(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した特許文献1記載の天井構造では、見切材と目隠部材との間に隙間が存在するため、この隙間が空気の通り道となり、ほこりなどが付着し易いという問題点があった。
【0007】
この点、上記した特許文献2記載の構造のように主天井ボードと天井周辺ボードとの隙間に断熱材及びカーテンを設ければ隙間を塞ぐことができる。しかしながら、この特許文献2記載の構造においては、大地震が発生して横方向に揺れると、主天井下地及び主天井ボードの揺れに対する本来の動きを断熱材及びカーテンが妨げてしまい、主天井ボードが破損、破壊によって落下する恐れがあった。
【0008】
そこで、本発明は、側壁から間隔を隔てた位置で天井に吊り支持される吊天井を備えた耐震天井取付構造において、ほこりなどが付着し難くすることができるとともに、吊天井の揺れに対する動きが妨げられず、破損、破壊による吊天井の落下を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0010】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の耐震天井取付構造は、第1の吊天井と、前記第1の吊天井よりも低い位置に配置される第2の吊天井と、を少なくとも備え、
前記第1の吊天井と前記第2の吊天井との間に塞ぎ手段を設け
、前記塞ぎ手段は、前記第1の吊天井に固定された塞ぎ材ホルダーに取り付けられ、かつ、前記塞ぎ材ホルダーの下端と前記第2の吊天井の上面との間の距離よりも長く設定されたシート部を備え、前記シート部がL字状に折り曲げられて前記第2の吊天井に対して摺動可能に接触していることを特徴とする。
【0012】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0013】
すなわち、前記第1の吊天井及び前記第2の吊天井のうち、一方の吊天井は、
固定金具で固定されることで側壁に接合されており、他方の吊天井は、前記側壁に対して間隙を設けて配置されていることを特徴とする。
【0014】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1
又は2に記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0015】
【0016】
【0017】
すなわち、前記塞ぎ手段は、前記第1の吊天井の端縁付近に設けられた
前記塞ぎ材ホルダーに下向きに固定され、前記第2の吊天井の端縁に固定された見切材に対して摺動可能に接触していることを特徴とする。
【0018】
(請求項
4)
請求項
4に記載の発明は、上記した請求項1〜
3のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0019】
すなわち、前記
吊天井の下面を覆う天井材はアルミニウムスパンドレルで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記の通りであり、第1の吊天井と第2の吊天井とが別体かつ高さが異なるように設けられているため、地震が発生して横方向に揺れた場合でも、第1の吊天井と第2の吊天井との間に間隙が設けられていることにより互いに衝突しづらく、破損、破壊による吊天井の落下を防止することができる。
【0021】
また、第1の吊天井と第2の吊天井とに天井材が設けられているため、統一感が生まれ、意匠性が良い。
【0022】
また、第1の吊天井と第2の吊天井との間に塞ぎ手段を設けているため、間隙を塞ぎ手段で塞ぐことができ、美観を損なう事がない。
【0023】
また、塞ぎ手段を設けたことにより、第1の吊天井と第2の吊天井との間で気密性を保つことができ、空気の通りを少なくすることでほこりなどが付着し難くすることができる。
【0024】
なお、第1の吊天井及び前記第2の吊天井のうちの一方の吊天井は、前記野縁受け材が固定金具で固定されることで側壁に接合してもよい。このように構成すれば、吊天井が側壁と一体化するため、強固に固定することができる。このとき、他方の吊天井は、前記側壁に対して間隙を設けて配置すればよい。このように構成すれば、他方の吊天井を側壁から間隙を設けて配置することで、他方の吊天井が側壁に衝突しづらく、破損、破壊による吊天井の落下を防止することができる。
【0025】
また、前記塞ぎ手段は、前記第1の吊天井の端縁付近に設けられた塞ぎ手段固定部に下向きに固定され、前記第2の吊天井の端縁に固定された見切材に対して摺動可能に接触するようにしてもよい。このように構成すれば、塞ぎ手段は、第1の吊天井にのみ固定され、第2の吊天井に対しては固定されていないため、塞ぎ手段が第2の吊天井の動きを妨げることがない。
