(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る壁面診断結果記録システム、壁面診断結果記録方法、及び壁面診断結果記録プログラムの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念
まず、各実施の形態に共通の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る壁面診断結果記録システム、壁面診断結果記録方法、及び壁面診断結果記録プログラムは、壁面における診断対象部に対する診断結果を記録するシステム、方法、及びプログラムである。
【0026】
ここで、診断の対象となる「壁面」とは、所定の建物や工作物の表面の事であり、具体的な構成は任意であるが、各実施の形態では、建物の壁面であって、上下左右に沿って並設された複数のタイルによって表層が構成された壁面であるものとして説明する。なお、その他の壁面として、例えば、建物の躯体の外面にモルタルを敷設し、そのモルタルのさらに外面に塗装を行うことによる外壁仕上げが施された壁面であっても良い。また、「診断対象部」とは、壁面において診断員が診断を行う対象のことであり、各実施の形態では、壁面を構成する複数のタイルの各々を診断対象部とする。また、「診断」とは、例えば目視や打診等によって診断員が診断対象部の壁面の状態を判定することであるが、各実施の形態では、診断員が、壁面を打診棒によって打診することによって、壁面の状態を判定することを示す。この「壁面の状態」としては、「汚損」、「剥離」、「亀裂」等の有無を判定するものとして説明するが、これ以外の状態(例えば、ひび割れと浮きとの関連性、あるいは、シール切れとエフロレッセンスとの関連性等)を含めてもよい。また、「診断結果」とは、診断員が壁面を診断することにより判定した壁面の状態のことである。
【0027】
各実施の形態において、概略的には、診断員による診断結果を示す診断結果情報が記録された診断対象部を少なくとも含む壁面画像を取得し、この取得した壁面画像の診断結果情報を解析して診断結果情報が示す診断結果を特定し、この特定した診断結果を壁面画像における診断対象部の位置に対応付けて記録する。診断員による診断結果を示す診断結果情報の記録は、壁面に沿って移動可能となるように構成された架台を用いて、診断員が壁面に沿って移動しながら診断を行い、この診断結果を診断対象部に適宜記録していく事により行う。診断対象部を含む壁面画像の取得は、架台に設置したカメラを介して行う。診断結果情報の解析について、及び診断結果の記録については後述する。
【0028】
このようにカメラで壁面画像の取得を行うことに関して、壁面全体の画像を漏れや重複が生じないように取得するため、撮影範囲と画像処理の工夫を施している。「撮影範囲」とは、カメラによって撮影することが可能な範囲である(各実施の形態においては、後述するようにカメラを2台使用しているため、これら2台のカメラによって撮影することが可能な範囲を撮影範囲と称する)。ここで、カメラの解像度の関係上、及び、カメラと壁面との間に位置する障害物等の関係上、壁面全体を遠方から1度に撮影することは現実的には困難である。そのため、カメラを壁面に沿って移動させることにより、撮影範囲を順次移動させながら撮影を行う。このような撮影にて取得した多数の撮影範囲の画像に基づいて、画像処理を行うことによって壁面全体の画像を生成する。このため、撮影範囲は相互に重複するように設定し、この重複部分を目印として複数の壁面画像を統合(モザイキング)することにより、単一の壁面画像を生成する。なお、2台のカメラは、撮影範囲の全てが互いに重複するのではなく、壁面における互いに重複しない部分を少なくとも含む範囲を撮影するものとし、このことによって、1台のカメラのみで撮影を行う場合に比べて、より広い撮影範囲を確保することが可能となる。
【0029】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
次に、本発明に係る各実施の形態の具体的内容について説明する。
【0030】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1について説明する。本実施の形態1は、診断結果情報が、診断員により壁面に記された判別記号であり、壁面画像を正対化する手段が、レーザーポインタにより投光された目印に基づいて壁面画像を正対化する被投光壁面画像修正手段である形態である。
【0031】
(構成)
最初に、本実施の形態1に係る壁面診断結果記録システムを用いて壁面診断を行うための構成について説明する。
図1は、壁面の診断を行う診断員を示す斜視図である。この
図1に示すように、実施の形態1においては、まず、架台2に搭乗した診断員が打診棒4と筆記具とを所持した状態において壁面の診断を行う(後述する、診断結果情報記録作業)。そして、この架台2は、架台移動機構(図示省略)によって上下方向及び左右方向に移動可能となっている。ここで、この架台2は、カメラ3、レーザーポインタ5、及び記録端末1とを備えている。以下では、架台移動機構、架台2、カメラ3、打診棒4、及びレーザーポインタ5について説明した後、壁面診断結果記録システムとして機能する記録端末1の具体的な構成について詳細に説明する。
【0032】
(構成−架台移動機構)
架台移動機構は、架台2を上下方向及び左右方向に移動可能とする架台移動手段である。この架台移動機構は、ワイヤー、昇降装置、レールを備えて構成されている。ワイヤーは、診断の対象となる建物の壁面の前方において、屋上等から地上等に架けて上下方向に沿って架設されており、このワイヤーに上述した架台2が設置されている。昇降装置は、建物の屋上に配置されており、ワイヤーの巻取り又は巻き出しを行う。このことによって、架台2が上下方向に沿って昇降可能となっている。レールは、建物の屋上において、壁面に沿った左右方向に敷設されており、このレールを昇降装置が移動することで、架台2が設置されたワイヤーが左右方向に沿って移動可能となっている。例えば、診断員は、架台2に設けられた座席2aに搭乗した状態において、昇降装置をリモコン等により操作することで、上下方向に沿って昇降可能かつ左右方向に沿って移動することができ、壁面の全面を移動することができる。この際の具体的な移動方向は任意であるが、本実施の形態においては、壁面を上から下に掛けて移動した後、左右のいずれか一方に移動し、壁面を下から上に掛けて移動し、左右の同じ方向に移動し、以降同様に、上下方向への移動と、左右方向への移動を繰り返すものとする。なお、これら上下方向及び左右方向への移動は、上述のように撮影範囲を相互に重複させるように行う。ここで、このように撮影範囲を相互に重複するように架台2を移動させる方法は任意であるが、本実施の形態では、リモコンは架台2を上下左右方向に移動させるためのスイッチをそれぞれ一つずつ備え、これらのいずれかのスイッチを診断員が押圧することによって、架台2は、定められた方向に一定距離だけ移動した後、自動的に停止する。この際における「一定距離」とは、移動前の撮影範囲と、移動後の撮影範囲とが、少なくとも相互に重複する範囲を有する距離であるものとして説明する。
【0033】
(構成−架台)
架台2は、
図1に示すように、診断員が搭乗するための座席2aと、後述するカメラ3を架台2に対して固定するためのカメラ固定台2bと、風などの影響によって架台2が揺れ動いてしまうことを防止するための架台揺動防止手段(図示省略)と、カメラ3の揺動を防止するためのカメラ揺動防止手段(図示省略)を備えて構成される。このうち、カメラ固定台2bは、座席2aの後方に設けられており、上下方向に沿って配置した棒状体の上端部に、他の棒状体を左右方向に沿って配置し、これらの棒状体同士を相互に接合することにより形成された、略T字形状の部材である。そして、このカメラ固定台2bにおける左右方向に沿って配置された棒状体の両側端には、後述するカメラ3が固定されている。また、架台揺動防止手段は、例えば、架台2と壁面との間に介在して架台2を壁面に真空吸着させることにより固定する吸盤や、架台2の背面に設けられて壁面から離れる方向に空気を排出する送風機であって、排出する空気の風圧によって架台2を壁面に押し当てる送風機などによって構成することができる。
