特許第6029508号(P6029508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029508
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】車両用電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20161114BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20161114BHJP
   H01R 13/73 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   H02G3/16
   H05K5/02 H
   H01R13/73 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-64439(P2013-64439)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-192962(P2014-192962A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153349
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 茂
(72)【発明者】
【氏名】岸 頼之
(72)【発明者】
【氏名】嘉代 裕夫
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−183542(JP,A)
【文献】 特開2000−294312(JP,A)
【文献】 特開平11−126654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H01R 13/73
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外部コネクタを実装したプリント基板と、前記プリント基板を収容するケースと、を備える車両用電子制御装置において、
前記ケースの載置面において、キー部を設け
前記ケースは、袋構造を成し、前記キー部は、前記ケースの前記袋構造の開口端部に形成されることを特徴とする車両用電子制御装置。
【請求項2】
前記キー部は、前記車両用電子制御装置の工場検査時において、前記車両用電子制御装置が載置されるパレットの載置面に設けられたキー溝に合致するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電子制御装置に関し、特に、コネクタ等が実装された基板が収容されるケースを有する車両用電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動二輪車や自動四輪車等の車両に用いられる車両用電子制御装置においては、電力線や信号線を効率的に接続するために、半導体素子等を実装する基板にコネクタを実装すると共に、不要な水分や埃等の侵入を防ぐために、ケース内に樹脂を充填しながら収容する構成が提案されているようになっている。
【0003】
また、かかる車両用電子制御装置においては、設計コストや金型費等の製造コストを低減すべく様々な仕向けに対応するように、プリント基板のサイズ及びプリント基板を収容するケースを標準化する技術が提案されるようになっている。
【0004】
かかる状況下において、特許文献1は、電子制御装置の筐体構造に関し、様々なプリント基板サイズに対応することができるケースのプリント基板を係止するための係止部材を備え、これらは、ケースを標準化する一つの技術として開示されている。
【0005】
また、特許文献2は、電子制御装置に関し、自動二輪車用電子制御装置として、プリント基板をケースに収容し、ケース内に樹脂を充填した構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−284375公報
【特許文献2】特開2011−70853公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者の検討によれば、最近では、更なるコスト低減のために、特許文献1が開示する構成を越えて、プリント基板サイズや外部コネクタを標準化することが行われ始めている。
【0008】
ここで、本発明者が更に検討するところによれば、特許文献2のような車両用電子制御装置において、外部コネクタとケースを標準化する、即ち、共用化すると、見た目では、これらの区別は全くできなくなる。
【0009】
例えば、仕向けA用の仕様のプリント基板が収容された車両用電子制御装置なのか、それとも仕向けB用の仕様のプリント基板が収容された車両用電子制御装置なのか、これらの間の区別は、見た目では全くつかないことになる。
【0010】
よって、このような場合には、仕向けA用の車両用電子制御装置と仕向けB用の車両用電子制御装置とを区別するために、それらのケースには、各々の仕向けを示すマークが刻印されること等が必要となる。
【0011】
しかしながら、本発明者の検討によれば、作業者がそれらのマークを細かな目視のみで判別するが故に、万が一ヒューマンエラーが起きた場合には、仕向けA用の車両用電子制御装置を仕向けB用の車両用電子制御装置として、そのまま出荷してしまう可能性も無き
