特許第6029412号(P6029412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6029412酸化脱水素触媒及びその製造方法、並びにアルカジエンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029412
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】酸化脱水素触媒及びその製造方法、並びにアルカジエンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/847 20060101AFI20161114BHJP
   C07C 5/48 20060101ALI20161114BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20161114BHJP
   B01J 23/22 20060101ALI20161114BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20161114BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20161114BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20161114BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20161114BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20161114BHJP
【FI】
   B01J23/847 Z
   C07C5/48
   C07C11/167
   B01J23/22 Z
   B01J37/03 Z
   B01J37/04 102
   B01J37/08
   B01J37/02 101C
   !C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-222845(P2012-222845)
(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-73471(P2014-73471A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100125324
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 健
(72)【発明者】
【氏名】三浦 弘
(72)【発明者】
【氏名】大塩 敦保
(72)【発明者】
【氏名】高崎 倫子
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0232320(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0090509(US,A1)
【文献】 特開2001−009276(JP,A)
【文献】 米国特許第06586360(US,B1)
【文献】 特開2003−277299(JP,A)
【文献】 特開2011−255311(JP,A)
【文献】 特開2012−187495(JP,A)
【文献】 特開2003−260354(JP,A)
【文献】 特開平09−071561(JP,A)
【文献】 特開2008−174442(JP,A)
【文献】 特開2010−131576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C07C 5/48
C07C 11/167
C07B 61/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数4〜6のアルカンを酸化脱水素してアルカジエンを得る酸化脱水素反応用の触媒であって、
ニッケル原子及びコバルト原子のうちの1種以上の金属原子(金属原子A)と、マグネシウム原子と、バナジウム原子と、を含有する金属酸化物であり、
ニッケル、コバルト及びマグネシウムの原子換算の合計モル数に対するマグネシウム原子の原子換算のモル数の割合が、40〜80モル%であり、
ニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計に対するバナジウムのV換算量の割合が、5〜30質量%であること、
を特徴とする酸化脱水素触媒。
【請求項2】
ニッケル及びコバルトのうちの1種以上と、マグネシウムと、の複合酸化物に、酸化バナジウムが担持されたものであることを特徴とする請求項1記載の酸化脱水素触媒。
【請求項3】
触媒全量に対するニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計の割合が、50質量%以上であることを特徴とする請求項1又は2いずか1項記載の酸化脱水素触媒。
【請求項4】
触媒中の全金属原子の原子換算の合計モル数に対するニッケル、コバルト、マグネシウム及びバナジウムの原子換算の合計モル数の割合が、50モル%以上であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載の酸化脱水素触媒。
【請求項5】
ニッケル原子及びコバルト原子のうちの1種以上とマグネシウム原子とを含有する水溶液と、塩基とを混合して反応させて、反応生成物を沈殿させ、次いで、得られた反応生成物を焼成することより、金属酸化物を得、次いで、該金属酸化物にバナジウム原子を含有する水溶液を接触させ、乾燥し、焼成することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の酸化脱水素触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4いずれか1項記載の酸化脱水素触媒の存在下、450〜600℃で、炭素数4〜6のアルカンの酸化脱水素反応を行うことを特徴とするアルカジエンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素数が4〜6のアルカンを酸化脱水素してアルカジエンを得る酸化脱水素反応に用いられる酸化脱水素触媒及びその製造方法に関する。また、本発明は、その酸化脱水素触媒を用いるアルカジエンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3−ブタジエンは、主として自動車タイヤのゴム原料として用いられており、インドや中国などでの自動車需要の増加に伴い、その需要が増加している。現在、1,3−ブタジエンは、工業的には、ナフサクラッカーによるエチレン製造の際に副産されるC4留分を抽出及び精製することによって、製造されている。
