特許第6029552号(P6029552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029552
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/28 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   B60N2/28
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-167944(P2013-167944)
(22)【出願日】2013年8月13日
(65)【公開番号】特開2015-36282(P2015-36282A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100179855
【弁理士】
【氏名又は名称】藁科 えりか
(74)【代理人】
【識別番号】100086195
【弁理士】
【氏名又は名称】藁科 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 勤
(72)【発明者】
【氏名】袖野 豊
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−064636(JP,A)
【文献】 特開2001−206124(JP,A)
【文献】 特開2002−240603(JP,A)
【文献】 特開2004−149091(JP,A)
【文献】 特開2002−104037(JP,A)
【文献】 特開2001−277920(JP,A)
【文献】 特許第4949371(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャイルドシートに設けられた係合部材が係合されてチャイルドシートを保持可能なアンカを有し、
アンカを収納する凹部がシートクッション後端、シートバック下端のいずれかでパッドに形成され、パッドを覆うトリムカバーがパッド凹部の上で開口され、
ベゼルをパッド凹部に被せてパッド凹部を隠した車両用シートにおいて、
前記ベゼルは、当該ベゼルの底壁となる上下のフラップを一体に有して可撓性素材から成形され、上下のフラップの後方に空間を残して前記パッド凹部に被せられ、
前記チャイルドシートに設けられた係合部材は、前記ベゼルの上下のフラップを後方に押圧して前記パッド凹部の後方の空間に逃がしながら、または前記上下のフラップを後方に押圧することなく、前記アンカに係合される車両用シート。
【請求項2】
チャイルドシートの保持に使用されるアンカを有し、
前記アンカは、左右のサイドバーの前端をフロントバーで連結した平面視略コ字形状に形成され、
チャイルドシートに設けられた係合部材がフロントバーに係合可能とされ、
前記アンカを収納する凹部がシートクッション後端、シートバック下端のいずれかでパッドに形成され、パッドを覆うトリムカバーがパッド凹部の上で開口され、
上端が開口した有底の略箱形状のベゼルをパッド凹部に被せてパッド凹部を隠した車両用シートにおいて、
前記ベゼルは、前記パッド凹部に収納された前記アンカをフロントバーの後方で上下から覆うように延びて当該ベゼルの底壁となる上下のフラップを一体に有して可撓性素材から形成され、前記上下のフラップの後方に空間を残して前記パッド凹部に被せられ、
前記チャイルドシートに設けられた係合部材は、前記上下のフラップを後方に押圧して前記パッド凹部の後方の空間に逃がしながら前記アンカのフロントバーに係合される車両用シート。
【請求項3】
チャイルドシートの保持に使用されるアンカを有し、
前記アンカは、左右のサイドバーの前端をフロントバーで連結した平面視略コ字形状に形成され、
チャイルドシートに設けられた係合部材がフロントバーに係合可能とされ、
前記アンカを収納する凹部がシートクッション後端、シートバック下端のいずれかでパッドに形成され、パッドを覆うトリムカバーがパッド凹部の上で開口され、
上端が開口した有底の略箱形状のベゼルをパッド凹部に被せてパッド凹部を隠した車両用シートにおいて、
前記ベゼルは、前記パッド凹部に収納された前記アンカのサイドバーを上下から覆って当該ベゼルの底壁となり、サイドバーの挿通される挿通孔を構成する切欠きがそれぞれの末端に形成された上下のフラップを一体に有して可撓性素材から形成され、前記上下のフラップの後方に空間を残して前記パッド凹部に被せられ、
