(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記方向変更部は、前記入力光の波長に応じて、前記入力光が前記分極反転構造に入射する入射角を変更し、前記入力光の進行方向に対する前記分極反転構造の分極が反転する周期を、前記入射角に対応する前記入力光の波長が変換される周期にする請求項1に記載の波長変換装置。
前記窪み部は、断面が円または楕円の一部となる凹部として形成され、前記方向変更部が前記入力光の方向を変更させる点から、前記入力光が前記波長変換部の前記分極反転構造に到達するまでの距離のうち、前記分極反転構造に対して垂直に到達するまでの距離を最長とする請求項1または2に記載の波長変換装置。
前記分極反転構造は、前記方向変更部が、複数の入力光のそれぞれに対して、前記分極反転構造に対して垂直とは異なる入射角の進行方向に変更したことに応じて、当該複数の入力光の波長を変換する分極反転周期を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の波長変換装置。
前記波長変換部から出力される波長が変換された光を受光し、平行光に変換または予め定められた焦点位置に集光させるレンズ部を更に備える請求項1から4のいずれか一項に記載の波長変換装置。
前記波長変換部は、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、KTP、またはBBOの結晶で形成された波長変換素子を含む請求項1から7のいずれか一項に記載の波長変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係る光源装置100の構成例を示す。光源装置100は、内部に異なる波長の光を出力する複数の光源を備え、当該複数の光源から出力される波長のそれぞれに対して、波長を変換させて出力する。光源装置100は、光源部110と、ドライバ部130と、制御部140と、波長変換装置200とを備える。
【0009】
光源部110は、複数の波長の光を出力する。本実施例において、光源部110は、複数の光源のうち、指定された一の光源から出力される波長の光を選択して出力する。これに代えて、光源部110は、波長可変光源を用いてもよい。光源部110は、複数の光源112と、光源選択部120とを有する。
【0010】
複数の光源112は、それぞれが異なる波長の光を出力する。複数の光源112は、レーザ光源でよい。また、複数の光源112は、光ファイバ出力の光源でよい。例えば、複数の光源112は、それぞれ1064、1080、および1120nmの波長の光を出力するレーザ光源である。
【0011】
光源選択部120は、一以上の光スイッチを有し、複数の光源112のうち、指定された一の光源を選択して出力させる。光源選択部120は、光源部110がn個の光源112を有する場合、n入力1出力のスイッチを1つ有してよく、これに代えて、入力数がn以下のスイッチを複数組み合わせてn入力1出力のスイッチを形成してよい。これらの光スイッチは、複数の光源112が光ファイバ出力の場合、光ファイバ入力で、かつ、光ファイバ出力の光スイッチであることが望ましい。
【0012】
ドライバ部130は、波長変換装置200に周波数f
sの変調信号を供給する。ドライバ部130は、内部に発信器、増幅器、および当該発信器の発信周波数を制御する周波数制御回路を有し、指定された周波数の変調信号を出力する。ドライバ部130は、数GHzに至る周波数の変調信号を出力してよい。
【0013】
制御部140は、光源部110に、光を出力すべき光源112を指定する。また、制御部140は、ドライバ部130に、指定した光源112に応じて予め定められた周波数f
sを指定する。制御部140は、記憶部を有し、複数の光源112のそれぞれに応じて、予め定められたドライバ部130に指定する周波数f
sを記憶してよい。
【0014】
波長変換装置200は、異なる波長の入力光のそれぞれに対して当該波長を変換する。波長変換装置200は、入力部210と、波長変換部220と、方向変更部230と、レンズ部240と、出力部250とを有する。
【0015】