にしもあらずであり、改良の余地がある。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、車両用電子制御装置を標準化した場合であっても、その仕向けの判別を細かな目視のみによらないで可能にし、かつ、その製造コストを抑制することができる車両用電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の目的を達成すべく、本発明は、少なくとも外部コネクタを実装したプリント基板と、前記プリント基板を収容するケースと、を備える車両用電子制御装置において、前記ケースの載置面において、キー部を設け、前記ケースは、袋構造を成し、前記キー部は、前記ケースの前記袋構造の開口端部に形成される車両用電子制御装置であることを第1の局面とする。
【0014】
また本発明は、かかる第1の局面に加えて、前記キー部は、前記車両用電子制御装置の工場検査時において、前記車両用電子制御装置が載置されるパレットの載置面に設けられたキー溝に合致するように形成されていることを第2の局面とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の局面によれば、少なくとも外部コネクタを実装したプリント基板と、プリント基板を収容するケースと、を備え、ケースの載置面において、キー部を設けたことにより、製造時等に、車両用電子制御装置をパレットに載置した際に、車両用電子制御装置の載置面のキー部とパレットのキー溝とが一致していれば、車両用電子制御装置の載置面は、パレットの載置面に対して傾くことなく載置されるため、単に対応するパレットに車両用電子制御装置を載置するだけで、その仕向けが所定のものと合致しているか判断することができ、車両用電子制御装置を標準化した場合であっても、その仕向けの判別を細かな目視のみによらないで可能にし、かつ、その製造コストを抑制することができる。併せて、本発明の第1の局面によれば、ケースが、袋構造を成し、キー部が、ケースの袋構造の開口端部に形成されるものであることにより、ケースを成形する際の金型を複雑化することなくキー部を形成することができると共に、成形時の脱型の作業性も低下されることなく行うことができる。更に、ケースの開口端部にキー部を形成することにより、ケースの開口端部を補強することも可能となるため、ケースの開口周辺部の不要な撓みを低減することができる。
【0017】
本発明の第2の局面によれば、キー部が、車両用電子制御装置の工場検査時において、車両用電子制御装置が載置されるパレットの載置面に設けられたキー溝に合致するように形成されていることにより、出荷前の検査時に、車両用電子制御装置が傾くことなく載置されるため、検査用コネクタと外部コネクタとが嵌合することができるので、仕向けが所定のものと合致していることを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態における車両用電子制御装置のケースを示す図であって、図1(a)から図1(c)は、各々、本実施形態における車両用電子制御装置のケースの上方から下方を見た斜視図、同ケースの下方から上方を見た斜視図、及び同ケースの側面図であり、また、図1(d)から図1(f)は、各々、本実施形態における比較例の車両用電子制御装置のケースの上方から下方を見た斜視図、同ケースの下方から上方を見た斜視図、及び同ケースの側面図である。
図2】本実施形態の検査時における車両用電子制御装置の状態を示す図であって、図2(a)は、検査時における組付けが正規である場合の車両用電子制御装置の状態を示す図であり、また、図2(b)は、検査時における組付けが正規でない場合の車両用電子制御装置の状態を示す図である。
図3】本実施形態における車両用電子制御装置の部品組み合わせパターン及びそれに対応した検査時における車両用電子制御装置の状態を示す図である。
図4】本実施形態における車両用電子制御装置を示す斜視図であって、図4(a)は、本実施形態における比較例の車両用電子制御装置を示す斜視図であり、図4(b)から図4(d)は、本実施形態における種々の変形例を含む車両用電子制御装置のケースのキー部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における車両用電子制御装置につき、詳細に説明する。
【0021】
図1は、本実施形態における車両用電子制御装置のケースを示す図であって、図1(a)から図1(c)は、各々、本実施形態における車両用電子制御装置のケースの上方から下方を見た斜視図、同ケースの下方から上方を見た斜視図、及び同ケースの側面図であり、また、図1(d)から図1(f)は、各々、本実施形態における比較例の車両用電子制御装置のケースの上方から下方を見た斜視図、同ケースの下方から上方を見た斜視図、及び同ケースの側面図である。図2は、本実施形態の検査時における車両用電子制御装置の状態を示す図であって、図2(a)は、検査時における組付けが正規である場合の車両用電子制御装置の状態を示す図であり、また、図2(b)は、検査時における組付けが正規でない場合の車両用電子制御装置の状態を示す図である。図3は、本実施形態における車両用電子制御装置の部品組み合わせパターン及びそれに対応した検査時における車両用電子制御装置の状態を示す図である。また、図4は、本実施形態における車両用電子制御装置を示す斜視図であって、図4(a)は、本実施形態における比較例の車両用電子制御装置を示す斜視図であり、図4(b)から図4(d)は、本実施形態におけるキー部の種々の変形例を含む車両用電子制御装置を示す斜視図である。
