(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位置決め手段は、樹脂製とされた前記収納ケースの前記嵌合部の上面に、上方に向けて一体に突出成形され、前記メイン基板に設けられている位置決め穴に嵌合する突起とされていることを特徴とする請求項1または2に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
前記電源側ケーブルの一端に設けられている前記コネクタは、前記インバータ収容部を密閉する蓋体側の前記P−N端子と対応する位置の内面側に設けられており、前記蓋体の取付け時において前記P−N端子に差し込まれる構成とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車等に搭載される空調装置の圧縮機には、インバータ装置が一体に組み込まれたインバータ一体型電動圧縮機が用いられている。このインバータ一体型電動圧縮機は、車両に搭載された電源ユニットから供給される高電圧の直流電力をインバータ装置で所要周波数の三相交流電力に変換し、それを電動モータに印加することにより駆動されるように構成されている。
【0003】
インバータ装置は、ノイズ除去用のフィルタ回路を構成するコイルやコンデンサ等の複数の高電圧系電装部品、電力を変換するスイッチング回路を構成するIGBT等の複数の半導体スイッチング素子、フィルタ回路およびスイッチング回路を含むインバータ回路やその制御回路が実装されている基板等々から構成され、P−N端子を介して入力された直流電力を三相交流電力に変換し、UWV端子からモータ側に出力するものであり、電動圧縮機のハウジング外周に設けられたインバータ収容部に組み込まれることによって一体化されている。
【0004】
このインバータ装置に電源からの直流電力を供給する電源側ケーブルは、例えば特許文献1に示されるように、インバータ収容部側に設けられているコネクタ接続部に電源側ケーブルのコネクタを介して接続され、そこから端子台、配線パターンにより直流電力ラインが構成されている樹脂基板、その樹脂基板上に設けられたコイルや平滑コンデンサにより構成されたフィルタ回路、バスバーアセンブリ等を介して制御基板側のP−N端子に接続される構成とされている。
【0005】
また、特許文献2には、フィルタ回路用のコイルやコンデンサを実装した回路基板が設置されたインバータ収容空間を密閉する金属製インバータカバーに、電源入力ポート形成部を形成し、そのポート形成部に金属端子を樹脂インサート成形して樹脂製電源コネクタを一体的に設け、該電源コネクタに電源側ケーブルを接続するとともに、インバータカバーのハウジングへの固定により、電源コネクタの金属端子と回路基板とを接続するようにしたものが開示され、特許文献3には、基板カバーの内面に弾性部材を挟持した状態で電力変換基板を固定設置するとともに、ハウジングと対向する側の表面にフィルタ回路用のコイルおよびコンデンサを配置し、そのコイルおよびコンデンサの下部をハウジング側の凹部に挿入設置したものが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に示すものは、電源側ケーブルからの直流電力の入力系統に端子台や樹脂基板、バスバー等を設けて、フィルタ回路用のコイルや平滑コンデンサ等の高電圧系電装部品を接続する必要があり、このため、インバータ装置の部品数が多くなり、構成が複雑化し、高コスト化、大型化するとともに、バスバーによる接続部が必要となることから、その信頼性の確保が大変になる等の課題を有している。
【0008】
一方、特許文献2には、回路基板の裏面側にフィルタ回路用の電装部品を実装し、インバータカバーに電源側ケーブルを接続する電源コネクタを一体化して設け、その金属端子をインバータカバーの取付け時に回路基板に接続する構成とすることで、直流電力の入力系統の構成を簡素化したものが記載され、また、特許文献3にも、電力変換基板の裏面側にフィルタ回路用の電装部品を配置して実装したものが記載されている。