特許第6029535号(P6029535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000002
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000003
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000004
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000005
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000006
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000007
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000008
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000009
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000010
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000011
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000012
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000013
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000014
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000015
  • 特許6029535-コンタクトプローブ 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029535
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】コンタクトプローブ
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/073 20060101AFI20161114BHJP
   G01R 31/26 20140101ALI20161114BHJP
【FI】
   G01R1/073 E
   G01R31/26 J
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-110568(P2013-110568)
(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-228506(P2014-228506A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】秋山 肇
(72)【発明者】
【氏名】岡田 章
(72)【発明者】
【氏名】山下 欽也
【審査官】 中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−218473(JP,A)
【文献】 実開昭58−104968(JP,U)
【文献】 特開平07−209335(JP,A)
【文献】 特開2008−232778(JP,A)
【文献】 特表2008−503734(JP,A)
【文献】 特表2008−510166(JP,A)
【文献】 特開2010−038651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06− 1/073
G01R31/02−31/06
G01R31/26−31/3193
H01L21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の電極パッドに接触するコンタクトプローブであって、
前記電極パッドと接触する第1接触面を有し、可撓性を有するコンタクト部と、
前記コンタクト部を保持し、導電性を有する保持部と、
前記コンタクト部を加圧して、前記第1接触面を前記電極パッドに押しつける導電性の加圧部と
前記コンタクト部及び前記加圧部の少なくとも一方の温度を制御する温度制御部と
を備え
前記加圧部は、空気圧によって伸縮する、ベロー形の伸縮性の加圧部材を備え、
前記加圧部材における前記コンタクト部との第2接触面は可撓性を有し
前記コンタクト部は、可撓性を有する複数の板状のコンタクト部材を備え、
前記複数の板状のコンタクト部材のそれぞれの主面は、前記検査対象物の一つの電極パッドに接触し、
前記保持部及び前記加圧部はテスタと電気的に接続され、
前記テスタからの電気信号は、前記保持部及び前記加圧部を介して前記コンタクト部に供給される、コンタクトプローブ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンタクトプローブであって、
前記保持部は可撓性を有する、コンタクトプローブ。
【請求項3】
請求項に記載のコンタクトプローブであって、
前記保持部は、薄肉部を備えることによって可撓性を有する、コンタクトプローブ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコンタクトプローブであって、
前記保持部は、コンタクトプローブに対して着脱可能である、コンタクトプローブ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のコンタクトプローブであって、
前記コンタクト部は、前記加圧部と接触する弾力性部分を備える、コンタクトプローブ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のコンタクトプローブであって、
前記コンタクト部は、前記コンタクトプローブに対して着脱可能である、コンタクトプローブ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のコンタクトプローブであって、
前記コンタクト部の前記第1接触面は金属である、コンタクトプローブ。
【請求項8】
請求項に記載のコンタクトプローブであって、
