特許第6029245号(P6029245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029245
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】圧着装置および圧着方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   H01L21/60 311T
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-522673(P2014-522673)
(86)(22)【出願日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2013067624
(87)【国際公開番号】WO2014003107
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年4月28日
(31)【優先権主張番号】特願2012-146895(P2012-146895)
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺田 勝美
(72)【発明者】
【氏名】奈良場 聰
【審査官】 ▲高▼須 甲斐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−115510(JP,A)
【文献】 特開2011−029516(JP,A)
【文献】 特開2007−095779(JP,A)
【文献】 特開2004−296746(JP,A)
【文献】 特開2007−189100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/52
H05K 3/32
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数のチップを位置合わせした後、樹脂を介して仮圧着したチップを、一括圧着する圧着装置であって、
チップが圧着される基板の裏面を吸着保持する基板ステージと、
前記仮圧着したチップの表面を覆う弾性シートと、
前記基板ステージの外周に位置し、前記弾性シートを保持するシート保持手段と、
前記シート保持手段と前記弾性シートと前記基板ステージとにより形成された密閉空間を減圧する減圧手段と、
弾性シートを介して基板上のチップに所定の加圧力を付与するボンディングヘッドと、を備えている圧着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、
前記弾性シートを枚葉で供給するシート供給手段を備えた圧着装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発明において、
前記シート保持手段と前記弾性シートと前記基板ステージとにより形成された密閉空間に不活性ガスを供給するガス供給手段を備えた圧着装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の発明において、
前記ボンディングヘッドと前記基板ステージとに加熱および冷却手段を備えた圧着装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の発明において、前記ボンディングヘッドの加圧面が前記基板ステージに対して平行な状態を維持しながら下降させる機能を有することを特徴とする圧着装置。
【請求項6】
基板上に複数のチップを位置合わせした後、樹脂を介して仮圧着したチップを、一括圧着する圧着方法であって、
チップが圧着される基板の裏面を吸着保持する基板ステージと、
前記仮圧着したチップの表面を覆う弾性シートと、
前記基板ステージの外周に位置し、前記弾性シートを保持するシート保持手段と、
前記シート保持手段と前記弾性シートと前記基板ステージとにより形成された密閉空間を減圧する減圧手段と、
弾性シートを介して基板上のチップに所定の加圧力を付与するボンディングヘッドと、を備え、
チップが仮圧着された基板を基板ステージに載置する工程と、
弾性シートを仮圧着したチップの表面に覆い、弾性シートを保持する工程と、
前記シート保持手段と前記弾性シートと前記基板ステージとにより形成された密閉空間を減圧下にする工程と、
ボンディングヘッドを所定の高さまで下降させ、弾性シートを介して基板上のチップに所定の加圧力を所定時間付与する工程と、を有する圧着方法。
【請求項7】
請求項6に記載の発明において、
弾性シートを枚葉で供給し、一括圧着の動作毎に弾性シートを交換する工程を有する圧着方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の発明において、
前記弾性シートに、耐熱温度350℃以上、熱収縮率が350℃で0.1%以下、および熱伝導率が1W/m・K以上という特性を備えた材料を用いることを特徴とする圧着方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかに記載の発明において、
弾性シートを介して基板上のチップに所定の加圧力を所定時間付与する工程において、ボンディングヘッドと基板ステージに備えられた加熱および冷却手段を動作させる工程を含む圧着方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれかに記載の発明において、
