(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基部に対して1つの軸方向に開閉駆動される一対の移動子が設けられた1軸直線駆動部と、前記一対の移動子に対してそれぞれ前記軸方向と平行に設けられた軸のまわりに回転可能でかつ該軸の方向に移動可能に設けられた一対の把持部と、前記移動子の前記軸方向への駆動力から回転方向の駆動力を生じるように設けられた回転力発生機構部と、前記把持部が物品を把持しているときに前記回転力発生機構部によって生じた回転力を前記把持部に伝達する回転伝達機構部と、を備えたことを特徴とする把持装置。
前記回転力発生機構部は、前記移動子が閉方向に駆動されるときに前記移動子の閉方向の駆動力を弾性エネルギとして蓄勢するように設けられた弾性部材と、前記移動子の移動方向の直線運動を回転運動に変換するボールねじ及びナットとを用いてなり、前記移動子が開方向に駆動されるときの初期の過程で前記弾性部材に蓄勢された弾性エネルギを、前記ボールねじ及び前記ナットの内の回転拘束された一方の部材に対して直線運動として作用させるようにしたものであることを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
前記回転伝達機構部は、閉方向の端部に前記把持部が固定された回転軸と、この回転軸に対して、前記把持部に把持された物品の姿勢変更を行う方向の回転のみ前記把持部に伝達するように設けられた一方向回転機構とを用いたものであることを特徴とする請求項2に記載の把持装置。
前記回転軸として一端部側にねじ部が設けられた前記ボールねじを用いると共に、一端部が前記移動子に固定され他端部が前記軸方向と直交する方向に延在する接続部材と、この接続部材の所定部に前記軸方向と平行に移動可能で閉方向側に突出するように設けられたガイド軸と、このガイド軸の前記閉方向側の端部に固定され、前記接続部材との間に介装された前記弾性部材によって常時閉方向側に付勢された把持部移動部材と、を備え、前記ボールねじの前記一端部側のねじ部が前記接続部材の所定部に固定された前記ナットに対して螺合され、該ボールねじの他端部側の軸部が前記一方向回転機構としてのワンウェイクラッチを介して前記把持部に固定され、かつ、前記ボールねじの軸方向中央部の軸部は軸受を介して前記把持部移動部材に軸方向に規制されて回転自在に係合されていることを特徴とする請求項3に記載の把持装置。
前記把持部における物品把持面には、前記軸方向と平行な軸の方向に移動可能に突出された複数のピンが設けられ、前記ピンは前記把持部に内装された圧縮バネによって前記物品把持面から突出する方向に常時付勢されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の把持装置。
前記1軸直線駆動部の開閉方向の移動量を制御することにより前記把持部に把持された物品の姿勢変更角度を制御するようにしたことを特徴とする請求項2から請求項5の何れかに記載の把持装置。
前記1軸直線駆動部の駆動源は電動機からなり、前記電動機の回転量を制御することにより、前記把持部に把持された物品を所望の姿勢とするようにしたことを特徴とする請求項2から請求項5の何れかに記載の把持装置。
前記1軸直線駆動部はエアチャックからなり、前記エアチャックの開閉をセンタークローズドバルブの動作時間を制御することにより、前記把持部に把持された物品を所望の姿勢とするようにしたことを特徴とする請求項2から請求項5の何れかに記載の把持装置。
前記回転力発生機構部は、前記軸方向と平行な平行軸に直交する面に対して傾斜されたカム面が前記平行軸のまわりに形成された端面カムと、前記移動子の閉動作に連動して前記平行軸に沿って前記端面カムの方向に相対的に移動され、所定のストローク移動されたときに前記カム面に当接し、該カム面に沿う方向に生じるモーメントによって前記端面カムに対して前記平行軸のまわりに相対的に回転するように設けられたカム面当接体を用いたものであることを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による把持装置の要部を概念的に示す正面図、
図2は
図1の主要部を示す拡大断面図、
図3は
図1に示された把持装置の動作を示す説明図である。図において、把持装置1の把持部10を開閉方向に駆動する駆動機構は、公知の技術である例えばエアチャック、ラック&ピニオン、左右ボールねじなどから選択された1軸直線駆動部2が用いられ、基部2aとこの基部2aに対して
図1の左右方向に開閉駆動される一対の移動子2bを備えている。なお、
図1に示す矢印A方向が移動子2bの閉方向、その逆方向が開方向であり、開・閉の移動方向を軸方向とする。各移動子2bには後述する構成部材を保持すると共に移動子2bの駆動力を伝達する接続部材3が左右対称的に固定されている。以下、図中左側の接続部材3に繋がる構成を中心に
図2を参照して説明する。接続部材3は正面から見て逆L字状で、図中下方向に延びる長辺部の上部側には図中左右方向外側(開方向)に延びる摺動固定軸4の一端部が固定され、長辺部の下部側には軸受5Aが設置されている。摺動固定軸4の他端部は図中上下方向に延びる側部保持部材6の上端部側に固定されている。
【0010】
側部保持部材6の図中上下方向中央部における接続部材3に設置された軸受5Aに対応する位置には軸受5Bが設置され、軸受5Aと軸受5Bには、直線方向の駆動力を回転駆動力に変換する回転力発生機構部を構成するボールねじ8が摺動固定軸4と平行に回転自在に装架されている。接続部材3と側部保持部材6の間には、接続部材3に対して開閉方向(左右方向)に独立に移動し得る把持部移動部材7が配設されており、その把持部移動部材7の上部は摺動固定軸4に対して摺動部材7aを介して開閉方向に移動自在に保持され、把持部移動部材7の中央部には所定方向のネジ山(溝)が形成されたボールねじ8に螺合されたナット8aが固定されている。そして、把持部移動部材7の下部は軸受5Cを介して
