(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電力管理システムの構成を示す図である。
電力管理システムは、例えば、建物(住戸)内に設置された各電気機器が消費した電力、並びに住戸における発電電力及び蓄電電力を集計することにより、一括的に電力を管理するシステムである。
図1に示すように、電力管理システムは、住宅内電力制御システム2、住宅内蓄電システム3、太陽光発電システム4、及び、複数の電気機器(誘導加熱調理器5、エアコン6、照明7、冷蔵庫8)によって構成される。
住宅内電力制御システム2、住宅内蓄電システム3、太陽光発電システム4、誘導加熱調理器5、エアコン6、照明7、冷蔵庫8は、それぞれ、商用電源9の電力を住宅内に供給する電力線1に接続されている。
【0010】
住宅内電力制御システム2は、いわゆるHEMS(Home Energy Management System)である。住宅内電力制御システム2は、太陽光発電システム4の発電状況、商用電源9から住戸内に供給される電力使用量をモニターする。そして、住宅内蓄電システム3への充放電制御指令、及び、住宅内の各電気機器のそれぞれへの最大電力使用量に関する情報を与える。
住宅内蓄電システム3は、太陽光発電システム4によって発電された電力、及び商用電源9からの余剰電力等を蓄電する。
【0011】
各電気機器(誘導加熱調理器5、エアコン6、照明7、冷蔵庫8)は、商用電源9からの電力、並びに、太陽光発電システム4によって発電された電力及び住宅内蓄電システム3に蓄えられた電力のうちの少なくとも1つから電力が供給され、動作によって電力が消費される。また、各電気機器は、住宅内電力制御システム2から取得した、最大電力使用量に関する情報に従って動作する。
なお、本実施の形態1では、電気機器として、誘導加熱調理器5、エアコン6、照明7、及び冷蔵庫8を設ける場合を説明するが、本発明はこれに限定されない。誘導加熱調理器5を少なくとも含む任意の電気機器を備える構成であれば良い。
【0012】
ここで、住宅内電力制御システム2の動作の概略を説明する。
住宅内電力制御システム2は、太陽光発電システム4の発電電力に応じて、各電気機器の最大電力使用量を設定する。
例えば、晴天等で太陽光発電システム4の発電電力が大きい場合は、各電気機器への最大電力使用量の指令値を大きく設定する。一方、夜間及び天候が悪い場合など、太陽光発電システム4の発電電力が小さい場合には、各電気機器への最大電力使用量を小さく設定する。このように、極力、商用電源9からの電力供給を抑えるように制御し、節電を行う。
また例えば、災害等で停電となった場合は、最大電力使用量を更に小さくして、太陽光発電システム4と住宅内蓄電システム3の電力のみで居住者が長期間生活できるようにする。また、電力会社との売電契約の形態によっては、太陽光発電の売電電力量を増やすために、晴天時は、最大電力使用量を夜間より小さくする場合もある。
【0013】
以上のように住宅内電力制御システム2から各電気機器へ与えられる最大電力使用量は、太陽光発電システム4の発電状況、住宅内蓄電システム3の蓄電電力、及び商用電源9からの電力供給の状況などにより、様々な値をとる可能性がある。
【0014】
なお、住宅内電力制御システム2から各電気機器へ与えられる最大電力使用量に関する情報としては、最大電力使用量の指示値でも良いし、最大電力使用量の大きさを識別する情報(例えばレベル1〜10等)でも良い。
また、各電気機器は、住宅内電力制御システム2から取得した最大電力使用量に関する情報に基づき、当該電気機器で消費する電力の上限値である最大電力使用量を決定するようにしても良い。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成を示す斜視図である。
図2において、誘導加熱調理器5の本体の上部には、被加熱物(鍋等)が載置されるトッププレート59が設けられている。トッププレート59の表面には、被加熱物の載置位置を示す例えば3つの円形状の加熱口が印刷等の方法で表示されている。
トッププレート59の下の本体内には、各加熱口に対応して3つの加熱コイルが配置されている。左手前側の加熱口には第1加熱コイル51が設けられている。右手前側の加熱口には第2加熱コイル52が設けられている。中央奥側の加熱口には第3加熱コイル53が設けられている。
