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特許6029521光音響波測定装置、方法、プログラム、記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029521
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】光音響波測定装置、方法、プログラム、記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/13 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   A61B8/13ZDM
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-84519(P2013-84519)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-204868(P2014-204868A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(72)【発明者】
【氏名】伊田 泰一郎
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−527059(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/107971(WO,A2)
【文献】 特開昭60−108043(JP,A)
【文献】 特開平02−174854(JP,A)
【文献】 特開2014−161428(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0249916(US,A1)
【文献】 特開2004−201749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出力する光出力部と、前記光により測定対象において発生した光音響波を受けて電気信号に変換する複数の光音響波検知部とを有する光音響波測定器から前記電気信号を受ける光音響波測定装置であって、
前記光音響波検知部の各々が出力する前記電気信号の時間のずれが所定範囲内にあるかを判定する時間ずれ判定部と、
前記時間ずれ判定部により、前記電気信号の時間のずれが前記所定範囲内にあると判定された場合に、前記測定対象において前記光音響波が発生した光音響波発生部分の位置を測定する位置測定部と、
を備えた光音響波測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光音響波測定装置であって、
前記位置測定部が、前記光出力部の延長線上に前記光音響波発生部分が存在するものとして、前記光音響波発生部分の位置を測定する、
光音響波測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光音響波測定装置であって、
前記所定範囲が、0以上かつ所定の時間閾値以下の範囲である、
光音響波測定装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の光音響波測定装置であって、
前記所定範囲が、
前記光出力部の延長線上に前記光音響波発生部分が存在したと仮定した場合の前記光音響波検知部の各々が出力する前記電気信号の時間のずれを含む、
光音響波測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光音響波測定装置であって、
前記所定範囲が0を含まない、
光音響波測定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の光音響波測定装置であって、
前記光音響波検知部の各々が出力する前記電気信号の大きさと、所定の大きさ閾値との大小関係を判定する大きさ判定部を備え、
前記位置測定部が、前記大きさ判定部により、前記電気信号の大きさが前記大きさ閾値を超えていると判定され、かつ、前記時間ずれ判定部により、前記電気信号の時間のずれが前記所定範囲内にあると判定された場合に、前記測定対象において前記光音響波が発生した光音響波発生部分の位置を測定する、
光音響波測定装置。
【請求項7】
光を出力する光出力部と、前記光により測定対象において発生した光音響波を受けて電気信号に変換する複数の光音響波検知部とを有する光音響波測定器から前記電気信号を受けて光音響波を測定する光音響波測定方法であって、
前記光音響波検知部の各々が出力する前記電気信号の時間のずれが所定範囲内にあるかを判定する時間ずれ判定工程と、
前記時間ずれ判定工程により、前記電気信号の時間のずれが前記所定範囲内にあると判定された場合に、前記測定対象において前記光音響波が発生した光音響波発生部分の位置を測定する位置測定工程と、
を備えた光音響波測定方法。
【請求項8】
光を出力する光出力部と、前記光により測定対象において発生した光音響波を受けて電気信号に変換する複数の光音響波検知部とを有する光音響波測定器から前記電気信号を受けて光音響波を測定する光音響波測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記光音響波測定処理は、
前記光音響波検知部の各々が出力する前記電気信号の時間のずれが所定範囲内にあるかを判定する時間ずれ判定工程と、
前記時間ずれ判定工程により、前記電気信号の時間のずれが前記所定範囲内にあると判定された場合に、前記測定対象において前記光音響波が発生した光音響波発生部分の位置を測定する位置測定工程と、
を備えたプログラム。
【請求項9】
光を出力する光出力部と、前記光により測定対象において発生した光音響波を受けて電気信号に変換する複数の光音響波検知部とを有する光音響波測定器から前記電気信号を受けて光音響波を測定する光音響波測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、
前記光音響波測定処理は、
前記光音響波検知部の各々が出力する前記電気信号の時間のずれが所定範囲内にあるかを判定する時間ずれ判定工程と、