【0034】
カメラ揺動防止手段は、例えば、架台2の揺れを自動で感知して、カメラ3を水平に維持することを可能とする公知のジャイロスタビライザーとして形成することができる。なお、このようなカメラ揺動防止手段を設置する位置は任意であり、例えば、カメラ3と、カメラ3が設置されたカメラ固定台2bとの間に設けて、カメラ3の揺動を防止する構成としても良いし、座席2aとカメラ固定台2bとの間に設けて、カメラ固定台2b自体の揺動を防止する構成としても良い。あるいは、カメラ揺動防止手段は、架台2のカメラ固定台2bにおける左右方向に沿って形成された棒状体に対して、空気ダンパーや金属バネを組み合わせたサスペンションを介して台座を吊り下げ、その台座にカメラ3を固定した、公知の出前品運搬機の如き構造として形成しても良い。
【0035】
(構成−カメラ)
カメラ3は、壁面画像を撮影する撮影手段である。このカメラ3としては、例えばCCDカメラの如き公知のカメラを使用することができる。なお、
図1に示すように、このカメラ3は、上述したように、カメラ固定台2bの両側端に設置されており、この2つのカメラ3の其々は、撮影した壁面画像を、有線又は無線によって記録端末1に送信する。なお、「壁面画像」とは、静止画と動画の両方を含む概念であるが、以下では特記しない限り、壁面画像は静止画であるものとして説明する。なお、これら2つのカメラ3によって撮影することが可能な範囲を撮影範囲と必要に応じて称して説明する。
【0036】
(構成−打診棒)
打診棒4は、診断員が壁面を打診する際に用いる打診手段である。打診手段の具体的な形状等については任意であるが、本実施の形態1では、打診棒4は、診断員が診断対象部を叩くためのハンマー等として形成され、診断員は、この打診棒4によって壁面を叩いた際に発せられる打診音に基づいて診断対象部の診断結果(例えば、亀裂、及び剥離等)を判定する。なお、その他の打診手段として、棒状体の先端部に小さな鉄球を付した公知の打診手段を用いても良い。
【0037】
(構成−レーザーポインタ)
レーザーポインタ5は、壁面画像を正対化するための目印を壁面に投光するための投光手段である。このレーザーポインタ5としては、例えば半導体レーザーを利用した公知のレーザーポインタ5を使用することができる。レーザーポインタ5を設置する位置や数は任意であり、例えば、本実施の形態1では、架台2における、上述した2つのカメラ3のそれぞれの下方に固定的に設置されている。そして、各レーザーポインタ5からは2本のレーザーが照射されており、それぞれのレーザーは、カメラ3の撮影範囲の外枠の四隅の近傍の地点であり、かつカメラ3の撮影範囲に含まれる地点を照射する。なお、このレーザーポインタ5によりレーザーが照射された壁面の地点を、以下では必要に応じて照射点と称して説明する。
【0038】
(構成−記録端末)
続いて、記録端末1の具体的な構成について説明する。この記録端末1は、壁面診断結果記録システムとして機能するものであって、例えばタブレットPCのような公知の情報端末として構成されている。
図2は、本実施の形態1に係る記録端末1を例示するブロック図である。この記録端末1は、概略的に、制御部11、及びデータ記録部12を備えて構成される。以下では、記録端末1を構成するこれらの構成要素について具体的に説明する。
【0039】
(構成−記録端末−制御部)
制御部11は、壁面診断結果記録システムを制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態1に係る壁面診断結果記録プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介して壁面診断結果記録システムにインストールされることで、制御部11の各部を実質的に構成する。
【0040】
この制御部11は、機能概念的に、壁面画像取得部11a、壁面画像解析部11b、対応付け部11c、被投光壁面画像修正部11d、及び統合部11eを備える。壁面画像取得部11aは、カメラ3にて撮影した壁面画像であって、診断員による診断結果を示す診断結果情報が記録された診断対象部を少なくとも含む壁面画像を取得する壁面画像取得手段である。壁面画像解析部11bは、壁面画像取得部11aにより取得した壁面画像の診断結果情報を解析し、当該診断結果情報が示す診断結果を特定する壁面画像解析手段である。対応付け部11cは、壁面画像解析部11bにより特定した診断結果を、壁面画像取得部11aにより取得した壁面画像における診断対象部の位置に対応付けてデータ記録部12に記録する対応付け手段である。被投光壁面画像修正部11dは、壁面画像における目印の縦横比が、壁面における目印の縦横比と近似するように、壁面画像を修正する被投光壁面画像修正手段である。統合部11eは、複数の壁面画像を統合(モザイキング)することにより単一の壁面画像を生成する壁面画像統合手段である。なお、これらの制御部11の各部によって実行される処理の詳細については後述する。
【0041】
(構成−記録端末−データ記録部)
データ記録部12は、壁面診断結果記録システムの動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、壁面診断結果記録システムとしてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0042】
このデータ記録部12は、判別記号テーブル12aと、診断結果データベース(以下、データベースを「DB」と称する)12bとを備えている。
【0043】
判別記号テーブル12aは、壁面状態を判別するための判別記号を格納する。
図5は、判別記号テーブル12aに格納されている情報を例示した表である。
図5に示すように、判別記号テーブル12aには、項目「診断結果情報」、及び「判別記号情報」に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。項目「診断結果情報」に対応して格納される情報は、診断結果を示す情報であり、例えば「汚損」、「剥離」、「亀裂」のような壁面の具体的な状態を示す情報である。項目「判別記号情報」に対応して格納される情報は、診断結果を特定するための判別記号を示す情報であり、診断結果に対応する任意の記号(例えば、丸、四角、三角など)を示す情報である。これらの情報を判別記号テーブル12aに格納するタイミングは任意で、例えばユーザが記録端末1に設けられたタッチパネル(図示省略)を操作して入力することにより、任意の情報を判別記号テーブル12aに格納することができる。
【0044】
(処理)
次に、このように構成される壁面診断結果記録システムによって実行される壁面診断結果記録処理について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係る壁面診断結果記録処理のフローチャートである(以下の処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この壁面診断結果記録処理は、壁面に対する診断結果の記録を行うための処理であり、例えば壁面診断結果記録システムへの電源投入後に所定周期にて繰り返し実行される。以下の処理の説明において、制御主体を特記しない処理については、壁面診断結果記録システムの制御部11にて実行されるものとし、情報の取得元や取得経路を特記しない場合については、公知のタイミング及び公知の方法にて、壁面診断結果記録システムのデータ記録部12に予め格納されており、あるいは、壁面診断結果記録システムのタッチパネルを介してユーザ等によって入力されるものとする。
