特許第6029507号(P6029507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6029507多孔質樹脂粒子、多孔質樹脂粒子の製造方法、及び、その用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029507
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】多孔質樹脂粒子、多孔質樹脂粒子の製造方法、及び、その用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/20 20060101AFI20161114BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20161114BHJP
   C09D 133/08 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   C08F220/20
   C08F2/18
   C09D133/08
【請求項の数】12
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2013-63746(P2013-63746)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-227535(P2013-227535A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年2月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-71485(P2012-71485)
(32)【優先日】2012年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 健三
(72)【発明者】
【氏名】弘井 純子
(72)【発明者】
【氏名】中村 真章
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04806360(US,A)
【文献】 特開2006−117920(JP,A)
【文献】 特開2010−202832(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/047620(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体混合物を無機系分散安定剤の存在下で懸濁重合させた後、前記無機系分散安定剤を分解除去して得られる単量体混合物の重合体からなる多孔質樹脂粒子であって、
前記単量体混合物は、単量体として、少なくとも、メタクリル酸メチルと(メタ)アクリル系架橋性単量体とを含み、
前記単量体混合物における前記メタクリル酸メチルの含有率が、1〜50重量%であり、
前記単量体混合物における前記(メタ)アクリル系架橋性単量体の含有率が、50〜99重量%であり、
当該多孔質樹脂粒子の比表面積が130〜180m2/gで、細孔容積が0.3〜0.7ml/gで、平均細孔径が13〜16nmであり、
当該多孔質樹脂粒子中に残存する未反応の前記メタクリル酸メチルの量が20ppm以下であり、
当該多孔質樹脂粒子の熱分解開始温度が260℃以上であることを特徴とする多孔質樹脂粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の多孔質樹脂粒子であって、
前記(メタ)アクリル系架橋性単量体が、エチレングリコールジメタクリレートであることを特徴とする多孔質樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多孔質樹脂粒子であって、
体積平均粒子径が1〜20μmであることを特徴とする多孔質樹脂粒子。
【請求項4】
多孔質樹脂粒子の製造方法であって、
メタクリル酸メチル1〜50重量%と(メタ)アクリル系架橋性単量体50〜99重量%とを含む単量体混合物を、有機溶剤と、重合開始剤と、無機系分散安定剤との存在下、水性媒体中で懸濁重合させて、多孔質樹脂粒子を含有する懸濁液を得る重合工程と、
前記重合工程の後、前記懸濁液を蒸留して、前記懸濁液から前記有機溶剤を除去する蒸留工程と、
前記蒸留工程の後、前記懸濁液から濾別した前記多孔質樹脂粒子を80℃以上、0.015MPa以下の減圧下で、12時間以上乾燥させる乾燥工程とを有し、
前記蒸留工程の後、前記乾燥工程の前に、前記懸濁液に含まれる前記無機系分散安定剤を分解除去する分解除去工程を有することを特徴とする多孔質樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項に記載の多孔質樹脂粒子の製造方法であって、
前記有機溶剤を、前記単量体混合物100重量部に対して120〜180重量部使用することを特徴とする多孔質樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項又はに記載の多孔質樹脂粒子の製造方法であって、
前記重合開始剤として、有機過酸化物を用いることを特徴とする多孔質樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項乃至のいずれか1つに記載の多孔質樹脂粒子の製造方法であって、
前記有機溶剤として、沸点が69〜90℃の有機溶剤を用いることを特徴とする多孔質樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1つに記載の多孔質樹脂粒子を含むことを特徴とする外用剤。
【請求項9】
単量体混合物の重合体からなる多孔質樹脂粒子を含むコーティング剤であって、
前記単量体混合物は、単量体として、少なくとも、メタクリル酸メチルと(メタ)アクリル系架橋性単量体とを含み、
前記単量体混合物における前記メタクリル酸メチルの含有率が、1〜50重量%であり、
前記単量体混合物における前記(メタ)アクリル系架橋性単量体の含有率が、50〜99重量%であり、
当該多孔質樹脂粒子の比表面積が130〜180m2/gで、細孔容積が0.3〜0.7ml/gで、平均細孔径が13〜16nmであり、
当該多孔質樹脂粒子中に残存する未反応の前記メタクリル酸メチルの量が20ppm以下であり、
当該多孔質樹脂粒子の熱分解開始温度が260℃以上であることを特徴とするコーティング剤。
【請求項10】
請求項に記載のコーティング剤を基材に塗工してなることを特徴とする光学フィルム。
【請求項11】
単量体混合物の重合体からなる多孔質樹脂粒子と、基材樹脂とを含む樹脂組成物であって、
前記単量体混合物は、単量体として、少なくとも、メタクリル酸メチルと(メタ)アクリル系架橋性単量体とを含み、
前記単量体混合物における前記メタクリル酸メチルの含有率が、1〜50重量%であり、
前記単量体混合物における前記(メタ)アクリル系架橋性単量体の含有率が、50〜99重量%であり、
当該多孔質樹脂粒子の比表面積が130〜180m2/gで、細孔容積が0.3〜0.7ml/gで、平均細孔径が13〜16nmであり、
当該多孔質樹脂粒子中に残存する未反応の前記メタクリル酸メチルの量が20ppm以下であり、
当該多孔質樹脂粒子の熱分解開始温度が260℃以上であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れた多孔質樹脂粒子、この多孔質樹脂粒子の製造方法、及び、その用途(外用剤、コーティング剤、光学フィルム、樹脂組成物、および成形体)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔質樹脂粒子(具体的には、アクリル系架橋樹脂粒子、及びスチレン系架橋樹脂微粒子)は、化粧品等の外用剤の添加剤、塗料等のコーティング剤の添加剤(例えば、塗料用艶消し剤);照明カバーや光拡散板等の光拡散体用、及び液晶表示装置の光拡散フィルム又は防眩フィルム等の光学フィルム用の光拡散剤;フィルムのブロッキング防止剤などとして一般的に使用されている。
【0003】
例えば、上記多孔質樹脂粒子を光拡散剤として含む照明カバー及び光拡散板等の光拡散体は、基材樹脂に光拡散剤としての樹脂粒子を練り込んで得た樹脂組成物を、押出成形や射出成形などにより成形することにより、製造される。
【0004】
多孔質樹脂粒子の製造方法としては、例えば、特許文献1〜4に、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステル等の単官能単量体と、エチレン性のビニル基を二つ以上有する架橋性単量体(架橋剤)とを含む単量体混合物を、重合開始剤と、多孔質化剤としての有機溶剤との存在下で、懸濁重合させた後、多孔質化剤を除去する方法が開示されている。また、特許文献5には、スチレン又は(メタ)アクリル酸エステル等を用いて製造した重合体シード粒子に、架橋性単量体及び重合開始剤を吸収させた後、前記架橋性単量体を重合させ、前記重合体粒子と異なる組成の重合体(多孔質樹脂粒子)を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭50−12176号公報
【特許文献2】特開昭61−69816号公報
【特許文献3】特開2003−81738号公報
【特許文献4】特開2003−286312号公報
【特許文献5】特開2000−191818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜5に開示の製造方法により得られる多孔質樹脂粒子は、多孔質樹脂粒子中に未反応の単量体や重合開始剤残渣等の不純物を多く含んでおり、十分な耐熱性を有するものではないため、上記基材樹脂に練り込まれて使用される場合において、得られる樹脂組成物を黄変させたり、メヤニの発生等の成形不良を引き起こす要因となっていた。なお、本明細書中において、メヤニとは、プラスチック(樹脂組成物)の押出しにおいて、時間の経過とともに、ダイの周囲にたまる焼けた樹脂を意味する。
【0007】
このため、耐熱性の高い多孔質樹脂粒子の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、耐熱性の高い多孔質樹脂粒子、及びこの多孔質樹脂粒子の製造方法、及び、その用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の多孔質樹脂粒子は、単量体混合物の重合体からなる多孔質樹脂粒子であって、前記単量体混合物は、単量体として、少なくとも、メタクリル酸メチルと(メタ)アクリル系架橋性単量体とを含み、前記単量体混合物における前記メタクリル酸メチルの含有率が、1〜50重量%であり、前記単量体混合物における前記(メタ)アクリル系架橋性単量体の含有率が、50〜99重量%であり、当該多孔質樹脂粒子の比表面積が130〜180m2/gで、細孔容積が0.3〜0.7ml/gで、平均細孔径が13〜16nmであり、当該多孔質樹脂粒子中に残存する未反応の前記メタクリル酸メチルの量が20ppm以下であり、当該多孔質樹脂粒子の熱分解開始温度が260℃以上であることを特徴とする。
【0010】
この本発明の多孔質樹脂粒子は、前記(メタ)アクリル系架橋性単量体を50〜99重量%含む単量体混合物の重合体からなり、熱分解開始温度が260℃以上と高いものであることから、耐熱性に優れている。また、本発明の多孔質樹脂粒子は、熱分解開始温度が260℃以上と高く、且つ、当該多孔質樹脂粒子中に残存する未反応の前記メタクリル酸メチルの量が20ppm以下と少ないものである。このため、本発明の多孔質樹脂粒子は、基材樹脂と混合して押出成形した場合において、黄変を生じたり、メヤニの発生等の成形不良を引き起こす要因となり難い。さらに、本発明の多孔質樹脂粒子は、当該多孔質樹脂粒子の比表面積が130〜180m2/gで、細孔容積が0.3〜0.7ml/gで、平均細孔径が13〜16nmであることから、高い粒子強度を備えた多孔質の樹脂粒子となり得る。
【0011】
また、本発明の多孔質樹脂粒子は、130〜180m2/gの比表面積と、0.3〜0.7ml/gの細孔容積と、13〜16nmの平均細孔径とを有しており、光拡散性を発揮し得る十分な多孔度を有している。このため、本発明の多孔質樹脂粒子は、化粧品等の外用剤に添加されることで、その外用剤に毛穴、シワ、及びシミ等を目立ち難くするソフトフォーカス性を付与することができる。また、コーティング剤、光学フィルム、又は光拡散体に配合されることで、そのコーティング剤、光学フィルム、又は光拡散体に、光拡散性を付与することができる。なお、本明細書中に記載の光拡散性との用語には、反射光の拡散性、及び、透過光の拡散性の両方が含まれるものとする。
【0012】
本発明の多孔質樹脂粒子の製造方法は、メタクリル酸メチル1〜50重量%と(メタ)アクリル系架橋性単量体50〜99重量%とを含む単量体混合物を、有機溶剤と、重合開始剤と、無機系分散安定剤との存在下、水性媒体中で懸濁重合させて、多孔質樹脂粒子を含有する懸濁液を得る重合工程と、前記重合工程の後、前記懸濁液を蒸留して、前記懸濁液から前記有機溶剤を除去する蒸留工程と、前記蒸留工程の後、前記懸濁液から濾別した前記多孔質樹脂粒子を80℃以上、0.015MPa以下の減圧下で、12時間以上乾燥させる乾燥工程とを有することを特徴とする。
【0013】
この本発明の多孔質樹脂粒子の製造方法では、重合工程において、(メタ)アクリル系架橋性単量体を50〜99重量%と多く含む単量体混合物を使用している。また、有機溶剤を除去する蒸留工程の後、80℃以上、0.015MPa以下の減圧下で、12時間以上かけて、得られた多孔質樹脂粒子を乾燥させる乾燥工程を有している。このように、重合工程において(メタ)アクリル系架橋性単量体を多く含む単量体混合物を使用し、蒸留工程と乾燥工程とを備えることにより、重合工程で使用した重合開始剤及び単量体の未反応物を多孔質樹脂粒子中から除去することができ、これにより、不純物が少なく、耐熱性の高い多孔質樹脂粒子を得ることができる。
