(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の方法では、次のような問題が生じている。
【0009】
特許文献1〜4で用いられている紫外線の照射を段階的に変更する方法では、強さの異なる複数種類のランプを直線状の搬送経路上に整列配置する必要がある。したがって、製造ラインが長くなるだけでなく、複数種類の照射設備を設置しなければならいといった不都合が生じている。
【0010】
さらに、特許文献5で用いられている方法では、狭い空間にランプを密に配列しているので、ランプから発せられる熱によって光重合性組成物がダメージを受けてしまうので、良好な特性が得られない。すなわち、実質的にはランプと光重合性組成物の間隔をあける必要があり、パスラインを複数回にわたって往復させなければならない。それ故に設備が大型化してしまうといった不都合が生じている。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、装置構成を簡素化しつつも高品質の光反応生成物シートを効率良く製造することができる光反応生成物シートの製造方法およびその装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0013】
すなわち、光照射器から照射された光により支持体上に形成された光反応性組成物層を反応させて得た光反応生成物層を有する
光反応生成物シートの製造方法において、
透過性を有する前記支持体を一方向に移動させながら、光重合反応によって感圧性接着剤層を得るための光重合性組成物層としての透過性を有する前記光反応性組成物層を当該支持体上に形成し、
前記一方向とは逆方向に支持体を移動させるように当該支持体を少なくとも1回反転させて搬送経路を多段にすることにより、反転前の支持体および反転後の支持体を対向させて多段に構成した第1照射領域で第1光照射器から支持体に向けて光を照射し、支持体上に形成された光反応性組成物層および当該支持体に光を透過させつつ、多段にされた支持体上の全ての光反応性組成物層を光重合反応させ、
当該第1照射領域に隣接し、当該第1照射領域に配備された第1光照射器の光源と異なる特性の光源を有する第2照射器を配備した第2照射領域で前記光反応性組成物層に光を照射して光重合反応させることを特徴とする。
【0014】
上記方法によれば、多段に蛇行されながら搬送される光反応性組成物の層が形成された支持体に向けて照射された光が、当該支持体と光反応性組成物層を透過しながら支持体上の全ての光反応性組成物を光重合させる。したがって、一方向から照射した光を有効に利用することができるので、第1照射領域で利用する第1照射器の光源(ランプなど)の数を低減させつつも、第1照射領域での重合反応により光反応性組成物を目標の重合率に近づけることができる。
【0015】
さらに、第1照射領域での重合反応により光反応性組成物を目標の重合率に近づけた後に、当該第1照射領域に隣接させた第2照射領域に支持体を搬送させることにより、光反応性組成物を目標の重合率に達成させることができる。特に、第2照射領域で利用する光源を第1照射領域で利用する光源と異なる特性のものを利用することにより、光反応性組成物層の重合反応を一層に促進させることができる。なお、第1照射領域で目標の重合率に近づいているので、第2照射領域での光の照射時間は、第1照射領域よりも短時間となる。換言すれば、第2照射領域で利用する光源の個数を第1照射領域で利用する光源の個数よりも少なくできる。したがって、光源の個数を減らしつつも、高品質の光反応生成物シートを効率良く製造することができる。
【0016】
上述の方法において、第1照射領域で反転されて多段に蛇行して搬送される前記支持体の最下段または最上段のうち少なくともいずれかの外側から支持体に向けて光を照射すればよい。
【0017】
この方法において一方から光を照射する場合、支持体などを透過するごとに、光強度が低下してゆくので、光重合を促進させたいタイミングを前段または後段のいずれかに設定することができる。また、支持体の反転回数が多い場合は、最下段および最上段の両側から光を照射することにより、光強度を安定させることができる。
【0018】
また、この方法において、第1照射領域で光照射器から支持体に向けて照射される光の強度を調整することが好ましい。例えば、支持体を反転させるローラの直径を変更して光の照射距離を変更してもよいし、或いは、光照射器の出力電圧をコントロールしてもよい。