前記シート保持手段と前記弾性シートと前記基板ステージとにより形成された密閉空間を不活性ガス雰囲気にする工程を含む圧着方法。
【請求項11】
請求項6から10のいずれかに記載の発明において、前記ボンディングヘッドの加圧面が前記基板ステージに対して平行な状態を維持しながら下降させることを特徴とする圧着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
基板に接着剤を介して仮圧着された複数のチップを基板に一括圧着する圧着装置および圧着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIチップの高集積化・高密度化の要求に対して、ウエハレベルでCSP(Chip Size Package)を製造する方法が行われている。ウエハレベルCSPでは、回路が形成されたシリコンウエハに対してフリップチップを圧着した後、ダイシングしてCSPを製造している。ウエハとフリップチップは、熱硬化性樹脂や異方導電性接着剤などの接着剤を用いて予め仮圧着(仮接続)されている。仮圧着の後、ウエハ上の複数のフリップチップは、所定時間の加圧と所定温度で加熱及び冷却が行われ圧着が完了する。
【0003】
例えば、特許文献1では、ウエハレベルでCSPを製造する圧着装置として、円筒状のシリンダと、その一方側を密閉するように設けられた基台と、シリンダの他方側の蓋と、シリンダの内部を移動する金属製のピストンとから構成されている圧着装置を開示している。この圧着装置では、ピストンが移動することにより、シリンダ内の密閉空間の容積が縮小される。基台にはインターポーザが絶縁性接着フィルムによりシリコンウエハに仮接続されて載置され、シート部材が仮接続されたシリコンウエハを覆っている。また、基台には加熱ヒータが埋め込まれている。そして、シリンダ内に加圧された圧縮ガスを導入し、仮接続されたシリコンウエハをシート部材を介して全面的に加圧し、加熱ヒータを通電し、絶縁性接着フィルムを溶融させシリコンウエハの各電極とインターポーザの各電極を電気的に接続しCSP接続体を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−195903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような装置では、加圧された圧縮ガスを用いて非接触状態で仮接続体に圧力を加えるのでシリコンウエハおよびインターポーザに対して大きな圧力を均一に加えられる。一方、シート部材で覆われた仮接続されたシリコンウエハには、図11に示すように上面および側面から圧力Fが加えられている。そのため、接着剤4が加熱され軟化していく過程で上面と側面に作用する力のバランスを失い、シリコンウエハ2の各電極とチップ3(例えばインターポーザ)の各電極の間で実装ズレが発生するおそれがある。
【0006】
そこで、基板に接着剤を介して仮圧着された複数のチップを実装ズレを発生させること無く基板に一括圧着することが可能な圧着装置および圧着方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
基板上に複数のチップを位置合わせした後、樹脂を介して仮圧着したチップを、一括圧着する圧着装置であって、
チップが圧着される基板の裏面を吸着保持する基板ステージと、
前記仮圧着したチップの表面を覆う弾性シートと、
前記基板ステージの外周に位置し、前記弾性シートを保持するシート保持手段と、
前記シート保持手段と前記弾性シートと前記基板ステージとにより形成された密閉空間を減圧する減圧手段と、
弾性シートを介して基板上のチップに所定の加圧力を付与するボンディングヘッドと、を備えている圧着装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記弾性シートを枚葉で供給するシート供給手段を備えた圧着装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、
前記シート保持手段と前記弾性シートと前記基板ステージとにより形成された密閉空間に不活性ガスを供給するガス供給手段を備えた圧着装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の発明において、
前記ボンディングヘッドと前記基板ステージとに加熱および冷却手段を備えた圧着装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の発明において、
前記ボンディングヘッドの加圧面が前記基板ステージに対して平行な状態を維持しながら下降させる機能を有することを特徴とする圧着装置である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、
基板上に複数のチップを位置合わせした後、樹脂を介して仮圧着したチップを、一括圧着する圧着方法であって、
チップが圧着される基板の裏面を吸着保持する基板ステージと、
前記仮圧着したチップの表面を覆う弾性シートと、
前記基板ステージの外周に位置し、前記弾性シートを保持するシート保持手段と、
前記シート保持手段と前記弾性シートと前記基板ステージとにより形成された密閉空間を減圧する減圧手段と、
弾性シートを介して基板上のチップに所定の加圧力を付与するボンディングヘッドと、を備え、
チップが仮圧着された基板を基板ステージに載置する工程と、
弾性シートを仮圧着したチップの表面に覆い、弾性シートを保持する工程と、