【0045】
ここで、本実施の形態1に係る壁面診断結果記録処理を行う前提として、診断員が、壁面における診断対象部の診断を行い、診断対象部に対して診断結果に応じた診断結果情報を付する診断結果情報記録作業を行う。以下では、最初に、この診断結果情報記録作業について説明し、その後に、壁面診断結果記録処理について説明する。
【0046】
(処理−診断結果情報記録作業)
この診断結果情報記録作業において、最初に、診断員が架台2の座席2aに搭乗し、打診棒4を用いて壁面の診断対象部を打診し、診断結果を判定する。そして、診断員は、所定の筆記具を用いて、判定した診断結果に応じた診断結果情報を診断対象部に記載する。なお、診断結果情報を記載する筆記具は任意であり、本実施の形態1ではチョークであるものとして説明する。
【0047】
ここで、「診断結果情報」とは、診断結果を示す情報であり、本実施の形態1においては、診断結果情報は、診断結果に応じて異なる判別記号である。具体的には、診断員は、
図5に示す判別記号テーブル12aの項目「診断結果情報」と、項目「判別記号情報」との対応関係を任意の方法により把握しておき(例えば
図5に示す対応関係に関する情報を印刷した紙を所持した状態において診断を行っても良い)、その対応関係に基づいて、診断結果に応じた判別記号を診断対象部に記載する。より具体的には、診断対象部であるタイルの診断結果が「汚損」である場合は、診断員は、そのタイルに「丸」の判別記号を記載し、「剥離」である場合は、診断員は、そのタイルに「四角」の判別記号を記載し、「亀裂」である場合は、診断員は、そのタイルに「三角」の判別記号を記載する。
【0048】
このようにして、架台2を停止させた状態において診断する事のできる範囲に存在するタイルを全て診断し、その診断結果に応じた判別記号を対応する診断対象部に記載する。そして、上述したように架台2を上下左右に移動させて、移動後の架台2の位置において診断する事のできる範囲に存在するタイルを全て診断し、以降同様に、判別記号の記載、架台2の移動、診断対象部の診断、判別記号の記載といったように繰り返し行うことにより、壁面全体の診断対象部に判別記号を記載する。このようにして、壁面全体の診断及び判別記号の記載を終えることによって、診断結果情報記録作業を完了する。
【0049】
(処理−壁面診断結果記録処理)
図3に戻り、次に、壁面診断結果記録処理について説明する。ここで、この壁面診断結果記録処理においては、診断員は架台2に搭乗しないものとして説明する。すなわち、診断員が、搭乗者のいない架台2を遠隔操作し、この架台2が壁面の上下左右方向に沿って移動するものとして説明する。
【0050】
まず、壁面診断結果記録処理が起動されると、壁面画像取得部11aは、カメラ3により撮影した壁面画像を取得する(SA1)。そして、被投光壁面画像修正部11dは、SA1において取得した壁面画像を正対化する(SA2)。
【0051】
ここで、壁面画像を正対化する具体的な方法について説明する。まず、被投光壁面画像修正部11dは、壁面における各照射点を結ぶことにより形成される四角形の縦横比を取得する。なお、この四角形の縦横比を取得する方法は任意である。例えば、ユーザが壁面に定規やメジャーを宛がってこの四角形の縦の長さと横の長さを計測して算出した縦横比を取得しても良い。あるいは、壁面に投光される四角形の縦横比が所定の値(例えば1:1)となるようにレーザーポインタ5の照射方向を設定し、当該所定の値をデータ記録部12に予め記録しておき、データ記録部12に記録された縦横比の値を取得しても良い。
【0052】
次に、被投光壁面画像修正部11dは、壁面画像における各照射点を結ぶことにより形成される四角形の縦横比を取得する。なお、この四角形の縦横比を取得する方法は任意である。例えば、壁面画像を解析し、照射点と同一の色を抽出することにより照射点の位置を特定し、このようにして特定した各照射点の位置から四角形の縦横比を取得することが可能である。
【0053】
次に、被投光壁面画像修正部11dは、壁面における各照射点を結ぶことにより形成される四角形の縦横比と、壁面画像における各照射点を結ぶことにより形成される四角形の縦横比とを比較し、その縦横比に差がある場合には、これらの値が近似する様に壁面画像を修正する。このようにして、壁面画像を正対化することが可能である。なお、壁面画像を修正する具体的な方法については公知の画像修正技術を用いることが可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0054】
続いて、統合部11eは、記録端末1に備えられた2つのカメラ3によって撮影された壁面画像を統合する(SA3)。2つの壁面画像を統合する方法は任意であり、例えば、両方の画像に共通する特徴点を抽出してその特徴点を元に2つの壁面画像を統合する公知のモザイキング法により壁面画像を統合する。このように2つのカメラ3によって広い範囲の壁面を撮影し、取得した壁面画像を統合して単一の壁面画像を生成することによって、一度に広い範囲の壁面画像を取得することが可能となるため、診断員の作業負荷の低減を図ることが可能となる。
【0055】
そして、SA3において統合した壁面画像を診断結果DB12bに記録する(SA4)。ここで、壁面画像の記録態様は任意であるが、本実施の形態1では、統合した壁面画像を、予め診断結果DB12bに記録された建物のCAD図における壁面に貼り付けて記録する。具体的には、対応付け部11cは、建物の形状を概略的に表すCAD図(窓や塗装といった細部まで表現したものである必要はなく、建物の形状が認識可能な程度の簡易なCAD図で構わない)から建物を構成する複数の壁面を抽出し、これら複数の壁面のうち診断員が選択した壁面の座標に、壁面画像を合わせて、壁面画像を合成して記録する。あるいは、壁面画像を、壁面と同一の位置に、異なるレイヤーとして記録する。
【0056】
ここで、診断員がどのような方法により任意の壁面を選択するかは様々な方法があり、例えば壁面診断結果記録処理の起動時に、記録端末1に設けられたディスプレイ(図示省略)に上述した建物のCAD図を表示し、診断員が、壁面画像を貼り付ける壁面を指等で押圧して選択する事としても良い。なお、この際には、CAD図をディスプレイ上で自在に回転可能とすることで、裏側の壁面も選択することが可能となる。あるいは、ディスプレイに「東面」、「西面」、「南面」、「北面」、等を表示し、診断員がこれらのいずれかを指等で押圧することにより選択しても良い。
【0057】
ここで、壁面画像と、CAD図において選択された壁面との位置関係を対応させる方法としては様々な方法が考えられる。例えば、架台移動機構に架台2の上下方向及び左右方向の位置を特定するための位置特定手段を設け、この位置特定手段にて特定された位置に基づいて、位置関係を対応させてもよい。具体的には、架台2の上下方向の位置は、昇降装置におけるモーターの回転量を計測することによって特定してもよい。また、架台2の左右方向の位置は、レールを移動する際の昇降装置の車輪の回転量を計測することによって特定してもよい。このように特定した各位置を、架台移動機構から記録端末1に送信することによって、記録端末1は、架台2の上下方向及び左右方向の位置を特定し、この架台2の位置に基づいてカメラ3の撮影位置を特定し、当該位置において取得した壁面画像をCAD図における対応する位置に記録することができる。
【0058】