図2の右端部(閉方向側)に把持部10が固定された回転軸10aを回転自在に保持している。なお、把持部10は把持部移動部材7によって開閉方向に同期動作される。
【0011】
また、回転軸10aには、回転伝達機構部11としての一方向回転機構であるワンウェイクラッチ9と、このワンウェイクラッチ9を介して設けられた平歯車11a(歯部の図示省略。以下同様)が開閉方向位置に拘束された状態にて設置されている。なお、回転軸10aの把持部10と開閉方向に対して反対側の端部は、側部保持部材6の図中上下方向の下部に摺動部材10bを介して、回転及び軸方向に摺動自在に保持され、軸端のフランジ状の止め部10cで閉方向動作が制約されている。更に、ボールねじ8の軸受5Bに近い軸部には前記平歯車11aに噛合された回転伝達機構部11を構成する他方の平歯車11bが固定されている。
【0012】
また、摺動固定軸4における側部保持部材6と把持部移動部材7との間には、移動子2bの閉動作に伴う駆動力の一部を弾性エネルギとして蓄勢させる弾性部材としての圧縮バネ12が設置されている。なお、平歯車11aと平歯車11bは、噛合した状態で軸方向に所定範囲内で相対移動可能で、回転位相が保持されるように構成されている。なお、図面から明らかなように、摺動固定軸4、ボールねじ8、及び回転軸10aの軸方向は移動子2bの移動方向と平行である。また、接続部材3、側部保持部材6、及び把持部移動部材7のそれぞれの延在方向は互いに平行で移動子2bの移動方向に直交する方向に設けられている。一方、
図1における右側の構造には、ボールねじ8、ナット8a、ワンウェイクラッチ9、回転伝達機構部11が設けられていない他は大凡同様に構成されている。
【0013】
但し、図示の例では左側のボールねじ8に対応する位置には、摺動固定軸4と同様の保持軸80が接続部材3と側部保持部材6を連結するように設置され、把持部移動部材7の図中上下方向の中央部を図示省略している摺動部材によって開閉方向に移動自在に保持している。また、この例では右側の把持部10Rは、図示省略しているロボットなどで供給された電子部品などの物品13(
図3に図示)を把持しているときに、左側の把持部10が回転すると、その回転によって物品13を介して受動回転することとなる。なお、把持装置1は例えば姿勢変更ハンドなどと呼ばれる場合もある。また、把持装置1を上下動させ、あるいは把持した物品13を移送先に移送する機構部、物品13の有無や姿勢の検知装置、及び制御装置などは図示を省略しているが、これらについては必要に応じて公知の従来技術を適宜用いることができる。
【0014】
次に、上記のように構成された実施の形態1の把持装置1による、物品の把持、姿勢変更、物品リリース動作について
図3を参照して説明する。物品13の上方から、把持可能な位置まで把持装置1を図示しないロボットなどで移動させる(
図3(a)から
図3(b))。1軸直線駆動部2が閉動作を開始する。即ち、対向された移動子2bを
図1の矢印A方向に相互に接近させる。把持部10、10Rが物品13に接触する(
図3(c))。更に、閉動作を行うと、把持部移動部材7の位置は、把持部10、10Rが物品13に当接して軸方向への移動が拘束されていることにより、固定されたまま、圧縮バネ12の反力に抗しながら、移動子2b、接続部材3、及び側部保持部材6は閉方向に動作して(
図3(d))、圧縮バネ12には圧縮エネルギが蓄勢されていくこととなる。
【0015】
それと同時に、接続部材3にはボールねじ8が軸受5Aを介して回転自在に固定されると共に、把持部移動部材7にはボールねじ8に螺合されたナット8aが固定されているため、ナット8aに対してボールねじ8が相対的に閉方向に移動され、ボールねじ8が該ボールねじ8のネジを切った向きに応じた回転動作を行う。回転伝達機構部11を構成する一方の平歯車11bがボールねじ8に、他方の平歯車11aが同じく回転伝達機構部11を構成するワンウェイクラッチ9を介して回転軸10aに固定されていることから、閉動作に伴うボールねじ8の回転が回転伝達機構部11にてワンウェイクラッチ9の外周に伝達される。この回転方向に対してワンウェイクラッチ9はフリー状態の回転方向であるため、回転軸10aには回転力は伝達されない。これにより物品13を確実に把持できる。
【0016】
次に、姿勢変更動作の説明を行う。物品13を把持した把持装置1を図示しないロボットなどで上方に移動後(
図3(e))、1軸直線駆動部2により開動作を開始する(
図3(e)から
図3(f))。開動作に伴い移動子2b、接続部材3は開方向に動作するが、縮められた圧縮バネ12の反力により物品13は把持部10から把持力を受けたまま、開動作が継続される。この際、把持部移動部材7は圧縮バネ12を縮める方向に位置、すなわち、接続部材3とは離れた位置から、徐々に接近する方向に移動することから、ナット8aはボールねじ8に対して相対的に離れる方向に動作する(
図3(f))。
【0017】
この動作によりボールねじ8は、1軸直線駆動部2の閉動作のときの回転方向とは逆に回転することになる。この回転はワンウェイクラッチ9の回転方向と一致するため、回転伝達機構部11を介して、回転軸10aの回転、ひいては、把持部10の回転となり、物品13の姿勢を変更する回転動作が実現できる。図示しないロボットなどで物品13を所望の位置近傍に移動後(
