特許第6029531号(P6029531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6029531-立形旋盤 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029531
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】立形旋盤
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/70 20060101AFI20161114BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20161114BHJP
   B23B 3/10 20060101ALI20161114BHJP
   F16C 25/08 20060101ALI20161114BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20161114BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   B23Q1/70
   B23B19/02 B
   B23B3/10
   F16C25/08 Z
   F16C19/16
   F16C19/26
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-104282(P2013-104282)
(22)【出願日】2013年5月16日
(65)【公開番号】特開2014-223703(P2014-223703A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2015年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】岩田 雅彦
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−271829(JP,A)
【文献】 実開平3−120355(JP,U)
【文献】 実開昭60−113136(JP,U)
【文献】 特開2001−179575(JP,A)
【文献】 実開昭59−86447(JP,U)
【文献】 特開2012−40667(JP,A)
【文献】 実開昭63−94601(JP,U)
【文献】 実開昭63−94603(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00− 1/76,
B23B 19/00−19/02,23/00−23/04,
3/10,
F16C 23/00−27/08,
19/16,19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置可能なワーク載置テーブルを、差し替え可能に配置されるライナを介して上端に高さ調整可能に取り付けて垂直に設けられた主軸と、前記ワーク載置テーブルの下方に配置されて前記主軸を収容する収容部材に固定されて、前記主軸を回転自在に支持すると共に、該主軸の径方向に作用するラジアル荷重を受けるころ軸受と、前記収容部材と前記ワーク載置テーブルとの間に設けられて、前記主軸の軸線方向に作用するアキシャル荷重を受けるスラスト軸受と、を備えた立形旋盤において、
前記収容部材に、前記主軸を前記軸線方向の下側に引っ張ることで、該下側に移動した前記ワーク載置テーブルが前記スラスト軸受に前記下側への予圧を加えるようにする予圧手段を設けたことを特徴とする立形旋盤。
【請求項2】
前記予圧手段を、前記収容部材に対して前記主軸を回転自在に支持すると共に、前記下側への予圧が付与されたアンギュラ玉軸受としたことを特徴とする請求項1に記載の立形旋盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワークを載置可能なワーク載置テーブルを、差し替え可能に配置されるライナを介して上端に高さ調整可能に取り付けて垂直に設けられた主軸と、前記ワーク載置テーブルの下方に配置されて前記主軸を収容する収容部材に固定されて、前記主軸を回転自在に支持すると共に、該主軸の径方向に作用するラジアル荷重を受けるころ軸受と、前記収容部材と前記ワーク載置テーブルとの間に設けられて、前記主軸の軸線方向に作用するアキシャル荷重を受けるスラスト軸受と、を備えた立形旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、垂直に設けてワークを把持するワーク主軸を、ベッドに対して回転並びに旋回角度割出し可能に軸支して、ワーク主軸に把持させたワークに対し、旋削加工や穴あけ加工等の多様な加工を可能にした複合加工工作機械が開示されている。特許文献1に記載の複合加工工作機械では、ワーク主軸の上部及び下部が、ベッドに組み込まれた枠体に、軸受によって支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−287102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような垂直に設けられたワーク主軸を備えた立形旋盤では、ワーク主軸を、ワークを載置可能なワーク載置テーブルと、該ワーク載置テーブルを上端に取り付ける主軸とで構成したものがある。そしてこの立形旋盤では、ワーク載置テーブルの下方に配置した主軸の収容部材と該ワーク載置テーブルとの間に、主軸の軸線方向に作用するアキシャル荷重を受けるスラスト軸受を備えると共に、前記収容部材に、前記主軸を回転自在に支持して、該主軸の径方向に作用するラジアル荷重を受けるころ軸受を備えたものがある。