前記時間ずれ判定工程により、前記電気信号の時間のずれが前記所定範囲内にあると判定された場合に、前記測定対象において前記光音響波が発生した光音響波発生部分の位置を測定する位置測定工程と、
を備えた記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響センサを用いたターゲットの位置測定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2個以上の光音響センサを用いて光音響波を検出することにより、測定対象を測定することが知られている(例えば、特許文献1を参照)。光音響センサは、光を測定対象に照射する。すると、測定対象内のターゲットに光が吸収される。これにより、ターゲット(光音響波発生部分)が光音響波を発生する。この光音響波を光音響センサが検出する。ターゲットの真上に光音響センサが位置すると、光音響波を検出できる。これにより、ターゲットの位置を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−201749号公報
【特許文献2】特開2009−39266号公報
【特許文献3】特開2010−63617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ターゲット(光音響波発生部分)が発生する光音響波は、ターゲットの真上にのみ伝搬するわけではなく、ターゲットの斜め上方にも伝搬する。よって、光音響センサがターゲットの斜め上方に伝搬する光音響波を検出してしまった場合、光音響センサの真下にはターゲットが無い。このような場合には、ターゲットの位置の測定に誤差が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、光音響測定器による光音響波発生部分の位置の測定を正確に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる光音響波測定装置は、光を出力する光出力部と、前記光により前記測定対象において発生した光音響波を受けて電気信号に変換する複数の光音響波検知部とを有する光音響波測定器から前記電気信号を受ける光音響波測定装置であって、前記光音響波検知部の各々が出力する前記電気信号の時間のずれが所定範囲内にあるかを判定する時間ずれ判定部と、前記時間ずれ判定部により、前記電気信号の時間のずれが前記所定範囲内にあると判定された場合に、前記測定対象において前記光音響波が発生した光音響波発生部分の位置を測定する位置測定部とを備えるように構成される。
【0007】
上記のように構成された光音響波測定装置によれば、光を出力する光出力部と、前記光により前記測定対象において発生した光音響波を受けて電気信号に変換する複数の光音響波検知部とを有する光音響波測定器から前記電気信号を受ける光音響波測定装置が提供される。時間ずれ判定部が、前記光音響波検知部の各々が出力する前記電気信号の時間のずれが所定範囲内にあるかを判定する。位置測定部が、前記時間ずれ判定部により、前記電気信号の時間のずれが前記所定範囲内にあると判定された場合に、前記測定対象において前記光音響波が発生した光音響波発生部分の位置を測定する。
【0008】
なお、本発明にかかる光音響波測定装置は、前記位置測定部が、前記光出力部の延長線上に前記光音響波発生部分が存在するものとして、前記光音響波発生部分の位置を測定するようにしてもよい。
【0009】
なお、本発明にかかる光音響波測定装置は、前記所定範囲が、0以上かつ所定の時間閾値以下の範囲であるようにしてもよい。
【0010】
なお、本発明にかかる光音響波測定装置は、前記所定範囲が、前記光出力部の延長線上に前記光音響波発生部分が存在したと仮定した場合の前記光音響波検知部の各々が出力する前記電気信号の時間のずれを含むようにしてもよい。
【0011】
なお、本発明にかかる光音響波測定装置は、前記所定範囲が0を含まないようにしてもよい。
【0012】
なお、本発明にかかる光音響波測定装置は、前記光音響波検知部の各々が出力する前記電気信号の大きさと、所定の大きさ閾値との大小関係を判定する大きさ判定部を備え、前記位置測定部が、前記大きさ判定部により、前記電気信号の大きさが前記大きさ閾値を超えていると判定され、かつ、前記時間ずれ判定部により、前記電気信号の時間のずれが前記所定範囲内にあると判定された場合に、前記測定対象において前記光音響波が発生した光音響波発生部分の位置を測定するようにしてもよい。
【0013】
本発明は、光を出力する光出力部と、前記光により前記測定対象において発生した光音響波を受けて電気信号に変換する複数の光音響波検知部とを有する光音響波測定器から前記電気信号を受けて光音響波を測定する光音響波測定方法であって、前記光音響波検知部の各々が出力する前記電気信号の時間のずれが所定範囲内にあるかを判定する時間ずれ判定工程と、前記時間ずれ判定工程により、前記電気信号の時間のずれが前記所定範囲内にあると判定された場合に、前記測定対象において前記光音響波が発生した光音響波発生部分の位置を測定する位置測定工程とを備えた光音響波測定方法である。
【0014】
本発明は、光を出力する光出力部と、前記光により前記測定対象において発生した光音響波を受けて電気信号に変換する複数の光音響波検知部とを有する光音響波測定器から前記電気信号を受けて光音響波を測定する光音響波測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記光音響波測定処理は、前記光音響波検知部の各々が出力する前記電気信号の時間のずれが所定範囲内にあるかを判定する時間ずれ判定工程と、前記時間ずれ判定工程により、前記電気信号の時間のずれが前記所定範囲内にあると判定された場合に、前記測定対象において前記光音響波が発生した光音響波発生部分の位置を測定する位置測定工程とを備えたプログラムである。
【0015】