続いて、制御部11は、記録端末1の移動が検知されたか否かを判定する(SA5)。ここで、架台2の移動を検知する方法は任意の方法を採用することが可能であり、例えば、架台2に設置された公知の移動検知センサー(図示省略)などによって、架台2が移動しているか否かを判定することができる。あるいは、カメラ3の撮影範囲を解析し、撮影範囲が異なるものとなった場合に、架台2が移動したと判定しても良い。なお、架台2を移動させるタイミングは任意であり、例えば本実施の形態1においては、カメラ3による壁面画像の記録(SA4)が完了したものと診断員が判断した場合に、診断員がリモコンを操作して、上下左右のいずれかの方向に架台2を移動させるものとして説明する。ここで、例えば、診断員に壁面画像の記録が完了したことを判断させる方法は任意であり、例えば、壁面画像の記録が完了した際に記録端末1に設けた表示灯(図示省略)を点灯させることにより、診断員に記録の完了を伝えても良い。
【0059】
そして、制御部11が、記録端末1の移動がないと判定した場合(SA5、No)、壁面診断記録処理の終了指示を取得するまでSA5〜SA10を繰り返し行う。また、制御部11は、記録端末1の移動が有ると判定した場合(SA5、Yes)、記録端末1が停止するまで待機し(SA6、No)、記録端末1が停止した場合には(SA6、Yes)、未取得の壁面画像を含む範囲をカメラ3の撮影範囲としているか否かを判定する(SA7)。
【0060】
ここで、未取得の壁面画像を含む範囲をカメラ3の撮影範囲としているか否かを判定する方法は任意である。例えば、制御部11が、ワイヤーの巻き取り及び巻き出しを行うモーターの回転量や、レールを移動する際の昇降装置の車輪の回転量を常に記憶しておき、これらの回転量に基づいて、架台2停止時の撮影範囲が、未取得の壁面画像を含む撮影範囲であるか否かを判定することが可能である。
【0061】
なお、制御部11が終了指示を取得する方法は任意であり、例えば、診断員がリモコンを介して「診断終了」の指示を示す信号を記録端末1に対して送信し、記録端末1の受信部(図示省略)がこの信号を受信することによって、終了指示を取得したものと判定しても良い。
【0062】
そして、制御部11が、未取得の壁面画像を含む範囲をカメラ3の撮影範囲としていないと判定した場合(SA7、No)、壁面診断記録処理の終了指示を取得するまでSA5〜SA10を繰り返し行う。ここで、記録端末1が移動して(SA5、Yes)停止した(SA6、Yes)にも関らず、未取得の壁面画像を含む範囲をカメラ3の撮影範囲としていない場合(SA7、No)とは、例えば、既に壁面画像を取得して診断を行った壁面の方に記録端末1が移動した場合等が考えられる。この場合には、この壁面は既に撮影して壁面画像を記録しているため、改めて壁面画像を記録する必要がなく、後述するSA8〜SA10を行わない。
【0063】
また、制御部11が、未取得の壁面画像を含む範囲をカメラ3の撮影範囲としていると判定した場合(SA7、Yes)、被投光壁面画像修正部11dは、その時点で取得した壁面画像を、上述したSA2と同様の方法によって正対化する(SA8)。なお、このように架台2が停止するまで壁面画像の取得を待機することにより、架台2の移動に伴う振動によって壁面画像がぶれてしまうことを防止することが可能である。そして、統合部11eは、2つのカメラ3により撮影された2つの壁面画像を相互に統合して単一の壁面画像を生成し、また、このようにして生成された単一の壁面画像と、既に診断結果DB12bに記録されている他の壁面画像(例えば、SA4において診断結果DB12bに記録された壁面画像)とを統合し(SA9)、単一の壁面画像を生成する。そして、このようにして生成された壁面画像を診断結果DB12bに上書きして記録する(SA10)。
【0064】
ここで、
図6は、壁面全体の診断結果を診断結果DB12bに記録していく工程を概念的に表す概略図である。
図6に示すように、概略的に、未取得の壁面画像を取得、壁面画像の統合、及び壁面画像の記録が行われることにより、建物のCAD図に壁面画像を貼り付ける(
図6(a))。そして、架台2を壁面を上下に架けて移動させて、その列の診断が終了した後、隣の列に移って上記と同様の方法により診断を行い、これを繰り返すことによって、壁面全体の壁面画像の記録を行うことが可能となる(
図6(a)〜(c))。なお、これ以降の他の列に係る壁面診断結果記録処理において、壁面画像を統合して(SA3、SA9)記録する際(SA4、SA10)には、隣合う列の壁面診断結果記録処理において診断結果DB12bに記録された壁面画像と統合して記録する。なお、この際に壁面画像を統合する方法としては、SA3やSA9と同様の方法により行うことが可能であるため、その詳細な説明を省略する。このようにして壁面全体の壁面画像を生成することができる。
【0065】
図3に戻り、記録端末1が終了指示を取得するまで、記録端末1の移動と、壁面画像の記録とを繰り返す。そして、記録端末1が終了指示を取得した場合、壁面画像解析部11bは、診断結果DB12bに記録された壁面画像を解析する(SA11)。具体的には、まず、診断員により診断対象部に記載された判別記号の位置を特定することにより、判別記号が記載された診断対象部の位置を特定する。ここで、判別記号が記載された診断対象部の位置を特定する方法は任意であり、例えば壁面画像におけるチョークが付着した位置と付着していない位置との輝度の差に基づいて、壁面におけるチョークが付着した位置を特定することによって診断対象部を特定しても良い。
【0066】
続いて、これらの診断結果情報を解析し、
図5に示す判別記号テーブル12aを参照して、当該診断結果情報が示す診断結果を特定する。例えば、診断対象部に「丸」の判別記号が記載されていると判定した場合には、当該診断対象部の診断結果は「汚損」であるものと特定する。また、診断対象部に「四角」の判別記号が記載されていると判定した場合には、当該診断対象部の診断結果は「剥離」であるものと特定する。また、診断対象部に「三角」の判別記号が記載されていると判定した場合には、当該診断対象部の診断結果は「亀裂」であるものと特定する。このように、壁面画像に記載された全ての判別記号の解析を行い、診断結果を特定する。
【0067】
続いて、対応付け部11cは、対応付け処理を行う(SA12)。
図4は、対応付け処理のフローチャートである。
図4に示すように、まず、対応付け部11cは、SA11において特定した判別記号が記載された診断対象部の位置を診断結果DB12bに記録する(SB1)。ここで、診断対象部の位置をどのような態様において記録するかは任意であり、例えば、建物のCAD図に壁面画像を貼り付けた際における診断対象部の位置を、CAD図上の位置座標に変換して、数値として記録しても良い。
【0068】
次に、SA11において解析された診断結果を、SB1において記録された診断対象部の位置に対応付けて、記録する(SB2)。ここで、診断結果をどのような態様において記録するかは任意であり、例えば、SB1において診断結果DB12bに記録した各診断対象部の位置座標の数値に、それぞれの診断結果(例えば、「汚損」、「剥離」、及び「亀裂」など)を紐付けて記録しても良い。
【0069】
なお、本実施の形態1における対応付け処理では、SB1とSB2を同時に行う。具体的には、SA4において壁面画像を貼り付けた建物のCAD図における診断対象部に、それぞれの診断結果に対応する判別記号を表示する。なお、このように判別記号を表示しなくとも、診断対象部には診断員がチョークを用いて判別記号を記載しており、その診断対象部を撮影した壁面画像には判別記号が表示されている。しかし、壁面画像における診断対象部にチョークで記載された判別記号は、小さくて色も薄いため視認し辛い可能性がある。そのため、より視認し易い態様の判別記号(例えば黒塗りの丸、三角、四角等)をCAD図上に表示することで、CAD図における判別記号を視認し易くなる。これにて対応付け処理を終了する。