入力部210は、入力光が入力される。入力部210は、光学レンズを含み、入力光を平行光にして出射する。入力部210は、入力光を光ファイバで受け取るファイバコリメータでよい。これに代えて、入力部210は、光学レンズ等を組み合わせた光学系で形成されてよい。
【0016】
波長変換部220は、周期的に分極が反転する分極反転構造222を有し、当該分極が反転する周期に対応する波長の光の入力に応じて、当該光の波長を変換する。波長変換部220は、入力される光の波長を1/2倍にした波長の光を出力する。また、波長変換部220は、入力される2つの光の周波数の和または差に等しい周波数の光を出力してよい。波長変換部220は、光が入出力する面の少なくとも一部に、入出力する光の反射を防止する反射防止膜が形成されてよい。
【0017】
非線形光学結晶等は、レーザ等の高強度電場の光を入力させると、光電界強度に応じて入力光の第2高調波成分等の非線形光学効果が発生させる。ここで例えば、発生した第2高調波成分は、コヒーレンス長の2倍の長さを周期として発生と減衰を繰り返して増減する。そこで、波長変換部220は、当該増減の周期と略一致する分極反転周期の分極反転構造222を形成することで、減衰による損失を低減させて発生する第2高調波成分を効率的に出力できる。このような波長変換方法を擬似位相整合(QPM:Quasi−Phase Matching)と呼ぶ。
【0018】
波長変換部220は、ニオブ酸リチウム(PPLN:Periodical Poled Lithium Niobate)、タンタル酸リチウム(PPLT:Periodical Poled Lithium Tantalate)、KTP、またはBBO等の結晶で形成された波長変換素子を含んでよい。また、分極反転構造222は、強誘電体結晶等の非線形光学結晶に外部電界を印加して自発分極を周期的に反転させつつ当該結晶を成長させて形成されてよい。
【0019】
方向変更部230は、入力部210と分極反転構造222との相対的な位置を変えずに、入力光の波長に応じて、入力光が分極反転構造222を通る進行方向を変更する。本実施例において、方向変更部230は、入力光の波長に応じて、入力光が分極反転構造222に入射する入射角を変更し、入力光の進行方向に対する分極反転構造222の分極が反転する周期を、当該入射角に対応する入力光の波長が変換される周期にする。
【0020】
本実施例において、方向変更部230は、音響光学効果によって入力光の進行方向を変更する音響光学素子を有する。ここで、音響光学素子は、素子を形成する結晶に超音波を供給して振動させると、超音波の周波数で回折格子を形成する素子である。このような結晶は、供給された超音波の振動によって、結晶内部に周期的な応力を発生させて屈折率の周期的な大小即ち屈折率グレーティングを形成させる。方向変更部230は、このような音響光学素子を有することで、供給する超音波の周波数に応じて、入力光の回折方向である進行方向を変更することができる。
【0021】
図中の例において、方向変更部230は、入力部210より方向変更部230の垂直入射方向A−Oに対して入射角θ
inで入射した入力光の波長に応じて、当該入力光の進行方向を方向O−C
1、方向O−C
2、または方向O−C
3等の進行方向に変更する。このように、方向変更部230は、超音波によって形成されるグレーティングの中央近傍のO点を中心に、回折方向を変更してよい。ここで、入力光の波長をλ、回折角度をθ
d、結晶中の音速をνとすると、入射角θ
inと回折角度θ
dとの関係は次式で示される。
【0023】
方向変更部230は、モリブデン酸鉛または二酸化テルル等の音響光学効果を有する結晶を含む。方向変更部230は、当該結晶の端面に、供給される周波数信号を弾性波に変換するトランスデューサ等を備えてよい。方向変更部230は、弾性波に応じて形成する回折格子によって入力光をブラッグ回折させ、供給される周波数に応じた回折方向O−Cに回折光を出力する。
【0024】
レンズ部240は、波長変換部220から出力される波長が変換された光を受光し、平行光に変換または予め定められた焦点位置に集光させる。レンズ部240は、例えば、波長変換装置200が出力光を光ファイバ出力とする場合は、光ファイバ等の光学系に集光する光学系を含む。一例として、レンズ部240は、波長変換部220から出力される波長が変換された光を受光して平行光にする受光レンズ242と、平行光をファイバ等の光学系に集光する集光レンズ244とを含む。
