特許第6029298号(P6029298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029298
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20161114BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20161114BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20161114BHJP
【FI】
   F21S8/10 371
   F21S8/10 385
   F21V8/00 330
   F21V8/00 340
   F21Y115:10
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-56822(P2012-56822)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-191412(P2013-191412A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年2月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 淳一
【審査官】 丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−216279(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3126344(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10 − 8/12
F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を搭載するための光源搭載部と、
前記光源からの光を一端面から入射させて、内部で導光しながら延出方向に沿った出射面から前方に向けて出射する導光体と、
を備える車両用灯具であって、
前記導光体は、前記導光体内を進む光を前記出射面に向けて反射するステップと、前記出射面とは異なる部位に形成された、前記導光体内を進む光を前記導光体の外部に向かって放出する光放出面と、を備え、
前記導光体の前記光放出面から放出された光の少なくとも一部を前記導光体の存在する方向に向かって反射する第1反射部をさらに備え、
前記光放出面は、前記導光体の周面における前記第1反射部と対向する部位のみに施された粗面により形成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1反射部にシボが施されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第1反射部にて反射した光の一部を前記導光体の存在する方向に向かって反射する第2反射部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第2反射部にシボが施されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記導光体の前方に、鉛直方向に対して傾斜するよう配置されたインナーレンズをさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光体を用いた車両用灯具に関し、特に導光体を用いたクリアランスランプを備える車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、灯室内にロービームランプ、ハイビームランプ、クリアランスランプ等を一体に組み込んだコンビネーションヘッドランプが知られている。このようなコンビネーションヘッドランプにおいては、ロービームランプ、ハイビームランプとして、例えばプロジェクタ型や反射型の灯具が用いられる。また、クリアランスランプとしては、従来反射型の灯具が一般的であったが、近年では、LED等の光源から出射された光を一端面から入射させて、内部で導光しながら外部へ出射する導光体を用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−146722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導光体を用いた車両用灯具は、通常、導光体の正面方向に強い光が照射されるよう配光が制御されており、導光体の上下左右方向には余り光が拡散されない。従って、歩行者などが正面以外の方向から導光体を目視した場合には導光体は暗く見え、車両用灯具の被視認性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、導光体を用いた車両用灯具において、被視認性を向上できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、光源を搭載するための光源搭載部と、光源からの光を一端面から入射させて、内部で導光しながら延出方向に沿った出射面から前方に向けて出射する導光体とを備える。導光体は、導光体内を進む光を出射面に向けて反射するステップと、出射面とは異なる部位に形成された、導光体内を進む光を導光体の外部に向かって放出する光放出面とを備える。
