【文献】
Alex Redinger,et al.,The Consequences of Kesterite Equilibria for Efficient Solar Cells,Journal of the American Chemical Society,2011年,Vol.133,pp.3320−3323
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明では、説明の目的で、開示する実施形態を完全に理解できるように多くの特定の詳細を示す。しかし、1つ又は複数の実施形態がこうした特定の詳細なしに実行できることは明らかであろう。他の例では、周知の構造及びデバイスは、図面を簡略化するために概略的に示す。
【0012】
まず、
図1A〜
図1Cを参照されたい。
図1Aは、本開示の一実施形態に従った熱処理デバイスの概略側面図である。
図1Bは、
図1Aの固相蒸気源の上面図である。
図1Cは、本開示の別の実施形態に従った固相蒸気源の上面図である。
熱処理デバイス10は、太陽電池の基板20上の吸収層前駆体30に熱処理を実施するために使用される。基板20は、基板20が太陽電池の吸収層を作製する間に劣化しないように、例えば、チタン、白金、セラミック又は石英から作製される。
この実施形態では、吸収層前駆体30は、例えば、銅、亜鉛、スズ及び硫黄を含有する吸収層前駆体であるが、本開示はそれらに限定するものではない。他の実施形態では、吸収層前駆体30は、銅、亜鉛、スズ、硫黄及びセレンを含有する吸収層前駆体である。以下の説明では、銅、亜鉛、スズ及び硫黄を含有する吸収層前駆体を例示的実施形態として説明する。
【0013】
熱処理デバイス10は、チャンバ11、キャリア12及び温度制御装置13を備える。チャンバは、基部110を有する。基板20は、基部110の上に配置される。
この実施形態では、チャンバ11は、開放チャンバ又は半開放チャンバである。チャンバ11は、吸収層前駆体30の組成物が酸素によって酸化するのを防止するように非酸素環境(即ち酸素が全くない環境)である。例えば、チャンバ11は、アルゴン又は窒素で充填される。また、チャンバ11内の圧力は、負圧であるか、又は外部圧力と等しい。
【0014】
キャリア12は、チャンバ11内に配置される。キャリア12は、基板20及び吸収層前駆体30の両方に面する。固相蒸気源120は、キャリア12に配置される。詳細には、固相蒸気源120は、コーティング、化学めっき、スパッタリング又は蒸着によってキャリア12にロードする。所定距離Dは、固相蒸気源120と吸収層前駆体30との間に維持される。この実施形態では、所定距離Dは、0.1cmから4cmの間である。いくつかの他の実施形態では、所定距離Dは、0.1cmから2cmの間である。
この実施形態及びいくつかの他の実施形態では、固相蒸気源120は、例えば、(
図1Bに示すような)平面状をなす固相蒸気源、又は、(
図1Cに示すような)アレイ状をなすドット形状固相蒸気源であるが、本開示は、それらに限定するものではない。したがって、各区分の吸収層前駆体30及び固相蒸気源120は、所定距離Dを保つ。
【0015】
この実施形態では、固相蒸気源120は、スズを含有する。したがって、熱処理の間、固相蒸気源120は、蒸発し、スズを含有する蒸気に変換される。固相蒸気源120及び吸収層前駆体30は、所定距離Dを保っているので、固相蒸気源120から変換した蒸気と吸収層前駆体30との間にスズの力学的平衡が得られる。
この実施形態では、スズが吸収層前駆体30から放出されると、蒸気中のスズは、吸収層前駆体30からのスズの放出を補償することができ、それにより、吸収層前駆体30からのスズの放出は、抑制又は回避さえされる。したがって、吸収層前駆体30から形成した吸収層のスズの比率は、維持される。換言すれば、固相蒸気源120は、吸収層前駆体30から形成した吸収層のスズの比率を維持することができ、それにより、吸収層は単一ケステライト型のままである。