【0019】
なお、光反応性組成物層の形成は、支持体の一方面のみならず表面および裏面の両面であってもよい。すなわち、支持体および光反応性組成物層は光を透過するので、当該光反応性組成物層を多層にしても全ての層の光反応性組成物を光重合させることができる。
【0020】
また、光透過性剥離ライナ上に形成された前記光反応性組成物層を支持体上に貼り合せ、当該光透過性剥離ライナにより光反応性組成物層を被覆したまま支持体に向けて光を照射し、当該光反応性組成物層を光重合させてもよい。
【0021】
この方法によれば、光透過性剥離ライナによって光は透過したまま光反応性組成物層に作用し、その一方で未反応の光反応性組成物は光透過性剥離ライナに遮られる。つまり、未反応の光反応性組成物による光照射器の汚染や光照度の低下を防止することができる。特に、光反応性組成物が、光照射器からの光によって光重合されて感圧性接着剤層を得る光反応性組成物層である場合、当該光反応組成物層が大気に曝されていると光重合反応に伴って未反応のモノマーが蒸発する。しかしながら、このモノマーが光透過性剥離ライナに遮られて当該光透過性剥離ライナに付着するので、モノマーによる光照射手段の汚染や光照度の低下を防止することができる。また、光透過性剥離ライナを感圧性接着剤層から剥離する際には、支持体に感圧性接着剤層が設けられた状態で、光透過性剥離ライナのみが剥がれる。
【0022】
このような光透過性剥離ライナを介して、支持体に光反応性組成物層を形成して、光反応性組成物が光反応された光反応生成物層を支持体上に形成して
光反応生成物シートを得る場合、支持体が最初に反転する時点で未反応の光反応性組成物が光透過性剥離ライナよりはみでることを防止するために、光反応性組成物層の光による反応率を20%以上にするのが好ましい。
【0023】
なお、上記方法において、支持体と光反応性組成物(片面または両面形成)の積層体、支持体、光反応性組成物(片面または両面形成)および光透過性剥離ライナからなる積層体の透過率は、10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上である。当該透過率によって、支持体の反転数、ランプの数、光強度などが適宜に設定変更される。
【0024】
また、第1照射領域を搬送される支持体上の光反応性組成物層での照度は、0.1〜15mW/cm
2の範囲であることが好ましい。
【0025】
また、この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0026】
すなわち、光照射器から照射された光により支持体上に形成された光反応性組成物層を反応させて得た光反応生成物層を有する
光反応生成物シートの製造装置において、
前記光反応性組成物層は、前記光照射器からの光によって光重合反応させて感圧性接着剤層を得る光重合性組成物層であり、
透過性を有する前記支持体を一方向に移動させながら当該支持体上に透過性を有する光反応性組成物を塗布する塗工機と、
前記一方向とは逆方向に支持体を移動させるように当該支持体を反転させる反転機構と、
前記反転機構によって反転前の支持体および反転後の支持体を対向させて搬送経路を多段に構成した第1照射領域で、支持体上に形成された光反応性組成物層および当該支持体に光を透過させつつ、多段にされた支持体上の全ての光反応性組成物層を光重合反応させる第1光照射器と、
前記第1照射領域と隣接
する第2照射領域に備えられ、前記第1光照射器に配備された光源と異なる特性を有する光源によって
、連続搬送される前記支持体上の光反応性組成物層を光重合反応させる第2光照射器とを備えたことを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、上記方法を好適に実施することができる。
【0028】
なお、この構成において、第1光照器は、第1照射領域において反転されて多段に蛇行して搬送される前記支持体の最下段または最上段のうち少なくともいずれかの外側から支持体に向けて光を照射するように配備すればよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の光反応生成物シートの製造方法およびその装置によれば、多段に蛇行されながら搬送される光反応性組成物の形成された支持体に向けて照射された光が、当該支持体と光反応性組成物層を透過しながら支持体上の全ての光反応性組成物を光重合反応させるので、ランプや蛍光管などの光源の数を低減させることができる。