【0025】
これに代えて、レンズ部240は、波長変換部220から出力される光を直接受光してファイバ等の光学系に集光する集光レンズ244を含んでもよい。また、レンズ部240は、例えば、波長変換装置200が出力光を平行光として出力する場合は、波長変換部220から出力される波長が変換された光を受光して平行光にする受光レンズ242を含む。図中の例においては、レンズ部240が光ファイバ等の光学系に集光する例を説明する。
【0026】
ここで、レンズ部240の受光レンズ242は、方向変更部230がO点を基点として入力光の進行方向を方向O−C
1、方向O−C
2、または方向O−C
3等の進行方向に変更する場合、焦点距離を受光レンズ242からO点までの距離に略一致させてよい。この場合、受光レンズ242は、波長変換部220および方向変更部230の屈折率を加味した焦点距離にすることが好ましい。これによって、受光レンズ242は、波長変換部220からO点を基点として様々な方向に出力される変換光を受光して、平行光に変換することができる。
【0027】
出力部250は、レンズ部240が集光する光を受光して、当該光を波長変換装置200の外部へと出力する。出力部250は、光学レンズを含み、光ファイバに出力させるファイバコリメータでよい。これに代えて、出力部250は、光学レンズ等を組み合わせた光学系で形成されてよい。これに代えて、レンズ部240が出力部250の機能を有してよく、この場合、出力部250は無くてもよい。
【0028】
以上の波長変換装置200は、複数の光源112のそれぞれに応じて、分極反転構造222を通過する光路を変更して、1つの波長変換部220を用いつつ、それぞれの光源112が出力する光の第2高調波を効率的に出力させる。例えば、波長変換部220は、周期2l
cの分極反転構造222を含み、波長λ
0の入力光と疑似位相整合する場合、方向変更部230は、入力光を当該波長変換部220に入射角を略0度にして入射させる。
【0029】
即ちここで、制御部140は、波長λ
0に応じた周波数の発生をドライバ部130に指示する。方向変更部230は、ドライバ部130から当該周波数信号を受け取ることによって、入力光の回折方向を分極反転構造222に対して垂直方向とする回折格子を形成する。
【0030】
これによって、分極反転構造222は、効率的に波長λ
0/2の第2高調波を発生することができる。ここで、このような分極反転構造222は、λ
0からずれた波長の光が入射角0度で入力された場合、ずれた波長の量に応じて疑似位相整合の効果を低減させて、第2高調波への変換効率を低減させる。より具体的には、入力波長λ
0の変換効率が1/2となる波長変換帯域幅をΔλとすると、両者は、次式で示される関係にある。
【0032】
ここで、n
1は分極反転構造222の基本波(波長λ
0の光)に対する屈折率を、n
2は分極反転構造222の第2高調波に対する屈折率を、それぞれ示す。上式より、例えば、素子長L=20mmの分極反転構造222が、λ
0=1168nmの光が0度入射する場合に最も効率的に当該入力光と疑似位相整合する分極反転周期2l
cを有する場合、変換効率が1/2となるΔλは0.21nm程度と算出される。即ち、このような分極反転構造222は、波長1168.21nmの入力光が0度入射することによって、第2高調波への変換効率を1/2に低減させてしまう。
【0033】
したがって、複数の異なる波長の光源の出力を分極反転構造222に同一の入射角度で入射させても、分極反転構造222は、予め定められた0.5nm程度以下の限られた帯域以外の入力光に対して、効率的に第2高調波を発生させることができない。そこで、本実施例の方向変更部230は、入力光の波長に応じて、当該入力光が分極反転構造222に入射する入射角を変更する。即ち、方向変更部230は、入力光の入射角を変更して、当該入力光の進行方向を分極反転構造222に対して斜めにする。
【0034】
ここで、分極反転構造222は、方向変更部230が、複数の入力光のそれぞれに対して、分極反転構造222に対して垂直とは異なる入射角の進行方向に変更したことに応じて、当該複数の入力光の波長を変換する分極反転周期を有する。即ち、方向変更部230は、0度入射する波長λ