【0007】
この態様によると、出射面とは別に、光放出面からも光が導光体外部に放出されるので、車両用灯具の被視認性を向上できる。
【0008】
光放出面は、導光体の周面の一部にシボ加工を施すことにより形成されてもよい。
【0009】
導光体の光放出面から放出された光の少なくとも一部を導光体の存在する方向に向かって反射する第1反射部をさらに備えてもよい。該第1反射部にシボ加工が施されていてもよい。
【0010】
第1反射部にて反射した光の一部を導光体の存在する方向に向かって反射する第2反射部をさらに備えてもよい。該第2反射部にシボ加工が施されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導光体を用いた車両用灯具において、被視認性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る車両用前照灯を説明するための概略正面図である。
図2図1に示す車両用前照灯のA−A断面図である。
図3】クリアランスランプの拡大断面図である。
図4】クリアランスランプが発光する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用前照灯10を説明するための概略正面図である。また、図2は、図1に示す車両用前照灯10のA−A断面図である。
【0015】
図1および図2に示すように、車両用前照灯10は、ランプボディ12と透明なカバー13とにより構成される灯室14内に、ロービームランプ16、ハイビームランプ18、およびクリアランスランプ20が収容されたコンビネーションヘッドランプである。
【0016】
ロービームランプ16およびハイビームランプ18は、灯室14内において車幅方向に並んで配置されている。図2では、ロービームランプ16として反射型の灯具が図示されているが、ロービームランプ16の種類は特に限定されず、例えば反射型やプロジェクタ型の車両用灯具を利用できる。反射型のロービームランプは公知であるので、ここでは詳細な説明者省略する。ハイビームランプ18の種類もまた、特に限定されず、例えば反射型やプロジェクタ型の車両用灯具を利用できる。
【0017】
クリアランスランプ20は、図1および図2に示すように、LED21と、LED21を搭載するための基板22と、導光体23と、インナーレンズ24と、エクステンション25とから構成されている。
【0018】
導光体23は、アクリルやポリカーボネート等の透明樹脂を射出成形することにより形成された棒状の部材である。図1において、導光体23はL字状に成形されており、ランプボディ12の上側縁部から車幅方向片側縁部にかけて略L字状に延在している。導光体23の一方の端面は、LED21からの光を入射する入射面23aとされている。導光体23は、入射面23aから入射した光を内部で導光しながら、延出方向に沿った出射面から前方に向けて出射するよう構成されている。
【0019】
LED21は、導光体23に光を供給する光源である。LED21は、導光体23の入射面23aに対向するように基板22上に搭載されている。
【0020】
エクステンション25は、ロービームランプ16およびハイビームランプ18とランプボディ12との隙間を隠すために、表面アルミ蒸着処理された樹脂成形体である。エクステンション25の前端部は、図2に示すように、前面の開口する容器状に形成されており、導光体23を収容するためのクリアランスランプ20のランプボディとして機能する(以下、「クリアランスランプボディ26」と呼ぶ)。インナーレンズ24は、クリアランスランプボディ26の前面開口部を覆うように設けられている。インナーレンズ24およびクリアランスランプボディ26は、導光体23の形状に沿って延出形成されている。
【0021】
図3は、クリアランスランプ20の拡大断面図である。図3に示すように、導光体23は、インナーレンズ24とクリアランスランプボディ26とにより形成される灯室27内の略中央に位置決め保持されている。図3に示すように、導光体23は、略円形状の断面形状を有している。また、インナーレンズ24およびクリアランスランプボディ26の断面形状は、多角形状に形成されている。本実施形態のように、インナーレンズで外形意匠を表現し、導光体23として細径のものを用いることにより、角柱が発光する見栄えを安価に構成できる。
【0022】
本実施形態において、導光体23の周面における前面側の部位は、光を灯具前方に出射する出射面23bとして機能する。また、導光体23の周面における後面側の部位には、導光体23内を進む光の一部を出射面23bに向けて反射する複数のステップ23cが導光体23の延出方向に沿って形成されている。ステップ23cの形状、大きさ、配列ピッチ等は、クリアランスランプとして要求される強度の光が出射面23bから正面方向(前方)に照射されるように設計される。
【0023】