【0003】
しかし、今後、エチレン製造の原料が、ナフサより安価な天然ガスに置き換わることが予測され、それに伴い副産するC4留分が減少し、その結果、1,3−ブタジエンの生産量が減少することが懸念されている。
【0004】
従来より、1,3−ブタジエンの製造方法としては、モリブデン−マグネシウム酸化物触媒等を用いたn−ブタンからの酸化脱水素により1,3−ブタジエンを製造する方法(例えば、特許文献1)や、1970年代には、クロミア−アルミナ触媒を用いたブタン・ブテンの単純脱水素によって1,3−ブタジエンを製造する方法(例えば、非特許文献1)が検討されてきた。このうち、ブタン・ブテンの単純脱水素による方法が商業化されたが、コーク失活が大きく、触媒再生を頻繁に行う必要があるという問題があった。また、近年、n−ブテンを酸化脱水素することによりブタジエンを製造する方法(例えば、特許文献2)が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−74335号公報
【特許文献2】特開2010−90082号公報
【0006】
【非特許文献1】G.F.Hornaday,Petroleum Engr.,26,No.11,C−7(1954)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献2に開示されている方法は、ブテンを原料とする方法であり、ブタンを原料とする方法ではない。そのため、ブタンを原料とする場合には、新たな、酸化脱水素触媒が必要とされる。
【0008】
従って、本発明の目的は、ブタン等のアルカンを原料として、酸化脱水素反応により、1,3−ブタジエン等のアルカジエンを得る酸化脱水素反応において、優れた触媒活性を示す酸化脱水素触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、特定の金属種(具体的には、ニッケル原子、コバルト原子及びジルコニウム原子のうちの1種以上の金属原子、マグネシウム原子及びバナジウム原子)が特定の含有割合で含有して構成される金属酸化物が、アルカンを酸化脱水素してアルカジエンを得る酸化脱水素反応において、優れた触媒活性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明(1)は、炭素数4〜6のアルカンを酸化脱水素してアルカジエンを得る酸化脱水素反応用の触媒であって、
ニッケル原子及びコバルト原子のうちの1種以上の金属原子(金属原子A)と、マグネシウム原子と、バナジウム原子と、を含有する金属酸化物であり、
ニッケル、コバルト及びマグネシウムの原子換算の合計モル数に対するマグネシウム原子の原子換算のモル数の割合が、40〜80モル%であり、
ニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計に対するバナジウムのV換算量の割合が、5〜30質量%であること、
を特徴とする酸化脱水素触媒を提供するものである。
【0011】
また、本発明(2)は、ニッケル原子及びコバルト原子のうちの1種以上とマグネシウム原子とを含有する水溶液と、塩基とを混合して反応させて、反応生成物を沈殿させ、次いで、得られた反応生成物を焼成することより、金属酸化物を得、次いで、該金属酸化物にバナジウム原子を含有する水溶液を接触させ、乾燥し、焼成することを特徴とする本発明(1)の酸化脱水素触媒の製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明(3)は、本発明(1)の酸化脱水素触媒の存在下、450〜600℃で、炭素数4〜6のアルカンの酸化脱水素反応を行うことを特徴とするアルカジエンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ブタン等のアルカンを原料として、酸化脱水素反応により、1,3−ブタジエン等のアルカジエンを得る酸化脱水素反応において、優れた触媒活性を示す酸化脱水素触媒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の酸化脱水素触媒は、炭素数4〜6のアルカンを酸化脱水素してアルカジエンを得る酸化脱水素反応用の触媒であって、
ニッケル原子、コバルト原子及びジルコニウム原子のうちの1種以上の金属原子と、マグネシウム原子と、バナジウム原子と、を含有する金属酸化物であり、
ニッケル、コバルト、ジルコニウム及びマグネシウムの原子換算の合計モル数に対するマグネシウム原子の原子換算のモル数の割合が、40〜80モル%であり、
ニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、ジルコニウムのZrO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計に対するバナジウムのV換算量の割合が、5〜30質量%であること、
を特徴とする酸化脱水素触媒である。
【0015】
本発明の酸化脱水素触媒は、炭素数4〜6のアルカンを酸化脱水素してアルカジエンを得る酸化脱水素反応に触媒として用いられる酸化脱水素触媒である。炭素数4〜6のアルカンとしては、n−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、シクロヘキサンが挙げられる。特に、本発明の酸化脱水素触媒は、n−ブタンを酸化脱水素して1,3−ブタジエンを得る酸化脱水素反応において、有利に用いられる。なお、本発明の酸化脱水素触媒を用いる酸化脱水素反応では、副生成物として、n−ブテン等のn−アルケン等が生成する。
【0016】
本発明の酸化脱水素触媒は、金属酸化物であり、ニッケル原子、コバルト原子及びジルコニウム原子のうちの1種以上の金属原子(以下、金属原子Aとも記載する。)と、マグネシウム原子と、バナジウム原子と、を含有する金属酸化物である。本発明の酸化脱水素触媒では、ニッケル原子、コバルト原子及びジルコニウム原子のうちの1種以上の金属原子(金属原子A)、マグネシウム原子及びバナジウム原子は、単一金属の酸化物の状態で、あるいは、これらのうちの2種以上の金属からなる複合酸化物の状態で、あるいは、単一金属の酸化物と複合酸化物の両方状態で、存在している。つまり、本発明の酸化脱水素触媒では、各金属原子(ニッケル原子、コバルト原子及びジルコニウム原子のうちの1種以上の金属原子(金属原子A)、マグネシウム原子、バナジウム原子)がどのような状態又は構造で金属酸化物を形成しているかは、特に制限されず、例えば、(i)金属原子Aの酸化物と、マグネシウムの酸化物と、バナジウムの酸化物と、が凝集した凝集体であっても、(ii)金属原子A及びマグネシウムの複合酸化物にバナジウムの酸化物が担持されたものであっても、(iii)金属原子A、マグネシウム及びバナジウムの複合酸化物であっても、(iv)(i)〜(iii)の混合物であってもよい。なお、本発明の酸化脱水素触媒では、ニッケル原子、コバルト原子及びジルコニウム原子は、これらのうちのいずれか1種であってもよいし、これらのうちのいずれか2種の組み合わせであってもよいし、これら3種の組み合わせであってもよい。これらのうち、金属原子Aとしては、転化率、アルカジエンの選択率及びアルカジエンの収率が高くなる点で、ニッケル又はコバルトが好ましく、ニッケルが特に好ましい。