0の入力光と疑似位相整合する分極反転周期に対して、λ
0より波長の長い波長λ
nの光が入力された場合に、当該波長λ
nに応じて入力光の入射角を変更する。
【0035】
例えば、方向変更部230は、分極反転周期2l
cを有する分極反転構造222に対する入力光の入射角を0度からθ度とすることで、斜めに進行する入力光に対する分極反転周期を2l
c/cosθと、2l
c以上に長くすることができる。このように、方向変更部230が、分極反転構造222に対する入力光の入射角を変更することで、同一の分極反転構造222が入力光と疑似位相整合する波長を変えることができる。例えば、垂直入射(入射角0度)する波長λ
0の入力光と疑似位相整合する分極反転構造222が、入力光の入射角θに対して疑似位相整合する波長は、次式で示される。
【0037】
ここで、コヒーレンス長l
cは、次式で示される。
【0039】
図2は、本実施形態に係る波長変換部220の分極反転構造222への入射角に対する擬似位相整合波長の関係の一例を示す。図中は、垂直入射(入射角0度)する波長λ
0=1060nmの入力光と疑似位相整合する分極反転構造222が、入力光の入射角θに対して疑似位相整合する波長の一例を示す。図中の横軸は入射角度を、縦軸は疑似位相整合波長を示す。図中の例より、分極反転構造222は、方向変更部230が入射角度を20度程度変更することによって、疑似位相整合波長を数十nm以上変化させることがわかる。
【0040】
一例として、図中の例で示される特性の分極反転構造222を有する波長変換部220は、波長1064nmの入力光に対して、方向変更部230が入射角を5度に変更することで、当該入力光と疑似位相整合して第2高調波である532nmの光を出力できることが算出される。同様に、波長変換部220は、波長1080nmの入力光に対して入射角を11.4度に変更することで540nmの光を出力し、波長1120nmの入力光に対して入射角を19.7度に変更することで560nmの光を出力できる。
【0041】
ここで、入射角度は正負の値の2値が得られる。これは例えば、方向O−C
1、方向O−C
2、または方向O−C
3等の進行方向を入射角度のマイナス方向とすると、各進行方向の線A−A'と線対称な位置にある進行方向がプラス方向であり、方向変更部230は、いずれの方向に入力光を変更してもよい。
【0042】
以上より、制御部140は、一の光源112を指定すると共に、方向変更部230が当該光源112の出力する光を波長変換部220において疑似位相整合する進行方向に変更すべく、対応する回折格子を形成する周波数をドライバ部130に指定する。一例として、制御部140は、光源部に波長1064nmの光を出力する光源112を指定すると共に、方向変更部230が波長変換部220に対して入射角度を5度に変更する回折格子を形成する周波数をドライバ部130に指定する。
【0043】
例えば、方向変更部230としてモリブデン酸鉛を用いる場合、音速νは略3630m/sとなる。そこで、入力光の波長を1064nm、入射角を10度、回折角度を−5度とすると、数1の式より周波数f
sが略893MHzと算出できるので、方向変更部230は、当該周波数を印加されることで入力光を疑似位相整合させる進行方向に変更することができる。同様に、入力光の波長を1080nm、入射角を10度、回折角度を−11.4度とすると、周波数f
sは略1.25GHzと算出され、入力光の波長を1120nm、入射角を10度、回折角度を−19.7度とすると、周波数f
sは略1.68GHzと算出される。
【0044】
以上の本実施形態に係る光源装置100によれば、数十nm以上異なる複数の波長の入力光に対して安定かつ高効率に非線形光学効果をそれぞれ発生させることができる。これによって、光源装置100は、例えば、波長1064、1080、および1120nmといったレーザ発振させることが容易な波長帯域の複数の光源112を用いて、レーザ発振させることが困難な波長帯域の波長532、540、および560nmの光を出力することができる。
【0045】