前記チャイルドシートに設けられた係合部材は、前記上下のフラップを後方に押圧して前記パッド凹部の後方の空間に逃がしながら、または前記上下のフラップを後方に押圧することなく、前記アンカのフロントバーに係合される車両用シート。
【請求項4】
チャイルドシートの保持に使用されるアンカを有し、
前記アンカは、左右のサイドバーの前端をフロントバーで連結した平面視略コ字形状に形成され、
チャイルドシートに設けられた係合部材がフロントバーに係合可能とされ、
前記アンカを収納する凹部がシートクッション後端、シートバック下端のいずれかでパッドに形成され、パッドを覆うトリムカバーがパッド凹部の上で開口され、
キャップ付きのベゼルをパッド凹部に被せてパッド凹部を隠した車両用シートにおいて、
前記ベゼルは、前記パッド凹部に収納された前記アンカのフロントバーの前面を覆って前記アンカを遮蔽して当該ベゼルの底壁となる上下のフラップを一体に有して可撓性素材から形成され、前記上下のフラップの後方に空間を残して前記パッド凹部に被せられ、
前記チャイルドシートに設けられた係合部材は、前記上下のフラップを後方に押圧して前記パッド凹部の後方の空間に逃がしながら前記アンカのフロントバーに係合される車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ISO−FIXタイプのチャイルドシートを保持可能とするISO−FIX対応アンカを有した車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートに対するチャイルドシートの固定方式として国際標準規格ISO−FIXがあり、このISO−FIXタイプのチャイルドシートを固定可能とするISO−FIX対応アンカを有した車両用シートが、たとえば特開2002−104037号公報等において開示されている。
【0003】
この種のISO−FIXタイプのチャイルドシートにおいては、その後部に左右の係合部材が設けられ、この係合部材を受けるアンカ(ISO−FIX対応アンカ)が、車両用シートのクッション後端やシートバック下端に配設される。
【0004】
アンカとして、前方に互いに平行に延びた左右のサイドバーの前端をフロントバーで連結した平面視略コ字形状にワイヤ材(中実棒材)を折曲加工して形成されたものが知られている。チャイルドシートは後方へ延びた左右の係合部材をたとえば背面下部に持ち、係合部材は長溝状の切欠き(係合口)を先端に持つ側面視略二股形状に形成され、係合部材先端の係合口をアンカのフロントバーに係合させることによってチャイルドシートがアンカに保持される。通常、係合部材の下の腕は、係合部材がフロントバーと円滑に係合するように、上の腕よりも短く形成される。
【0005】
アンカはシートクッション後端またはシートバック下端に設けられる。シートクッション、シートバックはいずれも、その骨格となるシートクッションフレームに発泡ウレタン等の発泡材からなるパッドを被せ、パッドをトリムカバーで被覆して構成され、アンカの配置される凹部がパッドに形成されている。アンカをシートクッション後端に設ける場合について述べると、シートクッションフレームは、左右のサイドフレームの前後端を、たとえば連結パイプで連結した平面視略矩形形状に形成され、アンカは、前後の連結パイプのうちの後方の連結パイプに固定されて、シートクッション後端でパッド凹部に配置される。
【0006】
パッド凹部およびその内部に配置されたアンカが見えると外観意匠が損なわれるため、上端が開口した略箱形状のベゼルをパッド凹部に被せてパッド凹部を隠す構成が提案されている。
たとえば、特開2002−104037号公報には、ベゼルをパッド凹部に被せ(嵌合させ)、開口を開閉自在のキャップで覆った構成が記載されている。ここで、ベゼルはフランジを利用してパッド凹部に被せられ(嵌合され)、アンカはベゼルの底壁(底面;背面)に形成された穴(底穴)からパッド凹部に延びている。
この構成では、ベゼルによってパッド凹部が隠されるとともに、チャイルドシート非装着時(通常時)には、キャップがパッド凹部を覆ってパッド凹部のアンカを隠すため、外観意匠の低下が避けられる。そして、ベゼルのキャップを開けて露出したパッド凹部内のアンカのフロントバーに、チャイルドシートの係合部材が係合されて、チャイルドシートが車両用シートに装着される。
【0007】
