【文献】
姫野 岳彦,支承部における摩擦特性のモデル化とその評価式に関する検討,第27回地震工学研究発表会梗概集,2003年,p.256
【文献】
安田 廉,摩擦を含む粉体のリアルタイムシミュレーション,Visual Computing / グラフィクスとCAD 合同シンポジウム2008予稿集[CD-ROM],画像電子学会,2008年 6月21日
【文献】
湯 晋一,粉粒体の流れの数値シミュレーション,鉄と鋼,日本鉄鋼協会 ,1995年,Vol.81 No.11,pp.556-563
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0012】
実施の形態に係る解析装置における解析手法の原理を説明する。
本解析手法では、特許文献1に記載されている解析手法における摩擦係数部分を速度の関数に変更し、低速部分で高い摩擦係数を付加することで静止摩擦力を表現する。特許文献1の式(8)、式(18)をそれぞれ式(1)、式(2)として以下に示す。
【数1】
ここでMは、それぞれ接触している物体A、Bを表す粒子系に属する粒子i、jの換算質量であり、v
rはそれらの粒子の相対速度である。μは摩擦係数であり、Nは垂直抗力である。式(1)、式(2)より、与えられている摩擦力f
fricは、
【数2】
となる。
【0013】
本解析手法では、静止摩擦力も考慮可能とするため、低速部分で高くなるように摩擦係数μを以下に示すように変更する。
【数3】
よって摩擦力は、
【数4】
となる。ここでv
cは静止摩擦から動摩擦へ切り替わる臨界速度であり、aは動摩擦と静止摩擦の比率を決定する係数である。
【0014】
式(5)によると、摩擦力f
fricは相対速度v
rの向きの単位ベクトルに比例するベクトルであるから、摩擦力f
fricの向きは相対速度v
rの大きさに依らず相対速度v
rの向きである。摩擦力f
fricの大きさは相対速度v
rの大きさに応じて変化する。特に相対速度v
rの大きさが臨界速度v
cの大きさよりも大きい場合、摩擦力f
fricの大きさは相対速度v
rの大きさに依らない値となる。相対速度v
rの大きさが臨界速度v
cの大きさ以下の場合、摩擦力f
fricは相対速度v
rの大きさが臨界速度v
cの大きさよりも大きい場合の摩擦力f
fricよりも大きくなる。これは、静止摩擦係数は動摩擦係数よりも大きいという一般則に対応する。
【0015】
図1は、式(5)で与えられる摩擦力f
fircの大きさと相対速度v
rの大きさとの関係を示すグラフである。摩擦力f
fircの大きさは相対速度v
rの大きさに応じて連続的にすなわち滑らかに変化し、特に(相対速度v
rの大きさ)=(臨界速度v
cの大きさ)において連続である。
【0016】
なお、式(5)は摩擦力f
fircの大きさと相対速度v
rの大きさとの関係が連続的である場合の一例を示すが、他に階段関数などの不連続関数で表される関係であってもよい。
図2は、階段関数で表される摩擦力f
fircの大きさと相対速度v
rの大きさとの関係を示すグラフである。
【0017】
図3は、実施の形態に係る解析装置100の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0018】
本実施の形態ではRMD法に倣って粒子系を解析する場合について説明するが、DEM(Distinct Element Method)やSPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)やMPS(Moving Particle Semi-implicit)などの粒子法や繰り込みを行わないMD法に倣って粒子系を解析する場合にも、本実施の形態に係る技術的思想を適用できることは本明細書に触れた当業者には明らかである。
【0019】
解析装置100は入力装置102およびディスプレイ104と接続される。入力装置102は、解析装置100で実行される処理に関係するユーザの入力を受けるためのキーボード、マウスなどであってもよい。入力装置102は、インターネットなどのネットワークやCD、DVDなどの記録媒体から入力を受けるよう構成されていてもよい。