本発明は、光を出力する光出力部と、前記光により前記測定対象において発生した光音響波を受けて電気信号に変換する複数の光音響波検知部とを有する光音響波測定器から前記電気信号を受けて光音響波を測定する光音響波測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、前記光音響波測定処理は、前記光音響波検知部の各々が出力する前記電気信号の時間のずれが所定範囲内にあるかを判定する時間ずれ判定工程と、前記時間ずれ判定工程により、前記電気信号の時間のずれが前記所定範囲内にあると判定された場合に、前記測定対象において前記光音響波が発生した光音響波発生部分の位置を測定する位置測定工程とを備えた記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一の実施形態にかかる光音響波測定器1の断面図である。
図2】本発明の第一の実施形態にかかる光音響波測定器1の平面図である。
図3】本発明の第一の実施形態にかかる光音響波測定装置40の構成を示す機能ブロック図である。
図4】第一の実施形態にかかる光音響波測定装置40の電気信号測定部41、42の測定結果である時間と電圧との関係を示す図であり、図1(a)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図4(a))、図1(b)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図4(b))および図1(c)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図4(c))を示す図である。
図5】本発明の第二の実施形態にかかる光音響波測定器1の断面図(図5(a))、平面図(図5(b))である。
図6】本発明の第二の実施形態にかかる光音響波測定器1を測定対象2に沿って走査しているときの光音響波測定器1の断面図である。
図7】第二の実施形態にかかる光音響波測定装置40の電気信号測定部41、42の測定結果である時間と電圧との関係を示す図であり、図6(a)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図7(a))、図6(b)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図7(b))および図6(c)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図7(c))を示す図である。
図8】光音響波測定器1が光音響波検知部を3個有するときの光音響波測定器1の平面図(図8(a))、4個有するときの光音響波測定器1の平面図(図8(b))である。
図9】本発明の第一の実施形態の変形例にかかる光音響波測定装置40の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0018】
第一の実施形態
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる光音響波測定器1の断面図である。図2は、本発明の第一の実施形態にかかる光音響波測定器1の平面図である。光音響波測定器1は、光音響波検知部11、12、光ファイバ(光出力部)20を備える。光音響波測定器1は、測定対象2に接しており、測定対象2の上を例えば左から右に走査する。
【0019】
図1(a)が、血液2aから遠くに位置する光音響波測定器1を示す。図1(a)に図示の光音響波測定器1を右に走査すると、図1(b)に示すように、血液2aからやや遠くに位置するようになる。図1(b)に図示の光音響波測定器1を右に走査すると、図1(c)に示すように、血液2aの真上に位置するようになる。
【0020】
光ファイバ(光出力部)20は、光(例えば、パルス光Pであるが連続光とすることも考えられる)を出力する。なお、光ファイバ20は、光音響波測定器1の外部のパルス光源(図示省略)に接続されている。光ファイバ20は、光音響波測定器1を貫通する。また、光ファイバ20が出力するパルス光Pは、図示の便宜上、図1(c)の場合のみ図示している。
【0021】
測定対象2は、例えば人間の指の腹である。測定対象2には血管内の血液2aがあり、血管内の血液2aがパルス光Pを受けると、光音響波Wa1、Wa2(図1(a)参照)、光音響波Wb1、Wb2(図1(b)参照)、光音響波Wc1、Wc2(図1(c)参照)を発生する。
【0022】
光音響波検知部11、12は、光音響波Wa1、Wa2、Wb1、Wb2、Wc1、Wc2を受けて、電気信号(例えば、電圧)に変換する。光音響波検知部11、12は、複数あるものとする。例えば、図1および図2に図示したように、光音響波検知部11、12は、2個あるものとする。
【0023】
光音響波検知部11、12は、それぞれが、図示省略した周知のバッキング材、圧電素子、電極およびスペーサを有する。スペーサは測定対象2に接し、電極はスペーサに載せられ、圧電素子は電極に載せられ、バッキング材は圧電素子に載せられている。光音響波Wa1、Wa2、Wb1、Wb2、Wc1、Wc2が、圧電素子により電気信号(例えば、電圧)に変換され、電極を介して、外部に取り出される。
【0024】
なお、図2を参照して、光音響波検知部11、12は、光ファイバ20から、走査方向に、共に距離X0だけ離れている。
【0025】
図3は、本発明の第一の実施形態にかかる光音響波測定装置40の構成を示す機能ブロック図である。光音響波測定装置40は、電気信号測定部41、42、大きさ判定部44、時間ずれ判定部46、位置測定部48を備える。光音響波測定装置40は、光音響波測定器1の光音響波検知部11、12から電気信号を受ける。
【0026】
電気信号測定部41は、光音響波検知部11から電気信号を受け、その測定結果(例えば、時間と電圧との関係)を出力する(図4のWa1、Wb1、Wc1参照)。電気信号測定部42は、光音響波検知部12から電気信号を受け、その測定結果(例えば、時間と電圧との関係)を出力する(図4のWa2、Wb2、Wc2参照)。
【0027】
大きさ判定部44は、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の測定結果を、電気信号測定部41、42から受ける。そして、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果から、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の大きさと、所定の大きさ閾値ΔVとの大小関係を判定する。
