(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ワイヤロープは、複数のワイヤ(鋼線)を撚り合せて形成したものであり、引張強度の強いワイヤの集合であるため、大きな破断強度を有し、構成するワイヤ同士の滑りにより柔軟性が大きい。しかし、ワイヤロープは、ストランドを支える心綱の種類、断面構成、ロープ等の直径やワイヤの撚り方等により、特性が大きく相違する。このため、多種多様の特性を有するワイヤロープがあり、用途も広範囲であり、それぞれの用途に応じた特性を備えるワイヤロープを選択する必要がある。
【0003】
ワイヤロープのうち、クレーン等により荷物を運搬するときに、クレーン等のフックに吊り荷を掛けるために使用するワイヤロープは、玉掛索やロープスリングと呼ばれる。玉掛索は、荷物を安全に運搬するために、十分な破断強度を有し、荷物への取り付けや取り外しの際の操作性を高めるために柔軟性が要求される。また、荷物を吊り上げたときに、玉掛索が形崩れしにくく、荷物が自転しにくく、キンクしにくい等の特性が必要である。さらに、ロープの自重が軽く、取り扱い性が良好で、安価であるものが好ましい。
【0004】
玉掛索として最も広く使用されているワイヤロープは、6×24(:24本線6撚り)である。
図3は、従来より汎用されているワイヤロープ(6×24)の構造を示す模式図である。
図3(c)の断面図に示すように、このワイヤロープは、繊維心を中心にして、その周囲に6本のストランドを配置する。
図3(b)は、ワイヤロープを構成する1本のストランドの断面図であり、
図3(b)に示すように、ストランドは、中心にある繊維心の周囲にワイヤを2層配置し、合計24本のワイヤを撚り合せて形成する。
【0005】
図3(a)は、ストランドにおけるワイヤの撚り方を示し、
図3(a)に示すように、下層にあるワイヤと、上層にあるワイヤとは、螺旋のピッチが異なるため、各層のワイヤ同士が交差し、点接触している。ワイヤロープ(6×24)は、ワイヤロープの中心が繊維心で構成され、各ストランドも繊維心を備え、各ストランドを構成する2層のワイヤが点接触しているため、柔軟性に優れる。また、破断強度も強いため、玉掛索として広く利用されているが、更なる柔軟性の向上と形崩れ性の改良が求められている。
【0006】
改良した玉掛索として、種々のワイヤロープが提案されている。
図4は、従来の高柔軟性ワイヤロープの構成を示す断面図である(特許文献1参照)。このワイヤロープは、
図4に示すように、繊維心41の周囲に、6本のストランド42を配置する。各ストランド42は、中心に繊維心43を備え、繊維心43の周囲に線径d
1のワイヤを7本配置し、線径d
1のワイヤの間に外接するように、線径d
2のワイヤを7本配置する。また、線径d
2のワイヤの外周に線径d
3のワイヤを14本配置する構造を有する。線径は、d
1>d
3>d
2であり、これらの3種のワイヤは平行撚りである。特許文献1によれば、破断強度が強く、柔軟性と曲げ疲労性に優れ、形崩れしにくい玉掛索を提供できるとあるが、このワイヤロープは、柔軟性と形崩れ性において十分な実用性を有するものではない。また、一般に、玉掛索には繰返し曲げ疲労特性は重視されない。
【0007】
図5は、従来のワイヤロープの断面構造を示す模式図である(特許文献2参照)。このワイヤロープは、
図5に示すように、繊維心55の周囲に、6本のストランド54を配置する。各ストランド54では、繊維心51の周囲に、14本〜17本の小径ワイヤ52が配置する。また、小径ワイヤ52の周囲に、14本〜17本の大径ワイヤ53が外接し、小径ワイヤ52と大径ワイヤ53は平行撚りである。しかし、かかる構成を有するワイヤロープも、玉掛索としては、柔軟性と形崩れ性が十分であるとはいえない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明のワイヤロープを構成するストランドAの断面図である。