しかるに、これらは、フィルタ回路用の複数の電装部品を基板上の離れた位置に個別に実装しており、基板上に設けたP−N端子と関連付けし、複数の電装部品を一体的に結合して組み付けることで、インバータ装置の組み立て性や生産性を高めようとするものではない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、インバータ装置の構成の簡素化、コスト低減および小型軽量化を図るとともに、組み立て性やその精度を高め、生産性を向上できるインバータ一体型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるインバータ一体型電動圧縮機は、ハウジングの外周に設けられたインバータ収容部に、インバータ装置が組み込まれて一体化されているインバータ一体型電動圧縮機において、インバータ装置のメイン基板上に高電圧の直流電力を入力するP−N端子を設け、該P−N端子にその一端側に設けられているコネクタを差し込むことにより電源側ケーブルが接続可能とされているとともに、前記メイン基板の前記P−N端子が設置されている部位の裏面側に複数の高電圧系電装部品を配設し、実装することにより、該メイン基板上にノイズ除去用のフィルタ回路が設けられ、前記複数の高電圧系電装部品が、互いの収納ケースに設けられた嵌合部を介して一体に結合され、その何れかの収納ケース側に設けられた位置決め手段を介して前記メイン基板の裏面側の所定位置に設置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、インバータ装置のメイン基板上に高電圧の直流電力を入力するP−N端子を設け、該P−N端子にその一端側に設けられているコネクタを差し込むことにより電源側ケーブルが接続可能とされているとともに、メイン基板のP−N端子が設置されている部位の裏面側に複数の高電圧系電装部品を配設し、実装することにより、該メイン基板上にノイズ除去用のフィルタ回路が設けられているため、メイン基板上に設けられているP−N端子に対して、電源側ケーブルの一端に設けられているコネクタを差し込むことにより、端子台やバスバーを用いることなく、電源側ケーブルを直接接続した構成とすることができるとともに、メイン基板のP−N端子の設置部位の裏面に複数の高電圧系電装部品を配設し、実装することにより、バスバーを用いることなく、メイン基板上にノイズ除去用のフィルタ回路を構成することができる。従って、直流電力の入力系統に設けられていた端子台やバスバーを省き、インバータ装置の部品数を削減することにより、構成の簡素化、コスト低減および小型軽量化を図ることができるとともに、バスバーによる接続部を減らすことで、工数の低減と信頼性の向上を図ることができる。しかも、複数の高電圧系電装部品を、互いの収納ケースに設けられている嵌合部を介して一体に結合し、何れかの収納ケース側に設けられている位置決め手段を介してメイン基板の裏面側の所定位置に設置するようにしているため、比較的重い大型部品である平滑コンデンサやコイル等からなる複数の高電圧系電装部品を一体的に結合し、メイン基板の裏面側に位置決めして組み付けた状態でインバータ収容部内に収容設置することができる。従って、複数の高電圧系電装部品を個別に組み付けるものに比べ、組み立て性やその精度を高め、生産性を向上することができる。
【0012】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上記インバータ一体型電動圧縮機において、前記複数の高電圧系電装部品は、各々が樹脂製の前記収納ケース入り平滑コンデンサおよびコイルとされ、該収納ケースが前記メイン基板の裏面側にネジを介して一体に組み付け固定されることにより、前記インバータ収容部内に収容設置される構成とされていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、複数の高電圧系電装部品が、各々樹脂製の収納ケース入り平滑コンデンサおよびコイルとされ、その収納ケースがメイン基板の裏面側にネジを介して一体に組み付け固定されることにより、インバータ収容部内に収容設置される構成とされているため、ノイズ除去用のフィルタ回路を構成する平滑コンデンサおよびコイルを各々の収納ケースを介してメイン基板の裏面側にネジにより強固に締め付け固定し、一体化して組み込むことができる。従って、組み立て性やその精度を向上できるのみならず、走行振動等に対する耐振強度をも十分に確保することができる。
