特許第6029375号(P6029375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6029375噴霧ノズル及びそれを備えたバーナ並びに燃焼装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029375
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】噴霧ノズル及びそれを備えたバーナ並びに燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23D 11/38 20060101AFI20161114BHJP
   B05B 7/04 20060101ALI20161114BHJP
   B05B 1/26 20060101ALI20161114BHJP
   F23D 11/12 20060101ALI20161114BHJP
   F23D 11/10 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   F23D11/38 E
   B05B7/04
   B05B1/26 A
   F23D11/12
   F23D11/10 B
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-173996(P2012-173996)
(22)【出願日】2012年8月6日
(65)【公開番号】特開2014-31990(P2014-31990A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 洋文
(72)【発明者】
【氏名】倉増 公治
(72)【発明者】
【氏名】沖本 英雄
(72)【発明者】
【氏名】折井 明仁
(72)【発明者】
【氏名】越智 健一
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−159113(JP,A)
【文献】 特開平10−005633(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/096318(WO,A1)
【文献】 特開平06−299932(JP,A)
【文献】 実開昭61−53639(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0116900(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 11/10
F23D 11/12
F23D 11/38
B05B 1/26
B05B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧流体が流れる少なくとも2つの噴霧流体流路と、噴霧用媒体が流れ、それぞれの前記噴霧流体流路と第1の合流部で合流する少なくとも2つの噴霧用媒体流路と、それぞれの前記第1の合流部で合流した前記噴霧流体と噴霧用媒体の混合流体が流れると共に、互いに対向して形成され、前記混合流体が対向した流れとなり衝突し合流する第2の合流部を有する少なくとも2つの混合流体流路と、前記第2の合流部で合流した前記混合流体を噴出させる出口孔とを備え、
前記出口孔は、前記混合流体流路に対して交差する溝部を前記第2の合流部の下流側に有し、前記交差部分を通り前記混合流体が噴出する構造であり、
前記混合流体流路には、前記第1の合流部から前記第2の合流部までの間に、前記混合流体の流れ方向が変わる屈曲部が形成されていることを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項2】
噴霧流体を噴霧用媒体と混合して微粒化させる噴霧ノズルであり、前記噴霧ノズルの入口に噴霧流体流路と噴霧用媒体流路を有し、該噴霧流体流路と噴霧用媒体流路は、前記噴霧ノズル内で互いの流路が合流する第1の合流部を有すると共に、前記噴霧流体と噴霧用媒体が合流した混合流体流路を前記噴霧ノズル内に複数有し、前記混合流体流路の一部は互いに対向して前記混合流体が流れ、かつ、前記噴霧ノズルの出口部で対向した流れが衝突し合流する第2の合流部を有し、該第2の合流部の直後に出口孔を備え、
前記出口孔は、前記混合流体流路に対して交差する溝部を前記第2の合流部の下流側に有し、前記交差部分を通り前記混合流体が噴出する構造であり、
前記混合流体流路には、前記第1の合流部から前記第2の合流部までの間に、前記混合流体の流れ方向が変わる屈曲部が形成されていることを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の噴霧ノズルにおいて、
前記第1の合流部から第2の合流部までの間の前記混合流体流路に形成されている屈曲部は、前記混合流体の流れ方向の変更角度が30乃至120度であることを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の噴霧ノズルにおいて、
前記噴霧ノズルに出口孔を複数有すると共に、前記第2の合流部を複数有し、前記第1の合流部から前記第2の合流部までの間に、前記複数の第2の合流部を接続する連絡流路を有することを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項5】
請求項4に記載の噴霧ノズルにおいて、