【0028】
例えば、大きさ判定部44は、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の大きさが、いずれも所定の大きさ閾値ΔVを超えているか否か(またはΔV以上か否か)を判定する。
【0029】
ここで、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の大きさが、いずれも所定の大きさ閾値ΔVを超えていると判定された場合は、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与える。
【0030】
一方、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の大きさのいずれか一つ以上が、所定の大きさ閾値ΔV以下であると判定された場合(図4(a)参照)は、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与えない。この場合、大きさ判定部44は、光音響波測定器1が血液2aから遠くに位置する旨の判定結果(図1(a)参照)を出力するようにしてもよい。
【0031】
時間ずれ判定部46は、大きさ判定部44を介して、電気信号測定部41、42から測定結果を受ける。そして、時間ずれ判定部46は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果から、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の時間のずれが所定範囲内(例えば、0以上かつ所定の時間閾値Δt以下)にあるかを判定する。
【0032】
例えば、時間ずれ判定部46は、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれが、0以上かつ所定の時間閾値Δt以下か否か(または0以上かつΔt未満か否か)を判定する。
【0033】
ここで、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtcが、0以上かつ所定の時間閾値Δt以下であると判定された場合(図4(c)参照)は、時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図1(c)参照)を位置測定部48に出力する。
【0034】
一方、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtbが、所定の時間閾値Δtを超えると判定された場合(図4(b)参照)は、時間ずれ判定部46は、位置測定部48に特に何も出力しない。この場合、時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1が血液2aからやや遠くに位置する旨の判定結果(図1(b)参照)を出力するようにしてもよい。
【0035】
なお、時間ずれ判定部46が、光音響波測定器1が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図1(c)参照)を位置測定部48に与えるということは、大きさ判定部44により、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の大きさが大きさ閾値ΔVを超えていると判定され、かつ、時間ずれ判定部46により、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の時間のずれが所定範囲内(0以上かつ所定の時間閾値Δt以下)にあると判定されたということを意味する。
【0036】
位置測定部48は、時間ずれ判定部46から光音響波測定器1が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図1(c)参照)を受けた場合に、測定対象2において光音響波Wc1、Wc2が発生した血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。
【0037】
この場合、位置測定部48は、光ファイバ(光出力部)20の延長線上(例えば、真下)に血液2a(光音響波発生部分)が存在するものとして、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。位置測定部48は、電気信号測定部41、42から測定結果を受け、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。例えば、測定対象2の表面を基準とした血液2aの深さdを測定することができる。電気信号測定部41、42から受けた測定結果から、血液2aから光音響波検知部11に光音響波Wc1が到達するのにかかった時間と、血液2aから光音響波検知部12に光音響波Wc2が到達するのにかかった時間とが共にTであったことが分かったとする。すると、測定対象2内における光音響波の速度をVsとした場合、(T×Vs)=d+X0となる。X0およびVsは既知であるため、血液2aの深さdを求めることができる。
【0038】
次に、本発明の第一の実施形態の動作を説明する。
【0039】
まず、動作説明の前に、図1(a)、図1(b)および図1(c)における光音響波測定器1の血液2aに対する位置関係と、電気信号を大きさ閾値ΔVおよび時間閾値Δtと比較した結果との関係を表1に示す。
【0040】
【表1】
光音響波測定器1を走査し始めたときは、図1(a)に示すように、光音響波測定器1は血液2aから遠くに位置する。
【0041】
ここで、外部のパルス光源(図示省略)がパルス光Pを発し、パルス光Pが光ファイバ20から出力される。パルス光Pは、測定対象2に与えられる。
【0042】
パルス光Pは測定対象2の血管内の血液2aに到達する。すると、血管内の血液2aがパルス光Pを吸収し、血管内の血液2aから疎密波(光音響波Wa1、Wa2)が出力される。
【0043】
光音響波Wa1、Wa2は、測定対象2を透過し、光音響波検知部11、12に到達する。光音響波検知部11、12は、光音響波Wa1、Wa2による圧力を、電気信号(例えば、電圧)に変換する。この電圧が、光音響波測定装置40の電気信号測定部41、42に与えられる。
