(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フィルムの厚さ50μmおよび100μmの厚さにおいて、紫外分光光度計で透過率を測定した場合、550nmでの透過率が88%以上であり、440nmでの透過率が70%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
フィルムの厚さ50μmおよび100μmの厚さにおいて、紫外分光光度計で色座標を測定した場合、L値が90以上であり、a値が5以下であり、b値が5以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
第1溶媒は、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルアセテート、テトラヒドロフラン、クロロホルム、及びγ−ブチロラクトンから選ばれる1種以上を含有し、第2溶媒は、水、アルコール類、エーテル類、及びケトン類から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリイミド(PI)フィルムは、ポリイミド樹脂のフィルムである。ポリイミド樹脂は、芳香族二無水物と芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアネートを溶液重合し、ポリアミック酸誘導体を製造した後、高温で閉環脱水させ、イミド化して製造される高耐熱樹脂である。ポリイミド樹脂を製造するために、芳香族二無水物成分として、例えば、ピロメリト酸二無水物(PMDA)またはビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)等が用いられ、芳香族ジアミン成分としては、例えば、オキシジアニリン(ODA)、p−フェニレンジアミン(p−PDA)、m−フェニレンジアミン(m−PDA)、メチレンジアニリン(MDA)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(HFDA)等が用いられる。
【0003】
ポリイミド樹脂は、不溶、不融の超耐熱性樹脂であり、耐熱酸化性、耐熱特性、耐放射線性、耐低温性、耐薬品性等に優れた特性を有しており、自動車用材料、航空機材料、宇宙船材料等の先端耐熱材料、及び絶縁コーティング剤、絶縁膜、半導体、TFT−LCDの電極保護膜等の電子材料を含む広範囲な分野で用いられ、最近は、光ファイバーや液晶配向膜のようなディスプレイ材料、及び導電性フィラーを含有するかもしくは表面に導電性フィラーがコートされた透明電極フィルム等にも用いられている。
【0004】
しかしながら、ポリイミド樹脂は、高い芳香環密度により、茶色または黄色に着色し、可視光線領域での透過率が低い点で有利でない。また、ポリイミド樹脂は、黄色系の色を呈し、光透過率を低く、透明性が要求される分野に用いることは困難であった。
【0005】
このような点を解決するために、モノマー及び溶媒を高純度で精製して重合を行う方法が試みられているが、透過率の改善は大きくなかった。
【0006】
米国特許第5053480号には、芳香族二無水物の代わりに、脂環式二無水物成分を用いる方法が記載されている。この方法によれば、前記の精製方法の結果に比べて、溶液相(solution phase)やフィルム相(film phase)において、透明度及び色相の改善があったが、透過率の改善には限界があり、高い透過率は満足させず、熱的及び機械的特性は低下した。
【0007】
また、米国特許第4595548号、第4603061号、第4645824号、第4895972号、第5218083号、第5093453号、第5218077号、第5367046号、第5338826号、第5986036号、第6232428号、及び韓国特許公開公報第2003−0009437号には、−O−、−SO
2−、−CH
2−等の連結基と、p−位ではなくm−位で連結された曲げ構造のモノマーであり、または、−CF
3等の置換基を有する芳香族二無水物と芳香族ジアミンのモノマーを用いて、熱的特性が大きく低下しない限度内で、透過率及び色相の透明度を向上させた新規な構造のポリイミドを製造した報告があるが、その機械的特性、黄変度、及び可視光線透過率は、半導体絶縁膜、TFT−LCD絶縁膜、電極保護膜、フレキシブルディスプレイ基板として用いるのに十分ではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、無色透明であると共に、屈折率及び複屈折率の低いポリイミドフィルムを提供する。
【0009】
また、本発明は、無色透明であると共に、機械的物性及び熱安定性の物性に優れたポリイミドフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は、好適な一態様として、プリズムカプラーで測定した屈折率が1.60以下であり、複屈折率が0.10以下であり、フィルムの厚さ25〜100μmを基準として、紫外分光光度計で透過率を測定した場合、380〜780nmでの平均透過率が85%以上であるポリイミドフィルムを提供する。
【0011】
前記態様によるポリイミドフィルムは、フィルムの厚さ25〜100μmを基準として、紫外分光光度計で透過率を測定した場合、550nmでの透過率が88%以上であり、440nmでの透過率が70%以上であってもよい。
【0012】
前記態様によるポリイミドフィルムは、フィルムの厚さ25〜100μmを基準として、黄色度が15.0以下であってもよい。
【0013】
前記態様によるポリイミドフィルムは、フィルムの厚さ25〜100μmを基準として、黄色度が5.0以下であり、白色度が60以上であってもよい。
【0014】
前記態様によるポリイミドフィルムは、紫外分光光度計で透過率を測定した場合、50%遮断波長が400nm以下であってもよい。
