(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029405
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】膜分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 65/04 20060101AFI20161114BHJP
B01D 63/08 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
B01D65/04
B01D63/08
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-212221(P2012-212221)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2013-71119(P2013-71119A)
(43)【公開日】2013年4月22日
【審査請求日】2014年10月3日
(31)【優先権主張番号】100134871
(32)【優先日】2011年9月27日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】512250072
【氏名又は名称】李王 永泉
【氏名又は名称原語表記】LEE WANG,YUNG−CHUAN
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】李王 永泉
【審査官】
團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−081931(JP,A)
【文献】
特開2002−331230(JP,A)
【文献】
特開平09−094445(JP,A)
【文献】
特開平09−057071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B01D61/00−71/99
C02F 1/44
DB等 DWPI(Thomson Innovation)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の基座および当該基座の両側に配置されたろ過膜を有するろ過膜ユニットが複数設けられる框体と、
前記框体に装着されるレール、および、外力によって前記レールに沿って前記ろ過膜ユニットと平行である方向に移動可能に前記レールに装着される洗浄ユニットを有するクリーナーと、を備え、
前記洗浄ユニットは、前記ろ過膜ユニットの上方に位置する上支持部、前記ろ過膜ユニットの下方に位置する下支持部、および、前記ろ過膜ユニットの間の隙間を貫通し一端が前記上支持部に接続され他端が前記下支持部に接続される複数の桿状洗浄ユニットを有し、
前記桿状洗浄ユニットは、常に所定の張力を有し、前記洗浄ユニットが外力によって移動する際、前記ろ過膜に付着した汚泥を除去することを特徴とする膜分離装置。
【請求項2】
前記レールは、前記ろ過膜ユニットの上方に位置し、
前記上支持部は、前記レールに沿って移動可能に前記レールに装着されることを特徴とする請求項1に記載の膜分離装置。
【請求項3】
前記下支持部は、所定の重さを有し、宙に浮く状態であることを特徴とする請求項2に記載の膜分離装置。
【請求項4】
前記上支持部および前記下支持部は、延伸方向が前記レールの延伸方向に対して垂直であり、長さが並列した前記ろ過膜ユニットの総厚さより大きく形成されることを特徴とする請求項1に記載の膜分離装置。
【請求項5】
前記クリーナーは、前記桿状洗浄ユニットの張力を調整する張力調整器をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の膜分離装置。
【請求項6】
前記張力調整器は、複数のスプリングを有し、一端が前記上支持部に装着され、他端が前記桿状洗浄ユニットに接続されることを特徴とする請求項5に記載の膜分離装置。
【請求項7】
前記桿状洗浄ユニットは、表面が平滑であることを特徴とする請求項1に記載の膜分離装置。
【請求項8】
前記桿状洗浄ユニットは、表面に模様を有することを特徴とする請求項1に記載の膜分離装置。
【請求項9】
前記桿状洗浄ユニットは、表面に毛が設けられることを特徴とする請求項1に記載の膜分離装置。
【請求項10】
前記桿状洗浄ユニットは、複合材料から構成された糸または棉糸であることを特徴とする請求項1に記載の膜分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離装置に関し、詳しくは汚泥の付着を抑制可能な膜分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
膜分離活性汚泥処理システム(Membrane Bio Reactor、MBR)は、現今高度に発展してきた水処理技術である。MBRは、膜分離技術と生化学処理技術とを結合させた新しい汚水処理技術であり、膜細孔のキャッチ作用によって嫌気活性汚泥または好気活性汚泥を反応ダンク内にキャッチし、活性汚泥濃度を上げ、汚泥の養生期間を延長し、優れた固液分離作用によって分解効率を向上させ、排出標準またはより高い水回収標準を満足する。またMBRは通常二級生物処理に適用され、かつ生物処理およびろ過膜の特性を有するため、三級水処理の機能を果たすことができる。例えば、特許文献1に記載の膜分離装置が開示されている。
【0003】