【0014】
また、本発明の製造方法により製造された多孔質樹脂粒子は、光拡散性を発揮し得る十分な多孔度を有している。このため、本発明の製造方法により製造された多孔質樹脂粒子は、化粧品等の外用剤に添加されることで、その外用剤に毛穴、シワ、及びシミ等を目立ち難くするソフトフォーカス性を付与することができ、また、コーティング剤、光学フィルム、又は光拡散体に配合されることで、そのコーティング剤、光学フィルム、又は光拡散体に、光拡散性を付与することができる。
【0015】
また、本発明の外用剤は、上記した本発明の多孔質樹脂粒子を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の外用剤は、光拡散性を発揮し得る十分な多孔度を有する本発明の多孔質樹脂粒子を含んでいることから、光拡散により毛穴、シワ、及びシミ等を目立ち難くするソフトフォーカス性に優れる。
【0017】
また、本発明のコーティング剤は、本発明の多孔質樹脂粒子を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明のコーティング剤は、光拡散性を発揮し得る十分な多孔度を有する本発明の多孔質樹脂粒子を含んでいることから、光拡散性に優れており、上塗り塗料として使用されたときには優れた艶消し性を付与できる。
【0019】
また、本発明の光学フィルムは、本発明のコーティング剤を基材に塗工してなることを特徴とする。
【0020】
本発明の光学フィルムは、光拡散性に優れた本発明のコーティング剤が塗工されたものであることから、光拡散性に優れる。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、本発明の多孔質樹脂粒子と、基材樹脂とを含むことを特徴とする。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、光拡散性を発揮し得る十分な多孔度を有する本発明の多孔質樹脂粒子を含んでいることから、光拡散性に優れる。
【0023】
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。
【0024】
本発明の成形体は、光拡散性に優れた本発明の樹脂組成物を成形してなるものであることから、光拡散性に優れる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、耐熱性の高い多孔質樹脂粒子、この多孔質樹脂粒子の製造方法、及び、その用途を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔多孔質樹脂粒子〕
本発明の多孔質樹脂粒子は、単量体混合物の重合体からなる多孔質樹脂粒子であって、前記単量体混合物は、単量体として、少なくとも、メタクリル酸メチルと(メタ)アクリル系架橋性単量体とを含んでいる。ここで、前記単量体混合物における前記メタクリル酸メチルの含有率は、1〜50重量%であり、前記単量体混合物における前記(メタ)アクリル系架橋性単量体の含有率は、50〜99重量%である。また、この本発明の多孔質樹脂粒子の比表面積は130〜180m2/gであり、本発明の多孔質樹脂粒子の細孔容積は0.3〜0.7ml/gであり、本発明の多孔質樹脂粒子の平均細孔径は13〜16nmである。また、この本発明の多孔質樹脂粒子中に残存する未反応の前記メタクリル酸メチルの量は20ppm以下であり、当該多孔質樹脂粒子の熱分解開始温度は260℃以上である。
【0027】
なお、本明細書中において、(メタ)アクリルとは、メタクリル又はアクリルを意味する。
【0028】
また、本発明の多孔質樹脂粒子中における各単量体に由来する構造単位の定量及び定性等は、ガスクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ、赤外分光法(IR)、核磁気共鳴分光法(NMR)等のような公知の分析方法を用いることにより、確認することができる。なお、単量体混合物中における各単量体の重量比と、本発明の多孔質樹脂粒子中における各単量体に由来する構造単位の重量比とは略同一である。
【0029】
本発明の多孔質樹脂粒子は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を含んでいる。
【0030】
前記メタクリル酸メチルの前記単量体混合物における含有率は、1〜50重量%の範囲内であり、10〜50重量%の範囲内であることが好ましい。前記メタクリル酸メチルの前記単量体混合物における含有率が、1〜50重量%の範囲内にあると、前記単量体混合物中に前記(メタ)アクリル系架橋性単量体を十分に含有させることができることから、多孔質樹脂粒子に十分な多孔性を与えて、比表面積を大きくすることができると共に、多孔質樹脂粒子に十分な耐熱性と粒子強度を備えさせることができる。
【0031】
また、本発明の多孔質樹脂粒子は、(メタ)アクリル系架橋性単量体に由来する構造単位を含んでいる。前記(メタ)アクリル系架橋性単量体としては、本発明の多孔質樹脂粒子の耐熱性に影響を与えない限り、エチレン性不飽和基を2個以上有する公知の(メタ)アクリル系単量体を使用することができる。
【0032】
前記(メタ)アクリル系架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、特に、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートは、多孔質樹脂粒子の耐熱性を向上させる効果に優れている。これら(メタ)アクリル系架橋性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートとは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0033】
前記(メタ)アクリル系架橋性単量体の前記単量体混合物における含有率は、50〜99重量%の範囲内であり、50〜90重量%の範囲内であることがより好ましい。前記(メタ)アクリル系架橋性単量体の前記単量体混合物における含有率が、50〜99重量%の範囲内にあると、多孔質樹脂粒子に十分な多孔性を与えて、比表面積を大きくすることができると共に、多孔質樹脂粒子に十分な耐熱性と粒子強度を備えさせることができる。
【0034】
また、本発明の多孔質樹脂粒子は、本発明の多孔質樹脂粒子の耐熱性に影響を与えない限り、上記したメタクリル酸メチル及び前記(メタ)アクリル系架橋性単量体以外の他の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0035】
また、本発明の多孔質樹脂粒子には、耐熱性をさらに向上させる目的で、酸化防止剤が含まれていてもよい。酸化防止剤としては、特に限定されず公知のものを使用でき、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン、トリス[N−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)]イソシアヌレート、ブチリデン−1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のフェノール系酸化防止剤;ジラウリル−3,3'−チオ−ジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオ−ジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオ−ジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオ−プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(4−ブタネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(6−メルカプトヘキサネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオブタネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、チオグリコール酸オクチル、1−オクタンチオール、1−ドデカンチオール、チオサリチル酸等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジ−ホスホナイト等のリン系酸化防止剤等を使用することができる。これら酸化防止剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明の多孔質樹脂粒子に酸化防止剤を含有させる場合において、酸化防止剤の含有量は、前記単量体混合物100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜1重量部の範囲内であることがより好ましい。酸化防止剤の含有量が、前記単量体混合物100重量部に対して、0.01重量部未満であると、酸化防止剤を含有させたことによる耐熱性の向上効果が得られないおそれがあり、酸化防止剤の含有量が、5重量部を超えると、酸化防止剤の含有量に見合った耐熱性の向上効果が得られないおそれがあり、コスト的に不経済である。
【0037】
本発明の多孔質樹脂粒子中に残存する未反応のメタクリル酸メチルの量は、20ppm以下である。本発明の多孔質樹脂粒子中に残存する未反応のメタクリル酸メチルの量が20ppmを超えると、多孔質樹脂粒子を基材樹脂と混合して押出成形する場合において、メヤニを生じたり、基材樹脂が変色(黄変)したりして、成形不良を生じるおそれがある。
【0038】
また、本発明の多孔質樹脂粒子の熱分解開始温度は260℃以上であり、280℃以上であることが好ましい。熱分解開始温度が260℃未満であると、多孔質樹脂粒子を基材樹脂と混合して押出成形する場合において、メヤニを生じたり、基材樹脂が変色(黄変)したりして、成形不良を生じるおそれがある。なお、熱分解開始温度の測定方法については、実施例の項で説明する。
【0039】
また、本発明の多孔質樹脂粒子の比表面積は、130〜180m2/gであり、好ましくは、150〜170m2/gである。比表面積が130m2/g未満であると、水や油などの吸着特性が十分でないおそれがある。また、比表面積が180m2/gを超えると、十分な粒子強度が得られないおそれがある。なお、比表面積とは、単位重量あたりの表面積のことをいい、本発明では、BET法(N2)により得られる比表面積を意味する。BET法(N2)による比表面積の測定方法については、実施例の項で説明する。
【0040】
また、本発明の多孔質樹脂粒子の細孔容積は0.3〜0.7ml/gであり、本発明の多孔質樹脂粒子の平均細孔径は、13〜16nmである。細孔容積が0.3ml/g未満で、平均細孔径が13nm未満であると、中実粒子に近づくため、多孔質樹脂粒子としての特性(例えば、水や油などの吸着特性、低嵩比重、光の多重散乱性等)が得られないおそれがある。また、細孔容積が0.7ml/gを超え、平均細孔径が16nmを超える場合には、多孔質樹脂粒子内における空間が大きすぎて、十分な粒子強度が得られないおそれがある。なお、細孔容積とは、単位重量あたりの細孔容積のことをいい、本発明においては、窒素脱着等温線からBJH法を用いて得られる細孔容積を意味する。また、平均細孔径とは、窒素脱着等温線からBJH法に基づいて得られる平均細孔径を意味する。細孔容積及び平均細孔径の測定方法については、実施例の項で説明する。
【0041】
本発明の多孔質樹脂粒子の体積平均粒子径は、1〜20μmの範囲内であることが好ましく、5〜15μmの範囲内であることがより好ましい。前記の範囲内である場合、本発明の多孔質樹脂粒子は、多孔質樹脂粒子としての特性(例えば、水や油などの吸着特性、低嵩比重、光の多重散乱性(光拡散性)等)を効果的に発現させることができる。
【0042】
本発明の多孔質樹脂粒子は、複数の孔を有することから、例えば、塗料、紙用コーティング剤、情報記録紙用コーティング剤、又は光学フィルム等の光学部材用コーティング剤等として用いられるコーティング剤(塗布用組成物)の添加剤(艶消し剤、塗膜軟質化剤、意匠性付与剤等);光拡散体(照明カバー、光拡散板、光拡散フィルム等)等の成形体を製造するための樹脂組成物に配合される光拡散剤;食品包装用フィルム等のフィルムのブロッキング防止剤;化粧品等の外用剤用の添加剤(伸展性向上、皮脂の吸収、又は、シミやシワ等の肌の欠点補正のための添加剤)等として、好適に使用できる。
【0043】
〔多孔質樹脂粒子の製造方法〕
本発明の多孔質樹脂粒子は、メタクリル酸メチル1〜50重量%と(メタ)アクリル系架橋性単量体50〜99重量%とを含む単量体混合物を、水性媒体中、有機溶剤と、重合開始剤と、無機系分散安定剤との存在下で懸濁重合する重合工程と、前記重合工程の後、前記有機溶剤を蒸留除去する蒸留工程と、前記蒸留工程後、80℃以上、0.015MPa以下の減圧下で、上記重合工程により得られる多孔質樹脂粒子を、12時間以上乾燥させる工程とを有する多孔質樹脂粒子の製造方法により、製造することができる。
【0044】
以下、前記重合工程、前記蒸留工程、及び、前記乾燥工程について、詳述する。
【0045】
−重合工程−
重合工程では、メタクリル酸メチル1〜50重量%と(メタ)アクリル系架橋性単量体50〜99重量%とを含む単量体混合物を、水性媒体中、有機溶剤と、重合開始剤と、無機系分散安定剤との存在下で懸濁重合させて、多孔質樹脂粒子を含有する懸濁液を得る。この重合工程において、前記懸濁重合は、例えば、前記水性媒体と前記無機系分散安定剤とを含む水相中に、前記単量体混合物と前記有機溶剤と前記重合開始剤とを含む混合物(油相)の液滴を分散させて、前記単量体混合物を重合することにより行うことができる。