また、特開2010−064636号公報には、合成樹脂材を含浸させた不織布からフランジ付のベゼルを形成し、ベゼルのフランジの端末とパッド凹部の回りのトリムカバーの端末とを縫着することにより、ベゼルをパッド凹部に取付けた構成が記載されている。ここで、アンカの挿通可能なスリットがベゼルの底壁に形成され、アンカはスリットを挿通してベゼル内に突出して位置する。
この構成では、ベゼルの底にアンカが見えるが、パッド凹部がベゼルによって隠されているため、チャイルドシート非装着時にも外観意匠が大きく損なわれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−104037号公報
【特許文献2】特開2010−064636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開2002−104037号公報では、キャップ、ベゼルはPP(ポリプロピレン)などの比較的硬質の樹脂素材から形成されているため、パッド凹部を着座位置に設けてキャップ付のベゼルをパッド凹部に嵌合させて、チャイルドシート非装着時にベゼルにキャップを被せた状態で着座すると、着座者の尻や背中にキャップが当接して、着座者に違和感を与えるおそれがある。
また、ベゼルをパッド凹部に嵌合させるだけでは、ベゼルをパッド凹部に確実に取付けることが難しい。たとえば、ベゼル取付け用ワイヤをパッドに埋設してパッド凹部に架設し、取付け用ワイヤに把持される把持片をベゼルの底壁に形成して、把持片が取付け用ワイヤを把持してベゼルをパッド凹部に取付けることが考えられるが、構成の複雑化が避けられず、コスト高にもなる。
さらに、チャイルドシート非装着時にはベゼルの底壁(底面;背面)の穴(底穴)を通してパッド凹部が見え、外観品質の低下を招いている。
【0010】
特開2010−064636号公報では、ベゼルのフランジをトリムカバーに縫着しているため、ベゼルはパッド凹部に確実に取付けられ、合成樹脂材を含浸させた不織布から形成されているため、着座者に違和感を与えない。しかしながら、パッド凹部がベゼルによって隠されて外観意匠が大きく損なわれないとはいえ、キャップがないため、チャイルドシート非装着時にベゼルの底にアンカが見え、外観意匠の上から好ましくない。また、ベゼルの底壁のスリットは、特開2002−104037号公報における底穴より小さいとはいえ、スリットを通してパッド凹部が見えることは避けられず、外観品質の低下を招いている。
【0011】
上記のように公知の構成においては、ベゼルをパッド凹部に取付けてパッド凹部を隠しても、アンカのためにベゼルの底壁に設けられた底穴やスリットを通してパッド凹部が見えることは避けられず、それによって外観品質が損なわれている。
【0012】
本発明は、アンカのためにベゼルの底に設けられた底穴やスリットを通してパッド凹部が見えることによる外観意匠の低下を避けた車両用シートの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのため、本発明では、ベゼルは、底面となる上下のフラップを一体に有して可撓性素材から成形されている。
すなわち、請求項1に係る本発明によれば、チャイルドシートに設けられた係合部材が係合されてチャイルドシートを保持可能なアンカを有し、アンカを収納する凹部がシートクッション後端、シートバック下端のいずれかでパッドに形成され、パッドを覆うトリムカバーがパッド凹部の上で開口され、ベゼルをパッド凹部に被せてパッド凹部を隠した車両用シートにおいて、ベゼルは、当該ベゼルの底壁となる上下のフラップを一体に有して可撓性素材から成形され、上下のフラップの後方に空間を残してパッド凹部に被せられ、チャイルドシートに設けられた係合部材は、ベゼルの上下のフラップを後方に押圧してパッド凹部の後方の空間に逃がしながら、または上下のフラップを後方に押圧することなく、アンカに係合されている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る本発明では、可撓性素材からなる上下のフラップからベゼルの底壁が形成されているため、アンカをベゼル内に突出させる隙間を自由に設定でき、ベゼルの底にアンカのための底穴やスリットを設ける必要がない。そのため、ベゼルの底穴やスリットを通してパッド凹部が見えることによる外観品質の低下が避けられる。また、底壁となる上下のフラップによってパッド凹部が隠され、この点からも外観品質の低下が避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例に係る車両用シートの概略側面図を示す。