【0016】
この実施形態及びいくつかの他の実施形態では、固相蒸気源120と吸収層前駆体30との間に保たれる所定距離Dは、吸収層前駆体30から形成する吸収層のスズの比率に影響を与える。
また、この所定距離Dは、吸収層がどちらの結晶型であるかに影響を与える。所定距離Dがより短いと、固相蒸気源120による吸収層前駆体30のスズの放出の抑制は向上し、吸収層のスズの比率は良好に維持され、且つ、吸収層のスズはより均一に分布する。しかし、固相蒸気源120が吸収層前駆体30に付着すると、固相蒸気源120は、吸収層前駆体30から形成する吸収層の構造を弱めることから、作製する太陽電池は、望ましいものではない。
【0017】
上記実施形態では、固相蒸気源120は、形成する吸収層のスズの比率を維持するように構成する。いくつかの他の実施形態では、固相蒸気源120は、硫黄を更に含有し、そのため、固相蒸気源120から形成される蒸気は、硫黄を更に含有する。したがって、固相蒸気源120は、吸収層前駆体30から硫黄が放出するのを抑制又は防止さえするように構成する。更に、吸収層前駆体30から形成する吸収層の硫黄の比率は、維持される。
同様に、吸収層前駆体30が銅、亜鉛、スズ、硫黄及びセレンを含有する実施形態では、固相蒸気源120は、セレンを更に含有する。したがって、固相蒸気源120は、セレンが吸収層前駆体30から放出するのを抑制又は防止さえするように構成する。更に、吸収層前駆体30から形成する吸収層のセレンの比率は、維持される。
【0018】
この実施形態では、例えば、固相蒸気源120は、硫化第二スズ、硫化第一スズ、セレン化第二スズ、セレン化第一スズ又はそれらの組合せである。
【0019】
温度制御装置13は、チャンバ11内に組み付けられる。温度制御装置13は、チャンバ11内の温度を調節する、即ちチャンバ11内の温度を上げる、下げる又は維持するように構成する。
【0020】
図1D〜
図1Fを参照されたい。
図1D〜
図1Fは、本開示の他の実施形態に従った熱処理デバイスの概略側面図である。
図1Dでは、熱処理デバイス10xは、第1の気体源14を更に備える。第1の気体源14は、チャンバ11内に配置される。第1の気体源14は、第1の気体をチャンバ11内に供給するように構成する。第1の気体は、硫黄蒸気、セレン蒸気、硫化水素、セレン化水素又はそれらの組合せである。それによって、第1の気体は、吸収層前駆体30から形成する吸収層の元素の比率を維持するように構成する。
図1Eでは、熱処理デバイス10yは、第2の気体源15を更に備える。第2の気体源15は、チャンバ11内に配置される。第2の気体源15は、第2の気体をチャンバ11内に供給するように構成する。第2の気体は、硫化第二スズ、硫化第一スズ、セレン化第二スズ、セレン化第一スズ又はそれらの組合せである。それによって、第2の気体は、吸収層前駆体30から形成する吸収層の元素の比率を維持するように構成する。
図1Fでは、熱処理デバイス10zは、吸収層前駆体30から形成する吸収層の元素の比率を維持するように第1の気体源14及び第2の気体源15を更に備える。
【0021】
次に、本開示の一実施形態に従って太陽電池吸収層作製方法の流れ図である
図2を参照されたい。まず、基板をチャンバ内に配置する(ステップS101)。例えば、基板の材料は、太陽電池の吸収層の作製中に高温下で基板が劣化するのを回避するチタン、白金、セラミック又は石英である。吸収層前駆体を基板の上にロードする。