【0046】
前記水性媒体としては、特に限定されず、例えば、水、水と水溶性有機媒体(メタノール、エタノールなどの低級アルコール(炭素数5以下のアルコール))との混合媒体が挙げられる。水性媒体の使用量は、多孔質樹脂粒子の安定化を図るために、通常、前記単量体混合物100重量部に対して、100〜1000重量部の範囲内である。
【0047】
前記無機系分散安定剤としては、特に限定されず、公知の無機系分散剤を使用することができ、例えば、炭酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、コロイダルシリカ等の難水溶性無機塩を使用することができる。これらの中でも、酸により分解して水に溶解するもの(例えば、炭酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム)を使用すると、前記重合工程後に、容易に無機系分散安定剤を除去することが可能となる。なお、上記の通り例示した無機系分散安定剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
前記無機系分散安定剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲内であることが好ましく、0.5〜10重量部の範囲内であることがより好ましい。前記無機系分散安定剤の使用量が20重量部を越えると、懸濁液(反応液)の粘度が上がり過ぎて懸濁液が流動しなくなることがある。他方、前記無機系分散安定剤の使用量が0.1重量部未満になると、多孔質樹脂粒子を良好に分散させることができなくなり、多孔質樹脂粒子同士が合着を起こすことがある。
【0049】
このように、本発明の多孔質樹脂粒子の製造方法では、分散安定剤として無機系分散安定剤を使用することで、基材樹脂と混合した時に着色(黄変)を生じる要因となり難い多孔質樹脂粒子を得ることを可能としている。
【0050】
前記単量体混合物は、上記した通り、単量体として、少なくとも、メタクリル酸メチルと(メタ)アクリル系架橋性単量体とを混合したものである。上記した通り、前記単量体混合物における前記メタクリル酸メチルの含有率は1〜50重量%であり、前記(メタ)アクリル系架橋性単量体の含有率は、50〜99重量%である。また、前記単量体混合物は、前記メタクリル酸メチル及び前記(メタ)アクリル系架橋性単量体以外の単量体を含んでいてもよい。
【0051】
また、前記有機溶剤は、多孔化剤として機能するものであれば特に限定されないが、前記単量体混合物との混和性が高く、水溶性の低いものが好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、ベンゼン等の芳香族化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系化合物;n−ヘプタン、n−ヘキサン、n−オクタン等の飽和脂肪族炭化水素等を挙げることができる。これらの中でも、沸点が69℃〜90℃であるもの、例えば、ベンゼン(沸点80℃)、n−ヘキサン(69℃)、酢酸エチル(77℃)等の沸点が69℃〜90℃の有機溶剤を使用すると、当該重合工程での懸濁を安定して行うことができ、また、前記蒸留工程での有機溶剤の蒸留除去を簡単に行うことが可能となる。また、上記の通り例示した有機溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
また、前記有機溶剤の使用量は、前記単量体混合物100重量部に対して120重量部〜180重量部の範囲内であることが好ましく、130〜180重量部の範囲内であることがより好ましい。前記有機溶剤の使用量が、前記単量体混合物100重量部に対して120重量部〜180重量部の範囲内にない場合には、得られる多孔質樹脂粒子において、上記した本発明の多孔質樹脂粒子に特有の比表面積及び細孔容積が備えられないおそれがある。
【0053】
また、重合開始剤としては、前記単量体混合物の重合を開始できるものであれば、特に限定されないが、前記有機溶剤との関係から10時間半減期温度が40〜80℃のもの、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系ニトリル化合物等を使用することが好ましい。なお、本発明の多孔質樹脂粒子の製造方法で製造された多孔質樹脂粒子を食品包装用フィルムのブロッキング防止剤や化粧品用添加剤などの用途で使用する場合の重合開始剤は、当該重合開始剤及びその残渣(例えば、重合開始剤の分解生成物)が人体に影響する可能性が低いもの、例えば、有機過酸化物であることが好ましく、非芳香族系の有機過酸化物であることが特に好ましい。また、上記した重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
前記重合開始剤の使用量は、前記単量体混合物100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜5重量部の範囲内であることがより好ましい。重合開始剤の使用量が、前記単量体混合物100重量部に対して0.01重量部未満である場合、重合開始剤が重合開始の機能を果たし難い。また、重合開始剤の使用量が、前記単量体混合物100重量部に対して10重量部を超える場合には、コスト的に不経済である。
【0055】
上述の酸化防止剤を含む多孔質樹脂粒子を製造する場合、前記懸濁重合は、前記酸化防止剤の存在下で行う。例えば、前記単量体混合物と前記有機溶剤と前記重合開始剤とを含む前記混合物(油相)中に、さらに、酸化防止剤を添加して、前記懸濁重合を行う。
【0056】
また、前記懸濁重合は、懸濁液(反応液)をより安定化させるために、界面活性剤の存在下で行ってもよい。例えば、前記単量体混合物と前記有機溶剤と前記重合開始剤とを含む前記混合物(油相)中、又は、前記水性媒体と前記無機系分散安定剤とを含む水相中に、さらに、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性イオン界面活性剤のいずれをも用いることができる。
【0057】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム;ヒマシ油カリ等の脂肪酸油;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩;アルカンスルホン酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩;アルケニルコハク酸塩(ジカリウム塩);アルキルリン酸エステル塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0058】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
【0059】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0060】
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド、リン酸エステル系界面活性剤、亜リン酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。
【0061】
上記界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。界面活性剤は、懸濁重合時における単量体混合物の分散安定性等を考慮して、種類の選択及び使用量の調整を適宜行えばよい。
【0062】
前記単量体混合物の重合温度は、40℃〜(前記有機溶剤の沸点T℃−5℃)の範囲内であることが好ましい。この重合温度を保持する時間は、0.1〜20時間の範囲内が好ましい。重合完了後、前記有機溶剤を粒子内に含んだ多孔質樹脂粒子を含む懸濁液(スラリー)が得られる。なお、この懸濁液中に含まれる前記有機溶剤は、後述する蒸留工程で除去される。
【0063】
なお、重合工程において、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー等のような、液滴同士の衝突や機壁への衝突力を利用した高圧型分散機等を用いて、水相中に前記単量体混合物を含む油相の液滴を分散させて懸濁重合を行うと、粒子径の揃った多孔質樹脂粒子を製造することができる。
【0064】
−蒸留工程−
蒸留工程では、前記重合工程で得られた多孔質樹脂粒子を含む懸濁液を蒸留することにより、前記懸濁液から前記有機溶剤を除去する。
【0065】
前記蒸留工程において、蒸留は、例えば、前記重合工程で得られた多孔質樹脂粒子を含む懸濁液を蒸留器に投入し、少なくとも前記有機溶剤が蒸留し得る温度と圧力において、撹拌下に行う。この際、前記蒸留器への投入と同時に蒸留を行うことが好ましい。このため、前記有機溶剤が減圧留去され得る温度及び/又は圧力に予め調整された蒸留器に、前記懸濁液を、送液ポンプ等を用いて又は蒸留器内の負圧等により供給してもよい。この際、供給される前記懸濁液に含まれる前記有機溶剤の量と蒸留による留液の量が平衡を保つように前記懸濁液の供給量を調節しながら、連続的に前記懸濁液を前記蒸留器に供給してもよいし、或いは、供給及び供給の停止を連続的に行って、断続的に前記懸濁液を前記蒸留器に供給してもよい。
【0066】
前記蒸留を行うときの条件は、前記重合工程で使用した有機溶剤の種類によって異なるが、通常、前記有機溶剤の沸点以上の温度で、0.030MPa以下の減圧下にて蒸留を行うことが好ましい。
【0067】
このような蒸留工程により、前記懸濁液から前記有機溶剤が除去される。同時に、前記懸濁液に含まれる前記重合開始剤及びこの重合開始剤の残渣、並びに、前記懸濁液に残存する未反応の単量体(具体的には、メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル系架橋性単量体)が除去され得る。
【0068】
−分解除去工程−
本発明の多孔質樹脂粒子の製造方法は、前記蒸留工程の後、後述する乾燥工程の前に、
前記懸濁液に含まれる前記無機系分散安定剤を分解除去する分解除去工程を有していることが好ましい。例えば、前記無機系分散安定剤として、酸により分解して水に溶解するものを用いた場合、前記無機系分散安定剤の分解除去は、前記蒸留工程により前記有機溶剤が除去された懸濁液に酸を加えて前記無機系分散剤を分解し、前記懸濁液中に溶解させた後、前記懸濁液を濾過して多孔質樹脂粒子を濾別し、濾別した多孔質樹脂粒子を水洗することにより行うことができる。
【0069】
このような分解除去工程により、本発明の多孔質樹脂粒子の製造方法により製造した多孔質樹脂粒子中に含まれる前記無機系分散安定剤に由来する残存金属量を低減させる、具体的には、前記無機系分散安定剤に由来する残存金属量を100ppm以下に抑えることができる。このような分解除去工程を有する製造方法により製造された多孔質樹脂粒子は、前記無機系分散安定剤に由来する残存金属量の残存が少ない粒子であるため、当該多孔質樹脂粒子を基材樹脂と混合して押出成形する場合において、メヤニの発生及び基材樹脂の変色(黄変)等の成形不良を引き起こす要因となり難い。
【0070】
−乾燥工程−
乾燥工程では、前記蒸留工程の後、前記懸濁液から濾別した前記多孔質樹脂粒子を、0.015MPa以下の減圧下、より好ましくは0.010MPa以下の減圧下、80℃以上の温度下、より好ましくは90℃以上の温度下で、12時間以上、より好ましくは15時間以上乾燥させる。
【0071】
この乾燥工程により、多孔質樹脂粒子中に含まれる前記重合開始剤及びこの重合開始剤の残渣、並びに、前記多孔質樹脂粒子中に残存する単量体(具体的には、メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル系架橋性単量体)がさらに低減される。具体的には、多孔質樹脂粒子中に残存する重合開始剤及びこの重合開始剤の残渣の量が、50ppm以下に低減され、また、多孔質樹脂粒子に残存する未反応のメタクリル酸メチルの量が20ppm以下に低減される。
【0072】
〔外用剤〕
本発明の外用剤は、本発明の多孔質樹脂粒子を含んでいる。本発明の外用剤は、光拡散性を発揮し得る十分な多孔度を有する本発明の多孔質樹脂粒子を含んでいることから、肌に塗布されることで、光拡散効果により、毛穴、シミ、シワ等を目立たなくすることができ、ソフトフォーカス性に優れる。
【0073】
本発明の外用剤における多孔質樹脂粒子の含有量は、外用剤の種類に応じて適宜設定できるが、1〜80重量%の範囲内であることが好ましく、3〜70重量%の範囲内であることがより好ましい。外用剤全量に対する多孔質樹脂粒子の含有量が1重量%を下回ると、多孔質樹脂粒子の含有による明確な効果が認められないことがある。また、多孔質樹脂粒子の含有量が80重量%を上回ると、含有量の増加に見合った顕著な効果が認められないことがあるため、生産コスト上好ましくない。
【0074】
