認された。また、拭き取り操作も簡便になり、レンジ周りの洗浄作業は極めて効率的なものとなり、洗浄液の引火点も40℃以上であった。
これに対し、(A)成分の界面活性剤を配合していない比較例7は、洗浄力が低下した上に、発泡しないため、スプレーしても洗浄液が流れてしまい効率が悪くなった。(B)成分の油剤を配合していない比較例1乃至4、又は(C)成分一般式Iで表される化合物
R
1 −(O−R
2)
m−OH (I)
(ここに、R
1はC
3−C
6のアルキル基又は置換してもよいフェニル基を表わし、R
2はC
2−C
3のアルキレン基を表わし、mは1〜3の整数である。)
を配合していない比較例6は発泡後消泡しないため、本実施例に比べて、拭き取り操作に時間を要した。(C)成分の代わりにエタノールを使用した比較例8及び9は、引火点が40℃未満の危険物に該当した。又、エタノールを10質量%配合した比較例8は消泡せず、エタノール20質量%配合した比較例9は消泡する傾向が認められたものの、対象面の状態によって消泡しないことがあった。(D)成分のアルカリ剤を配合しない比較例5及び9は洗浄力が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の発泡性洗剤組成物は、レンジ周りや換気扇など油汚れだけでなく、その他の油性汚れの洗浄に利用できる可能性がある。