前記第1接触面は、銅もしくはアルミニウムである、コンタクトプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜2に記載されているように、半導体装置等の検査対象物の電極パッドにコンタクトプローブを接触させて、当該検査対象物の電気的特性を測定する技術が従来から提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−152264号公報
【特許文献2】特開2012−052943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、コンタクトプローブについては、電極パッドの表面に凹凸や異物が存在する場合であっても、電極パッドとの間の接触抵抗を下げることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は上述した点に鑑みて成されたものであり、コンタクトプローブと電極パッドとの間の接触抵抗を下げる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るコンタクトプローブの一態様は、検査対象物の電極パッドに接触するコンタクトプローブであって、前記電極パッドと接触する第1接触面を有し、可撓性を有するコンタクト部と、前記コンタクト部を保持し、導電性を有する保持部と、前記コンタクト部を加圧して、前記第1接触面を前記電極パッドに押しつける導電性の加圧部と、前記コンタクト部及び前記加圧部の少なくとも一方の温度を制御する温度制御部とを備え、前記加圧部は、空気圧によって伸縮する、ベロー形の伸縮性の加圧部材を備え、前記加圧部材における前記コンタクト部との第2接触面は可撓性を有し前記コンタクト部は、可撓性を有する複数の板状のコンタクト部材を備え、前記複数の板状のコンタクト部材のそれぞれの主面は、前記検査対象物の一つの電極パッドに接触し、前記保持部及び前記加圧部はテスタと電気的に接続され、前記テスタからの電気信号は、前記保持部及び前記加圧部を介して前記コンタクト部に供給される

【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コンタクトプローブと電極パッドとの間の接触抵抗を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態に係る試験装置の機能構成を示す図である。
図2】第一実施形態に係る試験装置の外観を示す図である。
図3】第一実施形態に係るプローブ装置の外観を示す図である。
図4】第一実施形態に係る加圧部材の動作を説明するための図である。
図5】第一実施形態に係る加圧部材の動作を説明するための図である。
図6】第一実施形態に係る加圧部材の動作を説明するための図である。
図7】コンタクトプローブを示す図である。
図8】コンタクトプローブを示す図である。
図9】コンタクトプローブを示す図である。
図10】コンタクトプローブを示す図である。
図11】保持部の断面図を示す図である。
図12】保持部の断面図を示す図である。
図13】プローブ装置の外観を示す図である。
図14】第二実施形態に係るプローブ装置の外観を示す図である。
図15】コンタクトプローブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
<検査装置の構成について>
図1は、本実施の形態に係る検査装置1の機能構成を示す図である。検査装置1は、例えば半導体装置を検査対象物とする半導体検査装置である。検査装置1は試験装置とも呼ばれる。図1に示されるように、検査装置1は、プローブ装置2と、移動アーム部3と、チャックステージ4と、テスタ5と、駆動部6とを有している。
【0010】
プローブ装置2とテスタ5とは、電気的に接続されている。プローブ装置2は、検査対象物(本例では半導体装置)の電極パッドに接触する。そして、テスタ5は、プローブ装置2を介して、検査対象物の電気的特性の測定を行い、その測定結果に基づいて、検査対象物の良品・不良品を判定する。テスタ5は、検査対象物の電気的特性の測定を行う際には、検査対象物の電極パッドに電流や電圧といった電気信号を供給(印加)する。
【0011】
また、プローブ装置2は、移動アーム部3によって保持されており、移動アーム部3の移動動作によって移動可能となっている。チャックステージ4は、検査対象物の電気的特性の測定を行う際に、検査対象物を固定する固定動作を行う。駆動部6は、テスタ5からの指示信号に応じて、移動アーム部3およびチャックステージ4を制御する。
【0012】
図2は、検査装置1の一部の構成を示す斜視図である。図2には、プローブ装置2と、移動アーム部3と、チャックステージ4と、検査対象物7とが示されている。検査対象物7は、例えば、集積回路が形成された複数の半導体チップを有する半導体ウエハあるいは1つの半導体チップである。検査対象物7の電気的特性は、検査対象物7がチャックステージ4の上に固定された状態で測定される。チャックステージ4における検査対象物7の固定は、例えば、真空吸着や静電吸着を行うことにより実現される。なお、チャックステージ4における検査対象物7の固定は、この方法に限られない。
【0013】
プローブ装置2は、移動アーム部3によって移動させられることによって、チャックステージ4に固定されている検査対象物7と接触する。プローブ装置2は、移動アーム部3によって、3軸方向(図2に示されるX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向)に移動可能である。また、プローブ装置2は、図2に示される信号線8によって、既述したテスタ5と電気的に接続されている。なお、チャックステージ4が移動動作することで、移動アーム部3に保持されるプローブ装置2と、チャックステージ4に固定される検査対象物7とを接触させてもよい。
【0014】
<プローブ装置2について>
続いて、プローブ装置2について図3を参照しながら以下に説明する。図3は、プローブ装置2を示す側面図である。
【0015】
プローブ装置2は、プローブカード9と、ヒーター部10a,10bとを有する。なお、図3に示されるプローブ装置2は、ヒーター部10a,10bを有しているが、プローブ装置2は必ずしもヒーター部10a,10bを有する必要はない。後に説明するが、ヒーター部10a,10bは、コンタクトプローブ11の温度を制御するために設けられる。つまり、ヒーター部10a,10bは、コンタクトプローブ11の温度を制御する温度制御部として機能する。