図3(g))、1軸直線駆動部2の閉動作が継続されると、圧縮バネ12の反力、ひいては、物品13の把持力も徐々に減衰し、最終的には、把持部移動部材7と接続部材3との動作は一致することとなり、物品がリリースされることとなる(
図3(h)〜
図3(i))。
【0018】
ここで、把持部10の回転量は、ボールねじ8のリード量と把持部移動部材7の移動量により算出される回転量となるため、把持部移動部材7の移動量を制御することにより、所望の姿勢変更角度が実現できる。1軸直線駆動部2が、例えばエアチャックであれば公知の技術であるセンタークローズドバルブを利用し、バルブのON・OFFを制御したり、供給する圧縮エア圧を制御したりすることにより、また、1軸直線駆動部2が公知の技術である電動機を利用した機構であれば電動機の回転量、あるいはトルク値を制御することにより、それぞれ移動量の制御が可能となる。
【0019】
上記のように実施の形態1に係る把持装置は、ハンド手先部である把持部10を開閉動作させる1軸直線駆動部2と、1軸直線駆動部2の閉動作に伴い弾性エネルギが蓄えられる弾性部材である圧縮バネ12と、圧縮バネ12に蓄えられた弾性エネルギをボールねじ8に螺合され回転拘束されたナット8aに対して直線運動として作用させ、摺動固定軸4と平行に回転自在に装架されているボールねじ8に回転力が生じるようにした回転力発生機構部と、ボールねじ8に生じる回転力を把持部10の一方向回転に利用する一方向回転機構としてのワンウェイクラッチ9を含む回転伝達機構部11とから構成され、閉動作時にはボールねじ8の回転が把持部10に伝達されず、開動作開始後の過程においてのみ回転を伝達するというように、開閉動作に対して閉方向と開方向で非対称的な動作を行わせることで、物品13の把持と、把持した物品の姿勢変更の2動作を1つの駆動源である1軸直線駆動部2にて実現するようにしたものである。
【0020】
上記のように、実施の形態1によれば、1軸直線駆動部2の1つの駆動源で物品の把持動作と把持した物品の姿勢変更動作を実現できる。このため、物品の持ち替えや他の付帯設備が不要となり、姿勢変更動作に要する時間も短縮できると共に、一般汎用部品を利用して構成できるため、小型・軽量化、低コスト化が実現できる。また、1軸直線駆動部2の開閉動作量を制御することで、把持した物品13の姿勢変更量を所望の値に自在に制御できる、といった顕著な効果が得られる。また、物品の形状や姿勢に応じて姿勢変更量が選択できるため、1つの把持装置で複数機種の物品供給が可能なこと、把持部10の前段における整列条件の制約が緩和されるため、前段の物品供給装置が安価に構成できる、などの効果も期待できる。
【0021】
ここで、本実施の形態1では、回転伝達機構部11として、歯車を用いた例にて説明しているが、回転方向の係合を保持して軸方向に移動可能であれば歯車に限らず利用可能であり、同様な効果が得られることは言うまでもない。また、圧縮バネ12を摺動固定軸4に設置しているが、ボールねじ8に設置しても、同様な効果が得られることは言うまでもないことである。更に、圧縮バネ12を利用したが、把持部移動部材7と接続部材3間を狭める方向に引張力を発生させるように引張バネを設置したり、樹脂の弾性変形などを利用したり、磁石の吸引力、あるいは、反発力を利用したりしても、同様な効果が得られることは言うまでもない。
【0022】
更に、姿勢変更を実現する構造を左側の一方にのみ設置した場合について説明したが、これに限定されず、例えばボールねじ8のねじの切り方、あるいは、ワンウェイクラッチ9の設置向きのいずれかを左右で反転して右側にも同様な構造を装置したり、ボールねじ8の他方側にスプライン軸を構成すると共に、この回転をワンウェイクラッチ9内蔵の回転伝達機構部11にて右側の把持部10Rに伝達したりしても、同様な効果が得られることは言うまでもない。あるいは、右側の把持部10Rを回転自在に構成すると共に、1軸直線駆動部2として非同期型のエアチャックを利用しても、同様な効果が得られる。
【0023】
また、1軸直線駆動部2としてエアチャックを用い、エアチャック開閉をセンタークローズドバルブの動作時間を制御することにより、所望の姿勢変更を行うようにした場合には、汎用部品が利用でき、コンパクトな構成が実現できると共に、エアチャックの直線動作を把持動作に利用できるため、より効率の良いシステム構成が実現できる効果が得られる。また、1軸直線駆動部2として電動の直線開閉機構を用いると共に、ボールねじと、ラック&ピニオンを用いて構成し、電動機の回転量を制御することにより所望の姿勢変更を行うようにしても良い。その場合には、汎用部品が利用でき、コンパクトな構成が実現できると共に、電動機回転量は精密に制御できることから姿勢変更の精度を一層高めることができる。
【0024】
なお、一方向回転機構として、ワンウェイクラッチ9の代わりに、例えば電磁クラッチを設置し電気的な制御により回転伝達の要否やタイミングを判定し、把持部品の姿勢変更を行うようにすることも可能ではあるが、電磁クラッチへの制御回路が別途必要となると共に、クラッチ制御時の電力消費が発生してランニングコストが増加するなどの側面がある。
さらに、軸受5A、5Bの開閉方向における位置拘束にガタを持たせることで、把持部10が物品13と接触後に閉動作する際、ガタの分だけ、ボールねじ8がナット8aの動きと同期して回転動作なしに平行動作する。このガタ分だけ閉動作することで、蓄えられた弾性エネルギは回転ではなく平行動作にのみ利用されることとなる。これより、物品13を所望の姿勢に変更することなく、そのままの姿勢でも把持可能となることは言うまでもないことである。なお、公知の技術であるボールスプラインなどのガイド機構を利用することで、ガタと同様な機能を持たせることが容易に実現できることは、言うまでもないことである。
【0025】
実施の形態2.
