特許第6029610号(P6029610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6029610DTMF信号識別装置、DTMF信号識別方法、DTMF信号識別用プログラム、及びDTMF信号識別システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029610
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】DTMF信号識別装置、DTMF信号識別方法、DTMF信号識別用プログラム、及びDTMF信号識別システム
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/00 20060101AFI20161114BHJP
   H04M 3/51 20060101ALI20161114BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   H04M1/00 R
   H04M3/51
   H04M11/00 302
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-68910(P2014-68910)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-192344(P2015-192344A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2014年7月3日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】茂木 信二
【審査官】 松平 英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−217547(JP,A)
【文献】 特開2000−295374(JP,A)
【文献】 特開2001−218238(JP,A)
【文献】 特開2013−115807(JP,A)
【文献】 特開2007−174343(JP,A)
【文献】 特開2004−146899(JP,A)
【文献】 特開2011−077575(JP,A)
【文献】 特開2000−083262(JP,A)
【文献】 特開2001−061018(JP,A)
【文献】 特開2004−304299(JP,A)
【文献】 特開2008−187692(JP,A)
【文献】 特開2013−168845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04M 1/00
1/24−3/00
3/16−3/20
3/38−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
99/00
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線を介して音信号を受信する通信部と、
前記音信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部が前記音信号を増幅することにより得られた音を出力するスピーカと、
前記スピーカから出力された音の入力を受けるマイクと、
前記マイクから入力された音に含まれる入力DTMF信号の種別を識別する識別部と、
DTMF信号の種別に関連付けて、前記DTMF信号の種別ごとの特徴を示すパターン情報を記憶するパターン情報記憶部と、
を備え、
前記識別部は、
前記マイクから入力された前記音の波形と、前記パターン情報記憶部に記憶された前記パターン情報とに基づいて、前記入力DTMF信号の種別を識別する、
を備えるDTMF信号識別装置。
【請求項2】
前記パターン情報記憶部は、前記パターン情報として、DTMF信号である可能性が高いことを示す複数の正例パターンを含む正例パターン群と、DTMF信号でない可能性が高いことを示す複数の負例パターンを含む負例パターン群との境界を規定する識別関数のパラメータを、前記DTMF信号の種別に関連付けて記憶し、
前記識別部は、前記識別関数に基づいて、前記正例パターン群のうち前記入力DTMF信号が類似する正例パターン群を検出することにより、前記入力DTMF信号の種別を識別する、
請求項に記載のDTMF信号識別装置。
【請求項3】
前記識別部は、前記マイクから入力された前記音の波形を示す情報、及び前記パターン情報に基づく前記識別関数の算出結果に基づいて、前記DTMF信号の種別を識別する、
請求項に記載のDTMF信号識別装置。
【請求項4】
前記識別部は、複数の前記DTMF信号の種別のうち、前記入力DTMF信号が前記正例パターン群に類似し、かつ、前記入力DTMF信号が前記負例パターン群に類似していない種別を、前記入力DTMF信号の種別として識別する、
請求項又はに記載のDTMF信号識別装置。
【請求項5】
前記パターン情報は、複数のDTMF信号に含まれる複数の周波数成分の大きさと、DTMF信号以外の信号に含まれる複数の周波数成分の大きさとを示す情報を含む、
請求項からのいずれか1項に記載のDTMF信号識別装置。
【請求項6】
前記パターン情報記憶部は、前記DTMF信号識別装置の機種に関連付けて、前記パターン情報を記憶し、
前記識別部は、前記DTMF信号識別装置の機種と、前記機種に関連付けられた前記パターン情報に基づいて、前記DTMF信号の種別を識別する、
請求項からのいずれか1項に記載のDTMF信号識別装置。
【請求項7】
前記パターン情報記憶部に記憶された前記パターン情報は、所定のタイミングで、外部装置から取得したパターン情報に更新される、
請求項からのいずれか1項に記載のDTMF信号識別装置。
【請求項8】
複数のDTMF信号に含まれる複数の周波数成分の大きさと、DTMF信号以外の信号に含まれる複数の周波数成分の大きさとに基づいて前記パターン情報を生成する生成部をさらに備える、