【0070】
このように、SA5からSA10を繰り返すことによって壁面全体の壁面画像がCAD図に合成されて記録され(
図6(a)〜(c))、終了指示を取得した後に壁面画像の解析(SA11)及び対応付け処理(SA12)を行うことにより、CAD図上の診断対象部に判別記号が記録されていく(
図6(d)、(e))。
【0071】
そして、制御部11は、診断結果DB12bに記録された壁面全体の診断結果を自動積算する事により、壁面における不具合の種類毎の総量を導出しても良い。そして、このように診断結果を自動積算した結果をまとめた診断結果レポート6を作成しても良い。
図7は、診断結果レポート6を例示する図である。なお、この診断結果レポート6は、診断結果DB12bにデータとして記録しておき、診断員が必要に応じて呼び出して閲覧できるものとしても良いし、あるいは紙媒体などに印刷して打ち出すものであっても良い。なお、本実施の形態では、記録端末1に設けられた図示しないディスプレイに診断結果レポート6を表示するものとして以下では説明する。
【0072】
ここで、診断結果レポート6に表示する内容は任意であり、例えば、この
図7に示すように、左半分に診断結果を反映させた壁面画像を表示し、右半分には、診断年月日、診断員の氏名、選択壁面、診断結果のID、不具合の種類毎の総量、診断結果の位置座標、全種類の不具合の総量、入力されたコメントなどを表示する。ここで、診断結果のIDは、診断結果の解析を行った順番に0001、0002・・・といったように通し番号を振り分けたものである。また、診断結果レポート6の診断結果に任意のコメントを入力可能な構成としても良い。具体的には、記録端末1に図示しないキーボード等を接続して、選択した診断対象部に対してこのキーボード等を介して任意のテキストを入力可能とする。また、入力されたコメントは、左半分の壁面画像における診断対象部に表示した吹き出しのマークを診断員が押圧することにより初めてディスプレイ上に表示するものとしても良いし、右半分の表のコメントの欄に表示しても良い。
【0073】
このような診断結果レポート6の作成を所定周期毎(例えば1年毎)に実行することによって、壁面の劣化進行の状態を容易に確認することができる。このように所定周期毎のデータを蓄積していくことにより、前回以前の診断レポート6と今回の診断レポート6とを比較することにより、更なる診断精度の向上を図ることができる。例えば、前回以前に「亀裂」と判定されていた診断対象部が、今回の診断では「亀裂」と判定されていない場合には、今回の診断においては、診断員による記録の漏れ等があったことが推認できる。なお、変形例において後述するように、壁面画像を動画として音声と併せて記録しても良く、このように記録した場合には、診断結果として打診音等もデータとして残るため、前回以前の診断音と今回の診断音とを比較することも可能であり、診断精度をより一層向上させることが可能である。
【0074】
(本実施の形態1の効果)
このように本実施の形態1によれば、診断員による診断結果を記録することが可能であるため、壁面への固定が不安定である打診用機械によって診断を行うことにより不正確な診断結果が判定されることがなく、打診用機械による診断結果を記録する場合と比べてより正確な診断結果を得ることが可能である。また診断員の打診や触診によって壁面の診断を行うことが可能であるため、ひび割れと浮きとの関連性、あるいは、シール切れとエフロレッセンスとの関連性のように診断員によらなければ診断を行うことが困難な壁面状態についても診断を行うことが可能となり、より詳細な診断を行うことが可能となる。また、診断結果を壁面画像における診断対象部の位置に対応付けて記録することが可能となり、従来のように、一度壁面に記載した診断結果を野帳に転記して記録する必要がないため、診断員の作業負荷の低減、壁面全体の診断時間の短縮、又は診断結果の正確性の向上を図ることが可能となる。
【0075】
また、従来より、壁面における代表的な劣化損傷部位については診断員が持参したカメラを用いて写真撮影し、調査報告書等に当該撮影した写真を貼付することによって、調査報告書の説得力の向上を図る取り組みも行われていた。このような場合には、撮影を行う代表的な劣化損傷部位の選定は専ら診断員の判断に委ねられるため、撮影を要しない程度の劣化損傷部位を撮影してしまう可能性や、あるいは診断員が代表的な劣化損傷部位を撮影し忘れてしまう可能性があった。したがって、診断員の判断力次第によっては、撮影を行う劣化損傷部位が大きく異なってしまい、作成される調査報告書の内容にもばらつきが生じてしまった。また、複数の劣化損傷部位をそれぞれ別々に撮影するため、複数の劣化損傷部位の相互間における損傷の因果関係等を把握することが困難であった。
【0076】
このような問題に対して、従来技術にあるような自動打診機による診断に加えて、このような自動打診機自体に、あるいは、壁面の遠方に、カメラ3を設置して壁面を撮影し、カメラ3により撮影された壁面の画像に基づいて壁面状態の診断を行う診断方法が提案されている。このような診断方法によれば、調査端末機に取り付けたカメラ3等によって壁面の全体を撮影することが可能である。そのため、診断員の判断に委ねて壁面の一部のみを撮影する従来の診断方法とは異なり、壁面全体を撮影するため、当該壁面全体の画像を吟味した上で調査報告書等に貼付するのに必要な部分(代表的な劣化損傷部位)の壁面画像を抽出することが可能である。また、壁面全体の画像を取得することが可能であるため、複数の劣化損傷部位の相互間における損傷の因果関係等を容易に把握することが可能である。
【0077】
しかし、実際には、自動打診機自体にカメラ3を設置した場合であっても、上述したように、調査端末機を壁面に対して安定的に位置させることが現実的には困難であるため、カメラ3により撮影された壁面の画像の画質は、当該壁面の画像に基づいて壁面状態の診断を行うに耐え得るものではなかった。また、壁面の遠方にカメラ3を設置した場合であっても、遠方から壁面を高画質に撮影するためには大掛かりな望遠レンズが必要となり、さらに、カメラ3と壁面との間に樹木等の障害物が存在する場合には壁面を撮影することができないため、実用性に耐え得ないものであった。
【0078】
しかし、本実施の形態1のように、壁面から所定距離離れた位置に架台2を配置することによって、壁面に位置する庇やバルコニー、出窓、柱型などの凹凸の影響を受けずに架台2を上下方向に沿って移動させることが可能となる。このことによって、カメラ3が壁面に設けられた凹凸の影響を受けることなく、高画質な壁面画像を取得することが可能となるため、上述した代表的な劣化損傷部位の壁面画像の抽出や、損傷の因果関係等の把握がより一層容易になる。また、変形例において後述するように、診断結果情報記録作業と壁面の撮影とを同時に行うものとしても良く、このような場合には、壁面の凹凸に合わせて診断員が架台2やカメラ3の位置を調節することにより、高画質な壁面画像をより安定的に取得することが可能となる。
【0079】
また、複数のカメラ3によって壁面における互いに重複しない部分を少なくとも含む範囲を撮影し、撮影された複数の壁面画像をモザイキングして単一の壁面画像とすることによって、より広範囲に亘る壁面の壁面画像を生成することが可能であるため、より広範囲の診断対象部を一度にデータ記録部12に記録することが可能となり、診断員の作業負荷の低減を図ることが可能となる。
【0080】
また、壁面に目印を投光し、壁面画像における目印の縦横比が、壁面における目印の縦横比と近似するように壁面画像を修正することによって、より実際の壁面と近似する縦横比を有する壁面画像を生成することが可能となり、診断対象部の位置を正確に特定することが可能な壁面画像を記録することが可能となる。