【0014】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記位置決め手段は、樹脂製とされた前記収納ケースの前記嵌合部の上面に、上方に向けて一体に突出成形され、前記メイン基板に設けられている位置決め穴に嵌合する突起とされていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、位置決め手段が、樹脂製とされた収納ケースの嵌合部の上面に、上方に向けて一体に突出成形され、メイン基板に設けられている位置決め穴に嵌合する突起とされているため、一体に結合された複数の高電圧系電装部品を、一方の樹脂製収納ケースに嵌合部と共に一体成形された位置決め手段用突起をメイン基板側の位置決め穴に嵌合することにより、同時に位置決めしてメイン基板に組み付けることができる。従って、部品数や組み立て工数を増加することなく低コストで、かつ複数の高電圧系電装部品を簡易に一体化して位置決めし、精度よく組み付けることにより、インバータ装置の組み立て性を向上することができる。
【0016】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記電源側ケーブルの一端に設けられている前記コネクタは、前記インバータ収容部を密閉する蓋体側の前記P−N端子と対応する位置の内面側に設けられており、前記蓋体の取付け時、前記P−N端子に差し込み可能とされていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、電源側ケーブルの一端に設けられているコネクタが、インバータ収容部を密閉する蓋体側のP−N端子と対応する位置の内面側に設けられており、蓋体の取付け時、P−N端子に差し込み可能とされているため、インバータ収容部にインバータ装置を収容設置した後、蓋体を取付けてインバータ収容部を密閉する際、同時に蓋体の内面側に設けられているコネクタをP−N端子に差し込むことにより、電源側ケーブルをインバータ装置のP−N端子に接続することができる。従って、電源側ケーブルの接続構造をシンプル化し、その接続工程を簡略化することができるとともに、コネクタ接続とすることによりその信頼性を確保することができる。
【0018】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記複数の高電圧系電装部品の1つが、前記メイン基板上に設置されている前記P−N端子の設置位置に対応してその裏面側に配設され、当該高電圧系電装部品により、前記コネクタの前記P−N端子への差し込み時に前記メイン基板に付加される応力を受ける構成とされていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、複数の高電圧系電装部品の1つが、メイン基板上に設置されているP−N端子の設置位置に対応してその裏面側に配設され、該高電圧系電装部品により、コネクタのP−N端子への差し込み時にメイン基板に付加される応力を受ける構成とされているため、メイン基板上に設けられているP−N端子に対して、電源側ケーブルの一端に設けられているコネクタを差し込んで、電源側ケーブルを接続する際、メイン基板に付加される応力を、P−N端子の設置位置に対応してその裏面側に配設されている高電圧系電装部品で支えることにより、軽減することができる。従って、メイン基板やその実装部品がコネクタの差し込み時の押し込み力による応力で破損する等の事態を確実に解消することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、メイン基板上に設けられているP−N端子に対して、電源側ケーブルの一端に設けられているコネクタを差し込むことにより、端子台やバスバーを用いることなく、電源側ケーブルを直接接続した構成とすることができるとともに、メイン基板のP−N端子の設置部位の裏面に複数の高電圧系電装部品を配設し、実装することにより、バスバーを用いることなく、メイン基板上にノイズ除去用のフィルタ回路を構成することができるため、直流電力の入力系統に設けられていた端子台やバスバーを省き、インバータ装置の部品数を削減することにより、構成の簡素化、コスト低減および小型軽量化を図ることができるとともに、バスバーによる接続部を減らすことで、工数の低減と信頼性の向上を図ることができる。しかも、比較的重い大型部品である平滑コンデンサやコイル等からなる複数の高電圧系電装部品を一体的に結合し、メイン基板の裏面側に位置決めして組み付けた状態でインバータ収容部内に収容設置することができるため、複数の高電圧系電装部品を個別に組み付けるものに比べ、組み立て性やその精度を高め、生産性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる一実施形態について、