【0017】
本発明の酸化脱水素触媒において、ニッケル、コバルト、ジルコニウム及びマグネシウムの原子換算の合計モル数に対するマグネシウムの原子換算のモル数の割合((Mg/(Ni+Co+Zr+Mg))×100)は、40〜80モル%、好ましくは40〜60モル%である。ニッケル、コバルト、ジルコニウム及びマグネシウムの原子換算の合計モル数に対するマグネシウムの原子換算のモル数の割合が、上記範囲にあることにより、CO又はCOの生成及びコークの生成が少なく、且つ、アルカジエンの選択率及び収率が高くなる。一方、金属原子A及びマグネシウムの原子換算の合計モル数に対するマグネシウムの原子換算のモル数の割合が、上記範囲未満だと、アルカジエンの選択率や収率が低くなり、また、上記範囲を超えると、分解反応が進み過ぎて、CO又はCOの生成やコークの生成が多くなる。なお、本発明において、ニッケル、コバルト、ジルコニウム及びマグネシウムの原子換算の合計モル数とは、ニッケル、コバルト、ジルコニウム及びマグネシウムのうち、酸化脱水素触媒に含有されているニッケル原子のモル数と、コバルト原子のモル数と、ジルコニウム原子のモル数と、マグネシウムのモル数とを合計した値である。
【0018】
本発明の酸化脱水素触媒において、ニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、ジルコニウムのZrO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計に対するバナジウムのV換算量の割合((V換算量/(NiO換算量+CoO換算量+ZrO換算量+MgO換算量+V換算量))×100)は、5〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。ニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、ジルコニウムのZrO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計に対するバナジウムのV換算量の割合が、上記範囲にあることにより、アルカジエンの選択率及び収率が高くなる。一方、ニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、ジルコニウムのZrO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計に対するバナジウムのV換算量の割合が、上記範囲未満だと、アルカジエンの選択率及び収率が低くなり、また、上記範囲を超えると、アルカジエンの選択率及び収率が低くなる。なお、本発明において、ニッケルのNiO換算量とは、触媒中に含有されているニッケル原子が、全てNiOとして存在しているとして計算した場合のNiOの質量を指し、コバルトのCoO換算量とは、触媒中に含有されているコバルト原子が、全てCoOとして存在しているとして計算した場合のCoOの質量を指し、ジルコニウムのZrO換算量とは、触媒中に含有されているジルコニウム原子が、全てZrOとして存在しているとして計算した場合のZrOの質量を指し、マグネシウムのMgO換算量とは、触媒中に含有されているマグネシウム原子が、全てMgOとして存在しているとして計算した場合のMgOの質量を指し、バナジウムのV換算量とは、触媒中に含有されているバナジウム原子が、全てVとして存在しているとして計算した場合のVの質量を指す。
【0019】
本発明の酸化脱水素触媒は、主として、ニッケル原子、コバルト原子及びジルコニウム原子のうちの1種以上と、マグネシウム原子と、バナジウム原子と、酸素原子と、からなる金属酸化物であるが、本発明の酸化脱水素触媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の金属原子を含んでいてもよい。本発明の酸化脱水素触媒は、ニッケル原子、コバルト原子及びジルコニウム原子のうちの1種以上と、マグネシウム原子と、バナジウム原子と、酸素原子と、のみからなる金属酸化物であることが好ましい。
【0020】
本発明の酸化脱水素触媒において、触媒全量に対するニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、ジルコニウムのZrO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計の割合(((NiO換算量+CoO換算量+ZrO換算量+MgO換算量+V換算量)/触媒全量)×100)が、好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%、より好ましくは80質量%以上である。触媒全量に対するニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、ジルコニウムのZrO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計の割合が、上記範囲にあることにより、アルカジエンの選択率及び収率が高くなる。
【0021】
本発明の酸化脱水素触媒において、触媒中の全金属原子の原子換算の合計モル数に対するニッケル、コバルト、ジルコニウム、マグネシウム及びバナジウムの原子換算の合計モル数の割合(((Ni+Co+Zr+Mg+V)/触媒中の全金属原子)×100)は、好ましくは50モル%以上、特に好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、より好ましくは100モル%である。
【0022】