【0081】
また、データ記録部12に記録された診断結果に基づいて、壁面における不具合の種類毎の総量を導出することにより、不具合を数値として表すことが可能となるため、壁面の補修に要する費用や時間について容易に目安を付けることが可能となる。
【0082】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態2は、診断結果情報が、診断員により壁面に貼付されたQRコード(登録商標)であり、壁面画像を正対化する手段が、壁面を構成するタイルの縦横比に基づいて壁面画像を正対化するタイル壁面画像修正手段である形態である。なお、実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたのと同一の符号を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0083】
(構成)
次に、本実施の形態2に係る壁面診断結果記録システムとして機能する記録端末20の構成について説明する。
図8は、本発明の実施の形態2に係る記録端末20を例示するブロック図である。この
図8に示すように、本実施の形態2に係る制御部21は、タイル壁面画像修正部21dを備えており、データ記録部22は、判別記号テーブル22aを備えている。
【0084】
タイル壁面画像修正部21dは、壁面画像における各タイルの縦横比が、壁面における各タイルの縦横比と近似するように、壁面画像を修正するタイル壁面画像修正手段である。なお、タイル壁面画像修正部21dによって実行される処理の詳細については後述する。
【0085】
判別記号テーブル22aは、QRコードに関する情報を格納する。
図9は、判別記号テーブル22aに格納されている情報を例示した表である。
図9に示すように、判別記号テーブル22aには、項目「QRコード(登録商標)ID」、「診断結果情報」、及び「判別記号情報」に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。項目「QRコードID」に対応して格納される情報は、QRコードIDを示す情報であり、例えば「01」、「02」、「03」のようなIDを示す情報である。項目「診断結果情報」に対応して格納される情報は、診断結果を示す情報であり、例えば「汚損」、「剥離」、「亀裂」のような壁面の具体的な状態を示す情報である。項目「判別記号情報」に対応して格納される情報は、診断結果を特定するための判別記号を示す情報であり、診断結果に対応する任意の記号(例えば、丸、四角、三角など)を示す情報である。これらの情報を判別記号テーブル22aに格納するタイミングは任意で、例えばユーザがタッチパネルを操作して入力することにより、任意の情報を判別記号テーブル22aに格納することができる。
【0086】
(処理)
次に、このように構成される壁面診断結果記録システムによって実行される壁面診断結果記録処理について説明する。なお、本実施の形態2のフローチャートは、実施の形態1のフローチャートと同様に構成することが可能であるため、以下では、実施の形態1と同様に、
図3を参照にしつつ、本実施の形態2に係る壁面診断結果記録処理について説明する。なお、実施の形態1と同様に、最初に、壁面診断結果記録処理の前提として行う診断結果情報記録作業について説明し、その後に、壁面診断結果記録処理について説明する。
【0087】
(処理−診断結果情報記録作業)
この診断結果情報記録作業において、最初に、診断員が架台2の座席2aに搭乗し、打診棒4を用いて壁面の診断対象部を打診し、診断結果を判定する。そして、診断員は、判定した診断結果に応じた診断結果情報を診断対象部に貼付する。
【0088】
ここで、本実施の形態2において、「診断結果情報」とは、診断結果に応じて異なるQRコードである。なお、本実施の形態2においてはこのように診断結果情報はQRコードであるものとして説明するが、その他の光学式マーク(例えばバーコード等)であってもよい。具体的には、診断員は、
図9に示す判別記号テーブル22aの項目「診断結果情報」と、項目「QRコードID」との対応関係を任意の方法により把握しておき(例えば
図9に示す対応関係に関する情報を印刷した紙を所持した状態において診断を行っても良い)、その対応関係に基づいて、診断結果に応じたQRコードを診断対象部に貼付する。具体的には、診断員は、QRコードID「01」、「02」、及び「03」、のQRコードを表面に表示したシールを各々複数枚所持した状態において架台2に搭乗し、壁面の診断を行う。そして、診断対象部であるタイルの診断結果が「汚損」である場合は、診断員は、そのタイルにQRコードID「01」のQRコードを表示したシールを貼付し、診断対象部であるタイルの診断結果が「剥離」である場合は、診断員は、そのタイルにQRコードID「02」のQRコードを表示したシールを貼付し、診断対象部であるタイルの診断結果が「亀裂」である場合は、診断員は、そのタイルにQRコードID「03」のQRコードを表示したシールを貼付する。
【0089】
このようにして、架台2を停止させた状態において診断する事のできる範囲に存在するタイルを全て診断し、その診断結果に応じたQRコードを表示するシールを、対応する診断対象部に貼付する。そして、上述したように架台2を上下左右に移動させて、移動後の架台2の位置において診断する事のできる範囲に存在するタイルを全て診断し、以降同様に、QRコードを表示したシールの貼付、架台2の移動、診断対象部の診断を繰り返し行うことにより、壁面全体の診断対象部にQRコードを表示したシールを貼付する。このようにして、壁面全体の診断及びQRコードを表示したシールの貼付を終えることによって、診断結果情報記録作業を完了する。
【0090】
(処理−壁面診断結果記録処理)
図3に戻り、壁面診断結果記録処理について説明する。まず、壁面診断結果記録処理が起動されると、壁面画像取得部11aは、カメラ3により撮影した壁面画像を取得する(SA1)。そして、タイル壁面画像修正部21dは、SA1において取得した壁面画像を正対化する(SA2)。
【0091】
ここで、壁面画像を正対化する具体的な方法について説明する。本実施の形態2のように、タイルの縦横比に基づいて壁面画像を修正するためには、まず壁面画像におけるタイルの形状を特定する必要があり、そのためには、壁面画像において、壁面を構成する複数のタイルと、これら複数のタイルの相互間に敷き詰められた目地(以下、単に目地と称する)とを分離する必要がある。ここで、タイルと目地との間に画像上での輝度差がある場合には、壁面画像を二値化することにより、壁面画像におけるタイルと目地とを分離することが可能である。しかし、実際には外壁は屋外環境にあり、太陽の位置に依存してタイルごとに輝度のばらつきが生じてしまうため、単純な閾値処理では壁面画像におけるタイルと目地とを分離することができない。
【0092】
そこで、タイル壁面画像修正部21dは、壁面画像に対して適応二値化処理を行うことにより、壁面画像のタイルと目地とを分離する。具体的には、まず、タイル壁面画像修正部21dは、壁面画像を所定範囲毎に細分化し、それぞれの所定範囲毎に平均輝度値を算出する。そして、壁面画像を、それぞれの所定範囲毎に、当該所定範囲における平均輝度値を閾値として二値化する。このようにして壁面画像に対して適応二値化処理を行うことにより、照明条件の不均一に関らず、壁面画像におけるタイルと目地とを分離することが可能である。
【0093】
そして、このようにタイルと目地とが分離された壁面画像から各タイルの縦横比を特定し、壁面画像における各タイルの縦横比が、壁面における各タイルの縦横比と近似するように、壁面画像を修正する。なお、壁面における各タイルの縦横比を取得する方法は任意であり、例えば、ユーザが壁面に定規やメジャーを宛がってこの四角形の縦の長さと横の長さを計測して算出した縦横比を取得しても良い。