【0030】
また、支持体への光の照射領域を区分けすることにより、段階的に最適な重合方法を選択することができるので、高品質の光反応生成物シートを効率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0033】
<実施例1>
本実施例に係る光反応生成物シートの製造装置は、
図1に示すように、シート状、テープ状あるいはフィルム状などの支持体(基材)1を繰り出し供給する支持体供給ロール2と、この支持体供給ロール2から繰り出された支持体1上に光重合性組成物層4を形成するために光重合性組成物(以下、適宜「光重合性組成物4」とする)を所定の厚さに塗工(塗布)する塗工部3と、支持体1に塗工された光重合性組成物4に光を照射する第1照射室5と、当該第1照射室5と隣接する第2照射室6と、支持体1から後述する光透過性剥離ライナ7を剥離する剥離部8と、第1および第2照射室5,6を搬送される過程で光重合反応によって光重合性組成物層4から得られた感圧性接着剤層4Aの設けられた支持体1を巻き取る支持体巻き取り部9とから構成されている。以下、各部の構成を詳細に説明する。なお、光重合性組成物4は、本発明の光反応性組成物に相当する。
【0034】
支持体供給ロール2に巻き回された帯状の支持体1は、透過性を有する材料から成る。この支持体1には、例えば、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルムなどが用いられる。
【0035】
光重合性組成物4は、モノマーまたはその一部重合物と光重合開始剤とを含有しつつも透過性を有し、光照射により重合して感圧性接着剤となるものである。この光重合性組成物には、アクリル系、ポリエステル系、エポキシ系などの光重合性組成物が用いられる。これらの中でも、アクリル系の光重合性組成物が特に好ましく用いられる。以下に本実施例で用いられる光重合性組成物の各成分について例示する。
【0036】
本実施例では、光重合性組成物として、アルキルアクリレート単量体を主成分とする単量体と、極性基含有の共重合性単量体とが用いられる。本実施例で用いられるアルキルアクリレート単量体とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマーであり、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、プチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基の如きアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、あるいはそのアルキル基の一部をヒドロキシル基で置換したものなどアルキル基の炭素数が1〜14の範囲にあるものを、1種または2種以上を主成分に用いられる。
【0037】
また、極性基含有の共重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸などの不飽和酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有単量体、カプロラクトン(メタ)アクリレートなどが用いられる。また、単量体に限らず、(メタ)アクリル酸ダイマーなどの2量体を用いても良い。
【0038】
アルキルアクリレート単量体を主成分とする単量体と、極性基含有の共重合性単量体との使用割合は、前者が70〜99重量%、後者が30〜1重量%であり、特に好ましくは前者が80〜96重量%、後者が20〜4重量%である。このような範囲で使用することにより、接着性,凝集力などのバランスをうまくとることができる。
【0039】