【0016】
プローブカード9は、検査対象物7と接触するコンタクトプローブ11と、コンタクトプローブ11が取り付けられるプローブ基板12とを有している。本実施の形態では、コンタクトプローブ11は、加圧部13と、コンタクト部15と、保持部16とを有する。移動アーム部3は、プローブ基板12と接続されており、プローブ基板12を移動させる。プローブ基板12が移動することによって、プローブ装置2全体が移動可能となる。
【0017】
本実施の形態に係るプローブカード9では、プローブ基板12に対して、1つのコンタクトプローブ11が取り付けられているが、複数のコンタクトプローブ11が取り付けられても良い。検査対象物7が例えばパワー半導体装置である場合には、検査対象物7に対して数百アンペアといった大きな電流を印加することがある。このような場合には、検査対象物7に設けられた大きな電極パッドと、プローブカード9が有する複数のコンタクトプローブ11と接触させることによって、当該複数のコンタクトプローブを介して大きな電流を検査対象物7に印加することが可能となる。なお、従来のコンタクトプローブは、コイル状のバネを備え、先端形状が針状で一軸方向に摺動するものが多い。
【0018】
加圧部13は、少なくとも1つの加圧部材を備えている。本実施の形態では、加圧部13は、例えば2つの加圧部材14a,14bを備えている。加圧部材14aは取付部17a及び接続部18aを備えており、加圧部材14bは取付部17b及び接続部18bを備えている。加圧部材14a,14bについては、後で詳しく説明する。また、保持部16は、取付部17cを備えている。
【0019】
コンタクト部15は、保持部16に保持されており、コンタクト部15が有する接触面30で検査対象物7(より具体的には、検査対象物7の表面に設けられた電極パッド)に電気的かつ物理的に接触する。コンタクト部15は、例えば1つの板状部材からなり、電極パッドに電気信号を供給する際に、接触面30と検査対象物7の電極パッドとの間の接触面積を確保するため可撓性を有する。コンタクト部15は、例えば、電気伝導性を有する、可撓性を備えた薄厚の金属材料で構成される。コンタクト部15は、例えば、銅やアルミニウムなどで構成される。このように、コンタクト部15が金属材料で構成されることによって、コンタクト部15の接触面30は金属材料で構成される。したがって、コンタクト部15と電極パッドとの間に良好な電気伝導性を確保することができる。よって、コンタクト部15と電極パッドとの接触抵抗を簡単に下げることができる。
【0020】
また、コンタクト部15は、例えば、ネジ止めや嵌合によって、保持部16に対して着脱可能に取り付けられる。つまり、コンタクト部15は、コンタクトプローブ11に対して着脱可能である。したがって、コンタクト部15が損傷した場合などに、容易にコンタクト部15の交換をすることができる。
【0021】
加圧部材14aの取付部17aは、加圧部材14aをプローブ基板12に取り付けるためのものである。同様に、加圧部材14bの取付部17bは、加圧部材14bをプローブ基板12に取り付けるためのものである。取付部17a,17bは、加圧部材14a,14bの一方端部にそれぞれ設けられている。取付部17a,17bは、プローブ基板12の下面に設けられたソケット部(図示せず)と嵌合する。これにより、加圧部材14a,14bがプローブ基板12の基台を成す絶縁性基体に機械的に取り付けられて固定される。また、ソケット部から取付部17a,17bが取り外されることによって、加圧部材14a,14bは、プローブ基板12から取り外される。
【0022】
保持部16の取付部17cは、保持部16をプローブ基板12に取り付けるためのものである。取付部17cは、保持部16の一方端部に設けられている。保持部16の他端にはコンタクト部15が接続されている。取付部17cは、プローブ基板12の下面側に設けられたソケット部(図示せず)と嵌合する。これにより、保持部16がプローブ基板12の基台を成す絶縁性基体に機械的に取り付けられて固定される。また、ソケット部から取付部17cが取り外されることによって、保持部16はプローブ基板12から取り外される。
【0023】
このように、本実施の形態では、取付部17a,17bは、プローブ基板12に直接固定されるのではなく、ソケット部を介してプローブ基板12に固定されるため、加圧部13(加圧部材14a,14b)が損傷した場合などに、加圧部13(加圧部材14a,14b)を容易に交換することができる。また、取付部17cは、プローブ基板12に直接固定されるのではなく、ソケット部を介してプローブ基板12に固定されるため、保持部16が損傷した場合などに、保持部16を容易に交換することができる。
【0024】
加圧部13に設けられた接続部18a,18bは、プローブ基板12上に形成された信号線8と電気的に接続されている。接続部18a,18bは、信号線8に供給されるテスタ5からの電気信号をコンタクト部15に伝達するために使用される。接続部18a,18bは、信号線8に対して、電線によって接続されてもよいし、半田等を使用して直接的に接続されてもよい。本実施の形態では、加圧部材14a,14bは導電性を有する材料(例えば、銅、タングステン、レニウムなど)で構成されている。接続部18a,18bが信号線8と電気的に接続されることによって、加圧部材14a,14bがテスタ5と電気的に接続される。信号線8に供給されたテスタ5からの電気信号は、加圧部13の接続部18a,18bに供給される。そして、当該電気信号は、加圧部13(加圧部材14a,14b)を介してコンタクト部15に伝達される。コンタクト部15に伝達された当該電気信号は、当該コンタクト部15と接触する電極パッドに供給される。
【0025】
なお、上記の例では、テスタ5からの電気信号が、加圧部13を通じてコンタクト部15に供給されていたが、これに加えて、あるいはこれの代わりに、保持部16を介してコンタクト部15に供給されても良い。この場合には、信号線8に電気的に接続された接続部が、保持部16の一方端部に設けられる。そして、当該接続部を有する保持部16が導電性を有する材料(例えば、銅、タングステン、レニウムなど)で構成される。これにより、テスタ5とコンタクト部15とが、信号線8及び保持部16を介して電気的に接続される。