図1ないし
図7を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態の係るインバータ一体型電動圧縮機の主要部の斜視図が示され、
図2には、そのa−a縦断面相当図、
図3には、インバータ収容部を密閉する蓋体の裏面側斜視図、
図4には、電源ケーブル単体の斜視図が示されている。
インバータ一体型電動圧縮機1は、外殻を構成する円筒形状とされたハウジング2を備えている。ハウジング2は、電動モータ(図示省略)を内蔵するためのモータハウジング3と、圧縮機構(図示省略)を内蔵するための圧縮機ハウジング(図示省略)とを一体に結合した構成とされている。
【0023】
インバータ一体型電動圧縮機1は、ハウジング2内に内蔵されている電動モータと圧縮機構とが回転軸を介して連結されており、電動モータが後述するインバータ装置7を介して回転駆動されることにより圧縮機構が駆動され、モータハウジング3の後端側側面に設けられている吸入ポート4を介してその内部に吸込まれた低圧の冷媒ガスを、電動モータの周囲を経て吸込み、圧縮機構で高圧に圧縮して圧縮機ハウジング内に吐出した後、外部に送出する構成とされている。
【0024】
モータハウジング3には、内周面側に軸線方向に沿って冷媒を流通させるための複数の冷媒流通路5が形成され、その外周部には、電動圧縮機1の据え付け用脚部6が複数箇所に設けられている。また、ハウジング2(モータハウジング3側)の外周部には、インバータ装置7を一体的に組み込むためのインバータ収容部8が一体に成形されている。このインバータ収容部8は、平面視が略正方形状とされており、底面がモータハウジング3の壁面により形成された部分的に略フラットな台座面9とされ、周囲にフランジ部10が立ち上げられた構成とされている。
【0025】
インバータ収容部8は、インバータ装置7が組み込まれた後、
図3に示される蓋体11がフランジ部10に取り付けられることによって密閉される構成とされている。この蓋体11の内面側には、高電圧ケーブル(電源側ケーブル)12が設けられている。高電圧ケーブル12は、一端側にコネクタ13が設けられるとともに、他端側に電源側のケーブルと接続されるコネクタ端子14が設けられたものであり、一端のコネクタ13が、後述するメイン基板20上に設けられるP−N端子24と対応する位置において、蓋体11の内面にネジ15により固定設置され、他端のコネクタ端子14が、端子部分を蓋体11の外表面側に突出させた状態で外面側から複数のネジ16によって固定設置されている。
【0026】
この高電圧ケーブル12は、電源側ケーブルの一部をなすものであり、電源側ケーブルを介して車両に搭載されている電源ユニットに接続され、その一端に設けられているコネクタ13が、インバータ装置7のメイン基板20上に設けられているP−N端子24に接続されることにより、電源ユニットから給電される高電圧の直流電力をインバータ装置7に印加するためのものである。
【0027】
インバータ装置7は、車両に搭載されている電源ユニットから給電される高電圧の直流電力を、所要周波数の三相交流電力に変換して電動モータに印加し、該電動モータを駆動するものである。このインバータ装置7は、
図1および
図2に示されるように、インバータ収容部8に対して一体化されて組み込まれるものであり、ノイズ除去用のフィルタ回路を構成する収納ケース入りのコイル17および平滑コンデンサ18等の複数の高電圧系電装部品、サブ基板19、メイン基板20等から構成されている。
【0028】
インバータ装置7自体は、公知のものでよいが、ここでは一体化するため、メイン基板20に対してフィルタ回路を構成するコイル17および平滑コンデンサ18等の複数の電装部品を半田付けにより接続したものが用いられている。平滑コンデンサ18は、一般にケースに収容された構成とされており、