前記シート保持手段と前記弾性シートと前記基板ステージとにより形成された密閉空間を減圧下にする工程と、
ボンディングヘッドを所定の高さまで下降させ、弾性シートを介して基板上のチップに所定の加圧力を所定時間付与する工程と、を有する圧着方法である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、
弾性シートを枚葉で供給し、一括圧着の動作毎に弾性シートを交換する工程を有する圧着方法である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の発明において、
前記弾性シートに、耐熱温度350℃以上、熱収縮率が350℃で0.1%以下、および熱伝導率が1W/m・K以上という特性を備えた材料を用いることを特徴とする圧着方法である。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項6から8のいずれかに記載の発明において、
弾性シートを介して基板上のチップに所定の加圧力を所定時間付与する工程において、ボンディングヘッドと基板ステージに備えられた加熱および冷却手段を動作させる工程を含む圧着方法である。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項6から9のいずれかに記載の発明において、
前記シート保持手段と前記弾性シートと前記基板ステージとにより形成された密閉空間を不活性ガス雰囲気にする工程を含む圧着方法である。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項6から10のいずれかに記載の発明において、前記ボンディングヘッドの加圧面が前記基板ステージに対して平行な状態を維持しながら下降させることを特徴とする圧着方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の圧着装置および圧着方法によれば、ボンディングヘッドが弾性シートを介して所定の加圧力でチップを押しつけているので、接着剤が溶融する際にチップと基板が位置ずれすること無く圧着されるようになる。また、局所的に密閉空間を形成し、減圧下に置換することができるので、大がかりなチャンバ-構造を必要とすること無く、簡易的な構造でバンプの酸化を防止しながら一括圧着することができる。
【0019】
また接着剤が加熱硬化する際に発生するアウトガスによるボイドも減圧下でボンディングすることで、ボイドを抑制しながら一括圧着することが出来る。
【0020】
また、弾性シートを介して圧着しているので、仮圧着されたチップに高さバラツキがあっても、実装ズレを発生させること無く基板に一括圧着することができる。
【0021】
また、弾性シートを局所的に形成したチャンバ-の上蓋と兼用することで、接着剤により仮圧着されたチップを一括圧着する際に、チップの周辺からはみ出した接着剤がボンディングヘッド側に付着することを防止できる。また、ボンディングヘッドと基板ステージからの上下加熱、冷却により接着剤の硬化とバンプ接合を一括で行うことが出来る。さらに、弾性シートを枚葉で供給することで、高速でウェハの交換を容易にし連続的に圧着を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態の圧着装置の概略側面図である。
図2】本発明の実施の形態の門型フレームの垂直柱部の配置を説明する上面図である。
図3】シートを引きだしチップ上面に配置した状態を示す側面図である。
図4】シートを切断し吸着保持した状態を示す側面図である。
図5】ボンディングヘッドが下降した状態を示す側面図である。
図6】シートで囲まれた空間を減圧した状態を示す側面図である。
図7】圧着装置の動作フローチャートである。
図8】基板ステージ上にウエハの代わりにロードセルを配置した状態の上面図である。
図9】門型フレームの垂直柱部の高さをモニタリング装置の校正を説明する図である。
図10】門型フレームの垂直柱部の高さをモニタリング装置の校正を説明する図である。
図11】従来の圧着装置の問題点を説明する概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態の圧着装置の側面図である。図1において、圧着装置1に向かって左右方向をX軸、前後方向をY軸、X軸とY軸で構成されるXY平面に直交する軸をZ軸(上下方向)、Z軸周りをθ軸とする。
【0024】
圧着装置1は、チップ3が接着剤4を介して仮圧着されたウエハ2を本圧着する加圧手段20と、ウエハ2を保持する基板ステージ40と、本圧着時にチップ3を覆うシート5を供給するシート供給手段50と、シート5を基板ステージ4の外周で保持するシート保持手段60と、ウエハ2上に不活性ガスを供給するガス供給手段70と、から構成されている。本実施の形態で説明するウエハ2には、予めチップ3がウエハ2上の所定位置に位置合わせされ、接着剤を用いて接合されているものとする(以降、チップ3がウエハ2に仮圧着されていると表記する)。
【0025】
加圧手段20は、門型フレーム21と、門型フレーム21の水平梁部21aに設けられたボンディングヘッド支持部22と、円筒形のボンディングヘッド23とから構成されている。門型フレーム21の垂直柱部21bは、剛性の高いガイド構造となっていて、剛性ガイド21cで支持されている。垂直柱部21bは上下の伸縮可能になっており、図示しない上下駆動手段と連結されている。上下駆動手段による垂直柱部21bの昇降動作により、ボンディングヘッド23がZ方向(上下方向)に移動可能になっている。剛性ガイド21cは、基台6に立設している。