図1に示すように、従来のMBRシステムにおいて、膜分離装置104は框体106および送風機を備える。框体106は下側が曝気区域であり、上側がろ過膜区域である。曝気区域は曝気ユニット108を有する。曝気ユニット108は主空気管110と、主空気管110に垂直の複数の支空気管112とを有する。支空気管112は主空気管110に繋がり、気孔114を有する。送風機(図中未表示)は主空気管110の一端に接続され、圧縮空気を気孔114から拡散させる。ろ過膜区域は複数のろ過膜ユニット116を有する。ろ過膜116は産水管118によって産水共管120に繋がる。
図2に示すように、ろ過膜ユニット116は支持板122と、それの両側に配置されたろ過膜124とを有する。支持板122は中空を呈し、上端に中空の内部に繋がる吸水口126を有する。産水管118は一端が吸水口126に接続される。
【0004】
MBRを使用する際、複数の膜分離装置104を汚水池(図中未表示)に装着する。池中の汚水は二つのろ過膜ユニット116の間の隙間からろ過膜124に流れ込み、ろ過され、そののち支持板122に進み、続いて吸水口126および産水管118を介して産水共管120に流れ込む。産水共管120はろ過された水を次の段階に導入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−331230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、汚水がろ過膜124に流れ込み、ろ過される際、汚泥がろ過膜124に付着することを免れることができない。それに対し、曝気ユニット108はろ過膜124に付着した汚泥を除去することが働きの一部分である。一方、二つのろ過膜ユニット116の間の隙間は非常に小さく、一般的に8mm前後である。かつ、産水共管120に接続されたポンプモーター(図中未表示)を間歇運転させなければならないため、ポンプモーターが運転する際、ろ過膜124は支持板122に吸着する。ポンプモーターが停止する際、ろ過膜124は解放される。それに対し、ろ過膜124が吸着したり、解放されたりする間にろ過膜124に付着した汚泥は空気洗浄の除去力によって剥落するはずであるが、実際には予測と異なり、ブリッジ現象が起こりやすい。ブリッジ現象が起こった汚泥を曝気設備によって洗浄することが難しいため、汚泥付着現象が発生するだけでなく、一定期間にわたったら薬剤によって洗浄する必要がある。深刻な場合、ろ過膜ユニット116を取り外し、洗浄しなければならない。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ろ過膜に付着した汚泥を効果的に除去し、フィルターの効率を向上させる膜分離装置を提供することにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による膜分離装置は框体を有し、框体は複数のろ過膜ユニットおよび一つの曝気ユニットを有する。ろ過膜ユニットは中空の基座と、基座の両側に配置されたろ過膜とを有する。膜分離装置はクリーナーをさらに有する。クリーナーは一組のレールおよび洗浄ユニットを有する。レールは框体に装着される。洗浄ユニットは外力によってレールに沿って
ろ過膜ユニットと平行である方向に移動できるようにレールに装着され、かつ上支持部、下支持部および複数の桿状洗浄ユニットを有する。上支持部はろ過膜ユニットの上方に位置する。下支持部はろ過膜ユニットの下方に位置する。桿状洗浄ユニットはろ過膜ユニットの間の隙間を貫通し、かつ一端が上支持部に接続され、他端が下支持部に接続される。
【0008】
桿状洗浄ユニットは、所定の張力を有し、洗浄ユニットが外力によって移動する際
、ろ過膜に付着した汚泥を除去する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】従来の膜分離装置のろ過膜を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態による膜分離装置を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態による膜分離装置を示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態による膜分離装置においてのクリーナーの一部分を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態による膜分離装置においての桿状洗浄ユニットの表面を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態による膜分離装置においての桿状洗浄ユニットの表面を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態による膜分離装置においての曝気ユニットおよび水力噴射ユニットの一部分を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
図3に示すように、本発明の一実施形態による膜分離装置1は、框体10を備える。框体10は複数のろ過膜ユニット12、曝気ユニット14、クリーナー16および水力噴射ユニット18を有する。ここで、曝気ユニット14、クリーナー16および水力噴射ユニット18は汚泥付着防止設備を構成する。
【0011】
框体10は、従来の装置と同じであるため、構造についての詳細な説明を省略する。ろ過膜ユニット12は従来の装置と同じように中空板状の基座と、基座の両側に別々に配置された膜パッド(図中未表示)およびろ過膜とを有する。基座は上端に吸水口を有する。ろ過膜ユニット12は框体10の上側に並列に配置され、かつパイプ20によって吸水口および集水管22を接続する。框体10は汚水池(図中未表示)に装着される。汚水は二つのろ過膜ユニット12の間の隙間からろ過膜に流れ込み、ろ過される。ろ過された水は上端の吸水口から集水管22に流れ込む。框体10とろ過膜ユニット12の機能および作用は従来の装置と同じであるため、説明を省略する。
