(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧力緩衝部は、前記第1共通液体室及び前記第2共通液体室の内面のうち、前記チャネルに対向する部分に配設されていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
前記圧力緩衝部の外面側には、前記圧力緩衝部の撓み変形を許容する揺動空間が画成され、前記揺動空間は大気開放孔を通して外部に連通していることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したインクジェットヘッドのうち、チャネルの延在方向中間部にノズル孔を連通させる、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドにおいては、チャネルの延在方向両端部で共通インク室にそれぞれ連通することになる。
【0007】
この場合、上述した特許文献1の構成にあっては、チャネルの他端部のみにしか圧力変動緩衝部分が配設されていないため、上述したサイドシュートタイプのインクジェットヘッドに採用した場合に、チャネル内で発生する圧力変動を効果的に抑制することが難しい。
【0008】
また、上述したサイドシュートタイプのインクジェットヘッドのうち、例えば循環式のインクジェットヘッドでは、一方の共通インク室を入口側、他方の共通インク室を出口側の共通インク室に設定し、インクタンクとインクジェットヘッドとの間でインクを循環させる。そして、循環式のインクジェットヘッドでは、2つの共通インク室のうち、どちらのインク室を入口側(または出口側)に設定するかはプリンタのインクシステムの仕様で決定することがあるため、何れの場合にも対応できた方がよい。
【0009】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、十分な圧力緩衝効果を得られるとともに、汎用性の高い液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射する複数の噴射孔が第1方向に沿って並設された噴射孔列を有する噴射孔プレートと、前記噴射孔プレートに積層されるとともに、前記噴射孔に連通するチャネルが前記第1方向に沿って間隔をあけて複数並設されたチャネル群を有するアクチュエータプレートと、前記チャネルの延在方向両端部で前記複数のチャネルそれぞれに連通する第1共通液体室、及び第2共通液体室と、を備えた液体噴射ヘッドにおいて、前記第1共通液体室及び前記第2共通液体室の内面の一部には、前記第1共通液体室内及び前記第2共通液体室内の圧力変動に伴って撓み変形可能な圧力緩衝部が配設されていることを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、液体噴射ヘッド内の圧力変動に応じて、各共通液体室の内面を構成する圧力緩衝部が撓み変形することで、圧力変動を緩衝することができる。例えば、チャネルの容積の減少により噴射孔から液体が噴射されると、チャネル内の圧力が瞬間的に減少する。すると、チャネル内の圧力変動が圧力波となって各共通液体室内に伝播して、圧力緩衝部が撓み変形する。すなわち、圧力緩衝部がそれぞれ共通液体室内の容積を縮小させるように撓み変形する。これにより、チャネル内で発生した圧力変動を共通液体室内で緩衝することができ、液体噴射性能(印字安定性)に優れた液体噴射ヘッドを提供できる。
この場合、各共通液体室にそれぞれ圧力緩衝部が配設されているため、液体噴射ヘッド内の圧力変動を効果的に緩衝することができる。
さらに、各共通液体室のうち、何れの液体室にも圧力緩衝部を配設することで、例えば上述した循環式の液体噴射ヘッドを採用した場合、各共通液体室のどちらの共通液体室も入口側の共通液体室(または出口側の共通液体室)に設定することが可能である。そのため、液体噴射装置の液体システムの仕様によって液体の循環方向を制限することが無いため、液体システム構成に自由度を持つことができる。
【0012】
特に、循環式の液体噴射ヘッドを採用した場合、各共通液体室のうち、チャネルへの入口側の共通液体室はチャネル内の圧力に対して正圧となり、これに伴い圧力緩衝部が共通液体室に対して膨出した状態にある。そのため、入口側の共通液体室側に圧力緩衝部を設けることで、圧力変動に伴う圧力緩衝部の撓み量を確保でき、緩衝作用の向上を図ることができる。
そして、本発明の構成によれば、何れの共通液体室にも圧力緩衝部を設けることで、液体噴射装置の液体システムの仕様によらず入口側の共通液体室に必ず圧力緩衝部が設けられることになる。そのため、圧力緩衝部による高い圧力緩衝効果を確実に得ることができる。
【0013】
(2)上記本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記圧力緩衝部は、前記第1共通液体室及び前記第2共通液体室の内面のうち、前記チャネルに対向する部分に配設されていてもよい。
この構成によれば、各共通液体室の内面のうち、各チャネルに対向する部分に圧力緩衝部が配設されているため、チャネルから伝播された圧力波が圧力緩衝部に伝播され易くなり、圧力変動をより効果的に緩衝することができる。
【0014】
(3)上記本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記噴射孔プレート及び前記アクチュエータプレートには、前記噴射孔列及び前記チャネル群がそれぞれ複数列ずつ形成され、前記第1共通液体室は、一の前記チャネル群における前記チャネルの延在方向一端部と、前記一のチャネル群に隣接する他の前記チャネル群における前記チャネルの延在方向他端部と、にそれぞれ連通していてもよい。