本発明の酸化脱水素触媒は、ニッケル、コバルト及びジルコニウムのうちの1種以上と、マグネシウムと、の複合酸化物に、酸化バナジウムが担持されたものであることが好ましい。このような酸化脱水素触媒としては、例えば、ニッケル原子、コバルト原子及びジルコニウム原子のうちの1種以上とマグネシウム原子とを含有する水溶液と、塩基とを混合して反応させて、反応生成物を沈殿させ、次いで、得られた反応生成物を焼成することより、金属酸化物を得、次いで、該金属酸化物にバナジウム原子を含有する水溶液を接触させ、乾燥し、焼成することにより得られる酸化脱水素触媒が挙げられる。
【0023】
本発明の酸化脱水素触媒を製造する方法としては、例えば、ニッケル原子、コバルト原子及びジルコニウム原子のうちの1種以上とマグネシウム原子とを含有する水溶液と、塩基とを混合して反応させて、反応生成物を沈殿させ、次いで、得られた反応生成物を焼成することより、金属酸化物を得、次いで、該金属酸化物にバナジウム原子を含有する水溶液を接触させ、乾燥し、焼成する酸化脱水素触媒の製造方法(以下、酸化脱水素触媒の製造方法(1)とも記載する。)が挙げられる。
【0024】
酸化脱水素触媒の製造方法(1)では、先ず、ニッケル原子、コバルト原子及びジルコニウム原子のうちの1種以上(金属原子A)とマグネシウム原子とを含有する水溶液と、塩基とを混合して反応させる。
【0025】
ニッケル原子、コバルト原子及びジルコニウム原子のうちの1種以上(金属原子A)と、マグネシウム原子と、を含有する水溶液は、水に、ニッケル原料、コバルト原料及びジルコニウム原料のうちの1種以上と、マグネシウム原料と、を添加して、溶解させることによって調製される。ニッケル原料としては、例えば、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル等の水溶性のニッケル塩又はその水和物が挙げられる。これらのニッケル原料は、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。コバルト原料としては、例えば、硫酸コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト等の水溶性のコバルト塩又はその水和物が挙げられる。これらのコバルト原料は、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。ジルコニウム原料としては、例えば、硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニウム等の水溶性のジルコニウム塩又はその水和物が挙げられる。これらのジルコニウム原料は、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。マグネシウム原料としては、例えば、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム等の水溶性のマグネシウム塩又はその水和物が挙げられる。これらのマグネシウム原料は、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0026】
金属原子Aとマグネシウム原子とを含有する水溶液の調製では、ニッケル、コバルト、ジルコニウム及びマグネシウムの原子換算の合計モル数に対するマグネシウムの原子換算のモル数の割合((Mg/(Ni+Co+Zr+Mg))×100)が、40〜80モル%、好ましくは40〜60モル%となるように、金属原子A及びマグネシウム原子を含有する水溶液中の各金属原子の含有量を調節する。
【0027】
そして、金属原子A及びマグネシウム原子を含有する水溶液と、塩基とを混合して反応させて、反応生成物を沈殿させ、反応生成物を得る。このとき得られる反応生成物は、金属原子A及びマグネシウム原子を含有する共沈物である。
【0028】
塩基としては、例えば、アンモニア水、アルカリ金属の炭酸塩又は水酸化物の水溶液等が挙げられる。アルカリ金属の炭酸塩又は水酸化物としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらの塩基は、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0029】
ニッケル原子、コバルト原子及びジルコニウム原子のうちの1種以上(金属原子A)とマグネシウム原子とを含有する水溶液と、塩基とを混合して反応させて、反応生成物を沈殿させる方法は、一般的に、共沈法と呼ばれており、公知の共沈法が適宜適用可能である。そのような方法としては、例えば、上記水溶液を攪拌しながら、上記水溶液に塩基をpHが8〜11となるまで滴下し、更に0.5〜2時間程度撹拌して、反応を完結させた後、静置することにより、共沈物である反応生成物を沈殿させる方法が挙げられる。その後、沈殿した反応生成物を、ろ過、水洗後、固形物を分離し、公知の方法により、100〜150℃程度の温度で乾燥処理して、反応生成物が得られる。
【0030】
酸化脱水素触媒の製造方法(1)では、次いで、得られた反応生成物を焼成する(以下、第1焼成とも記載する。)ことにより、金属酸化物を得る。第1焼成の焼成温度は、好ましくは500〜800℃である。焼成温度が、500℃未満だと、目的とする金属酸化物が得られ難く、また、800℃を超えると、金属酸化物の焼結が起こり易くなる。第1焼成の焼成時間は、好ましくは0.5〜2時間である。第1焼成の焼成雰囲気は、酸素ガス雰囲気、空気中等の酸化性雰囲気である。第1焼成により得られる金属酸化物は、ニッケル、コバルト及びジルコニウムのうちの1種以上と、マグネシウムの酸化物である。
【0031】
酸化脱水素触媒の製造方法(1)では、次いで、第1焼成により得られた金属酸化物にバナジウム原子を含有する水溶液を接触させ、乾燥し、焼成する(以下、第2焼成とも記載する。)ことにより、本発明の酸化脱水素触媒を得る。
【0032】
バナジウム原子を含有する水溶液は、水に、バナジウム原料を添加して、溶解させることによって調製される。バナジウム原料としては、例えば、メタバナジン酸アンモニウム、シュウ酸バナジル等の水溶性のバナジウム塩又はその水和物が挙げられる。これらのバナジウム原料は、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0033】
バナジウム原子を含有する水溶液の調製及び第1焼成により得られた金属酸化物とバナジウム原子を含有する水溶液との接触では、第2焼成を行い得られる触媒中のニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、ジルコニウムのZrO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計に対するバナジウムのV換算量の割合が、5〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、特に好ましくは10〜20質量%となるように、バナジウム原子を含有する水溶液中のバナジウム原子の含有量及び第1焼成により得られた金属酸化物とバナジウム原子を含有する水溶液の割合を調節する。