本発明の外用剤は、例えば、外用医薬品や化粧料等として使用できる。外用医薬品としては、皮膚に適用するものであれば特に限定されないが、具体的には、クリーム、軟膏、乳剤等が挙げられる。化粧料としては、例えば、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム、スクラブ洗顔料、歯磨き等の洗浄用化粧品;おしろい類、フェイスパウダー(ルースパウダー、プレストパウダー等)、ファンデーション(パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、乳化型ファンデーション等)、口紅、リップクリーム、頬紅、眉目化粧品(アイシャドー、アイライナー、マスカラ等)、マニキュア等のメイクアップ化粧料;プレシェーブローション、ボディローション等のローション剤;ボディパウダー、ベビーパウダー等のボディー用外用剤;化粧水、クリーム、乳液(化粧乳液)等のスキンケア剤、制汗剤(液状制汗剤、固形状制汗剤、クリーム状制汗剤等)、パック類、洗髪用化粧品、染毛料、整髪料、芳香性化粧品、浴用剤、日焼け止め製品、サンタン製品、ひげ剃り用クリーム等が挙げられる。
【0075】
本発明の外用剤中に配合される多孔質樹脂粒子は、油剤、シリコーン化合物およびフッ素化合物等の表面処理剤や有機粉体、無機粉体等で処理したものであってもよい。
【0076】
前記油剤としては、通常外用剤に使用されているものであればいずれでもよく、例えば流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、パラフィンワックス等の炭化水素油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、合成脂肪酸等の高級脂肪酸;トリオクタン酸グリセリル、ジカプリン酸プロピレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸イソセチル等のエステル油;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類;アマニ油、綿実油、ヒマシ油、卵黄油、ヤシ油等の油脂類;ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛等の金属石鹸;セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。また、多孔質樹脂粒子を前記油剤で処理する方法は特に限定されないが、例えば、多孔質樹脂粒子に油剤を添加し、ミキサー等で撹拌することにより油剤をコーティングする乾式法や、油剤をエタノール、プロパノール、酢酸エチル、ヘキサン等の適当な溶媒に加熱溶解し、それに多孔質樹脂粒子を加えて混合撹拌した後、溶媒を減圧除去または加熱除去することにより、油剤をコーティングする湿式法等を利用することができる。
【0077】
前記シリコーン化合物としては、通常外用剤に使用されるものであればいずれでもよく、例えばジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アクリル−シリコーン系グラフト重合体、有機シリコーン樹脂部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物等が挙げられる。多孔質樹脂粒子をシリコーン化合物で処理する方法は特に限定されないが、例えば、上記の乾式法や湿式法を利用できる。また、必要に応じて焼き付け処理を行ったり、反応性を有するシリコーン化合物の場合は反応触媒等を適宜添加してもよい。
【0078】
前記フッ素化合物は、通常外用剤に配合されるものであればいずれでもよく、例えばパーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロ基を有する重合体等が挙げられる。多孔質樹脂粒子をフッ素化合物で処理する方法も特に限定されないが、例えば、前記の乾式法や湿式法を利用できる。また、必要に応じて焼き付け処理を行ったり、反応性を有するフッ素化合物の場合は反応触媒等を適宜添加してもよい。
【0079】
有機粉体としては、例えばアラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコーン油、ナイロン粒子、ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子、フッ素樹脂粒子等の樹脂粒子が挙げられる。また、前記無機粉体としては、例えば酸化鉄、群青、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、雲母、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等が挙げられる。また、これら有機粉体や無機粉体は、予め表面処理を行ったものでもよい。表面処理方法としては、前記のような、公知の表面処理技術が利用できる。
【0080】
また、本発明の外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に用いられている主剤または添加物を目的に応じて配合できる。そのような主剤または添加物としては、例えば、水、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール)、油脂及びロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、ステロール、脂肪酸エステル、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤、高分子化合物、色材原料、香料、粘土鉱物類、防腐・殺菌剤、抗炎症剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機無機複合粒子、pH調整剤(トリエタノールアミン等)、特殊配合添加物、医薬品活性成分等が挙げられる。
【0081】
前記油脂及びロウ類の具体例としては、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、牛脂、ゴマ脂、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ひまし油、ブドウ油、マカダミアナッツ油、ミンク油、卵黄油、モクロウ、ヤシ油、ローズヒップ油、硬化油、シリコーン油、オレンジラフィー油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ホホバ油、モンタンロウ、ミツロウ、ラノリン等が挙げられる。
【0082】
前記炭化水素の具体例としては、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等が挙げられる。
【0083】
前記高級脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、合成脂肪酸等の炭素数11以上の脂肪酸が挙げられる。
【0084】
前記高級アルコールの具体例としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルデカノール、イソステアリルアルコール、ホホバアルコール、デシルテトラデカノール等の炭素数6以上のアルコールが挙げられる。
【0085】
前記ステロールの具体例としては、コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトコレステロール等が挙げられる。
【0086】
前記脂肪酸エステルの具体例としては、リノール酸エチル等のリノール酸エステル;ラノリン脂肪酸イソプロピル等のラノリン脂肪酸エステル;ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル;オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル等のオレイン酸エステル;ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル等のジメチルオクタン酸エステル;イソオクタン酸セチル(2−エチルヘキサン酸セチル)等のイソオクタン酸エステル;パルミチン酸デシル等のパルミチン酸エステル;トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸コレステリル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル等の環状アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0087】
前記金属石鹸の具体例としては、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ウンデシレン酸亜鉛等が挙げられる。
【0088】
前記保湿剤の具体例としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグリセリン、キシリット、マルチトール等が挙げられる。
【0089】
前記界面活性剤の具体例としては、高級脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル、N−アシルグルタミン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;アミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、レシチン等の両性界面活性剤;脂肪酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、イソステアリン酸ソルビタン等)、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、酸化エチレン縮合物等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0090】
前記高分子化合物の具体例としては、アラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコーン油、ナイロン粒子、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子(例えば、ポリメタクリル酸メチル粒子等)、ポリスチレン粒子、シリコーン系粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子、シリカ粒子等の樹脂粒子等の合成高分子化合物が挙げられる。
【0091】
前記色材原料の具体例としては、酸化鉄(赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄等)、群青、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、雲母、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等の無機顔料、アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、キサンテン系、キノリン系、アントラキノリン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、フタロシアニン系、ピレン系等のタール色素が挙げられる。
【0092】
なお、上記した高分子化合物の粉体原料や色材原料などの粉体原料は、予め表面処理を行ったものも使用することができる。表面処理の方法としては、公知の表面処理技術が利用でき、例えば、炭化水素油、エステル油、ラノリン等による油剤処理、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等によるシリコーン処理、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテルおよびパーフルオロアルキル基を有する重合体等によるフッ素化合物処理、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等によるシランカップリング剤処理、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート等によるチタンカップリング剤処理、金属石鹸処理、アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理、水添卵黄レシチン等によるレシチン処理、コラーゲン処理、ポリエチレン処理、保湿性処理、無機化合物処理、メカノケミカル処理等の処理方法が挙げられる。
【0093】
前記粘土鉱物類の具体例としては、体質顔料および吸着剤などの数種の機能を兼ね備えた成分、例えば、タルク、マイカ、セリサイト、チタンセリサイト(酸化チタンで被覆されたセリサイト)、白雲母、バンダービルト社製のVEEGUM(登録商標)等が挙げられる。
【0094】
前記香料の具体例としては、アニスアルデヒド、ベンジルアセテート、ゲラニオール等が挙げられる。前記防腐・殺菌剤の具体例としては、メチルパラペン、エチルパラペン、プロピルパラペン、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム等が挙げられる。前記酸化防止剤の具体例としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロール等が挙げられる。前記紫外線吸収剤の具体例としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化鉄、微粒子酸化ジルコニウム等の無機系吸収剤、安息香酸系、パラアミノ安息香酸系、アントラニリック酸系、サルチル酸系、桂皮酸系、ベンゾフェノン系、ジベンゾイルメタン系等の有機系吸収剤が挙げられる。
【0095】