この構成によれば、噴射孔プレート及びアクチュエータプレートに、噴射孔列及びチャネル群が複数列ずつ形成されているため、印刷時のドットのピッチを狭くすることが可能になり、印刷の解像度を高めることが可能となる。
また、第1共通液体室が一のチャネル群におけるチャネルの延在方向一端部と、一のチャネル群に隣接する他のチャネル群におけるチャネルの延在方向他端部と、にそれぞれ連通しているため、隣接するチャネル群間で第1共通液体室が共通となる。この場合、上述したように第1共通液体室の内面のうち、チャネルに対向する部分に圧力緩衝部を配設することで、圧力緩衝部の面積が確保し易くなり、圧力緩衝部の撓み量を確保でき、圧力緩衝効果をより高めることが可能である。
【0015】
(4)上記本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記圧力緩衝部の外面側には、前記圧力緩衝部の撓み変形を許容する揺動空間が画成され、前記揺動空間は大気開放孔を通して外部に連通していてもよい。
この構成によれば、揺動空間は大気開放孔を通して外部に連通しているため、温度等による揺動空間内の圧力変動を抑制し、圧力緩衝部による圧力緩衝効果を常に一定に保つことができる。
【0016】
(5)上記本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記第1共通液体室及び前記第2共通液体室は、前記複数のチャネルそれぞれに連通する第1スリット及び第2スリットと、前記第1スリット及び前記第2スリットを閉塞する前記圧力緩衝部により画成され、前記圧力緩衝部は、撓み変形可能な可撓膜であってもよい。
この構成によれば、第1スリット及び第2スリットを閉塞する別体の可撓膜により圧力緩衝部を形成することで、第1スリット及び第2スリットの形成材料に依らず十分な圧力緩衝効果を簡単に得ることができる。この場合、例えば可撓膜の材料や厚さ等の選択により所望の圧力緩衝効果を調整することも可能である。
【0017】
(6)上記本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記可撓膜は、前記第1スリット及び前記第2スリットに亘って形成されていてもよい。
この構成によれば、前記第1スリット及び前記第2スリットに亘って可撓膜が形成されているため、各スリットをそれぞれ別々の可撓膜で覆う構成に比べて、部品点数の削減や製造効率の向上を図ることができる。
【0018】
(7)上記本発明に係る液体噴射装置は、上記本発明の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる搬送手段と、前記液体が貯留された液体タンクと、前記液体噴射ヘッドと前記液体タンクとの間で前記液体を循環させる循環手段と、を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の液体噴射ヘッドを備えているため、長期に亘って安定した液体噴射性能(印字安定性)を維持するとともに、汎用性の高い液体噴射装置を提供できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、十分な圧力緩衝効果を得られるとともに、汎用性の高い液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、本発明の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置の一例として、インク(液体)を利用して記録紙に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。
【0022】
[プリンタ]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のプリンタ1は、紙等の記録紙(被記録媒体)Pを搬送する一対の搬送手段2,3と、インクが収容されたインクタンク(液体タンク)4と、記録紙Pに液滴状のインクを吐出するインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)5と、インクタンク4とインクジェットヘッド5との間でインクを循環させるインク循環手段(循環手段)6と、インクジェットヘッド5を記録紙Pの搬送方向(以下、Y方向(第1方向)とする)と直交する方向(記録紙Pの幅方向、以下、X方向とする)に走査させる走査手段(搬送手段)7と、を備えている。なお、図中Z方向はX方向及びY方向と直交する高さ方向を示す。
【0023】
搬送手段2は、X方向に延設されたグリッドローラ11と、グリッドローラ11に平行して延設されたピンチローラ12と、グリッドローラ11を軸回転させるモータ等の駆動機構(不図示)と、を備えている。同様に、搬送手段3は、X方向に延設されたグリッドローラ13と、グリッドローラ13に平行して延設されたピンチローラ14と、グリッドローラ13を軸回転させる駆動機構(不図示)と、を備えている。
【0024】
インクタンク4は、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色のインクのインクタンク4Y,4M,4C,4BがY方向に並んで設けられている。
【0025】
図2はインクジェットヘッド5及びインク循環手段6の概略構成図である。
図1、