請求項からのいずれか1項に記載のDTMF信号識別装置。
【請求項9】
前記音信号が、特定の電話番号に対する発信又は特定の電話番号からの着信により所定の端末と接続された場合に、前記スピーカから前記音信号を出力させる制御を行う音制御部をさらに備える、
請求項からのいずれか1項に記載のDTMF信号識別装置。
【請求項10】
コンピュータが実行する、
通信回線を介して音信号を受信する手順と、
増幅器が前記音信号を増幅することにより得られた音をスピーカから出力する手順と、
前記スピーカから出力された音の入力を受けるマイクから入力された前記音の波形と、DTMF信号の種別に関連付けて、前記DTMF信号の種別ごとの特徴を示すパターン情報を記憶するパターン情報記憶部に記憶された前記パターン情報とに基づいて、前記スピーカから出力されてマイクに入力された音に含まれる入力DTMF信号の種別を識別する手順と、
を備えるDTMF信号識別方法。
【請求項11】
コンピュータに、
通信回線を介して音信号を受信する手順と、
増幅器が前記音信号を増幅することにより得られた音をスピーカから出力する手順と、
前記スピーカから出力された音の入力を受けるマイクから入力された前記音の波形と、DTMF信号の種別に関連付けて、前記DTMF信号の種別ごとの特徴を示すパターン情報を記憶するパターン情報記憶部に記憶された前記パターン情報とに基づいて、前記スピーカから出力されてマイクに入力された音に含まれる入力DTMF信号の種別を識別する手順と、
を実行させるためのDTMF信号識別用プログラム。
【請求項12】
携帯端末と、前記携帯端末と通信可能に接続されたパターン情報生成装置と、を備えるDTMF信号識別システムであって、
前記パターン情報生成装置は、複数のDTMF信号に含まれる複数の周波数成分の大きさと、DTMF信号以外の信号に含まれる複数の周波数成分の大きさとに基づいて、前記DTMF信号の種別ごとの特徴を示すパターン情報を生成する生成部を有し、
前記携帯端末は、
通信回線を介して音信号を受信する通信部と、
前記音信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部が前記音信号を増幅することにより得られた音を出力するスピーカと、
前記スピーカから出力された音の入力を受けるマイクと、
前記マイクから入力された音に含まれる入力DTMF信号の種別を、前記パターン情報生成装置から取得した前記パターン情報に基づいて前記入力DTMF信号の種別を識別する識別部と、
を有する、
DTMF信号識別システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DTMF信号を識別するためのDTMF信号識別装置、DTMF信号識別方法、DTMF信号識別用プログラム、及びDTMF信号識別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、留守番電話機のように、電話回線を介して受信したDTMF(Dual-Tone Multi-Frequency)信号を検出することができる装置が知られている。例えば、特許文献1には、電話回線を介して入力された入力信号にDFT(Discrete Fourier Transform)演算を施すことにより、入力信号に含まれる周波数スペクトルを抽出し、抽出した周波数スペクトルに基づいて、高群及び低群の各周波数の組み合わせからなるDTMF信号を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−327047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、スマートフォンやタブレット等の携帯端末が、電話機として使用されるようになってきている。その結果、携帯端末においても、携帯電話回線を介して受信したDTMF信号を検出することが求められている。
【0005】
しかしながら、携帯電話回線は、電波伝搬環境の影響等により、有線の電話回線よりも通話品質が低い場合がある。したがって、従来の方法では、DTMF信号を正しく識別できない場合が生じている。また、携帯端末の中には、携帯電話回線を介して受信した信号を直接用いてDTMF信号を検出することができない機種があるという問題もある。そこで、携帯端末でDTMFを検出する場合に適した方法が求められている。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、携帯端末におけるDTMF信号の識別に好適な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係るDTMF信号識別装置は、通信回線を介して音信号を受信する通信部と、前記音信号を増幅する増幅部と、前記増幅部が前記音信号を増幅することにより得られた音を出力するスピーカと、前記スピーカから出力された音の入力を受けるマイクと、前記マイクから入力された音に含まれる入力DTMF信号の種別を識別する識別部と、を備える。
【0008】
上記のDTMF信号識別装置は、DTMF信号の種別に関連付けて、前記DTMF信号の種別ごとの特徴を示すパターン情報を記憶するパターン情報記憶部をさらに備え、前記識別部は、前記マイクから入力された前記音の波形と、前記パターン情報記憶部に記憶された前記パターン情報とに基づいて、前記入力DTMF信号の種別を識別してもよい。
【0009】
また、前記パターン情報記憶部は、前記パターン情報として、DTMF信号である可能性が高いことを示す複数の正例パターンを含む正例パターン群と、DTMF信号でない可能性が高いことを示す複数の負例パターンを含む負例パターン群との境界を規定する識別関数のパラメータを、前記DTMF信号の種別に関連付けて記憶し、前記識別部は、前記識別関数に基づいて、前記正例パターン群のうち前記入力DTMF信号が類似する正例パターン群を検出することにより、前記入力DTMF信号の種別を識別してもよい。前記識別部は、前記マイクから入力された前記音の波形を示す情報、及び前記パターン情報に基づく前記識別関数の算出結果に基づいて、前記DTMF信号の種別を識別してもよい。