【0026】
テスタ5からの電気信号が、加圧部13(加圧部材14a,14b)を介してコンタクト部15に供給されるとともに、保持部16を介してコンタクト部15に供給される場合には、テスタ5からコンタクト部15への電気信号の経路を分散することができる。よって、コンタクト部15への電流等の電気信号の供給時に生じる発熱を抑制することができる。
【0027】
また、テスタ5からの電気信号が保持部16を介してコンタクト部15に供給される場合には、保持部16の断面積を大きくすることによって、コンタクト部15への電気信号の供給時に保持部16で発生する発熱を抑制することができる。
【0028】
<加圧部材について>
加圧部材14a,14bは、コンタクト部と検査対象物7の電極パッドとの間に異物や表面の凹凸、うねり等が介在しても、コンタクト部15の接触面30と検査対象物7の電極パッドとの間の接触面積を確保するために設けられている。加圧部材14bは、加圧部材14aと同様の構成を有するとともに、加圧部材14aと同様の動作を行うことから、以下では、加圧部材14aを中心に説明する。図4,5,6は、加圧部材14aの動作を説明するための図である。
【0029】
図4,5,6に示されるように、加圧部材14aは、取付部17aと、接続部18aと、進入部19aと、先端部20aとを有している。加圧部材14aは、その先端部20aが押されることによって、弾性的に縮むことができる。加圧部材14aは、移動アーム部3によってプローブ装置2が移動させられることによって、コンタクト部15を検査対象物7の電極パッド22に押し付ける。検査対象物7では、電極パッド22が半導体チップ21上に設けられている。
【0030】
先端部20aは、コンタクト部15を介して電気的に電極パッド22に接続される。進入部19aは、内部にスプリング等の弾性体を備えている。この弾性体の働きによって、加圧部材14aは弾性的に縮むことが可能である。加圧部材14aがその先端部20aでコンタクト部15を押し付けると、先端部20aがコンタクト部15から押されて、先端部20aに繋がった進入部19aが、その内部の弾性体が弾性変形しながら取付部17a内に進入する。これにより、加圧部材14aが弾性的に縮むようになる。進入部19aの内部の弾性体が弾性変形すると、当該弾性体の復元力(弾性力)により、先端部20aにはコンタクト部15側に向かう力が働くようになる。その後、加圧部材14aがコンタクト部15を押し付けないようになると、先端部20aはコンタクト部15から押されないようになり、進入部19aの弾性体の弾性変形が解除されて、進入部19aは取付部17aから退出する。これにより、縮んだ加圧部材14aが伸びて、元の長さに戻るようになる。
【0031】
加圧部材14aを構成する構成要素は、必ずしも同じ材料でなくてもよい。例えば、取付部17a、接続部18a、押し込み部19aについては、導電性を有する材料(例えば、銅、タングステン、レニウムなど)で形成し、コンタクト部15と接触するために耐久性が要求される先端部20aについては、導電性および耐久性を有する材料(例えば、金、パラジウム、タンタル、プラチナ)で形成する。また、先端部20aでは、コンタクト部15と接触する表面だけに導電性および耐久性を有する材料を設けても良い。
【0032】
次に、検査装置1において検査対象物7の電気的特性が測定される際の加圧部材14aの動作について図4,5,6を参照しながら説明する。図4,5,6は、初期状態(図4)から動作が完了する(図6)までの加圧部材14aの動作を時系列に示している。
【0033】
まず、プローブ基板12が移動アーム部3によって移動させることによって、プローブ装置2は、図4に示されるように、コンタクト部15が検査対象物7の電極パッド22に接触する初期状態となる。そして、プローブ基板12が移動アーム部3によってさらに移動させられることによって、図5に示されるように、加圧部材14aの先端部20a(及び加圧部材14bの先端部)がコンタクト部15に接触する。
【0034】
その後、プローブ基板12が移動アーム部3によってコンタクト部30側に移動させられると、加圧部材14a(及び加圧部材14b)がコンタクト部15を加圧するようになる。このとき、図6に示されるように、進入部19aが、その弾性体が弾性変形しながら取付部17a内に進入する。先端部20aには、進入部19aの弾性体の復元力により、コンタクト部15側に向かう力が働く。したがって、加圧部材14aは、縮んだ状態であっても、コンタクト部15を加圧して電極パッド22に押し付ける。
【0035】
検査装置1においては、図6に示される状態、つまり、電極パッド22上のコンタクト部15が加圧部13によって電極パッド22側に押し付けられた状態で、テスタ5からの電気信号がコンタクト部15に供給される。
【0036】
検査装置1において検査対象物7の電気的特性の測定が終了すると、プローブ基板12が移動アーム部3によって移動させられて、加圧部13によるコンタクト部15の押し付けが解除し、その後、コンタクト部15が電極パッド22から離れるようになる。加圧部13によるコンタクト部15の押し付けが解除すると、進入部19aの弾性体の弾性変形が解除されて、進入部19aは取付部17aから退出する。これにより、加圧部材14a(及び加圧部材14b)は元の長さに戻る。
【0037】
<コンタクト部と電極パッドとの接触状態について>
コンタクトプローブと検査対象物の電極パッドとを接触させる際に、電極パッドの表面に異物あるいはうねり等の凹凸等が存在すると、コンタクトプローブと電極パッドとの間の接触面積が小さくなり、その結果、コンタクトプローブと電極パッドとの間の接触抵抗が増大する可能性がある。コンタクトプローブと電極パッドとの間の接触抵抗が増大すると、テスタからの電流等の電気信号をコンタクトプローブを介して電極パッドに印加すると、コンタクトプローブと電極パッドとの間の接触部分での発熱が増大する。
【0038】
また、複数のコンタクトプローブを電極パッド22に接触させて検査対象物7の電気的特性を測定する際には、電極パッド22の表面状態に起因して、複数のコンタクトプローブと電極パッド22との間の接触抵抗にばらつきが生じる可能性がある。その結果、検査対象物7の電気的特性の測定結果の信頼性が劣化する可能性がある。
【0039】