図2に示すように、インク循環手段6は、インクジェットヘッド5にインクを供給するインク供給管21、及びインクジェットヘッド5からインクを排出するインク排出管22を有する循環流路23と、インク供給管21に接続された加圧ポンプ24と、インク排出管22に接続された吸引ポンプ25と、を備えている。なお、インク供給管21及びインク排出管22は、インクジェットヘッド5を支持する走査手段7の動作に対応可能な可撓性を有するフレキシブルホースからなる。
【0026】
加圧ポンプ24は、インク供給管21内を加圧し、インク供給管21を介してインクジェットヘッド5の後述する入口インク室110(
図7参照)にインクを送り出している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク供給管21側は正圧となっている。
吸引ポンプ25は、インク排出管22内を減圧し、インクジェットヘッド5の後述する出口インク室111(
図7参照)からインクを吸引している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク排出管22側は負圧となっている。そして、インクは、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25の駆動により、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間を、循環流路23を介して循環可能となっている。
【0027】
図1に示すように、走査手段7は、X方向に延設された一対のガイドレール31,32と、一対のガイドレール31,32に沿って摺動可能なキャリッジ33と、キャリッジ33をX方向に移動させる駆動機構34と、を備えている。駆動機構34は、一対のガイドレール31,32の間に配設された一対のプーリ35,36と、一対のプーリ35,36間に巻回された無端ベルト37と、一方のプーリ35を回転駆動させる駆動モータ38と、を備えている。
【0028】
一対のプーリ35,36は、一対のガイドレール31,32の両端部間にそれぞれ配設される。無端ベルト37は、一対のガイドレール31,32間に配設され、この無端ベルト37にキャリッジ33が連結される。キャリッジ33には、複数のインクジェットヘッド5として、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色のインクのインクジェットヘッド5Y,5M,5C,5BがX方向に並んで搭載される。なお、上述した搬送手段2,3及び走査手段7により、インクジェットヘッド5と記録紙Pとを相対的に移動させる搬送手段を構成している。
【0029】
<インクジェットヘッド>
次に、上述したインクジェットヘッド5について詳述する。なお、インクジェットヘッド5Y,5M,5C,5Bは、供給されるインクの色以外は何れも同一の構成からなるため、以下の説明では、まとめてインクジェットヘッド5として説明する。
図3はインクジェットヘッド5の斜視図、
図4は分解斜視図、
図5は底面図である。
図3〜
図5に示すように、各インクジェットヘッド5は、後述するチャネル61,62の延在方向(X方向)中央からインクを吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのうち、インクタンク4との間でインクを循環させる循環式のインクジェットヘッド5である。また、本実施形態のインクジェットヘッド5は、複数のノズル孔(噴射孔)81,82からなるノズル列(噴射孔列)83,84が二列に亘って形成された二列タイプのインクジェットヘッド5である。
【0030】
インクジェットヘッド5は、ノズルプレート(噴射孔プレート)51、アクチュエータプレート52、カバープレート53、流路プレート54、及び支持プレート55を主に備えている。そして、インクジェットヘッド5は、これらノズルプレート51、アクチュエータプレート52、カバープレート53、流路プレート54、及び支持プレート55(
図3参照)がこの順で接着剤等によりZ方向に積層された構成とされている。なお、以下の説明では、上述したZ方向のうち、支持プレート55側を上方、ノズルプレート51側を下方として説明する。
【0031】
<アクチュエータプレート>
図6は
図5のA−A線に沿う断面図、
図7は
図6のB−B線に沿う断面図、
図8は
図6のC−C線に沿う断面図である。
図4〜
図8に示すように、アクチュエータプレート52は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料で形成されたプレートであり、その分極方向が厚さ方向(Z方向)に沿って一方向に設定されている。このアクチュエータプレート52の上面には、Y方向に間隔をあけて並設された複数のチャネル(第1チャネル61及び第2チャネル62)からなるチャネル群(第1チャネル群63及び第2チャネル群64)が2列配設されている。なお、第1チャネル群63及び第2チャネル群64は、Z方向に沿う対称軸(不図示)を中心にして線対称とされている。したがって、以下の説明では、主に第1チャネル群63(第1チャネル61)について説明し、第2チャネル群64における第1チャネル群63と対応する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0032】
第1チャネル群63は、X方向(延在方向)に沿って延在する複数の第1チャネル61を有し、これら第1チャネル61がY方向に間隔をあけて互いに平行に並んで構成されている。すなわち、各第1チャネル61は、圧電体(アクチュエータプレート52)からなる側壁65によってそれぞれ画成された断面視凹形状の溝である。