図2】ベゼル、キャップ、アンカの斜視図を示す。
図3】(A)はチャイルドシート非装着時、(B)は装着時における図1の(B)部分でのベゼル、アンカの拡大部分断面図をそれぞれ示す。
図4】(A)は、本発明の他の実施例(実施例2)に係る車両用シートにおけるベゼル、アンカの斜視図、(B)はベゼルのフラップの正面図をそれぞれ示す。
図5】本発明の他の実施例(実施例3)に係る車両用シートにおけるベゼル、アンカの斜視図を示す。
図6】(A)はチャイルドシートの非装着時、(B)は装着時における図1の(B)部分に対応するベゼル、アンカの拡大部分断面図をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
車両用シートは、チャイルドシートに設けられた係合部材が係合されてチャイルドシートを保持可能なアンカを有し、アンカを収納する凹部がシートクッション後端、シートバック下端のいずれかでパッドに形成されている。また、パッドを覆うトリムカバーがパッド凹部の上で開口され、ベゼルをパッド凹部に被せてパッド凹部を隠している。ここで、ベゼルは、当該ベゼルの底壁となる上下のフラップを一体に有して可撓性素材から成形され、上下のフラップの後方に空間を残して前記パッド凹部に被せられている。そして、チャイルドシートに設けられた係合部材は、ベゼルの上下のフラップを後方に押圧して前記パッド凹部の後方の空間に逃がしながらアンカに係合されている。
【実施例】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。図1は本発明の一実施例に係る車両用シートの概略側面図、図2はベゼル、キャップ、アンカの斜視図、図3(A)はチャイルドシート非装着時、(B)は装着時における図1の(B)部分でのベゼル、アンカの拡大部分断面図をそれぞれ示す。なお、前後左右はドライバーシートに着座したドライバーから見た方向をいい、Fr、Rr、L、Rで示す。
【0018】
図1に示すように、車両用シート10は、シートバック12、シートクッション14を備え、シートベルト(図示しない)がシートに装着されている。シートクッション14は、クッションフレーム(図示しない)に発泡ウレタン等の発泡材からなるパッド(シートパッド)14−1を被せ、パッドをトリムカバー14−2で被覆して構成され、シートバック12も同様の構成となっている。
【0019】
パッド、トリムカバーについては後述するが、アンカを収納する凹部がパッドに形成され、パッドを覆うトリムカバーはパッド凹部の上で開口している。
なお、図1では凹部がシートクッション後端に形成されているが、これに限定されず凹部がシートバック下端に設けられてもよい。
【0020】
たとえば、シートクッション14の後端には、シートクッション上にISO−FIXタイプのチャイルドシート20を保持するためのISO−FIX対応の左右のアンカ30が、車両用シート10の左右方向に所定の間隔をあけて配設されている。
図1に示すように、チャイルドシート20は、たとえばその背面22下部から後方へ延びた左右の係合部材24を持ち、係合部材は、長溝状の切欠きからなる係合口24aを先端に有している。また、図2に示すように、アンカ30は、前方に互いに平行に延びた左右のサイドバー30aの前端をフロントバー30bで連結した平面視略コ字形状にワイヤ材を折曲加工して成形されている。アンカ30は、たとえばシートクッションのサイドフレーム(図示しない)の後端間で左右方向に架設された連結パイプ(図示しない)に、前方へ延出するように固定されている。
【0021】
通常、チャイルドシート20は、背面側が沈んで傾斜した状態で左右の係合部材24を対応するアンカ30に前方から近づけ、係合部材の係合口(切欠き)24aをフロントバー30bに係合させることによって、チャイルドシート20がアンカに保持されてシートクッション14上に配置される。アンカのフロントバー30bが係合部材の係合口24aの末端に至るまで係合されることにより、アンカ30によるチャイルドシート20の保持が完全なものとなる。
【0022】
図1に示すように、シートクッション14後端でパッド14−1を切り欠いて凹部14−1aが形成され、パッドを被覆するトリムカバー14−2はパッド凹部の上で開口されている。パッド凹部14−1aには、たとえば、上端の開口した有底の略箱形状のベゼル40が被せられている。ベゼル40はフランジ付とされ、そのフランジ41を開口の回りのトリムカバーの端末に、図1に示すように、たとえば縫合してトリムカバー14−2に取付けられ、パッド凹部14−1aに被せられている。