前記連絡流路は、前記噴霧ノズルの中央部に位置する2つの混合流体流路が、前記出口孔までの途中で両者を互いに連絡する連絡管と、前記噴霧ノズルの外周側に位置する2つの混合流体流路が、前記出口孔までの途中で両者を互いに連絡する分岐管とから成ることを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の噴霧ノズルにおいて、
前記噴霧ノズルに出口孔を複数有すると共に、前記第1の合流部の下流側で、前記混合気体流路が複数に分岐され、該分岐された混合流体流路が、各々異なる前記出口孔に接続される流路を形成することを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項7】
請求項6に記載の噴霧ノズルにおいて、
前記噴霧ノズルの出口孔は、前記噴霧ノズルの中心軸に対し同心円状に設けられ、かつ、前記分岐された混合流体流路から前記第2の合流部までの流路が、前記噴霧ノズルの中心軸に対し円周状に形成されていることを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の噴霧ノズルにおいて、
前記噴霧ノズルの出口孔には、前記噴霧ノズルからの噴霧の形成方向と同じ方向に溝部が形成されていることを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項9】
請求項8に記載の噴霧ノズルにおいて、
前記溝部と前記混合流体流路との交差部が、前記出口孔であることを特徴とする噴霧ノ
ズル。
【請求項10】
液体燃料を燃料として利用するバーナであって、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の噴霧ノズルを用い、前記液体燃料を前記噴霧流体として前記噴霧ノズルの先端部に供給し、蒸気又は圧縮空気を前記噴霧用媒体として前記噴霧ノズルの先端部に供給することを特徴とするバーナ。
【請求項11】
固体燃料とその搬送気体を噴出する燃料ノズルと、液体燃料を噴霧する噴霧ノズルと、前記固体燃料や液体燃料を燃焼させる燃焼用気体を噴出する燃焼用気体ノズルを有するバーナであり、
前記噴霧ノズルとして、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の噴霧ノズルを用い、前記液体燃料を前記噴霧流体として前記噴霧ノズルの先端部に供給し、蒸気又は圧縮空気を前記噴霧用媒体として前記噴霧ノズルの先端部に供給することを特徴とするバーナ。
【請求項12】
固体燃料と液体燃料を燃焼させる燃焼装置であって、
燃料を燃焼させる燃焼炉と、前記燃焼炉に固体燃料を供給する固体燃料供給系統と、前記燃焼炉に液体燃料を供給する液体燃料供給系統と、前記燃焼炉に燃焼用気体を供給する燃焼用気体供給系統と、前記燃料供給系統と前記燃焼用気体供給系統が接続し前記燃焼炉の炉壁に設けられた前記固体燃料や液体燃料を燃焼させる複数のバーナと、前記燃焼炉で発生した燃焼排ガスから熱回収する熱交換器と、前記熱回収された燃焼排ガスを前記燃焼炉の外部へ供給する煙道とを有し、前記バーナの1つは、請求項10又は11に記載のバーナを用いたことを特徴とする燃焼装置。
【請求項13】
化石燃料を燃焼させる燃焼装置であって、
化石燃料を燃焼させる燃焼炉と、前記燃焼炉に化石燃料を供給する燃料供給系統と、前記燃焼炉に燃焼用気体を供給する燃焼用気体供給系統と、前記燃料供給系統と前記燃焼用気体供給系統が接続し前記燃焼炉の炉壁に設けられた化石燃料を燃焼させるバーナと、前記燃焼炉で発生した燃焼排ガスから熱回収する熱交換器と、前記熱回収された燃焼排ガスを前記燃焼炉の外部へ供給する煙道とを有し、前記バーナとして、化石燃料として液体燃料を用いた請求項10に記載のバーナを用いたことを特徴とする燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は噴霧ノズル及びそれを備えたバーナ並びに燃焼装置に係り、特に、噴霧用媒体(気体)を利用して噴霧流体(液体)を微粒化するものに好適な噴霧ノズル及びそれを備えたバーナ並びに燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、発電用のボイラのように、高出力、高負荷の燃焼装置では、燃料を水平燃焼させる浮遊燃焼方式が多く採用されている。燃料として液体燃料を用いる場合、燃料を噴霧ノズルで微粒化し、燃焼装置の火炉内を浮遊させて燃焼している。
【0003】
上記のような噴霧ノズルは、液体燃料を主燃料とする燃焼装置の他、微粉炭のように固体燃料を主燃料として使用する燃焼装置において、起動や火炎安定化用の補助燃料の燃焼用に設置されることが多い。
【0004】
液体燃料の燃焼では、噴霧粒子径が大きいと燃焼反応が遅れ、燃焼効率の低下や煤塵、一酸化炭素、窒素酸化物が発生し易くなる。また、液体燃料は、燃焼用空気との混合が悪く、噴霧粒子の周囲の燃焼用空気が不足すると、煤塵や一酸化炭素が発生し易くなる。
【0005】
このため、液体燃料の燃焼では、微粒化と燃焼用空気との混合に留意する必要がある。また、高出力、高負荷の燃焼装置では、噴霧ノズル当たりの液体燃料の噴霧量を増加させた、いわゆる大容量化も求められる。
【0006】
噴霧ノズルの形式として、噴霧流体の他に、微粒化用の噴霧用媒体として空気や蒸気を供給し、噴霧流体と混合することで微粒化する二流体噴霧方式がある。
【0007】
この二流体噴霧方式は、噴霧流体のみの噴霧と比べて、大容量の噴霧でも微粒化が良好であり、発電用のボイラ等の高負荷の燃焼装置で一般に使用されているが、噴霧用媒体の使用量及び噴霧の際の噴霧流体や噴霧用媒体の加圧量を低減することが課題である。