【0016】
トッププレート59の下の本体内には、第1加熱コイル51、第2加熱コイル52、及び第3加熱コイル53(以下、区別しない場合は「加熱コイル」と称する)に、高周波電力を供給する駆動回路63と、駆動回路63を含め誘導加熱調理器5全体の動作を制御するための制御手段100とが設けられている。
加熱コイルは、例えば略円形の平面形状を有し、絶縁皮膜された任意の金属(例えば銅、アルミなど)からなる導電線が円周方向に巻き付けることにより構成されており、駆動回路63により高周波電力が各加熱コイルに供給されることで、誘導加熱動作が行われている。
【0017】
第1加熱コイル51及び第2加熱コイル52は、供給可能な最大電力値(例えば定格電力)が大きい加熱コイルである。後述する電力制限を行わない場合は、例えば最大3kWで加熱する。第3加熱コイル53は、最大電力値が第1加熱コイル51及び第2加熱コイル52より小さい加熱コイルである。後述する電力制限を行わない場合は、例えば最大2kWで加熱する。
【0018】
なお、各加熱口の配置及び数はこれに限るものではない。また、1つの加熱口に対応して複数の加熱コイルを配置しても良い。また、ヒータ加熱を行う加熱口が混在していても良く、少なくとも1つの加熱口が加熱コイルを有していれば良い。
【0019】
本体内の中央下部には、魚などの被加熱物を出し入れ可能に前面が開口したグリル54が設けられている。グリル54内にはグリル加熱手段60が設けられている。
グリル加熱手段60は、例えば電気ヒータ等によって構成され、電力が供給されることでグリル54内に収納された被加熱物(魚等)を加熱する。グリル加熱手段60は、後述する電力制限を行わない場合、例えば最大2kWで加熱する。
【0020】
トッププレート59の前部側、及び本体の前面には操作部58が設けられている。操作部58は、例えば、各加熱口にそれぞれ対応して設けられた火力設定操作部と、グリルの加熱を操作するグリル操作部からなっている。操作部58は、各加熱口及びグリルへの設定火力(投入電力)の操作入力、及び、予め設定された自動調理モードの選択操作の入力等を行う。なお、自動調理モードとは、湯沸かし、保温、煮込み、揚げ物、グリルメニュー等の調理内容に応じて予め設定した加熱動作を実行するモードである。
また、トッププレート59の前部側には、表示部57が設けられている。表示部57は、例えば、各加熱口、グリル54の火力、及び、動作状態をそれぞれ表示する。表示部57は、例えば液晶表示パネル、LED等により構成される。
なお、表示部57は、本発明における「報知手段」に相当する。
【0021】
本体の後部側には、吸気口55及び排気口56が形成されている。本体内部に設けられた冷却ファン61は、吸気口55から本体の外部の空気を吸気し、本体内部に冷却風を供給する。本体内に供給された冷却風は、本体内部の部品を冷却した後、排気口56から本体の外部に排気される。
【0022】
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の機能ブロック図である。
図3において、通信手段62は、住宅内電力制御システム2と通信し、最大電力使用量に関する情報を取得して、制御手段100へ入力する。なお、住宅内電力制御システム2との間の通信は、無線又は有線の何れでも良いし、通信方式も任意の方式で良い。
【0023】
制御手段100は、操作部58によって設定された火力、及び選択された自動調理モードの少なくとも一方に応じて、第1加熱コイル51、第2加熱コイル52、第3加熱コイル53、及びグリル加熱手段60(以下「複数の加熱手段」と総称する場合もある)へ入力される電力を制御する。
また、制御手段100は、複数の加熱手段へ入力される電力の合計が、最大電力使用量以下となるように、複数の加熱手段を制御する。さらに、制御手段100内には、加熱口に載置された被加熱物(鍋)の材質が、磁性材質又は非磁性材質の何れの材質であるかを判別する負荷判別手段110を有している。詳細は後述する。
【0024】