図4は本発明の実施の形態2による把持装置の要部を概念的に示す正面図、
図5は
図4の主要部を示す拡大断面図、
図6は
図4に示された把持装置の動作を示す説明図である。なお、各図を通じて同一または相当部分(部材)には同一符号を付すものとする。図において、接続部材3の図中上下方向の中央部には、ナット8aが固定され、更にそのナット8aに螺合されたボールねじ8が、ねじを螺設していない軸部を閉方向側に突出させた向きで係合されている。ボールねじ8の開方向側(図の左側)のねじ部の端部には止め部8bが構成され、閉方向動作が制約されている。ボールねじ8の閉方向側の前記軸部の開方向側には軸受5Dを介して把持部移動部材7Aが設置され、該把持部移動部材7Aは開閉方向にはボールねじ8と同期動作すると共に、回転方向には後述する複数のガイド軸14によって拘束され、ボールねじ8が自由に回転できるように係合されている。
【0026】
また、把持部移動部材7Aの半径方向外周部側には複数本のガイド軸14が軸対称に固定され、そのガイド軸14は接続部材3に固定された摺動部材14aを介して接続部材3に対して軸方向に移動可能に係合され、把持部移動部材7Aの開閉動作を円滑に実現可能としている。接続部材3を突き抜けた外側端部には止め部14bが設置されガイド軸14の抜け止め機能を有している。更に、各ガイド軸14の把持部移動部材7Aと接続部材3との間の外周部分には圧縮バネ12が装着されている。ワンウェイクラッチ9の内径側はボールねじ8の軸部外周面に、外径部は把持部10の軸穴に圧入され、ボールねじ8の所定の一方向回転のみが把持部10に伝達される。なお、ボールねじ8は実施の形態1の回転軸10aの機能を備えている。
一方、
図4の右側の構造には、ボールねじ8、ナット8a、ワンウェイクラッチ9は存在せず、回転軸80Aの左端部に直接固定された把持部10Rと、軸受(図示省略)を内蔵する把持部移動部材70と、圧縮バネ12、ガイド軸14から構成されている。
【0027】
次に、物品把持、姿勢変更、物品リリース動作について
図6を参照して説明する。物品13の上方から、把持可能な位置まで把持装置1を図示しないロボットなどで移動させる(
図6(a)から
図6(b))。1軸直線駆動部2が閉動作を開始する。把持部10、把持部10Rが物品13に接触する(
図6(c))と、把持部移動部材7Aの位置は固定されたまま、圧縮バネ12の反力に抗しながら、接続部材3は閉方向に動作する(
図6(d))。図中左側の接続部材3に設置されたボールねじ8が接続部材3に固定されたナット8aに対して相対的に閉方向に移動するため、ボールねじ8はネジを切った向きに応じた回転動作を行う。ワンウェイクラッチ9がボールねじ8、及び把持部10、10Rへ固定されているが、閉動作に伴うボールねじ8の回転はフリー状態の回転向きであるため、把持部10、10Rに対して回転力は伝達されない。これにより、物品13を確実に把持できる。
【0028】
次に、姿勢変更動作の説明を行う。図示しないロボットなどで上方に移動させた後(
図6(e))、1軸直線駆動部2により開動作を開始する(
図6(e)から
図6(f))。1軸直線駆動部2により開動作が開始されると、開動作に伴い接続部材3は開方向に動作するが、縮められた圧縮バネ12の反力により物品13は把持部10、10Rから把持力を受けたまま開動作が継続される(
図6(f))。この際、把持部移動部材7Aは圧縮バネ12を縮める方向に位置、すなわち、接続部材3とは近づく位置から、徐々に離れる方向に移動することから、ナット8aはボールねじ8に対して相対的に閉方向に動作する。この動作によりボールねじ8は、1軸直線駆動部2の閉動作の場合とは逆回転することになる。この回転はワンウェイクラッチ9の回転方向と一致するため、把持部10の回転となり、物品13の姿勢を変更する回転動作が実現できる。
【0029】
図示しないロボットなどで物品13を所望の位置に移動後(
図6(g))、1軸直線駆動部2の開動作が継続されると、圧縮バネ12の反力、ひいては、物品13の把持力も徐々に減衰し、最終的には、把持部移動部材7Aと接続部材3との動作は一致することとなり、物品がリリースされることとなる(
図6(h)〜
図6(i))。
ここで、ボールねじ8の回転量は、ボールねじ8のリード量と把持部移動部材7Aの移動量(把持部10、10Rの移動量)により算出される回転量となる。この移動量は圧縮バネ12の縮み量に当るため、圧縮バネ12の縮み量を制御することにより、所望の姿勢変更角度が実現できる。1軸直線駆動部2が、エアチャックであればセンタークローズドバルブを利用しバルブのON・OFFを制御したり、供給する圧縮エア圧を制御したりすることで、あるいは、公知の技術である電動機を利用した機構であれば電動機の回転量、あるいはトルク値を制御したり、することで、それぞれ移動量の制御が可能となる(何れも図示省略)。