【
図3】従来より使用されているワイヤロープ(6×24)の構造を示す模式図である。
【
図4】従来の高柔軟性ワイヤロープの構成を示す断面図である。
【
図5】従来のワイヤロープの断面構造を示す模式図である。
【
図6】本発明のワイヤロープの撚り方向を説明するための模式図である。
【
図7】一般的なワイヤロープの側面の模式図である。
【
図8】ワイヤロープの柔軟性を評価する方法を示す説明図である。
【
図9】ワイヤロープ(公称径12mm)の荷重Wとたわみ量δとの関係を示す図である。
【
図10】ワイヤロープ(公称径16mm)の荷重Wとたわみ量δとの関係を示す図である。
【
図11】ワイヤロープの形崩れ性を評価する方法を示す説明図である。
【
図12】ワイヤロープ(公称径12mm)の押え荷重と偏径度との関係を示す図である。
【
図13】本発明のワイヤロープに押え荷重35kNを負荷し、除荷した直後に、押え台側から見たときのワイヤロープの負荷した部分の外観を示す図である。
【
図14】比較例1のワイヤロープに押え荷重35kNを負荷し、除荷した直後に、押え台側から見たときのワイヤロープの負荷した部分の外観を示す図である。
【
図15】ワイヤロープ(公称径16mm)の押え荷重と偏径度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明のワイヤロープの断面図であり、
図1(a)は拡大断面図であり、
図1(b)は。
図1(a)に示す断面構造を模式的に表した説明図である。このワイヤロープは、繊維心の周囲に6本〜8本のストランドAを撚り合せて形成する。
図1は、繊維心の周囲に6本のストランドAを配置する例を示す。ストランドAの本数を多くすると、構成材料であるワイヤの線径が小さくなり、ワイヤロープ中に占める繊維心の比率が増加するため、ワイヤロープの柔軟性を一層高めることができる。一方、ストランドAの本数を多くすると、ストランドAの径が小さくなり、ワイヤの線径が細くなって、摩耗しやすくなるため、玉掛索として使用するときは、ストランドAを6本〜8本とする態様が好ましい。
【0016】
ワイヤロープに心綱を配置すると、心綱によりストランドAが支持されるため、ワイヤロープの形崩れ性を改良することができる。心綱にはロープ心と繊維心があるが、繊維心を使用すると、ワイヤロープの柔軟性が向上し、単位長さ当たりの重量が低下し、ワイヤロープの取り扱い性を高めることができ、コスト低減にもつながる。このため、玉掛索用のワイヤロープには、繊維心を使用する態様が好ましい。繊維心には、天然繊維心と合成繊維心があり、天然繊維心には、ジュート、サイザルがあり、合成繊維心には、ポリプロピレンがある。繊維心に、ロープグリースを充填することにより、ワイヤロープの使用に際し、ストランドAにロープグリースを供給し、ワイヤの潤滑と防錆効果を高めることができる。
【0017】
図2は、本発明のワイヤロープを構成するストランドAの断面図であり、
図2(a)は1本のストランドAの拡大断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示すストランドAの断面構造を模式的に表した説明図である。
図2に示すように、ストランドAは、中心に配置する1本の心ストランドBの周囲に、心ストランドBと同一径の6本の側ストランドCを撚り合せて形成する。ここに、同一径とは、同一の径である態様のほかに、ほぼ同一の径である態様が含まれ、ほぼ同一の径とは、±5%の範囲内で径が相違する態様が含まれる。本発明のワイヤロープは、ストランドAが心ストランドBを備えるため、形崩れしにくいという長所を有する。一方、ストランドAに心ストランドBを配置すると、ワイヤロープの柔軟性が低下するが、本発明のワイヤロープは、ストランドAが取り囲む中心部に大きな繊維心を配置することにより、ワイヤロープの柔軟性を高めている。その結果、本発明のワイヤロープは、柔軟性と形崩れ性の双方をバランスよく備え、玉掛索として好適である。