【0034】
第1焼成により得られた金属酸化物にバナジウム原子を含有する水溶液を接触させる方法としては、例えば、第1焼成により得られた金属酸化物に、バナジウム原子を含有する水溶液を添加して、第1焼成により得られた金属酸化物に、バナジウム原子を含有する水溶液を含浸させる方法、第1焼成により得られた金属酸化物を、バナジウム原子を含有する水溶液に加えて、撹拌する方法等が挙げられる。そのときの条件は、例えば、20〜60℃、0.5〜2時間である。このとき、第1焼成により得られた金属酸化物が金属酸化物微粒子の凝集体である場合は、その凝集体の内部に、バナジウム原子を含有する水溶液が含浸する。そして、第1焼成により得られた金属酸化物を、バナジウム原子を含有する水溶液と接触させた後、金属酸化物を乾燥して、水を蒸発させ乾固させる。
【0035】
次いで、得られた乾燥物を焼成する(第2焼成)ことにより、本発明の酸化脱水素触媒を得る。第2焼成の焼成温度は、好ましくは500〜800℃である。焼成温度が、500℃未満だと、目的とする金属酸化物が得られ難く、また、800℃を超えると、金属酸化物の焼結が起こり易くなる。第2焼成の焼成時間は、好ましくは0.5〜2時間である。第2焼成の焼成雰囲気は、酸素ガス雰囲気、空気中等の酸化性雰囲気である。この第2焼成により得られる金属酸化物は、(i)金属原子Aの酸化物と、マグネシウムの酸化物と、バナジウムの酸化物と、が凝集した凝集体、(ii)金属原子A及びマグネシウムの複合酸化物にバナジウムの酸化物が担持されたもの、(iii)金属原子A、マグネシウム及びバナジウムの複合酸化物、又は(iv)(i)〜(iii)の混合物である。
【0036】
このようにして、酸化脱水素触媒の製造方法(1)を行うことにより、本発明の酸化脱水素触媒を得る。
【0037】
本発明のアルカジエンの製造方法は、本発明の酸化脱水素触媒の存在下、450〜600℃で、炭素数4〜6のアルカンの酸化脱水素反応を行うことを特徴とするアルカジエンの製造方法である。つまり、本発明のアルカジエンの製造方法は、炭素数4〜6のアルカンを原料として、その酸化脱水素を行いアルカジエンを得る酸化脱水素反応を、触媒として、本発明の酸化脱水素触媒を用いて行うものである。
【0038】
本発明のアルカジエンの製造方法に係る炭素数4〜6のアルカン、すなわち、反応原料としては、n−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、シクロヘキサンが挙げられ、これらのうち、n−ブタンが好ましい。
【0039】
酸化脱水素反応の反応温度は、450〜600℃、好ましくは500〜550℃である。酸化脱水素反応の反応温度が、上記範囲にあることにより、CO又はCOの生成及びコークの生成が少なく、且つ、アルカジエンの選択率及び収率が高くなる。一方、酸化脱水素反応の反応温度が、上記範囲未満だと、アルカンの転化率やアルカジエンの収率が低くなり、また、上記範囲を超えると、分解反応が進み過ぎて、CO又はCOの生成やコークの生成が多くなる。
【0040】
本発明のアルカジエンの製造方法の形態例としては、例えば、触媒が充填されている固定床流通式反応装置を用いて、その反応装置に、加熱下、原料ガスを供給する方法が挙げられる。原料ガスは、例えば、アルカン、酸素源及び窒素又はヘリウムの混合ガスとして供給される。酸素源としては、純酸素又は空気が用いられる。原料ガスの供給量は、特に制限されず、触媒活性、触媒充填量、接触時間、圧力損失などにより、適宜調節される。原料ガスとして、アルカンと酸素の混合ガスを用いる場合、酸素過剰だと、アルカンの完全酸化によるCOの生成が多くなるため、酸素に対するアルカンの分圧比(アルカン/酸素)が0.5以上であることが好ましい。反応圧力は、特に制限されず、常圧、加圧のいずれでもよい。
【0041】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0042】
(実施例及び比較例)
(触媒の製造)
<触媒A>5質量%V/Mg−Ni−O(Mg25モル%)
イオン交換水600mlに硝酸マグネシウム六水和物9.6978gと硝酸ニッケル六水和物32.9980gを溶解した水溶液を、室温において150rpmの回転数で撹拌しながら、pHが11になるまで、水酸化カリウム水溶液を滴下し、マグネシウム及びニッケルの水酸化物を沈殿させた。更に1時間撹拌して反応を完結させた後、1時間静置の後、吸引ろ過により沈殿物を回収した。次いで、沈殿物にアンモニア水を加え撹拌することにより洗浄を行い、吸引ろ過して洗浄物を得、次いで、洗浄物を130℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥物を空気中550℃で2時間焼成し、マグネシウム及びニッケルの酸化物を得た。得られたマグネシウム及びニッケルの酸化物を、乳鉢で粉砕した後、ふるい分けを行い、100メッシュ以下のものを得た。
次いで、メタバナジン酸アンモニウム0.1284gをイオン交換水110mlに溶解し、得られた溶液に、上記で得たマグネシウム及びニッケルの酸化物1.9000gを加え、40℃で1時間撹拌した。次いで、減圧蒸発乾固して、蒸発乾固物を得た。次いで、得られた蒸発乾固物を、130℃で12時間乾燥した後、空気中550℃で2時間焼成し、焼成物を得た。得られた焼成物のふるい分けを行い、20〜60メッシュのものを触媒Aとして得た。
得られた触媒Aの金属原子A及びマグネシウムの原子換算の合計モル数に対するマグネシウム原子の原子換算のモル数の割合;ニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、ジルコニウムのZrO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計に対するバナジウムのV換算量の割合;触媒全量に対するニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、ジルコニウムのZrO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計の割合;触媒中の全金属原子の原子換算の合計モル数に対するニッケル、コバルト、ジルコニウム、マグネシウム及びバナジウムの原子換算の合計モル数の割合を表1に示す。
【0043】
<触媒B>5質量%V/Mg−Ni−O(Mg50モル%)
