(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029415
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】燃料タンク
(51)【国際特許分類】
F02M 37/22 20060101AFI20161114BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20161114BHJP
B01D 35/02 20060101ALI20161114BHJP
B01D 29/07 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
F02M37/22 J
F02M37/00 301J
B01D35/02 E
B01D29/06 520B
B01D29/06 520F
F02M37/22 P
F02M37/22 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-232563(P2012-232563)
(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公開番号】特開2014-84751(P2014-84751A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100077241
【弁理士】
【氏名又は名称】桑原 稔
(72)【発明者】
【氏名】池内 彰吾
【審査官】
中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−315255(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/031540(WO,A1)
【文献】
特開2008−025471(JP,A)
【文献】
実開昭59−015409(JP,U)
【文献】
実開昭63−166656(JP,U)
【文献】
特開平10−030513(JP,A)
【文献】
特開平11−171013(JP,A)
【文献】
特開2002−155822(JP,A)
【文献】
特開2003−049730(JP,A)
【文献】
特開2004−190489(JP,A)
【文献】
特開2005−307925(JP,A)
【文献】
特開2006−070846(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/113505(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/00−29/48
B01D 35/00−35/04
B01D 35/08−35/30
B60K 11/00−15/10
F02M 37/00−37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの内側の壁面及び燃料タンク内に備えられる機能部品の壁面の双方又はいずれか一方であって、
通常時に燃料タンク内の燃料に浸かる位置、又は、通常時に燃料タンク内の燃料に浸かる頻度の高い位置にある壁面の全部又は一部に、
燃料中のダストを捕捉可能なシート状又はマット状の濾材を張り込んでなる燃料タンクであって、
燃料タンク内を仕切るバッフルプレートに対し、前記濾材を介在させて組み合わされる燃料の通過部を備えた挟持プレートによって前記バッフルプレートの壁面に前記濾材を張り込ませたことを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
燃料タンクの内側の壁面及び燃料タンク内に備えられる機能部品の壁面の双方又はいずれか一方であって、
通常時に燃料タンク内の燃料に浸かる位置、又は、通常時に燃料タンク内の燃料に浸かる頻度の高い位置にある壁面の全部又は一部に、
燃料中のダストを捕捉可能なシート状又はマット状の濾材を張り込んでなる燃料タンクであって、
燃料タンクの内側の壁面に対し、この壁面から突出される軸状体を前記濾材に設けた貫通孔に通し且つこの軸状体の先端側に挟持部材を取り付けて、前記濾材を張り込ませたことを特徴とする燃料タンク。
【請求項3】
前記濾材は不織布であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
燃料タンク内の燃料は、ダストを可及的に取り除いた状態でエンジンに送られることが望まれる。かかる燃料を吸い上げエンジンに送るサクションポンプを構成するフィルターの濾過精度の向上はこの要請に奉仕するところであるが、かかる濾過精度の向上は一般にフィルターを構成する濾材の平均開口径の極小化によるものであり、したがってこれは目詰まりの観点からフィルターの寿命の低下要因となるところである。こうした観点から、本出願人は、前記ダストを取り除く機能を、燃料タンクにさらに付加することを検討するに至った。
【0002】