そこで、本実施の形態に係るコンタクトプローブ11では、コンタクト部15が有する可撓性と、加圧部13(加圧部材14a,14b)のコンタクト部15に対する加圧とにより、電極パッド22の表面に凹凸や異物が存在する場合であっても、コンタクト部15と電極パッド22との間の接触面積を確保できるようになっている。これにより、コンタクト部15と電極パッド22との間の接触抵抗を下げることができる。したがって、検査装置1と検査対象物7とが電気的に安定した接続状態となり、検査対象物7の電気的特性の測定の信頼性が向上する。その結果、検査対象物7の歩留まりの向上が可能となる。
【0040】
また、本実施の形態においては、可撓性を備えたコンタクト部15が、テスタ5らの電気信号が供給される加圧部13(加圧部材14a,14b)と電極パッド22との間に介在するため、加圧部13(加圧部材14a,14b)が直接電極パッド22に接触することを防止している。したがって、本実施の形態では、電極パッド22に物理的なダメージを与えない利点もある。
【0041】
以下に、電極パッド22の表面に異物が存在する場合と、電極パッド22の表面に凹部が存在する場合とに分けて、コンタクト部15と電極パッド22との接触状態について説明する。
【0042】
まず、電極パッド22の表面に異物が存在する場合のコンタクト部15と電極パッド22との接触状態について、図7および図8を参照しながら説明する。図7は、第一実施形態に係るコンタクトプローブ11の一部を示す図である。図8は、第一実施形態とは異なり可撓性を有さないコンタクトプローブの一部を示す図である。
【0043】
図7および図8はともに、検査対象物7の電極パッド22の表面に異物23が存在する場合を示している。図7では、可撓性を有するコンタクト部15が、加圧部13(加圧部材14a,14b)によって電極パッド22に押しつけられた状態で、表面に異物23が存在する電極パッド22と接触している。これにより、図7に示されるように、コンタクト部15は、異物23の形状に応じて変形しながら電極パッド22と接触し、コンタクト部15と電極パッド22との間の接触面積を確保することができる。よって、コンタクト部15と電極パッド22との間の接触抵抗を低減することができ、テスタ5からの電気信号を電極パッド22に十分に印加することができる。
【0044】
また、本例のように、複数の加圧部材14a,14bを用いることにより、加圧部13はコンタクト部15をしっかりと押さえつけることができる。加圧部13が備える加圧部材の数が多いほど、加圧部13がコンタクト部15をしっかりと押さえつけることができ、コンタクト部15と電極パッド22との間の接触面積を確保することができる。
【0045】
一方、図8では、可撓性を有さないコンタクト部24が、表面に異物23が存在する電極パッド22と接触している。コンタクト部24は、可撓性を有さないため、電極パッド22の表面状態に応じて変形しにくい。したがって、図8に示されるように、異物23が電極パッド22とコンタクト部24との間に介在することで、電極パッド22とコンタクト部24との間の接触面積が小さくなる。よって、電極パッド22とコンタクト部24との間の接触抵抗が大きくなり、テスタからの電気信号は電極パッド22に十分に印加されない。
【0046】
次に、電極パッド22の表面に凹部が存在する場合のコンタクト部15と電極パッドとの接触状態について、図9および図10を参照しながら説明する。図9は、第一実施形態に係るコンタクトプローブ11の一部を示す図である。図10は、第一実施形態とは異なる可撓性を有さないコンタクトプローブの一部を示す図である。
【0047】
図9及び図10はともに、検査対象物7の電極パッド22の表面に凹部31が存在する場合を示している。図9では、可撓性を有するコンタクト部15が、加圧部13(加圧部材14a,14b)によって電極パッド22に押しつけられた状態で、表面に凹部31を有する電極パッド22と接触している。これにより、図9に示されるように、コンタクト部15は、電極パッド22の表面の形状に応じて変形しながら電極パッド22と接触し、コンタクト部15と電極パッド22との間の接触面積を確保することができる。本例のように、加圧部13が複数の加圧部材14a,14bを備える場合には、加圧部13はコンタクト部15をしっかりと押さえつけることができる。よって、コンタクト部15と電極パッド22との間の接触面積をより大きくすることができる。
【0048】
一方、図10では、可撓性を有さないコンタクト部24が、表面に凹部31を有する電極パッド22と接触している。コンタクト部24は、可撓性を有さないため、電極パッド22の表面状態に応じて変形しにくい。したがって、図10に示されるように、電極パッド22における、凹部31が形成されている部分は、コンタクト部24と接触しにくくなる。よって、電極パッド22とコンタクト部24との間の接触抵抗が大きくなり、テスタからの電気信号は電極パッド22に十分に印加されない。
【0049】
このように、本実施の形態では、可撓性を有するコンタクト部15が、加圧部13によって電極パッド22に押しつけられた状態で電極パッド22と接触することから、電極パッド22の表面状態にかかわらず、コンタクト部15と電極パッド22との間の接触抵抗を低減することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、加圧部材14a,14bは、その先端が押されると、弾性的に縮むことから、電極パッド22の表面状態にかかわらず、コンタクト部15を適切な圧力で電極パッド22に押し付けることができる。具体的には、加圧部材14aは、図7に示されるように、電極パッド22の表面上の異物23の上方に存在する場合と、図9に示されるように、電極パッド22の表面上の凹部31の上方に存在する場合とで、自身の長さを自動的に変化させることができる。したがって、異物23の上方に位置する加圧部材14aがコンタクト部15を押し付ける力が強すぎたり、凹部31の上方に位置する加圧部材14aがコンタクト部15を押し付ける力が弱すぎたりなることを抑制することができる。加圧部材14a,14bは、弾性的に縮むことができない場合であっても、コンタクト部15を加圧することは可能であることから、加圧部材14a,14bは、必ずしも弾性的に縮むことができる必要はない。
【0051】