前記特殊配合添加物の具体例としては、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン等のホルモン類、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルムニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛等の皮膚収斂材剤、カンタリスチンキ、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、センブリエキス、ニンニクエキス、ヒノキチオール、塩化カルプロニウム、ペンタデカン酸グリセリド、ビタミンE、エストロゲン、感光素等の発毛促進剤、リン酸−L−アスコルビン酸マグネシウム、コウジ酸等の美白剤等が挙げられる。
【0096】
〔コーティング剤〕
本発明の多孔質樹脂粒子は、塗膜軟質化剤、塗料用艶消し剤、光拡散剤等としてコーティング剤に含有させることが可能である。本発明のコーティング剤は、本発明の多孔質樹脂粒子を含んでいる。
【0097】
前記コーティング剤は、必要に応じてバインダー樹脂を含んでいる。バインダー樹脂としては、有機溶剤もしくは水に可溶な樹脂、または水中に分散できるエマルジョン型の水性樹脂を使用でき、公知のバインダー樹脂をいずれも利用できる。バインダー樹脂としては、例えば、三菱レイヨン株式会社製の商品名「ダイヤナール(登録商標)LR−102」や「ダイヤナール(登録商標)BR−106」、或いは、大日精化工業株式会社製の商品名「メジウム VM(K)」等のアクリル系樹脂;アルキド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂;塩素化ポリオレフィン樹脂;アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらバインダー樹脂は、塗工される基材への塗料の密着性や使用される環境等によって適宜選択され得る。
【0098】
多孔質樹脂粒子の配合量は、バインダー樹脂を含むコーティング剤により形成される塗膜の膜厚、多孔質樹脂粒子の平均粒子径、塗工方法、使用する用途等によって適宜調整されるが、バインダー樹脂100重量部に対して、1〜300重量部の範囲内であることが好ましい。また、バインダー樹脂(エマルジョン型の水性樹脂を使用する場合には固形分)と多孔質樹脂粒子との合計に対して、5〜50重量%の範囲内であることがより好ましく、8〜40重量%の範囲内であることがより好ましい。多孔質樹脂粒子の含有量が5重量%未満である場合、艶消し効果が十分得られないことがある。また、多孔質樹脂粒子の含有量が50重量%を超える場合には、コーティング剤の粘度が大きくなりすぎるために多孔質樹脂粒子の分散不良が起こることがある。そのため、コーティング剤の塗工によって得られる塗膜表面にマイクロクラックが発生する、得られる塗膜表面にザラツキが生じる等のような、塗膜表面の外観不良が起こることがある。
【0099】
前記コーティング剤は、必要に応じて、媒体を含んでいる。前記媒体として、バインダー樹脂を溶解できる溶剤(溶媒)、またはバインダー樹脂を分散できる分散媒を使用することが好ましい。分散媒または溶媒としては、水性の媒体および油性の媒体がいずれも使用できる。油性の媒体としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。水性の媒体としては、水、アルコール類(例えばイソプロパノール)等が挙げられる。これら溶剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。コーティング剤中における媒体の含有量は、コーティング剤全量に対し、通常、20〜60重量%の範囲内である。
【0100】
さらに、コーティング剤には、硬化剤、着色剤、(体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等)、帯電防止剤、レベリング剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の他の添加剤が含まれていてもよい。
【0101】
コーティング剤の被塗布基材としては、特に限定されず、用途に応じた基材が使用できる。
【0102】
例えば、光学用途では、ガラス基材、透明基材樹脂からなる透明基材等が被塗布基材として使用される。被塗布基材として透明基材を使用し、着色剤を含まないコーティング剤(光拡散用コーティング剤)を透明基材上に塗工して透明の塗膜を形成することで、光拡散フィルムや防眩フィルム等の光学フィルムを製造することができる。この場合、多孔質樹脂粒子は光拡散剤として機能する。
【0103】
また、被塗布基材として紙を使用し、着色剤を含まないコーティング剤(紙用コーティング剤)を塗工して透明の塗膜を形成することで、艶消し紙を製造することができる。
【0104】
コーティング剤の塗工方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。塗工方法としては、例えば、スプレー塗工法、ロール塗工法、ハケ塗り法等の方法が挙げられる。コーティング剤は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈剤を加えて希釈してもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;水;アルコール系溶剤等が挙げられる。これら希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。光学フィルムを製造する場合には、塗工方法として、多孔質樹脂粒子に由来する凹凸が塗膜表面に形成されるような方法を使用することが好ましい。
【0105】
〔光学フィルム〕
本発明の光学フィルムは、本発明のコーティング剤を基材に塗工したものである。光学フィルムの具体例としては、光拡散フィルムや防眩フィルム等を挙げることができる。
【0106】
光学フィルムの基材の具体例としては、ガラス基材や、透明基材樹脂からなる透明基材等を挙げることができる。
【0107】
前記透明基材樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略記する)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。これら透明基材樹脂の中でも、優れた透明性が透明基材樹脂に求められる場合には、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、およびポリスチレンが好ましい。これらの透明基材樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0108】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、本発明の多孔質樹脂粒子と基材樹脂とを含むものである。この本発明の樹脂粒子組成物は、本発明の多孔質樹脂粒子を含み、光拡散性に優れることから、照明カバー(発光ダイオード(LED)照明用照明カバー、蛍光灯照明用照明カバー等)、光拡散シート、光拡散板等の光拡散体の原料として使用できる。
【0109】
前記基材樹脂としては、通常、多孔質樹脂粒子を構成する重合体の成分と異なる熱可塑性樹脂が使用される。前記基材樹脂として使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂の中でも、優れた透明性が基材樹脂に求められる場合には、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、およびポリスチレンが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0110】
前記基材樹脂への多孔質樹脂粒子の添加割合は、基材樹脂100重量部に対して、1〜300重量部の範囲内であることが好ましく、10〜100重量部の範囲内であることがより好ましい。前記基材樹脂への多孔質樹脂粒子の添加割合が、基材樹脂100重量部に対して、1重量部未満の場合、光拡散体に光拡散性を与えにくくなることがある。前記基材樹脂への多孔質樹脂粒子の添加割合が、基材樹脂100重量部に対して、300重量部より多い場合、上記した光拡散体に光拡散性を与えられるが上記光拡散体の光透過性が低くなることがある。
【0111】
樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、多孔質樹脂粒子と基材樹脂とを機械式粉砕混合方法等のような従来公知の方法で混合することにより製造できる。機械式粉砕混合方法では、例えば、ヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラミキサー、ハイブリダイザー、ロッキングミキサー等の装置を用いて多孔質樹脂粒子と基材樹脂とを混合し撹拌することにより、樹脂組成物を製造できる。
【0112】
〔成形体〕
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を成形してなるものである。本発明の成形体の具体例としては、照明カバー(発光ダイオード(LED)照明用照明カバー、蛍光灯照明用照明カバー等)、光拡散シート、光拡散板等の光拡散体を挙げることができる。
【0113】
例えば、多孔質樹脂粒子と基材樹脂とを混合機で混合し、押出機等の溶融混練機で混練することで樹脂組成物からなるペレットを得た後、このペレットを押出成形するか、あるいはこのペレットを溶融後に射出成形することにより、任意の形状の成形体を得ることができる。
【実施例】
【0114】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0115】
最初に、実施例及び比較例における、樹脂粒子の体積平均粒子径の測定方法、樹脂粒子の比表面積の測定方法、樹脂粒子の細孔径及び細孔容積の測定方法、樹脂粒子中に残存する未反応のメタクリル酸メチルの量(残存メタクリル酸メチル量)の測定方法、樹脂粒子中に残存する重合開始剤及びこの重合開始剤の残渣の量(重合開始剤残渣量)の測定方法、熱分解開始温度の測定方法、ならびに樹脂粒子中に残存する金属の量(残存金属量)の測定方法を説明する。
【0116】
〔樹脂粒子の体積平均粒子径の測定方法〕
樹脂粒子の体積平均粒子径は、コールターマルチサイザーIII(ベックマンコールター株式会社製測定装置)により測定する。測定は、ベックマンコールター株式会社発行のMultisizerTM 3ユーザーズマニュアルに規定されたサイズ(径)を有するアパチャーを用いて実施するものとする。
【0117】
なお、測定に用いるアパチャーの選択は、測定する樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が1μm以上10μm以下の場合は50μmのサイズを有するアパチャーを選択し、測定する樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が10μmより大きく30μm以下の場合は100μmのサイズを有するアパチャーを選択し、測定する樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が30μmより大きく90μm以下の場合は280μmのサイズを有するアパチャーを選択し、測定する樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が90μmより大きく150μm以下の場合は400μmのサイズを有するアパチャーを選択するなど、適宜行う。
【0118】
また、アパチャーのサイズに適したCurrent(アパチャー電流)、Gain(ゲイン)をベックマンコールター株式会社発行のMultisizerTM 3ユーザーズマニュアルに従って設定する。
【0119】
測定用試料としては、樹脂粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT−31」)および超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア社製、「ULTRASONIC CLEANER VS−150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用する。コールターマルチサイザーIIIの測定部に、ISOTON(登録商標)II(ベックマンコールター株式会社製:測定用電解液)を満たしたビーカーをセットし、ビーカー内を緩く攪拌しながら、前記分散液を滴下して、コールターマルチサイザーIII本体画面の濃度計の示度を5〜10%に合わせた後に、測定を開始する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了する。
【0120】
体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均である。
【0121】
樹脂粒子の粒子径の変動係数(CV値)を、以下の数式によって算出する。
【0122】
樹脂粒子の粒子径の変動係数=(樹脂粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差
÷樹脂粒子の体積平均粒子径)×100
【0123】
〔樹脂粒子の比表面積の測定方法〕
樹脂粒子の比表面積は、ISO 9277第1版 JIS Z 8830:2001記載のBET法(窒素吸着法)により測定した。対象となる樹脂粒子について、株式会社島津製作所社製の自動比表面積/細孔分布測定装置Tristar3000を用いてBET窒素吸着等温線を測定し、窒素吸着量からBET多点法を用いて比表面積を算出した。加熱ガスパージによる前処理を実施した後、吸着質として窒素を用い、吸着質断面積0.162nm2の条件下で定容量法を用いて測定を行った。なお、前記前処理は、具体的には、樹脂粒子が入った容器を65℃で加熱しながら、窒素パージを20分行い、室温放冷した後、その容器を65℃で加熱しながら、前記容器内の圧力が0.05mmHg以下になるまで真空脱気を行うことにより、行った。