【0094】
続いて、SA3からSA10については、実施の形態1と同様に構成することが可能であるためその詳細な説明を省略する。
【0095】
続いて、SA11においては、まず、診断員により診断対象部に貼付された診断結果情報の位置を特定することにより、QRコードが貼付された診断対象部の位置を特定する。ここで、QRコードが貼付された診断対象部の位置を特定する方法は任意であり、例えば壁面画像におけるQRコードの位置を公知の位置検出手段により特定し、このようにして特定した位置を診断対象部の位置と特定する事としても良い。
【0096】
続いて、これらの診断結果情報を解析し、
図9に示す判別記号テーブル22aを参照にして、当該診断結果情報が示す診断結果を特定する。具体的には、診断対象部に貼付されたQRコードのIDが「01」であると判定した場合には、当該診断対象部の診断結果は「汚損」であるものと判定する。また、QRコードのIDが「02」であると判定した場合には、当該診断対象部の診断結果は「剥離」であるものと判定する。また、QRコードのIDが「03」であると判定した場合には、当該診断対象部の診断結果は「亀裂」であるものと判定する。このように、壁面画像に記載された全ての判別記号の解析を行い、診断結果を特定する。
【0097】
なお、対応付け処理(SA12)については、実施の形態1と同様に構成することが可能であるためその詳細な説明を省略する。
【0098】
(本実施の形態2の効果)
このように本実施の形態2によれば、壁面画像におけるタイルの縦横比が、壁面におけるタイルの縦横比と近似するように壁面画像を修正することによって、より実際の壁面と近似する縦横比を有する壁面画像を生成することが可能となり、診断対象部の位置を正確に特定することが可能な壁面画像を記録することが可能となる。
【0099】
また、診断結果情報としてQRコードを用いることにより、チョーク等により壁面に診断結果情報を記録する場合のように、壁面のチョークが何れかの理由(例えば雨など)により消えてしまい、診断結果情報を解析できず、診断結果情報が示す診断結果を特定することが不可能となってしまうような事態を防止することが可能となり、より確実に診断結果情報を解析することができる。
【0100】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0101】
(各実施の形態の相互関係)
各実施の形態に示した特徴は、相互に入れ替えたり、一方の特徴を他方に追加してもよい。例えば、壁面画像を正対化する手段として、実施の形態1においては、実施の形態2のように、壁面を構成するタイルの縦横比に基づいて壁面画像を正対化するタイル壁面画像修正手段を採用してもよく、あるいは、実施の形態2においては、実施の形態1のように、レーザーポインタ5により投光された目印に基づいて壁面画像を正対化する被投光壁面画像修正手段を採用してもよい。
【0102】
(寸法や材料について)
発明の詳細な説明や図面で説明した記録端末1、20、カメラ3、打診棒4、レーザーポインタ5、及び架台2の各部の寸法、形状、比率等は、あくまで例示であり、その他の任意の寸法、形状、比率等とすることができる。また、各部を構成する材料については、金属や樹脂を含む任意の材料を用いることができる。
【0103】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
また、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0104】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散や統合して構成できる。例えば、壁面診断結果記録システムの各構成要素を、分散配置した上でネットワークを介して相互に接続してもよい。
【0105】
(記録端末について)
上記各実施の形態では、記録端末1、20はタブレットPCであるものとして説明したが、これに限定されず、例えば、ノートPCやその他の携帯端末であっても良い。
【0106】
(壁面について)
上記各実施の形態では、壁面は、上下左右に沿って配置された複数のタイルによって構成されているものとして説明したが、例えば塗装仕上げが施された塗装面であるものとしても良い。この場合にも同様の構成により、塗装面の「汚損」、「剥離」、「亀裂」等の診断結果を記録することが可能である。
【0107】
(診断結果について)
上記各実施の形態では、診断結果として「汚損」、「剥離」、「亀裂」を上げて説明したが、その他の診断結果を適宜設定することが可能である。また、診断結果としては、「汚損」、「剥離」、「亀裂」といった不具合の具体的な内容だけではなく、壁面の不具合の度合い(例えば「1」から「5」で段階的に表す)も同時に診断結果として記録しても良い。
【0108】
(レーザーポインタについて)
上記実施の形態1では、レーザーポインタ5は壁面に4点の照射点を照射することとしたが、その他の数の照射点を照射することとしても良い。具体的には、レーザーポインタ5の照射点に基づいて壁面画像を修正するためには、少なくとも3点以上の照射点を照射することにより足りる。また、点として照射するのではなく、特定の形状の目印を壁面に照射しても良い。例えば、カメラ3により撮影される範囲を示す枠を線としてレーザーポインタ5により照射しても良い。このように、特定の形状の目印を壁面に照射することにより、壁面画像の目印の形状が、実際の壁面に照射された目印の形状と近似するように壁面画像を修正することにより、壁面画像を正対化することができる。
【0109】
(カメラについて)
上記各実施の形態では、2つのカメラ3を設置するものとしたが、カメラ3の設置台数に限定はなく、1台のカメラ3のみを架台2に設置しても良い。また、3つ以上のカメラ3を架台2に設置しても良い。
【0110】
(壁面画像の統合について)
また、上記各実施の形態では、最初に、2つのカメラ3により撮影された壁面画像同士を統合し、その後に、統合された壁面画像を、診断結果DB12bに記録された上下位置の壁面画像に対して統合するという統合の順序で説明したが、このような順序に限定されない。例えば、最初に2つのカメラ3により撮影された壁面画像同士を統合せずに、まずは、それぞれのカメラ3が上下方向に沿って移動することにより撮影された上下方向に沿った壁面画像を統合する。そして、このように統合された上下方向に沿った壁面画像同士を統合する、といった順序であっても良い。
【0111】
また、上記各実施の形態では、架台2が移動して停止する度に、その時点でカメラ3が取得した静止画を正対化、統合、及び記録するものとして説明したが、このような構成に限定されない。すなわち、架台2を動かし続け、カメラ3は壁面画像を連続画像(ビデオ動画)として取得し続けるものとし、このように取得した連続画像を順次正対化、統合、及び記録するものとしても良い。
【0112】
以下では、このように壁面画像を連続画像として取得し続ける構成について、
図3を参照にしつつ説明する。なお、当該変形例の構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたのと同一の符号を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0113】