各第1チャネル61は、アクチュエータプレート52の上面側から、ダイシングブレード等による切削によって、直線状かつ等間隔に形成される。具体的に、各第1チャネル61は、X方向両端部に位置して、上述したダイシングブレードの外周形状に倣った曲率半径を有する円弧部66と、各円弧部66間に位置する矩形部67と、を有している。なお、アクチュエータプレート52において、矩形部67に位置する部分は、厚さ方向(Z方向)に沿って貫通している。
【0033】
また、第1チャネル群63は、各第1チャネル61のうち、インクを吐出させる吐出チャネル71と、インクを吐出させないダミーチャネル72と、がY方向で交互に並んで構成されている。また、
図8に示すように、アクチュエータプレート52のうち、ダミーチャネル72に対応する部分には、ダミーチャネル72のX方向の外側端部に連通する浅溝部73が形成されている。
【0034】
アクチュエータプレート52の側壁65のうち、対向する内側面には、それぞれX方向に亘って延びる駆動電極74が形成されている。これら駆動電極74は、Z方向において、側壁65における上面側から中央部に亘って、側壁65の半分程度の領域に形成されている。
具体的に、駆動電極74は、側壁65の内側面のうち、吐出チャネル71に面する内側面に形成されたコモン電極74aと、ダミーチャネル72に面する内側面に形成されたアクティブ電極74bと、を有している。
【0035】
同一の吐出チャネル71内に形成された一対のコモン電極74aは、コモン端子74c(
図4参照)を介して吐出チャネル71におけるX方向の外側で互いに電気的に接続されている。
また、同一のダミーチャネル72内で対向するアクティブ電極74b同士は互いに電気的に分離される一方、吐出チャネル71を介して対向するアクティブ電極74b同士がアクティブ端子74d(
図4参照)を介して電気的に接続されている。第1チャネル群63及び第2チャネル群64の各駆動電極74は、それぞれフレキシブル基板75,76(
図7,8参照)を介して制御手段に各別に接続されている。
【0036】
第2チャネル群64は、第1チャネル群63に対してX方向に間隔をあけて配設されている。具体的に、第2チャネル群64は、上述した第1チャネル61と同ピッチでY方向に間隔をあけて配設された複数の第2チャネル62を有し、これら第2チャネル62の配列方向が第1チャネル61の配列方向と平行に並んでいる。
第2チャネル62の吐出チャネル71及びダミーチャネル72は、第1チャネル61の吐出チャネル71及びダミーチャネル72に対して互い違いに並んでいる。したがって、本実施形態のインクジェットヘッド5では、第1チャネル61の吐出チャネル71と、第2チャネル62の吐出チャネル71と、が千鳥状に配置されている。
【0037】
<ノズルプレート>
ノズルプレート51は、厚みが50μm程度のポリイミド等のフィルム材からなるシート状とされ、アクチュエータプレート52の下面に接着されている。ノズルプレート51には、Y方向に間隔をあけて並設された複数のノズル孔(第1ノズル孔81及び第2ノズル孔82)からなるノズル列(第1ノズル列83及び第2ノズル列84)が2列配設されている。
【0038】
第1ノズル列83は、ノズルプレート51をZ方向に貫通する複数の第1ノズル孔81を有し、これらノズル孔81がY方向に間隔をあけて一直線上に並んで構成されている。これら第1ノズル孔81は、上述した第1チャネル61の吐出チャネル71内に連通している。具体的に、第1ノズル孔81は、第1チャネル61の吐出チャネル71において、X方向の中央部に位置するように形成され、吐出チャネル71と同ピッチで形成されている。
第2ノズル列84は、ノズルプレート51をZ方向に貫通する複数の第2ノズル孔82を有し、上述した第1ノズル列83と平行に配設されている。各第2ノズル孔82は、上述した第2チャネル62の吐出チャネル71内に連通している。具体的に、第2ノズル孔82は、第2チャネル62の吐出チャネル71において、X方向の中央部に位置するように形成され、吐出チャネル71と同ピッチで形成されている。したがって、各ダミーチャネル72は、ノズル孔81,82には連通しておらず、ノズルプレート51により下方から覆われている。なお、各ノズル孔81,82は、下方に向かうに従い漸次縮径するテーパ状とされている。
【0039】
<カバープレート>
図4、
図7、
図8に示すように、カバープレート53は、各チャネル群63,64を閉塞するようにアクチュエータプレート52の上面に接着された板状とされている。カバープレート53は、上述したアクチュエータプレート52に対してX方向の幅が狭く形成されている。この場合、
図7、
図8に示すように、アクチュエータプレート52のうち、カバープレート53におけるX方向の外側に位置する部分に上述したコモン端子74c及びアクティブ端子74dが露出しており、これらに上述したフレキシブル基板75,76が接続される。
【0040】
図4、
図7、
図8に示すように、カバープレート53には、インク供給室(第1インク供給室77a、第2インク供給室78a)及びインク排出室(第1インク排出室77b、及び第2インク排出室78b)が、上述したチャネル群63,64に対応して複数ずつ形成されている。なお、第1インク供給室77a及び排出室77bと、第2インク供給室78a及び排出室78bと、はZ方向に沿う対称軸(不図示)を中心にして線対称とされている。したがって、以下の説明では、主に第1インク供給室77a及び排出室77bについて説明し、第2インク供給室78a及び排出室78bにおける第1インク供給室77a及び排出室77bと対応する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