本実施例で用いられる光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル類、アニソールメチルエーテルなどの置換ベンゾインエーテル類、2・2−ジエトキシアセトフェノン、2・2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどの置換アセトフェノン類、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換−α−ケトール類、2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド類、1−フェニル−1・1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどの光活性オキシム類などが用いられる。このような光重合開始剤の使用量は、前述したアルキルアクリレート単量体を主成分とする単量体と、極性基含有の共重合性単量体との合計100重量部当たり、通常0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部が良い。この範囲より光重合開始剤の使用量が少ないと、重合速度が遅くなりモノマーが多く残存しやすくなり工業的に好ましくなく、逆に多いとポリマーの分子量が低下し接着剤の凝集力の低下をきたしやすく接着特性上好まし特性が得られない。
【0040】
本実施例で用いられる架橋剤としては、多官能アクリレート単量体などが用いられ、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1・2−エチレングリコールジアクリレート、1・6−ヘキサンジオールジアクリレート、1・12−ドデカンジオールジアクリレートなどの2官能以上のアルキルアクリレート単量体が用いられる。この多官能アクリレート単量体の使用量は、その官能基数などにより異なるが、一般には、前述したアルキルアクリレート単量体を主成分とする単量体と、極性基含有の共重合性単量体との合計100重量部当たり、0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部とするのが良い。このような範囲で多官能アクリレート単量体を用いると、良好な凝集力が保持される。
【0041】
また、上記多官能アクリレート以外にも、粘着剤の用途に応じて架橋剤を併用することもできる。併用する架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤など、通常用いる架橋剤を使用することができる。なお、本発明では、必要に応じて粘着付着剤などの添加剤を用いることができる。
【0042】
光透過性剥離ライナ7は、光透過率が70%以上のものを用いており、必要な光透過量を得ることができる。この光透過性剥離ライナ7としては、光透過率が80%以上のものがより好ましく、光透過率が90%以上のものがさらに好ましい。この光透過性剥離ライナ7は、第1照射室5および第2照射室6における処理に十分に耐えうる程度の耐熱性を有するものである。これらの特性を有する光透過性剥離ライナ7としては、例えば、ポリエステルフィルムなどが挙げられる。光透過性剥離ライナ7により透過した光の照射光量は、感圧性接着剤層などの必要特性により任意に設定することになるが、通常、100〜30000mJ/cm
2 の範囲内、より好ましくは1000〜10000mJ/cm
2 の範囲内、さらに好ましくは2000〜8000mJ/cm
2 の範囲内であることが好ましい。
【0043】
光透過性剥離ライナ7を透過する光の波長は、特に限定されるものではなく、光重合性組成物層の種類や用途によって適宜選択される。例えば、反応に用いる光重合開始剤が長波長紫外光(例えば、400nm以上)に吸収帯を有する場合には、吸収帯域の周辺の波長の光透過率が高い光透過性支持体を選択することもできる。あるいは、可視光領域の光を用いて光重合反応を行いたい場合には、可視光領域の光透過率が高い光透過性支持体を選択すればよい。
【0044】
例えば、光重合性組成物層が感圧性接着剤層である場合においては、光透過性剥離ライナ7は、短波長光をカットする特性を備えたものが好ましい。その理由は、短波長を含む光を照射すると、光重合反応させることで生成された感圧性接着剤層と支持体1との剥離性が低下する。これはいわゆる両面接着シートの場合に不都合であるので、光透過性剥離ライナ7で短波長光をカットする。具体的には、この光透過性剥離ライナ7としては、例えば、短波長光(例えば、300nm以下)の透過を90%以上カットできるフィルムが好ましく、より好ましくは93%以上カット、さらに好ましくは95%以上カットできるフィルムが好ましい。
【0045】
図1に戻って、塗工部3は、支持体供給ロール2から繰り出された支持体1に光重合性組成物4を、その支持体1の幅方向に所定幅で、所定厚さとなるように支持体1の表面および裏面の両面に塗工する。この塗工部3は、例えば、支持体1の表面側にはコンマコータを備え、支持体1の裏面側には(ファウンテン)ダイコータを備えている。なお、支持体1の表面および裏面に塗工する光重合性組成物4は、同一の組成物であってもよいし、異なる組成物であってもよい。
