(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エレクトレット誘電体膜は、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、又はテトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテルからなるフィルムをエレクトレット化したものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の小型音響センサ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の小型音響センサは、金属材料からなるカップ状の背極と、上記カップ状の背極の外側表面上に形成されたエレクトレット誘電体膜とを有し、上記カップ状の背極の少なくとも外側表面に、陽極酸化処理又は化成処理により絶縁層が形成されていることを特徴とする。これにより、カップ状背極の外側表面には絶縁層が形成されるため、エレクトレット誘電体膜が剥がれることにより、回路としてショートが発生するという問題を回避でき、信頼性に優れた小型音響センサを実現可能である。また、絶縁層は、陽極酸化処理又は化成処理により背極自体を酸化させることにより形成されるため、カップ状背極の厚みが陽極酸化処理又は化成処理の前後で変化せず、小型音響センサのさらなる小型化の要求にも対応できる。
【0012】
以下に本発明の小型音響センサについて
図1及び
図3を参照しながら説明する。
図1は、本発明の小型音響センサの一例を示す概略断面図である。
図3は、本発明の小型音響センサの平面視形状の一例を示す図である。
【0013】
図1に示す本発明の小型音響センサは、カプセル11、支持リング15、振動膜16、スペーサ17、背極18、配線基板14を有する。
【0014】
上記カプセル11は、アルミニウム等の金属部材よりなり、一方の端面が閉塞された有底筒状をしている。カプセル11の閉塞された側の端面(以下、天面という)12の中央部には、音波が通過する音孔13が形成されている。このカプセル11内に、天面12側から順に、支持リング15、振動膜16、スペーサ17、背極18、配線基板14を収容した後、後端をかしめて全体を固定することにより、
図1に示す小型音響センサが得られる。なお、本明細書では音孔13が1つである場合について説明するが、複数であってもよい。
【0015】
また、上記カプセル11は、
図3に示すように円状の平面視形状を有する。なお、カプセル11の平面視形状は、
図3に示す円状に限定されず、例えば、
図4に示す楕円状、
図5に示す正方形状、
図6に示す長方形状、
図7に示すひし形状であってもよい。
【0016】
上記支持リング15は、金属材料からなる。金属材料としては、真鍮やステンレス等が挙げられる。支持リング15の大きさや形状は、振動膜16を支持できるものであれば特に限定されない。支持リング15としては、カプセル11の平面視形状が
図3に示す円状である場合、例えば、平面視したときに外径が3mm〜10mmで内径が2mm〜9mmのリング状のものを使用でき、厚みは、作製しようとする小型音響センサの大きさ(厚み)に応じて任意に設定できる。なお、上記リング状の支持リング15は、平面視したときの外形が円状であるが、支持リング15を平面視したときの外形は、円状に限定されず、楕円状、正方形状、長方形状、ひし形状等が挙げられ、上記カプセル11の平面視形状に応じて適宜選択すればよい。
【0017】
上記振動膜16は、音波によって振動する。この振動膜16には、耐熱性を有し、強度の高い高分子フィルムを用いることができる。具体的な材質としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のスーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられる。また、振動膜16としては、カプセル11の平面視形状が
図3に示す円状である場合、例えば、直径が3mm〜10mmの円状の平面視形状を有し、かつ、厚みが2μm〜4μmの円盤状のものを使用できる。なお、振動膜16の平面視形状は、円状に限定されず、楕円状、正方形状、長方形状、ひし形状等が挙げられ、上記カプセル11の平面視形状に応じて適宜選択すればよい。
【0018】
上記スペーサ17は、絶縁材料からなる。絶縁材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、熱硬化性ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の絶縁材料が挙げられる。スペーサ17の大きさや形状は、特に限定されない。スペーサ17としては、カプセル11の平面視形状が