また、光源装置100は、入力部210と分極反転構造222との相対的な位置を変えずに非線形光学効果を発生させることができるので、可動部品を用いずに光学系を形成することができる。即ち、光源装置100は、光学調整を容易にさせ、振動および衝撃に対して安定な光学系を形成させ、また、信頼性を向上させることができる。
【0046】
また、疑似位相整合波長が入射角度θの2次関数で表現されるので、分極反転構造222は、入射角度が0度より離れれば離れるほど、疑似位相整合波長の変化の度合いを急峻にする。そこで、分極反転構造222は、方向変更部230が、複数の入力光のそれぞれに対して、分極反転構造222に対する入射角を0度とは異なる角度に変更したことに応じて、当該複数の入力光の波長を変換する分極反転周期を有してよい。
【0047】
より好ましくは、分極反転構造222は、方向変更部230が、複数の入力光のそれぞれに対して、分極反転構造222に対する入射角をより大きくなる角度に変更したことに応じて、当該複数の入力光の波長を変換する分極反転周期を有してよい。即ち、分極反転構造222は、方向変更部230が複数の入力光のそれぞれに対して垂直方向からより離れた入射角に変更することで、入力光と擬似位相整合する分極反転周期が形成される。
【0048】
これによって、分極反転構造222は、入射角度の変化に対して疑似位相整合波長の変化が急峻となる領域で複数の入力光と疑似位相整合させることができる。即ち、方向変更部230が複数の波長の入力光に対して、進行方向を変更させるべき角度の範囲をより小さくすることができ、光学系の設計自由度を向上させることができる。例えば、分極反転構造222は、複数の異なる波長の入力光のうち最も長波長の入力光に対して、方向変更部230が変更すべき角度を分極反転構造222の大きさから許容される最も大きな入射角度とする分極反転周期が設計される。
【0049】
これによって、入力光が最も長波長の光から最も短波長の光に切り替わった場合に、方向変更部230は、最も少ない入射角度の変更で切り替わった入力光と分極反転構造222とを擬似位相整合させることができる。即ち、このように分極反転周期を設計することで、方向変更部230は、複数の波長の入力光に対して、より少ない入射角度の変更でそれぞれの入力光と分極反転構造222とを疑似位相整合させることができる。
【0050】
以上の本実施形態に係る光源装置100において、波長変換部220は、光が入力する面内に形成される窪み部224を更に含んでよい。窪み部224は、断面が円または楕円の一部となる凹部として形成される。例えば、波長変換部220は、方向変更部230が入力光の方向を変更させる点Oから、入力光が波長変換部220に到達するまでの距離OBを略一定とする窪み部224を有する。
図1において、窪み部224は、方向変更部230のO点を中心とした半径Rの円の一部として形成される例を示す。窪み部224は、波長変換部の端面を研磨等によって加工して形成されてよい。
【0051】
このような窪み部224が無く、波長変換部220の端面が平面で形成され、方向変更部230からの光が当該平面に入射する場合、波長変換部220は、入射光を屈折させる。ここで、屈折率nの波長変換部220は、方向変更部230の回折角度を1/nにするので、例えば、屈折率2.2のPPLN結晶を波長変換部220として用いると、回折角度は1/2.2程度に減少する。したがって、この場合、方向変更部230は、入力光を分極反転構造222と疑似位相整合させるべく、屈折がない場合の入射角度のn倍の角度を波長変換部220への入射角度とする。
【0052】
これに対して、窪み部224のある光源装置100は、方向変更部230からの光が波長変換部220の窪み部224の接線に対して入射する角度を、分極反転構造222への入射角度とは関係なく常に垂直とする。したがって、このような光源装置100は、波長変換部220に入射する光を屈折させずに進行させることができるので、方向変更部230の波長変換部220に対する入射角度を増加させずに、入力光と分極反転構造222とを疑似位相整合させることができる。
【0053】