【0026】
また、前記天井材をアルミニウムスパンドレルで構成してもよい。このように構成すれば、見切材と天井材と同材質で形成することができ、統一感のある意匠を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、
図1〜7を参照しながら説明する。
【0029】
本実施形態に係る耐震天井取付構造は、
図1に示すように、第1の吊天井20Aと、この第1の吊天井20Aよりも低い位置に配置される第2の吊天井20Bと、を備えている。
【0030】
この第1の吊天井20A及び第2の吊天井20Bは、天井スラブ11に予め適宜間隔で取り付けられている吊りボルト12に支持金具24を介して固着される野縁受け材22と、前記野縁受け材22に直交する方向に固定される野縁材23と、前記野縁材23の下面に取り付けられる天井材21と、をそれぞれ備えている。
【0031】
支持金具24は、
図3及び
図4に示すように、上端部を吊りボルト12に固定されており、この支持金具24の下部には、上方に向けて開口する断面略コ字状の保持部24aが形成されている。そして、この断面略コ字状の保持部24aの内側に野縁受け材22を係合させることで、野縁受け材22を支持するように形成されている。
【0032】
野縁受け材22は、鋼板やステンレス板をコ字状に加工して形成された長尺材である。この野縁受け材22には、
図4に示すように、長手方向に所定間隔で野縁材23を保持するための野縁材保持具25が取り付けられている。野縁受け材22はこの野縁材保持具25を介して野縁材23を上方から吊支持する。
【0033】
野縁材保持具25は、野縁受け材22に対して上から覆うように取り付けられる断面コ字状の部材であり、下部両側が
図4に示すような切欠き形状となっている。野縁材保持具25の下部両側には、この切欠き形状が設けられることで、上方に向けて突出する爪状の係合部25aが形成されている。
【0034】
野縁材23は、鋼板やステンレス板を加工して形成される長尺材であり、
図4に示すように、上方に向けて開口するとともに、この開口部には開口縁が折り曲げ加工されることで係合フック23aが形成されている。この係合フック23aが上述した野縁材保持具25の係合部25aに係合することで、野縁材23は野縁受け材22の下部に固定されている。
【0035】
天井材21は、吊天井20A、20Bの下面を覆うように野縁材23の下部に固定されるものであり、本実施形態においてはアルミニウム製の押出型材を使用している。
【0036】
ここで、第1の吊天井20Aは、
図3に示すように、野縁受け材22がL字形の固定金具26で固定されることで側壁10に接合され、側壁10と一体になる。このとき、天井材21と側壁10との間の間隙には廻り縁材27が取り付けられ、天井材21と側壁10との間の間隙を埋めるとともに、天井材21の端部が露出しないように被覆している。
【0037】
また、第2の吊天井20Bは、
図3に示すように、側壁10に対して間隙を設けて配置されている。この第2の吊天井20Bの側縁には、
図4及び
図6に示すような吊天井見切材30が固定される。この吊天井見切材30は、第2の吊天井20Bの側面を覆うように略垂直な面を形成する背板部31と、この背板部31の上端から水平に延設された第1延出部32と、この第1延出部32よりも下方に第1延出部32と略平行に延設された第2延出部33と、この第2延出部33よりもさらに下方に第2延出部33と略平行に延設された第3延出部34と、を備えている。この吊天井見切材30は、本実施形態においてはアルミニウム製の押出型材を使用している。
【0038】
第1延出部32は、
図4及び
図6に示すように、第2の吊天井20Bの上面よりも上方において、第2の吊天井20Bの上面の一部にオーバーラップするように配設され、第2の吊天井20Bの端縁を覆うものである。この第1延出部32の上面は水平な面を形成しており、後述する塞ぎ材50が摺動可能となっている。
【0039】
第2延出部33は、
図4及び
図6に示すように、野縁材23と天井材21との間に差し込まれた状態で野縁材23の下面にネジ39で固定されるものである。このように第2延出部33が野縁材23に固定されることで、吊天井見切材30が第2の吊天井20Bに固定されている。
【0040】
第3延出部34は、第1延出部32及び第2延出部33よりも出量が小さく形成されており、端部が上向きのL字状に屈折した形状となっている。この第3延出部34は、
図4及び
図6に示すように、天井材21の下面よりも下方において、天井材21の下面の一部にオーバーラップするように配設され、天井材21の端縁を覆っている。これにより、天井材21の端部は、第2延出部33と第3延出部34との間に配置されて外部から視認できないようになっている。なお、