【0015】
前記態様によるポリイミドフィルムは、フィルムの厚さ25〜100μmを基準として、紫外分光光度計で色座標を測定した場合、L値が90以上であり、a値が5以下であり、b値が5以下であってもよい。
【0016】
前記態様によるポリイミドフィルムは、ジアミンと二無水物を第1溶媒の下で重合してポリアミック酸溶液を得、得られたポリアミック酸溶液をイミド化した後、イミド化した溶液を第2溶媒に添加し、ろ過及び乾燥して固体のポリイミド樹脂を得、得られた固体のポリイミド樹脂を第1溶媒に溶解させてポリイミド溶液を得、その後、これをフィルム形成工程に付すことによって製造されるものであってもよい。
【0017】
前記態様において、前記第2溶媒は、第1溶媒の極性よりも低い極性を有するものであってもよい。
【0018】
前記態様において、前記第1溶媒は、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジエチルアセテート;低沸点溶液;及び低吸収性溶媒から選ばれる1種以上を含有してもよく、また、第2溶媒は、水、アルコール類、エーテル類、及びケトン類から選ばれる1種以上を含有してもよい。
【0019】
前記態様によるポリイミドフィルムは、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(TDA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)(HBDA)、3,3’−(4,4’−オキシジフタル酸二無水物)(ODPA)、及び3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から選ばれる1種以上を含有する芳香族二無水物を用いて製造されることができる。
【0020】
前記態様によるポリイミドフィルムは、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−フェニル]プロパン(6HMDA)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3’−TFDB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(3−アミノフェニル)スルホン(3DDS)、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4DDS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−133)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134)、2,2’−ビス[3(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3−BDAF)、2,2’−ビス[4(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4−BDAF)、及びオキシジアニリン(ODA)から選ばれる1種以上を含有する芳香族ジアミンを用いて製造されることができる。
【0021】
また、本発明は、好適な態様として、前記ポリイミドフィルムを含む反射防止膜を提供する。
【0022】
また、本発明は、 好適な態様として、前記ポリイミドフィルムを含む表示素子用基板を提供する。
【0023】
また、本発明は、 好適な態様として、前記ポリイミドフィルムを含む保護膜を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、無色透明であると共に、屈折率及び複屈折率が低く、LCDに適用することができる。また、無色透明であると共に、機械的物性及び熱安定性の物性に優れ、半導体絶縁膜、TFT−LCD絶縁膜、パッシベーション膜、液晶配向膜、光通信用材料、太陽電池用保護膜、反射防止膜、フレキシブルディスプレイ基板等の様々な分野に使用可能なポリイミドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明についてさらに詳述する。
【0026】
本発明のポリイミドフィルムは、ジアミン成分と二無水物成分の共重合体から製造されるポリイミド樹脂のフィルムであって、特に、無色透明のポリイミドフィルムである。
【0027】
通常、液晶ディスプレイのバックライトユニットの上に用いられるTFT板、カラーフィルタ基板、配向層等に用いられるフィルムは、屈折率及び複屈折率が低くなければならない。すなわち、バックライトユニットで発生し、LCDを通じて伝わる光によって画像が表示されるので、光が通過する経路にあるフィルムは、透明度が高いほど、明るい画像(輝度効率)及び鮮明な画像を得ることができる。したがって、屈折率及び複屈折率が低い場合に、画像重複または実像の大きさや色の歪み無しに、原画像をそのまま再現することができる。
【0028】
すなわち、第一に、フィルムが無色透明であり、屈折率の低いである場合に、画面上の像のコントラスト比が高くなり、最も明るい白と最も暗い黒との比が高くなり、それによって鮮明度が上昇するようになる。
【0029】
第二に、フィルムが無色透明である場合、吸収される光を最小化すると共に、フィルムに入るほとんど全ての光が透過することができるので、色の再現性が上昇するようになる。
【0030】
第三に、フィルムの屈折率が低い場合、外部光と内部光源に対する光の散乱が少なくなるので、画面が鮮明になる。従来、光の散乱を減らすために様々な光学フィルムを用いた、またはコーティング処理を通じた試みがなされているが、この場合、乱反射を引き起こし、鮮明度はかえって減少するという短所があった。この問題は、屈折率の低いフィルムを用いることにより、克服することができる。