また、本実施の形態では、テスタ5からの電気信号は、加圧部13(加圧部材14a,14b)を通じてコンタクト部15に供給される。ここで、加圧部13はコンタクト部15を加圧していることから、加圧部13とコンタクト部15とは確実に接触している。つまり、加圧部13とコンタクト部15との間の接触抵抗は低い。よって、本例のように、テスタ5からの電気信号が、加圧部13を通じてコンタクト部15に供給される場合であっても、加圧部13とコンタクト部15との接触部分における発熱を抑制することができる。
【0052】
なお、特許文献1に開示される技術では、ブラシを用いて異物を除去することで電極パッドとコンタクトプローブとの接触抵抗を低減させている。しかし、特許文献1の技術では、異物を除去する際に、電極パッドが損傷したり、異物が飛散したりする可能性があるとともに、低コスト化や小型化が困難である。これに対して、本実施の形態におけるコンタクトプローブ11では、電極パッド22の表面に異物23が存在する場合においても、可撓性を有するコンタクト部15および加圧部13により、異物23を取り除くことなく、コンタクト部15と電極パッド22との接触抵抗を低減させることができる。したがって、本実施の形態では、異物を除去する際に電極パッド22が損傷したり、異物が飛散したりするということが起こらない。
【0053】
また、特許文献2に開示される技術では、電極パッドの異物や自然酸化膜を取り除く目的で、コンタクトプローブ先端のコンタクト部分が回転運動を伴って電極パッドに接触している。しかし、特許文献2に開示されるコンタクトプローブは、部品数が多く、構造も複雑であるため、コストが高く、部品損傷時などの交換作業の作業性も悪い。本実施形態のコンタクトプローブ11は、部品数も少なく、それぞれの部品の脱着も容易であるため、低コスト化および部品損傷時などの部品交換作業の作業性向上を図ることができる。
【0054】
本実施の形態では、コンタクト部15は1つのコンタクト部材(1つの板状部材)で構成されているが、コンタクト部15は、可撓性を有する複数のコンタクト部材、例えば複数の板状部材で構成されても良い。複数のコンタクト部材のそれぞれは、電極パッド22の表面の状態に応じて、電極パッド22との接触面を変形させながら電極パッド22に接触することが可能であるため、電極パッド22とコンタクト部15との間の接触面積をさらに大きくすることができる。よって、電極パッド22とコンタクト部15との間の接触抵抗をさらに下げることができる。
【0055】
<保持部について>
ここでは、保持部16について説明する。保持部16は可撓性を有することが望ましい。保持部16が可撓性を有することにより、コンタクト部15と電極パッド22とが接触する際に、電極パッド22に過度な圧力がかかることを抑制することができる。したがって、電極パッド22の損傷を抑制することができる。
【0056】
保持部16を電気絶縁性の材料で構成する場合には、例えば、エンジニアリングプラスチックなどの電気絶縁性の材料で保持部16を形成する。これにより、可撓性を有する保持部16を簡単に作成することができる。
【0057】
一方、保持部16を、導電性を有する材料で構成する場合には、例えば、銅、アルミニウムといった金属材料で保持部16を形成する。これにより、可撓性を有する保持部16を簡単に作成することができる。
【0058】
また、保持部16の可撓性は、保持部16を形成する樹脂等の材料の材質に基づく可撓性だけでなく、保持部16の形状に基づく可撓性であっても良い。例えば、保持部16が板状である場合には、保持部16が、図11及び図12に示される薄肉部の少なくとも一方を備えることで、保持部16は可撓性を有することができる。図11および図12はともに、薄肉部を備えた保持部16の断面図を示す図である。図11には、保持部16の一部を削っていくことで設けた幅が広い薄肉部32が示されている。また、図12には、保持部16に切り込みを入れることで設けた幅が狭い薄肉部33が示されている。図11および図12に示されるように、保持部16が薄肉部を備えることによって、保持部16は容易に可撓性を有することができる。なお、保持部16は薄肉部を複数備えてもよい。また、保持部16を後から加工して薄肉部を設けるのではなく、例えば金型を用いて保持部16の形成と同時に当該保持部16に薄肉部が形成されても良い。また、保持部16の形状は板状でなく、他の形状、例えば、棒状あるいは筒状であってもよい。また、保持部16に薄肉部を設けるのではなく、例えば、保持部16に穴を開けることによって、保持部16に可撓性を持たせても良い。
【0059】
<温度制御部について>
検査装置1において、検査対象物7の温度特性が測定される際には、検査対象物7が一定の高温に維持された状態で当該検査対象物7の電気的特性が測定されることがある。このような場合に、温度調整された検査対象物7の温度よりもコンタクトプローブ11の温度の方が低い場合には、コンタクトプローブ11が温度調整された検査対象物7に接触することによって、検査対象物7の温度が所望の温度から低下してしまうことがある。その結果、検査対象物7の温度特性が正確に測定されないことがある。
【0060】
例えば、チャックステージ4上の検査対象物7の温度が120℃に設定され、コンタクトプローブ11の温度が常温(例えば25℃)である場合には、検査対象物7とコンタクトプローブ11のコンタクト部15とが接触すると、高温である検査対象物7から低温であるコンタクト部15へ熱が移動する。その結果、検査対象物7の温度は設定された120℃から低下する。この状態で検査対象物7の電気的特性を測定すると、正確な検査条件で検査対象物7の電気的特性を測定したことにならず、測定精度が劣化し、検査対象物7の検査結果の信頼性が低下する。
【0061】
また、検査対象物7とコンタクトプローブ11(より詳細にはコンタクト部15)との間に温度差が存在する状態で検査対象物7の電極パッド22に大きな電流を印加すると、電極パッド22の表面が電流密度に起因して急激に加熱される。この急激な加熱によって検査対象物7が受けた熱履歴によって、検査対象物7の表面近傍や内部が劣化し、検査対象物7に不具合が生じることがある。この点、コンタクト部15と電極パッド22との接触後に、両者の温度がほぼ同じ値で安定した後に、検査対象物7の電気的特性を測定すれば、検査対象物7に不具合が発生しにくくなる。しかしながら、検査対象物7の検査工程に必要な時間が長くなり、検査対象物7の検査にかかるコストが高くなる。