吸収層前駆体を基板の上にロードする方法は、コーティング、化学めっき、スパッタリング又は蒸着を含むが、本開示はそれらに限定するものではない。吸収層前駆体は、銅、亜鉛、スズ及び硫黄を含有する吸収層を作製するために銅、亜鉛、スズ及び硫黄を含有する。いくつかの他の実施形態では、吸収層前駆体は、銅、亜鉛、スズ、硫黄及びセレンを含有する吸収層を作製するために銅、亜鉛、スズ、硫黄及びセレンを含有する。
【0022】
次に、固相蒸気源をチャンバ内に配置する(ステップS102)。固相蒸気源は、吸収層前駆体に対応する、スズ等の元素を含有する。それによって、固相蒸気源は、吸収層前駆体から形成する吸収層のスズの比率を維持するように構成する。
いくつかの他の実施形態では、吸収層前駆体は、銅、亜鉛、スズ、硫黄及びセレンを含有し、並びに、固相蒸気源はセレンを更に含有する。それによって、固相蒸気源は、吸収層前駆体から形成する吸収層のセレンの比率を維持するように構成する。この実施形態及び他の実施形態では、ステップS101及びステップS102の順番は、本開示を限定するものではない。
【0023】
その後、固相蒸気源は、所定距離だけ吸収層前駆体から離間される(ステップS103)。固相蒸気源は、吸収層前駆体に面し、対応する。この実施形態では、所定距離は、0.1cmから4cmの間である。いくつかの他の実施形態では、所定距離は、0.1cmから2cmの間である。
【0024】
次に、固相蒸気源を蒸発させ、蒸気に変換し、且つ吸収層が吸収層前駆体によって基板上に形成されるように加熱工程を実施する(ステップS104)。この実施形態では、蒸気は、硫化第二スズ、セレン化第二スズ、硫化第一スズ、セレン化第一スズ又はそれらの組合せ等のスズを含有する。
いくつかの他の実施形態では、固相蒸気源は硫黄を含有し、その蒸気も同様に硫黄を含有する。いくつかの他の実施形態では、固相蒸気源はセレンを含有し、その蒸気も同様にセレンを含有する。
【0025】
この実施形態では、加熱工程中の温度は、200℃から800℃の間であり、加熱時間は、20分から3時間の間である。いくつかの他の実施形態では、加熱工程中の温度は350℃から650℃の間であり、加熱時間は、30分から2時間の間である。基板は、反応温度未満では不活性であり、そのため、基板は劣化せず、更に吸収層前駆体の組成に影響を与えない。
【0026】
更に、加熱工程中、チャンバ内の温度は、最初に蒸発温度に達する。固相蒸気源は、蒸発温度で蒸発し、蒸気に変換される。次に、チャンバ内の温度を形成温度に上げる。吸収層前駆体は、形成温度で基板上に吸収層を形成する。形成温度は、蒸発温度よりも高い。
【0027】
加熱工程中、固相蒸気源は蒸発し、スズを含有する蒸気に変換され、それによって気相(蒸気)と固相(固相蒸気源)との間にスズの力学的平衡が得られる。したがって、スズが吸収層前駆体から放出されると、蒸気中のスズが放出を補償する。
それによって、固相蒸気源は、スズが吸収層前駆体から放出するのを抑制して、形成する吸収層のスズの比率を維持するように構成する。形成する吸収層のスズの比率は維持されるので、吸収層は、単一ケステライト型のままである。
【0028】
図1A、
図2及び
図3を参照されたい。
図3は、固相蒸気源を配置する前の
図1Aの熱処理デバイスの上面図である。固体蒸気源を配置する前の吸収層の元素組成物の変化を以下の比較で示す。
【0029】
図2に記載の方法に従って、基板20をチャンバ11内に配置し、吸収層前駆体30を基板20上にロードする(ステップS101)。吸収層前駆体30の面積は、8cmに8cmを掛けたもの(即ち8cm×8cm)であり、吸収層前駆体30の元素組成物のモル百分率を以下の表に示す。
【0031】
その後、硫化スズ粉末を基板20の2つの側200上に配置して、スズの供給源を提供する。吸収層は、上述のステップS104に従って作製する。反応温度は500℃で、反応時間は1時間である。
【0032】
最後に、吸収層の領域Aから領域Eの元素組成物を分析するため、