【0031】
第四に、フィルムの屈折率が低い場合、既存のフィルムを用いた場合に比べて光の反射量が少なく、画面の鮮明度が上昇するようになる。すなわち、屈折率が高いほど、光が媒質を通過する量が増加し、実際のフィルムに入った光よりも出てくる光が暗くなるので、画面上の鮮明度が低くなる。
【0032】
第五に、フィルムの屈折率及び複屈折率の低い場合、画像の歪み、例えば画像重複や画像のサイズ変化が少なくなる。
【0033】
したがって、LCDに適用するためのフィルムは、複屈折率ができるだけ0に近く、屈折率ができるだけ低く、ガラスの屈折率(1.54)に近いことが好ましい。このような観点からは、本発明のポリイミドフィルムは、プリズムカプラーで測定した場合の屈折率が1.60以下であり、複屈折率が0.10以下である。前記屈折率と複屈折率を満たす本発明のポリイミドフィルムは、LCDにおける使用に適する。
【0034】
また、本発明のポリイミドフィルムは、フィルムの厚さ25〜100μmを基準として、紫外分光光度計で透過率を測定した場合、380〜780nmでの平均透過率が85%以上である。また、当該ポリイミドフィルムは、フィルムの厚さ25〜100μmを基準として、紫外分光光度計で透過率を測定した場合、550nmでの透過率が88%以上であり、440nmでの透過率が70%以上である。
【0035】
また、本発明のポリイミドフィルムは、黄色度が15以下であり、さらには、上記したポリイミドフィルムは、フィルムの厚さ25〜100μmを基準として、黄色度が5.0以下であり、白色度が60以上である。また、当該ポリイミドフィルムは、フィルムの厚さ25〜100μmを基準として、紫外分光光度計で色座標を測定した場合、L値が90以上であり、a値が5以下であり、b値が5以下である。
【0036】
前記透過率、黄色度、及び色座標の測定値を満たす本発明のポリイミドフィルムは、既存のポリイミドフィルムが有する黄色により使用が制限された用途、例えば、保護膜またはTFT−LCDでの散光シート及び塗膜(例えば、TFT−LCDのインターレイヤー、ゲート絶縁膜、及び液晶配向膜)等の透明性が要求される分野で使用可能である。液晶配向膜として前記ポリイミドを適用するとき、開口率の増加に寄与し、高コントラスト比のTFT−LCDの製造が可能である。また、フレキシブルディスプレイ基板用としても使用可能である。
【0037】
本発明のポリイミドフィルムは、紫外分光光度計で透過率を測定した場合、50%遮断波長が400nm以下であることが好ましい。これを満たす本発明のポリイミドフィルムは、太陽電池等の表面保護膜として使用可能である。
【0038】
本発明のポリイミドフィルムに関し、芳香族二無水物成分としては、特に限定されるものではないが、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(TDA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)(HBDA)、3,3’−(4,4’−オキシジフタル酸二無水物)(ODPA)、及び3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0039】
また、本発明のポリイミドフィルムに関し、芳香族ジアミン成分としては、特に限定されるものではないが、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−フェニル]プロパン(6HMDA)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3’−TFDB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(3−アミノフェニル)スルホン(3DDS)、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4DDS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−133)、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134)、2,2’−ビス[3(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3−BDAF)、2,2’−ビス[4(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4−BDAF)、及びオキシジアニリン(ODA)から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0040】
前述の二無水物成分とジアミン成分は、等モル量となるようにし、有機溶媒中に溶解して反応させ、ポリアミック酸溶液を製造する。
【0041】
反応時の条件は、特に限定されないが、反応温度は−20〜80℃が好ましく、反応時間は2〜48時間が好ましい。また、反応時、アルゴンや窒素等の不活性雰囲気であることがさらに好ましい。
【0042】
前記モノマーの溶液重合反応のための第1溶媒は、ポリアミック酸を溶解する溶媒であれば、特に限定されない。公知の反応溶媒として、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジエチルアセテートから選ばれる一つ以上の極性溶媒が有用である。その他、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムのような低沸点溶液、またはγ−ブチロラクトンのような低吸収性溶媒を用いてもよい。
【0043】
前記第1溶媒の量については、特に限定されないが、適切なポリアミック酸溶液の分子量と粘度を得るために、第1溶媒の含量は、全体のポリアミック酸溶液に基づき、50〜95重量%であることが好ましく、70〜90重量%であることがより好ましい。