第1インク供給室77aは、カバープレート53のうち、各第1チャネル61におけるX方向の内側端部と対向する部分でY方向に沿って延設された凹溝状とされている。第1インク供給室77aのうち、吐出チャネル71に対応する位置(Z方向で対向する位置)には、第1インク供給室77aをZ方向に貫通する供給スリット79aがそれぞれ形成されている。
第1インク排出室77bは、カバープレート53のうち、各第1チャネル61におけるX方向の外側端部と対向する部分でY方向に沿って延設された凹溝状とされている。第1インク排出室77bのうち、吐出チャネル71に対応する位置(Z方向で対向する位置)には、第1インク排出室77bをZ方向に貫通する排出スリット79bがそれぞれ形成されている。
したがって、第1インク供給室77a及び第1インク排出室77bは、それぞれ供給スリット79a及び排出スリット79bを通して各吐出チャネル71に連通する一方、ダミーチャネル72には連通していない。すなわち、各ダミーチャネル72は、第1インク供給室77a及び第1インク排出室77bの底部によって閉塞されている。
【0042】
第2インク供給室78aは、各第2チャネル62におけるX方向の内側端部と対向する部分でY方向に沿って延設された凹溝状とされ、第2インク排出室78bは、各第2チャネル62におけるX方向の外側端部と対向する部分でY方向に沿って延設された凹溝状とされている。
第2インク供給室78a及び排出室78bのうち、吐出チャネル71に対応する位置(Z方向で対向する位置)には、供給スリット79a及び排出スリット79bがそれぞれ形成されている。すなわち、第2インク供給室78a及び排出室78bの供給スリット79及び排出スリット79bは、第1インク供給室77a及び排出室78bの供給スリット79a及び排出スリット79bに対して互い違いに並んでいる。
【0043】
<流路プレート>
図9は支持プレート55を取り外した状態を示すインクジェットヘッド5の斜視図であり、
図10は流路プレート54の底面図である。
図7〜
図10に示すように、流路プレート54は、上述した各インク供給室77a,78a及び排出室77b,78bを閉塞するようにカバープレート53の上面に接着された板状とされている。流路プレート54の角部には、Z方向の上方に向けてインク導入管91(
図9参照)、及びインク導出管92(
図9参照)が立設されている。インク導入管91は、上述したインク供給管21(
図1,2参照)の下流端に接続され、インクタンク4からインクが供給される。一方、インク導出管92は、インク排出管22(
図1,2参照)の上流端に接続され、インクジェットヘッド5を流通したインクが排出される。また、インク導入管91及びインク導出管92は、それぞれ流路プレート54の下面で開口している。
【0044】
流路プレート54には、Z方向に貫通する大スリット(第1スリット)93、及び大スリット93よりも幅狭とされた一対の小スリット(第2スリット)94が形成されている。
大スリット93は、X方向中央部において、Y方向に沿って延在しており、第1インク供給室77a及び第2インク供給室78aそれぞれに連通している。具体的に、大スリット93は、第1インク供給室77a及び第2インク供給室78a間を跨るように配置され、第1インク供給室77a及び第2インク供給室78aそれぞれの供給スリット79aを介して各第1チャネル61及び各第2チャネル62に連通している。
【0045】
各小スリット94は、大スリット93の両側において、それぞれY方向に沿って延在している。そして、各小スリット94のうち、一方の小スリット94aは、第1インク排出室77bにZ方向で対向し、排出スリット79bを介して各第1チャネル61(吐出チャネル71)に連通している。また、他方の小スリット94bは、第2インク排出室78bにZ方向で対向し、排出スリット79bを介して各第2チャネル62(吐出チャネル71)に連通している。なお、大スリット93及び各小スリット94の上面側に位置する開口縁は、その他の部分に比べて拡径された拡径部95,96とされている。
【0046】
また、
図10に示すように、流路プレート54には、インク導入管91と大スリット93同士、及びインク導出管92と各小スリット94同士をそれぞれ連通させる導入溝97及び導出溝98が形成されている。導入溝97及び導出溝98は、それぞれ流路プレート54の下面で開口している。具体的に、導入溝97は、その上流端がインク導入管91に連通し、下流端が大スリット93におけるY方向の一端部に連通している。
【0047】
一方、導出溝98は、上流端がインク導出管92に連通し、下流端が二股に分かれてそれぞれ小スリット94におけるY方向の他端部に連通している。なお、導入溝97及び導出溝98は、それぞれアクチュエータプレート52のうち、各チャネル群63,64に対してY方向の外側領域に対向している。したがって、導入溝97及び導出溝98は、アクチュエータプレート52によって閉塞されており、各チャネル群63,64には直接連通していない。
【0048】
(フィルム部材)
ここで、
図7〜
図10に示すように、流路プレート54の上面には、上述した各スリット93,94を覆うようにフィルム部材(圧力緩衝部)101が接着されている。フィルム部材101は、可撓性を有するシート状(可撓膜)とされ、本実施形態ではポリアミド等の樹脂材料からなり、厚さが例えば15μm程度とされている。本実施形態のフィルム部材101は、流路プレート54の上面全体に亘って配設され、各スリット93,94を1枚のフィルム部材101でまとめて覆っている。