【0044】
図4は、第一の実施形態にかかる光音響波測定装置40の電気信号測定部41、42の測定結果である時間と電圧との関係を示す図であり、図1(a)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図4(a))、図1(b)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図4(b))および図1(c)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図4(c))を示す図である。
【0045】
(a)光音響波測定器1が血液2aから遠い場合
図1(a)に示すように、光音響波測定器1は、血液2aから遠い。よって、光音響波Wa1、Wa2は微弱であり、光音響波Wa1、Wa2から得られた電気信号(電圧)の大きさも小さく、いずれも大きさ閾値ΔV以下である(図4(a)参照)。
【0046】
この場合、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与えない。大きさ判定部44は、光音響波測定器1が血液2aから遠くに位置する旨の判定結果(図1(a)参照)を出力する。
【0047】
(b)光音響波測定器1が血液2aからやや遠い場合
図1(a)に示す状態から、光音響波測定器1を走査すると、図1(b)に示すように、光音響波測定器1は血液2aからやや遠くに位置するようになる。
【0048】
図1(b)に示すように、光音響波測定器1は、血液2aからやや遠いものの、図1(a)に示す状態よりは血液2aに近くなる。よって、光音響波Wb1、Wb2は、光音響波Wa1、Wa2よりも強くなり、光音響波Wb1、Wb2から得られた電気信号(電圧)の大きさが、いずれも大きさ閾値ΔVを超える(図4(b)参照)。
【0049】
この場合、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与える。
【0050】
図1(b)に示すように、光音響波測定器1は、血液2aからやや遠いため、光音響波Wb1の進行する距離と、光音響波Wb2の進行する距離との差異は無視できない。よって、光音響波Wb1が光音響波検知部11に到達する時間と、光音響波Wb2が光音響波検知部12に到達する時間との差異も無視できない。これにより、図4(b)を参照して、光音響波Wb1、Wb2から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtbは無視できない(例えば、所定の時間閾値Δtを超える)。
【0051】
この場合、時間ずれ判定部46は、位置測定部48に特に何も出力しない。時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1が血液2aからやや遠くに位置する旨の判定結果(図1(b)参照)を出力する。
【0052】
(c)光音響波測定器1が血液2aの真上にある場合
図1(b)に示す状態から、光音響波測定器1を走査すると、図1(c)に示すように、光音響波測定器1は血液2aの真上に位置するようになる。
【0053】
図1(c)に示すように、光音響波測定器1は、図1(a)に示す状態よりも血液2aに近くなる。よって、光音響波Wc1、Wc2は、光音響波Wa1、Wa2よりも強くなり、光音響波Wc1、Wc2から得られた電気信号(電圧)の大きさが、いずれも大きさ閾値ΔVを超える(図4(c)参照)。
【0054】
この場合、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与える。
【0055】
図1(c)に示すように、光音響波測定器1は、血液2aの真上にある。しかも、図2を参照して、光音響波検知部11と光ファイバ20との距離と、光音響波検知部12と光ファイバ20との距離とは共にX0であり等しい。このため、光音響波Wc1の進行する距離と、光音響波Wc2の進行する距離とは等しい。よって、光音響波Wc1が光音響波検知部11に到達する時間と、光音響波Wc2が光音響波検知部12に到達する時間とは等しい。これにより、図4(c)を参照して、光音響波Wc1、Wc2から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtcは無視できるほど小さい(例えば、所定の時間閾値Δt以下である)。
【0056】
この場合、時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図1(c)参照)を位置測定部48に出力する。位置測定部48は、光ファイバ20の延長線上(例えば、真下)に血液2a(光音響波発生部分)が存在するものとして、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。位置測定部48は、電気信号測定部41、42から測定結果を受け、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する(例えば、血液2aの深さdを測定する)。
【0057】
第一の実施形態によれば、光音響波測定器1の光ファイバ20の延長線上(例えば、真下)に血液2a(光音響波発生部分)が存在するか(図1(c)参照)、しないか(図1(a)、(b)参照)を判定することができる。
【0058】
しかも、光音響波測定装置40は、光音響波測定器1の光ファイバ20の延長線上に血液2aが存在するものとして、位置測定部48が血液2aの位置を測定する。ここで、光音響波測定装置40は、実際に光音響波測定器1の光ファイバ20の延長線上に血液2aが存在する場合(図1(c)参照)に、かかる測定を行う。よって、光音響測定器1による血液2aの位置の測定を正確に行うことができる。
【0059】
なお、第一の実施形態において、光音響波測定装置40が大きさ判定部44を備えるものとして説明してきた。しかし、光音響波測定装置40が大きさ判定部44を備えない変形例も考えられる。
【0060】
図9は、本発明の第一の実施形態の変形例にかかる光音響波測定装置40の構成を示す機能ブロック図である。本発明の第一の実施形態の変形例にかかる光音響波測定装置40は、電気信号測定部41、42、時間ずれ判定部46、位置測定部48を備える。