【0062】
さらに、検査対象物7とコンタクトプローブ11との間の温度差によって、コンタクトプローブ11に膨張や収縮が生じる可能性があり、その結果、コンタクトプローブ11と電極パッド22との接触状態が悪化する可能性がある。
【0063】
このように、コンタクトプローブ11と検査対象物7との間に温度差が存在すると、様々な問題が発生する。
【0064】
そこで、本実施の形態に係るコンタクトプローブ11では、当該コンタクトプローブ11の温度を制御する温度制御部が設けられている。ここでは、検査対象物7が高温に設定されることを想定して、温度制御部として、ヒーター部10a,10bが設けられている(図3参照)。本実施の形態では、ヒーター部10a,10bは、加圧部材14a,14bをそれぞれ加熱することによって、コンタクトプローブ11の温度を制御する。
【0065】
ヒーター部10aは、コイル状の電熱線を加圧部材14aの周囲に巻き付けることによって構成されている。また、ヒーター部10bは、コイル状の電熱線を加圧部材14bの周囲に巻き付けることによって構成されている。ヒーター部10a,10bの温度は、例えばテスタ5によって制御される。テスタ5は、ヒーター部10a,10bに与える電流を制御することによって、ヒーター部10a,10bの温度を調整する。
【0066】
ヒーター部10a,10bは、チャックステージ4上に固定した検査対象物7の温度が例えば120℃に設定される際には、テスタ5による制御によって、加圧部13(加圧部材14a,14b)の温度を120℃近傍に設定する。これにより、コンタクト部15と電極パッド22との接触の際、検査対象物7の温度が低下することなく、ほぼ一定に保持される。よって、検査装置1は、所望の検査条件において検査対象物7の電気的特性を測定することができる。よって、検査対象物7の電気的特性の測定結果の信頼性が向上する。また、コンタクト部15が電極パッド22に接触した後すぐに検査対象物7の電気的特性を測定することができることから、検査工程にかかる時間を短縮することができる。
【0067】
なお、温度制御部(ヒーター部10a,10b)は、必ずしも加圧部13(加圧部材14a,14b)に取り付けられる必要はない。温度制御部は、例えば、コンタクト部15あるいは保持部16に取り付けられても良い。また、コンタクトプローブ11が備える温度制御部の数も、2つでなくてもよい。温度制御部は、例えば、加圧部13と保持部16とコンタクト部15とに取り付けられても良い。図13は、プローブ装置2の側面図である。図13に示されるプローブ装置2では、コンタクトプローブ11は、4つの温度制御部、つまり4つのヒーター部10a,10b,10c,10dを備えている。ヒーター部10a,10b,10c,10dは、加圧部材14a、加圧部材14b、保持部16及びコンタクト部15にそれぞれ取り付けられている。
【0068】
また、検査対象物7が低温に設定される場合には、コンタクトプローブ11の温度を降下させるために、温度制御部として、ヒーター部ではなくペルチェ素子などを採用すればよい。コンタクトプローブ11に取り付けられたペルチェ素子に電流を印加すると、当該ぺルチェ素子のペルチェ効果によって、コンタクトプローブ11の温度を下げることができる。
【0069】
上記の態様によると、温度制御部は、コンタクトプローブ11の温度を制御することで、コンタクトプローブ11と検査対象物7との温度差を小さくした状態で、コンタクトプローブ11と検査対象物7とを接触させることができる。したがって、検査対象物7の温度特性を正確に測定することができる。また、コンタクトプローブ11と検査対象物7との温度差が大きい状態で検査対象物7に電流等の電気信号が印加されることを抑制することができることから、検査対象物7が劣化することを抑制することができる。また、コンタクトプローブ11が検査対象物7に接触した際に当該コンタクトプローブ11が膨張したり収縮したりすることを抑制することができる。したがって、コンタクトプローブ11と電極パッド22との間の接触面積を確保することができる。
【0070】
<第一実施形態の効果>
第一実施形態によると、可撓性を有するコンタクト部15は、加圧部13からの加圧によって電極パッド22に押しつけられる。よって、コンタクト部15は、検査対象物7の電極パッド22の表面に凹凸や異物が存在する場合であっても、当該表面の状態に応じて変形しながら当該電極パッド22と接触することが可能となる。したがって、コンタクト部15と電極パッド22との間の接触面積を確保することができる。その結果、コンタクト部15と電極パッド22との間の接触抵抗を下げることができる。コンタクト部15と電極パッド22との接触抵抗が下がることで、検査装置1と検査対象物7とが電気的に安定した接続状態となり、検査対象物7の測定の信頼性向上および歩留まりの向上が可能となる。また、可撓性を有するコンタクト部15が、加圧部13と電極パッド22との間に介在するため、電極パッド22の表面の損傷を抑制することができる。
【0071】
また、第一実施形態では、電極パッド22と接触しているコンタクト部15を、複数の加圧部材14a,14bによって加圧することができる。したがって、コンタクト部15と電極パッド22との間の接触面積を確保することができ、接触抵抗をさらに下げることができる。
【0072】
<第二実施形態>
<第一実施形態との違いについて>
第二実施形態においては、ベロー形の加圧部材14cを有する加圧部13によってコンタクト部15を加圧する。また、第二実施形態では、コンタクト部15は、加圧部13と接触する弾力性部分25を備えている。
【0073】
第二実施形態に係る加圧部13の加圧部材14cおよびコンタクト部15の弾力性部分25について、図14を参照しながら以下に説明する。図14は、第二実施形態に係るプローブ装置2を示す側面図である。加圧部材14cは、プローブ基板12の下面に設けられたソケット部(図示なし)に着脱可能となっている。また、第二実施形態の加圧部材14cはテスト5と電気的に接続されていない。本実施形態では、保持部16の一方端部には、信号線8に電気的に接続された接続部18cが設けられている。接続部18cは、取付部17cの一端に接続されている。保持部16は導電性の材料で形成されている。したがって、図14に示されるプローブ装置2では、信号線8に供給されたテスタ5からの電気信号は、保持部16を介してコンタクト部15に伝達される。また、保持部16には、ヒーター部10cが取り付けられている。第二実施形態に係るプローブ装置2の残余の構成は、第一実施形態と同様である。