駆動回路63は、交流電力を直流電力に変換する直流電源回路と、直流電源回路から出力された直流電力を高周波の交流電力に変換するインバータ回路と、を備えている。インバータ回路から出力された交流電力は、加熱コイルと共振コンデンサとからなる負荷回路に印加される。なお、インバータ回路は、例えば、ハーフブリッジ型、フルブリッジ型又は一石電圧共振型等の任意の構成を用いることができる。
【0025】
次に、実施の形態1に係る誘導加熱調理器5の動作について説明する。
【0026】
まず、住宅内電力制御システム2からの最大電力使用量の制限がない場合、即ち、通常時の加熱動作について説明する。
【0027】
使用者により加熱口に被加熱物が載置され、加熱開始(火力投入)の指示が操作部58に行われると、負荷判別手段110は負荷判定処理を行う。
【0028】
負荷判定処理において、負荷判別手段110は、負荷判定用の特定の駆動信号で駆動回路63を駆動し、微弱電圧を加熱コイルに印加する。そして、加熱コイルに流れた電流により材質判定を行う。
例えばアルミ又は銅等の非磁性材質の場合は、加熱コイルから見たインピーダンスが小さいので大きな電流が流れる。一方、例えばホーロー等の磁性材質の場合は、インピーダンスが大きくなるので、流れる電流は小さい。このようなことから、負荷判別手段110は、流れた電流が所定値以上の場合は非磁性材質と判定し、所定値未満の場合は磁性材質と判定する。
なお、負荷判別の方法はこれに限らず任意の方法を用いることができる。例えば、駆動回路63に入力した入力電流と、実際に加熱コイルに流れたコイル電流との相関関係から材質を判別するようにしても良い。
【0029】
以上の負荷判定処理を行った後、制御手段100は、被加熱物の材質に応じた駆動周波数を決定し、この駆動周波数で駆動回路63を駆動して誘導加熱動作を開始する。
【0030】
ここで、加熱コイルの巻き数をN、加熱コイルに流す電流の周波数をf、被加熱物の材質の抵抗率をρ、被加熱物の材質の比透磁率をμrとすると、加熱コイルから見たインピーダンスZは、以下の式(1)で表される。
【0032】
また、加熱コイルに流す電流をIとすると、被加熱物に投入される電力Pは、以下の式(2)となる。
【0034】
ここで、磁性材質である鉄の比透磁率μrは200である。また、非磁性であるアルミの比透磁率μrは1である。また、アルミの抵抗率ρは、鉄の抵抗率ρの約1/3の値である。
このため、上記式(1)及び式(2)の関係から、アルミ鍋のような非磁性材質の被加熱物を誘導加熱する場合に、所望の電力Pを得るためには、鉄鍋のような磁性材質の被加熱物の場合と比較して、周波数fを高くして、インピーダンスZを大きくする必要がある。
【0035】
以上のようなことから、制御手段100は、負荷判別手段110により判別された被加熱物の材質が非磁性材質である場合、加熱コイルの駆動周波数を、被加熱物の材質が磁性材質である場合と比較して高くする。例えば、磁性材質の場合は、駆動周波数を約20kHzに設定し、非磁性材質の場合は、駆動周波数を約90kHzに設定して、誘導加熱を行う。
【0036】
次に、住宅内電力制御システム2からの最大電力使用量の制限がある場合の動作について説明する。
【0037】
誘導加熱調理器5の最大電力使用量が制限される場合には、限られた電力を無駄なく加熱に利用することが必要となる。特に、災害などの非常時、又は停電などで太陽光発電システム4と住宅内蓄電システム3の電力によって居住者が生活するような場合など、最大電力使用量が大幅に制限された場合には、限られた電力を有効に利用することが必要となる。
【0038】
上記のように駆動周波数を高く設定した非磁性材質の誘導加熱では、磁性材質の場合と比較して加熱効率(入力電力に対する発熱量の割合)が低下する。即ち、駆動周波数が高くなると、加熱コイルに流す高周波電流を生成する駆動回路63の損失と、加熱コイル自身での損失が増大するため、加熱効率が大幅に低下する。
例えば、鉄などの磁性材質の被加熱物では、加熱効率は約90%であるが、アルミなどの非磁性材質の被加熱物では、加熱効率は約60%に低下する。すなわち、3kW入力した場合、磁性材質の被加熱物では2.7kWが加熱に使われるが、非磁性鍋の場合は1.8kWしか加熱に使われず、残りの1.2kWが無駄になる。
このため、住宅内電力制御システム2からの最大電力使用量の制限がある場合には、以下のような動作を行う。
【0039】