【0049】
そして、上述した大スリット93とフィルム部材101とで画成された空間は、インクタンク4から供給されるインクを貯留するとともに、各インク供給室77a,78aを介して各チャネル61,62(吐出チャネル71)それぞれに連通する入口インク室(第1共通液体室)110を構成している。この場合、フィルム部材101は、各チャネル61,62の開口方向(Z方向)に沿って各チャネル61,62に対向している。すなわち、フィルム部材101は、入口インク室110の内面のうち、第1チャネル61及び第2チャネル62との対向面を構成しており、入口インク室110内での圧力変動に伴って撓み変形するようになっている。
【0050】
一方、上述した各小スリット94とフィルム部材101とで画成された空間は、各インク排出室77b,78bを介して各チャネル61,62に各別に連通するとともに、各チャネル61,62(吐出チャネル71)それぞれから排出されるインクを貯留する一対の出口インク室(第2共通液体室)111を構成している。この場合、フィルム部材101は、各出口インク室111の内面のうち、第1チャネル61及び第2チャネル62との対向面を構成しており、出口インク室111内の圧力変動に伴って撓み変形するようになっている。
【0051】
このように、本実施形態のインクジェットヘッド5では、各チャネル群63,64間において、入口インク室110は共通となっており、出口インク室111は各別に設けられている。そのため、入口インク室110におけるフィルム部材101の面積は、出口インク室111におけるフィルム部材101の面積よりも大きくなっている。
【0052】
<支持プレート>
図3に示すように、支持プレート55は、流路プレート54の上面に重ね合わされるように接着された板状とされており、Z方向において、上述したインク導入管91及びインク導出管92それぞれに対向する部分にはこれらインク導入管91及びインク導出管92を通す貫通孔112,113が形成されている。
また、
図7、
図8に示すように、支持プレート55のうち、Z方向において上述した入口インク室110及び出口インク室111に対向する部分には、下方に向けて開口する凹部114,115がそれぞれ形成されている。これにより、フィルム部材101のうち、入口インク室110及び出口インク室111の上方には、凹部114,115によって画成されたフィルム揺動エリア(揺動空間)116,117が形成されている。
【0053】
図3に示すように、支持プレート55には、支持プレート55をZ方向に貫通して、各凹部114,115(フィルム揺動エリア116,117)内にそれぞれ連通する複数の大気開放孔120が形成されている。各大気開放孔120は、支持プレート55におけるY方向の一端部寄りにそれぞれ形成されており、これら大気開放孔120を介して各インク室110,111を構成するフィルム部材101が外部に露出している。
【0054】
[プリンタの動作方法]
次に、上述したように構成されたプリンタ1を利用して、記録紙Pに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
なお、初期状態として、
図1に示す4つのインクタンク4にはそれぞれ異なる色のインクが十分に封入されているものとする。また、インクタンク4内のインクがインク循環手段6を介してインクジェットヘッド5内(インク室110,111及び各チャネル群63,64内)に充填された状態となっている。
【0055】
このような初期状態のもと、プリンタ1を作動させると、搬送手段2,3のグリッドローラ11,13が回転することで、これらグリッドローラ11,13及びピンチローラ12,14間に記録紙Pを搬送方向(Y方向)に向けて搬送する。また、これと同時に駆動モータ38がプーリ35,36を回転させて無端ベルト37を動かす。これにより、キャリッジ33がガイドレール31,32でガイドされながらX方向に往復移動する。
そしてこの間に、各インクジェットヘッド5より4色のインクを記録紙Pに適宜吐出させることで、文字や画像等の記録を行うことができる。
【0056】
ここで、各インクジェットヘッド5の動きについて、以下に詳細に説明する。
本実施形態のようなサイドシュートタイプのうち、循環式のインクジェットヘッド5では、まず
図2に示す加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25を作動させることで、循環流路23内にインクを流通させる。この場合、インク供給管21を流通するインクは、
図7〜
図9に示すインク導入管91、入口インク室110、及び各インク供給室77a,78aを通り、供給スリット79aを介して各チャネル群63,64の吐出チャネル71内に供給される。また、各吐出チャネル71内のインクは、排出スリット79bを介して各インク排出室77b,78b内に流入し、その後出口インク室111及びインク導出管92を介してインク排出管22に排出される。インク排出管22に排出されたインクは、インクタンク4に戻された後、再びインク供給管21に供給される。これにより、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクを循環させる。
【0057】
そして、キャリッジ33(