これに代えて、窪み部224は、断面が円または楕円の一部となる凹部として形成され、方向変更部230が入力光の方向を変更させる点Oから、入力光が波長変換部220の分極反転構造222に到達するまでの距離のうち、分極反転構造222に対して垂直に到達するまでの距離を最長とする凹部として形成されてよい。このような窪み部224のある波長変換部220は、方向変更部230からの光が当該窪み部224に入射する角度に応じて屈折する角度を変化させる。そして、窪み部224は、方向変更部230からの入射角度の絶対値が大きくなるにつれて、分極反転構造222への入射角度の絶対値を増加する方向に屈折させる。
【0054】
即ち窪み部224は、分極反転構造222に対して垂直方向O−A'に入射する光に対しては屈折させず、当該垂直方向からずれた方向に入射する光には分極反転構造222に対する入射角度を増加させる凹レンズの効果と同等の機能を有する。これによって、光源装置100は、方向変更部230の回折角度を減少させることができ、ドライバ部130が出力する変調周波数および方向変更部230の入射角θ
in等の設計自由度を増加させることができる。
【0055】
図3は、本実施形態に係る光源装置100の第1の変形例を示す。本変形例の光源装置100において、
図1に示された本実施形態に係る光源装置100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。本変形例の方向変更部230は、入力光を回折させて進行方向を変更する回折格子232を有する。ここで、方向変更部230は、入力される光の進行方向を回折格子232の入力方向E−Oに変更する鏡234を更に有してよい。
【0056】
回折格子232は、予め定められた配置で固定されてよい。例えば、回折格子232は、入力光が格子面の垂線D−O−D'に対して角度αの方向E−Oで入射した場合に、回折方向を入力光の波長に応じて方向O−C
1、方向O−C
2、または方向O−C
3等に変更する。ここで、回折格子232の入力光の波長λと回折角βとの関係は、次式で示される。
【0058】
ここで、mは回折の次数(mは整数)、dは回折格子232の格子の間隔をそれぞれ示す。本変形例は、格子間隔dが固定された回折格子232を方向変更部230として用いるので、入射角αおよび次数mを定めることで、入力光の波長λと回折角βとの関係が求まる。ここで、回折角βは、図中の角度DOCを示す。
【0059】
図4は、本実施形態に係る回折格子232の回折角、および波長変換部220が疑似位相整合する入射角の、入力波長依存性の一例を示す。図中の横軸は入力光の波長λ、縦軸は角度を示す。また、図中の実線は、数3の式より求まる波長変換部220の入力光の波長λに対して疑似位相整合する入射角の一例を示す。また、図中の点線は、数5の式より求まる回折格子232の入力光の波長λに対する回折角DOCのうちの角度A'OCを示す。ここで、図中の入射角および回折角は、分極反転構造222に対して垂直方向A−A'から角度A'OC
1側をマイナス方向とする。
【0060】
図中の例は、入射角が−11.4度の波長1080nmの入力光と波長変換部220とが擬似位相整合し、かつ、波長1080nmの入力光に対して回折格子232の回折角A'OCが−11.4度となるパラメータ条件で算出した結果である(例えば、d=0.8μm、α=25.88度等)。これより、本変形例の光源装置100は、少なくとも2つの入力光波長に対して、波長変換部220の入射角および回折格子232の回折角を一致できることがわかる。
【0061】
即ち、図中の例において、波長1080nmおよび1120nmの入力光に対して、予め定められた配置で固定された回折格子232の回折角と、波長変換部220に擬似位相整合させる入射角とを一致させることができる。これより、本変形例の光源装置100は、一例として、波長1080nmの光を出力する光源112aと、波長1120nmの光を出力する光源112bと、を有し、当該光源から出力される光を波長変換部220で変換させた波長540nmまたは560nmの光を出力する。
【0062】
ここで、光源選択部120は、一以上の光カプラを有し、2以上の光源を選択して出力させてよい。例えば、光源選択部120は、波長1080nmおよび1120nmの光を合波するWDMカプラを有し、光源装置100は、2つの光源から出力される光を波長変換部220で変換させて波長540nmおよび560nmの光を出力する。これによって、光源装置100は、2以上の光を同時に発生することができる。この場合、制御部140は、光源選択部120に光源を選択する信号を送らなくてもよい。