【0026】
なお、本実施の形態において、門型フレーム21は4本の垂直柱部21bと、それぞれの垂直柱部21bを支持する4本の剛性ガイド21cを備えている。その配置を上面から見たXY平面で示したのが図2であり、4本の垂直柱部21b(21b1、21b2、21b3、21b4)と、それぞれを支持する4本の剛性ガイド21c(21c1、21c2、21c3、21c4)が配置されている。この、4本の垂直柱部21bの高さ調整を行うことにより、門型フレーム21の水平梁部21aの、基板ステージ40に対する、平行度が確保される。
【0027】
ボンディングヘッド23は、チップ3が実装されたウエハ2のチップ側から加熱するヒータ43および加熱されたボンディングヘッド23を冷却する冷却部45を備えている。
【0028】
基板ステージ40は、ウエハ2の裏面2bを吸着保持する吸引孔41と、ウエハ2を加熱するヒータ42と、加熱された基板ステージ40を冷却する冷却部44とを備えている。吸引孔41は、図示していない吸引パイプを介して吸引ポンプと接続されている。
【0029】
ウエハ2の固定手段は、機械的に基板ステージ40にクランプする方式や静電チャック方式など強固に固定されるものであれば吸引孔41を用いた吸着方式でなくてもよい。
【0030】
基板ステージ40の外周にはシート保持手段60が設けられている。シート保持手段60は、内壁61と外壁62を基板ステージ40の外周に沿って立設し、内壁61と外壁62に挟まれた空間である吸引スペース63でシート保持手段60の上部に載せられたシート5を吸引する構成となっている。内壁61と外壁62は、基板ステージ40にチップ3の仮圧着すみウエハ2が載置された高さより高い位置まで伸びている。
【0031】
シート保持手段60は、機械的に内壁61に強固にクランプする方法であれば、吸引スペース63を用いた吸着方式で無くても良い。例えばボンディングヘッド23と内壁61とで挟み込んでクランプする方式であれば、ボンディングヘッド23の下降と同時にクランプ出来るので機構が簡略化される。
【0032】
内壁61と基板ステージ40との間には減圧手段80が設けられている。減圧手段80は減圧口81が設けられ、真空ポンプによりシート保持手段60と弾性シート5と基板ステージ40とにより形成された密閉空間を真空吸引する事で減圧出来るようになっている。
【0033】
さらに内壁61と基板ステージ40との間にはガス供給手段70が設けられている。ガス供給手段70は供給口71が設けられ、供給口71から不活性ガスである窒素(N2)が供給されるようになっている。図中、シート保持手段60とガス供給手段70、減圧手段80は、斜線で示した。
【0034】
シート供給手段50は、ロール状のシート5を供給するシート巻き出し部51と、シート巻き出し部51から巻き出されたシート5を把持するシート把持部53と、シート5を引き出すシート引き出し部52と、引き出されたシート5を切断するシート切断部54とから構成されている。シート巻き出し部51は、門型フレーム21の側部に配置されている。シート引き出し部52は、門型フレーム21の内部をシート5を把持しながらX方向(水平方向)に移動し、チップ3が仮圧着すみのウエハ2の上部にシート5を覆うようなっている。シート切断部54は、シート把持部53とシート引き出し部52との間に位置し、引き出されたシート5をシート把持部53とシート引き出し部52とで把持した状態で切断するようになっている。シート引き出し部52とシート把持部53は、シート5を把持した状態で、Z方向(上下方向)に移動可能に構成されている。
【0035】
なお、シート5の材質としてフッ素係樹脂が一般的であるが、本実施形態のような一括圧着用途において、フッ素係樹脂の耐熱温度、熱収縮率、熱伝導率は充分な特性とは言えない。すなわち、一括圧着用途ではヒータ43の温度が最高350℃に達する場合があるので耐熱性が不足し、熱収縮によりシワが発生して実装ズレとなる可能性があり、熱伝導率が低いためにチップを所定温度に加熱するためのヒータ43の設定温度が高くなるという問題がある。このため、シート5に要求される特性として、耐熱温度が350℃以上(フッ素系樹脂は260℃程度)、熱収縮率が350℃で0.1%以下(フッ素係樹脂は260℃で2%前後)、熱伝導率が1W/m・K以上(フッ素係樹脂は0.3W/m・K)を備えていることが望ましい。
【0036】
このような、圧着装置1を用いてチップ3をウエハ2に本圧着する圧着方法について、図3図6の圧着装置1の側面図と、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0037】
まず、ボンディングヘッド23が上昇した状態で、チップ3が仮圧着されたウエハ2を基板ステージ40に載置した状態から説明を開始する(ステップSP01)。
【0038】
次に、図3に示すように、シート巻き出し部51からシート5を引き出す。シート5の引き出しには、シート引き出し部52が用いられる。シート引き出し部52は、シート5を把持して、シート保持手段60をまたぐようにX方向(水平方向)に移動する。シート引き出し部52がX方向に移動することにより、チップ3が仮圧着されているウエハ2の上面側が、シート5で覆われるようになる。また、シート5はボンディングヘッド23とウエハ2の間を通るように引き出される。シート把持部53と、シート引き出し部52がシートを把持した状態で、下降しチップ3の上面にシート5をセットする(ステップSP02)。