図4及び
図6に示すように、背板部31の内面には、第1延出部32の下面と第2延出部33の上面から突出した対の突片35と背板部31の内面へ挿入溝を設け、この挿入溝に、長手方向へ延びる吊天井見切材30同士を連結する為のジョイント材38を挿入する。
【0041】
第1の吊天井20Aは、上記した吊天井見切材30よりも上方に配置されており、吊天井見切材30の第1延出部32の直上部には、塞ぎ材ホルダー40が設けられている。この塞ぎ材ホルダー40は、ネジ44によって第1の吊天井20Aの下面に固定されている。
【0042】
塞ぎ材ホルダー40は、断面略L字形の長尺部材であり、第1の吊天井20Aの下面に当接する水平部41と、この水平部41の端部から下方へと延設された下垂部42と、を備えている。下垂部42の下端部には下方に向けて開口する保持溝43が形成されている。
【0043】
ところで、本実施形態に係る耐震天井取付構造においては、高さの違う2種類の吊天井が設けられているため、地震が発生して横方向に揺れた場合でも、第1の吊天井20Aと第2の吊天井20Bとの間に間隙が存在し、また、第1の吊天井20Aと吊天井見切材30との間にも間隙が存在するため、第1の吊天井20Aが第2の吊天井20Bや吊天井見切材30に衝突しにくく、吊天井20A、20Bが落下する問題が発生しにくい。
【0044】
しかも、本実施形態においては、
図3及び
図5に示すように、側壁10と吊天井見切材30との間の間隙S1,S3は、吊天井見切材30と第2の吊天井20Bを支持する支持金具24との間の間隙S2,S4よりも広くなっている。これにより、大地震が発生して第2の吊天井20Bが横方向に揺れても、側壁10に吊天井見切材30が衝突しづらく、破損、破壊による吊天井20A、20Bの落下を防止することができる。なお、間隙S1
,S3の寸法は、間隙S2,S4よりも広い態様に限らず、間隙S2,S4と同寸法としてもよい。
【0045】
そして、本実施形態においては、第1の吊天井20Aと第2の吊天井20Bとの間には塞ぎ手段としての塞ぎ材50が設けられている。この塞ぎ材50を設けることで、第1の吊天井20Aと吊天井見切材30との間で気密性を保って空気の通りを少なくすることでほこりなどを付着し難くしている。
【0046】
塞ぎ材50は、
図7に示すように、塩化ビニル等で形成された可撓性のシート部52と、このシート部52の一端縁に設けられた嵌入部51と、を備えており、この嵌入部51を塞ぎ材ホルダー40の保持溝43に挿入して係合させることで塞ぎ材ホルダー40の先端付近(第1の吊天井20Aの端縁付近)に下向きに取り付けられる。なお、保持溝43と嵌入部51との接触面には、
図4及び
図6に示すように、抜け止め方向に互いに噛合する逆止爪形状が形成されており、塞ぎ材ホルダー40に取り付けた塞ぎ材50が容易に脱落しないように形成されている。
【0047】
ここで、
図3及び
図5に示すように、塞ぎ材ホルダー40の先端は吊天井見切材30の第1延出部32の上面に位置しており、また、塞ぎ材50のシート部52の長さは塞ぎ材ホルダー40の下垂部42の下端と吊天井見切材30の第1延出部32の上面との間の距離よりも長く設定されている。このため、塞ぎ材50を塞ぎ材ホルダー40の先端付近に下向きに固定すると、塞ぎ材50のシート部52はL字状に折り曲げられて吊天井見切材30の第1延出部32の上面に載った状態となり、塞ぎ材ホルダー40と吊天井見切材30との間が塞ぎ材50のシート部52でほぼ完全に塞がれる。このとき、塞ぎ材50のシート部52は吊天井見切材30に対して固定されておらず、吊天井見切材30の第1延出部32の上面で吊天井見切材30に摺動可能に接触しているだけのため、もしこの状態で地震などの揺れが発生すると、塞ぎ材50のシート部52は吊天井見切材30の第1延出部32の上面で滑りながら移動することとなる。しかも、シート部52は接触面の形状に合わせて形状を変化させることができるので、揺れの方向にかかわらず、第1の吊天井20Aと吊天井見切材30との間を塞いだ状態を維持することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の吊天井20Aと第2の吊天井20Bとが別体かつ高さが異なるように設けられているため、地震が発生して横方向に揺れた場合でも、第1の吊天井20Aと第2の吊天井20Bとの間に間隙が設けられていることにより互いに衝突しづらく、破損、破壊による吊天井20A、20Bの落下を防止することができる。
【0049】
また、第1の吊天井20Aと第2の吊天井20Bとに天井材21が設けられているため、統一感が生まれ、意匠性が良い。