制御手段100は、住宅内電力制御システム2から取得した最大電力使用量に関する情報に基づき、最大電力使用量を決定する。例えば、住宅内電力制御システム2から最大電力使用量の指示値(kW)の情報を取得した場合には、この指示値をそのまま、当該誘導加熱調理器5の最大使用電力量とする。また例えば、最大電力使用量の大きさを識別する情報(例えばレベル1〜10等)を取得する場合には、当該情報と最大電力使用量の値との関係を予めテーブルとして記憶し、これを参照することで最大電力使用量を決定する。
【0040】
負荷判別手段110は、上述した負荷判定処理を行い、被加熱物の材質が、磁性材質又は非磁性材質の何れの材質であるかを判別する。
【0041】
制御手段100は、最大電力使用量が閾値以下であり、且つ、被加熱物の材質が非磁性材質である場合、当該被加熱物を誘導加熱する加熱コイルの加熱動作を禁止する。
ここで、閾値の値は、想定される最大電力使用量の最大値以下の任意の値とすることができる。なお、閾値は、予め設定した値でも良いし、操作部58から入力しても良い。また、住宅内電力制御システム2から取得した情報に基づき制御手段100が設定しても良い。
なお、最大電力使用量の制限がある場合には、常に、非磁性材質である被加熱物の誘導加熱を禁止するようにしても良い。つまり、閾値の値を想定される最大電力使用量の最大値に設定するようにしても良い。
【0042】
一方、最大電力使用量が閾値を超える場合、及び被加熱物の材質が磁性材質である場合の少なくとも何れかである場合には、当該被加熱物を誘導加熱する加熱コイルの加熱動作を許可する。
そして、制御手段100は、複数の加熱手段へ入力される電力の合計が、最大電力使用量以下となるように、当該加熱コイルを含む複数の加熱手段を制御する。なお、加熱手段を1つの加熱コイルのみで構成した場合には、1つの加熱コイルへ入力される電力が、最大使用量以下となるように制御する。
【0043】
以上のように本実施の形態1においては、制御手段100は、最大電力使用量が閾値以下であり、且つ、被加熱物の材質が非磁性材質である場合、当該被加熱物を誘導加熱する加熱コイルの加熱動作を禁止する。
このため、最大電力使用量が閾値以下の場合に、加熱効率が低い非磁性材質の被加熱物の誘導加熱を行わないようにすることができる。また、最大電力使用量が閾値以下の場合には、加熱効率が高い磁性材質の被加熱物の誘導加熱を行うので、限られた電力を無駄なく加熱に使用することができる。
よって、災害などで停電が発生し、住宅内の太陽光発電システム4と住宅内蓄電システム3の電力で居住者が生活する場合など、最大電力使用量が大幅に制限された場合においても、限られた電力を有効に利用できる。
【0044】
また、最大電力使用量が閾値を超える場合、及び被加熱物の材質が磁性材質である場合の少なくとも何れかである場合には、当該被加熱物を誘導加熱する加熱コイルの加熱動作を許可する。
このため、最大電力使用量が閾値を超える場合には、被加熱物の材質にかかわらず加熱動作を行うことができ、利便性を確保することができる。また、被加熱物の材質が磁性材質である場合には、最大電力使用量にかかわらず、加熱効率が高い磁性材質の被加熱物の誘導加熱を行うので、限られた電力を無駄なく加熱に使用することができる。
【0045】
実施の形態2.
本実施の形態2の制御手段100は、加熱コイルの加熱動作を禁止した旨を、表示部57に表示させる。
なお、本実施の形態2における誘導加熱調理器5及び電力管理システムの構成は、上記実施の形態1と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。また、本実施の形態2における加熱動作は上記実施の形態1と同様である。
【0046】
表示部57に表示させる加熱コイルの加熱動作を禁止した旨の情報としては、少なくとも、加熱動作を禁止している加熱コイルを識別できる情報を表示させる。例えば、第3加熱コイル53の加熱口に非磁性材質の鍋が載置され、加熱動作を禁止した場合、表示部57には「中央IH、電力制限で停止しました。」などと表示させる。
なお、表示部57による表示に限らず、加熱コイルの加熱動作を禁止した旨の情報を音声等により報知しても良い。
【0047】
このような構成により、加熱コイルの加熱動作を禁止した旨を使用者に報知することができ、使用者の使い勝手を向上することができる。