燃料タンクの上部に設けられるフロートバルブへの異物の進入を防ぐために、このフロートバルブを覆うように燃料タンクの上部にフィルターを設けたものがあるが、(特許文献1参照)燃料タンクの上部は通常は燃料に浸からない箇所であり、かかるフィルターは前記サクションポンプを構成するフィルターの負担を軽減させるように作用するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−166656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、燃料タンクに、この燃料タンク内の燃料を吸い上げエンジンに送るポンプを構成するフィルターの負担を軽減させるための構造を、合理的に備えさせる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、この発明にあっては、燃料タンクを、燃料タンクの内側の壁面及び燃料タンク内に備えられる機能部品の壁面の双方又はいずれか一方であって、
通常時に燃料タンク内の燃料に浸かる位置、又は、通常時に燃料タンク内の燃料に浸かる頻度の高い位置にある壁面の全部又は一部に、
燃料中のダストを捕捉可能なシート状又はマット状の濾材を張り込んでなるものとした。
【0006】
このように構成された燃料タンクにあっては、シート状又はマット状の濾材が通常時に燃料タンク内の燃料に浸かる位置、又は、通常時に燃料タンク内の燃料に浸かる頻度の高い位置に配されることから、かかるシート状又はマット状の濾材による前記ダストの受動的な捕捉が期待でき、これにより燃料タンク内の燃料を吸い上げエンジンに送るポンプを構成するフィルターの負担の軽減が図られる。かかるシート状又はマット状の濾材は、前記ダストを効果的に捕捉させる観点からは、不織布としておくことが、好ましい。
【0007】
前記燃料タンク内を仕切るバッフルプレートに対し、シート状又はマット状の濾材を介在させて組み合わされる燃料の通過部を備えた挟持プレートによって前記バッフルプレートの壁面にシート状又はマット状の濾材を張り込ませるようにすることが、この発明の好ましい態様の一つである。このようにバッフルプレートの壁面にシート状又はマット状の濾材を張り込んだ場合、かかるバッフルプレートによる燃料の動きの抑制効果、流動音の低下効果の向上も期待できる。
【0008】
また、筒状をなす前記機能部品に対し、シート状又はマット状の濾材を巻き付け且つその端部を止め合わせて、この機能部品の壁面にシート状又はマット状の濾材を張り込ませるようにしておくことが、この発明の好ましい態様の一つである。
【0009】
また、燃料タンクの内側の壁面に対し、この壁面から突出される軸状体をシート状又はマット状の濾材に設けた貫通孔に通し且つこの軸状体の先端側に挟持部材を取り付けて、シート状又はマット状の濾材を張り込ませれうようにしておくことが、この発明の好ましい態様の一つである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、燃料タンクに、この燃料タンク内の燃料を吸い上げエンジンに送るポンプを構成するフィルターの負担を軽減させるための構造を、合理的に備えさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1はこの発明の一実施の形態にかかる燃料タンクの構成図であり、シート状又はマット状の濾材は図示していない。
【
図2】
図2はバッフルプレートにシート状又はマット状の濾材を張り込んだ例を示しており、a図は斜視構成図、b図は要部断面構成図である。
【
図3】
図3は筒状をなす機能部品にシート状又はマット状の濾材を張り込んだ例
(参考例)を示しており、a図は斜視構成図、b図は要部断面構成図である。
【
図4】
図4は燃料タンクの壁面にシート状又はマット状の濾材を張り込んだ例を示した断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1〜
図4に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる燃料タンクTは、燃料タンクT内に貯留される燃料F中のダスト(塵芥ないし塵埃)を、可及的に減少させる構造を特に備えてなる。そして、この実施の形態にかかる燃料タンクTは、前記構造によって、サクションポンプ、すなわち、燃料タンクT内の燃料Fを吸い上げエンジンに送るポンプを構成するフィルターの負担を軽減させるものとなっている。
【0013】
具体的には、この実施の形態にかかるかかる燃料タンクTは、その内側の壁面1及び燃料タンクT内に備えられる機能部品2の壁面2aの双方又はいずれか一方であって、通常時に燃料タンクT内の燃料Fに浸かる位置、又は、通常時に燃料タンクT内の燃料Fに浸かる頻度の高い位置にある壁面の全部又は一部に、燃料F中のダストを捕捉可能なシート状又はマット状の濾材3を張り込んでなる。
【0014】
図1に燃料タンクTの典型例を示す。図中符号4はフィラーパイプ、符号5は燃料ポンプモジュール、符号6はサクションチューブ、符号7はバッフルプレート、符号8はカットオフバルブ、符号9はエバポチューブである。典型的には、このように構成される燃料タンクTの下記の箇所の全部又は一部に前記シート状又はマット状の濾材3を張り込み、覆うことで実施の形態にかかる燃料タンクTが構成される。
(1)燃料タンクTの内側の壁面1のうちの底壁面1a
(2)燃料タンクTの内側の壁面1のうちの側壁面1b
(3)機能部品2としての燃料ポンプモジュール5を構成するケーシング5aの壁面2a
(4)機能部品2としてのバッフルプレート7(セパレータとも称される。)の壁面2a
特に、かかるバッフルプレート7の壁面2aにシート状又はマット状の濾材3を張り込んだ場合、かかるバッフルプレート7による燃料Fの動きの抑制効果、流動音の低下効果の向上も期待できる。
【0015】