【0074】
<加圧部材について>
第二実施形態における加圧部材14cにおけるコンタクト部15との接触面140は、可撓性を有している。また、加圧部材14cは、伸縮性を有している。加圧部材14cの伸縮性は、例えば、空気圧を利用して実現すればよい。この場合には、本例のように、加圧部材14cをベロー形に形成することで、容易に伸縮性を実現することができる。また、第二実施形態においては、テスタ5からの電気信号は、保持部16を介してコンタクト部15に供給されるため、加圧部材14cは電気絶縁性材料で形成しても良い。例えば、カプトン(登録商標)などの可撓性を有する電気絶縁性シート(フィルム)で加圧部材14cを形成することにより、可撓性を有する接触面140を備えた加圧部材14cを簡単に作成することができる。なお、カプトン(登録商標)は、耐熱性も有するため、加圧部材14cが高温となる場合にも適している。また、加圧部13は複数の加圧部材14cを備えていてもよい。
【0075】
次に、第二実施形態にかかる加圧部材14cの動作について説明する。まず、プローブ基板12が移動アーム部3によって移動させられることによって、コンタクト部15が検査対象物7の電極パッド22に接触する。そして、その状態から、加圧部材14cに空気が送られることによって、ベロー形の加圧部材14cがコンタクト部15の方に伸びて、コンタクト部15を加圧して電極パッド22に押し付ける。この状態で、検査対象物7の電気的特性が測定される。加圧部材14cに与える空気圧を変更することで、加圧部材14cがコンタクト部15を押しつける(加圧する)強さを簡単に変更することができる。
【0076】
検査対象物7の電気的特性の測定が終了すると、加圧部材14cは、与えられる空気圧の制御によって、元の長さまで縮むようになる。その結果、加圧部材14cによるコンタクト部15の加圧が解除される。
【0077】
このように、加圧部材14cは伸縮性を有するため、簡単にコンタクト部15を加圧したり、その加圧の解除を行ったりすることができる。
【0078】
次に、図15を参照しながら、第二実施形態に係るプローブ装置2のコンタクト部15と電極パッド22との接触状態について説明する。図15は、電極パッド22の表面に異物23が存在する場合のコンタクトプローブ11と電極パッドとの接触状態を示す図である。
【0079】
図15に示されるように、コンタクトプローブ11と電極パッド22とが接触する際には、コンタクト部15が、加圧部材14cによって電極パッド22に押しつけられた状態で、表面に異物23が存在する電極パッド22と接触する。ここで、加圧部材14cの接触面140は可撓性を有しているため、当該接触面140は、異物23の形状に応じて変形しながらコンタクト部5と接触する。そのため、加圧部材14cは、コンタクト部15を電極パッド22にしっかりと押しつけることができる。したがって、コンタクト部15と電極パッド22との間の接触面積を大きくすることができる。よって、コンタクト部15と電極パッド22との間の接触抵抗を大きく下げることができる。コンタクト部15と電極パッド22との接触抵抗が下がることで、検査装置1と検査対象物7とが電気的に安定した接続状態となり、検査対象物7の測定の信頼性向上および歩留まりの向上が可能となる。
【0080】
なお、第一実施形態の加圧部材14a,14bにおけるコンタクト部15との接触面が広い場合には、加圧部材14a,14bにおけるコンタクト部15との接触面に可撓性を持たせても良い。この場合には、上記と同様に、加圧部材14a,14bのコンタクト部15との接触面が、異物23の形状に応じて変形するため、加圧部材14a,14bは、コンタクト部15を電極パッド22にしっかりと押しつけることができる。よって、コンタクト部15と電極パッド22との間の接触面積を大きくすることができる。
【0081】
また、第一実施形態と同様に、加圧部材14cは導電性材料で形成されても良い。加圧部材14cは、例えば、アルミニウムなどの金属材料で形成されても良い。そして、加圧部材14cに、信号線8と電気的に接続された接続部を設けることによって、加圧部材14cとテスタ5とを電気的に接続しても良い。この場合には、テスタ5からの電気信号が、加圧部材14cを介してコンタクト部15に供給される。
【0082】
<弾力性部分について>
次に、コンタクト部15の弾力性部分25について説明する。図14に例示されるように、テスタ5からの電気信号を、加圧部材14cを介してコンタクト部15に供給しない場合には、例えば、弾力性部分25は、カプトン(登録商標)などの耐熱性および弾力性を有する電気絶縁性の材料で形成すればよい。コンタクト部15は、加圧部13が接触する部分に弾力性部分25を備えることで、加圧部13から加圧された際に、コンタクト部15が損傷することを抑制することができる。その結果、コンタクト部15の交換の頻度が減少する。よって、検査費用の低コスト化および検査工程の短縮が可能となる。
【0083】
なお、テスタ5からの電気信号が、加圧部13を介してコンタクト部15に供給される場合には、弾力性部分25は、弾力性および導電性を有する材料で形成すればよい。
【0084】
<変形例>
第一実施形態および第二実施形態におけるコンタクトプローブ11は、加圧部13と保持部16とを別体とする構成であるが、保持部16を使わずに、加圧部13でコンタクト部15を保持する構成を採用してもよい。例えば、第二実施形態における加圧部13(加圧部材14c)の底面に、電極パッド22と接触するコンタクト部15を取り付ける態様が挙げられる。この場合には、テスタ5からの電気信号は、加圧部13を介してコンタクト部15に供給する必要があるため、加圧部13は導電性を備える材料で形成する。この態様によると、コンタクトプローブ11を構成する部品の数を少なくすることができる。
【0085】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
5 テスタ、11 コンタクトプローブ、13 加圧部、15 コンタクト部、16 保持部、30 接触面、32,33 薄肉部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15