【0063】
以上の本実施形態に係る光源装置100の第1の変形例によれば、入力部210と分極反転構造222との相対的な位置を変えずに非線形光学効果を発生させることができる。また、本変形例の光源装置100は、回折格子232の配置を固定する例を説明した。これに代えて、光源装置100は、O点を通る回転軸を有する回折格子232を回転させて、波長変換部220の入射角を変更させてよい。
【0064】
また、本変形例の光源装置100は、回折格子232を用いる例を説明したが、これに代えて、O点を通る回転軸を有し、波長変換部220の入射角を変更させる鏡を有してもよい。このように、光源装置100は、回転動作する機能を有することで、より多くの異なる波長を出力する光源に対して、擬似位相整合させて非線形光学効果を発生させることができる。
【0065】
光源装置100は、このような回転動作する機能を、半導体集積回路の製造技術を用いたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)アクチュエータで形成してよい。これによって、光源装置100は、光学部品等を安定に動作させることができる。
【0066】
図5は、本実施形態に係る光源装置100の第2の変形例を示す。本変形例の光源装置100において、
図1に示された本実施形態に係る光源装置100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。図中の線A
n−A
n'(n=1、2、3)は、いずれも分極反転構造222の垂直方向と平行な線を示す。
【0067】
本変形例の方向変更部230は、分極反転構造222に対して平行な面から角度を有し、少なくとも一部には入力光を反射させる反射膜が成膜されて形成される、波長変換部220の光の反射面236を含む。方向変更部230は、波長変換部220に入力される光が反射面236に到達すると、当該光の進行方向を波長変換部220の光の入力面238の方向へと変更する。
【0068】
図中の例において、波長変換部220は、入力部210から入射される入力光をC
0点で屈折させ、C
0点からC
1点に進行させる。方向変更部230が含む反射面236は、C
1点において入力光を反射して進行方向をC
2点の方向へと変更する。ここで、反射面236は、分極反転構造222の平行方向とは角度δを有する。これによって、反射面236は、入力光の分極反転構造222に対する入射角を角C
0C
1A
1および角C
1C
2A
2'とすることができる。
【0069】
そこで、本変形例の光源装置100は、入射角C
0C
1A
1に対応して擬似位相整合する波長の光源112aと、入射角C
1C
2A
2'に対応して擬似位相整合する波長の光源112bとを有し、当該光源から出力される光を波長変換部220で変換させた波長の光を出力する。この場合、光源装置100は、光源112aから出力される光が第1光路C
0−C
1を進行する間に分極反転構造222と擬似位相整合させて第2高調波を発生させ、当該第2高調波をC
1点で反射させて第2光路C
1−C
2を通過させる。
【0070】
ここで、分極反転構造222の分極反転周期と発生した第2高調波とは擬似位相整合しないので、波長変換部220は、当該第2高調波をほとんど損失させずに第2光路C
1−C
2を通過させる。また、光源装置100は、光源112bから出力される光をほとんど損失させずに第1光路C
0−C
1を通過させ、通過した入力光をC
1点で反射させて第2光路C
1−C
2を進行する間に分極反転構造222と擬似位相整合させて第2高調波を発生させて出力する。
【0071】
これより、本変形例の光源装置100は、異なる波長の光を出力する複数の光源112を有し、当該光源から出力される光を波長変換部220で変換させた波長の光をそれぞれ出力することができる。また、本変形例においても、光源選択部120が光カプラを有することで、光源装置100は、2つの光を同時に発生することができる。ここで、出力部250は、波長変換部220の点C