【0023】
フランジ付で有底の略箱形状のベゼル40は上下左右の壁を一体に有して、たとえばエラストマーなどの柔軟性に富んだ可撓性素材から成形され、その上下の壁42U,42Lは後端部が左右の壁(側壁)42Sから分離されて上下のフラップ44U,44Lとなり、上下のフラップからベゼルの底壁(底面)が形成されている。つまり、図3(A)に示すように、上のフラップ44Uはその末端(後端)が下方に湾曲するとともに、下のフラップ44Lはその末端は上方に湾曲して、たとえば、それぞれの末端が当接して、上下のフラップがベゼルの底を塞ぐ底壁となっている。下のフラップ44Lの表面にはISO−FIXアンカを示すマークMが付されている。
【0024】
実施例では、上下のフラップ44U、44Lはその末端が互いに当接してその末端の間に隙間がない構成となっている。しかしながら、この構成に限定されず、上下のフラップ44U、44Lはその末端の間からパッド凹部14−1aが見えなければよく、パッド凹部がほとんど見えない隙間が末端の間に存在したり、末端が当接することなく上下に延びて重複してパッド凹部を完全に遮蔽する構成でもよい。
【0025】
図2に示すように、アンカのフロントバー30bを収納する切欠き42Saが左右の側壁42Sの末端(後端)に形成され、アンカのフロントバーがその端で切欠きに収納されることによって、パッド凹部14−1aはもちろん、フロントバー30bの端部、左右のサイドバー30aが隠され、フロントバー30bの中央部のみがベゼル40の内部に残される。切欠き42Saはフロントバー30bを収納可能な略半円形に形成されている。
また、ベゼル上端の開口40aの近傍で左右の側壁42Sには、上下方向に延びた長溝からなる係合溝42Sbが形成されている。
【0026】
撓性素材からなる上下のフラップ44U,44Lからベゼル40の底壁が形成されているため、アンカのフロントバー30bをベゼル内に突出させる隙間を上下のフラップの間に自由に設定できる。そのため、ベゼル40は、上下のフラップ44U、44Lがアンカのフロントバー30bを越え、側壁の切欠き42Saにフロントバーが収納されて切欠きのほぼ末端に至るまでパッド凹部14−1aに押し込まれる。そして、図2図3(A)に示すように、ベゼル40は、その底壁(上下のフラップ44U、44L)の後方で凹部14−1aに空間Sが残されるように、パッド凹部に被せられる。
【0027】
アンカ30をベゼル内に突出させる隙間を自由に設定できるため、ベゼル40の底にアンカのための底穴やスリットを設ける必要がなく、ベゼルの底穴やスリットを通してパッド凹部14−1aが見えることによる外観品質の低下が避けられる。さらに、ベゼル40の底壁となる上下のフラップ44U、44Lによってパッド凹部14−1aが隠され、この点からも外観品質の低下が避けられる。
【0028】
ベゼル40は別体のキャップ50を有しており、キャップはベゼルと同一の可撓性素材、たとえばエラストマーなどから成形される。
キャップ50はベゼルの開口40aに対応した形状とされ、たとえば、ベゼルの開口が略矩形形状であるため、それに対応して平面視略矩形形状とされる。ベゼルの側壁42Sに形成された係合溝42Sbに係合可能な係合突起50Sbが、キャップの左右の側面50Sに形成され、その前面中央部にISO−FIXアンカを示すマークM’が付されている。また、キャップの前面50Fにはその下端から切り欠かれた窪み50aが形成され、この窪みは親指、人差し指などの挿入可能な大きさに形成され、その上端は親指、人差し指が係止可能な形状となっている。
【0029】
図3(A)に示すように、チャイルドシートの非装着時においては、キャップ50をベゼルの開口40aに押し込むと、キャップ側面の係合突起50Sbがベゼル側壁の係合溝42Sbに係合されてキャップ50がベゼルの開口40aに被せられて、キャップによってベゼル内のアンカ30が覆い隠される。
【0030】