【0030】
このように、実施の形態2によれば、ハンド手先の把持部10を保持しているボールねじ8を中心にナット8a、把持部移動部材7A、圧縮バネ12、及びワンウェイクラッチ9からなる把持した物品の姿勢変更に必要な機構を設置するようにしたことで、構成部材の設置位置が集約されて把持装置をコンパクトにすることができ、小型・軽量化できる。また、これにより安価なシステムを実現することが容易である、といった顕著な効果が得られる。
【0031】
なお、圧縮バネ12に代えて、可動部と接続部間を広げる方向に引張力を発生させるように引張バネを設置したり、樹脂の弾性変形などを利用したり、磁石の吸引、あるいは、反発力を利用したりしても、同様な効果が得られることは言うまでもないことである。
更に、姿勢変更を実現する構造を一方にしか設置しなかったが、ボールねじ8のねじの切り方、あるいはワンウェイクラッチ9の設置向きのいずれかを左右で反転し、左右双方に同様な構造を実現しても、同様な効果が得られることは言うまでもないことである。
なお、圧縮バネ12の圧縮力に対して、外部動力であるエア圧、電磁バルブのON・OFF制御や、電動機の回転量、あるいはトルク値を制御し、姿勢変更量を制御することを述べたが、弾性体を電場や磁場で弾性を変化可能な可変弾性ソフトマテリアルなどで構成することにより、電場や磁場を制御することで姿勢変更量を制御しても、同様な効果が得られる。
さらに、軸受5A、5Bの開閉方向における位置拘束にガタを持たせることで、把持部10が物品13と接触後に閉動作する際、ガタの分だけ、ボールねじ8がナット8aの動きと同期して回転動作なしに平行動作する。このガタ分だけ閉動作することで、蓄えられた弾性エネルギは回転ではなく平行動作にのみ利用されることとなる。これより、物品13を所望の姿勢に変更することなく、そのままの姿勢でも把持可能となることは言うまでもないことである。なお、公知の技術であるボールスプラインなどのガイド機構を利用することで、ガタと同様な機能を持たせることが容易に実現できることは、言うまでもないことである。
【0032】
実施の形態3.
図7は本発明の実施の形態3による把持装置の要部を示す正面図である。なお、本実施の形態3は、ハンド手先部の把持部10の構成以外は、実施の形態2と同様の構成となっている。把持部10には、複数本のピン15がピン15毎に設けられた図示しない小径圧縮バネにより閉方向側に突出されている。この図示しない小径圧縮バネ全体の弾性係数は、圧縮バネ12の弾性係数と比べて等しいか、小さな値で、物品を把持して持ち上げ、あるいは移動するのに十分な把持力が得られる強さとなっている。その他の構成は、実施の形態2と同様のため説明を省略する。
【0033】
上記のように構成された実施の形態3においては、1軸直線駆動部2により閉方向に把持部10が物品13に接触すると、図示しない小径圧縮バネの圧縮力に抗しながら接続部材3が閉方向に動作する。更に閉動作が続くと、ピン15の突出量が小さくなり、物品13が把持部10に把持される。把持した物品の姿勢変更が必要な場合には、接続部材3を圧縮バネ12の圧縮力に抗して更に閉方向に動作させる。これ以降の姿勢変更の動作は、実施の形態2と同様のため、説明を省略する。姿勢変更が不要な場合は、接続部材3の閉方向の移動を止め、把持部10に把持された物品13を図示していないロボットなどで所望の位置に移動させる。
【0034】
上記のように、ハンド手先の把持部10における把持する物品に対向される面に複数本の伸縮可能なピン15を設けたことで、把持物品の形状が複雑であっても確実に把持すると共に、姿勢変更を実現できる。更に、1軸直線駆動部2の閉方向動作量を、図示しない小径圧縮バネのみの縮みだけで、圧縮バネ12が縮まない量とすることで、把持物品の姿勢を変更させずに、そのまま把持・リリースが可能となるため、対象物品の姿勢に応じてより臨機応変な把持が実現できる、といった顕著な効果が得られる。ここで、把持物品の姿勢を変更しない把持は、伸縮可能な複数のピン15に限定されるものではなく、弾性部が存在すれば実現できることは言うまでも無い。また、実施の形態1の把持部10に同様のピン15を設けた場合でも、同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0035】
実施の形態4.