【0039】
次に、シート切断部54がシート5を切断し、シート引き出し部52は元いた位置(待機位置)に戻る(図4)。シート保持手段60の吸引スペース63に接続されている図示していない吸引ポンプが作動し、シート5を吸引する(ステップSP03)。このように、シート5を枚葉で供給することで、高速でウェハの交換を容易にし連続的に圧着を行うことが出来る。
【0040】
次に、ボンディングヘッド23及び基板ステージ40に設けられているヒータ42,43を昇温しない状態で、図5に示すように、ボンディングヘッド23が下降しシート5を介してチップ2をウエハ3に加圧する。ボンディングヘッド23の下降に際しては、図示していない昇降手段により、図2に示す4本の垂直柱部21b(21b1、21b2、21b3、21b4)の高さが常に均一になるようにモニタリングしながら行い、ボンディングヘッド23の加圧面に傾きが生じないように制御する。具体的には、4本の垂直柱部21bの最大値と最小値が所定の偏差以内(例えば、ウエハサイズが300mmの場合は3μm)になるように制御を行い、ボンディングヘッド23の加圧面がチップ2に接触した後は、ウェハ2上に搭載された全てのチップ3に所定の荷重がかかるように加圧する(ステップSP04)。このように平行状態を維持しながら加圧を行うことにより、後のステップで加熱して加圧を行う際、接着剤が軟化する際にも水平分力が生じず、水平分力に起因した実装ズレが防げる。
【0041】
次に、図6のように、シート5と基板ステージ40とシート保持手段60の内壁61で囲まれた空間の空気を減圧手段80で吸引することで真空状態にする(ステップSP05)。
【0042】
次に、ボンディングヘッド23及び基板ステージ40に設けられているヒータ42,43が昇温され接着剤4の加熱硬化が開始される(ステップSP06)。このときのチップ3のバンプとウエハ2の回路面に形成された電極との接続も同時に行われる。このように、ボンディングヘッド23がシート5を介して所定の加圧力でチップ2を押しつけているので、接着剤が溶融する際にチップ2と基板3が位置ずれすること無く圧着されるようになる。また減圧下で行うため、接着剤が加熱硬化する際に発生するアウトガスによるボイドが抑制され品質の良い接合状態となる。
【0043】
バンプや電極が酸化されやすい材質(例えば銅など)の場合には、真空吸引の後にガス供給手段70の供給口71から不活性ガスを供給してシート5と基板ステージ40とシート保持手段60の内壁61で囲まれた空間を不活性ガスと置換する。チップ2が仮圧着されたウエハ2の周辺全体が不活性ガス雰囲気となり、チップ2の電極の酸化が防止される(ステップSP07)。
【0044】
このように、ボンディングヘッド23がシート5を介して所定の加圧力でチップ2を押しつけているので、接着剤が溶融する際にチップ2と基板3が位置ずれすること無く圧着されるようになる。
【0045】
加圧力及び加熱温度は圧着されるチップ数や、バンプ数および接着剤の硬化反応やバンプの溶融温度に応じて、それぞれ任意のタイミングで多段階で制御できるようになっている。
【0046】
次に、所定時間の加圧と加熱が行われた後、ボンディングヘッド23が上昇し本圧着が完了する(ステップSP08)。
【0047】
また、以上のステップSP01〜SP08とは別に、門型フレーム21は4本の垂直柱部21b(21b1、21b2、21b3、21b4)の高さモニタリングを行う際の誤差を低減するために、所定の周期で高さモニタリング機能の校正を行う必要がある。具体例としては、図8に示すようにウエハの代わりに同仕様の4つのロードセル91、92、93、94を配置した基板ステージ40に、図9図10に示すようにボンディグヘッド23を接近させ、両面が平行状態で最接近した段階ででゼロ点設定を行う方法がある。すなわち、両面がロードセルを介して平行状態で密着したか否かを、4つのロードセルそれぞれが検知する加圧力の最大値と最小値が所定の偏差以内で平衡状態にあるかどうかで判断する。
【0048】
なお、本実施の形態においては、ロードセルを高さモニタリング機能の校正を行う時に、基板ステージ41上に配置したが、基板ステージ41とヒータ42の間に常設しておいても良い。また、門型フレーム21の垂直柱部21bおよびそれぞれみら垂直柱部21bを支持する剛性ガイド21cが4本の場合としたが、4本に限定されるものではなく、3本あるいは5本以上であっても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 実装装置
2 ウエハ
3 チップ
4 接着剤
5 シート
6 基台
20 加圧手段
21 門型フレーム
21a 門型フレーム21の水平梁部
21b 門型フレーム21の垂直柱部
21c 剛性シリンダ
22 ボンディングヘッド支持部
23 ボンディングヘッド
40 基板ステージ
41 吸引孔
42 ヒータ
43 ヒータ
44 冷却部
45 冷却部
50 シート供給手段
51 シート巻き出し部
52 シート引き出し部
53 シート把持部
54 シート切断部
60 シート保持手段
61 内壁
62 外壁
63 吸引スペース
70 ガス供給手段
71 供給口
80 減圧手段
81 減圧口
91 ロードセル
92 ロードセル
93 ロードセル
94 ロードセル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11