図1参照)によって往復移動が開始されると、制御手段はフレキシブル基板75,76を介して駆動電極74(コモン電極74a及びアクティブ電極74b)に駆動電圧を印加する。具体的には、駆動電極74のうち、インクを吐出する吐出チャネル71を画成する2つの側壁65に形成された駆動電極74に駆動電圧を印加し、これら2つの側壁65を、吐出チャネル71に隣接しているダミーチャネル72側へ突出するように変形させる。すなわち、本実施形態のアクチュエータプレート52は分極方向が一方向であり、駆動電極74が側壁65の側面のZ方向における中間位置までしか形成されていないため、駆動電圧を印加することで、側壁65のZ方向中間位置を中心にしてV字状に屈曲変形する。これにより、吐出チャネル71があたかも膨らむように変形する。
【0058】
このように、2つの側壁65の圧電厚み滑り効果による変形によって、吐出チャネル71の容積が増大する。そして、吐出チャネル71の容積が増大したことにより、入口インク室110内に貯留されたインクが吐出チャネル71内に誘導される。そして、吐出チャネル71の内部に誘導されたインクは、圧力波となって吐出チャネル71の内部に伝播し、この圧力波がノズル孔81,82に到達したタイミングで、駆動電極74に印加した駆動電圧をゼロにする。これにより、側壁65の変形が元に戻り、一旦増大した吐出チャネル71の容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出チャネル71の内部の圧力が増加し、インクが加圧される。その結果、液滴状のインクがノズル孔81,82を通って外部に吐出されることで、上述したように記録紙Pに文字や画像等を記録することができる。
特に、本実施形態のノズル孔81,82は、テーパ状とされているので、インクを速い速度で真っ直ぐに直進性良く吐出することができる。よって、高画質に記録を行うことができる。
【0059】
ここで、本実施形態では、インクジェットヘッド5内の圧力変動に応じて、各インク室110,111を画成するフィルム部材101が撓み変形することで、圧力変動を緩衝している。まず、本実施形態のような循環式のインクジェットヘッド5では、ノズル孔81,82内部でメニスカスが形成されるように、ノズル孔81,82近傍での圧力(ノズル圧)が常に負圧(例えば、−1kPa程度)になるように加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25の駆動が制御されている。具体的に、吸引ポンプ25の吸引力は、加圧ポンプ24の加圧力よりも高くなるように設定されている。
【0060】
この場合、チャネル群63,64に対して上流側(入口インク室110側)は正圧となり、下流側(出口インク室111側)は負圧となっている。そのため、入口インク室110のフィルム部材101は、入口インク室110の容積を拡大させるようにフィルム揺動エリア116,117側に向けて撓み変形し、出口インク室111側のフィルム部材101は出口インク室111の容積を縮小させるように出口インク室111内に向けて撓み変形している。
【0061】
この状態で、上述したように吐出チャネル71の容積の減少(復元)によりノズル孔81,82からインクが吐出されると、吐出チャネル71内の圧力が瞬間的に減少する。すると、吐出チャネル71内の圧力変動が圧力波となって各インク室110,111内に伝播して、フィルム部材101が撓み変形する。すなわち、フィルム部材101がそれぞれインク室110,111内の容積を縮小させるようにインク室110,111内に向けて撓み変形する。これにより、吐出チャネル71内で発生した圧力変動を緩衝することができる。
【0062】
また、本実施形態では、各チャネル61,62それぞれが連通する各インク室110,111にフィルム部材101が配設されているので、何れかの吐出チャネル71での圧力変動がインク室110,111を介して他の吐出チャネル71に伝播される、いわゆるクロストークも抑制できる。
なお、上述の説明では、インク吐出時に起こる圧力変動について説明したが、これに限られない。例えばキャリッジ33の移動時やインク給排時等において、循環流路23の揺動によってチャネル61,62内やインク室110,111内に発生する圧力変動についても、フィルム部材101が撓み変形することで圧力変動を緩衝することが可能である。
【0063】
このように、本実施形態では、入口インク室110及び出口インク室111の内面の一部に、各インク室110,111内の圧力変動に伴って撓み変形可能なフィルム部材101を設ける構成とした。
この構成によれば、例えばインク吐出時に各チャネル61,62内で発生する圧力変動をインク室110,111内で緩衝することができる。この場合、各インク室110,111にそれぞれフィルム部材101が設けられているため、チャネル61,62内で発生する圧力変動を効果的に緩衝することができ、吐出性能(印字安定性)の高いインクジェットヘッド5を提供できる。
また、各インク室110,111のうち、何れのインク室110,111にもフィルム部材101を設けることで、例えば本実施形態のような循環式のインクジェットヘッド5を採用した場合、各インク室110,111のどちらのインク室110,111も入口インク室110(または出口インク室111)に設定することが可能である。そのため、プリンタ1のインクシステムの仕様によってインクの循環方向を制限することが無いため、インクシステム構成に自由度を持つことができる。
【0064】