【0061】
電気信号測定部41、42、位置測定部48は、第一の実施形態(図3参照)と同様であり説明を省略する。
【0062】
時間ずれ判定部46は、電気信号測定部41、42から直接(大きさ判定部44を介さないで)、測定結果を受ける。時間ずれ判定部46による判定法は、第一の実施形態と同様であり説明を省略する。
【0063】
ただし、時間ずれ判定部46により、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtbが、所定の時間閾値Δtを超えると判定された場合は、時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1が血液2aから遠くに位置する(図1(a)参照)か、またはやや遠くに位置する(図1(b)参照)のどちらかである旨の判定結果を出力する。光音響波測定器1が血液2aから、やや遠くに位置する場合(図1(b)参照)であってもΔtbがΔtを超えるのであるから、光音響波測定器1が血液2aから遠くに位置する場合(図1(a)参照)であれば、Δtbはさらに大きくなり、なおさらΔtbがΔtを超えることとなる。
【0064】
なお、光音響波測定器1が血液2aから遠くに位置する場合(図1(a)参照)、光音響波Wa1、Wa2は微弱である。しかし、電気信号測定部41、42によってS/N比の高い精度のよい測定が可能であれば、光音響波測定器1が血液2aから遠くに位置する場合であっても、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれを測定することができ、時間ずれ判定部46による判定が行える。
【0065】
第一の実施形態の変形例にかかる光音響波測定装置40によっても、第一の実施形態と同様な効果を奏する。なお、他の実施形態においても、光音響波測定装置40が大きさ判定部44を備えないような変形例による測定が可能である。
【0066】
第二の実施形態
第二の実施形態は、光音響波検知部11、12と、光ファイバ20との距離が、それぞれ異なる点(図5(b)参照)が、第一の実施形態と異なる。
【0067】
図5は、本発明の第二の実施形態にかかる光音響波測定器1の断面図(図5(a))、平面図(図5(b))である。光音響波測定器1は、光音響波検知部11、12、光ファイバ(光出力部)20を備える。以下、第一の実施形態にかかる光音響波測定器1と同様な部分は、同一の番号を付して説明を省略する。
【0068】
光ファイバ(光出力部)20は、第一の実施形態と同様であり、説明を省略する。光音響波検知部11、12も、第一の実施形態と同様である。ただし、光音響波検知部11、12の位置が、第一の実施形態と異なる。
【0069】
すなわち、光音響波検知部11は、光ファイバ20から、走査方向に、距離X2だけ離れている。光音響波検知部12は、光ファイバ20から、走査方向に、距離X1だけ離れている。なお、X1とX2とは異なる。
【0070】
図5(a)は、光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上に位置する状態を図示している。dは、測定対象2の表面を基準とした血液2aの深さである。
【0071】
血液2aから光音響波検知部11までの距離は、d+X2の平方根である。血液2aから光音響波検知部12までの距離は、d+X1の平方根である。すると、血液2aから光音響波検知部11に光音響波Wc1が到達するのにかかった時間と、血液2aから光音響波検知部12に光音響波Wc2が到達するのにかかった時間とのずれΔt0は、測定対象2内における光音響波の速度をVsとした場合、((d+X2の平方根)−(d+X1の平方根))/Vsとなる。ただし、上記の式によりΔt0を求める場合、血液2aの深さdは、ある程度のばらつきがあるため、おおよその代表的な値を用いることが考えられる。または、X1およびX2がdよりもかなり大きい場合は、dを無視し、(X2−X1)/VsをΔt0とすることも考えられる。
【0072】
なお、血液2aから光音響波検知部11に光音響波Wc1が到達するのにかかった時間と、血液2aから光音響波検知部12に光音響波Wc2が到達するのにかかった時間とのずれは、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の時間のずれとして現れる。
【0073】
すなわち、Δt0は、光ファイバ20の延長線上に血液2a(光音響波発生部分)が存在したと仮定した場合の光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の時間のずれである。
【0074】
本発明の第二の実施形態にかかる光音響波測定装置40は、電気信号測定部41、42、大きさ判定部44、時間ずれ判定部46、位置測定部48を備える。本発明の第二の実施形態にかかる光音響波測定装置40の構成は、第一の実施形態と同様であり(図3参照)、図示を省略する。以下、第一の実施形態にかかる光音響波測定装置40と同様な部分は、同一の番号を付して説明を省略する。
【0075】
電気信号測定部41、42および大きさ判定部44は、第一の実施形態と同様であり説明を省略する。
【0076】
時間ずれ判定部46は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果から、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の時間のずれが所定範囲内(例えば、所定の時間閾値をΔtとした場合、(Δt0−Δt)以上かつ(Δt0+Δt)以下)にあるかを判定する。Δt0は、この所定範囲の内にある。すなわち、この所定範囲は、Δt0を含んでいる。なお、Δt0−Δt>0であってもよい。すなわち、この所定範囲が0を含まないようにしてもよい。
【0077】
例えば、時間ずれ判定部46は、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれが、(Δt0−Δt)以上かつ(Δt0+Δt)以下か否か(または(Δt0−Δt)を超えかつ(Δt0+Δt)未満か否か)を判定する。