【0050】
また、第1の吊天井20Aと第2の吊天井20Bとの間に塞ぎ材50を設けているため、間隙を塞ぎ材50で塞ぐことができ、美観を損なう事がない。
【0051】
また、塞ぎ材50を設けたことにより、第1の吊天井20Aと第2の吊天井20Bとの間で気密性を保つことができ、空気の通りを少なくすることでほこりなどが付着し難くすることができる。
【0052】
また、第1の吊天井20Aは、野縁受け材22が固定金具26で固定されることで側壁10に接合されており、第1の吊天井20Aが側壁10と一体化するため、強固に固定することができる。
【0053】
また、第2の吊天井20Bは、前記側壁10に対して間隙を設けて配置されているため、第2の吊天井20Bが側壁10に衝突しづらく、破損、破壊による吊天井20A、20Bの落下を防止することができる。
【0054】
また、塞ぎ材50は、前記第1の吊天井20Aの端縁付近に設けられた塞ぎ材ホルダー40に下向きに固定され、前記第2の吊天井20Bの端縁に固定された吊天井見切材30に対して摺動可能に接触している。このため、塞ぎ材50は、第1の吊天井20Aにのみ固定され、第2の吊天井20Bに対しては固定されていないため、塞ぎ材50が第2の吊天井20Bの動きを妨げることがない。
【0055】
また、天井材21をアルミニウムスパンドレルで構成しているため、吊天井見切材30と天井材21と同材質で形成することができ、統一感のある意匠を提供できる。
【0056】
以上のように、本実施形態1は、機能性と意匠性を兼ね備えている。
【0057】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、
図8を参照しながら説明する。本実施形態の特徴点は、側壁10に固定する吊天井の高さを、側壁10に固定しない吊天井の高さよりも低く設定した点にある。
【0058】
すなわち、上記した第1の実施形態においては高い方の吊天井(第1の吊天井20A)を固定金具で固定して側壁10に接合したが、これに限らず、
図8に示すように、低い方の吊天井(第2の吊天井20B)を固定金具で固定して側壁10に接合してもよい。この場合には、第1の吊天井20Aを側壁10に対して間隙を設けて配置する。
【0059】
このような構造を採用した場合でも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について、
図9〜14を参照しながら説明する。本実施形態の特徴点は、第1の吊天井20Aと第2の吊天井20Bとで下り天井を構成した点にある。
【0061】
なお、本実施形態の基本的構成は第1の実施形態と相違しないため、本実施形態を説明するに当たっては重複する記載を避けて相違箇所のみについて説明する。
【0062】
本実施形態に係る第2の吊天井20Bは、
図9に示すように、側壁10から離隔した他方の端部において略垂直な立ち上がりを備えており、この立ち上がりによって下り壁が形成されている。具体的には、
図11及び
図13に示すように、第2の吊天井20Bの他方の端部において、出隅用廻り縁材28を介して天井材21が略垂直に立ち上がり、垂直な壁面(下り壁)が形成されている。
【0063】
なお、この出隅用廻り縁材28で被覆することにより、天井材21の端縁が露出しないようになっている。
【0064】
また、この下り壁の上端部には吊天井見切材30が固定されている。この吊天井見切材30は
図12及び
図14に示すように、第1及び第2の実施形態において使用した吊天井見切材30を90度回転させて使用したものであり、背板部31が上面を形成するように第
2の吊天井20
Bに取り付けられている。
【0065】
本実施形態においても、第1の吊天井20Aの端縁付近には塞ぎ材ホルダー40が設けられており、この塞ぎ材ホルダー40に塞ぎ材50が取り付けられることで、第1の吊天井20Aと第2の吊天井20Bとの間には塞ぎ材50が設けられている。そして、第1の実施形態と同様に、塞ぎ材50のシート部52はL字状に折り曲げられて吊天井見切材30の第1延出部32の上面に載った状態となり、吊天井見切材30の上面で摺動可能に接触している。
【0066】
上記の構成によれば、第1の吊天井20Aと第2の吊天井20Bとで下り天井を構成することができ、このような下り天井構造においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
なお、吊天井見切材30は、向きを変えるだけで第1の実施形態の構造にも第2の実施形態の構造にも第3の実施形態にも使用可能であるので、それぞれの実施形態に応じたものを用意する必要がない。すなわち、部材点数を減らすことができ、製造コストを低減させることができる。