【0020】
解析装置100は、粒子系取得部108と、数値演算部120と、表示制御部118と、粒子データ保持部114と、を備える。
【0021】
粒子系取得部108は、入力装置102を介してユーザから取得する入力情報に基づき、1、2または3次元の仮想空間内に定義されるN(Nは自然数)個の粒子からなる粒子系のデータを取得する。粒子系はRMD法を使用して繰り込まれた粒子系である。
【0022】
粒子系取得部108は、入力情報に基づき仮想空間内にN個の粒子を配置し、配置されたそれぞれの粒子に速度を付与する。すなわち、粒子系取得部108は、粒子系に初期位置および初期速度を付与する。粒子系取得部108は、配置された粒子を特定する粒子IDと、その粒子の位置と、その粒子の速度と、を対応付けて粒子データ保持部114に登録する。
【0023】
以下、解析装置100が、接触しながら相対運動する2つの物体A、Bを数値解析によりシミュレートする場合について説明する。N個の粒子からなる上記粒子系は、一方の物体Aを表す第1粒子系と、他方の物体Bを表す第2粒子系と、を含む。
【0024】
以下では粒子系の粒子は全て同質または同等なものとして設定され、かつ、ポテンシャルエネルギ関数は2体のポテンシャルであって粒子によらずに同じ形を有するものとして設定される場合について説明する。しかしながら、他の場合にも本実施の形態に係る技術的思想を適用できることは、本明細書に触れた当業者には明らかである。
【0025】
数値演算部120は、粒子データ保持部114によって保持されるデータが表す第1粒子系、第2粒子系それぞれの各粒子の運動を支配する支配方程式を数値的に演算する。特に数値演算部120は、離散化された粒子の運動方程式にしたがった繰り返し演算を行う。
数値演算部120は、接触粒子対特定部110と、摩擦力付与部132と、力演算部122と、粒子状態演算部124と、状態更新部126と、終了条件判定部128と、を含む。
【0026】
接触粒子対特定部110は、第1粒子系に含まれる粒子と第2粒子系に含まれる粒子とからなる粒子対について、2つの物体A、Bの接触に関与する接触粒子対を特定する。接触粒子対特定部110における接触粒子対の特定は、例えば特許文献1の主に
図1を参照して開示される技術を使用して実現されてもよく、または他の接触判定技術を使用して実現されてもよい。
【0027】
摩擦力付与部132は、接触粒子対特定部110によって特定された接触粒子対の相対速度の大きさに応じてその大きさが変化する摩擦力を、接触粒子対特定部110によって特定された接触粒子対に含まれる粒子のそれぞれに付与する。摩擦力付与部132は、接触粒子対(に含まれる2粒子間)の相対速度の大きさと臨界速度の大きさ(以下、臨界値と称す)との大小関係に基づいて、付与すべき摩擦力の大きさを決定する。
【0028】
摩擦力付与部132は、相対速度の大きさが臨界値よりも大きい場合、接触粒子対に含まれる各粒子に付与すべき摩擦力の大きさを、式(5)の右辺下方に基づき決定する。この場合、摩擦力の大きさは相対速度の大きさに依存しない。摩擦力付与部132は、接触粒子対に含まれる2つの粒子に付与すべき摩擦力の向きを、相対速度に沿った方向で互いに逆向きとする。
【0029】
摩擦力付与部132は、相対速度の大きさが臨界値以下である場合、接触粒子対に含まれる各粒子に付与すべき摩擦力の大きさを、式(5)の右辺上方に基づき決定する。この場合、摩擦力の大きさは相対速度の大きさに応じて単調に減少する。摩擦力付与部132は、接触粒子対に含まれる2つの粒子に付与すべき摩擦力の向きを、相対速度に沿った方向で互いに逆向きとする。
摩擦力付与部132は、接触粒子対に含まれる各粒子について決定された付与すべき摩擦力を粒子データ保持部114に登録する。
【0030】