【0008】
例えば、噴霧用媒体として蒸気を用いる場合、燃焼装置内に投入された蒸気は、燃焼排ガス中の水分となる。この水分により、排ガス量が増加すると燃焼装置での熱効率が低下する。
【0009】
このため、液体燃料の微粒化を妨げない範囲で、蒸気の使用量を低減することが望ましい。また、噴霧の際に噴霧流体や噴霧用媒体を加圧するが、その加圧量を減らすとエネルギー消費を低減できる。
【0010】
上記の課題を解決するため、二流体噴霧方式においては、噴霧用媒体の混合方法等が検討されてきた。
【0011】
このうち、噴霧流体と噴霧用媒体の混合後の混合流体を、噴霧ノズルの先端部に設けられた出口孔近傍で対向させて供給し、対向した混合流体の流れを衝突させることで微粒化を促進させる一例が、特許文献1に記載されている。
【0012】
上述した特許文献1では、噴霧用媒体を噴霧ノズル出口孔の上流側の流路にて噴霧流体と混合させ、混合流体を出口孔近傍で衝突させている。噴霧用媒体と噴霧流体の混合流体とすることで、噴霧流体の衝突力は、単独の場合よりも強まり微細化される。
【0013】
また、噴霧ノズル当たりの液体燃料の噴霧量を増加させる大容量化と液体燃料の微粒化を両立させる方法としては、噴霧ノズルの先端部に設けられた出口孔を増やす方法が一般的である。噴霧ノズルの出口孔を増やすことで、個々の出口孔の寸法を大きくすることなく、大容量化ができる。
【0014】
この噴霧ノズルの出口孔を複数有する噴霧ノズルの例として、特許文献2を挙げることができる。特許文献2には、噴霧流体と噴霧用媒体を流路の途中で混合させる、いわゆる中間混合型の噴霧ノズルの例が記載されている。
【0015】
また、噴霧流体と噴霧用媒体を、噴霧ノズル出口孔の上流側の空間で混合させる、いわゆる内部混合方式の噴霧ノズルの例が、特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平9-239299号公報
【特許文献2】特開昭62-112905号公報
【特許文献3】特開昭62-186112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記した特許文献1に記載されている二流体噴霧ノズルは、噴霧ノズルの内部に、噴霧流体(液体)の流路と、その外周位置に噴霧用媒体(気体)の流路を設けている。噴霧流体と噴霧用媒体の流路は、噴霧ノズルの先端部に設けられた出口孔を囲む隔壁により流れ方向が変わり、両方の流路が交差して噴霧流体と噴霧用媒体が混合し、この混合流体の流路が、噴霧ノズルの出口孔近傍で対向して設けられる構成となっている。
【0018】
このとき噴霧流体は、以下の3つの効果により微粒化が進む。
【0019】
(1)噴霧流体の流路が噴霧用媒体の流路と交差し、両者が合流する合流部で、隔壁に衝突することによる微粒化。
【0020】
(2)噴霧流体と噴霧用媒体との混合による微粒化。
【0021】
(3)対向して流れる混合流体が、噴霧ノズルの出口孔近傍で衝突することによる微粒化。
【0022】
しかしながら、上記(1)及び(2)は、一方を強めようとすると他方が弱まる関係であり、相反する項目である。即ち、噴霧流体の運動量を高め(1)の効果を強めると、噴霧流体に比べ噴霧用媒体の運動量が相対的に弱まり、混合が遅れることで(2)の効果が弱まる。逆に、噴霧用媒体の流量や流速を高め(2)の効果を強めると、噴霧流体が隔壁に衝突し難くなり(1)の効果が弱まる。
【0023】
更に、噴霧流体と噴霧用媒体の混合後に、噴霧ノズルの出口孔から噴出するまでの距離が短く、両者が均一に混合し難い課題がある。両者が均一に混合しない場合、噴霧用媒体の比率が小さい部分では微粒化が悪化する。この場合、微粒化の促進には、噴霧用媒体の使用量を増加或いは加圧力を高める必要が生じる。
【0024】
次に、多孔化による噴霧ノズル当たりの液体燃料の噴霧量を増加させる大容量化の課題として、噴霧ノズル出口孔の一部が閉塞した際の微粒化性能の悪化や流路の閉塞が挙げられる。
【0025】
以下、これについて、上述した特許文献2及び3を例に説明する。
【0026】
即ち、特許文献2に記載されている中間混合型の場合は、噴霧ノズル出口孔の1つが、噴霧流体や噴霧用媒体中の不純物や堆積物により閉塞又は一部が閉塞すると、閉塞した出口孔に接続する噴霧流体や噴霧用媒体の流路は、流れが停止又は遅くなる。
【0027】
噴霧流体や噴霧用媒体の流路の流れが停止又は遅くなると、噴霧流体として流れる液体燃料は、燃焼装置内からの放射熱により加熱され、液体燃料中の固形分が析出することがある。液体燃料中の固形分が析出すると流路が閉塞されてしまい、流路の上流側まで閉塞区間が拡大し、メンテナンスがし難くなる。
【0028】
一方、特許文献3に記載されている内部混合型の場合は、噴霧ノズル出口孔の1つが閉塞しても、噴霧流体や噴霧用媒体は他の出口孔から噴出するので、上流側の流路まで閉塞する可能性は小さい。
【0029】
しかし、特許文献3は、噴霧流体と噴霧用媒体の混合する空間(混合室)が広いため、噴霧ノズル出口孔の一部が閉塞すると、混合室内の流動状態が変わり、噴霧流体と噴霧用媒体の比率を一定に保つことが難しい。
【0030】
このため、噴霧ノズル出口孔により、混合流体に占める噴霧用媒体の比率が異なり、微粒化特性も変わってしまうという課題がある。