図3の領域Aから領域Eに試験を実施する。試験の結果を以下の表に示す。
【0034】
領域Aから領域Eの元素組成物を、加熱工程前の元素組成物と比較する。領域Aの亜鉛/スズ比は1.14であり、領域Bの亜鉛/スズ比は1.51であり、領域Cの亜鉛/スズ比は1.12であり、領域Dの亜鉛/スズ比は1.26であり、領域Eの亜鉛/スズ比は1.29である。領域Aから領域Cの亜鉛/スズ比は、3%の誤差限界を有する1.14の範囲、即ち1.11から1.17の間である。
【0035】
亜鉛/スズ比が1.05から1.2の間であると、形成される吸収層は、主に単一ケステライト型である。亜鉛/スズ比がこの範囲を超えると、他の結晶型が吸収層に形成され、太陽電池の性能は低下する。加熱工程中、スズは吸収層前駆体から放出されるので、領域B、領域D及び領域Eでは、形成される吸収層のスズの比率は減少する。したがって、亜鉛/スズ比は増大し、太陽電池の性能を弱める他の結晶型(即ちスタナイト型)が形成される。更に、領域Aから領域Eの亜鉛/スズ比は、明らかに互いに異なるので、領域Aから領域Eの元素は一様に分布せず、作製する太陽電池の変換効率は悪化する。
【0036】
図1A、
図2及び
図4を参照されたい。
図4は
図1Aの熱処理デバイスの上面図である。固体蒸気源を配置した後の吸収層の元素組成物の変化を以下の実施形態に示す。
【0037】
図2に記載の方法に従って、基板20をチャンバ11内に配置し、吸収層前駆体30を基板20上にロードする(ステップS101)。吸収層前駆体30の面積は、8cm×8cmであり、吸収層前駆体30の元素組成物のモル百分率を以下の表に示す。
【0039】
次に固相蒸気源120を、スズの供給源としての役割を果たすようにチャンバ11内に配置する(ステップS102)。更に、アルゴン及び硫黄蒸気をチャンバ11内に充填させる。次に、固相蒸気源120及び吸収層前駆体30は所定距離を保つ(ステップS103)。その後、吸収層をステップS104に従って作製する。固相蒸気源120と吸収層前駆体30との間の距離は0.5cmであり、反応温度は500℃であり、反応時間は1時間である。
【0040】
最後に、吸収層の領域Fから領域Jの元素組成物を分析するため、
図4の領域Fから領域Jに試験を実施する。試験の結果を以下の表に示す。
【0042】
領域Fから領域Jの元素組成物を、加熱工程を実施した後の元素組成物と比較する。領域Fから領域Jの亜鉛/スズ比は、1.05から1.2の間であり、そのため、吸収層のスズ比率と一致し、他の結晶型は吸収層に発生しない。更に、領域Fから領域Jの亜鉛/スズ比の間の差異は明らかではなく、領域Fから領域Jの元素は一様に分布し、作製する太陽電池の変換効率は向上する。
【0043】
こうした実施形態では、固相蒸気源120は、吸収層前駆体30からのスズの放出を抑制するように構成され、したがって吸収層前駆体30から形成される吸収層のスズの比率は維持される。したがって、亜鉛/スズ比は一致し、1.05から1.2の間であり、形成される吸収層は、主に単一ケステライト型である。また、吸収層の元素は一様に分布し、太陽電池の変換効率が改良される。
【0044】
上記実施形態によれば、固相蒸気源は、吸収層前駆体からスズが放出するのを抑制し、吸収層前駆体から形成される吸収層のスズの比率を維持するように構成する。したがって、太陽電池の吸収層の作製工程中、単結晶型を有する吸収層が形成され、吸収層に元素が放出されることによって異なる結晶型が発生するという問題を解決する。更に、固体蒸気源を配置した後に作製する吸収層の元素は一様に分布し、且つ吸収層の変換効率が改良される。
【0045】
上記実施形態では、固相蒸気源及び吸収層前駆体は、一定に保たれ、所定距離を維持する。換言すれば、固相蒸気源は、チャンバ内に固定して配置される。しかし、「固相蒸気源及び吸収層前駆体は、一定に保たれ、所定距離を維持する」という上記の記載は、本開示を限定するものではない。いくつかの他の実施形態では、固相蒸気源と吸収層前駆体との間の距離は、チャンバ内の温度に従って調節される。