【0022】
図1から図4に示すように、本実施形態における車両用電子制御装置1は、典型的にはECU(Electronic Control Unit)であり、外部の他の機器側に電気的に接続するコネクタ2と、コネクタ2を実装するプリント基板3と、コネクタ2をプリント基板3に実装した状態でそれらを収容して固定するケース4と、を備えている。
【0023】
具体的には、コネクタ2は、典型的には樹脂製のハウジング10に端子30が装着された状態で、プリント基板3に対し実装自在なものである。コネクタ2のハウジング10は、各々図示を省略する外部機器に接続する相手方コネクタが挿入自在な挿入凹部10aを備えている。
【0024】
プリント基板3は、コネクタ2や図示を省略する半導体素子等を実装し、典型的にはガラスエポキシ樹脂製のプリント配線基板である。
【0025】
ここで、特に、図1(a)から図1(c)に示すように、ケース4は、典型的には樹脂製であり、底壁20と、底壁20に対向した上壁22と、互いに対向して底壁20及び上壁22を接続する一対の側壁24及び25と、を備えて、これらで収容室26を画成している。収容室26の一端部側は、ケース4の後壁27で塞がれる一方で、収容室26の他端部側は、ケース4外に開口した開口部を成し、かかる収容室26を有するケース4は、いわば袋構造を呈している。
【0026】
ケース4の収容室26内には、コネクタ2や半導体装置等を実装したプリント基板3が収容されて固定されるが、半導体装置等のサイズよりもコネクタ2のサイズの方が大きいので、これに対応して、ケース4の収容室26の開口部側において、上壁22が底壁20からより離間されており、上壁22は、典型的には段付き形状を呈することになる。
【0027】
ケース4の底壁20の下側の壁面(下側とは、例えば図1(a)及び図1(c)においての下方側をいう)は、詳細は後述する検査装置40のパレット42に載置するケース4の載置面となる。かかるケース4の載置面には、それから下方に突設された凸部であるキー部Kが、ケース4の一部としてそれと一体的に設けられている。
【0028】
更に、ケース4においては、コネクタ2や半導体装置等をプリント基板3に実装した状態で収容した収容室26内に樹脂Mが充填されて、収容室26内に不要な水分や埃等が侵入しないように封止されている。
【0029】
一方で、本実施形態における比較例の車両用電子制御装置100については、その仕向けの違いにより、その仕様が、本実施形態における車両用電子制御装置1のものとは異なるものである。
【0030】
具体的には、本実施形態における比較例の車両用電子制御装置100は、本実施形態における車両用電子制御装置1に対して、仕様が異なる半導体素子等を実装するプリント基板103、及びキー部を有さないケース104という各々の構成のみが異なり、残余の構成は同一である。但し、実施形態における比較例の車両用電子制御装置100のプリント基板103と、実施形態における車両用電子制御装置1のプリント基板3とは、それらのサイズ等を共通にしており、これらは、共用化されたコネクタ2や互いに仕様が異なる半導体素子等を実装した状態で、ケース4及びケース104のいずれに対しても装着されることが可能である。
【0031】
また、特に、図1(d)から図1(f)に示すように、本実施形態における比較例の車両用電子制御装置100のケース104には、キー部が設けられてはおらず、ケース104の載置面である底壁20の下側の壁面は、単なる平坦面となっている。
【0032】
さて、本実施形態における車両用電子制御装置1は、工場から出荷される前に、工場内で出荷前の検査を受けることが必要になる。
【0033】
具体的には、図2(a)及び図2(b)に示すように、工場出荷前の検査工程では、検査装置40のパレット42、又は検査装置140のパレット142上に車両用電子制御装置1を載置して、それに検査装置40又は140の検査用コネクタ44を接続し、車両用電子制御装置1の電気的な機能検査を行うことになる。
【0034】
ここで、本実施形態における車両用電子制御装置1においては、そのケース4の載置面にキー部Kが設けられているから、ケース4が、それに合致する検査装置のパレット上に載置された場合にのみ、正規の検査用の姿勢を取ることができて、実際に工場出荷前の電気的な検査を実行されることが可能となる。
【0035】
例えば、図2(a)に示すように、本実施形態における車両用電子制御装置1が、パレット42の載置面にキー溝42aが設けられた検査装置40に送られた場合には、ケース4のキー部Kがパレット42のキー溝42aに合致するためその中に侵入することができ、これに伴って、検査用コネクタ44が、コネクタ2の挿入凹部10aに侵入することができて、検査用コネクタ44の図示を省略する端子がコネクタ2の端子30に電気的に接続され、車両用電子制御装置1は、工場出荷前の電気的な検査を実行されることが可能と
なる。
【0036】
一方で、図2(b)に示すように、本実施形態における車両用電子制御装置1が、パレット142の載置面が単に平坦面である検査装置140に送られた場合には、ケース4のキー部Kがパレット142の載置面に乗り上げてしまい、検査用コネクタ44が、コネクタ2の挿入凹部10aに侵入することができず、車両用電子制御装置1は、工場出荷前の電気的な検査を実行されることが不可能となる。