【0044】
また、ポリアミック酸溶液を用いてポリイミドフィルムを製造する際に、ポリイミドフィルムの摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性のような諸特性を改善させる目的で、ポリアミック酸溶液に充填剤を添加してもよい。充填剤としては、特に限定されないが、好ましい具体例としては、シリカ、酸化チタン、層状シリカ、カーボンナノチューブ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、マイカ等が挙げられる。前記充填剤の粒径は、改質すべきフィルムの特性と添加する充填剤の種類に応じて異なり、特に限定されないが、一般には、平均粒径が0.001〜50μmであることが好ましく、より好ましくは0.005〜25μmであり、さらに好ましくは0.01〜10μmである。この場合、ポリイミドフィルムの改質効果があり、ポリイミドフィルムにおいて良好な表面特性、導電性、及び機械的特性が得られる。
【0045】
また、前記充填剤の添加量についても、改質すべきフィルム特性や充填剤の粒径に応じて異なり、特に限定されるものではない。一般に、充填剤の添加量は、ポリアミック酸溶液100重量部に対して0.001〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜10重量部である。
【0046】
充填剤の添加方法は、特に限定されないが、例えば、重合前または重合後にポリアミック酸溶液に添加する方法、ポリアミック酸重合完了後、3本ロールミル等を用いて充填剤を混練する方法、充填剤を含む分散液を用意し、これをポリアミック酸溶液に混合する方法等が挙げられる。
【0047】
前記得られたポリアミック酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法としては、従来から公知の方法、例えば、ポリアミック酸溶液を支持体にキャストしイミド化を実施する方法を用いることができる。
【0048】
この際、適用されるイミド化法としては、熱イミド化法、化学的イミド化法、または熱イミド化法と化学的イミド化法を併用して適用することができる。化学的イミド化法は、ポリアミック酸溶液に、無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン等の第3級アミン等に代表されるイミド化触媒とを添加することによって実施される。熱イミド化法または熱イミド化法と化学的イミド化法を併用する場合、ポリアミック酸溶液の加熱条件は、ポリアミック酸溶液の種類、製造されるポリイミドフィルムの厚さ等によって変動し得る。
【0049】
熱イミド化法と化学的イミド化法を併用する場合のポリイミドフィルムの製造例をさらに具体的に説明すると、ポリアミック酸溶液に脱水剤及びイミド化触媒を添加し、支持体上にキャストした後、80〜200℃、好ましくは100〜180℃で加熱し、脱水剤及びイミド化触媒を活性化することにより、部分硬化および乾燥した後、ゲル状のポリアミック酸フィルムを支持体から剥離して得、前記ゲル状のフィルムを200〜400℃で5〜400秒間加熱することにより、ポリイミドフィルムが得られる。
【0050】
別法として、本発明では、前記得られたポリアミック酸溶液から、次のようにポリイミドフィルムを製造することもできる。すなわち、前記ポリイミドフィルムは、得られたポリアミック酸溶液をイミド化した後、イミド化した溶液を第2溶媒に添加し、ろ過及び乾燥して、固体のポリイミド樹脂を得、得られた固体のポリイミド樹脂を第1溶媒に溶解させてポリイミド溶液を得、その後、これをフィルム形成工程に付すことによって製造することができる。
【0051】
前記ポリアミック酸溶液をイミド化するときは、上述したように、熱イミド化法、化学的イミド化法、及び熱イミド化法と化学的イミド化法を併用して適用することができる。熱イミド化法と化学的イミド化法を併用する場合、イミド化は具体的には、得られたポリアミック酸溶液に脱水剤及びイミド化触媒を添加し、20〜180℃で1〜12時間の間加熱して実施すればよい。
【0052】
前記第1溶媒は、ポリアミック酸溶液の重合時の溶媒と同一の溶媒を用いてもよい、前記第2溶媒は、固体のポリイミド樹脂を得るために、得られたポリアミック酸重合体を溶解しない溶媒を用い、溶解度の差によって固形分を析出する原理を考慮し、第1溶媒よりも極性の低い任意のものを用いる。第2溶媒としては、具体的には、水、アルコール類、エーテル類、及びケトン類から選ばれる1種以上のものが挙げられる。
【0053】
この際、前記第2溶媒の含量については、特に限定されないが、製造されたポリアミック酸溶液の重量に対して5〜20重量倍を用いることが好ましい。
【0054】
得られた固体のポリイミド樹脂をろ過した後、乾燥する条件は、第2溶媒及び固形化した樹脂内に残存している可能性がある第1溶媒の沸点を考慮して、50〜150℃の温度で2〜24時間乾燥することが好ましい。
【0055】
以降、製膜工程は、固体のポリイミド樹脂が溶解されているポリイミド溶液を支持体上にキャストし、40〜400℃の温度範囲で1〜10℃/minの昇温速度で徐々に昇温させながら、1分〜8時間加熱して、ポリイミドフィルムを得る。
【0056】
得られるポリイミドフィルムの厚さは、特に限定されず、10〜250μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは25〜150μmである。
【0057】
以下、本発明について、実施例に基づきさらに詳述するが、これらは説明のために記述されるものであって、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