【0005】
このような立形旋盤では、前記ころ軸受が正規の位置からずれた位置で収容部材に固定されることがあると、ワーク載置テーブルが正規の位置に配置されないことがある。そこで、ワーク載置テーブルを正規の位置に配置するために、主軸とワーク載置テーブルとの間に、ライナを差し替え可能に配置して、このライナを介してワーク載置テーブルを、主軸の上端に高さ調整可能に取り付けることがなされていた。
【0006】
しかしながら、上記のようなワーク載置テーブルの高さを調整する作業の際には、ワーク載置テーブルにワークを載置した状態を想定して、前記スラスト軸受に、ワーク載置テーブルの重量による予圧の他に、前記ワークの重量による予圧を加える必要がある。そのためには、作業者は、ライナの差し替え作業に加えて、前記ワークと同等の重量を有する錘部材をワーク載置テーブルに載せる作業をしなければならなかった。このようなことから、作業者にとってはワーク載置テーブルの高さを調整する作業を負担に感じることがあった。
【0007】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、作業者の負担を軽減してワーク載置テーブルの高さ調整を可能にした立形旋盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係る立形旋盤は、ワークを載置可能なワーク載置テーブルを、差し替え可能に配置されるライナを介して上端に高さ調整可能に取り付けて垂直に設けられた主軸と、前記ワーク載置テーブルの下方に配置されて前記主軸を収容する収容部材に固定されて、前記主軸を回転自在に支持すると共に、該主軸の径方向に作用するラジアル荷重を受けるころ軸受と、前記収容部材と前記ワーク載置テーブルとの間に設けられて、前記主軸の軸線方向に作用するアキシャル荷重を受けるスラスト軸受と、を備えた立形旋盤において、前記収容部材に、前記主軸を前記軸線方向の下側に引っ張ることで、該下側に移動した前記ワーク載置テーブルが前記スラスト軸受に前記下側への予圧を加えるようにする予圧手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記予圧手段を、前記収容部材に対して前記主軸を回転自在に支持すると共に、前記下側への予圧が付与されたアンギュラ玉軸受としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明に係る立形旋盤によれば、ワーク載置テーブルの高さを調整する作業を行う際には、ワーク載置テーブルに錘部材を載せなくても、スラスト軸受には、ワーク載置テーブルの重量による予圧の他に、予圧手段によって、主軸の軸線方向の下側への予圧を加えることができる。したがって、スラスト軸受に前記下側への予圧を加えるために、作業者がワーク載置テーブルに錘部材を載せる作業を行う必要がない。よって、ワーク載置テーブルの高さを調整する際の作業者の負担を軽減できる。
請求項2の発明によれば、主軸の軸線方向の下側への予圧が付与されたアンギュラ玉軸受に、主軸を回転自在に支持させるだけの簡単な構成で、該主軸に取り付けたワーク載置テーブルを前記下側に移動させることができる。その結果、下側に移動したワーク載置テーブルによって、スラスト軸受に前記下側への予圧を加えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の立形旋盤の概略部分正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を図1を参照しつつ説明する。図1には、垂直に設けた主軸2の上端にワークを載置可能なワーク載置テーブル3(以下「テーブル3」という。)を取り付けた立形旋盤1を示した。この立形旋盤1では、テーブル3の上方に、工具を装着する工具主軸を下向きに支持した主軸頭(図示せず。)が、上下方向へ移動可能に配置されている。この工具主軸に装着された工具によって、テーブル3に載置されたワークに対して旋削加工が行われる。
【0013】
