【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面とともに説明する。
図1に於いて、1はめっき用の処理槽、2はこの処理槽1に入れられためっき液である。このめっき液2は亜鉛めっきを例にとると、苛性ソーダと水の溶液に薬剤と亜鉛を溶かしこんだものである。3、4は処理槽1内の対向する壁面近くに設置された電極である。5は導電性のハンガー、6はこのハンガーに吊り下げられたワーク(被めっき製品)である。このワーク6は例えば電気製品などの部品として使用される鉄板であるとすると、電極3,4の間に位置するように配置される。そして、電極3,4は直流電源7のプラス電源端子に接続され、ハンガー5は直流電源7の−電源端子に接続される。
【0012】
8は処理槽1に存在するめっき液2を取り出す取出口である。9はポンプであり、このポンプ9により、めっき液2は取出口から取り出される。11はエアーポンプであり、外気の空気を取り込んで圧力を加えて送り出すものである。
12はこれらの系全体の制御装置である。ポンプ9、エアーポンプ11及び制御装置12は処理槽1の外部に設けられた一つのボックスに収納される。13は処理槽1内に設置されたマイクロバブル発生体である。このマイクロバブル発生体13にポンプ9からの処理液と、エアーポンプからの空気が供給される。
【0013】
空気のほかに窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスなどの気体を用いても良い。エアーポンプ11を用いずに、
図5に示すようにコンプレッサー22で圧縮した空気をアエ−フィルター21を介して窒素分離膜(窒素富化膜)20に加えるようにすれば、窒素を連続的に供給することができ効率的である。
ポンプ9、エアーポンプ11、制御装置12、取出口8及びマイクロバブル発生体13を含めてマイクロバブル発生装置が構成されている。
【0014】
次に、マイクロバブル発生体13について説明する。
この実施例では気液二相流旋回方式を用いている。
図2に簡単な原理図を示す。箱体14が設けられ、その内壁面に沿うようにポンプ9からの処理液が
図2のAより注入される。処理液は箱体14の内壁面に沿って旋回し、高速の旋回流となり、遠心力により、円筒中心部に負圧が発生する。同時に、円筒の左側壁面の中心部に設けられた穴Bより、窒素ガスが送り込まれ、比重の軽い気体が、円筒内中心部に集まり、竜巻状の渦流14aが形成される。気体の渦流を伴った旋回流は、出口C方向に移動し、出口Cで液体とともに回転しながら噴出されるが、このとき出口Cの周囲の液体14bにより、回転速度が急速に減衰するため、回転速度差が発生する。この回転速度差により、気体の渦流にせん断が発生し、渦流が連続的に切断され、微小な気泡つまりマイクロバブルが発生する。
【0015】
図3,4はより具体的な原理図である。この装置は
部屋15aとベンチュリー管15bを組み合わせた構造を利用しており、入口16から処理液と窒素ガスを注入して窒素ガスを巻き込んだ処理液の渦流17を作る。中心部に設けられたロッド18を左右に移動することにより、先端部が部屋15aの右端隙間を調節し、液体通過面積を任意に変
えることができる構造になっている。さらに、くびれ部15cで生じる負圧を利用し、15eより窒素ガスを供給しても良い。これにより、くびれ部分15cの流速と部屋15aの内圧を変化させることで、ベンチュリー管構造によるくびれ部と円錐部に生じる圧力差に伴う衝撃波
による微細な気泡の生成、加圧溶解法による微細な気泡の生成を1台で同時、もしくは、別に行うことができる。
【0016】
例えば、
図3では、ロッド18を左に移動することで、液体の通過面積がひろくなり、16から流入する液体の量が増えることで、高速の旋回流が15aに生成される。旋回流は、遠心力により、中心部に圧力が低い部分が形成され、比重の軽い気体が中心に集まり、竜巻状の渦流が発生する。渦流は、旋回流をともないながらくびれ部15cに移動する過程で、円錐構造により回転数が高くなりながら移動し、くびれ部15cで液体が加速されることにより、急激に圧力が低下する。加速された旋回流は、ベンチュリー管15bを移動する過程で圧力が回復し、くびれ部との圧力差による衝撃波が発生し、微細な気泡が生成される。
【0017】
また、