【0037】
このような図2(b)で示す状態が発生する典型例は、本実施形態における比較例の車両用電子制御装置100で使用するプリント基板103に対して、本実施形態における車両用電子制御装置1で使用するケース4が誤って組み合わされた状態で、本実施形態における比較例の車両用電子制御装置100で使用する検査装置140に送られたような場合である。
【0038】
ここで、図3を参照して、本実施形態における車両用電子制御装置1及び本実施形態における比較例の車両用電子制御装置100における工場出荷前の検査工程について、より詳しく説明する。また、説明の便宜上、本実施形態における車両用電子制御装置1が組み立てられて、パレット42及び検査用コネクタ44を備える検査装置40に送られる検査工程を第1の検査工程と呼び、本実施形態における比較例の車両用電子制御装置100が組み立てられて、パレット142及び検査用コネクタ44を備える検査装置140に送られる検査工程を第2の検査工程と呼ぶことにする。また、第1の検査工程は、プリント基板3等が所定の仕様である第1の仕様に対応したもので、検査装置40は、かかる第1の仕様の電気的な特性等を検査するものとし、第2の検査工程は、プリント基板103等が別の所定の仕様である第2の仕様に対応したもので、検査装置140は、かかる第2の仕様の電気的な特性等を検査するものとする。
【0039】
まず、図3Aは、第2の検査工程において、コネクタ2等が実装されたプリント基板103(状態X1)がケース104(状態Y1)に収容されて固定された状態(状態X1Y1)で、検査装置140に送られた場合に相当し、かかる場合には、本実施形態における比較例の車両用電子制御装置100が、正規の状態で組み立てられているから、パレット142上のその姿勢は正規の水平状態となる。よって、この検査工程における作業者は、本実施形態における比較例の車両用電子制御装置100が正規の状態で組み立てられていることをその姿勢で明確に確認し得た後で(状態OK)、コネクタ2を検査用コネクタ44に装着して電気的に接続し必要な電気的な機能検査を行うことになる。
【0040】
次に、図3Bは、第2の検査工程において、コネクタ2等が実装されたプリント基板103(状態X1)が誤ってケース4(状態Y2)に収容されて固定された状態(状態X1Y2)で、検査装置140に送られた場合に相当し、かかる場合には、本実施形態における比較例の車両用電子制御装置100が、正規の状態で組み立てられておらず、ケース4の載置面にキー部Kを有しているから、パレット142上のその姿勢はコネクタ2側が上昇した正規でない傾斜状態となる。よって、この検査工程における作業者は、本実施形態における比較例の車両用電子制御装置100が正規の状態で組み立てられていないことをその姿勢で明確に確認し得て(状態NG)、かかる本実施形態における比較例の車両用電子制御装置100を不良品として排除し得ることになる。
【0041】
次に、図3Cは、第1の検査工程において、コネクタ2等が実装されたプリント基板3(状態X2)がケース4(状態Y2)に収容されて固定された状態(状態X2Y2)で、検査装置40に送られた場合に相当し、かかる場合には、本実施形態における車両用電子制御装置1が、正規の状態で組み立てられているから、ケース4の載置面に設けられたキー部Kがパレット42に設けられたキー溝42aに侵入して収容され、パレット42上の
その姿勢は正規の水平状態となる。よって、この検査工程における作業者は、本実施形態における車両用電子制御装置1が正規の状態で組み立てられていることをその姿勢で明確に確認し得た後で(状態OK)、コネクタ2を検査用コネクタ44に装着して電気的に接続し必要な電気的な機能検査を行うことになる。
【0042】
そして、図3Dは、第1の検査工程において、コネクタ2等が実装されたプリント基板3(状態X2)が誤ってケース104(状態Y1)に収容されて固定された状態(状態X2Y1)で、検査装置40に送られた場合に相当し、かかる場合には、本実施形態における車両用電子制御装置1が、正規の状態で組み立てられておらず、ケース104の載置面にキー部Kを有していないから、パレット42上のその姿勢はコネクタ2側が下降した正規でない傾斜状態となる。よって、この検査工程における作業者は、本実施形態における車両用電子制御装置1が正規の状態で組み立てられていないことをその姿勢で明確に確認し得て(状態NG)、かかる本実施形態における車両用電子制御装置1を不良品として排除し得ることになる。
【0043】
このように本実施形態における車両用電子制御装置1においては、ケース4の載置面に設けられたキー部Kにより、その組立状態の正規及び非正規に応じて、パレット42上のその姿勢が変化して、作業者が視認し得るものであるため、パレット42にキー溝42aを設けることは必須の構成ではないが、かかるキー溝42aを設けた場合には、ケース4の姿勢が水平になるため、コネクタ2を検査用コネクタ44に装着する作業がより容易になって、より好ましいものといえる。
【0044】
さて、以上のように本実施形態における車両用電子制御装置1は、ケース4の載置面にキー部Kを設けた構成を有するものであるが、かかるキー部Kについては、種々の変形例が考えられる。