【0046】
コンマコータとして、光透過性剥離ライナ7を繰り出し供給する光透過性剥離ライナ供給ロール10と、この光透過性剥離ライナ供給ロール10から繰り出された光透過性剥離ライナ7に光重合性組成物4を給液するための給液槽11と、給液槽11から給液された光重合性組成物4を光透過性剥離ライナ7に塗布するコンマロール12と、光重合性組成物4が塗布された光透過性剥離ライナ7を支持体1の表面に搬送するためのバックアップロール13とを備えている。
【0047】
ダイコータとして、表面側と同様に光透過性剥離ライナ7を繰り出し供給する光透過性剥離ライナ供給ロール10と、この光透過性剥離ライナ供給ロール10から繰り出された光透過性剥離ライナ7に光重合性組成物4を塗布するためのリップコータ14と、光重合性組成物4が塗布された光透過性剥離ライナ7を支持体1の裏面に搬送するためのバックアップロール13とを備えている。
【0048】
さらに、塗工部3は、光重合性組成物4を塗布した光透過性剥離ライナ7を、支持体1の両面にほぼ同時に貼り合わせる上下一対のコーティングロール15を備えている。
【0049】
光重合性組成物4が塗布された光透過性剥離ライナ7をコーティングロール15で支持体1の両面にほぼ同時に貼り合わせることで、支持体1の両面に光重合性組成物4がそれぞれ塗布される。なお、支持体1の表面および裏面に貼り合わせる光透過性剥離ライナ7は、同一特性のものであってもよいし、または、異なる特性のものであってもよい。
【0050】
なお、塗工部3の構成は、上述したようなコンマコータやダイコータに限定されるものではなく、リバースコータやグラビアコータなどの他の塗工方式のものであってもよく、光重合性組成物4の厚み調整の手法も各塗工方式に合わせて適宜に変更実施することが可能である。
【0051】
第1照射室5は、支持体1の両面にそれぞれ塗工された光重合性組成物層4に光を照射する。この第1照射室5は、支持体供給ロール2から繰り出された支持体1の移動方向(
図1に示すa方向)とは逆方向に支持体1を移動させるように支持体1を反転させる第1搬送ローラ16と、この第1搬送ローラ16によって反転された支持体1の移動方向とは逆方向に支持体1を移動させるように支持体1を反転させる第2搬送ローラ17と、第1搬送ローラ16によって最初に反転するまでは支持体1の対向面の裏面に光を照射する複数個の第1紫外線発生用ランプ20と、第2搬送ローラ17によって最後に反転した後に支持体1の対向面の裏面に光を照射する複数個の第2紫外線発生用ランプ21を備えている。
【0052】
なお、第1照射室5は、本発明における第1照射領域に相当する。また、第1および第2搬送ローラ16,17は本発明における反転機構を構成する。第1および第2紫外線発生用ランプ20,21は、本発明における光源に相当し、これら複数個の紫外線発生用ランプ20,21によって本発明の第1光照射器を構成する。
【0053】
第2照射室6は、支持体1と対向する一方に複数個の第3紫外線発生用ランプ22を備えている。本実施例で利用する第3紫外線発生用ランプ22は、第1照射室5で利用される紫外線発生用ランプと異なる特性のものである。したがって、第2照射室6は、第1照射室5から搬送されてくる支持体1の両面で光重合反応している光重合性組成物層4に光を照射し、当該光重合反応を促進させる。なお、第2照射室6は、本発明における第2照射領域に相当する。また、第3紫外線発生用ランプ22は、本発明における光源に相当し、これら複数個の紫外線発生用ランプ22によって本発明の第2光照射器を構成する。
【0054】
第1照射室5および第2照射室6の紫外線発生用ランプとしては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプなどの高圧放電ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、捕虫用蛍光ランプなどの低圧放電ランプなどに加え、マグネトロンにて発生させたマイクロ波を光エネルギーに転換する方式で発光する無電極UVランプや、紫外線波長の発光素子を有する紫外線波長LED(Light Emitting Diode)を用いてもよい。また、各照射室5,6では、これらのランプを2種類以上を組み合せても使用することができるが、両照射室5,6では、異なる特性のランプを使用する。