【0078】
ここで、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtcが、(Δt0−Δt)以上かつ(Δt0+Δt)以下であると判定された場合(図7(c)参照)は、時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図6(c)参照)を位置測定部48に出力する。光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上に位置する場合、理想的には、Δtc=Δt0であるが、測定誤差および血液2aの深さdのばらつきなどを考慮して、Δt0−Δt≦Δtc≦Δt0+Δtであれば、光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上に位置する状態であると判断するものとする。
【0079】
一方、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtbが、(Δt0−Δt)未満または(Δt0+Δt)を超えると判定された場合(図7(b)参照)は、時間ずれ判定部46は、位置測定部48に特に何も出力しない。この場合、時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1が血液2aからやや遠くに位置する旨の判定結果(図6(b)参照)を出力するようにしてもよい。
【0080】
なお、時間ずれ判定部46が、光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図6(c)参照)を位置測定部48に与えるということは、大きさ判定部44により、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の大きさが大きさ閾値ΔVを超えていると判定され、かつ、時間ずれ判定部46により、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の時間のずれが所定範囲内((Δt0−Δt)以上かつ(Δt0+Δt)以下)にあると判定されたということを意味する。
【0081】
位置測定部48は、時間ずれ判定部46から光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図6(c)参照)を受けた場合に、測定対象2において光音響波Wc1、Wc2が発生した血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。
【0082】
この場合、位置測定部48は、光ファイバ(光出力部)20の延長線上(例えば、真下)に血液2a(光音響波発生部分)が存在するものとして、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。位置測定部48は、電気信号測定部41、42から測定結果を受け、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。例えば、測定対象2の表面を基準とした血液2aの深さdを測定することができる。電気信号測定部41(42)から受けた測定結果から、血液2aから光音響波検知部11(12)に光音響波Wc1(Wc2)が到達するのにかかった時間が、T1(T2)であったことが分かったとする。すると、測定対象2内における光音響波の速度をVsとした場合、(T1×Vs)=d+X2((T2×Vs)=d+X1)となる。X2(X1)およびVsは既知であるため、血液2aの深さdを求めることができる。
【0083】
次に、本発明の第二の実施形態の動作を説明する。
【0084】
図6は、本発明の第二の実施形態にかかる光音響波測定器1を測定対象2に沿って走査しているときの光音響波測定器1の断面図である。
【0085】
光音響波測定器1を走査し始めたときは、図6(a)に示すように、光音響波測定器1は血液2aから遠くに位置する。
【0086】
ここで、外部のパルス光源(図示省略)がパルス光Pを発し、パルス光Pが光ファイバ20から出力される。パルス光Pは、測定対象2に与えられる。
【0087】
パルス光Pは測定対象2の血管内の血液2aに到達する。すると、血管内の血液2aがパルス光Pを吸収し、血管内の血液2aから疎密波(光音響波Wa1、Wa2)が出力される。
【0088】
光音響波Wa1、Wa2は、測定対象2を透過し、光音響波検知部11、12に到達する。光音響波検知部11、12は、光音響波Wa1、Wa2による圧力を、電気信号(例えば、電圧)に変換する。この電圧が、光音響波測定装置40の電気信号測定部41、42に与えられる。
【0089】
図7は、第二の実施形態にかかる光音響波測定装置40の電気信号測定部41、42の測定結果である時間と電圧との関係を示す図であり、図6(a)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図7(a))、図6(b)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図7(b))および図6(c)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図7(c))を示す図である。
【0090】
(a)光音響波測定器1が血液2aから遠い場合
図6(a)に示すように、光音響波測定器1は、血液2aから遠い。よって、光音響波Wa1、Wa2は微弱であり、光音響波Wa1、Wa2から得られた電気信号(電圧)の大きさも小さく、いずれも大きさ閾値ΔV以下である(図7(a)参照)。
【0091】
この場合、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与えない。大きさ判定部44は、光音響波測定器1が血液2aから遠くに位置する旨の判定結果(図6(a)参照)を出力する。
【0092】
(b)光音響波測定器1が血液2aからやや遠い場合
図6(a)に示す状態から、光音響波測定器1を走査すると、図6(b)に示すように、光音響波測定器1は血液2aからやや遠くに位置するようになる。
【0093】