図4では、ロッド18の先端部を右に移動することで、部屋15aの右端隙間が狭まり、液体通過面積が減少する。つまり部屋15aの内圧が高くなり、窒素ガスが処理液に溶解する。そして、くびれ部15cで圧力開放され、液中に溶解した窒素ガスが発泡し、微細な気泡が発生する。この場合は加圧溶解法に近い動作をすることになる
。
【0018】
本発明の実施例ではマイクロバブル発生体13に空気や窒素ガスをかなりの量に送るようにしている。洗浄に使用する場合等、通常のマイクロバブル発生体では液体の4%程度しか気体を供給しない。この実施例では窒素ガスを処理液の
30〜80%、好ましくは30〜50%程度と過剰に供給している。このように過剰に窒素ガスを供給すると、マイクロバブルが大量に発生し、処理槽1内の処理液を十分に撹拌することができる。
次に、このめっき液2に漬けるこの状態で直流電源7から電極3、4及びワーク6に電圧がかけられ、ワーク6へのめっきが開始される。
【0019】
取出口8とマイクロバブル発生体13はめっき液2に漬けられている。ポンプ9を動作状態にして、めっき液2をマイクロバブル発生体13に供給する。同時に空気或いは窒素ガスもマイクロバブル発生装置13に供給される。
マイクロバブル発生体13からマイクロバブル19が連続して大量に発生し、処理槽1全域に行き渡る。特にワーク6のめっきが施される面のめっき液2がマイクロバブル19によって新しいもの置き換えられるのでめっき効率が向上する。
【0020】
また、マイクロバブル14は従来用いられていたエアーバブリング法のバブルのようにワーク6を押し上げてワーク6をハンガー5から落下させることはない。マイクロバブル19の強さを大きくしても、マイクロバブルはバブルの径が小さいためワーク6に過大な力が加わることはなくワーク6をハンガー5から落下させることはない。
【0021】
マイクロバブルとは、一般的に直径が50μm以下の気泡であると云われており、通常の気泡が水の表面で破裂して消えるのに対し、水中で縮小して、最終的には消滅すると云う特徴がある。そして、このマイクロバブルを用いて被洗浄物の洗浄を行うことは一般的に知られている。しかし、マイクロバブルを用いてめっきの効率を向上させることは知られていない。
【0022】
上記は電気めっきの実施例を示したが、めっき液に含まれる還元剤の酸化によって放出される電子によりめっき液に漬けられたワークに皮膜を形成する無電解メッキにも適用することができる。
また、主に金属素材をある種の溶液中に浸漬し、表面に処理剤を作用させて化学反応を起こさせることで金属塩皮膜を生成するクロメ−ト処理やりん酸塩処理・パーカライジングなどの化成処理にも適用することができる。
【0023】
マイクロバブル発生体13のマイクロバブル噴射口の噴出角度が処理槽の底面に対し鋭角(例えば45度)を持つようにすれば、マイクロバブルが処理槽内を回転するようになりめっき液等の処理液を十分に撹拌させることができる。
ワークをハンガーに吊り下げて処理することは一般的であるが、ワークを網目を有するかご、もしくはバレルと呼ばれる筐体に入れて処理することもある。この場合、従来のエアーバブリングでは、かご、もしくはバレルと呼ばれる筐体の網が邪魔になって処理液がワークに循環しにくい。ところがマイクロバブルはかご、もしくはバレルと呼ばれる筐体の網を何の抵抗もなく通過するので、処理液をワークに容易に循環させることができる。
【0024】
マイクロバブル発生装置に用いる気体として窒素を用いれば、空気を用いるよりも、処理液に空気に含まれる不純物が混ざらないのでより良好な皮膜をワーク表面に作ることができる。例えば、めっき液の主成分である苛性ソーダが空気に含まれる炭酸ガスと反応し、炭酸ソーダができると、これがめっきの妨げになると云ったことである。
【0025】
以上のように、本発明のワークの表面処理装置及び処理方法によれば、処理中のワークの表面に次々と新しい処理液が来るので、ワークの表面に皮膜を効率的に作ることができる。また、複雑な形状のワークであっても、ワークの窪みまで次々と新しい処理液が入り込み、全体として均一な皮膜を効率的に作ることができる。このことはマイクロバブル噴射口から出たマイクロバブルによって処理液が十分に撹拌されるためである。この結果ワークの表面処理の生産性が向上するとともに、表面処理のコストも低減できる。