反応器として、攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器、及び冷却器を備えた100mlの3口丸底フラスコに、窒素を通過させながら、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)34.1904gを入れた後、反応器の温度を0℃に下げた後、6HMDA4.1051g(0.01mol)を溶解し、この溶液を0℃に維持した。これに、6FDA4.4425g(0.01mol)を添加して1時間攪拌し、6FDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であり、以降、溶液を常温に放置し、8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度2400cpsのポリアミック酸溶液を得た。
前記ポリアミック酸溶液に化学硬化剤として、無水酢酸(酸化アセチル:SamChun社)及びピリジン(SamChun社)をそれぞれ2〜4当量添加した後、ポリアミック酸溶液を20〜180℃の範囲内の温度で、1〜10℃/minの速度で昇温させながら2〜10時間加熱し、ポリアミック酸溶液をイミド化した後、イミド化した溶液30gを水300gに添加して沈殿させ、沈殿された固形分をろ過及び粉砕工程を経て、微粉化した後、80〜100℃の真空オーブンで2〜6時間乾燥し、約8gの固形樹脂粉末を得た。得られた固形樹脂粉末を重合溶媒であるDMAcまたはDMF32gに溶解させ、20wt%のポリイミド溶液を得た。これを、40〜400℃に到る温度範囲で、温度を1〜10℃/minの速度で昇温させながら2〜8時間加熱し、厚さ50μm及び100μmのポリイミドフィルムを得た。
【0059】
<実施例2>
上記した実施例1と同じ反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)35.07gを入れた後、反応器の温度を0℃に下げ、DBSDA4.325g(0.01mol)を溶解し、この溶液を0℃に維持した。これに、6FDA4.4425g(0.01mol)を添加して1時間攪拌し、6FDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であり、以降、溶液を常温に放置し、8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度2100cpsのポリアミック酸溶液を得た。
以降、上記した実施例1と同様な方法で、ポリイミドフィルムを製造した。
【0060】
<実施例3>
上記した実施例1と同じ反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)30.5792gを入れた後、反応器の温度を0℃に下げ、2,2’−TFDB3.2023g(0.01mol)を溶解し、この溶液を0℃に維持した。これに、6FDA4.4425g(0.01mol)を添加して1時間攪拌し、6FDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であり、以降、溶液を常温に放置し、8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度2400cpsのポリアミック酸溶液を得た。
以降、上記した実施例1と同様な方法で、ポリイミドフィルムを製造した。
【0061】
<実施例4>
上記した実施例1と同様にして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)29.716gに2,2’−TFDB2.24161g(0.007mol)を溶解させ、4DDS0.7449g(0.003mol)を添加して完全に溶解させた。また、6FDAを4.4425g(0.01mol)を添加した後、1時間攪拌し、6FDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であり、以降、溶液を常温に放置し、8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度2000cpsのポリアミック酸溶液を得た。
以降、上記した実施例1と同様な方法で、ポリイミドフィルムを製造した。
【0062】
<実施例5>
上記した実施例1と同様にして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)33.6292gに2,2’−TFDB3.2023g(0.01mol)を溶解させ、この溶液を0℃に維持した。6HBDA5.205g(0.01mol)を添加した後、1時間攪拌し、6HBDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であり、以降、溶液を常温に放置し、8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度2100cpsのポリアミック酸溶液を得た。
以降、上記した実施例1と同様な方法で、ポリイミドフィルムを製造した。
【0063】
<実施例6>
上記した実施例1と同様にして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)31.82gに2,2’−TFDB3.2023g(0.01mol)を溶解させ、この溶液を0℃に維持した。6HBDA4.164g(0.008mol)を添加した後、BPDA0.58844g(0.002mol)を添加し1時間攪拌し、6HBDA及びBPDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であり、以降、溶液を常温に放置し、8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度1900cpsのポリアミック酸溶液を得た。