キャップ50をベゼル40に着脱自在に取付ける構成は、ベゼルの係合溝42Sbにキャップの係合突起50Sbを係合させた実施例の構成に限定されない。たとえば、実施例とは逆に、係合溝をキャップ側面に、係合突起をベゼル側壁にそれぞれ形成してもよい。また、実施例では係合突起をキャップの左右側面、係合溝をベゼルの左右側壁に形成したが、係合突起(係合溝)をキャップの上下面、係合溝(係合突起)をベゼルの上下壁に形成してもよい。あるいは、係合溝、係合突起の組合せ以外の構成としてもよく、たとえば、マジックテープ(登録商標)をベゼルのフランジ前面、キャップ裏面に設けた構成としてもよい。
【0031】
チャイルドシートの装着時においては、まず、キャップ50がベゼルの開口40aから取り外される。たとえば、キャップ前面の窪み50aに親指や人指し指を挿入し、窪みの上端に係止させてキャップ50を手前に引けば、係合溝42Sb、係合突起50Sbの係合を解除されてキャップ50がベゼル40から取り外される。
そして、チャイルドシートに設けられた係合部材24が開口40aからベゼル40に押し込まれ、係合部材の係合口24aがアンカのフロントバー30bに係合されたまま押し込まれ、係合部材の先端がベゼルの底壁である上下のフラップ44U、44Lに押し当たる。上下のフラップ44U、44Lが可撓性素材から成形されているため、係合部材24が押し当たると上下のフラップは後方に押圧され、撓んでその後方のパッド凹部の空間Sに逃げて押し広げられ、係合部材の押込みを妨げない。そのため、図3(B)に示すように、係合部材24は、係合口24aの末端にアンカのフロントバー30bが至るまで、上下のフラップ44U、44Lを後方に押圧してパッド凹部の空間Sに逃がしながらベゼル40に押し込まれて、ベゼル内のアンカ30に係合される。
係合部材先端の係合口24aがアンカのフロントバー30bに係合されることによってチャイルドシート20がアンカ30に保持されてシートクッション14の所定位置に装着される。
【0032】
アンカ30との係合を解除しながらチャイルドシートに設けられた係合部材24をベゼル40から引き出せば、チャイルドシート20がシートクッション上から除かれる。
ここで、アンカ30との係合を解除しながら係合部材24をベゼル40から引き出せば、可撓性素材からなる上下のフラップ44U、44Lは、その弾性のもとでもとの形状に復帰する。すなわち、係合部材24がベゼル40から引き出されて係合部材からの押力が除かれると、上下のフラップ44U、44Lは、上下に湾曲してそれぞれの末端が当接したベゼルの底壁となる図1図3(A)に示すもとの形状に戻って、パッド凹部14−1a、左右のサイドバー30aを隠し、フロントバー30bの中央部のみがベゼル40の内部に残される。
【0033】
パッド凹部14−1aを着座位置に設けてキャップ付のベゼル40をパッド凹部に嵌合させてチャイルドシート非装着時にベゼルにキャップ50を被せた状態で着座しても、ベゼル、キャップがいずれもエラストマーなどの可撓性素材から成形されているため、ベゼル、キャップが着座者に当接することによる違和感を与えることがない。そして、フランジ付のベゼル40が可撓性素材から成形されているため、フランジ41をトリムカバー14−2の端末に縫合でき、トリムカバーとの縫合によってベゼルをパッド凹部14−1aに容易に取付けられる。
実施例では、図1示すように、ベゼルのフランジ41の端、トリムカバー14−2の端末をそれぞれ内側に折り返してその縫合部を内側に隠すとともに、キャップ50をベゼルのフランジと面一(つらいち)に取付けて、出っ張りをなくしているため、この点からも着座者に違和感を与えるおそれがない。
【0034】
図4(A)は、本発明の他の実施例(実施例2)に係る車両用シートにおけるベゼル、アンカの斜視図、(B)はベゼルのフラップの正面図をそれぞれ示す。この実施例2において、上記実施例(実施例1)と共通する構成部材については同じ参照符号を付してその説明を省略し、実施例1と異なる構成を主として説明する。
アンカのサイドバー30aが、実施例1では左右の側壁42Sで覆われているのに対して、実施例2では上下のフラップ44U、44Lで覆われている点で相違する。
【0035】
実施例2では、アンカの左右のサイドバー30aに対応する位置で上下のフラップ44U、44Lの末端(後端)に、サイドバーの挿通可能な挿通孔44−1が設けられている。挿通孔44−1は、左右のサイドバー30aがそれぞれ挿通するように、左右に離反して2つ設けられている。