【0031】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、噴霧流体の微粒化の促進及び噴霧用媒体の使用量の低減と加圧力の低減を両立させることのできる噴霧ノズル及びそれを備えたバーナ並びに燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の噴霧ノズルは、上記目的を達成するために、噴霧流体が流れる少なくとも2つの噴霧流体流路と、噴霧用媒体が流れ、それぞれの前記噴霧流体流路と第1の合流部で合流する少なくとも2つの噴霧用媒体流路と、それぞれの前記第1の合流部で合流した前記噴霧流体と噴霧用媒体の混合流体が流れると共に、互いに対向して形成され、前記混合流体が対向した流れとなり衝突し合流する第2の合流部を有する少なくとも2つの混合流体流路と、前記第2の合流部で合流した前記混合流体を噴出させる出口孔とを備え、前記出口孔は、前記混合流体流路に対して交差する溝部を前記第2の合流部の下流側に有し、前記交差部分を通り前記混合流体が噴出する構造であり、前記混合流体流路には、前記第1の合流部から前記第2の合流部までの間に、前記混合流体の流れ方向が変わる屈曲部が形成されていることを特徴とする。
【0033】
また、本発明のバーナは、上記目的を達成するために、液体燃料を燃料として利用するバーナであって、上記構成の噴霧ノズルを用い、前記液体燃料を前記噴霧流体として前記噴霧ノズルの先端部に供給し、蒸気又は圧縮空気を前記噴霧用媒体として前記噴霧ノズルの先端部に供給するか、
或いは、固体燃料とその搬送気体を噴出する燃料ノズルと、液体燃料を噴霧する噴霧ノズルと、前記固体燃料や液体燃料を燃焼させる燃焼用気体を噴出する燃焼用気体ノズルを有するバーナであり、前記噴霧ノズルとして、上記構成の噴霧ノズルを用い、前記液体燃料を前記噴霧流体として前記噴霧ノズルの先端部に供給し、蒸気又は圧縮空気を前記噴霧用媒体として前記噴霧ノズルの先端部に供給することを特徴とする。
【0034】
また、本発明の燃焼装置は、上記目的を達成するために、固体燃料と液体燃料を燃焼させる燃焼装置であって、燃料を燃焼させる燃焼炉と、前記燃焼炉に固体燃料を供給する固体燃料供給系統と、前記燃焼炉に液体燃料を供給する液体燃料供給系統と、前記燃焼炉に燃焼用気体を供給する燃焼用気体供給系統と、前記燃料供給系統と前記燃焼用気体供給系統が接続し前記燃焼炉の炉壁に設けられた前記固体燃料や液体燃料を燃焼させる複数のバーナと、前記燃焼炉で発生した燃焼排ガスから熱回収する熱交換器と、前記熱回収された燃焼排ガスを前記燃焼炉の外部へ供給する煙道とを有し、前記バーナの一つは、上記構成のバーナを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、噴霧流体の微粒化の促進及び噴霧用媒体の使用量の低減と加圧力の低減を両立させることのできる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の噴霧ノズルを用いたバーナの概略構成を示す断面図である。
図2】本発明の噴霧ノズルを備えた燃焼装置の概略構成を示す図である。
図3】本発明の噴霧ノズルの実施例1を示し、噴霧ノズル先端部の断面図である。
図4図3の縦断面図である。
図5】本発明の噴霧ノズルの実施例1における微粒化性能の一例を示し、混合流体流路の屈曲部変更角度と噴霧の平均粒子径及び圧力損失比率の関係を示す特性図である。
図6】本発明の噴霧ノズルの実施例2を示し、噴霧ノズル先端部の断面図である。
図7図6の断面図である。
図8】本発明の噴霧ノズルの実施例3を示し、噴霧ノズル先端部の平面図である。
図9図8のA−A線に沿う断面図である。
図10図8のB−B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の噴霧ノズル及びそれを備えたバーナ並びに燃焼装置を説明する。尚、各実施例において、同一部品には同一符号を使用する。
【実施例1】
【0038】
図1に本発明の噴霧ノズルを備えたバーナの一例を、図2にそのバーナを備えた燃焼装置の一例をそれぞれ示す。
【0039】
図1に示す如く、本実施例のバーナ20は、その中心に噴霧ノズル1と噴霧流体(液体燃料)及び噴霧用媒体(蒸気又は圧縮空気等)が流れる中心軸21を有し、該中心軸21の先端近くには、火炎安定用の障害物22を備えている。そして、噴霧ノズル1からは、燃料が噴射されて扇型の噴霧23が形成される。尚、障害物22としては、旋回流発生器やスリットを有する邪魔板などが一般的である。
【0040】
一方、燃焼用空気は、ウインドボックス24から3つの流路に分かれて供給される。即ち、3つの流路とは、バーナ20の中心の噴霧ノズル1に近い方から1次流路25、2次流路26、3次流路27であり、この1次流路25、2次流路26、3次流路27から、それぞれ1次空気28、2次空気29、3次空気30が燃焼用空気として火炉内31に噴出するものである。
【0041】
また、燃焼用空気は、旋回流発生器32、33やガイド板34により燃焼用空気の噴出方向が変えられて、煤塵やNOxの発生が抑制されている。尚、燃焼用空気は、流路にそれぞれ設けられたダンパ(図示せず)にて、その流量が制御されている。
【0042】
更に、バーナ20は火炉壁35に接続されており、火炉壁35には伝熱管36を設けて熱回収が行われている。このバーナ20は、図2に示すように、火炉壁35に複数個(図2では2箇所)設置され、それぞれのバーナ20には、燃焼用空気供給系統41と液体燃料供給系統42及び噴霧用媒体供給系統43が接続されている。
【0043】