イオン交換水350mlに硝酸マグネシウム六水和物11.1485gと硝酸ニッケル六水和物12.6438gを溶解した水溶液を室温において150rpmの回転数で撹拌しながら、pHが11になるまで水酸化カリウム水溶液を滴下し、マグネシウム及びニッケル水酸化物を沈殿させた。更に1時間撹拌し反応を完結させた後、1時間静置の後、吸引ろ過により沈殿物を回収した。次いで、アンモニア水を加え撹拌することにより洗浄を行い、吸引ろ過により洗浄物を得、次いで、130℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥物を空気中550℃で2時間焼成し、マグネシウム及びニッケルの酸化物を得た。得られたマグネシウム及びニッケルの酸化物を、乳鉢で粉砕した後、ふるい分けを行い、100メッシュ以下のものを得た。
次いで、メタバナジン酸アンモニウム0.1016gをイオン交換水85mlに溶解し、上記で得られたマグネシウム及びニッケルの酸化物1.5001gを加え、40℃で1時間撹拌した。次いで、減圧蒸発乾固して、蒸発乾固物を得た。次いで、得られた減圧蒸発乾固物を130℃で12時間乾燥した後、空気中550℃で2時間焼成し、焼成物を得た。得られた焼成物のふるい分けを行い、20〜60メッシュのものを触媒Bとして得た。
得られた触媒Bの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0044】
<触媒C>5質量%V/Mg−Ni−O(Mg75モル%)
イオン交換水410mlに硝酸マグネシウム六水和物19.6662gと硝酸ニッケル六水和物7.4331gを溶解した他は、触媒Bの場合と同様に行い、触媒Cを得た。
得られた触媒Cの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0045】
<触媒D>5質量%V/Mg−Zr−O(Mg25モル%)
イオン交換水160mlに硝酸マグネシウム六水和物2.5011gと硝酸ジルコニル二水和物6.0086gを溶解した水溶液を室温において150rpmの回転数で撹拌しながら、pHが10になるまでアンモニア水を滴下し、マグネシウム及びジルコニウム水酸化物を沈殿させた。更に1時間撹拌し反応を完結させた後、1時間静置の後、吸引ろ過により沈殿物を回収した。次いで、アンモニア水を加え撹拌することにより洗浄を行い、吸引ろ過により洗浄物を得、次いで、130℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥物を空気中550℃で2時間焼成し、マグネシウム及びジルコニウムの酸化物を得た。得られたマグネシウム及びジルコニウムの酸化物を、乳鉢で粉砕した後、ふるい分けを行い、100メッシュ以下のものを得た。
次いで、メタバナジン酸アンモニウム0.0643gをイオン交換水55mlに溶解し、上記で得られたマグネシウム及びジルコニウムの酸化物0.9505gを加え、40℃で1時間撹拌した。次いで、減圧蒸発乾固して、蒸発乾固物を得た。次いで、得られた蒸発乾固物を130℃で12時間乾燥した後、空気中550℃で2時間焼成し、焼成物を得た。得られた焼成物のふるい分けを行い、20〜60メッシュのものを触媒Dとして得た。
得られた触媒Dの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0046】
<触媒E>5質量%V/Mg−Zr−O( Mg50モル%)
イオン交換水250mlに硝酸マグネシウム六水和物7.8402gと硝酸ジルコニル二水和物6.2780gを溶解した水溶液を室温において150rpmの回転数で撹拌しながら、pHが10になるまでアンモニア水を滴下し、マグネシウム及びジルコニウム水酸化物を沈殿させた。更に1時間撹拌し反応を完結させた後、1時間静置の後、吸引ろ過により沈殿物を回収した。次いで、アンモニア水を加え撹拌することにより洗浄を行い、吸引ろ過により洗浄物を得、次いで、130℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥物を空気中550℃で2時間焼成し、マグネシウム及びジルコニウムの酸化物を得た。得られたマグネシウム及びジルコニウムの酸化物を、乳鉢で粉砕した後、ふるい分けを行い、100メッシュ以下のものを得た。
次いで、メタバナジン酸アンモニウム0.1016gをイオン交換水85mlに溶解し、上記で得られたマグネシウム及びジルコニウムの酸化物1.5000gを加え、40℃で1時間撹拌した。次いで、減圧蒸発乾固して、蒸発乾固物を得た。次いで、得られた蒸発乾固物を130℃で12時間乾燥した後、空気中550℃で2時間焼成し、焼成物を得た。得られた焼成物のふるい分けを行い、20〜60メッシュのものを触媒Eとして得た。
得られた触媒Eの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0047】
<触媒F>5質量%V/Mg−Zr−O( Mg75モル%)
イオン交換水340mlに硝酸マグネシウム六水和物15.7503gと硝酸ジルコニル二水和物4.2043gを溶解したものを使用し、メタバナジン酸アンモニウム0.1019gをイオン交換水85mlに溶解し、マグネシウム及びジルコニウムの酸化物を1.5000g使用した他は、触媒Eの場合と同様に行い、触媒Fを得た。
得られた触媒Fの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0048】
<触媒G>5質量%V/MgO(Mg100モル%)
イオン交換水500mlに硝酸マグネシウム六水和物31.8722gを溶解し、硝酸ニッケル六水和物を使用しなかった他は、触媒Bの場合と同様に行い、触媒Gを得た。
得られた触媒Gの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0049】
<触媒H>5質量%V/NiO(Mg0モル%)
イオン交換水210mlに硝酸ニッケル六水和物15.7889gを溶解し、硝酸マグネシウム六水和物を使用しなかった他は、触媒Bの場合と同様に行い、触媒Hを得た。
得られた触媒Hの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0050】
<触媒I>5質量%V/ZrO(Mg0モル%)