図8は本発明の実施の形態4による把持装置の要部を概念的に示す正面図、
図9は
図8の主要部を示す拡大断面図、
図10は
図8に示された第2端面カム17を示す図、
図11は
図8に示された第1端面カム16を示す図、
図12は
図8に示されたプーリに設備された位相保持部を説明する図、
図13は
図8に示された把持装置の動作を示す説明図、
図14は
図8に示された把持装置における端面カムと受動回転部材との相対動作を示す説明図である。なお、この実施の形態4は、回転力発生機構部として、1軸直線駆動部2の軸方向と平行に設けられた平行軸に直交する面に対して傾斜されたカム面が形成された端面カムと、移動子の閉動作に連動して端面カムの方向に相対的に移動され、カム面に当接したときに該カム面に沿う方向に生じるモーメントによって端面カムに対して相対的に回転するように設けられたカム面当接体としての受動回転部材を用いるようにしたものである。
【0036】
図において、対向された一対の接続部材3Aの図中左右方向の中央部には、上端が1軸直線駆動部2の基部2aに固定された端面カム保持部2cが垂下されるように設置されている。そして、端面カム保持部2cの図中上下方向の中央部には、丸棒状の摺動固定軸4Aが貫通されており、その摺動固定軸4Aの両端部はそれぞれ摺動部材4aを介してそれぞれの接続部材3に係合されており、接続部材3が開閉方向に滑らかに摺動できるように接続されている。なお、摺動固定軸4Aの両端にはそれぞれフランジ状の止め部4bが設けられている。端面カム保持部2cの図中上下方向の下部には軸方向に挿通孔が設けられた円柱状の第1端面カム16、及び第2端面カム17が、カム面16a、及びカム面17aを左右外側(開方向側)に向けた状態にて設置されている。
【0037】
第1端面カム16のカム面16a、及び第2端面カム17のカム面17aは、移動子2bが閉動作されるときの移動方向に直交する面に対する傾斜面によって形成されている。
図8中、右側の第2端面カム17は、その中心部の挿通孔17b(
図10に図示)に、1軸直線駆動部2の軸方向と平行に設けられた平行軸である後述するボールスプライン軸18が挿通されているが、ボールスプライン軸18の溝には係合されておらず、
図10に原理的に示すように、外周部の所定部に止め部17cが突出され、端面カム保持部2cの所定部に設置された係止突起171に対して止め部17cが係止されることで、回転の一方向(図の反時計方向)の所定角度で回転が規制されていると共に、第2端面カム17が図中時計回りに回動した場合に、係止突起171が存在する方向(反時計方向)に回転トルクを発生させる回転弾性体172が設置されている。なお、回転弾性体172は、一端が第2端面カム17の止め部17cに、他端が1軸直線駆動部2の端面カム保持部2c側に係止されるように設けられて、反時計回りの回転力が常に働くように設置されている。
【0038】
なお、回転弾性体172の他端部を係止する係止部173は端面カム保持部2cに設置される。
図8では止め部17c、係止突起171、回転弾性体172、及び係止部173は図示省略している。
図10に示す第2端面カム17のカム面17aは、12時間表示の時計の文字盤で表すと、凡そ12時、3時、6時、9時の近傍が最も高く、その最高位置から、それぞれ2時、5時、8時、11時に至る間が徐々に低くなるように傾斜され、突出された4つの扇形状で軸対称的な形状になっている。また、上記以外の凡そ2時から3時近傍、5時から6時近傍、8時から9時近傍、11時から12時近傍の各領域はカム面17aから更に一段低い底面部17dとなっている。初期位置は、
図10に示す止め部17cと係止突起171が当接された状態である。なお、そのときのカム面17aの位置は第2係合突起20aが確実にカム面17aに当接するようにするため、正12時の位置よりも反時計方向に若干回転させた位置に設定されている。
【0039】
一方、
図8の左側の第1端面カム16は、基部2aに対して固定された端面カム保持部2cに固定されている。第1端面カム16は、
図11に示すように、それぞれ時計方向に12時、3時、6時、9時から始まるハッチング領域が最も低い底面部16dで、それぞれ2時、5時、8時、11時の位置から始まるハッチングを施していない領域が底面部16dから突出されたカム面16aである。カム面16aの傾斜は、カム面の設けられた側から見て第2端面カム17とは逆に、時計方向に次第に高くなるように、最も高い位置まで徐々に突出する形状となっている。なお、第1端面カム16の中心部には後述するボールスプライン軸18を単に挿通させる挿通穴16bが軸方向に貫通されている。
【0040】
図8における左側の接続部材3Aの上下方向の中央部には、
図9に示すように軸受5Eを介して、ボールスプライン軸18に係合された外筒であるボールスプラインナット18a、このボールスプラインナット18aの側端面に固定されたプーリ21及び第1係合突起(ボールプランジャ)19aを有する第1受動回転部材19が設けられている。
図8における右側の接続部材3Aの上下方向の中央部にも同様の構成で成るボールスプラインナット18b、このボールスプラインナット18bに固定されたプーリ21及び第2係合突起(ボールプランジャ)20aを有する第2受動回転部材20が設けられている。ボールスプライン軸18は、
図8の左右方向中央部の端面カム保持部2cを左右に貫通している一体物であり、軸方向両端に設けられた止め部18cで左右の接続部材3Aに対して軸方向の移動が規制されて、回転自在に設置されている。左右の第1受動回転部材19と第2受動回転部材20はボールスプライン軸18を介して同期回転可能な構成となっており、また、カム面当接体の一態様を構成している。
【0041】
そして、接続部材3Aの上下方向の下部には、