【0018】
図2(a)に示すように、心ストランドBと側ストランドCはいずれも、中心に配置する1本のワイヤの周囲に、中心に配置するワイヤと同一線径の6本のワイヤを撚り合せて形成するため、心ストランドB及び側ストランドCが形崩れしにくい。ここに、同一線径とは、同一の線径である態様のほかに、ほぼ同一の線径である態様が含まれ、ほぼ同一の線径とは、±5%の範囲内で線径が相違する態様が含まれる。
【0019】
本発明のワイヤロープでは、ワイヤロープにおけるストランドAの撚り方向と、ストランドAにおける側ストランドCの撚り方向とが逆方向である態様が好ましい。すなわち、ワイヤロープにおけるストランドAの撚り方向がZ撚りであるときは、ストランドAにおける側ストランドCの撚り方向はS撚りである。一方、ワイヤロープにおけるストランドAの撚り方向がS撚りであるときは、ストランドAにおける側ストランドCの撚り方向はZ撚りである。このような普通撚りとすることにより、側ストランドCの軸方向がワイヤロープの軸方向と平行になるため、玉掛索として使用するときに、吊り荷が自転しにくく、キンクしにくい。また、撚りが締りやすく、形崩れしにくいワイヤロープを提供することができる。
図6は、本発明のワイヤロープの撚り方向を説明するための模式図である。
図6では、ワイヤロープにおけるストランドAの撚り方向がZ撚りであり、ストランドAにおける側ストランドCの撚り方向がS撚りである態様を例示する。
【0020】
本発明のワイヤロープでは、ストランドAにおける側ストランドCの撚り方向と、側ストランドCにおけるワイヤの撚り方向とが逆方向である態様が好ましい。すなわち、ストランドAにおける側ストランドCの撚り方向がZ撚りであるときは、側ストランドCにおけるワイヤの撚り方向はS撚りである。一方、ストランドAにおける側ストランドCの撚り方向がS撚りであるときは、ストランドCにおけるワイヤの撚り方向はZ撚りである。このような普通撚りとすることにより、側ストランドCにおけるワイヤの軸方向がストランドAの軸方向と平行になるため、キンクしにくいワイヤロープを提供することができる。また、ストランドAの撚りが締りやすく、形崩れしにくいワイヤロープが得られる。
図6では、ストランドAにおける側ストランドCの撚り方向がS撚りであり、側ストランドCにおけるワイヤの撚り方向がZ撚りである態様を例示する。
【0021】
本発明のワイヤロープでは、心ストランドBにおけるワイヤの撚り方向と、側ストランドCにおけるワイヤの撚り方向とが同一方向である態様が好ましい。すなわち、心ストランドBにおけるワイヤの撚り方向がZ撚りであるときは、側ストランドCにおけるワイヤの撚り方向もZ撚りである。一方、心ストランドBにおけるワイヤの撚り方向がS撚りであるときは、側ストランドCにおけるワイヤの撚り方向もS撚りである。
図6では、心ストランBにおけるワイヤの撚り方向がZ撚りであり、側ストランドCにおけるワイヤの撚り方向がZ撚りである態様を例示する。このような撚り方向とすることにより、心ストランドBと側ストランドC同士、及び側ストランドC同士が点接触するため、ストランドAの柔軟性を高めることができる。この結果、柔軟性に優れ、かつ形崩れしにくいバランスのとれた玉掛索用のワイヤロープを提供することができる。
【0022】
ワイヤロープにおけるストランドAの撚りピッチ(撚りの長さ)(以下、「pA」ともいう。)は、ワイヤロープの公称径(以下、「dW」ともいう。)の6.0倍〜7.0倍である態様が好ましい。
図7は、一般的なワイヤロープの側面の模式図であり、
図7には、6本のストランドAを備えるワイヤロープを例示する。