力演算部122は粒子データ保持部114によって保持される第1粒子系、第2粒子系のデータを参照し、各粒子系の各粒子について、粒子間の距離に基づきその粒子に働く摩擦力以外の力を演算する。力演算部122は、第1粒子系の演算対象の粒子について、その演算対象の粒子との距離が所定のカットオフ距離よりも小さな粒子(以下、近接粒子と称す)を決定する。
【0031】
力演算部122は、各近接粒子について、その近接粒子と演算対象の粒子との間のポテンシャルエネルギ関数およびその近接粒子と演算対象の粒子との距離に基づいて、その近接粒子が演算対象の粒子に及ぼす力を演算する。特に力演算部122は、その近接粒子と演算対象の粒子との距離の値におけるポテンシャルエネルギ関数のグラジエント(Gradient)の値から力を算出する。力演算部122は、近接粒子が演算対象の粒子に及ぼす力を全ての近接粒子について足し合わせることによって、演算対象の粒子に働く力を算出する。
力演算部122は、第2粒子系の粒子に働く力も同様に算出する。
【0032】
粒子状態演算部124は粒子データ保持部114に保持される第1粒子系、第2粒子系のデータを参照し、各粒子系の各粒子について、離散化された粒子の運動方程式に力演算部122によって演算された力および粒子データ保持部114によって保持される摩擦力を適用することによって粒子の位置および速度のうちの少なくともひとつを演算する。本実施の形態では、粒子状態演算部124は粒子の位置および速度の両方を演算する。
【0033】
粒子状態演算部124は、接触粒子対特定部110によって特定された接触粒子対に含まれる粒子については、力演算部122によって演算された力および粒子データ保持部114によって保持される摩擦力を含む離散化された粒子の運動方程式から粒子の速度を演算する。粒子状態演算部124は、それ以外の粒子については、力演算部122によって演算された力を含む離散化された粒子の運動方程式から粒子の速度を演算する。
【0034】
粒子状態演算部124は、接触粒子対に含まれる第1粒子系の粒子について、蛙跳び法やオイラー法などの所定の数値解析の手法に基づき所定の微小な時間刻みΔtを使用して離散化された粒子の運動方程式に、力演算部122によって演算された力および粒子データ保持部114によって保持される摩擦力を代入することによって、粒子の速度を演算する。この演算には以前の繰り返し演算のサイクルで演算された粒子の速度が使用される。
【0035】
粒子状態演算部124は、演算された粒子の速度に基づいて粒子の位置を算出する。粒子状態演算部124は、接触粒子対に含まれる第1粒子系の粒子について、所定の数値解析の手法に基づき時間刻みΔtを使用して離散化された粒子の位置と速度の関係式に、演算された粒子の速度を適用することによって、粒子の位置を演算する。この演算には以前の繰り返し演算のサイクルで演算された粒子の位置が使用される。
【0036】
粒子状態演算部124における、接触粒子対に含まれない第1粒子系の粒子についての演算は摩擦力を考慮しない点を除いて上記と同様である。また、粒子状態演算部124は、第2粒子系の粒子についても同様に速度、位置を演算する。
【0037】
状態更新部126は、粒子状態演算部124における演算結果に基づき各粒子系の各粒子の状態を更新する。状態更新部126は、粒子データ保持部114に保持される各粒子系の各粒子の位置および速度のそれぞれを、粒子状態演算部124によって演算された位置および速度で更新する。
【0038】
終了条件判定部128は、数値演算部120における繰り返し演算を終了すべきか否かを判定する。繰り返し演算を終了すべき終了条件は、例えば繰り返し演算が所定の回数行われたことや、外部から終了の指示を受け付けたことや、粒子系が定常状態に達したことである。終了条件判定部128は、終了条件が満たされる場合、数値演算部120における繰り返し演算を終了させる。終了条件判定部128は、終了条件が満たされない場合、処理を接触粒子対特定部110に戻す。すると接触粒子対特定部110は、状態更新部126によって更新された粒子の位置で再び接触粒子対を特定する。