図9に示すように軸受5Fを介して、把持部10を支持するボールスプライン軸10dに係合された外筒であるボールスプラインナット10e、このボールスプラインナット10eの側端面に固定されたプーリ21Aが設けられている。ボールスプライン軸10dの開方向の端部には止め部10fが設けられている。なお、
図8の右側の把持部10Rも
図9と同様に構成されていて、プーリ21とプーリ21Aには左右の何れも歯付ベルト21aが係合されており、左側の把持部10と右側の把持部10Rとは歯付ベルト21aとボールスプライン軸18を介して、常時同期回転可能な構造となっている。なお、プーリ21Aと把持部10の間には、圧縮バネ12Aが設置されている。また、この実施の形態4では接続部材3Aが実施の形態1〜3における把持部移動部材7、7Aの機能を兼ねている。ボールスプライン軸10dは回転軸10aの機能を有している。
【0042】
次に、位相保持部の構造について
図12を参照して説明する。プーリ21の開方向(
図9の左方向)端面には回転方向の角度が予め設定された所定の複数の位置に放射方向の溝部21bを設けると共に、接続部材3Aの所定位置に溝部21bと係合するボールプランジャ22を設けることで、所定の位相を保持する構成となっている。ここで、溝部21bを設置するのは、図中上下方向どちらのプーリ21、21Aでも良い。また、溝部21bを接続部材3A側に、ボールプランジャ22をプーリ21またはプーリ21A側に設置しても、位相が保持できることは言うまでも無いことである。ここで、溝部21bを回転方向に対して非対称な形状とし、入口側を出口側よりも傾斜を緩める形状としても良い。この場合、回転角度が所定の角度に回転される際のアシストトルクが徐々に発生するため、確実な位相保持が実現でき、円滑な回転が実現できる。なお、
図8、
図9では前記位相保持部の図示が省略されている。
【0043】
次に、上記のように構成された実施の形態4における物品把持、姿勢変更、物品リリース動作について
図13を参照して説明する。
物品13の上方から、把持可能な位置まで把持装置1を図示しないロボットなどで移動させる(
図13(a)から
図13(b))。1軸直線駆動部2が閉動作を開始する。把持部10、10Rが物品13に接触する(
図13(c))と、把持部10の位置は固定されたまま、圧縮バネ12Aの反力に抗しながら、接続部材3Aは閉方向に動作する(
図13(d))。この状態では、左右の第1受動回転部材19と第2受動回転部材20は第1端面カム16、第2端面カム17には接触していないため、把持部10は回転せず、物品13を確実に把持できる。
【0044】
次に、図示しないロボットなどで上方に移動後(
図13(e))、1軸直線駆動部2により、更に閉動作を開始する(
図13(e)から
図13(f))。この閉動作により、右側に設置の第2受動回転部材20の第2係合突起20aが右側に設置の第2端面カム17と当接し始め、回転モーメントを受け、第2受動回転部材20が回転を始めると共に、ボールスプラインナット18b、ボールスプライン軸18、更に、プーリ21、歯付ベルト21aを介して、左右両側の把持部10、10Rが同期回転することになる。
【0045】
更に、1軸直線駆動部2による閉動作で、所望回転角度の約半分回転が終了すると、第2受動回転部材20による右側設置の第2端面カム17との当接が、左側の第1受動回転部材19の第1係合突起19aによる左側設置の第1端面カム16との当接にとって変る。左側第1受動回転部材19の回転が、ボールスプラインナット18a、ボールスプライン軸18、更に、プーリ21、歯付ベルト21aを介して、左右両側の把持部10、10Rが同期回転することになる。この際、位相保持部が機能し、所望位相角度を保持することとなる。以上の動作で、所望の回転角度だけ物品13の姿勢が変更されることになる(
図13(f))。
【0046】
図示しないロボットなどで物品13を所望の位置近傍に移動後(
図13(g))、1軸直線駆動部2の開動作が開始されると、圧縮バネ12Aの反力、ひいては、物品13の把持力も徐々に減衰し、最終的には、把持部10、10Rと接続部材3Aとの開方向の移動動作は一致することとなり、物品13が姿勢変更された状態でリリースされることとなる(
図13(h)〜
図13(i))。
【0047】
ここで、上記動作の理解を更に容易にするために、
図14を参照して実施の形態4による第1、第2端面カム16、17と第1、第2受動回転部材19、20との動作の関係を説明する。
図14(a)から
図14(i)の順に、代表的な状態を示している。なお、
図14の過程(a)から(i)は、
図13の(a)から(i)とは一致されていない。
図14(a)から
図14(i)の各図の中央より右側の鋸歯状の折線が第2端面カム17を、左側の折線が第1端面カム16を、左右2つのピンが受動回転部材19、20の先端に設置された係合突起19a、20aを、それぞれ模したものである。また、縦軸方向が端面カムの回転位相角度を表し、45度間隔で横線を引いている。また、係合突起の移動量とカムの水平方向突起量との関係が分かりやすいように、等間隔に縦線を引いている。
【0048】
図14(a)は把持部10、10Rが物品13を把持した状態である。第2端面カム17は
図10の回転弾性体172と係止突起171により、上方に押し当てられている。
1軸直線駆動部2の閉方向動作により、左右の第1第2係合突起19a、20aも閉方向に動作する。同図(b)が右側の第2端面カム17に右側の第2係合突起20aが当接した状態である。ここで、この状態か、その手前の状態では、物品13の姿勢は変更されない。この境界位置は、1軸直線駆動部2がエア式の場合には、センタークローズド弁を利用した中間停止回路を利用し実現される。
【0049】