図7における(番号)は、ストランドAの番号である。pA/dWは、ワイヤロープの単位長さ当たりの重量を軽くし、ワイヤロープの破断強度を高める点で、6.0以上が好ましく、6.2以上がより好ましい。一方、pA/dWは、形崩れしにくいワイヤロープを提供する点で、7.0以下が好ましく、6.8以下がより好ましい。
【0023】
ストランドAにおける側ストランドCの撚りピッチ(以下、「pC」ともいう。)と、ストランドAの公称径(以下、「dA」ともいう。)との関係は、つぎの態様が好ましい。すなわち、pC/dAは、ワイヤロープ全体のバランスを維持して、S字状に蛇行する等の撚り癖を抑える点で、6.5以上が好ましく、6.6以上がより好ましい。また、同様の観点から、pC/dAは、8.0以下が好ましく、7.4以下がより好ましい。
【0024】
心ストランドBにおけるワイヤの撚りピッチ(以下、「pBw」ともいう。)と、心ストランドBの公称径(以下、「dB」ともいう。)との関係は、つぎの態様が好ましい。すなわち、pBw/dBは、ワイヤロープ全体のバランスを維持して、S字状に蛇行する等の撚り癖を抑える点で、7.5以上が好ましく、7.6以上がより好ましい。また、同様の観点から、pBw/dBは、8.5以下が好ましく、8.0以下がより好ましい。
【0025】
同様に、側ストランドCにおけるワイヤの撚りピッチ(以下、「pCw」ともいう。)と、側ストランドCの公称径(以下、「dC」ともいう。)との関係は、つぎの態様が好ましい。すなわち、pCw/dCは、ワイヤロープ全体のバランスを維持して、S字状に蛇行する等の撚り癖を抑える点で、7.5以上が好ましく、7.6以上がより好ましい。また、同様の観点から、pCw/dCは、8.5以下が好ましく、8.0以下がより好ましい。
【0026】
ワイヤロープには、めっきを施していないワイヤから形成する裸ロープと、めっきを施したワイヤから形成するめっきロープとがあり、本発明のワイヤロープの構成は、裸ロープ及びめっきロープのいずれの場合にも有効である。ワイヤロープを構成するワイヤは、線径が細いため、腐食しやすい。ロープグリースを使用することにより、腐食を防止することができるが、メッキロープとすることにより、一層防食性を高めることができる。めっきは、亜鉛、亜鉛アルミニウム合金等を用い、溶融めっき法又は電気めっき法により施すことができる。めっきは、ワイヤ上に形成する保護皮膜の均質性、緻密性と密着性が良好であり、時間の経過により酸化被膜が安定化するため、長期間に亘り防食性を発揮する点で好ましい。
【0027】
本発明のワイヤロープの構成は、着色ワイヤロープに適用する場合にも有効であり、着色ワイヤロープとすることにより、視認性と識別性が高まり、付加価値の高いワイヤロープを提供することができる。着色ワイヤロープは、ワイヤロープ若しくはワイヤに、焼き付け塗装、電着塗装、または塗料のコーティングを施すことにより製造できる。
【0028】
(実施例1)
公称径が12mmである本発明のワイヤロープを製造した。
【0029】
まず、
図2(a)に示すように、中心に配置する1本のワイヤの周囲に、中心に配置するワイヤと同一線径の6本のワイヤを撚り合せて、同一径の心ストランドBと側ストランドCを形成した。心ストランドBにおけるワイヤの撚り方向と、側ストランドCにおけるワイヤの撚り方向とは、ともにZ撚りとした。また、心ストランドBと側ストランドCにおけるワイヤの撚りピッチはいずれも、各ストランドの公称径の7.8倍した。
【0030】
つぎに、
図2(b)に示すように、1本の心ストランドBの周囲に、6本の側ストランドCを撚り合せてストランドAを形成した。また、ストランドAにおける側ストランドCの撚り方向は、S撚りとし、撚りピッチは、ストランドAの公称径の6.9倍とした。
【0031】
つづいて、