導光体23の周面における出射面23bおよびステップ23cと異なる一部の部位は、導光体23内を進む光を導光体の外部に向かって放出する光放出面23dとされている。この光放出面23dは、導光体23の周面の一部にシボ加工を施すことにより形成される。本実施形態においては、導光体23の周面における下面側の部位、言い換えると、導光体23の周面におけるクリアランスランプボディ26と対向する部位がシボ加工されて粗面化されることにより、光放出面23dが形成されている。導光体23内部を進む光のうちこの光放出面23dに入射した光の少なくとも一部は、内面反射せずに導光体23外部に放出される。
【0024】
導光体23と対向するクリアランスランプボディ26の底面部は、表面アルミ蒸着処理されており、導光体23の光放出面23dから放出された光の少なくとも一部を導光体23の存在する方向に向かって反射する反射部として機能する(以下、「第1反射部26a」と呼ぶ)。また、この第1反射部26aには、シボ加工が施されており、粗面化されている。
【0025】
導光体23と対向するクリアランスランプボディ26の後面部もまた、表面アルミ蒸着処理されている。この後面部は、第1反射部26aに対して略垂直方向に延在しており、第1反射部26aにて反射した光の一部を導光体23の存在する方向に向かってさらに反射する反射部として機能する(以下、「第2反射部26b」と呼ぶ)。この第2反射部26bもまた、シボ加工が施されており、粗面化されている。
【0026】
図4は、クリアランスランプ20が発光する様子を示す。クリアランスランプ20において、LED21に電流が供給されると、LED21から光が出射される。LED21から出射された光は、入射面23aより導光体23内に入射する。導光体23内に入射した光は、全反射を繰り返しながら導光体23内を進行する。
【0027】
導光体23内を進行する間に導光体23の後面に設けられたステップ23cに入射した光は、該ステップ23cにより出射面23bに向けて反射され、出射面23bから出射される。導光体23の延出方向に沿って設けられた各ステップにおいて同様の反射が生じることにより、導光体23の延出方向に沿った出射面23bの略全領域から光が出射される。出射面23bから出射された光は、インナーレンズ24を通って灯具前方に照射される(図4に光線L1、L2として示す)。
【0028】
一方、導光体23内を進行する間に導光体23の下面に設けられた光放出面23dから放出された光の一部は、第1反射部26aにて上方に向けて反射する。ここで、上述したように第1反射部26aはシボ加工により粗面化されているので、第1反射部26aに入射した光は拡散反射する。第1反射部26aにて反射した光は、インナーレンズ24を通って灯具上方に照射される(図4に光線L3として示す)。
【0029】
また、導光体23内を進行する間に導光体23の下面に設けられた光放出面23dから放出された光の別の一部は、第1反射部26aにて第2反射部26bに向けて反射する。この反射光は、第2反射部26bにて再度反射する。ここで、上述したように第2反射部26bはシボ加工により粗面化されているので、第2反射部26bに入射した光は拡散反射する。第2反射部26bにて反射した光は、インナーレンズ24を通って灯具上方に照射される(図4に光線L4として示す)。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係るクリアランスランプ20によれば、クリアランスランプ20の正面方向だけでなく、上方にも光を照射することができる。これにより、クリアランスランプ20の上方向からの被視認性を向上でき、歩行者等に対して車両の存在を適切に知らせることができる。
【0031】
本実施形態においては、第1反射部26aおよび第2反射部26bをシボ加工しているので、ある決まった方向だけでなく、様々な方向に光を拡散して照射することができる。従って、クリアランスランプ20を目視する位置・角度によらず、被視認性を向上できる。
【0032】
上述の実施の形態では、クリアランスランプ20の光源としてLEDを用いたが、もちろんバルブ等の他の光源を用いることも可能である。また、導光体23の形状は特に限定されず、様々な形状の導光体を用いることができる。
【0033】
上述の実施形態では、導光体23の下面に光放出面23dを形成し、光放出面23dからの放出光を第1反射部26aおよび第2反射部26bで反射して上方に反射する構成とした。それに加えて、または代えて、導光体23の上面、すなわち導光体23の周面におけるインナーレンズ24と対向する面にシボ加工を施して光放出面を形成してもよい。この場合、光放出面から放出された光は、直接インナーレンズを通って灯具上方に照射される。
【0034】
また、上述の実施形態では、クリアランスランプを例として本発明を説明したが、本発明はクリアランスランプだけでなく、導光体を用いたその他の車両灯具にも適用できる。
【0035】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0036】
10 車両用前照灯、 12 ランプボディ、 14 灯室、 16 ロービームランプ、 18 ハイビームランプ、 20 クリアランスランプ、 21 LED、 22 基板、 23 導光体、 24 インナーレンズ、 25 エクステンション、 26 クリアランスランプボディ。
図1
図2
図3
図4