イオン交換水240mlに硝酸ジルコニル二水和物12.0002gを溶解した水溶液を室温において150rpmの回転数で撹拌しながら、pHが8になるまでアンモニア水を滴下し、ジルコニウム水酸化物を沈殿させた。更に1時間撹拌し反応を完結させた後、1時間静置の後、吸引ろ過により沈殿物を回収した。次いで、アンモニア水を加え撹拌することにより洗浄を行い、吸引ろ過により洗浄物を得、次いで、 130℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥物を空気中550℃で2時間焼成し、ジルコニウム酸化物を得た。得られたジルコニウム酸化物を、乳鉢で粉砕した後、ふるい分けを行い、100メッシュ 以下のものを得た。
次いで、メタバナジン酸アンモニウム0.0645gをイオン交換水55mlに溶解し、上記で得られたジルコニウム酸化物0.9505gを加え、40℃で1時間撹拌した。次いで、減圧蒸発乾固して、蒸発乾固物を得た。次いで、得られた蒸発乾固物を130℃で12時間乾燥した後、空気中550℃で2時間焼成し、焼成物を得た。得られた焼成物のふるい分けを行い、20〜60メッシュのものを触媒Iとして得た。
得られた触媒Iの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0051】
<触媒J>1質量%V/Mg−Ni−O(Mg50モル%)
メタバナジン酸アンモニウム0.0201gをイオン交換水15mlに溶解し、マグネシウム及びニッケルの酸化物を1.4998g使用した他は、触媒Bの場合と同様に行い、触媒Jを得た。
得られた触媒Jの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0052】
<触媒K>10質量%V/Mg−Ni−O(Mg50モル%)
メタバナジン酸アンモニウム0.2149gをイオン交換水185mlに溶解し、マグネシウム及びニッケルの酸化物を1.5007g使用した他は、触媒Bの場合と同様に行い、触媒Kを得た。
得られた触媒Kの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0053】
<触媒L>15質量%V/Mg−Ni−O(Mg50モル%)
メタバナジン酸アンモニウム0.2267gをイオン交換水195mlに溶解し、マグネシウム及びニッケルの酸化物を1.0002g使用し他は、触媒Bの場合と同様に行い、触媒Lを得た。
得られた触媒Lの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0054】
<触媒M>20質量%V/Mg−Ni−O(Mg50モル%)
メタバナジン酸アンモニウム0.3216gをイオン交換水275mlに溶解し、マグネシウム及びニッケルの酸化物を1.0004g使用した他は、触媒Bの場合と同様に行い、触媒Mを得た。
得られた触媒Mの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0055】
<触媒N>25質量%V/Mg−Ni−O(Mg50モル%)
メタバナジン酸アンモニウム0.4289gをイオン交換水365mlに溶解し、マグネシウム及びニッケルの酸化物を1.0008g使用した他は、触媒Bの場合と同様に行い、触媒Nを得た。
得られた触媒Nの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0056】
<触媒O>5質量%V/Mg−Co−O(Mg50モル%)
イオン交換水350mlに硝酸マグネシウム六水和物11.1247gと硝酸コバルト六水和物12.6270gを溶解した水溶液を室温において150rpmの回転数で撹拌しながら、pHが11になるまで水酸化カリウム水溶液を滴下し、マグネシウム及びコバルト水酸化物を沈殿させた。更に1時間撹拌し反応を完結させた後、1時間静置の後、吸引ろ過により沈殿物を回収した。次いで、アンモニア水を加え撹拌することにより洗浄を行い、吸引ろ過により洗浄物を得、次いで、130℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥物を空気中550℃で2時間焼成し、マグネシウム及びコバルトの酸化物を得た。得られたマグネシウム及びコバルトの酸化物を、乳鉢で粉砕した後、ふるい分けを行い、100メッシュ以下のものを得た。
次いで、メタバナジン酸アンモニウム0.1014gをイオン交換水85mlに溶解し、上記で得られたマグネシウム及びコバルトの酸化物1.5001gを加え、40℃で1時間撹拌した。次いで、減圧蒸発乾固して、蒸発乾固物を得た。次いで、得られた減圧蒸発乾固物を130℃で12時間乾燥した後、空気中550℃で2時間焼成し、焼成物を得た。得られた焼成物のふるい分けを行い、20〜60メッシュのものを触媒Oとして得た。
得られた触媒Oの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0057】
<触媒P>5質量%V/Mg−Al−O(Mg50モル%)
イオン交換水440mlに硝酸マグネシウム六水和物14.0443gと硝酸アルミニウム九水和物20.5472gを溶解した水溶液を室温において150rpmの回転数で撹拌しながら、pHが10になるまでアンモニア水を滴下し、マグネシウム及びアルミニウム水酸化物を沈殿させた。更に1時間撹拌し反応を完結させた後、1時間静置の後、吸引ろ過により沈殿物を回収した。次いで、アンモニア水を加え撹拌することにより洗浄を行い、吸引ろ過により洗浄物を得、次いで、130℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥物を空気中550℃で2時間焼成を行い、マグネシウム及びアルミニウムの酸化物を得た。得られたマグネシウム及びアルミニウムの酸化物を、乳鉢で粉砕した後、ふるい分けを行い、100メッシュ以下のものを得た。
次いで、メタバナジン酸アンモニウム0.1016gをイオン交換水85mlに溶解し、上記で得られたマグネシウム及びアルミニウムの酸化物1.5001gを加え、40℃で1時間撹拌した。次いで、減圧蒸発乾固して、蒸発乾固物を得た。次いで、得られた蒸発乾固物を130℃で12時間乾燥した後、空気中550℃で2時間焼成し、焼成物を得た。得られた焼成物のふるい分けを行い、20〜60メッシュのものを、触媒Pとして得た。
得られた触媒Pの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0058】
<触媒Q>5質量%V/Mg−Fe−O(Mg50モル%)
イオン交換水330mlに硝酸マグネシウム六水和物10.6706gと硝酸鉄九水和物16.8124gを溶解した水溶液を室温において150rpmの回転数で撹拌しながら、pHが9.8になるまでアンモニア水を滴下し、マグネシウム及び鉄水酸化物を沈殿させた。更に1時間撹拌し反応を完結させた後、1時間静置の後、吸引ろ過により沈殿物を回収した。次いで、アンモニア水を加え撹拌することにより洗浄を行い、吸引ろ過により洗浄物を得、次いで、130℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥物を空気中550℃で2時間焼成し、マグネシウム及び鉄の酸化物を得た。得られたマグネシウム及び鉄の酸化物を、乳鉢で粉砕した後、ふるい分けを行い、100メッシュ以下のものを得た。