以降、上記した実施例1と同様な方法で、ポリイミドフィルムを製造した。
【0064】
<実施例7>
上記した実施例1と同様にして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)33.59gに2,2’−TFDB3.2023g(0.01mol)を溶解させ、この溶液を0℃に維持した。6HBDA3.64355g(0.007mol)を添加した後、ОDPA1.551g(0.003mol)を添加し1時間攪拌し、6HBDA及びОDPAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であり、以降、溶液を常温に放置し、8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度1800cpsのポリアミック酸溶液を得た。
以降、上記した実施例1と同様な方法で、ポリイミドフィルムを製造した。
【0065】
<実施例8〜14>
それぞれ実施例1〜7と同一の組成でポリアミック酸溶液を得た後、得られたポリアミック酸溶液を、ガラス基板でドクターブレードを用いて厚さ500〜1000μmでキャストした後、真空オーブンで40℃で1時間、60℃で2時間乾燥し、自立フィルムを得た後、高温炉で5℃/minの昇温速度で、80℃で3時間、100℃で1時間、200℃で1時間、300℃で30分間加熱し、厚さ50μm及び100μmのポリイミドフィルムを得た。
【0066】
<実施例15>
上記した実施例1と同様にして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)38.5084gに4−BDAF5.1846g(0.01mol)を溶解し、6FDA4.4425g(0.01mol)を添加した後、1時間攪拌し、6FDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であり、以降、溶液を常温に放置し、8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度1300cpsのポリアミック酸溶液を得た。
以降、上記した実施例1と同様な方法で製造し、厚さ25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0067】
<実施例16>
上記した実施例1と同様にして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)29.4632gにAPB−133 2.9233g(0.01mol)を溶解し、6FDA4.4425g(0.01mol)を添加した後、1時間攪拌し、6FDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であり、以降、溶液を常温に放置し、8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度1200cpsのポリアミック酸溶液を得た。
以降、上記した実施例1と同様な方法で製造し、厚さ25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0068】
<実施例17>
上記した実施例1と同様にして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)25.7796gに3,3’−ODA2.0024g(0.01mol)を溶解し、6FDA4.4425g(0.01mol)を添加した後、1時間攪拌し、6FDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であり、以降、溶液を常温に放置し、8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度1600cpsのポリアミック酸溶液を得た。
以降、上記した実施例1と同様な方法で製造し、厚さ25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0069】
<比較例1>
上記した実施例1と同様にして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)38.5084gに4−BDAF5.1846g(0.01mol)を溶解し、6FDA4.4425g(0.01mol)を添加した後、1時間攪拌し、6FDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であり、以降、溶液を常温に放置し、8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度1300cpsのポリアミック酸溶液を得た。
反応が終了した後、得られたポリアミック酸溶液を、ガラス基板でドクターブレードを用いて厚さ500〜1000μmでキャストした後、真空オーブンで40℃で1時間、60℃で2時間乾燥し、自立フィルムを得た後、高温炉で5℃/minの昇温速度で、80℃で3時間、100℃で1時間、200℃で1時間、300℃で30分間加熱し、厚さ25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0070】
<比較例2>
上記した実施例1と同様にして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)29.4632gにAPB−133 2.9233g(0.01mol)を溶解し、6FDA4.4425g(0.01mol)を添加した後、1時間攪拌し、6FDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であり、以降、溶液を常温に放置し、8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度1200cpsのポリアミック酸溶液を得た。