【0045】
まず、図4(a)に示す本実施形態における比較例の車両用電子制御装置100においては、キー部は全く設けられていないのに対して、図4(b)に示す本実施形態における車両用電子制御装置1においては、ケース4の載置面に、それから下方に突設された凸部であるキー部Kが、ケース4の一部としてそれと一体的にその幅方向の全体にわたって設けられている。
【0046】
また、図4(c)に示す本実施形態における車両用電子制御装置1の構成例においては、ケース4の載置面に、それから下方に突設された凸部であるキー部K1が、ケース4の一部としてそれと一体的にそれに向かって左側端部に設けられている。
【0047】
また、図4(d)に示す本実施形態における車両用電子制御装置1の構成例においては、ケース4の載置面に、それから下方に突設された凸部であるキー部K2が、ケース4の一部としてそれと一体的にそれに向かって右側端部に設けられている。
【0048】
そして、図4(e)に示す本実施形態における車両用電子制御装置1の構成例においては、ケース4の載置面に、それから下方に突設された凸部であるキー部K3が、ケース4の一部としてそれと一体的にその幅方向の中央部に設けられている。
【0049】
このように本実施形態における車両用電子制御装置1の構成例においては、ケース4の載置面に設けられるキー部Kは、種々の形態を採り得るが、樹脂製のケース4の成形時の型割りの利便性や成形性、ケース4の補強性を加味すると、ケース4の載置面において、収容室26の開口部側の端部(例えば、図1(c)における左下端部)に対応して設けられていることが好ましい。
【0050】
なお、本実施形態における車両用電子制御装置1の構成においては、ケース4の載置面に、それから下方に突設された凸部であるキー部Kが、ケース4の一部としてそれと一体的に設けられているが、必要に応じて、キー部Kを別体として、ケース4の載置面に接合等することもできる。
【0051】
また、かかるキー部Kの縦断面の形状は、矩形状に限らず、三角状、半円状等、その他の形状であってもかまわない。
【0052】
また、本実施形態における車両用電子制御装置1及び比較例の車両用電子制御装置100においては、コネクタ2を完全に共通化しているが、例えば、検査用コネクタ44に整合する範囲内で、サイズを共通化したままで、仕様に応じて端子の配列を変更する等の変更を行ってもかまわない。
【0053】
また、検査用コネクタ44は、コネクタ2に整合する範囲内で、仕様に応じた検査を行うべく、検査装置40及び検査装置140において構成を変更してもかまわない。
【0054】
以上の構成によれば、少なくとも外部コネクタを実装したプリント基板3と、プリント基板3を収容するケース4と、を備え、ケース4の載置面において、キー部Kを設けたことにより、製造時等に、車両用電子制御装置1をパレット42に載置した際に、車両用電子制御装置1の載置面のキー部Kとパレット42のキー溝42aとが一致していれば、車両用電子制御装置1の載置面は、パレット42の載置面に対して傾くことなく載置されるため、単に対応するパレット42に車両用電子制御装置1を載置するだけで、その仕向けが所定のものと合致しているか判断することができ、車両用電子制御装置1を標準化した場合であっても、その仕向けの判別を細かな目視のみによらないで可能にし、かつ、その製造コストを抑制することができる。
【0055】
また、キー部Kが、車両用電子制御装置1の工場検査時において、車両用電子制御装置1が載置されるパレット42の載置面に設けられたキー溝42aに合致するように形成されていることにより、出荷前の検査時に、車両用電子制御装置1が傾くことなく載置されるため、検査用コネクタ44と外部コネクタ2とが嵌合することができるので、仕向けが所定のものと合致していることを判断することができる。
【0056】
また、ケース4が、袋構造を成し、キー部Kが、ケース4の袋構造の開口端部に形成されるものであることにより、ケース4を成形する際の金型を複雑化することなくキー部Kを形成することができると共に、成形時の脱型の作業性も低下されることなく行うことができる。更に、ケース4の開口端部にキー部Kを形成することにより、ケース4の開口端部を補強することも可能となるため、ケース4の開口周辺部の不要な撓みを低減することができる。
【0057】
なお、本発明は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明においては、車両用電子制御装置を標準化した場合であっても、その仕向けの判別を細かな目視のみによらないで可能にし、かつ、その製造コストを抑制することができる車両用電子制御装置を提供することができるものであり、その汎用普遍的な性格から車両等に使用される電子制御装置に広範に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0059】
1…車両用電子制御装置
2…コネクタ
3…プリント基板
4…ケース
10…ハウジング
10a…挿入凹部
20…底壁
22…上壁
24、25…側壁
26…収容室
27…後壁
30…端子
40…検査装置
42…パレット
42a…キー溝
44…検査用コネクタ
100…車両用電子制御装置
103…プリント基板
104…ケース
140…検査装置
142…パレット
K、K1、K2、K3…キー部
M…樹脂
図1
図2
図3
図4