【0012】
曝気ユニット14は、従来の装置と同じようにろ過膜ユニット12の下方に位置するように框体10に装着され、かつ空気管路を有する。空気管路は主空気管24と、主空気管24に垂直の複数の支空気管26とを有する。支空気管26は主空気管24に繋がり、気孔28を有する。送風機(図中未表示)は主空気管24の一端に接続され、支空気管26の気孔28から圧縮空気を拡散させる。曝気ユニット14の機能および作用は従来の装置と同じであるため、説明を省略する。
【0013】
クリーナー16は、一組のレール30および洗浄ユニット13を有する。レール30はろ過膜ユニット12の上方に位置するように框体10の上端に装着され、かつ延伸方向がろ過膜ユニット12に平行する。洗浄ユニット13は上支持部32、複数の桿状洗浄ユニット34および下支持部36を有する。上支持部32はレール30と結合し、かつ外力によってレール30に沿って移動することができる。上支持部32および下支持部36は延伸方向がレール30に垂直であり、長さが並列したろ過膜ユニット12の総厚さより大きい。
図4に示すように、桿状洗浄ユニット34は一端が上支持部32に固定され、他端がろ過膜ユニット12の間の隙間を貫通し、下支持部36に接続される。下支持部36はろ過膜ユニット12の下方にぶら下がるように配置される。
【0014】
図5に示すように、上支持部32は桿状洗浄ユニット34の張力を調整するための張力調整器38を有する。本実施形態において、張力調整器38は複数のスプリングから構成され、一端が上支持部32に装着され、他端が桿状洗浄ユニット34に接続される。下支持部36は一定した質量によって桿状洗浄ユニット34およびスプリング38を引っ張るため、桿状洗浄ユニット34は張力が一定する。暫く時間が経ったら、一部分の桿状洗浄ユニット34に疲労および弛緩現象が発生する。このとき弛緩した桿状洗浄ユニット34は張力調整器38の弾力によって一定の張力を維持することができる。
【0015】
駆動ユニット、例えばモーター(図中未表示)が上支持部32を駆動し、レール30に沿って移動させる際、桿状洗浄ユニット34はろ過膜ユニット12のろ過膜の表面をすり、ろ過膜に付着した汚泥を除去する。汚泥にブリッジ現象が発生しても、桿状洗浄ユニット34は物理的接触によって汚泥を簡単に除去することができる。一方、下支持部36は何にも支えられず、宙に浮く状態を呈するため、曝気ユニット14の生じた気泡および噴射ユニット18の噴射した水流の干渉を受けて不規則な揺れまたは振動を生じる。下支持部36の揺れまたは振動によってろ過膜に付着した汚泥を除去する桿状洗浄ユニット34の効果を強化することができる。
【0016】
本実施形態において、桿状洗浄ユニット34は直線体を呈し、かつナイロン糸、炭素繊維糸または棉糸などの複合材料を採用してもよい。表面について、桿状洗浄ユニット34は表面が平滑な直線体または表面に模様を有する直線体であってもよい。桿状洗浄ユニット34の表面は、特別に設計された模様または
図6に示した糸の模様であってもよい。一方、桿状洗浄ユニット34’に
図7に示した毛40を配置することができる。理論上、表面に模様を有する桿状洗浄ユニット34は比較的よい除去効果を果たすことができる。
【0017】
図8に示すように、水力噴射ユニット18はろ過膜ユニット12および曝気ユニット14の下方に位置するように框体10の中に装着され、かつ一組のレール42と、複数のノズル46を有する水管路44と、水管48とを有する。水管路44はレール42に沿って移動できるようにレール42と結合した中空管体である。水管48は一端が水管路44に接続され、他端が加圧気(図中未表示)に接続されることによって加圧された水を水管路44に供給し、ノズル46からろ過膜ユニット12へ水流を噴射する。水管路44はモーターなどの駆動ユニット(図中未表示)によって駆動され、レール42に沿って移動するため、水流を噴射し、あらゆるろ過膜ユニット12まで届けることができる。水管48は水管路44の移動の邪魔にならないため、長さが一定したホースである。
【0018】
水管路44の移動設定は、下記の選択肢がある。1)は一定時間を置いて一回または数回移動するか一回または数回往復移動することである。2)は一定速度によって往復移動することである。3)は需要に応じて起動する、例えばろ過膜ユニット12の圧力差が一定の数値に達したと感知されると水管路44を移動させることである。
【0019】
気孔およびノズルの数は需要に応じて増減することができる。一般的に言えば、気孔の数がノズルの数より多いほうが好ましい。実験結果により、気孔の数とノズルの数が2:1である場合、洗浄効果が比較的良いことが判明された。
【0020】
一方、曝気ユニットおよび水力噴射ユニットは固定式または移動式であるが、これに限らず、一つは固定式、もう一つは移動式であってもよい。
【符号の説明】
【0021】
1・・・膜分離装置、
10・・・框体、
12・・・ろ過膜ユニット、
13・・・洗浄ユニット、
14・・・曝気ユニット、
16・・・クリーナー、
18・・・水力噴射ユニット、
20・・・パイプ、
22・・・集水管、
24・・・主空気管、
26・・・支空気管、
28・・・気孔、
30・・・レール、
32・・・上支持部、
34、34’・・・桿状洗浄ユニット、
36・・・下支持部、
38・・・張力調整器、
40・・・毛、
42・・・レール、
44・・・水管路、
46・・・ノズル、
48・・・水管。