図1に示すように、ジュートの繊維心の周囲に6本のストランドAを撚り合せてワイヤロープを形成した。ワイヤロープにおけるストランドAの撚り方向は、Z撚りとし、ワイヤロープにおけるストランドAの撚りピッチは、ワイヤロープの公称径の6.4倍とした。その結果、
図6に模式的に示すようなワイヤロープが得られた。
【0032】
得られたワイヤロープについて、ロープ径(実際径)と、破断荷重と、柔軟性と、形崩れ性とを評価した。ロープ径(実際径)と、破断荷重の測定値を表1に示す。
【0033】
柔軟性は、つぎの方法で評価した。
図8は、ワイヤロープの柔軟性を評価する方法を示す説明図である。
図8に示すように、水平面に同一の高さの2個の支点を置き、2個の支点上にワイヤロープを載置した。その後、スパンLの中央部に種々の荷重Wを加え、ワイヤロープの水平基準線からのたわみ量δを測定した。スパンLを400mmとしたときの測定結果を表2に示す。
図9は、ワイヤロープ(公称径12mm)の荷重Wとたわみ量δの関係を示す図である。なお、表2及び
図9では、本実施例における荷重1.0kg以上のデータが示されていない。これは、本実施例では荷重が1.0kg以上になると、たわみ量δが80mm以上となり、荷重が水平面に到達し、測定できなかったためである。
【0034】
形崩れ性は、つぎの方法で評価した。
図11は、ワイヤロープの形崩れ性を評価する方法を示す説明図である。
図11(a)に示すように、押え台の上にワイヤロープを載置し、ワイヤロープの上から種々の押え荷重を負荷した後、除荷した。その後、
図11(b)に示すように、荷重を負荷した箇所におけるワイヤロープの長径と短径とを測定し、偏径度(=短径÷長径×100%)を計算した。負荷前、除荷直後、除荷1分後、除荷1時間後の偏径度を表3に示す。
図12は、ワイヤロープ(公称径12mm)の押え荷重と偏径度との関係を示す図である。
図13は、本発明のワイヤロープに押え荷重35kNを負荷し、除荷した直後に、押え台側から見たときのワイヤロープの負荷した部分の外観を示す図である。
【0035】
(比較例1)
図3に示すような構造を有するワイヤロープ6×24(公称径12mm)について、実施例1と同様に、ロープ径(実際径)と、破断荷重と、柔軟性と、形崩れ性とを評価した。ロープ径(実際径)と、破断荷重の測定値を表1に示す。
【0037】
表1に示すように、実施例1と比較例1におけるワイヤロープは、ほぼ同様のロープ径(実際径)と破断荷重を備え、規格値を満たすものであった。
【0038】
つぎに、柔軟性の測定結果(スパンL=400mm)を表2と
図9に示す。
【0040】
表2と
図9に示すように、公称径12mmのワイヤロープでは、たとえば荷重Wが0.7kg〜0.8kgのときの改良の程度をみると、実施例1のワイヤロープは、比較例1のワイヤロープの2倍以上の柔軟性を発揮した。また、柔軟性の改良の程度は、荷重Wが大きくなるにつれて大きくなった。したがって、本発明のワイヤロープ(実施例1)は、玉掛索として汎用されているワイヤロープ(比較例1)より柔軟性に優れ、取り扱い性が良好であることがわかった。
【0041】
つぎに、形崩れ性の測定結果を表3と
図12に示す。
図14は、比較例1のワイヤロープに押え荷重35kNを負荷し、除荷した直後に、押え台側から見たときのワイヤロープの負荷した部分の外観を示す図である。
【0043】
表3と
図12に示すように、偏径度は、いずれの抑え荷重による場合にも、また除荷直後、除荷1分後、除荷1時間後のいずれの測定時においても、実施例1のワイヤロープの方が比較例1のワイヤロープより優れていた。したがって、本発明のワイヤロープ(実施例1)の方が、玉掛索として汎用されているワイヤロープ(比較例1)より形崩れしにくいことが分かった。また、その改良の程度は、公称径12mmのワイヤロープでは、実施例1の方が比較例1の約10%〜30%改良され、改良の程度は、押え荷重が大きくなるにつれて大きくなった。ワイヤロープの形崩れ性の相違は、