【0124】
〔樹脂粒子の細孔径及び細孔容積の測定方法〕
樹脂粒子の孔の細孔径(平均細孔径)及び細孔容積は、BJH法により求める。測定対象となる樹脂粒子について、株式会社島津製作所製の自動比表面積/細孔分布測定装置Tristar3000を用いて、窒素脱着等温線を測定し、BJH法に基づいて、細孔径(平均細孔径)及び細孔容積(積算細孔容積)を算出する。なお、窒素脱着等温線の測定は、吸着質として窒素を用い、吸着質断面積0.162nm2の条件下で定容法を用いて行った。
【0125】
〔残存メタクリル酸メチル量の測定方法〕
(1)試料液の調製
試験管に、測定対象となる樹脂粒子1gと、二硫化炭素25mlと、内部標準液1mlとを投入し、室温にて12時間抽出した。得られた抽出液を1.8μl採取し、注入した。なお、内部標準液は、二硫化炭素75mlにトルエン0.1mlを加えたものとした。
【0126】
(2)残存メタクリル酸メチル量の測定
上記試料液について、ガスクロマトグラフ装置(株式会社島津製作所製、商品名「GC−14A」)にて下記測定条件で測定を行い、メタクリル酸メチル量を内部標準法で定量した。
【0127】
<測定条件>
カラム充填剤:液相 PEG−20M
担体 Chromosorb W
カラムサイズ:3mmI.D.×3000mmL
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
キャリアーガス:窒素、空気、ヘリウム
キャリア―ガス流量:30ml/min(窒素)、300ml/min(空気)、35 ml/min(ヘリウム)
カラム温度:105℃
注入口温度:110℃
【0128】
〔重合開始剤残渣量の測定方法〕
重合開始剤残渣量は、測定対象となる樹脂粒子の製造に使用した重合開始剤に応じて、公知の方法により測定することができる。後述する実施例及び比較例では、重合開始剤として、過酸化ラウロイル、2,2’−アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)、又は、アゾビスイソブチロニトリルを使用しているため、下記に、過酸化ラウロイル、2,2’−アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)、及びアゾビスイソブチロニトリルの残渣量の測定方法を示す。
【0129】
−過酸化ラウロイルの残渣量の測定方法−
(1)試料液の調製
試験管に、測定対象となる樹脂粒子0.15gとメタノール5mlとを投入し、超音波洗浄機にて15分間混合抽出した。そして、得られた抽出液を遠心分離し、上澄み液を孔径0.25μmの非水系クロマトディスクで濾過したものを試料液とした。
【0130】
(2)過酸化ラウロイル量の測定
上記試料液について、超高速液体クロマトグラフ装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名「LaChromUltra」)にて下記測定条件にて測定を行い、過酸化ラウロイル量を絶対検量線法で定量した。
【0131】
<測定条件>
カラム:LaChromUltra C18(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、粒径:2μm、カラムサイズ:2.0mmI.D.×50mmL)
カラム温度:40℃
溶媒:アセトニトリル
流速:0.6ml/min
注入量:4μl
注入温度:室温(25℃)
【0132】
−2,2’−アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)の残渣量の測定方法−
(1)試料液の調製
試験管に、測定対象となる樹脂粒子0.1gとメタノール5mlとを投入し、超音波洗浄機にて15分間混合抽出した。そして、得られた抽出液を遠心分離する。内部標準液(p−ジクロロベンゼン)20μlを入れた2mlメスフラスコに前記遠心分離後の上澄み液を入れて定容する。定容した液を試料液とした。
【0133】
(2)2,2’−アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)の残渣量の測定
上記試料液について、ガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所株式会社製、商品名「QP−5050A」、ガスクロマトグラフ:島津製作所株式会社製GC−17A)にて下記測定条件にて測定を行い、2,2’−アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)量を内部標準法にて定量した。
【0134】
<測定条件>
カラム:ZB−5MS(Phenomenex社製、膜厚:0.25μm、カラムサイズ:0.25mmI.D.×30m)
カラム温度:45℃で3分間保持した後、5℃/minの昇温速度で160℃まで昇温
キャリアーガス:ヘリウム
キャリアー流量:1.3ml/min
インジェクション温度:130℃
インターフェイス温度:250℃
検出器電圧:1.25kV
測定モード:SIM(M/Z=68、69、111、150、152)
注入量:1μl
【0135】
−アゾビスイソブチロニトリルの残渣量の測定方法−
(1)試料液の調製
試験管に、測定対象となる樹脂粒子0.1gとメタノール5mlとを投入し、超音波洗浄機にて15分間混合抽出した。得られた抽出液を遠心分離する。内部標準液(トルエン)20μlを入れた2mlメスフラスコに前記遠心分離後の上澄み液を入れて定容する。定容した液を試料液とした。
【0136】
(2)アゾビスイソブチロニトリル量の測定
上記試料液について、ガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所株式会社製、商品名「QP−5050A」、ガスクロマトグラフ:島津製作所株式会社製GC−17A)にて下記測定条件にて測定を行い、アゾビスイソブチロニトリル量を内部標準法にて定量した。
【0137】
<測定条件>
カラム:DB−5(J&W社製、膜厚:0.25μm、カラムサイズ:0.25mmI.D.×30m)
カラム温度:40℃で3分間保持し、10℃/minの昇温速度で100℃まで昇温した後、25℃/minの速度で250℃まで昇温
キャリアーガス:ヘリウム
キャリアー流量:1.4ml/min
インジェクション温度:120℃
インターフェイス温度:250℃
検出器電圧:1.25kV
測定モード:SIM(M/Z=68、69、98、100)
注入量:2μl
【0138】
〔熱分解開始温度の測定方法〕
樹脂粒子の熱分解開始温度は、TG/DTA装置(セイコーインスツル株式会社製TG/DTA6200)を用いて、測定した。
【0139】
つまり、上記TG/DTA装置を用いて、空気雰囲気中、空気流量200ml/minにて、40〜100℃の温度範囲では20℃/minの昇温速度、100〜500℃の温度範囲では10℃/minの昇温速度の測定条件下で、40〜500℃の温度範囲での重量減少挙動を測定した。この測定により得られた重量減少曲線のベースライン(水平線部)の延長線と、質量減少部分(右下がりの斜線部)の接線(最大傾斜点での接線)との交点を樹脂粒子の熱分解開始温度とした。
【0140】
〔残存金属量の測定方法〕
樹脂粒子に含まれる残存金属元素量は、マルチタイプICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、「ICPE−9000」)を用いて、測定した。
【0141】
具体的には、樹脂粒子約1.0gを精秤し、精秤した樹脂粒子を、電気炉(株式会社いすず製のマッフル炉STR−15K)を用いて450℃で3時間加熱することにより、灰化させた。灰化した樹脂粒子を濃塩酸2mlに溶解させ、蒸留水にて50mlにメスアップして測定試料とした。そして、測定試料について、下記測定条件にて、上記マルチタイプICP発光分光分析装置による測定を実施し、各金属元素(Na、Ca、Mg、Fe、Cr)の波長のピーク強度を得た。次いで、得られた各金属元素(Na、Ca、Mg、Fe、Cr)の波長のピーク強度から、下記検量線作成方法により作成した定量用の検量線に基づき、測定試料中の各金属元素(Na、Ca、Mg、Fe、Cr)の濃度(μg/ml)を求めた。そして、求めた各金属元素(Na、Ca、Mg、Fe、Cr)の濃度の合計Tc(μg/ml)と、上記の精秤した樹脂粒子の重量W(g)とを以下の式に代入し、樹脂粒子中の残存金属量を算出した。
【0142】
残存金属量=(Tc(μg/ml)/W(g))×50(ml)
<測定条件>
測定波長:Na(589.592nm)、Ca(317.933nm)、Mg(285.213nm)、Fe(238.204nm)、Cr(205.552nm)
観測方向:軸方向
高周波出力:1.20kW
キャリアー流量:0.7L/min
プラズマ流量:10.0L/min
補助流量:0.6L/min
露光時間:30秒
<検量線作成方法>
検量線用標準液(米国SPEX社製、「XSTC−13(汎用混合標準溶液)」、31元素混合(ベース5%HNO3)−各約10mg/l)を蒸留水で段階的に希釈調製して、0ppm(ブランク)、0.2ppm、1ppm、2.5ppm、及び5ppmの濃度の標準液をそれそれ調製する。各濃度の標準液について、上記測定条件にて上記マルチタイプICP発光分光分析装置による測定を実施し、各金属元素(Na、Ca、Mg、Fe、Cr)の波長のピーク強度を得る。各金属元素(Na、Ca、Mg、Fe、Cr)について、濃度とピーク強度をプロットし、最小二乗法による近似線(直線あるいは二次曲線)を求め、求めた近似線を定量用の検量線とする。
【0143】
[実施例1]
脱イオン水1000gに、無機系分散安定剤としての第三リン酸カルシウム50gと、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.05gとを加えて水相とした。一方、メタクリル酸メチル200g(単量体混合物全体に対して、50重量%)と、(メタ)アクリル系架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート200g(単量体混合物全体に対して、50重量%)と、有機溶剤としての酢酸エチル(沸点77℃)500g(単量体混合物100重量部に対して、125重量部)と、重合開始剤としての過酸化ラウロイル1gとの混合液を調製して油相とした。水相と油相とを混合し、分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型」)にて回転数5000rpmで、前記水相中に前記油相の液滴を分散させて、分散液を得た。この分散液を、攪拌機及び温度計を備えた重合器に入れ、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで加温し、懸濁重合を開始した。そして、内温を70℃で8時間保持することにより、樹脂粒子を含む懸濁液を得た(重合工程)。
【0144】
この樹脂粒子を含む懸濁液を、80℃、0.027MPaの条件下で蒸留して、酢酸エチルを系外に除去した(蒸留工程)。
【0145】
この後、20℃まで冷却し、塩酸を加えて第三リン酸カルシウムを分解した後、ブフナー漏斗にて得られた樹脂粒子を濾別し、続いて、樹脂粒子をイオン交換水にて洗浄した(分解除去工程)。
【0146】
洗浄した樹脂粒子を90℃、0.008Maの減圧下で24時間乾燥することにより樹脂粒子を得た(乾燥工程)。
【0147】
得られた樹脂粒子は、多孔質の樹脂粒子(多孔質樹脂粒子)であり、得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、10μmであった。
【0148】
[実施例2]
脱イオン水1000gに、無機系分散安定剤としての第三リン酸カルシウム50gと、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.05gとを加えて水相とした。一方、メタクリル酸メチル200g(単量体混合物全体に対して、50重量%)と、(メタ)アクリル系架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート200g(単量体混合物全体に対して、50重量%)と、有機溶剤としての酢酸エチル(沸点77℃)600g(単量体混合物100重量部に対して、150重量部)と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル1gとの混合液を調製して油相とした。水相と油相とを混合し、分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型」)にて回転数6000rpmで、前記水相中に前記油相の液滴を分散させて、分散液を得た。この分散液を、攪拌機及び温度計を備えた重合器に入れ、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで加温し、懸濁重合を開始した。そして、内温を70℃で8時間保持することにより、樹脂粒子を含む懸濁液を得た(重合工程)。
【0149】
この樹脂粒子を含む懸濁液を、80℃、0.027MPaの条件下で蒸留して、酢酸エチルを系外に除去した(蒸留工程)。
【0150】
この後、20℃まで冷却し、塩酸を加えて第三リン酸カルシウムを分解した後、ブフナー漏斗にて得られた樹脂粒子を濾別し、続いて、樹脂粒子をイオン交換水にて洗浄した(分解除去工程)。
【0151】
洗浄した樹脂粒子を90℃、0.008Maの減圧下で24時間乾燥することにより樹脂粒子を得た(乾燥工程)。
【0152】
得られた樹脂粒子は、多孔質の樹脂粒子(多孔質樹脂粒子)であり、得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、8μmであった。