【0055】
また、光透過性剥離ライナ7を用いて支持体1に光重合性組成物4を塗布する場合、第1照射室5で支持体1が最初に反転する時点、すなわち支持体1が第1搬送ローラ16によって反転する時点において、重合率が低いと未反応の光重合性組成物4であるモノマーが光透過性剥離ライナ7からはみでてしまう。そこで、この現象を防止するために、支持体1が最初に反転する時点で重合率が20%以上になるように、第1紫外線発生用ランプ20の照度を(場合によっては、第2紫外線発生用ランプ21の照度も)それぞれ設定するのが好ましい。さらに、光重合性組成物4の重合率が50%以上になるように、第1および第2紫外線発生用ランプ20,21の照度をそれぞれ設定するのがより好ましく、さらには、重合率が70%以上になるように、第1および第2紫外線発生用ランプ20,21の照度をそれぞれ設定するのが、より一層好ましい。これら第1および第2紫外線発生用ランプ20,21の照度は、光重合反応によって得られるポリマーの重合度を左右するので、0.1〜5000mW/cm
2、好ましくは1〜1000mW/cm
2、さらに好ましくは1〜100mW/cm
2である。
【0056】
支持体1が反転されるとき、シワが発生することがあるので、光重合性組成物4を塗布する膜厚は400μm以下が望ましい。また、反転時の回転径は、直径300mm以上が望ましい。これは搬送ローラの直径を300mm以上にするか、あるいは直径を300mmより小さな搬送ローラを2つ以上組合せるなどの方法で容易に実現できるが、これらの手法に限定されるものではなく、どの様な反転手段を用いてもよい。
【0057】
なお、第1照射室5で支持体1が最初に反転する時点、すなわち支持体1が第1搬送ローラ16によって反転する時点において、光重合性組成物層4の重合率が少なくとも20%以上になるように本実施例装置は制御される。光重合性組成物層4の重合率が20%以上になっていることの検出は、例えば、照射実験から得たサンプルから予め求める。すなわち、製造しようとする製品の仕様に応じた光重合性組成物4が支持体1に塗工されたサンプルに対して、第1照射室5(第1および第2紫外線発生用ランプ20,21)における照射光量などの各条件を適宜変更して照射実験を行う。この実験後のサンプルの重合率を測定することで、実験的に求めることができる。重合率を測定するには、例えば熱風乾燥器で130°C×2時間加熱したときの残渣率(加熱後の重量/加熱前の重量×100)を求めることで行われる。
【0058】
剥離部8は、支持体1の表面側にある光透過性剥離ライナ7を剥離する剥離ローラ23を備えているとともに、剥離された光透過性剥離ライナ7を巻き取る巻き取りロール24を備えている。
【0059】
剥離部8において、剥離ローラ23によって剥離された、支持体1の表面側にある光透過性剥離ライナ7は、巻き取りロール24によって巻き取られるとともに、支持体1および裏面側にある光透過性剥離ライナ7は、一体となって支持体巻き取り部9によって巻き取られる。この際、巻きズレを防ぐために巻き取り補正装置を配設するのが望ましい。支持体1の表面側にある光透過性剥離ライナ7が支持体1より剥離されることにより、支持体1の両面には、光重合性組成物層4から光照射によって光重合された感圧性接着剤4Aが設けられ、さらに支持体1の裏面側には光透過性剥離ライナ7が貼り合わされた状態となる。
【0060】
なお、本発明は以下のような形態で実施することも可能である。
【0061】
<実施例2>
なお、本実施例では、第1照射室5および第2照射室6の構成が上記実施例1の装置と異なるので、同一構成要素には同一符号を付すに留め、異なる構成要素について詳述する。
【0062】
第1照射室5は、
図2に示すように、上記実施例1の第1照射室5から第1紫外線発生用ランプ20を除いた構成である。
【0063】
第2照射室6は、第1照射室5から搬送されてきた支持体1を逆方向に移動させるように支持体1を反転させる第3搬送ローラ18と、この第3搬送ローラ18によって反転された支持体1の移動方向とは逆方向に支持体1を移動させるように支持体1を反転させる第4搬送ローラ19と、第3搬送ローラ18によって最初に反転するまでは支持体1の対向面の裏面に光を照射する複数個の第3紫外線発生用ランプ22を備えている。