特に、循環式のインクジェットヘッド5では、上述したように入口インク室110は正圧であり、これに伴いフィルム部材101が膨出した状態にあるので、入口インク室110側にフィルム部材101を設けることで、圧力変動に伴うフィルム部材101の撓み量を確保でき、緩衝作用の向上を図ることができる。そして、本実施形態では、何れのインク室110,111にもフィルム部材101を設けることで、プリンタ1のインクシステムの仕様によらず入口インク室110に必ずフィルム部材101が設けられることになる。そのため、フィルム部材101による高い圧力緩衝効果を確実に得ることができる。
【0065】
また、各インク室110,111の内面のうち、各チャネル61,62に対向する部分にフィルム部材101が設けられているため、チャネル61,62から伝播された圧力波がフィルム部材101に伝播され易くなり、圧力変動をより効果的に緩衝することができる。
【0066】
さらに、本実施形態では、ノズル列83,84が1枚のノズルプレート51に二列形成された二列タイプのインクジェットヘッド5を採用することで、印刷時のドットのピッチを狭くすることが可能になり、印刷の解像度を高めることが可能となる。
特に、二列タイプのインクジェットヘッド5において、各チャネル群63,64の入口インク室110を共通とすることで、入口インク室110において、フィルム部材101の面積が確保し易くなり、フィルム部材101の撓み量を確保でき、圧力緩衝効果をより高めることが可能である。また、各インク室110,111の開口縁に拡径部95,96が形成されているため、これによってもインク室110,111内の容積増加を抑えつつ、フィルム部材101の面積を増加して、圧力緩衝効果を高めることができる。
【0067】
また、流路プレート54の大スリット93及び小スリット94を閉塞する別体のフィルム部材101により圧力緩衝部を形成することで、大スリット93及び小スリット94の形成材料に依らず十分な圧力緩衝効果を簡単に得ることができる。この場合、例えばフィルム部材101の材料や厚さ等の選択により所望の圧力緩衝効果を調整することも可能である。
また、上述したフィルム部材101が大スリット93及び小スリット94に亘って形成されているため、各スリット93,94をそれぞれ別々のフィルム部材101で覆う構成に比べて、部品点数の削減や製造効率の向上を図ることができる。
【0068】
また、フィルム部材101が大気開放孔120を通して外部に露出しているため、温度等によるフィルム揺動エリア116,117内の圧力変動を抑制し、フィルム部材101による圧力緩衝効果を常に一定に保つことができる。
【0069】
そして、本実施形態のプリンタ1では、上述したインクジェットヘッド5を備えているため、長期に亘って安定した吐出性能を維持するとともに、汎用性の高いプリンタを提供できる。
【0070】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0071】
例えば、上述した実施形態では、液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であっても構わない。
【0072】
また、上述した実施形態では、ノズル列83,84がそれぞれ第1方向に沿って直線状に延在している場合について説明したが、これに限らず、例えばノズル列83,84が第1方向に沿って斜めに延在していてもよい。
また、ノズル孔81,82の形状に関しても、円形に限定されるものではない。例えば、三角等の多角形状や、楕円形状や星型形状でも構わない。
【0073】
さらに、上述した実施形態では、ノズル列83,84が二列並んだ二列タイプのインクジェットヘッド5について説明したが、これに限らず、一列や三列以上の複数列のノズル列を有するインクジェットヘッド5としてもよい。
また、上述した実施形態では、入口インク室110を各チャネル群63,64間で共通の第1共通液体室として形成したが、これに限らず、出口インク室111を各チャネル群63,64間で共通の第1共通液体室としても構わない。
【0074】
また、上述した実施形態では、サイドシュートタイプのうち、第1共通液体室を入口インク室110、第2共通液体室を出口インク室111に設定し、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクが循環する循環式について説明したが、これに限られない。例えば、第1共通液体室及び第2共通液体室をそれぞれ入口インク室として機能させ、これら2つの入口インク室から吐出チャネル71内にインクを供給する非循環式としても構わない。
この場合においても、各共通液体室にそれぞれ圧力緩衝部が配設されているため、インクジェットヘッド内の圧力変動を効果的に緩衝することができる。
【0075】
さらに、上述した実施形態では、各インク室110,111のうち、チャネル61,62との対向面にフィルム部材101を配設する構成について説明したが、これに限らず、インク室110,111の内面の一部にフィルム部材101が配設されていれば構わない。
また、上述した実施形態では、可撓性を有する圧力緩衝部としてフィルム部材101を採用した場合について説明したが、これに限らず、種々の構成を採用することが可能である。例えば、インク室110,111を画成する内面の一部を他の部分に比べて薄肉に形成する等しても構わない。
【0076】
また、上述した実施形態では、インク室110,111に拡径部95,96を形成し、撓み変形可能なフィルム部材101の面積を確保する構成について説明したが、フィルム部材101における流路プレート54との接着領域を調整することで、撓み変形可能なフィルム部材101の面積を確保する構成としても構わない。
【0077】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。