図3に示す円状である場合、例えば、平面視したときに外径が3mm〜10mmで内径が2mm〜9mmのリング状のものを使用でき、厚みは、例えば、20μm〜30μmと設定できる。なお、上記リング状のスペーサ17は、平面視したときの外形が円状であるが、スペーサ17を平面視したときの外形は、円状に限定されず、楕円状、正方形状、長方形状、ひし形状等が挙げられ、上記カプセル11の平面視形状に応じて適宜選択すればよい。
【0019】
上記背極18は、振動膜16と共にコンデンサを形成し、音声信号を電流に変換する。この背極18は、金属材料からなり、厚みは、例えば0.1mm〜0.5mmである。背極18の形状は、上記カプセル11と同じ形状であればよく、
図1では、有底筒状(カップ状)であり、以下、背極18をカップ状背極という。また、カップ状背極18の平面視形状は、カプセル11の平面視形状が
図3に示す円状である場合、円状である。なお、カップ状背極18の平面視形状は、円状に限定されず、楕円状、正方形状、長方形状、ひし形状等が挙げられ、上記カプセル11の平面視形状に応じて適宜選択すればよい。
【0020】
上記カップ状背極18の外側表面には、陽極酸化処理又は化成処理により生成された酸化皮膜である絶縁層18aが形成されている。ここで、陽極酸化処理とは、電解液中に金属材料を入れ、これを陽極として弱い電流を流すことにより、該金属材料の表面を酸化させて酸化皮膜を生成する処理であり、具体例としては、アルマイト処理等が挙げられる。また、化成処理とは、電解をせずに、酸化剤を用いて化学的に金属材料の表面を酸化させて酸化皮膜を生成する処理であり、具体例としては、ベーマイト処理、リン酸塩処理、クロム酸塩処理等が挙げられる。これらの処理は、処理対象となる金属材料の種類に応じて適宜選択される。例えば、金属材料がアルミニウムである場合、アルマイト処理を施すことによって、アルミニウム表面に酸化皮膜を生成させることができる。通常、アルミニウムは、大気中の酸素と結合して自然に表面に薄い酸化皮膜(厚み:約0.0053μm)を生成するが、アルマイト処理によって人工的に生成された酸化皮膜は、厚みが1μm以上と厚く強固である。
【0021】
上記絶縁層18aの厚みは、1μm〜5μmであることが好ましく、より好ましくは3μm〜5μmである。絶縁層の厚みが薄くなりすぎると、割れが生じたり、陽極酸化処理又は化成処理のムラが発生したりして、回路としてショートするといった問題が生じる。一方、絶縁層の厚みが厚くなりすぎると、割れやヒビが生じやすく、回路としてショートするといった問題が生じる。
【0022】
上記カップ状背極18を構成する金属材料としては、アルミニウム、チタン、マグネシウム等が挙げられるが、アルミニウムが特に好ましい。アルミニウムは、絞り加工性に優れているからである。
【0023】
上記カップ状背極18の外側表面上には、エレクトレット誘電体膜19が形成されている。小型音響センサの薄型化のためには、エレクトレット誘電体膜19の厚みは50μm以下が好ましい。ただし、厚みが薄くなりすぎると、エレクトレット誘電体膜19の形成が困難になるため、10μm以上が好ましい。
【0024】
上記エレクトレット誘電体膜19を構成するエレクトレット用材料としては、例えば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル(MFA)等が挙げられる。
【0025】
ここで、エレクトレット誘電体膜19が形成されたカップ状背極18の作製方法を説明する。まず、基板の一主面に陽極酸化処理又は化成処理を施し、絶縁層を形成する。次いで、基板の絶縁層形成面上に、エレクトレット用材料からなるフィルムを熱融着させる。次いで、エレクトレット用材料からなるフィルムが外側になるように基板に絞り加工を施してカップ状に成型する。その後、エレクトレット用材料からなるフィルムに電子ビーム又はコロナ放電を照射することで、エレクトレット用材料からなるフィルムがエレクトレット化してエレクトレット誘電体膜になる。このようにして、本発明に用いるカップ状背極18が得られる。
【0026】
また、上記エレクトレット誘電体膜19が形成されたカップ状背極18の天面に複数の背極孔20を形成することで、音を振動膜16に伝達しやすくなる。
【0027】
上記配線基板14の一主面(
図1において上面)上には、IC素子22、ゲート25、接触片21が配置され、他方の主面(
図1において下面)上には、出力端子23、アース端子24が配置されている。ゲート25は、接触片21を介してカップ状背極18と電気的に接続している。
【0028】
なお、
図1では、カップ状背極18の外側表面にのみ絶縁層18aを設けた場合について示しているが、カップ状背極18の内側表面にも陽極酸化処理又は化成処理を施して絶縁層を設けてもよい。
図2に、カップ状背極18の両表面に絶縁層を設けた場合の小型音響センサの概略断面図を示す。
図2において、
図1と同一構成要素については同一符号を付している。