【0064】
以下に、
図1および
図2に示した装置を用いて得られた感圧性接着シートの具体例と、
図4および
図5に示す従来装置を用いて得られた感圧性接着シートの比較例とを示す。
【0065】
<具体例>
光重合において、短波長光カット用の光透過性剥離ライナ7には、シリコーン処理を施した38μmのポリエチレンフィルムを用いた。
【0066】
光重合性組成物は、次のようにして得た。アルキルアクリレート単体を主成分とする主単量体としての2エチルヘキシルアクリレート(2EHA)90重量部、極性基含有の共重合性単量体アクリル酸(AA)10重量部に、光重合開始剤として2・2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.05重畳部を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に暴露することによって部分的に光重合したシロップを得た。この部分重合したシロップ100重量部に、架橋剤として1,6-ヘキサンジオール ジアクリレート0.04重量部を均一に混合し、光重合性組成物を得た。
【0067】
<具体例1>
図1に示した装置を用いて実験を行った。この光重合性組成物4が支持体1を含めて230μmになるように塗工部3にて支持体1に塗工した。第1照射室5での光照射としては、第1紫外線発生用ランプ20および第2紫外線発生用ランプ21ともに90本のブラックライトを用いた。支持体1上での照度は、第1搬送ローラ16によって反転する前の第1段目で3.4mW/cm
2、第1搬送ローラ16から第2搬送ローラ17までの第2段目で2.4mW/cm
2および第2搬送ローラ17から第2照射室6の前までの第3段目で1.9mW/cm
2になるように設定した。
【0068】
また、第2照射室6において、第3紫外線発生用ランプ22に3本のメタルハイドランプを用いた。支持体1上での照度は、8.3mW/cm
2になるように設定した。
【0069】
さらに、支持体1の移動速度(ライン速度)は、8m/minに設定した。この移動速度で塗工および光重合を行い、光重合性組成物の重合率を測定して当該具体例を得た。
【0070】
<具体例2>
図1に示した装置で第1照射室5の照明装置を変更して実験を行った。この光重合性組成物4が支持体1を含めて230μmになるように塗工部3にて支持体1に塗工した。第1照射室5での光照射としては、第1紫外線発生用ランプ20を使用せずに,第2紫外線発生用ランプ21に90本のブラックライトを用いた。支持体1上での照度は、第1搬送ローラ16によって反転する前の第1段目で2.7mW/cm
2、第1搬送ローラ16から第2搬送ローラ17までの第2段目で1.5mW/cm
2および第2搬送ローラ17から第2照射室6の前までの第3段目で0.9mW/cm
2になるように設定した。
【0071】
また、第2照射室6において、第3紫外線発生用ランプ22に3本のメタルハイドランプを用いた。支持体1上での照度は、8.3mW/cm
2になるように設定した。
【0072】
さらに、支持体1の移動速度(ライン速度)は、8m/minに設定した。この移動速度で塗工および光重合を行い、光重合性組成物の重合率を測定して当該具体例を得た。
【0073】
<具体例3>
図2に示した装置を用いて実験を行った。この光重合性組成物4が支持体1を含めて230μmになるように塗工部3にて支持体1に塗工した。第1照射室5での光照射としては、第2紫外線発生用ランプ21に90本のブラックライトを用いた。支持体1上での照度は、第1搬送ローラ16によって反転する前の第1段目で2.7mW/cm
2、第1搬送ローラ16から第2搬送ローラ17までの第2段目で1.5mW/cm
2および第2搬送ローラ17から第2照射室6の前までの第3段目で0.9mW/cm
2になるように設定した。
【0074】
また、第2照射室6において、第3紫外線発生用ランプ22に3本のメタルハイドランプを用いた。支持体1上での照度は、第2照射室6に入ってから第3搬送ローラ18によって反転する前の第1段目で8.3mW/cm
2、第3搬送ローラ18から第4搬送ローラ19までの第2段目で7.6mW/cm
2および第4搬送ローラ19から第2照射室6の出口前までの第3段目で7.2mW/cm
2になるように設定した。
【0075】
さらに、支持体1の移動速度(ライン速度)は、8m/minに設定した。この移動速度で塗工および光重合を行い、光重合性組成物の重合率を測定して当該具体例を得た。