次に、更に閉方向へ動作すると、第2端面カム17の斜面からなるカム面17aから第2係合突起20aは下向きの力を受け、下方向に動作することで第2受動回転部材20は回転することとなる(同図(c))。上下方向が回転方向になるため、第2受動回転部材20と同期して回転するように連結された把持部10、10Rが第2端面カム17による回転トルクにより回転を開始することとなる。
【0050】
更に、閉方向へ動作すると、同図(d)のように、45度回転し、第2係合突起20aは第2端面カム17の段差部に、左側の第1係合突起19aは第1端面カム16の斜面からなるカム面16aに当接することとなる。この状態がカムの切り替えであり、これ以降は左側の第1端面カム16により第1受動回転部材19に対して回転力が発生することとなる。更に閉方向に動作すると、第1端面カム16の斜面(カム面16a)に沿って回転力を受けながら、同図(e)となり、第2受動回転部材20の第2係合突起20aが第2端面カム17の側面と当接することとなる(同図(f))。
【0051】
更なる閉方向動作により、左右の第1第2係合突起19a、20aは更に
図14の下方向に動作することとなる。ここで、第2端面カム17は回転弾性体172により、図中上方向に付勢されているため、この付勢力に抗して同図(g)に示すように、更に45度、合計90度回転し、左側の第1係合突起19aは第1端面カム16の谷部である底面部16dに位置することとなる。これで、把持部10、10Rの回転が終了し、物品13が所望の角度だけ姿勢変更されることとなる。
【0052】
次に、把持した物品をリリースするため、1軸直線駆動部2は開方向へ動作する(
図14(h)、(i))。同図(h)では、まだ、右側の第2係合突起20aが第2端面カム17を図の下方向に押し込みながら動作するが、同図(i)では、第2係合突起20aの係合による拘束がはずれ、回転弾性体172が蓄えた弾性エネルギにて、第2端面カム17は上方向に動作し初期位置まで戻ることとなる。なお、本実施の形態では、把持部10、10Rを90度だけ姿勢変更する場合について説明したが、例えば60度間隔など所望の角度に設定することにより同様な作用効果が得られることはいうまでも無い。
【0053】
また、把持した物品を姿勢変更させる場合について説明したが、この発明の把持装置は把持した物品を必ず姿勢変更させるものに限定されるものではない。例えば端面カムと受動回転部材の係合突起が当接する直前までに把持動作は完了しているので、移動子2bの閉方向への移動を前記当接直前で停止させるように制御することにより、同一の把持装置で姿勢を変更させずに把持動作のみを実現できること、製造ラインで次々と供給される電子部品などの物品群に、姿勢制御が必要な物品と、必要でない物品が混在されているような場合に、供給された物品の姿勢を検知して、その検知結果に応じて把持部10、10Rの動作を制御することにより、同一の把持装置で全ての物品を整列した状態で次段に供給あるいは移送することも可能である。
【0054】
上記のように、実施の形態4によれば、1組の端面カム、即ち第1端面カム16と第2端面カム17を中央部の端面カム保持部2cの左右に設置すると共に、第1受動回転部材19及び第2受動回転部材20の閉方向側にボールプランジャを用いた第1係合突起19a、及び第2係合突起20aを設置することにより、把持動作を行う1軸直線駆動部2の駆動源1つのみで、物品13の把持と姿勢変更が実現可能となり、更なる小型・軽量化、低コスト化が実現できる、といった顕著な効果が得られる。また、前記構成により、端面カムで設定した所望角度の姿勢変更が可能となり、1軸直線駆動部の閉動作のみで確実に実現でき、1軸直線駆動部2の停止位置制御を精度高く行うことも不要となるため、制御が容易で、かつ安価なシステム構成が実現できる。更に、この構成により、開閉部を小型化できるため、小型なシステムを構成することができる。
【0055】
また、第1端面カム16と第2端面カム17を中央に配置すると共に、一方の第2端面カム17を所定方向に回動可能で、かつ所定時に回転弾性体172によって元の位置に復帰可能な可動カムとし、姿勢変更に要する所望角度の約半分の回転角にて、受動回転部材の係合突起が当接する端面カムを他方側の第1端面カム16に切り替えることにより、1軸直線駆動部2の開閉動作の度に、所望量の回転を実現できる。また、中央部分に1組の端面カム及び受動回転部材を集約し、接続部材3Aが実施の形態1〜3における把持部移動部材7、7Aの機能を兼ねるようにしたので、開閉方向にコンパクトな把持装置が実現できる、といった顕著な効果が得られる。
【0056】
ここで、本実施の形態4にて、回転伝達機構部として、プーリ21と歯付ベルト21aを利用した例を示したが、平歯車やはすば歯車、二重はすば歯車など、公知の技術である回転伝達機構を利用しても、同様な効果が得られることは言うまでもない。また、左右両側の把持部10、10Rの回転をボールスプライン軸18と同期回転させる場合について説明したが、一方の把持部が受動回転されるようにしても、同様な効果が得られる。更に、把持部10とプーリ21間に圧縮バネ12Aを設置しているがこれに限定されず、例えば実施の形態3で用いた、複数の小径のピン15としても、同様な効果が得られることは言うまでもない。また、2組の受動回転部材と端面カムを用いた場合について説明したが、1組によって姿勢変更するように構成しても良い。
【0057】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態の一部または全部を自由に組合せたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。例えば、受動回転部材(第1受動回転部材19、第2受動回転部材20)を固定して端面カムに対する相対部材とし、端面カム(第1端面カム16、第2端面カム17)の方を受動回転させるように構成することもできる。