【0153】
[実施例3]
脱イオン水1000gに、無機系分散安定剤としての第三リン酸カルシウム50gと、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.05gとを加えて水相とした。一方、メタクリル酸メチル160g(単量体混合物全体に対して、40重量%)と、(メタ)アクリル系架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート240g(単量体混合物全体に対して、60重量%)と、有機溶剤としての酢酸エチル(沸点77℃)700g(単量体混合物100重量部に対して、175重量部)と、重合開始剤としての過酸化ラウロイル1gとの混合液を調製して油相とした。水相と油相とを混合し、分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型」)にて回転数6000rpmで、前記水相中に前記油相の液滴を分散させて、分散液を得た。この分散液を、攪拌機及び温度計を備えた重合器に入れ、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで加温し、懸濁重合を開始した。そして、内温を70℃で8時間保持することにより、樹脂粒子を含む懸濁液を得た(重合工程)。
【0154】
この樹脂粒子を含む懸濁液を、80℃、0.020MPaの条件下で蒸留して、酢酸エチルを系外に除去した(蒸留工程)。
【0155】
この後、20℃まで冷却し、塩酸を加えて第三リン酸カルシウムを分解した後、ブフナー漏斗にて得られた樹脂粒子を濾別し、続いて、樹脂粒子をイオン交換水にて洗浄した(分解除去工程)。
【0156】
洗浄した樹脂粒子を90℃、0.008Maの減圧下で24時間乾燥することにより樹脂粒子を得た(乾燥工程)。
【0157】
得られた樹脂粒子は、多孔質の樹脂粒子(多孔質樹脂粒子)であり、得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、8μmであった。
【0158】
[実施例4]
脱イオン水1000gに、無機系分散安定剤としての第三リン酸カルシウム50gと、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.05gとを加えて水相とした。一方、メタクリル酸メチル160g(単量体混合物全体に対して、40重量%)と、(メタ)アクリル系架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート240g(単量体混合物全体に対して、60重量%)と、酸化防止剤としてのペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート4gと、有機溶剤としての酢酸エチル(沸点77℃)700g(単量体混合物100重量部に対して、175重量部)と、重合開始剤としての過酸化ラウロイル1gとの混合液を調製して油相とした。水相と油相とを混合し、分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型」)にて回転数6000rpmで、前記水相中に前記油相の液滴を分散させて、分散液を得た。この分散液を、攪拌機及び温度計を備えた重合器に入れ、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで加温し、懸濁重合を開始した。そして、内温を70℃で8時間保持することにより、樹脂粒子を含む懸濁液を得た(重合工程)。
【0159】
この樹脂粒子を含む懸濁液を、80℃、0.027MPaの条件下で蒸留して、酢酸エチルを系外に除去した(蒸留工程)。
【0160】
この後、20℃まで冷却し、塩酸を加えて第三リン酸カルシウムを分解した後、ブフナー漏斗にて得られた樹脂粒子を濾別し、続いて、樹脂粒子をイオン交換水にて洗浄した(分解除去工程)。
【0161】
洗浄した樹脂粒子を90℃、0.008Maの減圧下で24時間乾燥することにより樹脂粒子を得た(乾燥工程)。
【0162】
得られた樹脂粒子は、多孔質の樹脂粒子(多孔質樹脂粒子)であり、得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、8μmであった。
【0163】
[実施例5]
脱イオン水1000gに、無機系分散安定剤としての第三リン酸カルシウム50gと、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.05gとを加えて水相とした。一方、メタクリル酸メチル160g(単量体混合物全体に対して、40重量%)と、(メタ)アクリル系架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート240g(単量体混合物全体に対して、60重量%)と、有機溶剤としてのn−ヘキサン(沸点69℃)700g(単量体混合物100重量部に対して、175重量部)と、重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gとの混合液を調製して油相とした。水相と油相とを混合し、分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型」)にて回転数8000rpmで、前記水相中に前記油相の液滴を分散させて、分散液を得た。この分散液を、攪拌機及び温度計を備えた重合器に入れ、攪拌下に窒素置換しながら60℃まで加温し、懸濁重合を開始した。そして、内温を60℃で8時間保持することにより、樹脂粒子を含む懸濁液を得た(重合工程)。
【0164】
この樹脂粒子を含む懸濁液を、80℃、0.020MPaの条件下で蒸留して、n−ヘキサンを系外に除去した(蒸留工程)。
【0165】
この後、20℃まで冷却し、塩酸を加えて第三リン酸カルシウムを分解した後、ブフナー漏斗にて得られた樹脂粒子を濾別し、続いて、樹脂粒子をイオン交換水にて洗浄した(分解除去工程)。
【0166】
洗浄した樹脂粒子を90℃、0.008Maの減圧下で24時間乾燥することにより樹脂粒子を得た(乾燥工程)。
【0167】
得られた樹脂粒子は、多孔質の樹脂粒子(多孔質樹脂粒子)であり、得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、5μmであった。
【0168】
[実施例6]
脱イオン水1000gに、無機系分散安定剤としての第三リン酸カルシウム50gと、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.05gとを加えて水相とした。一方、メタクリル酸メチル80g(単量体混合物全体に対して、20重量%)と、(メタ)アクリル系架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート320g(単量体混合物全体に対して、80重量%)と、有機溶剤としての酢酸エチル(沸点77℃)500g(単量体混合物100重量部に対して、125重量部)と、重合開始剤としての過酸化ラウロイル1gとの混合液を調製して油相とした。水相と油相とを混合し、分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型」)にて回転数5000rpmで、前記水相中に前記油相の液滴を分散させて、分散液を得た。この分散液を、攪拌機及び温度計を備えた重合器に入れ、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで加温し、懸濁重合を開始した。そして、内温を70℃で8時間保持することにより、樹脂粒子を含む懸濁液を得た(重合工程)。
【0169】
この樹脂粒子を含む懸濁液を、80℃、0.027MPaの条件下で蒸留して、酢酸エチルを系外に除去した(蒸留工程)。
【0170】
この後、20℃まで冷却し、塩酸を加えて第三リン酸カルシウムを分解した後、ブフナー漏斗にて得られた樹脂粒子を濾別し、続いて、樹脂粒子をイオン交換水にて洗浄した(分解除去工程)。
【0171】
洗浄した樹脂粒子を90℃、0.008Maの減圧下で24時間乾燥することにより樹脂粒子を得た(乾燥工程)。
【0172】
得られた樹脂粒子は、多孔質の樹脂粒子(多孔質樹脂粒子)であり、得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、9μmであった。
【0173】
[比較例1]
脱イオン水1000gに、無機系分散安定剤としての第三リン酸カルシウム50gと、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.05gとを加えて水相とした。一方、メタクリル酸メチル200g(単量体混合物全体に対して、67重量%)と、(メタ)アクリル系架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート100g(単量体混合物全体に対して、33重量%)と、有機溶剤としての酢酸エチル(沸点77℃)500g(単量体混合物100重量部に対して、167重量部)と、重合開始剤としての過酸化ラウロイル1gとの混合液を調製して油相とした。水相と油相とを混合し、分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型」)にて回転数5000rpmで、前記水相中に前記油相の液滴を分散させて、分散液を得た。この分散液を、攪拌機及び温度計を備えた重合器に入れ、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで加温し、懸濁重合を開始した。そして、内温を70℃で8時間保持することにより、樹脂粒子を含む懸濁液を得た(重合工程)。
【0174】
この樹脂粒子を含む懸濁液を、80℃、0.027MPaの条件下で蒸留して、酢酸エチルを系外に除去した(蒸留工程)。
【0175】
この後、20℃まで冷却し、塩酸を加えて第三リン酸カルシウムを分解した後、ブフナー漏斗にて得られた樹脂粒子を濾別し、続いて、樹脂粒子をイオン交換水にて洗浄した(分解除去工程)。
【0176】
洗浄した樹脂粒子を90℃、0.008Maの減圧下で24時間乾燥することにより樹脂粒子を得た(乾燥工程)。
【0177】
得られた樹脂粒子は、多孔質の樹脂粒子(多孔質樹脂粒子)であり、得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、10μmであった。
【0178】
[比較例2]
脱イオン水1000gに、無機系分散安定剤としての第三リン酸カルシウム50gと、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.05gとを加えて水相とした。一方、メタクリル酸メチル200g(単量体混合物全体に対して、50重量%)と、(メタ)アクリル系架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート200g(単量体混合物全体に対して、50重量%)と、重合開始剤としての過酸化ラウロイル1gとの混合液を調製して油相とした。水相と油相とを混合し、分散機(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型」)にて回転数5000rpmで、前記水相中に前記油相の液滴を分散させて、分散液を得た。この分散液を、攪拌機及び温度計を備えた重合器に入れ、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで加温し、懸濁重合を開始した。そして、内温を70℃で8時間保持することにより、樹脂粒子を含む懸濁液を得た(重合工程)。
【0179】
この樹脂粒子を含む懸濁液を、20℃まで冷却し、塩酸を加えて第三リン酸カルシウムを分解した後、ブフナー漏斗にて得られた樹脂粒子を濾別し、続いて、イオン交換水にて洗浄を行った(分解除去工程)。
【0180】
洗浄した樹脂粒子を90℃、0.008Maの減圧下で24時間乾燥することにより樹脂粒子を得た(乾燥工程)。
【0181】
得られた樹脂粒子は、孔のない中実粒子であり、得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、6μmであった。
【0182】
実施例1〜6及び比較例1〜2の樹脂粒子について、油相の組成、単量体混合物中における各単量体(メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル系架橋性単量体)の含有率、有機溶剤の単量体混合物100重量部に対する使用量、比表面積の測定結果、細孔容積の測定結果、平均細孔径の測定結果、熱分解開始温度の測定結果、残存メタクリル酸メチル量の測定結果、重合開始剤残渣量の測定結果、残存金属量の測定結果を、以下の表1に示す。なお、表1において、実施例1、3、4、及び6並びに比較例1〜2については、重合開始剤として、過酸化ラウロイルを使用して樹脂粒子を製造したため、上述の「過酸化ラウロイルの残渣量の測定方法」により測定した過酸化ラウロイル量を重合開始剤残渣量としている。また、実施例2については、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリルを使用して樹脂粒子を製造したため、上述の「アゾビスイソブチロニトリルの残渣量の測定方法」により測定したアゾビスイソブチロニトリル量を重合開始剤残渣量としている。さらに、また、実施例5については、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)を使用して樹脂粒子を製造したため、上述の「2,2’−アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)の残渣量の測定方法」により測定した2,2’−アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)量を重合開始剤残渣量としている。また、比較例2の樹脂粒子は孔のない中実粒子であるため、比較例2の樹脂粒子についての細孔容積及び平均細孔径の測定は実施しなかった。