本実施例では、燃焼用空気供給系統41は、バーナ20に接続する配管45と、その下流側の空気供給口44に接続する配管46に分岐しており、各々の配管45、46には、流量調節弁(図示せず)が接続されている。また、液体燃料供給系統42と噴霧用媒体供給系統43は、それぞれの上流側に圧力や流量を調整する供給器(図示せず)が接続され、その下流端には、噴霧ノズル1が設置されている。
【0044】
そして、本実施例では、噴霧ノズル1が、噴霧流体と噴霧用媒体とを混合する混合部から出口孔の間の混合流体流路に、流れ方向が変化する屈曲部を設けたことを特徴としている。
【0045】
以下、図3及び図4を用いて、本実施例の噴霧ノズル1について説明する。
【0046】
図3に示すように、本実施例での噴霧流体2と噴霧用媒体3は、噴霧ノズル1を構成する独立した噴霧流体流路4、5と噴霧用媒体流路6、7を通り、噴霧流体流路4、5の途中で混合される。この噴霧流体2と噴霧用媒体3の混合流体8は、互いに対向して流れる混合流体流路9、10を通り、噴霧ノズル1の出口孔11近傍にて衝突して、出口孔11から噴出する。
【0047】
出口孔11から噴出する混合流体8は、出口孔11近傍での衝突により混合流体流路9、10の流れ方向(混合流体流路が伸びる方向)に対し、直角方向に扇型の噴霧が形成される。噴霧ノズル1の出口孔11には、扇型噴霧の形成方向と同じ方向に溝部12が形成されており、この溝部12と混合流体流路9、10との交差部が出口孔11となる。
【0048】
噴霧流体2は噴霧用媒体3との混合により微粒化する他、出口孔11で混合流体8の衝突により薄い液膜となり、出口孔11から噴出後に周囲の気体とのせん断力により液膜が分裂し、微粒化する。
【0049】
このように、流体の衝突力により微粒化する噴霧方式を、一般にファンスプレー式噴霧という。
【0050】
ファンスプレー式噴霧では、出口孔11の近傍で、互いに対向している流混合流体流路9、10を流れる混合流体8が衝突することで、直角方向に拡がるため、噴霧の運動量は低下する。特に、噴霧の外周部分では噴霧が拡がり易く、薄い液膜が形成されるので、微粒子(直径100μm未満)が多くなる。運動量が低いため微粒子は噴霧ノズル近傍に留まりやすくなる。直径で100μm未満、できれば50μm以下に微粒化させた粒子(以下、微粒子と記す)は、体積に占める表面積が大きく、炉内からの熱放射により昇温して燃焼し易い。
【0051】
このため、これらの微粒子を噴霧ノズル1の近傍に滞留させることで、噴霧の着火が早まり、火炎の安定化や燃焼反応の促進に寄与する。
【0052】
尚、微粒化の程度は、混合流体の圧力や噴霧用媒体量(噴霧流体に対する噴霧用媒体の割合)により調整することができる。
【0053】
一方、ファンスプレー式噴霧の中央部分は、外周部分に対して流量が多く、噴霧が拡がり難いため、外周部分に比べて厚い液膜が形成される。このため、大粒子(直径100〜300μm)が多い。大粒子は微粒子に比べて運動量が高く、離れた位置を流れる燃焼用空気と混合し易いものの、微粒子に比べて燃焼反応は遅れる。
【0054】
このため、混合流体の衝突だけでなく、噴霧用媒体との混合により微粒化を促進する必要がある。
【0055】
しかしながら、噴霧流体2と噴霧用媒体3は、密度や粘度が異なるため、混合し難いことがある。特に、混合流体流路9、10が短く、また、直線状の場合、両者が混合しないまま出口孔11まで流れることが考えられる。
【0056】
この場合、混合流体8のうち噴霧用媒体3の比率が高い部分は微粒化が進むものの、噴霧用媒体3の比率が低い部分は微粒化が進まず、大粒子が生成し易い。
【0057】
そこで、本実施例の噴霧ノズル1は、前述の流路構成において、噴霧流体2と噴霧用媒体3の流路が合流する部分(第1の合流部)から、互いに対向して形成される混合流体流路9、10を流れる混合流体8が合流する部分(第2の合流部)にある出口孔11の間の混合流体流路9、10に屈曲部13、14を設けたものである。
【0058】
混合流体流路9、10に屈曲部13、14を設けることで、混合流体8は流れ方向が変わる。このため、混合流体流路9、10の流れには乱れが生じ、混合流体8を構成する噴霧流体2と噴霧用媒体3との混合が進む。
【0059】
両者が均一に混合することで混合流体8中の噴霧用媒体3の比率は均一となり、一様に微粒化が進むため、微粒化の促進に必要な噴霧用媒体3の使用量を抑制できるし、噴霧流体2や噴霧用媒体3に加える圧力を低減しても微粒化を維持できる。
【0060】
尚、屈曲部13、14での流れ方向の変更角度は乱れを生じさせるために、30度以上120度程度が望ましい。即ち、変更角度が30度以下では流れ方向の変化が小さいために乱れが少なく、混合が促進され難く、また、変更角度が120度以上では、流れの変化による圧力損失が大きくなるためである。
【0061】
図5に、本実施例に係る噴霧ノズル1の微粒化性能の一例を示す。図中の左側の縦軸は噴霧の平均粒子径を、右側の縦軸は圧力損失の比率を、横軸は屈曲部13、14での流れ方向の変更角度をそれぞれ示す。圧力損失は変更角度90度を基準とした。
【0062】
そして、噴霧の平均粒子径は出口孔11から噴出する扇型噴霧について、噴霧の下流300mmの位置で扇型噴霧の中心軸を通る長辺方向と短辺方向について噴霧の粒子径を光学計測により計測し、その平均値を体面積平均粒子径で示したものである。
【0063】