【0046】
本開示の別の実施形態に従った熱処理デバイスの概略側面図である
図5Aを参照されたい。この実施形態は
図1Aの実施形態と同様であり、相違点は、この実施形態の熱処理デバイス40がチャンバ内の温度に従って固相蒸気源と吸収層前駆体との間の距離を調節できることである。
【0047】
熱処理デバイス40は、太陽電池の基板20上の吸収層前駆体30に熱処理を実施するために使用する。基板20及び吸収層前駆体30は、
図1Aに記載のものと同様であり、そのため、基板20及び吸収層前駆体30の説明は再度繰り返さない。以下の説明では、銅、亜鉛、スズ及び硫黄を含有する吸収層前駆体を例示的実施形態として説明する。
【0048】
熱処理デバイス40は、第1のチャンバ41、キャリア42、温度制御装置43及び制御装置44を備える。第1のチャンバ41は、基部410を有する。基板20は、基部410の上に配置される。この実施形態では、第1のチャンバ41は管状加熱炉であるが、本開示はそれに限定するものではない。第1のチャンバ41は、吸収層前駆体30の組成が酸素によって酸化するのを防止するように非酸素環境を有する。また、第1のチャンバ41内の圧力は、負圧であるか又は外部圧力と等しい。
【0049】
キャリア42は、第1のチャンバ41内に配置される。キャリア42は、基板20及び吸収層前駆体30の両方に面する。固相蒸気源420は、キャリア42に配置される。キャリア42は、キャリア42に配置した固相蒸気源420と吸収層前駆体30との間の距離を制御するように固相蒸気源420と共に選択的に移動することができる。
例えば、キャリア42は、固相蒸気源420と吸収層前駆体30との間の所定距離Dを維持するか、又は固相蒸気源420と吸収層前駆体30との間の距離は、所定距離Dよりも長くなるように固相蒸気源420と共に吸収層前駆体30から離すことができる。この実施形態では、所定距離Dは、0.1cmから4cmの間である。いくつかの他の実施形態では、所定距離Dは、0.1cmから2cmの間である。
【0050】
この実施形態では、固相蒸気源420は、スズを含有する。したがって、熱処理中、固相蒸気源420は蒸発し、スズを含有する蒸気に変換され、且つ吸収層前駆体30から形成される吸収層のスズの比率は、維持される。例えば、固相蒸気源420は、硫化第二スズ、硫化第一スズ、セレン化第二スズ、セレン化第一スズ又はそれらの組合せであるが、本開示はそれらに限定するものではない。
いくつかの他の実施形態では、固相蒸気源420は硫黄を更に含有し、そのため、固相蒸気源420から形成された蒸気は、硫黄を更に含有する。したがって、固相蒸気源420は、硫黄が吸収層前駆体30から放出されるのを抑制又は防止さえするように構成する。更に、吸収層前駆体30から形成された吸収層の硫黄の比率は、維持される。
同様に、吸収層前駆体30が銅、亜鉛、スズ、硫黄及びセレンを含有する実施形態では、固相蒸気源420は、セレンを更に含有し、そのため、固相蒸気源420から形成された蒸気は、セレンを更に含有する。したがって、固相蒸気源420は、セレンが吸収層前駆体30から放出するのを抑制又は防止さえするように構成する。更に、吸収層前駆体30から形成された吸収層のセレンの比率は、維持される。
【0051】
温度制御装置43は、第1のチャンバ41内に組み付けられる。温度制御装置43は、第1のチャンバ41内の温度を調節、即ち、第1のチャンバ41内の温度を上げる、下げる又は維持するように構成する。制御装置44は、キャリア42を制御し、それによりキャリア42が第1のチャンバ41内の温度に従って固相蒸気源420と共に移動するように構成する。