以降、上記した比較例1と同様な方法で製造し、厚さ25μm、50μm、及び100μmのポリイミドフィルムを得た。
【0071】
<比較例3>
上記した実施例1と同様にして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)25.7796gに3,3’−ODA2.0024g(0.01mol)を溶解し、6FDA4.4425g(0.01mol)を添加した後、1時間攪拌し、6FDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であり、以降、溶液を常温に放置し、8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度1600cpsのポリアミック酸溶液を得た。
以降、上記した比較例1と同様な方法で製造し、厚さ25μm、50μm、及び100μmのポリイミドフィルムを得た。
【0072】
<比較例4>
上記した実施例1と同様にして、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)16.7344gに4,4’−ODA2.0024g(0.01mol)を溶解し、PMDA2.1812g(0.01mol)を添加した後、1時間攪拌し、PMDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であり、以降、溶液を常温に放置し、8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度2500cpsのポリアミック酸溶液を得た。
以降、上記した比較例1と同様な方法で製造し、厚さ25μm、50μm、及び100μmのポリイミドフィルムを得た。
【0073】
上記した実施例及び比較例で製造されたポリイミドフィルムの物性を、以下のように測定し、下記表1及び表2に示した。
【0074】
(1)屈折率(RI)及び複屈折率(BR)
製造されたフィルムを、プリズムカプラー(SPA−4000、SAIRON Technology社)を用いて、23〜26℃、湿度40%、1atmの条件で、屈折率及び複屈折率を測定した。
【0075】
(2)透過率及び50%遮断波長
製造されたフィルムを、紫外分光光度計(Varian社、Cary100)を用いて、可視光線透過率及び50%遮断波長を測定した。
【0076】
(3)色座標
製造されたフィルムを、紫外分光光度計(Varian社、Cary100)を用いて、ASTM E 1347−06の規格に従って測定し、光源は、CIE D65による測定値を基準とした。
【0077】
(4)黄色度
製造されたフィルムを、紫外分光光度計(Varian社、Cary100)を用いて、ASTM E313の規格で黄色度を測定した。
【0078】
(5)白色度
製造されたフィルムを、紫外分光光度計(Varian社、Cary100)を用いて、ASTM E313の規格で白色度を測定した。
【0079】
(6)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(DSC、TA Instrument社、Q200)を用いて、ガラス転移温度を測定した。
(7)線膨張係数(CTE)
TMA(TA Instrument社、Q400)を用いて、TMA法に従って50〜250℃での線膨張係数を測定した。
【0082】
一方、実施例11(フィルムの厚さ50μm)及び比較例1のフィルムを20”バックライトユニットに装着して表示パネルを作製し、25℃内外の温度及び30〜80%の湿度環境の下で、以下の物性を測定し、下記表3に示した。
【0083】
(1)輝度
CA−100Plus(Minolta社)を用いて、輝度を測定した。
【0084】
(2)全白輝度
CA−100Plus(Minolta社)を用いて輝度を測定し、この際、画面全体を白色としたときの中央の明るさと周辺の明るさの差を評価した。
【0085】
(3)輝度均一性
製造されたフィルムを20”バックライトユニットに装着し、25℃内外の温度及び30〜80%の湿度環境の下で、CA−100Plus(Minolta社)を用いて輝度を測定し、全体的な画面の輝度均一性を評価した。
【0086】
(4)白色均一性
画面全体を白色とした状態で、画面の白色の分布一様性をMuracam−400(Eldim社)を用いて評価し、全体画面の色度を評価して、中央の色座標と周辺の色座標の差をΔ値として示した(Δ値が小さいほど、白色均一性に優れている)。
【0087】
(5)コントラスト比
PR−705(Photo Research社)を用いて、暗室で最も暗い色と最も明るい色の明るさの差を測定した。
【0088】
(6)色再現性
CIE座標系を基準として、色座標においてレッド、グリーン、ブルーの色座標値を測定し、各座標値を頂点とする三角形の面積を計算して、再現可能な色域を求めた。このようにして求めた色域をNTSC(National Television System Committee)の標準と比較してパーセンテージに変換し、色再現性(%)を決定した。
【0089】
【表3】
※色再現率(%):(S=0.158、NTSC標準)に対する百分率で計算した相対値
【0090】
上記した物性評価の結果、本発明のポリイミドフィルムをディスプレイに装着した場合、輝度、全白輝度、輝度均一性、及び白色均一性に優れ、コントラスト比が高く、色再現性にも優れた。
【0091】
すなわち、本発明に開示された屈折率及び複屈折率を有するポリイミドフィルムを用いると、画面が明るく、鮮明になる。