一方、テーブル3の下方には、ベッド(図示せず。)に組み込まれて固定された主軸収容ハウジング4が配置されている。図1に示すように主軸2は、該主軸2の外周面上部(図1の上側)を主軸収容ハウジング4から突出させて該主軸収容ハウジング4に収容されている。主軸2の外周面上部には、円板状のフランジ7が周設されている。本実施形態では、フランジ7の上面とテーブル3の下面中央部との間に、差し替え可能な円環状の高さ調整用ライナ8を介在させて、主軸2の上端にテーブル3を取り付けた。ここでは、フランジ7の上面とテーブル3の下面中央部との間に挿入する高さ調整用ライナ8の厚みを適宜変更することで、テーブル3を、主軸2の上端に該主軸2の軸線方向(図1の上下方向)で高さ調整可能に取り付けることができる。なお、主軸収容ハウジング4は本発明の収容部材の一例であり、高さ調整用ライナ8は本発明のライナの一例である。
【0014】
また図1に示すように、主軸2の外周面下部と主軸収容ハウジング4の内壁面との間には、上下2段に配置した円筒ころ軸受10,10を介在させている。加えて、主軸2の軸線方向でフランジ7よりも下方の主軸2の外周面と、主軸収容ハウジング4の内壁面との間にも、上下2段に配置した円筒ころ軸受11,11を介在させている。各円筒ころ軸受10,11により、主軸2を主軸収容ハウジング4に対して回転自在に支持すると共に、該主軸2の径方向に作用するラジアル荷重を受けることができる。加えて各円筒ころ軸受10,11を上下2段に配置することで、ラジアル荷重に対する各円筒ころ軸受10,11の剛性を高めた。なお、各円筒ころ軸受10,11は本発明のころ軸受の一例である。
【0015】
さらに、主軸2の軸線方向における両円筒ころ軸受10,11の間で、主軸2の外周面と主軸収容ハウジング4の内壁面との間に、上下2段に配置したアンギュラ玉軸受12,12を介在させている。ここでは、両アンギュラ玉軸受12,12の組み合せ形式を正面組合せとして、アンギュラ玉軸受12,12で主軸2を回転自在に支持するようにした。加えて本実施形態では、前記軸線方向で両アンギュラ玉軸受12,12の間に、ばね(図示せず。)が挿入されている。このばねの弾性力によって、両アンギュラ玉軸受12,12に前記軸線方向の下側への所定量の予圧が付与されている。加えて、主軸収容ハウジング4の上面と、該上面に対向するテーブル3の下面との間に、スラスト軸受13を介在させている。このスラスト軸受13により、前記軸線方向に作用するアキシャル荷重を受けることができる。
【0016】
次に、立形旋盤1においてテーブル3の高さを調整する動作を説明する。テーブル3の高さを調整する際には、テーブル3にワークを載置した状態を想定する必要がある。そのために、従来は作業者が、ワークと同等の重量を有する錘部材をテーブル3に載置する作業を行って、スラスト軸受13に、テーブル3の重量による予圧の他に、錘部材の重量による予圧を加えることがなされていた。これに対し、本実施形態では、錘部材の重量による予圧に代えて、アンギュラ玉軸受12,12を用いることで、以下に説明するようにスラスト軸受13に予圧を加えるようにした。このアンギュラ玉軸受12,12には、上記のように、主軸2の軸線方向の下側への予圧が付与されている。すると、この予圧により、アンギュラ玉軸受12,12に支持された主軸2も前記下側へ引っ張られる。これにより、主軸2に取り付けられたテーブル3も前記下側へ移動するため、該下側へ移動したテーブル3がスラスト軸受13に前記下側への予圧を加えることになる。したがって、本実施形態の立形旋盤1では作業者は、スラスト軸受13に前記下側への予圧を加えるために、テーブル3に錘部材を載置する必要がない。なお、アンギュラ玉軸受12,12は本発明の予圧手段の一例である。
【0017】
<本実施形態の効果>
本実施形態の立形旋盤1では、テーブル3の高さを調整する作業を行う際には、テーブル3に錘部材を載置しなくても、スラスト軸受13には、テーブル3の重量による予圧の他に、アンギュラ玉軸受12,12によって、主軸2の軸線方向の下側への予圧を加えることができる。したがって、スラスト軸受13に前記下側への予圧を加えるために、作業者がテーブル3に錘部材を載置する作業を行う必要がない。よって、テーブル3の高さを調整する際の作業者の負担を軽減できる。
【0018】
また、主軸2の軸線方向の下側への予圧が付与されたアンギュラ軸受12,12に、主軸2を回転自在に支持させるだけの簡単な構成で、該主軸2に取り付けたテーブル3を前記下側に移動させることができる。その結果、下側に移動したテーブル3によって、スラスト軸受13に前記下側への予圧を加えることが可能になる。
【0019】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。上述した実施形態では、ばねの弾性力によって、アンギュラ玉軸受12,12に主軸2の軸線方向の下側への予圧を付与する例を示したが、これに限らない。例えば前記予圧を付与する方法として、前記軸線方向で両アンギュラ玉軸受12,12の間に間座を挿入して、この間座によって両アンギュラ玉軸受12,12が軸線方向で所定量だけ離間するように変位させることで、アンギュラ玉軸受12,12に前記下側への予圧を付与する等の適宜の方法を採用してもよい。
【符号の説明】
【0020】
1・・立形旋盤、2・・主軸、3・・ワーク載置テーブル、4・・主軸収容ハウジング、8・・高さ調整用ライナ、10,11・・円筒ころ軸受、12・・アンギュラ玉軸受、13・・スラスト軸受。
図1