図6(b)に示すように、光音響波測定器1は、血液2aからやや遠いものの、図6(a)に示す状態よりは血液2aに近くなる。よって、光音響波Wb1、Wb2は、光音響波Wa1、Wa2よりも強くなり、光音響波Wb1、Wb2から得られた電気信号(電圧)の大きさが、いずれも大きさ閾値ΔVを超える(図7(b)参照)。
【0094】
この場合、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与える。
【0095】
図7(b)に示すように、光音響波測定器1は、血液2aからやや遠いため、光音響波Wb1の進行する距離と、光音響波Wb2の進行する距離との差異は無視できない。よって、光音響波Wb1が光音響波検知部11に到達する時間と、光音響波Wb2が光音響波検知部12に到達する時間との差異も無視できない。これにより、図4(b)を参照して、光音響波Wb1、Wb2から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtbは無視できない(例えば、(Δt0+Δt)を超える)。
【0096】
この場合、時間ずれ判定部46は、位置測定部48に特に何も出力しない。時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1が血液2aからやや遠くに位置する旨の判定結果(図6(b)参照)を出力する。
【0097】
(c)光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上にある場合
図6(b)に示す状態から、光音響波測定器1を走査すると、図6(c)に示すように、光音響波測定器1の光ファイバ20は血液2aの真上に位置するようになる。
【0098】
図6(c)に示すように、光音響波測定器1は、図6(a)に示す状態よりも血液2aに近くなる。よって、光音響波Wc1、Wc2は、光音響波Wa1、Wa2よりも強くなり、光音響波Wc1、Wc2から得られた電気信号(電圧)の大きさが、いずれも大きさ閾値ΔVを超える(図7(c)参照)。
【0099】
この場合、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与える。
【0100】
図6(c)に示すように、光音響波測定器1の光ファイバ20は、血液2aの真上にある。ここで、図5を参照して、光音響波検知部11と光ファイバ20との距離はX2であり、光音響波検知部12と光ファイバ20との距離はX1であり、X1とX2とは異なる。このため、光音響波Wc1の進行する距離と、光音響波Wc2の進行する距離とは異なる。よって、光音響波Wc1が光音響波検知部11に到達する時間と、光音響波Wc2が光音響波検知部12に到達する時間とは異なる。両者の時間のずれは、先に説明したとおり、Δt0である。
【0101】
これにより、図7(c)を参照して、光音響波Wc1、Wc2から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtcは、ほぼΔt0に等しい(例えば、Δt0−Δt≦Δtc≦Δt0+Δtである)。
【0102】
この場合、時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図7(c)参照)を位置測定部48に出力する。位置測定部48は、光ファイバ20の延長線上(例えば、真下)に血液2a(光音響波発生部分)が存在するものとして、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。位置測定部48は、電気信号測定部41、42から測定結果を受け、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する(例えば、血液2aの深さdを測定する)。
【0103】
第二の実施形態によれば、光音響波測定器1の光ファイバ20の延長線上(例えば、真下)に血液2a(光音響波発生部分)が存在するか(図7(c)参照)、しないか(図7(a)、(b)参照)を判定することができる。
【0104】
しかも、光音響波測定装置40は、光音響波測定器1の光ファイバ20の延長線上に血液2aが存在するものとして、位置測定部48が血液2aの位置を測定する。ここで、光音響波測定装置40は、実際に光音響波測定器1の光ファイバ20の延長線上に血液2aが存在する場合(図6(c)参照)に、かかる測定を行う。よって、光音響測定器1による血液2aの位置の測定を正確に行うことができる。
【0105】
なお、上記の実施形態では、光音響波測定器1が光音響波検知部11、12を2個有するものとして説明してきた。しかし、光音響波測定器1が光音響波検知部を3個以上有していてもよい。
【0106】
図8は、光音響波測定器1が光音響波検知部を3個有するときの光音響波測定器1の平面図(図8(a))、4個有するときの光音響波測定器1の平面図(図8(b))である。
【0107】
図8(a)および図8(b)に示すように、光ファイバ20を3個の光音響波検知部11、12、13または4個の光音響波検知部11、12、13、14で包囲するようにする。このような光音響波測定器1を用いても、上記と同様に、光音響測定器1による血液2aの位置の測定を正確に行うことができる。
【0108】
また、上記の実施形態は、以下のようにして実現できる。CPU、ハードディスク、メディア(フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROMなど)読み取り装置を備えたコンピュータに、上記の各部分、例えば、光音響波測定装置40を実現するプログラムを記録したメディアを読み取らせて、ハードディスクにインストールする。このような方法でも、上記の機能を実現できる。
【符号の説明】
【0109】
P パルス光
Wa1、Wa2、Wb1、Wb2、Wc1、Wc2 光音響波
ΔV 大きさ閾値
Δt 時間閾値
1 光音響波測定器
2 測定対象
2a 血液
11、12、13、14 光音響波検知部
20 光ファイバ(光出力部)
40 光音響波測定装置
41、42 電気信号測定部
44 大きさ判定部
46 時間ずれ判定部
48 位置測定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9