図2および
図6に示されるように、外形が角型形状(直方体形状)とされ、上面が略フラットな平面形状とされたものである。この平滑コンデンサ18およびケース入りのコイル17(例えば、コモンモードコイル、ノーマルモードコイル)等の電装部品は、メイン基板20の配線パターンにより構成された高電圧ラインに接続され、ノイズ除去用の公知のフィルタ回路を構成している。
【0029】
サブ基板19は、上位制御装置からの通信線と接続される通信回路21が実装されているものであり、インバータ収容部8の底面であるモータハウジング3の壁面に形成されている台座面9に接して固定設置されている。このサブ基板19は、メイン基板20と電気的に接続されるようになっている。
【0030】
メイン基板20には、直流電力を三相交流電力に変換するIGBT等の複数のスイッチング素子で構成されるスイッチング回路(図示省略)が実装されるとともに、該スイッチング回路等を制御するCPU等の低電圧で動作する制御回路22が実装されている。メイン基板20は、車両側に搭載されているECUからの制御信号に基づいてインバータ装置7の動作を制御するものであり、インバータ収容部8の内部に複数本のボルト23を介して固定設置されている。このメイン基板20には、その上面に、高電圧ケーブル12からコネクタ13を介して高電圧の直流電力を入力するためのP−N端子24と、直流電力から返還された所要周波数の三相交流電力を出力するUVW端子25が設けられている。
【0031】
UVW端子25は、インバータ収容部8にモータハウジング3を貫通して設置されているガラス密封端子26に接続されており、このガラス密封端子26を介してモータハウジング3内に設置されている電動モータに三相交流電力を印加する構成とされている。
また、P−N端子24には、該P−N端子24と対応して蓋体11側に設けられているコネクタ13が差し込まれることにより、高電圧ラインが接続されるが、コネクタ13を差し込む際には一定以上の押し込み力が必要であり、その応力がメイン基板20にかかるようになっている。
【0032】
本実施形態では、メイン基板20にかかる応力を支えるため、P−N端子24が設置されている部位の裏面側に、
図5に示されるように、複数の高電圧系電装部品である平滑コンデンサ18とコイル17とが並設されており、その中の平滑コンデンサ18がP−N端子24の設置位置に対向してその裏面側に配設されている。平滑コンデンサ18は、外形が角型形状(直方体形状)とされており、その上面でメイン基板20に付加される応力を受ける構成とされている。
【0033】
平滑コンデンサ18は、
図6に示されるように、上端が開口された樹脂製の収納ケース27内に収納され、樹脂材28の充填により固定されたものであり、樹脂材28の表面から一対の端子29が突出され、その端子29がメイン基板20に半田付けされることによりメイン基板20に実装されている。平滑コンデンサ18の収納ケース27の短形状をなす上端開口の周縁には、複数の凹部30と凸部31とが交互にかつ各辺に少なくとも1つ以上の凸部31が存在するように設けられている。
【0034】
上記凸部31は、その上面でP−N端子24が設置されている位置に対向するメイン基板20の下面側部位を支え、P−N端子24に対するコネクタ13の差し込み時、メイン基板20にかかる応力を支持するためのものであり、一方、凹部30は、平滑コンデンサ18の製造時、ケース27内に充填した樹脂材28が溢れた際に、凹部30から逃すことにより、樹脂材28が凸部31の上面の寸法精度に影響を及ぼさないようにするためのものである。
【0035】
平滑コンデンサ18の収納ケース27には、
図7に示されるように、上端開口の周縁の一辺から側方に延出し、更に下方に屈折されたフック状の嵌合凸部(嵌合部)32が一体に成形されている。この嵌合凸部32は、もう1つの高電圧系電装部品であるコイル17と平滑コンデンサ18とを一体に結合するためのものであり、後述するコイル17側の収納ケース35に設けられている凹状の嵌合凹部(嵌合部)37に嵌合され、両者を一体的に結合するものである。
【0036】