図5に示すように、屈曲部13、14での流れ方向の変更角度が20度と狭い場合、変更角度が30度に比べ噴霧の平均粒子径は約10μm程度大きい。これは、屈曲部13、14が小さい角度の場合、流れ方向の変化が小さいために乱れが少なく、混合が促進され難いためである。一方、120度以上の角度では流れの変化による圧力損失が大きくなる。
【0064】
このため、屈曲部13、14での流れ方向の乱れを生じさせるための変更角度は、30度以上120度までが望ましいことが分かる。
【0065】
また、噴霧流体2と噴霧用媒体3の噴霧流体流路4、5と噴霧用媒体流路6、7の混合部は、両者の混合を促進するため、交差角が30〜90度の角度で合流することが望ましい。即ち、30度より小さい角度では流れ方向の変化が小さく、両者が平行して流れるため、混合が促進され難く、また、90度以上の角度では対向して混合することとなり、圧力損失が大きくなるためである。
【0066】
本実施例の噴霧ノズル1では、微粒化により液体燃料の単位重量当たりの表面積が増加するので燃焼反応が進み、燃焼装置出口での未燃焼分や煤塵、一酸化炭素が低減し、燃焼効率を高くできる。また、燃焼反応を早く進めることで、酸素の消費が進み、窒素酸化物の発生を抑えることができる。更に、未燃焼分や煤塵、一酸化炭素が低減することで、燃焼装置に投入する余剰な空気を削減できる。また、余剰な空気が減ると、燃焼排ガス量も低下し、燃焼排ガスとともに燃焼装置外に放出される顕熱を低下させ、熱効率を高めることができる。
【0067】
噴霧用媒体の使用量の抑制や圧力の低減により、各々の供給や加圧力に使用なエネルギー消費量を低減できる。また、噴霧用媒体として蒸気を用いる場合、燃焼装置内に投入された蒸気による燃焼装置での熱効率が低下するが、本実施例の噴霧ノズル1を用いると、蒸気の使用量を減らしても、微粒化を従来と同等に維持できるため、熱効率の低下を防ぐことができる。
【0068】
また、本実施例では、燃焼装置として液体燃料を使用する場合を示したが、主燃料として微粉炭等の固体燃料を使用し、補助燃料として液体燃料を使用する場合も適用可能である。この場合、噴霧ノズル1から液体燃料を火炉31内に噴霧する際に、上記の効果が得られる。
【0069】
また、本実施例では、図2に示す如く、燃焼用空気は、配管45及び46に分岐され、それぞれバーナ20と空気供給口44から火炉31内に噴出されている。このように、燃焼用空気を分けて供給することで、バーナ20で形成される火炎の温度を低減することができる。
【0070】
また、バーナ20の近傍で空気不足の状態で燃焼すると、燃料中に含まれる窒素分の一部が還元剤として生成され、燃焼で発生するNOxを窒素に還元する反応が生じる。
【0071】
このため、火炉31の出口でのNOx濃度は、バーナ20から全ての燃焼用空気を供給する場合に比べて低減される。また、空気供給口44から残りの燃焼用空気を供給して燃料を完全燃焼させることで、未燃焼分が低減できる。
【0072】
また、空気供給口44からの燃焼用空気と混合した燃焼ガス47は、火炉31の上部の熱交換器48を介して煙道49を通り、煙突50から大気に放出される。
【0073】
図2に示す燃焼装置の例では、燃焼用空気を配管45及び46に分岐する例を示したが、燃焼用空気を分岐せず、バーナ20からのみ供給する場合も、本実施例の噴霧ノズル1を適用することができる。また、図1及び図2では、バーナ20を火炉31の1つの壁面に設けた場合を示すが、複数の壁面に設けた場合や壁面の角部に設けた場合にも適用できる。
【0074】
このような本実施例の噴霧ノズルのように、噴霧流体と噴霧用媒体が混合した混合流体の流路の出口孔までの間に屈曲部分を設けることで、混合流体は流れ方向が変わるため、流路を流れる混合流体の流れには乱れが生じ、噴霧流体と噴霧用媒体との混合が進む。しかも、両者が均一に混合することで、混合流体中の噴霧用媒体の比率は均一となり、一様に微粒化が進む。
【0075】
このため、微粒化の促進に必要な噴霧用媒体の使用量を抑制できるし、噴霧流体や噴霧用媒体に加える圧力を低減しても、微粒化が維持できる効果がある。
【実施例2】
【0076】
図6及び図7に、本発明の噴霧ノズルの実施例2を示す。該図に示す本実施例は、噴霧ノズル1に出口孔を複数有すると共に、互いに対向して形成される混合流体流路を流れる混合流体が合流する第2の合流部を複数有し、噴霧流体と噴霧用媒体の流路が合流する第1の合流部から第2の合流部までの間に、複数の第2の合流部を接続する連絡流路を有することを特徴とする。
【0077】
即ち、本実施例と実施例1との違いは、噴霧ノズル1に複数の出口孔11A、11Bを複数有することと、出口孔11A、11Bの上流側の流路構造にある。ここでは、流路構造に関る部分を中心に説明する。
【0078】
尚、図6では、出口孔を上下2つ有する場合を示し、それぞれ添え字A、Bで区別するが、さらに多数の出口孔を設ける場合も、その構成は同じである。
【0079】
図6及び図7に示す本実施例の噴霧ノズル1の先端部において、噴霧流体2と噴霧用媒体3は、独立した噴霧流体流路4A、4B、5A、5Bと噴霧用媒体流路6A、6B、7A、7Bを通り、屈曲部13A、13B,14A、14Bを介して第1の合流部で混合される。この噴霧流体2と噴霧用媒体3の混合流体8は、互いに対向して流れる混合流体流路9A、9B、10A、10Bを通り、第2の合流部である出口孔11A、11Bの近傍にて衝突し、それぞれの出口孔11A、11Bから噴出する。
【0080】