【0076】
<比較例1>
図4に示した従来装置を用いて実験を行った。すなわち、第1照射室5から第2照射室6を通じて支持体を直線状態で搬送した。光重合性組成物4が、支持体1を含めて230μmになるように塗工部3にて支持体1に塗工した。第1照射室5での光照射には、第2紫外線発生用ランプ21に90本のブラックライトを用いた。支持体1上での照度は、2.7mW/cm
2になるように設定した。
【0077】
また、第2照射室6において、第3紫外線発生用ランプ22に3本のメタルハイドランプを用いた。支持体1上での照度は、8.3mW/cm
2になるように設定した。
【0078】
さらに、支持体1の移動速度(ライン速度)は、8m/minに設定した。この移動速度で塗工および光重合を行い、光重合性組成物の重合率を測定して当該具体例を得た。
【0079】
<比較例2>
図5に示した装置を用いて実験を行った。すなわち、当該装置は、第1照射室5のみを備えた構成である。光重合性組成物4が、支持体1を含めて230μmになるように塗工部3にて支持体1に塗工した。第1照射室5での光照射としては、第1紫外線発生用ランプ20および第2紫外線発生用ランプ21ともに90本のブラックライトを用いた。支持体1上での照度は、第1搬送ローラ16によって反転する前の第1段目で3.4mW/cm
2、第1搬送ローラ16から第2搬送ローラ17までの第2段目で2.4mW/cm
2および第2搬送ローラ17から第1照射室5の出口前までの第3段目で1.9mW/cm
2になるように設定した。
【0080】
さらに、支持体1の移動速度(ライン速度)は、8m/minに設定した。この移動速度で塗工および光重合を行い、光重合性組成物の重合率を測定して当該具体例を得た。
【0081】
上記具体例および比較例に係る各感圧性接着シートについて、光重合性組成物の重合率の測定結果は、以下の表1のようになった。
【0083】
上記比較実験によれば、表1から分かるように、本実施例装置の具体例1−3と従来装置の比較例1−2は、搬送速度を同じにしている。しかしながら、製造された光重合性組成物の重合率は、本実施例装置で製造したものが従来装置で製造してものを全て上回った結果を得ることができた。すなわち、本実施例装置は、支持体1を反転させて蛇行させるとともに、第1照射室5に第2照射室6を隣接配備することにより、従来装置と同じ搬送速度であっても、支持体1の単位面積当たりの光の照射時間を長くすることができるので、重合率を高めることができている。
【0084】
さらに、第1照射室5と第2照射室6で異なる特性の紫外線発生用ランプを使用するので、重合反応の反応速度の調整することができとともに、目標の重合率に達成させやすくなる。
【0085】
なお、本発明は以下のような形態で実施することも可能である。
【0086】
(1)上記実施例装置において、
図1に示す構成において、搬送経路の上流側の一方に紫外線発生用ランプを備えた照射器を配備した構成であってもよいし、反対側の一方のみに照射器を配備した構成であってもよい。
【0087】
(2)上記実施例装置において、第1照射室5での光強度の調整は、直径の異なる搬送ローラを組み合わせて第1紫外線照射ランプ20や第2紫外線照射ランプ21から支持体1までの距離を変更してもよい。例えば、
図3に示すように、第1搬送ローラ16aの直径を上記メイン実施例の第1搬送ローラ16よりも小さくするとともに、2個の第2搬送ローラ17a、17bで構成する。
【0088】
すなわち、第1搬送ローラ16aを他の大きさのものに交換した場合、第2搬送ローラ17aを昇降させることにより、多段の支持体1を互いに平行に保ちながら搬送することができる。なお、当該構成において、
図1の構成と同様に第2紫外線発生用ランプ21を備えた構成であってもよい。
【0089】
また、光強度を調整する他の構成として、多段の搬送経路の間にフィルタを介在させてもよいし、第1ないし第3紫外線発生用ランプ20〜23の出力電圧を調整し、光強度を調整してもよい。さらには、これら変形例の構成を組み合わせてもよい。
【0090】
(3)上記実施例2の装置において、第3紫外線発生用ランプ22を装置の下側のみに配備し、下側から支持体1に向けて紫外線を照射するよう構成してもよい。また、上下に紫外線発生用ランプを配備し、上下から支持体1に向けて紫外線を照射するように構成してもよい。