図13(実施例1)と
図14(比較例1)に示す外観からも明らかであり、
図13では、ほとんど外形を保っているのに対して、
図14では、変形が大きく、ストランドの一部から繊維心が露出していた。
【0044】
(実施例2)
公称径が16mmである本発明のワイヤロープを実施例1と同様に製造した。
【0045】
まず、
図2(a)に示すように、中心に配置する1本のワイヤの周囲に、中心に配置するワイヤと同一線径の6本のワイヤを撚り合せて、同一径の心ストランドBと側ストランドCを形成した。心ストランドBにおけるワイヤの撚り方向と、側ストランドCにおけるワイヤの撚り方向とは、ともにZ撚りとした。また、心ストランドBと側ストランドCにおけるワイヤの撚りピッチはいずれも、各ストランドの公称径の7.8倍した。
【0046】
つぎに、
図2(b)に示すように、1本の心ストランドBの周囲に、6本の側ストランドCを撚り合せてストランドAを形成した。また、ストランドAにおける側ストランドCの撚り方向は、S撚りとし、撚りピッチは、ストランドAの公称径の6.8倍とした。
【0047】
つづいて、
図1に示すように、ジュートの繊維心の周囲に6本のストランドAを撚り合せてワイヤロープを形成した。ワイヤロープにおけるストランドAの撚り方向は、Z撚りとし、ワイヤロープにおけるストランドAの撚りピッチは、ワイヤロープの公称径の6.3倍とした。その結果、
図6に模式的に示すようなワイヤロープが得られた。
【0048】
得られたワイヤロープについて、実施例1と同様に、ロープ径(実際径)と、破断荷重と、柔軟性と、形崩れ性とを評価した。ロープ径(実際径)と、破断荷重の測定値を表1に示す。
図10は、ワイヤロープ(公称径16mm)の荷重Wとたわみ量δの関係を示す図である。柔軟性に関する測定結果(スパンLは500mmとした。)を表4と
図10に示す。形崩れ性について、負荷前、除荷直後、除荷1分後、除荷1時間後の偏径度を表5に示す。
図15は、ワイヤロープ(公称径16mm)の押え荷重と偏径度との関係を示す図である。
【0049】
(比較例2)
図3に示すような構造を有するワイヤロープ6×24(公称径16mm)について、実施例1と同様に、ロープ径(実際径)と、破断荷重と、柔軟性と、形崩れ性とを評価した。ロープ径(実際径)と、破断荷重の測定値を表1に示す。表1に示すように、実施例2と比較例2におけるワイヤロープはほぼ同様のロープ径(実際径)と破断荷重を備え、規格値を満たすものであった。
【0050】
つぎに、柔軟性の測定結果(スパンL=500mm)を表4と
図10に示す。
【0052】
表4と
図10に示すように、公称径16mmのワイヤロープでは、実施例2のワイヤロープは、比較例2のワイヤロープより柔軟性に優れていた。また、柔軟性の改良の程度は、荷重Wが大きくなるにつれて大きくなり、たとえば荷重Wが0.6kg〜0.8kg場合、比較例2のワイヤロープの2倍〜3倍の柔軟性を発揮し、たとえば荷重Wが1.0kg〜1.9kgの場合、比較例2のワイヤロープの3倍〜4倍の柔軟性を発揮した。したがって、本発明のワイヤロープは、玉掛索用のワイヤロープとして取り扱い性が優れていることが分かった。
【0053】
つぎに、形崩れ性の測定結果を表5及び
図15に示す。
【0055】
表5と
図15に示すように、偏径度は、いずれの抑え荷重による場合にも、また、除荷直後、除荷1分後、除荷1時間後のいずれの測定時においても、実施例2のワイヤロープの方が比較例2のワイヤロープより優れていた。したがって、本発明のワイヤロープ(実施例2)は、玉掛索として汎用されているワイヤロープ(比較例2)より形崩れしにくいことが分かった。また、形崩れ性は、公称径16mmのワイヤロープでは、実施例2の方が比較例2より約5%〜20%改良され、改良の程度は、押え荷重が40kN以上で顕著であった。