まず、実施の形態1と同様に、架台2は上下方向への移動と、左右方向への移動を繰り返し行う。ここで、架台2は一定の速度でこのような上下方向への移動と、左右方向への移動を繰り返すものとする。そして、架台2の移動開始と同時にカメラ3は壁面画像を連続画像として取得し続ける(SA1)。なお、SA2からSA4については上記実施の形態1と同様に行う。ここで、本変形例においては、架台2は常に移動し続けるため、架台2の移動検知(SA5)や、停止検知(SA6)を行わない。そして、終了指示を取得するまで、架台2の移動に伴って取得される連続画像を順次正対化し(SA8)、統合し(SA9)、記録し(SA10)続ける。そして、壁面画像を順次記録する度に、あるいは、終了指示を取得した後にまとめて、壁面画像を解析し(SA11)、対応付け処理(SA12)を行い、CAD図での不具合位置を特定する。
【0114】
(診断結果情報記録作業と壁面の撮影について)
本実施の形態では、まず、架台2に搭乗した診断員が壁面の診断を行って診断結果を診断対象部に記録し(診断結果情報記録作業)、次に、架台2に診断員が搭乗しない状態において架台2を上下左右に移動させて壁面の撮影を行うものとして説明したが、この診断結果情報記録作業と壁面の撮影とを同時に行うものとしても良い。具体的には、架台2に搭乗した診断員が診断結果情報記録作業を行いつつ、その診断結果情報記録作業の様子や壁面を、架台2に設置されたカメラ3により動画や静止画で撮影する(併せて音声を記録しても良い)。そして、架台2を壁面の上下左右に移動させることにより、壁面全体に対する診断結果情報記録作業と壁面の撮影とを同時に行うことが可能である。このように診断結果情報記録作業と壁面の撮影とを同時に行うことによって、壁面診断結果記録処理の所要時間を短縮することが可能である。また、カメラ3により診断結果情報記録作業の様子を動画や静止画で撮影した場合には、その動画や静止画に映し出された壁面の様子を視聴することにより診断員による診断に誤診が無かったか否かを確認することが可能である。また、カメラ3により診断結果情報記録作業の様子を動画で撮影すると共に、診断結果情報記録作業の音声を所定のマイク等により取得して記録した場合には、動画と併せて記録された打診音を聴取することにより、診断員による診断に誤診が無かったか否かを確認することが可能である。このように、記録された動画、静止画、又は音声を、診断が適切に行われたか否かの証拠として用いることが可能である。
【0115】
(壁面画像を取得するタイミングについて)
上記各実施の形態では、架台2が動いて停止するごとに壁面画像を取得するものとして説明したが、例えば架台2の上下位置を常に測定し続け、この架台2の上下位置からカメラ3の撮影範囲を特定し、カメラ3の撮影範囲が、未取得の壁面画像を含む範囲を撮影すると判定した場合に、架台2の停止を待たずに壁面画像の取得を行っても良い。
【0116】
(架台移動機構について)
上記各実施の形態では、架台移動機構の昇降装置は建物の屋上に配置されているものとして説明したが、昇降装置は、架台2に対して接続されているものであって、ワイヤーの巻取り又は巻き出しを行うことによって架台を上下方向に沿って昇降可能とするものであっても良い。また、架台を左右方向に移動させる方法は任意であり、上記各実施の形態では、建物の屋上において壁面に沿った左右方向に敷設されたレール上を昇降装置が移動することによって、架台2が左右方向に移動するものとして説明したが、このような構成に限定されない。例えば、レールを有さない構成であっても良い。このようなレールを有さない構成においては、ワイヤーを建物の屋上において固定し、ワイヤーの固定位置を左右いずれかの方向にずらすことにより、架台2を左右方向に移動させることが可能である。
【0117】
(架台について)
上記各実施の形態では、診断員は上下方向に沿って昇降可能な架台2に搭乗した状態において、診断を行うものとして説明したが、架台2に搭乗しなくても診断員の手の届く範囲に診断対象部が位置するのであれば、診断員は架台2に搭乗する必要はない。
【0118】
また、上記各実施の形態では、診断結果情報記録作業における架台2と、壁面診断結果記録処理における架台2とは単一のものを用いるものとして説明したが、両者は異なるものであっても良い。具体的には、診断結果情報記録作業における架台2は、少なくとも診断員が搭乗するための座席2aが設置されているものでよく、一方、壁面診断結果記録処理における架台2は、カメラ3、カメラ固定台2b、記録端末1、20、レーザーポインタ5等といった壁面診断結果記録処理に必要な構成要素のみを搭載した、座席2aの無い小型の架台2であっても良い。
【0119】
また、上記各実施の形態では、壁面診断結果記録処理において、診断員の任意のタイミング(例えば、カメラ3による壁面画像の取得が完了したものと診断員が判断した場合)において、診断員の操作により架台2を移動させるものとして説明したが、架台移動機構の判断によって自動で架台2を移動させても良い。具体的には、架台移動機構の記録部(図示省略)に、診断の対象となる壁面の縦横の長さを記録しておき、この壁面の全体がカメラ3の撮影範囲に含まれるような架台2の移動コースを架台移動機構の記録部(図示省略)に入力しておく。そして、架台2がこの移動コースに沿って移動、停止、及び壁面画像の記録を繰り返すこととしても良い。この際には、架台2が一度通過した位置に戻ることはなく、カメラ3が未撮影壁面を撮影することはないので、SA7の工程を行う必要はない。
【0120】
また、上記各実施の形態では、架台は、一つの座席を備え、この一つの座席に対して一人の診断員が座って搭乗することを可能としたいわゆるチェア型ゴンドラであるものとして説明したが、このような構成に限定されない。例えば、複数人の診断員が同時に起立した状態において搭乗することを可能としたいわゆるデッキ型(箱型)ゴンドラであっても良い。
【0121】
(架台の位置の特定方法について)
本実施の形態1では、架台2の上下方向の位置は、昇降装置におけるモーターの回転量を計測することによって特定し、架台2の左右方向の位置は、レールを移動する際の昇降装置の車輪の回転量を計測することによって特定するものとして説明したが、その他の方法により架台2の位置を特定しても良い。例えば、架台2を移動させるためのリモコンに設けられた上下左右の移動を行うための各スイッチが押圧された回数に基づいて架台2の位置を特定しても良い。
【0122】
(壁面画像の解析、及び対応付け処理について)
上記各実施の形態では、診断員による終了指示を取得した後に、壁面画像の解析、及び対応付け処理を行うものとして説明したが、これらの処理を行うタイミングは適宜変更することが可能である。例えば、壁面画像を診断結果DB12bに記録する度に(SA4、SA10)、逐次、診断結果DB12bに記録された壁面画像の解析、及び対応付け処理を行っても良い。また、このように逐次、壁面画像の解析、及び対応付け処理を行い、その度にディスプレイ(図示省略)上に表示する診断結果レポート6を更新していくことにより、診断結果レポート6の作成状況をリアルタイムで認識することが可能である。
【0123】
(QRコードについて)
上記実施の形態2では、予めQRコードが表示された複数のシールを用意し、そのシールを診断対象部に貼付するものとして説明したが、当該シールは診断結果に応じて逐次作成するものであっても良い。具体的には、診断員は公知のQRコード変換器を所持した状態において架台2に搭乗して診断対象部の診断を行い、その診断結果に応じた情報をQRコード変換器に入力する。そして、QRコード変換器は、その情報を示すQRコードを表面に表示したシールを作成し、診断員はこのようにして作成したシールを診断対象部に貼付する。このような構成によれば、診断対象部に関するより詳細な説明(例えば、亀裂の長さや深さ等)をQRコードとして表示することが可能であり、このQRコードを解析して(SA11)、対応付け処理(SA12)を行うことにより、より詳細な診断結果レポート6を作成することが可能である。