【0183】
【表1】
【0184】
表1に示す結果より、実施例1〜6の樹脂粒子は、130〜180m2/g(より、具体的には、132〜178m2/g)の比表面積と、0.3〜0.7ml/g(より具体的には、0.44〜0.65ml/g)の細孔容積と、13〜16nmの平均細孔径(より具体的には、14〜16nm)とを有する多孔質の樹脂粒子(多孔質樹脂粒子)であることが認められた。また、比較例1の樹脂粒子は、実施例1〜6の樹脂粒子と比べて、比表面積が小さく、多孔度の低い樹脂粒子であり、比較例2の樹脂粒子は、孔を有していないことが認められた。
【0185】
また、実施例1〜6の樹脂粒子は、実施例1〜6の樹脂粒子よりも比表面積の小さい比較例1及び2の樹脂粒子と比べて、熱分解開始温度が高い樹脂粒子であり、耐熱性の高い樹脂粒子であることが認められた。
【0186】
具体的には、(メタ)アクリル系架橋性単量体の含有率が50重量%〜90重量%(より具体的には、50重量%〜80重量%)の範囲内にある単量体混合物と、有機溶剤とを使用して製造した実施例1〜6の樹脂粒子の熱分解開始温度は、260℃以上であり、実施例1〜6の樹脂粒子は、耐熱性に優れたものであることが認められた。これに対して、(メタ)アクリル系架橋性単量体の含有率が50重量%未満(より具体的には、33重量%)の単量体混合物を使用して製造した比較例1及び有機溶剤を使用せずに製造した比較例2の樹脂粒子の熱分解開始温度は、255℃以下であり、比較例1及び2の樹脂粒子は、実施例1〜6の樹脂粒子と比べて、耐熱性に劣るものであることが認められた。
【0187】
また、実施例1〜6の樹脂粒子の残存メタクリル酸メチル量は、20ppm以下であり、比較例2の樹脂粒子の残存メタクリル酸メチル量よりも少ないことが認められた。
【0188】
また、実施例1〜6の樹脂粒子の重合開始剤残渣量は、定量下限(100ppm)未満であり、比較例2の樹脂粒子の重合開始剤残渣量よりも少ないことが認められた。
【0189】
さらに、実施例1〜6の樹脂粒子の残存金属量は100ppm以下であり、実施例1〜6の樹脂粒子中には、無機系分散安定剤由来の金属がほとんど残存していないことが認められた。
【0190】
以上の通り、本発明の多孔質樹脂粒子の製造方法により製造された実施例1〜6の多孔質樹脂粒子、即ち、本発明の多孔質樹脂粒子は、光拡散性能を十分に発揮し得る十分な多孔度を有し(具体的には、130〜180m2/gの比表面積と、0.3〜0.7ml/gの細孔容積と、13〜16nmの平均細孔径とを有し)、且つ、耐熱性に優れたものであることが認められた。
【0191】
[実施例7:外用剤(パウダーファンデーション)の製造例]
実施例2で得た樹脂粒子(多孔質樹脂粒子)10重量部と、色材原料としてのタルク42重量部と、粘土鉱物類としてのセリサイト17重量部と、色材原料としての酸化チタン10重量部と 、色材原料としての赤色酸化鉄0.6重量部と、色材原料としての黄色酸化鉄1重量部と、色材原料としての黒色酸化鉄0.1重量部と、炭化水素としての流動パラフィン2重量部と、脂肪酸エステルとしてのミリスチン酸オクチルデシル3.5重量部と、界面活性剤としてのイソステアリン酸ソルビタン0.5重量部と、高級アルコールとしての2−オクチルドデカノール3.0重量部との配合処方で各種原料を用意した。そして、樹脂粒子と、タルクと、セリサイトと、酸化チタンと、赤色酸化鉄と、黄色酸化鉄と、黒色酸化鉄とをヘンシェルミキサーで混合し、これに、流動パラフィンと、ミリスチン酸オクチルデシルと、イソステアリン酸ソルビタンと、2−オクチルドデカノールとを混合溶解したものを加えて均一に混合した。これを、公知の方法により、粉砕して篩いに通して粉体を得た。この粉体を、公知の方法により、金皿に圧縮成型してパウダーファンデーションを得た。
【0192】
[実施例8:外用剤(乳化型ファンデーション)の製造例]
実施例2で得た樹脂粒子(多孔質樹脂粒子)20.0重量部と、粘土鉱物類としてのセリサイト6.0重量部と、色材原料としての酸化チタン3.0重量部と、顔料(適量)とをヘンシェルミキサーで混合し、粉末部を調製した。
【0193】
そして、粉末部とは別に、精製水50.2重量部に、ポリエチレングリコール(ポリエチレングリコール4000)5.0重量部と、pH調整剤としてのトリエタノールアミン1.0重量部と、プロピレングリコール5.0重量部と、粘土鉱物類としてのVEEGUM(登録商標、バンダービルト社製)0.5重量部とを加え加熱溶解した。これにより得られた溶液に先に調製した前記粉末部を加え、ホモミクサーで粉末を均一に分散させた後、70℃に保温し、水相成分を得た。
【0194】
次いで、前記水相成分とは別に、高級脂肪酸としてのステアリン酸2.0重量部と、高級アルコールとしてのセチルアルコール0.3重量部と、炭化水素としての流動パラフィン20.0重量部と、香料(適量)と、防腐剤(適量)とを混合して加熱溶解した後、70℃に保温し、油相成分を得た。
【0195】
得られた油相成分に前記水相成分を加えて、予備乳化を行い、ホモミクサーで均一に乳化・分散後、かきまぜながら冷却させて乳化型ファンデーションを得た。
【0196】
[実施例9:外用剤(ボディパウダー)の製造例]
実施例2で得た樹脂粒子(多孔質樹脂粒子)50.0重量部と、粘土鉱物類としてのマイカ25.0重量部と、粘土鉱物類としてのセリサイト25.0重量部とをヘンシェルミキサーで混合した後、Retsch社製のロータースピードミルZM−100を用いて、1回粉砕(12本刃ローター使用、1mmスクリーン装着、回転数14000rpm)し、ボディパウダーを得た。
【0197】
[比較例3:外用剤(パウダーファンデーション)の比較製造例]
実施例2で得た樹脂粒子に代えて、比較例2で得た樹脂粒子を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、パウダーファンデーションを得た。
【0198】
[比較例4:外用剤(乳化型ファンデーション)の比較製造例]
実施例2で得た樹脂粒子に代えて、比較例2で得た樹脂粒子を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、パウダーファンデーションを得た。
【0199】
[比較例5:外用剤(ボディパウダー)の比較製造例]
実施例2で得た樹脂粒子に代えて、比較例2で得た樹脂粒子を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、ボディパウダーを得た。
【0200】
〔外用剤の官能試験〕
上記した実施例7〜9及び比較例3〜5の外用剤に対して、パネラー10名による官能試験を行った。この試験におけるパウダーファンデーションの評価項目は、「ソフトフォーカス性」、「化粧もち」、「伸展性」及び「やらかさ」であり、乳化型ファンデーションの評価項目は「ソフトフォーカス性」、「化粧もち」、及び「なめらかさ」についてであり、ボディパウダーの評価項目は、「ソフトフォーカス性」、「伸展性」及び「さらさら感」である。これらの評価項目について、次のような基準で4段階評価を行った。
【0201】
×・・・パネラー10名中、2名以下が効果ありと回答
△・・・パネラー10名中、3〜5名が効果ありと回答
〇・・・パネラー10名中、6〜8名が効果ありと回答
◎・・・パネラー10名中、9名以上が効果ありと回答
上記した実施例7〜9及び比較例3〜5の外用剤について、官能試験の結果を以下の表2に示す。
【0202】
【表2】
【0203】
表2に示すように、実施例7のパウダーファンデーションは、比較例のパウダーファンデーションに比べて、化粧もちが良好であり、肌への伸展性も高く、やわらかな感触を有するものであり、また、ソフトフォーカス性が高く、素肌感のある自然な仕上がりを与えるものと認められた。
【0204】
また、実施例8の乳化型ファンデーションは、比較例4の乳化型ファンデーションと比べて、化粧もちが良好で、なめらかな感触を有しており、ソフトフォーカス性が高く、素肌感のある自然な仕上がりを与えるものであることが認められた。
【0205】
また、実施例9のボディパウダーは、比較例5のボディパウダーと比べて、肌への伸展性が高く、肌をさらさらな状態に整えることができるものであり、また、ソフトフォーカス性が高く、素肌感のある自然な仕上がりを与えるものと認められた。
【0206】
[実施例10:光学フィルムの製造例]
実施例2で得られた樹脂粒子(多孔質樹脂粒子)5重量部と、バインダー樹脂としてのアクリル系樹脂(商品名:メジウム VM(K)、大日精化工業株式会社製、固形分32重量%)29重量部と、トルエン41重量部とを混合し、これを遠心攪拌機により3分間攪拌して、コーティング剤を得た。この後、得られたコーティング剤を、基材としてのPETフィルム上に50μmコーターを用いて塗工した。得られたフィルムを70℃に保った乾燥機にて1時間乾燥させることにより光学フィルムを得た。得られた光学フィルムのヘイズ、全光線透過率およびグロスを測定した。結果を表3に示す。
【0207】
[実施例11:光学フィルムの製造例]
実施例2で得られた樹脂粒子(多孔質樹脂粒子)1重量部と、バインダー樹脂としてのアクリル系樹脂(商品名:メジウム VM(K)、大日精化工業株式会社製、固形分32重量%)29重量部と、トルエン41重量部とを混合し、これを遠心攪拌機により3分間攪拌することにより得られたコーティング剤を用いた以外は実施例10と同様にして光学フィルムを得た。得られた光学フィルムのヘイズ、全光線透過率およびグロスを測定した。この結果を表4に示す。
【0208】
[比較例6:光学フィルムの比較製造例]
実施例2の樹脂粒子に代えて、比較例2の樹脂粒子を用いた以外は実施例10と同様にして光拡散フィルムを得た。得られたフィルムのヘイズ、全光線透過率およびグロスを測定した。結果を表3に示す。
【0209】
[比較例7:光学フィルムの比較製造例]
実施例2の樹脂粒子に代えて、比較例2の樹脂粒子を用いた以外は実施例11と同様にして光拡散フィルムを得た。得られたフィルムのヘイズ、全光線透過率およびグロスを測定した。結果を表4に示す。
【0210】
〔全光線透過率及びヘイズの測定方法〕
実施例10及び11、並びに比較例6及び7で得られた光学フィルムのヘイズおよび全光線透過率を、日本電色工業株式会社製のヘイズメーター「NDH−4000」を使用して測定した。全光線透過率の測定はJIS K 7361−1に、ヘイズの測定はJIS K 7136にそれぞれ従って実施した。なお、表3及び4に示すヘイズおよび全光線透過率は、2個の測定サンプルの測定値の平均値である(測定サンプル数n=2)。ヘイズの値は、光学フィルムを透過した光(透過光)の拡散性が高い程、高くなる。
【0211】
〔グロスの測定方法〕
実施例10及び11、並びに比較例6及び7で得られた光学フィルムのグロスを株式会社堀場製作所製のグロスチェッカ(光沢計)「IG−331」を使用して、測定した。具体的には、JIS Z8741に記載の方法に準拠して、上記グロスチェッカ(光沢計)「IG−331」により、光学フィルムの60°でのグロスを測定した。グロスの値は、光学フィルムの表面(具体的には、コーティング剤が塗工されて形成された塗膜表面)で反射した光の拡散性が高い程、低くなり、艶消し性がよいことを意味する。
【0212】
【表3】
【0213】
【表4】
【0214】
実施例10の光学フィルムの製造に用いたコーティング剤に含まれる樹脂粒子の含有率は、比較例の光学フィルムの製造に用いたコーティング剤に含まれる樹脂粒子の含有率と同じである。表3に示すように、樹脂粒子として実施例2で得られた樹脂粒子を用いて製造された実施例10の光学フィルムは、樹脂粒子として、比較例2の樹脂粒子を用いて製造された比較例6の光学フィルムと比べて、ヘイズが高く、グロスが低いものであった。つまり、実施例10の光学フィルムは、比較例6の光学フィルムと比べて、光拡散性に優れ、艶消し性に優れるものであることが認められた。
【0215】
また、実施例11の光学フィルムの製造に用いたコーティング剤に含まれる樹脂粒子の含有率は、比較例7の光学フィルムの製造に用いたコーティング剤に含まれる樹脂粒子の含有率と同じである。表4に示すように、樹脂粒子として、実施例2で得られた樹脂粒子を用いて製造された実施例11の光学フィルムは、樹脂粒子として、比較例2の樹脂粒子を用いて製造された比較例7の光学フィルムと比べて、ヘイズ及び全光線透過率が高く、グロスが低いものであった。つまり、実施例11の光学フィルムは、比較例7の光学フィルムと比べて、光拡散性に優れ、艶消し性に優れるものであることが認められた。
【0216】
以上のことから、実施例2で得られた樹脂粒子は、比較例2の樹脂粒子と比べて、光学フィルムに優れた光拡散性と艶消し性を付与することができるものであると言える。
【産業上の利用可能性】
【0217】
本発明の多孔質樹脂粒子は、例えば、塗料、紙用コーティング剤、情報記録紙用コーティング剤、又は光学フィルム等の光学部材用コーティング剤等として用いられるコーティング剤(塗布用組成物)の添加剤(艶消し剤、塗膜軟質化剤、意匠性付与剤等);光拡散体(照明カバー、光拡散板、光拡散フィルム等)等の成形体を製造するための樹脂組成物に配合される光拡散剤;食品包装用フィルム等のフィルムのブロッキング防止剤;化粧品等の外用剤用の添加剤(滑り性向上、又は、シミやシワ等の肌の欠点補正のための添加剤)等のような外用剤の原料として、利用可能である。