以下において、第1のチャンバ41の温度に従ってキャリア42が固相蒸気源420と共にどのように移動するかを説明する。
【0052】
図5B〜
図5Dを参照されたい。
図5B〜
図5Dは、本開示の他の実施形態に従った熱処理デバイスの概略側面図である。
図5B〜
図5Dの実施形態は、
図5Aの実施形態と同様である。相違点は、
図5Bの熱処理デバイス40xは、第1の気体源45を更に備え、
図5Cの熱処理デバイス40yは、第2の気体源46を更に備え、
図5Dの熱処理デバイス40zは、第1の気体源45及び第2の気体源46を更に備えることである。
第1の気体源45及び第2の気体源46は、
図1D〜
図1Fに記載した第1の気体源及び第2の気体源と同様であり、そのため、説明は再度繰返さない。
【0053】
図5Eを参照されたい。
図5Eは、本開示の別の実施形態に従った熱処理デバイスの概略側面図である。
図5Eの実施形態は、
図5Bの実施形態と同様である。相違点は、
図5Eの熱処理デバイス40wは、ロードロック(load−locking)・ユニット47及び第2のチャンバ48を更に備えることである。
【0054】
ロードロック・ユニット47は、第1のチャンバ41及び第2のチャンバ48と接続される。ロードロック・ユニット47、第1のチャンバ41と第2のチャンバ48との間は、気密である。制御装置44は、ロードロック・ユニット47を制御し、それによりロードロック・ユニット47が第2のチャンバ48から第1のチャンバ41を分離するか、又はロードロック・ユニット47が第1のチャンバ41及び第2のチャンバ48を接続するように構成する。換言すれば、制御装置44は、キャリア42を制御し、それにより第1のチャンバ41内の温度に従ってキャリア42が固相蒸気源420と共に移動するように構成する。
制御装置44は、キャリア42を制御し、それにより第1のチャンバ41内の温度に従って、キャリア42が第1のチャンバ41からロードロック・ユニット47を通って第2のチャンバ48に固相蒸気源420と共に移動するか、又はキャリア42が、第2のチャンバ48からロードロック・ユニット47を通って第1のチャンバ41に固相蒸気源420と共に移動するようにも構成する。
【0055】
本開示の別の実施形態に従った熱処理デバイスの概略側面図である
図5Fを参照されたい。
図5Fの実施形態は、
図5A〜
図5Eの実施形態と同様である。相違点は、
図5A〜
図5Eの第1のチャンバは管状加熱炉であり、
図5Fの熱処理デバイス40aの第1のチャンバ41aは、急速熱処理炉(RTP(rapid thermal process furnace)又は急速熱アニール、RTA(rapid thermal annealing))であることである。換言すれば、ユーザは、適切な第1のチャンバを必要に応じて選択することができる。
【0056】
本開示の別の実施形態に従った熱処理デバイスの概略側面図である
図6Aを参照されたい。
図5A〜
図5Fの実施形態と
図6Aの実施形態との間の相違点は、
図5A〜
図5Fの熱処理デバイスは、第1のチャンバ及び第2のチャンバを備え、一方で、
図6Aの熱処理デバイスは、単一チャンバのみを備えることである。
【0057】
熱処理デバイス50は、太陽電池の基板20上に配置した吸収層前駆体30に熱処理を実施するために使用される。基板20及び吸収層前駆体30は、
図1Aに記載したものと同様であり、そのため基板20及び吸収層前駆体30の説明は再度繰り返さない。以下の説明では、銅、亜鉛、スズ及び硫黄を含有する吸収層前駆体を例示的実施形態として説明する。
【0058】
熱処理デバイス50は、チャンバ51、可動キャリア52及び温度制御装置53を備える。この実施形態のチャンバ51は、限定はしないがトンネル炉である。更に、チャンバ51は、互いに対向する第1の側511及び第2の側512を有する。チャンバ51内の温度は、第1の側511から第2の側512へ変動する。したがって、チャンバ51は、加熱区域513及び熱処理区域514を順に有する。