挿通孔44−1はサイドバー30aの外形形状に対応した形状とされ、通常、サイドバーが円形断面であるため、対応する半円形の切欠き44−1’を上下のフラップ44U、44Lの端にそれぞれ形成し、上下の切欠きの組合せから構成される。しかしながら、上下のフラップ44U、44Lの端に形成した上下の切欠き44−1’の組合せからサイドバーの挿通可能な挿通孔44−1を構成すれば足り、同一の半円形の切欠きを中央線CLの上下で上下のフラップ44U、44Lの端に形成する代わりに、一方の切欠きを半円に満たない部分円形の切欠きとし、他方を長溝形状してもよい。
【0036】
図4(A)に示すように、上下のフラップ44U、44Lの端に設けた挿通孔44−1に、アンカの左右のサイドバー30aが挿通されて、フロントバー30bがサイドバーの一部を伴ってベゼル内に突出される。
実施例1と同様に、実施例2においても、ベゼルの上下のフラップ44U、44Lによって、アンカ30をベゼル内に突出させる隙間が自由に設定されるため、ベゼル40の底にアンカのための底穴やスリットを設ける必要がなく、ベゼルの底穴やスリットを通してパッド凹部14−1aが見えることによる外観品質の低下が避けられる。実施例2においては、フロントバー30bだけでなくサイドバーの一部もベゼル内に突出されるが、実施例1と同様に、ベゼル40の底壁となる上下のフラップによってパッド凹部14−1aが隠され、外観品質の低下を招かない。
【0037】
チャイルドシートの装着時には、キャップ50を除いてから、チャイルドシートに設けられた係合部材24が開口40aからベゼル40に押し込まれ、係合部材は、係合口24aの末端にアンカのフロントバー30bが至るまで、係合口がアンカのフロントバー30bに係合されたまま押し込まれてアンカに係合される。
ここで、係合口24aの末端にアンカのフロントバー30bが至るまでの距離よりも上下のフラップ44U、44Lから突出するアンカのフロントバーの長さが短ければ、係合部材24は上下のフラップに押し当たり、上下のフラップを撓ませて後方のパッド凹部の空間Sに逃がしてアンカに係合されるが、長ければ、係合部材24は上下のフラップに押し当たることなく、アンカに係合される。
【0038】
図5は本発明の他の実施例(実施例3)に係る車両用シートにおけるベゼル、アンカの斜視図、図6(A)はチャイルドシートの非装着時、(B)は装着時における図1の(B)部分に対応するベゼル、アンカの拡大部分断面図をそれぞれ示す。
この実施例3において、上記実施例(実施例1)と共通する構成部材については同じ参照符号を付してその説明を省略し、実施例1と異なる構成を主として説明する。
【0039】
実施例3では、上下のフラップ44U、44Lがアンカのフロントバー30bの前方でベゼルの底壁を形成してアンカ30を遮蔽して覆っており、この点で実施例1と相違する。
この構成では、上下のフラップ44U、44Lよりなるベゼル40の底壁がアンカ30の前方に設けられているため、アンカ30、パッド凹部14a−1が完全に隠される。そして、可撓性素材からなる上下のフラップ44U、44Lからベゼルの底壁が形成されているため、アンカをベゼル内に突出させる隙間を自由に設定でき、ベゼルの底にアンカのための底穴やスリットを設ける必要がなく、ベゼルの底穴やスリット通してパッド凹部が見えることによる外観品質の低下が避けられる。
【0040】
上記のように、本発明によれば、可撓性素材からなる上下のフラップをベゼルの底壁としているため、ベゼルの底にアンカのための底穴やスリットが不要となり、ベゼルの底穴やスリット通してパッド凹部が見えることによる外観品質の低下が避けられる。また、底壁となる上下のフラップによってパッド凹部が確実に隠され、この点からも外観品質の低下が避けられる。
【0041】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、バス、乗用車などの通常の車両用シートに限定されず、チャイルドシートを保持可能とするアンカを有した電車、飛行機等のシート(車両用シート)にも応用できる。
【符号の説明】
【0043】
10 車両用シート
12 シートバック
14 シートクッション
14−1 パッド(シートパッド)
14−1a 凹部
14−2 トリムカバー
20 チャイルドシート
24 係合部材
24a 係合口(切欠き)
30 アンカ
30a サイドバー
30b フロントバー
40 ベゼル
41 ベゼルのフランジ
42U、42L ベゼルの上下の壁
42S ベゼルの側壁
42Sa 切欠き
44U、44L 上下のフラップ
44−1 挿通孔
50 キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6