【0039】
表示制御部118は、粒子データ保持部114に保持されるデータが表す各粒子系の各粒子の位置、速度に基づき、ディスプレイ104に粒子系の時間発展の様子やある時刻における状態を表示させる。この表示は、静止画または動画の形式で行われてもよい。
【0040】
図4は、粒子データ保持部114の一例を示すデータ構造図である。粒子データ保持部114は、粒子IDと、粒子の位置と、粒子の速度と、粒子に摩擦力が付与されている場合はその摩擦力と、を対応付けて保持する。
【0041】
上述の実施の形態において、保持部の例は、ハードディスクやメモリである。また、本明細書の記載に基づき、各部を、図示しないCPUや、インストールされたアプリケーションプログラムのモジュールや、システムプログラムのモジュールや、ハードディスクから読み出したデータの内容を一時的に記憶するメモリなどにより実現できることは本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0042】
以上の構成による解析装置100の動作を説明する。
図5は、解析装置100における一連の処理の一例を示すフローチャートである。粒子系取得部108は、RMD法に倣って繰り込まれた第1粒子系および第2粒子系を取得する(S202)。接触粒子対特定部110は、特定されていない接触粒子対の有無を判定する(S204)。特定されていない接触粒子対が存在すると判定された場合(S204のY)、接触粒子対特定部110はこれまで特定されていない接触粒子対を特定する(S206)。摩擦力付与部132は、ステップS206で特定された接触粒子対の相対速度の大きさと臨界値とを比較する(S208)。相対速度の大きさが臨界値よりも大きい場合(S208のN)、摩擦力付与部132は接触粒子対に含まれる各粒子により小さな摩擦力を付与する(S210)。その後、処理はステップS204に戻る。相対速度の大きさが臨界値以下の場合(S208のY)、摩擦力付与部132は接触粒子対に含まれる各粒子により大きな摩擦力を付与する(S212)。その後、処理はステップS204に戻る。
【0043】
ステップS204において存在しないと判定された場合(S204のN)、力演算部122は、粒子間の距離から粒子に働く摩擦力以外の力を演算する(S214)。粒子状態演算部124は、粒子の運動方程式から粒子の速度と位置を演算する(S216)。ここで、接触粒子対に含まれる粒子の運動方程式には、摩擦力が導入される。状態更新部126は、粒子データ保持部114に保持される粒子の位置、速度を演算された位置、速度で更新する(S218)。終了条件判定部128は、終了条件が満たされるか否かを判定する(S220)。終了条件が満たされない場合(S220のN)、処理はS204に戻される。終了条件が満たされる場合(S220のY)、処理は終了する。
【0044】
本実施の形態に係る解析装置100によると、摩擦力の大きさは接触粒子対の相対速度の大きさに応じて変化する。特に相対速度が小さいほど摩擦力は大きくなる。したがって、粒子系を使用するシミュレーションにおいて、静止摩擦および動摩擦をより適切に再現することができる。その結果、摩擦が関与する現象をより正確にシミュレートすることができる。
【0045】
相対速度がゼロのときの摩擦力の上限値を決めるために静止摩擦係数を導入し、相対速度がゼロでないときの摩擦力を一様に動摩擦係数により決定する手法も考えられる。しかしながら、この手法では静止摩擦力が働くときの相対速度はゼロなので、静止摩擦力の向きを適切に決めることが困難となる。また、接触面の状態をより忠実に再現することで静止摩擦力を原理的に導くことも考えられるが、そのためには接触面により多くの粒子を配置する必要があり、粒子総数が増大して計算負荷が増える可能性がある。
【0046】
そこで、本実施の形態に係る解析装置100では、相対速度に対してゼロでない臨界値を設定し、相対速度の大きさが臨界値よりも小さい場合に摩擦力を大きくしている。これにより、粒子数や計算負荷をそれほど増やすことなく静止摩擦を考慮したシミュレーションを実現できる。