次いで、メタバナジン酸アンモニウム0.1016gをイオン交換水85mlに溶解し、上記で得られたマグネシウム及び鉄の酸化物1.5002gを加え、40℃で1時間撹拌した。次いで、減圧蒸発乾固し、蒸発乾固物を得た。次いで、得られた蒸発乾固物を130℃で12時間乾燥した後、空気中550℃で2時間焼成し、焼成物を得た。得られた焼成物のふるい分けを行い、20〜60メッシュのものを触媒Qとして得た。
得られた触媒Qの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0059】
<触媒R>5質量%V/Mg−Zn−O(Mg50モル%)
イオン交換水330mlに硝酸マグネシウム六水和物10.5325gと硝酸亜鉛六水和物12.2188gを溶解した水溶液を室温において150rpmの回転数で撹拌しながら、pHが10.5になるまでアンモニア水を滴下し、マグネシウム及び亜鉛水酸化物を沈殿させた。更に1時間撹拌し反応を完結させた後、1時間静置の後、吸引ろ過により沈殿物を回収した。次いで、アンモニア水を加え撹拌することにより洗浄を行い、吸引ろ過により洗浄物を得、次いで、130℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥物を空気中550℃で2時間焼成し、マグネシウム及び亜鉛の酸化物を得た。得られたマグネシウム及び亜鉛の酸化物を、乳鉢で粉砕した後、ふるい分けを行い、100メッシュ以下のものを得た。
次いで、メタバナジン酸アンモニウム0.1018gをイオン交換水85mlに溶解し、上記で得られたマグネシウム及び亜鉛の酸化物1.5001gを加え、40℃で1時間撹拌した。次いで、減圧蒸発乾固し、蒸発乾固物を得た。次いで、得られた蒸発乾固物を130℃で12時間乾燥した後、空気中550℃で2時間焼成し、焼成物を得た。得られた焼成物のふるい分けを行い、20〜60メッシュのものを触媒Rとして得た。
得られた触媒Rの各金属原子の含有量を表1に示す。
【0060】
<分析方法>
1)触媒中の金属原子A及びマグネシウムの原子換算の合計モル数に対するマグネシウム原子の原子換算のモル数の割合、2)ニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、ジルコニウムのZrO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計に対するバナジウムのV換算量の割合、3)触媒全量に対するニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、ジルコニウムのZrO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計の割合、4)触媒中の全金属原子の原子換算の合計モル数に対するニッケル、コバルト、ジルコニウム、マグネシウム及びバナジウムの原子換算の合計モル数の割合は、ICP発光分光分析により、求められる。
【0061】
【表1】
【0062】
なお、表1中、1)は触媒中の金属原子A及びマグネシウムの原子換算の合計モル数に対するマグネシウム原子の原子換算のモル数の割合であり、2)はニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、ジルコニウムのZrO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計に対するバナジウムのV換算量の割合であり、3)は触媒全量に対するニッケルのNiO換算量、コバルトのCoO換算量、ジルコニウムのZrO換算量、マグネシウムのMgO換算量及びバナジウムのV換算量の合計の割合であり、4)は触媒中の全金属原子の原子換算の合計モル数に対するニッケル、コバルト、ジルコニウム、マグネシウム及びバナジウムの原子換算の合計モル数の割合である。
【0063】
(酸化脱水素反応)
<反応条件>
触媒の活性評価を、常圧固定床流通式反応装置を用いて以下のようにして行った。
20〜60メッシュにそろえた触媒0.1gと、石英砂(20〜60メッシュ)を0.9g混合し、反応装置に充填した。次いで、反応装置に、n−C10、O及びHeの混合ガス(n−C10:O:He=1:1:10、全流量150ml/分)を流通させ、所定の反応温度(500℃又は550℃)まで昇温した。次いで、所定温度に到達してから1時間後に、反応ガスをサンプリングした。反応ガスの分析には、TCDガスクロマトグラフ(島津製作所GC−8A)を用いて、C1成分を活性炭、C2〜C7成分をVZ−7充填剤により分析した。その結果を、表2〜表5に示す。
【0064】
なお、表2〜表5中、「金属種」とは、触媒に含有されている金属原子の種類のことであり;「Mgモル%」とは、触媒中の金属原子A及びマグネシウムの原子換算の合計モル数に対するマグネシウム原子の原子換算のモル数の割合(モル%)であり;「V質量%」とは、触媒全量に対するバナジウムのV換算量の割合(質量%)である。
【0065】
<評価>
n−ブタン転化率、CO、CO、ブテン及びブタジエン選択率、ブタジエン収率を、以下のようにして計算した。
【0066】
転化率(%)=((サンプリングガスの全炭素モル数(モル/分)−未反応n−ブタンの炭素モル数(モル/分))/サンプリングガスの全炭素モル数(モル/分))×100
【0067】
選択率(%)=(各生成物の炭素モル数(モル/分)/(サンプリングガスの全炭素モル数(モル/分)−未反応n−ブタンの炭素モル数(モル/分)))×100
*式中、各生成物の炭素モル数とは、選択率の対象となるCO、CO、ブテン、ブタジエンのそれぞれの炭素モル数である。
【0068】
ブタジエン収率(%)=(ブタジエンの炭素モル数(モル/分)/サンプリングガスの全炭素モル数(モル/分))×100
【0069】
なお、上記計算式における各成分のモル数については、反応装置の出口ラインに接続した石鹸膜流量計により、ガス流量(ml/分)を測定し、これに各成分の単位体積当たりのモル数をかけることにより算出した。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
*触媒Hについては反応中にコーク析出量が多かったため、転化率・選択率・収率とも測定できなかった。
【0073】
【表5】