このように構成された燃料タンクTにあっては、シート状又はマット状の濾材3が通常時に燃料タンクT内の燃料Fに浸かる位置、又は、通常時に燃料タンクT内の燃料Fに浸かる頻度の高い位置に配されることから、かかるシート状又はマット状の濾材3による前記ダストの受動的な捕捉が期待でき、これにより燃料タンクT内の燃料Fを吸い上げエンジンに送るポンプを構成するフィルター(図示は省略する。)の負担の軽減が図られる。
【0016】
前記シート状又はマット状の濾材3は、前記ダストを効果的に捕捉させる観点からは、不織布としておくことが、好ましい。
【0017】
図2は、燃料タンクT内を仕切るバッフルプレート7の壁面2aにシート状又はマット状の濾材3を張り込ませるための好ましい構造の一つを示している。この
図2に示される構造では、シート状又はマット状の濾材3を介在させてバッフルプレート7に組み合わされる挟持プレート10によってこのバッフルプレート7の壁面2aにシート状又はマット状の濾材3を張り込ませている。かかるバッフルプレート7には燃料Fの通過部7aが形成されている。また、かかる挟持プレート10にも燃料Fの通過部10aが形成されている。図示の例では、かかる通過部10aは挟持プレート10を貫通する貫通孔によって構成されている。バッフルプレート7は上端に燃料タンクTの上部に対する取り付け部7bを備えており、この取り付け部7bを燃料タンクTの上部に固定することで燃料タンクT内に吊り下げ状に支持されるようになっている。挟持プレート10は、バッフルプレート7の壁面2a、図示の例では、バッフルプレート7の一面との間にシート状又はマット状の濾材3を挟んで、このバッフルプレート7に組み合わされるようになっている。図示の例では、バッフルプレート7の一面には、この一面に直交する向きに突き出す係合突起7cが形成されている。一方、シート状又はマット状の濾材3及び挟持プレート10にはそれぞれ、この係合突起7cの挿通穴3b、10bが形成されている。係合突起7cは、その突きだし端から基部側に向けて斜めに突き出す弾性腕7dを有している。シート状又はマット状の濾材3はその挿通穴3bに係合突起7cを挿通するようにしてバッフルプレート7の一面に添装可能となっている。係合突起7cは弾性腕7dを撓めながら挟持プレート10の挿通穴10bに挿通可能となっている。挟持プレート10はその挿通穴10bに係合突起7cを挿通させることで前記のように添装されるシート状又はマット状の濾材3をバッフルプレート7の一面との間に挟むようにしてバッフルプレート7に装着可能となっている。挟持プレート10の挿通穴10bに係合突起7cが挿通させきられると弾性腕7dが撓み戻して挟持プレート10におけるシート状又はマット状の濾材3と接する側と反対の面に引っかかり、前記シート状又はマット状の濾材3がバッフルプレート7と挟持プレート10との間で安定的に挟持されるようになっている。
【0018】
図3は、燃料タンクT内に配される機能部品2の壁面2aにシート状又はマット状の濾材3を張り込ませるための好ましい構造の一つ
(参考例)を示している。この
図3に示される構造では、筒状をなす機能部品2、図示の例では燃料ポンプモジュール5を構成するケーシング5aに対し、シート状又はマット状の濾材3を巻き付け且つその端部3aを止め合わせて、この機能部品2の壁面2aにシート状又はマット状の濾材3を張り込ませている。かかるケーシング5aは円筒状をなし、その筒軸を上下方向に沿わせるようにして燃料タンクT内に配置されている。シート状又はマット状の濾材3は、帯状をなし、その長さを前記ケーシング5aの円周の長さよりも長くしている。図示の例では、かかるケーシング5aには水平方向に突き出す突起5bが形成されている。図示の例では、ケーシング5aの上側に形成されている突起5bの直下に、これと同寸同形の突起5bがさらに形成されている。一方、シート状又はマット状の濾材3の両端部3a、3aにはそれぞれ、かかる突起5bの挿通穴3bが形成されている。かかる挿通穴3bも上下二カ所の突起5b、5bに対応してシート状又はマット状の濾材3の端部3aに、二カ所形成されている。この例では、シート状又はマット状の濾材3の一方の端部3aに形成された上下の挿通穴3b、3bにそれぞれケーシング5aの対応する突起5bを挿通させた状態からかかるケーシング5aにシート状又はマット状の濾材3を巻き付けると、シート状又はマット状の濾材3の巻き終わりとなる他方の端部3aが前記一方の端部3a上に位置されるようになっている。そして、この他方の端部3aに形成された上下の挿通穴3b、3bにそれぞれケーシング5aの対応する突起5bを挿通させた後、この突起5bにプッシュナット11を嵌めつけることでシート状又はマット状の濾材3の端部3a同士をを安定的に止め合わせるようになっている。
【0019】
図4は、燃料タンクTの内側の壁面1内にシート状又はマット状の濾材3を張り込ませるための好ましい構造の一つを示している。この
図4に示される例では、燃料タンクTの内側の壁面1に対し、この壁面1から突出される軸状体1cをシート状又はマット状の濾材3に設けた貫通孔3cに通し且つこの軸状体1cの先端側に挟持部材12を取り付けて、シート状又はマット状の濾材3を張り込ませている。図示の例では、軸状体1cはボルトであり、挟持部材12はこれにネジつけられるナットとなっている。
【符号の説明】
【0020】
T 燃料タンク
F 壁面
1 壁面
2 機能部品
2a 壁面
3 濾材