加熱区域513は蒸発温度を有し、熱処理区域514は形成温度を有し、蒸発温度は形成温度よりも低い。固相蒸気源510は、チャンバ51の熱処理区域514に配置される。固相蒸気源510は、吸収層前駆体30から形成される吸収層のスズの比率を維持するためのスズを含有する。例えば、固相蒸気源510は、硫化第二スズ、硫化第一スズ、セレン化第二スズ、セレン化第一スズ又はそれらの組合せであるが、本開示は、それらに限定するものではない。他の実施形態では、固相蒸気源510は、硫黄又は/及びセレンを含んでもよい。
【0059】
可動キャリア52は、チャンバ51内に移動可能に配置され、基板20は、可動キャリア52の上に配置される。可動キャリア52は、加熱区域513から熱処理区域514に第1の方向F1に沿って(したがって、第1の側511から第2の側512に)移動するように構成する。
可動キャリア52が熱処理区域514にあるとき、可動キャリア52及び固相蒸気源30は所定距離Dを保つ。可動キャリア52が熱処理区域514から移動すると、基板20上の吸収層前駆体30と固相蒸気源510との間の距離は、所定距離Dよりも長くなる。この実施形態では、所定距離Dは、0.1cmから4cmの間である。いくつかの他の実施形態では、所定距離Dは、0.1cmから2cmの間である。
【0060】
本開示の別の実施形態に従った熱処理デバイスの概略側面図である
図6Bを参照されたい。この実施形態では、チャンバ51は、冷却区域515を更に備える。熱処理区域514は、加熱区域513と冷却区域515との間に配置される。冷却区域515は放出温度を有し、放出温度は形成温度よりも低い。この実施形態では、放出温度は350℃から650℃の間である。
【0061】
本開示の別の実施形態に従った熱処理デバイスの概略側面図である
図6Cを参照されたい。この実施形態では、熱処理デバイス50yは、気体取入れユニット54を更に備える。気体取入れユニット54は、チャンバ51内に気体を導入し、それにより気体が第2の方向F2に沿ってチャンバ51内を移動するように構成する。第2の方向F2は、第1の方向F1とは逆である。
そのことによって、可動キャリア52が熱処理区域514から冷却区域515に基板20と共に移動するとき、気体は、固相蒸気源510から発生した蒸気を第2の方向F2に沿って加熱区域513に導いて、固相蒸気源510から変換された蒸気が可動キャリア52と共に移動し冷却区域515に入るのを防止する。
【0062】
以下は、キャリアが、太陽電池の吸収層を作製するチャンバ(又は第1のチャンバ)内の温度に従って固相蒸気源と共にどのように移動するかを説明する。本開示の他の実施形態に従って太陽電池吸収層作製方法の流れ図である
図7A及び
図7Bを参照されたい。
この実施形態に記載される熱処理デバイスは、
図5A〜
図5F及び
図6A〜
図6Cに示される。この実施形態では、ステップS201からステップS204は、
図2のステップS101からステップS104と同一又は同様である。
【0063】
この実施形態では、固相蒸気源及び吸収層前駆体は、チャンバ(又は第1のチャンバ)内の温度が形成温度以下であるときに、所定距離だけ離間される(ステップS203)。換言すれば、固相蒸気源及び吸収層前駆体は、吸収層前駆体が吸収層を形成する(形成温度)前は所定距離だけ離間すべきである。
いくつかの他の実施形態では、ステップS203はチャンバ(又は第1のチャンバ)内の温度が放出温度以上であるとき実施される。放出温度とは、吸収層からスズが放出される温度を表す。
【0064】
ステップS204の後、チャンバ(又は第1のチャンバ)内の温度を下げる(ステップS205)。