また、嵌合凸部32の上面には、メイン基板20への組み付け時、平滑コンデンサ18およびコイル17の位置決めを行うための突起(位置決め手段)33が上方に向って一体に突出成形されている。この突起33は、メイン基板20に設けられている位置決め穴34に嵌合され、平滑コンデンサ18およびコイル17をメイン基板20上の所定の組み付け位置に位置決めするためのものである。
【0037】
一方、もう1つの高電圧系電装部品であるコイル17も、樹脂製の収納ケース35内に収納され、樹脂材で固定された構成とされており、その両端端子36がメイン基板20に半田付けされることによってメイン基板20に実装されるようになっている。このコイル17の収納ケース35には、
図7に示されるように、平滑コンデンサ18側に設けられているフック状の嵌合凸部(嵌合部)32が嵌合され、コイル17と平滑コンデンサ18とを一体的に結合するための凹状の嵌合凹部(嵌合部)37が設けられている。
【0038】
そして、上記コイル17および平滑コンデンサ18は、各々の収納ケース27,35がメイン基板20の裏面側の所定位置にネジ38,39(
図1参照)を介して締め付け固定されることにより、メイン基板20に一体に組み付けられた状態でインバータ収容部8内に収容され、その底部がシリコン接着剤等でインバータ収容部8の底面に固定設置されるようになっている。
【0039】
以上に説明したように、本実施形態では、メイン基板20上に設けられているP−N端子24に対して、P−N端子24が設置されている部位に対応するメイン基板20の裏面側に、インバータ装置7のノイズ除去用のフィルタ回路を構成する複数の高電圧系電装部品であるコイル17および平滑コンデンサ18を配設し、そのコイル17および平滑コンデンサ18をメイン基板20に実装することによって、メイン基板20上にノイズ除去用のフィルタ回路を設けた構成としている。
【0040】
また、複数の高電圧系電装部品であるコイル17および平滑コンデンサ18を、互いの収納ケース27,35に設けられている嵌合凸部32と嵌合凹部37とを介して一体に結合し、その収納ケース27側に設けられている位置決め用の突起33を介してメイン基板20の裏面側の所定位置に位置決めして組み付けすることにより、メイン基板20と一体化してインバータ収容部8内に収容設置できるようにしている。
【0041】
斯くして、本実施形態によれば、メイン基板20上に設けられているP−N端子24に対して、電源側ケーブル12の一端側に設けたコネクタ13を差し込むことにより、端子台やバスバーを用いることなく、電源側ケーブル12を直接接続した構成とすることができるとともに、メイン基板20上のP−N端子24の設置部位の裏面に複数の高電圧系電装部品であるコイル17および平滑コンデンサ18を配設し、実装することにより、バスバー等を用いることなく、メイン基板20上にノイズ除去用のフィルタ回路を構成することができる。
【0042】
このため、直流電力の入力系統に設けられていた端子台やバスバーを省き、インバータ装置7の部品数を削減することにより、構成の簡素化、コスト低減および小型軽量化を図ることができるとともに、バスバーによる接続部を減らすことで、工数の低減と信頼性の向上を図ることができる。
【0043】
しかも、複数の高電圧系電装部品17,18を、互いの収納ケース27,35に設けられている嵌合凸部32,嵌合凹部37を介して一体に結合し、一方の収納ケース27側に設けられている位置決め用の突起33を介してメイン基板20の裏面側の所定位置に設置するようにしているため、比較的重い大型部品である平滑コンデンサ18やコイル17等の高電圧系電装部品を一体的に結合し、メイン基板20の裏面側に位置決めして組み付けた状態でインバータ収容部8内に収容設置することができる。従って、複数の高電圧系電装部品17,18を個別に組み付けるものに比べ、組み立て性やその精度を高め、生産性を向上することができる。
【0044】
また、複数の高電圧系電装部品17,18が、各々樹脂製の収納ケース27,35入りの平滑コンデンサ18およびコイル17とされ、その収納ケース27,35がメイン基板20の裏面側にネジ38,39を介して一体に組み付け固定されることにより、インバータ収容部8内に収容設置される構成とされているため、ノイズ除去用のフィルタ回路を構成する平滑コンデンサ18およびコイル17を各々の収納ケース27,35を介してメイン基板20の裏面側にネジ38,39により強固に締め付け固定し、一体化して組み込むことができる。従って、組み立て性やその精度を向上できるのみならず、走行振動等に対する耐振強度をも十分に確保することができる。