2から出力される光を受光して外部へ出力してよい。
【0072】
また、本変形例の方向変更部230は、分極反転構造222に対して平行な面から角度を有し、少なくとも一部には入力光を反射させる反射膜が成膜されて形成される、波長変換部220の光の入力面238を更に含んでよい。方向変更部230は、反射面236で反射された光が入力面238に到達すると、当該光の進行方向を反射面236の方向へと変更する。
【0073】
この場合、波長変換部220は、入力される光が反射面236に到達するまでの第1光路C
0−C
1と、反射面236で反射された光が入力面238に到達するまでの第2光路C
1−C
2と、入力面238で反射された光が反射面236に到達するまでの第3光路C
2−C
3と、を経て入力光を進行させる。また、波長変換部220は、第1、第2、または第3光路のうち一の光路の進行方向に対する分極反転周期を、入力光に対応する予め定められた周期にする。
【0074】
即ち、図中の例において、波長変換部220が含む入力面238は、C
2点においてC
1点からC
2点に進行した光を反射して進行方向をC
3点の方向へと変更する。ここで、入力面238は、分極反転構造222の平行方向とは角度εを有し、反射膜が成膜されて形成される。これによって、入力面238は、入力光の分極反転構造222に対する入射角を角C
2C
3A
3とすることができる。
【0075】
そこで、本変形例の光源装置100は、入射角C
2C
3A
3に対応して擬似位相整合する波長の光源112cを更に有し、当該光源から出力される光を波長変換部220で変換させた波長の光を出力する。この場合、光源装置100は、光源112cから出力される光が第3光路C
2−C
3を進行する間に分極反転構造222と擬似位相整合させて第2高調波を発生させる。ここで、反射面236は、少なくとも点C
3においては反射膜が成膜されずに形成される。また、出力部250は、波長変換部220の点C
3から出力される光を受光して外部へ出力してよい。
【0076】
ここで、波長変換部220の屈折率をn
1、角C
0C
1A
1をγとすると、次式が成立する。
【0078】
また、角C
1C
2A
2'は、2δ+γとなり、角C
2C
3A
3は、2ε+2δ+γとなる。したがって、光源装置100は、波長変換部220の屈折率n
1、入射角θ
in、反射面236および入力面238の分極反転構造222の平行方向に対する角度δおよびεに基づき、予め定められた光の波長と分極反転構造222とを擬似位相整合させることができる。
【0079】
一例として、屈折率2.15のPPLNを用いた波長変換部220において、入射角θ
inを1.83度、εを4.15度、およびδを3.2度とすることで、角C
0C
1A
1は5度、角C
1C
2A
2'は11.4度、角C
2C
3A
3は19.7度にすることができる。これによって、光源装置100は、波長1064nm、1080nm、および1120nmの複数の光源の第2高調波を出力することができる。ここで、本変形例において、角度の表記は絶対値で示した。
【0080】
これより、本変形例の光源装置100は、異なる波長の光を出力する複数の光源112を有し、当該光源から出力される光を波長変換部220で変換させた波長の光をそれぞれ出力することができる。また、本変形例においても、光源選択部120が一以上の光カプラを有することで、光源装置100は、2以上の光を同時に発生することができる。
【0081】
以上の実施形態に係る光源装置100は、波長変換部220が第2高調波を発生させることを説明したが、これに代えて、波長変換部220は、和周波、差周波、光パラメトリック発振、光パラメトリック増幅、光パラメトリック発生等の非線形光学効果を発生させてよい。また、以上の実施形態に係る光源装置100は、波長変換装置200を備える光源装置として説明したが、これに代えて、波長変換装置200を独立した波長変換装置として用いてもよい。
【0082】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0083】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。