【0065】
次に、固相蒸気源と吸収層との間の距離が、所定距離よりも長くなるように延長する(ステップS206)。
図5A〜
図5Dの実施形態では、固相蒸気源と吸収層との間の距離が延長される。
図5E〜
図5Fの実施形態では、固相蒸気源は、第1のチャンバから第2のチャンバに移動する。
図6A〜
図6Cの実施形態では、吸収層は、熱処理区域から冷却区域に移動する。
【0066】
この実施形態では、ステップS205及びステップS206の順番は、本開示を限定するものではない。いくつかの他の実施形態では、チャンバ(又は第1のチャンバ)内の固相蒸気源と吸収層との間の距離を所定距離よりも長くなるように延長する。次に、チャンバ(又は第1のチャンバ)内の温度を下げる(
図7B)。
いくつかの他の実施形態では、チャンバ(又は第1のチャンバ)内の固相蒸気源と吸収層との間の距離は、チャンバ(又は第1のチャンバ)内の温度を下げたときに所定距離よりも長くなるように延長する。
【0067】
この実施形態及びいくつかの他の実施形態では、ステップ「チャンバ(又は第1のチャンバ)内の固相蒸気源と吸収層との間の距離が、所定距離よりも長くなるように延長する」(ステップS206又はステップS305)は、放出温度(スズが吸収層から放出される温度)に対応する。
更に、固相蒸気源は、蒸発温度で蒸発し、スズを含有する蒸気に変換され、放出温度は、蒸発温度よりも高い。したがって、温度が蒸発温度と放出温度との間であるとき、スズは吸収層から放出されない。しかし、固相蒸気源は、チャンバ(又は第1のチャンバ)内の温度が蒸発温度よりも高いので蒸発し、蒸気に変換され続ける。したがって、チャンバ(又は第1のチャンバ)が冷却し、チャンバ(又は第1のチャンバ)内の温度が蒸発温度よりも低いと、蒸気は、固化し、固体に変換され、吸収層の表面上に蒸着される。上記の問題を解決するために、固相蒸気源と吸収層との間の距離は、チャンバ(又は第1のチャンバ)内の温度が放出温度と等しくなる前(冷却工程中)は所定距離よりも長くすべきである。いくつかの実施形態では、固相蒸気源と吸収層との間の距離は、チャンバ(又は第1のチャンバ)内の温度が形成温度以下であると延長される。
【0068】
図8A〜
図8Bを参照されたい。
図8Aは、
図7Aの方法に従って作製した吸収層の走査型電子顕微鏡分析の結果の写真である。
図8Bは、吸収層上に蒸着した硫化第二スズの走査型電子顕微鏡分析の結果の写真である。
【0069】
上記実施形態によれば、固相蒸気源と吸収層との間の距離は、チャンバ(又は第1のチャンバ)内の温度が放出温度(スズが吸収層から放出される温度)以上であるとき、所定距離よりも長くなるように延長する(固相蒸気源と吸収層との間の距離を延長する、第1のチャンバから第2のチャンバに固相蒸気源を移動させる、又は吸収層を冷却区域に移動させる等)。
したがって、固相蒸気源から発生した蒸気が冷却工程中に固化し、吸収層の表面上に蒸着することを回避することができる。よって、作製される太陽電池は、硫化第二スズが吸収層の表面上に蒸着しないのでより良好な光電効果を有する。
【0070】
図8Bでは、硫化第二スズが吸収層の表面上に蒸着している。したがって、
図8Bの吸収層から太陽電池を作製すると、太陽電池は、光電効果が低いか又は光電効果が欠如してさえいる。太陽電池吸収層作製方法に従って作製される吸収層を
図8Aに示す。図に示すように、硫化第二スズが吸収層の表面上に蒸着せず、そのため、吸収層から作製した太陽電池は、より良好な光電効果を有する。
【0071】
開示した実施形態に様々な修正及び変更を行えることは、当業者にとって明らかであろう。本明細書及び例は、例示のみとみなし、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって示すことを意図する。