【0045】
さらに、位置決め用の突起33が、樹脂製とされた収納ケース27の嵌合凸部32の上面に、上方に向けて一体に突出成形され、メイン基板20に設けられている位置決め穴34に嵌合する構成とされているため、一体に結合されたコイル17および平滑コンデンサ18を、一方の樹脂製収納ケース27に嵌合凸部32と共に一体成形された突起33をメイン基板20側の位置決め穴34に嵌合することにより、同時に位置決めしてメイン基板20に組み付けることができる。従って、部品数や組み立て工数を増加することなく低コストで、かつ複数の高電圧系電装部品17,18を簡易に一体化して位置決めし、精度よく組み付けることにより、インバータ装置7の組み立て性を向上することができる。
【0046】
また、本実施形態では、電源側ケーブル12の一端に設けられたコネクタ13が、インバータ収容部8を密閉する蓋体11側のP−N端子24と対応する位置の内面側に設けられており、蓋体11の取付け時、P−N端子24に差し込み可能とされているため、インバータ収容部8にインバータ装置7を収容設置した後、蓋体11を取付けてインバータ収容部8を密閉する際、同時に蓋体11の内面側に設けられているコネクタ13をP−N端子24に差し込むことにより、電源側ケーブル12をインバータ装置7のP−N端子24に接続することができる。従って、電源側ケーブル12の接続構造をシンプル化し、その接続工程を簡略化することができるとともに、コネクタ接続とすることによりその信頼性を確保することができる。
【0047】
さらに、複数の高電圧系電装部品の1つである平滑コンデンサ18が、メイン基板20上に設置されているP−N端子24の設置位置に対応してその裏面側に配設され、該平滑コンデンサ18により、コネクタ13のP−N端子24への差し込み時にメイン基板20に付加される応力を受ける構成とされているため、メイン基板20上に設けられているP−N端子24に対して、電源側ケーブル12の一端に設けられているコネクタ13を差し込んで、電源側ケーブル12を接続する際、メイン基板20に付加される応力を、P−N端子24の設置位置に対応してその裏面側に配設されている平滑コンデンサ18で支えることにより、軽減することができる。これによって、メイン基板20やその実装部品がコネクタ13の差し込み時の押し込み力による応力で破損する等の事態を確実に解消することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、メイン基板20上のP−N端子24の設置位置に対応してその裏面側に配設する高電圧系の電装部品を、平滑コンデンサ18とした例について説明したが、これに限らず、収納ケース35入りのコモンモードコイル、ノーマルモードコイル等のコイル17として、その収納ケース35で支持する構成としてもよい。
【0049】
また、コイル17と平滑コンデンサ18とを一体的に結合する嵌合部32,37を各々の収納ケース27,35に一体に成形しているが、この嵌合部32,37は、上記実施形態の如く、フック状の嵌合凸部32および凹状の嵌合凹部37である必要はなく、両者を結合できるものであれば、如何なる構造のものであってもよい。また、嵌合凸部32の上面に設けた位置決め手段である突起33についても、嵌合部32,37あるいは収納ケース27,35のいずれかに設けられておればよく、必ずしも嵌合凸部32の上面に設けたものである必要はない。
【0050】
さらに、電源側ケーブルについても、蓋体11内に高電圧ケーブル12を設置し、それに電源側のケーブルを接続するようにしたものについて説明したが、1本のケーブルで構成してもよいことは勿論である。また、インバータ装置7としては、メイン基板20上にP−N端子24を設けて電源側ケーブルを接続するように構成したものであれば、如何なる構成のものであってもよい。例えば、インバータ装置7を、樹脂構造体を介して一体にユニット化し、インバータ収容部8に組み込む構成としたものとしてもよい。