図2に示す小型音響センサの場合、カップ状背極18の内側表面にも陽極酸化処理又は化成処理により絶縁層18bが形成されているため、IC素子22とカップ状背極18との距離を近づけても接触不良が起こらず、小型音響センサのさらなる薄型化が可能となる。なお、絶縁層18bの厚みも、上記絶縁層18aと同様の範囲が好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例に基づいて本発明の小型音響センサの効果について詳細に説明する。
【0030】
(実施例1)
まず、厚みが0.2mmの基板(ここでは、アルミニウム薄板)を用意し、このアルミニウム薄板の一主面に陽極酸化処理としてのアルマイト処理を施し、絶縁層であるアルマイト層を形成した。アルマイト層の厚みは3μmであった。ここで、上記アルマイト処理は、アルミニウムを陽極とし、硫酸電解液中で電気分解をして化学反応により酸化皮膜を形成させた後、水蒸気による封孔処理を行うことにより、アルマイト層を形成した。また、アルマイト層の厚みは、日本工業規格(JIS)8680に規定される、うず電流式非破壊測定方法を用いて測定した。
【0031】
次に、上記アルミニウム薄板のアルマイト層形成面上に厚さ25μmのFEPフィルムを熱融着させた。次に、FEPフィルムが外側になるようにアルミニウム薄板に絞り加工を施してカップ状に成型した。次に、FEPフィルムに電子ビームを照射することで、外側表面上にエレクトレット誘電体膜が形成されたカップ状背極を得た。このカップ状背極を用いて
図1に示す小型音響センサを作製した。
【0032】
(実施例2)
絶縁層であるアルマイト層の厚みを1μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状背極を作製し、このカップ状背極を用いて小型音響センサを作製した。
【0033】
(実施例3)
絶縁層であるアルマイト層の厚みを5μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状背極を作製し、このカップ状背極を用いて小型音響センサを作製した。
【0034】
(実施例4)
カップ状背極の外側表面及び内側表面に絶縁層であるアルマイト層(厚み:3μm)を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状背極を作製し、このカップ状背極を用いて小型音響センサを作製した。
【0035】
(比較例1)
カップ状背極の外側表面に絶縁層であるアルマイト層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてカップ状背極を作製し、このカップ状背極を用いて小型音響センサを作製した。
【0036】
(比較例2)
カップ状背極として黄銅を用いたこと、及びカップ状背極の外側表面に絶縁層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして小型音響センサを作製した。
【0037】
(比較例3)
FEPフィルムを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして小型音響センサを作製した。
【0038】
次に、上記実施例1〜4及び上記比較例1〜3の小型音響センサの電気絶縁性、接着性、絞り加工性の評価を以下のようにして行った。
【0039】
電気絶縁性の評価は、カップ状背極をカプセル内に収容した後、カプセル外側とカップ状背極の内側にテスター用端子を接触させ、通電の有無を確認することにより行った。通電した場合は×、通電しなかった場合は○と評価した。
【0040】
基板とエレクトレット誘電体膜との接着性の評価は、JIS K6894 8.6に準拠した剥離試験(180度剥離試験)を行った後、目視でエレクトレット誘電体膜の剥離の有無を確認することにより行った。エレクトレット誘電体膜の剥離が一箇所以上見られた場合は×、剥離が全く見られなかった場合は○と評価した。なお、比較例3は、FEPフィルムを用いていないため、つまり、エレクトレット誘電体膜を有さないため、接着性の評価は行っていない。
【0041】
絞り加工性の評価は、カップ状背極の開放端部、つまり、カップ状背極の配線基板14(
図1)と接する部分において、損傷、エレクトレット誘電体膜の剥離等の有無や、平坦性を目視で観察することにより行った。損傷、剥離等が一箇所以上見られた場合や平坦性が不十分であった場合は×、損傷、剥離等が全く見られず、かつ、平坦性が良好であった場合は○と評価した。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から、少なくともカップ状背極の外側表面に絶縁層が形成されている実施例1〜4の小型音響センサは、カップ状背極の外側表面に絶縁層が形成されていない比較例1〜2に比べて、電気絶縁性、接着性、絞り加工性のいずれもが良好であることが分かる。
【0044】
また、エレクトレット誘電体膜を有さないが、カップ状背極の外側表面に絶縁層が形成されている比較例3の小型音響センサは、電気絶縁性及び絞り加工性は良好であったことから、カップ状背極の外側表面に絶縁層を設けることで、電気絶縁性及び絞り加工性を向上できることが分かる。