出口孔11A、11Bから噴出する混合流体8は、衝突により混合流体流路9A、9B、10A、10Bの流れ方向(混合流体流路が伸びる方向)に対し、直角方向に扇型の噴霧を形成する。噴霧ノズル1の出口孔11A、11Bには、扇型噴霧の形成方向と同じ方向に溝部12A、12Bが形成され、この溝部12A、12Bと混合流体流路9A、9B、10A、10Bとの交差部が、出口孔11A、11Bとなる。
【0081】
本実施例では、中央部の混合流体流路10Aと10Bは、出口孔11Aと11Bまでの途中が、両者を互いに連絡する連絡管(連絡流路)60で接続されている。また、外周側の混合流体流路9A、9Bは、出口孔11A、11Bまでの途中が、両者を互いに連絡する分岐管(連絡流路)61(図7参照)で接続されている。
【0082】
噴霧流体2は、噴霧用媒体3との混合により微粒化することは勿論、出口孔11A、11Bで混合流体8の衝突により薄い液膜となり、出口孔11A、11Bから噴出後に周囲の気体とのせん断力により液膜が分裂し微粒化する。この流体の衝突力により液膜が微粒化し、かつ、実施例1のように、混合流体流路9、10に屈曲部13、14を有することで、噴霧流体2と噴霧用媒体3の混合が促進され、微粒化が進む。
【0083】
噴霧ノズル1の出口孔を増やす、いわゆる多孔化により、一つの出口孔からの噴出量を多くせずに、噴霧ノズル1からの噴出量を増やすことができる。この噴霧ノズル1からの噴出量を増やす大容量化の課題として、出口孔の一部が閉塞した際の微粒化性能の悪化や流路の閉塞がある。
【0084】
本実施例の噴霧ノズル1では、出口孔11A、11Bの一部が噴霧流体2や噴霧用媒体3中の不純物や堆積物により閉塞、又は一部が閉塞した場合、該当する出口孔に繋がる混合流体8の流路では、分岐管61を経て、他の開口している出口孔に向けて混合流体8や噴霧流体2、噴霧用媒体3の各流路を流体が流れ、各流路は流体により温度が維持される。
【0085】
例えば、出口孔11Aが何らかの原因により閉塞した場合は、出口孔11Aに接続する混合流体流路9Aのうち出口孔11Aに近い部分や分岐後の混合流体流路10Aでは流れが止まる。
【0086】
しかし、混合流体流路9Aの上流側と、噴霧流体流路4Aや噴霧用媒体流路6Aでは、分岐管61を通して混合流体8が出口孔11Bに流れる。また、混合流体流路10Aやその上流の噴霧流体流路5A及び噴霧用媒体流路7Aでは、連絡管60を経て流体が出口孔11Bに流れる。
【0087】
このため、出口孔11Bには、多数の流路から混合流体8が流れることで流路内での抵抗が小さくなり、流量が増加するため、出口孔11Aの閉塞による噴霧流体2の流量の低下を抑制できる。
【0088】
噴霧流体2として流れる液体燃料は、加熱された場合に、固形分の析出が生じ、この固形分の析出が流路の閉塞をもたらすことがあるが、本実施例の噴霧ノズル1では、分岐管61を経て、開口している出口孔に向けて流れを維持できるため、閉塞が進展し難い。
【0089】
即ち、出口孔の一部が閉塞しても、閉塞箇所は出口孔から分岐管61までに留まり、その除去が容易である。例えば、前述の出口孔11Aが閉塞した場合では、閉塞箇所は混合流体流路9A、10Aのうち、出口孔11Aに近い部分に留まる。
【0090】
更に、本実施例の噴霧ノズル1では、噴霧流体2と噴霧用媒体3を流路途中の混合部で個別に混合しており、混合流体8に占める噴霧用媒体3の比率を維持できる。このため、個々の出口孔から噴出する混合流体8の微粒化特性は一定に維持できる。
【0091】
このように本実施例では、一部の出口孔が閉塞した場合も、正常な出口孔から噴出する混合流体8の微粒化特性は、一定に維持できる。また、流路の閉塞が一部分に留まるので、噴霧ノズル1からの噴霧流体2の噴出量の低下を抑制できる。
【0092】
このため、混合流体8の微粒化を維持できることで、噴霧用媒体3の使用量が抑制できる。また、噴出量を補うために、噴霧流体2や噴霧用媒体3の加圧力を高める場合も、加圧力の上昇を抑制できる。
【0093】
前述の通り、混合流体8の微粒化により、液体燃料の単位重量当たりの表面積が増加するので燃焼反応が進み、燃焼装置出口での未燃焼分や煤塵、一酸化炭素が低減し、燃焼効率を高くできる。また、燃焼反応を早く進めることで、酸素の消費が進み、窒素酸化物の発生を抑えることができる。
【0094】
更に、未燃焼分や煤塵、一酸化炭素が低減することで、燃焼装置に投入する余剰な空気を削減できる。余剰な空気が減ると、燃焼排ガス量も低下し、燃焼排ガスと共に燃焼装置外に放出される顕熱を低下させ、熱効率を高めることができる。
【0095】
また、噴霧用媒体2の使用量の抑制や圧力の低減により、各々の供給や加圧力に使用なエネルギー消費量を低減できる。また、噴霧用媒体2として蒸気を用いる場合、燃焼装置内に投入された蒸気による燃焼装置での熱効率が低下するが、本実施例の噴霧ノズル1を用いると、蒸気の使用量を減らしても、混合流体8の微粒化を従来と同等に維持できるため、熱効率の低下を防ぐことができる。
【実施例3】
【0096】
図8乃至図10に、本発明の噴霧ノズルの実施例3を示す。該図に示す本実施例は、噴霧ノズル1に出口孔を複数有すると共に、噴霧流体と噴霧用媒体の流路が合流する第1の合流部分の下流で、前記混合流体流路が複数に分岐され、該分岐された混合流体流路が、各々異なる前記出口孔に接続される流路を形成することを特徴とする。
【0097】
即ち、本実施例と実施例2との違いは、出口孔11A、11Bの上流側の流路構造である。ここでは、流路構造に関る部分を中心に説明する。尚、図8乃至図10では、出口孔11A、11Bを上下2つ有する場合を示すが、さらに多数の出口孔を設ける場合もその構成は同じである。