【0047】
本発明者は、本実施の形態に係る解析装置100を使用して以下の検証を行った。
図6は、検証モデルを示す模式図である。大きな板302の上に小さな板304を置く。バネ306およびダンパー308を介して小さな板304とつながれた物体310を一定速度Vで引っ張る。このとき小さな板304には上から加重Fnが加えられている。ダンパー308は小さな板304の速度に対する減衰項を与える。
【0048】
計算条件はV=0.01[m/s]、Fn=100[N]、μ=0.5、v
c=0.002[m/s]、a=2とした。このとき、小さな板304の変位と、バネ306およびダンパー308が小さな板304に与える力F(
図3の中のF)と、を測定した。
【0049】
図7は、従来の手法および本実施の形態に係る手法のそれぞれにおける、変位に対する力の変化を示すグラフである。グラフ312は静止摩擦および動摩擦の両方を考慮した本実施の形態に係る手法により得られたグラフである。グラフ314は従来の手法、例えば特許文献1に記載される摩擦力を動摩擦力で一定とする手法により得られたグラフである。従来の手法と本実施の形態に係る手法とでは、変位が小さいときの力が異なっている。
図7より、本実施の形態に係る手法では静止摩擦の効果が出ていることが明らかである。小さな板304が動き出すと動摩擦に移行し、従来の手法と本実施の形態に係る手法とで摩擦力の差は実質的になくなる。
【0050】
図8は、別の検証モデルを示す模式図である。
図8に示される別の検証モデルは、
図6に示される検証モデルからダンパー308をなくした検証モデルである。この別の検証モデルに本実施の形態に係る手法を適用しスティックスリップ現象を再現した。このとき小さな板304の速度と、バネ306が小さな板304に与える力F(
図8の中のF)と、を測定した。
【0051】
図9は、従来の手法および本実施の形態に係る手法のそれぞれにおける、力の時間変化を示すグラフである。グラフ316は本実施の形態に係る手法により得られたグラフである。グラフ318は従来の手法により得られたグラフである。
図10は、従来の手法および本実施の形態に係る手法のそれぞれにおける、速度の時間変化を示すグラフである。グラフ320は本実施の形態に係る手法により得られたグラフである。グラフ322は従来の手法により得られたグラフである。
【0052】
特に速度の時間変化を示している
図10のグラフを見ると、従来の手法では定常状態で速度Vの周りを振動している。本実施の形態に係る手法では、力が静止摩擦力を超えると動き出し、その後止まるといったスティックスリップ現象の動きがより忠実に再現されている。これは静止摩擦を考慮に入れたことによる効果である。
【0053】
以上、実施の形態に係る解析装置100の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0054】
実施の形態では、数値演算部120において粒子の位置と速度の両方を演算する場合について説明したが、これに限られない。例えば、数値解析の手法にはVerlet法のように、粒子の位置を演算する際に粒子に働く力から粒子の位置を直接演算し、粒子の速度は陽に計算しなくてもよい手法もあり、本実施の形態に係る技術的思想をそのような手法に適用してもよい。
【0055】
実施の形態では、特定された接触粒子対のそれぞれについて相対速度の大きさと臨界値とを比較し、その比較結果に基づいて適用する摩擦係数を決定する場合について説明したが、これに限られない。例えば、数値演算部は繰り返し演算の各ステップにおいて、物体Aと物体Bとの相対速度の大きさと所定のしきい値とを比較し、その比較結果に基づいて適用すべき摩擦係数を決定してもよい。この場合、そのステップでは、そのように決定された摩擦係数を、特定された全ての接触粒子対に対して適用する。したがって、接触粒子対ごとに相対速度の大きさと臨界値とを比較する必要はないので、処理量を低減できる。