【0098】
図9に示す本実施例の噴霧ノズル1の先端部において、噴霧流体2と噴霧用媒体3は、独立した噴霧流体流路4A、4Bと噴霧用媒体流路6A、6Bを通り、第1の合流部で混合される。噴霧流体2と噴霧用媒体3の混合流体8は、混合流体流路9A、9Bを通る。混合流体流路9A、9Bは途中で分岐され、更に、図8の点線に示す円環状の混合流体流路9C、9D、9E、9Fに分岐され、それぞれ出口孔11A、11Bに向けて混合流体8が流れる。
【0099】
本実施例での噴霧ノズル1の出口孔11A、11Bは、噴霧ノズル1の中心軸に対し同心円状に設けられ、かつ、前記分岐された混合流体流路9C、9D、9E、9Fから前記第2の合流部までの流路が、噴霧ノズル1の中心軸に対し円周状に形成されている。
【0100】
そして、混合流体8は、第2の合流部である出口孔11A、11Bの近傍にて衝突し、出口孔11A、11Bから噴出する。出口孔11A、11Bから噴出する混合流体8は、衝突により混合流体流路9C、9D、9E、9Fの流れ方向(図8の円周方向)に対し、直角方向に扇型の噴霧を形成する。
【0101】
このため、本実施例では、噴霧ノズル1の中心軸に対して、放射方向に噴霧が形成されることになる。
【0102】
噴霧ノズル1の出口孔11A、11Bには、扇型噴霧の形成方向と同じ方向(放射方向)に溝部12A、12Bが形成され、この溝部12A、12Bと混合流体流路との交差部が出口孔11A、11Bとなる。
【0103】
噴霧流体2は噴霧用媒体3との混合により微粒化する他、出口孔11A、11Bで混合流体8の衝突により薄い液膜となり、出口孔11A、11Bから噴出後に周囲の気体とのせん断力により液膜が分裂し、微粒化する。
【0104】
このように、流体の衝突力により液膜が微粒化し、かつ、実施例1及び2に示すように、混合流体流路に屈曲部13、14を有することで、噴霧流体2と噴霧用媒体3の混合が促進され、微粒化が進む。
【0105】
また、本実施例の噴霧ノズル1では、実施例2に示すように、出口孔の一部が噴霧流体2や噴霧用媒体3中の不純物や堆積物により閉塞、又は一部が閉塞した場合、該当する出口孔に繋がる混合流体8の流路では、分岐管61を経て、他の開口している出口孔に向けて混合流体8や噴霧流体2、噴霧用媒体3の流路を流体が流れ、各流路は流体により温度が維持される。
【0106】
噴霧流体2として流れる液体燃料は、加熱された場合に固形分の析出が生じ、この固形分の析出が流路の閉塞をもたらすことがあるが、本実施例の噴霧ノズル1では分岐管61を経て、開口している出口孔に向けて流れを維持できるため、閉塞が進展し難い。
【0107】
即ち、出口孔の一部が閉塞しても、閉塞箇所は出口孔から分岐管61までに留まり、その除去が容易である。例えば、前述の出口孔11Aが閉塞した場合では、閉塞箇所は混合流体流路9Aのうち出口孔11Aに近い混合流体流路9Cや9Eに留まる。
【0108】
更に、本実施例の噴霧ノズル1では、噴霧流体2と噴霧用媒体3を流路途中の混合部で個別に混合しており、混合流体8に占める噴霧用媒体3の比率を維持できるため、個々の出口孔から噴出する混合流体8の微粒化特性は一定に維持できる。
【0109】
このように、本実施例でも実施例2と同様に、一部の出口孔が閉塞した場合でも、正常な出口孔から噴出する混合流体の微粒化特性は一定に維持できる。また、流路の閉塞が一部分に留まるので、噴霧ノズル1からの噴霧流体2の噴出量の低下を抑制できる。
【0110】
このため混合流体8の微粒化が維持できることで、噴霧用媒体3の使用量を抑制できる。また、噴出量を補うために噴霧流体2や噴霧用媒体3の加圧力を高める場合も加圧力の上昇を抑制できる。
【0111】
また、前述した実施例2及び3では、出口孔が2つの場合を例に示したが、多数の出口孔を設ける場合もその効果は前述の通りである。更に、燃焼装置に噴霧ノズル1を組み込んだ場合、実施例1に示すものと同様に、微粒化促進と噴霧用媒体の低減や加圧力の低減の効果が得られる。
【0112】
また、上述した実施例の燃焼装置として、固体燃料と液体燃料を燃焼させるものについて説明したが、固体燃料と液体燃料に変えて、化石燃料を燃焼させる燃焼装置にも適用できることは、勿論である。
【0113】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成を置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0114】
1…噴霧ノズル、2…噴霧流体、3…噴霧用媒体、4、4A、4B、5、5A、5B…噴霧流体流路、6、6A、6B、7、7A、7B…噴霧用媒体流路、8…混合流体、9、9A、9B、9C、9D、9E、9F、10、10A、10B…混合流体流路、11、11A、11B…出口孔、12、12A、12B…溝部、13、13A、13B、14、14A、14B…屈曲部、20…バーナ、21…中心軸、22…障害物、23…噴霧、24…ウインドボックス、25…1次流路、26…2次流路、27…3次流路、28…1次空気、29…2次空気、30…3次空気、31…火炉、32、33…旋回流発生器、34…ガイド板、35…火炉壁、36…伝熱管、41…燃焼用空気供給系統、42…液体燃料供給系統、43…噴霧用媒体供給系統、44…空気供給口、45、46…配管、47…燃焼ガス、48…熱交換器、49…煙道、50…煙突、60…連絡管、61…分岐管。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10