【0010】
また、前記識別部は、複数の前記DTMF信号の種別のうち、前記入力DTMF信号が前記正例パターン群に類似し、かつ、前記入力DTMF信号が前記負例パターン群に類似していない種別を、前記入力DTMF信号の種別として識別してもよい。
【0011】
また、前記パターン情報記憶部は、前記DTMF信号識別装置の機種に関連付けて、前記パターン情報を記憶し、前記識別部は、前記DTMF信号識別装置の機種と、前記機種に関連付けられた前記パターン情報に基づいて、前記DTMF信号の種別を識別してもよい。
【0012】
前記パターン情報は、例えば、複数のDTMF信号に含まれる複数の周波数成分の大きさと、DTMF信号以外の信号に含まれる複数の周波数成分の大きさとを示す情報を含んでもよい。また、前記パターン情報記憶部に記憶された前記パターン情報は、例えば、所定のタイミングで、外部装置から取得したパターン情報に更新される。
【0013】
また、上記のDTMF信号識別装置は、前記音信号が、特定の電話番号に対する発信又は特定の電話番号からの着信により所定の端末と接続された場合に、前記スピーカから前記音信号を出力させる制御を行う音制御部をさらに備えてもよい。
【0014】
また、上記のDTMF信号識別装置は、複数のDTMF信号に含まれる複数の周波数成分の大きさと、DTMF信号以外の信号に含まれる複数の周波数成分の大きさとに基づいて前記パターン情報を生成する生成部をさらに備えてもよい。
【0015】
本発明の第2の態様に係るDTMF信号識別装置は、通信回線を介して音信号を受信する通信部と、DTMF信号の種別に関連付けて、前記DTMF信号の種別ごとの特徴を示すパターン情報を記憶するパターン情報記憶部と、前記通信回線から入力された音信号の波形と、前記パターン情報記憶部に記憶された前記パターン情報とに基づいて、前記音信号に含まれるDTMF信号の種別を識別する識別部と、を備える。
【0016】
本発明の第3の態様に係るDTMF信号識別方法は、通信回線を介して音信号を受信する手順と、増幅器が前記音信号を増幅することにより得られた音をスピーカから出力する手順と、前記スピーカから出力されてマイクに入力された音信号に含まれる入力DTMF信号の種別を識別する手順と、を備える。
【0017】
本発明の第4の態様に係るDTMF信号識別用プログラムは、コンピュータに、通信回線を介して音信号を受信する手順と、増幅器が前記音信号を増幅することで得られた音をスピーカから出力する手順と、前記スピーカから出力されてマイクに入力された音に含まれる入力DTMF信号の種別を識別する手順と、を実行させる。
【0018】
本発明の第5の態様に係るDTMF信号識別システムは、携帯端末と、前記携帯端末と通信可能に接続されたパターン情報生成装置と、を備えるDTMF信号識別システムであって、前記パターン情報生成装置は、複数のDTMF信号に含まれる複数の周波数成分の大きさと、DTMF信号以外の信号に含まれる複数の周波数成分の大きさとに基づいて、前記DTMF信号の種別ごとの特徴を示すパターン情報を生成する生成部を有し、前記携帯端末は、通信回線を介して音信号を受信する通信部と、前記音信号を増幅する増幅部と、前記増幅部が前記音信号を増幅することにより得られた音を出力するスピーカと、前記スピーカから出力された音の入力を受けるマイクと、前記マイクから入力された音に含まれる入力DTMF信号の種別を、前記パターン情報生成装置から取得した前記パターン情報に基づいて前記識別する識別部と、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、携帯端末におけるDTMF信号の識別に好適な方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態に係る電話システムの構成を示す図である。
図2】音信号の周波数−振幅関係パターンを示す図である。
図3】識別関数の概念を示す図である。
図4】携帯電話の機能構成を示すブロック図である。
図5A】変更補助信号に対応付けられた動作定義情報を示す。
図5B】DTMF信号の構成を示す。
図6】学習データの一例を示す図である。
図7】識別部がDTMF信号を識別する方法を示すフローチャートである。
図8】DTMF信号を含む変更補助信号を受けた携帯電話における画面遷移図である。
図9】携帯電話の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
[電話システムの構成]
図1は、第1の実施形態に係る電話システム100の構成を示す図である。電話システム100は、DTMF信号に基づいて携帯電話の設定変更を補助するシステムであり、携帯電話1と、CS用端末70と、サーバ80と、パターン情報生成装置90とを含んで構成される。
【0022】
携帯電話1は、本発明のDTMF信号識別装置に相当し、例えばスマートフォン又はタブレットである。携帯電話1は、CS用端末70から送信されるDTMF信号を受信し、受信したDTMF信号の数字や記号の種別に基づいて、設定変更を補助する機能を動作させる。
【0023】
CS用端末70は、携帯電話1の設定方法や操作方法に関する問い合わせに対応するカスタマーセンター(以下、CSという)のオペレータが用いる端末装置である。CS用端末70は、通話中の携帯電話1に対してDTMF信号を送信する機能を有する。CS用端末70のオペレータは、携帯電話1のユーザから問い合わせがあると、CS用端末70を用いて、携帯電話1に対してDTMF信号により構成される変更補助信号を送信する。携帯電話1は、変更補助信号に含まれるDTMF信号の種別を識別することにより、変更補助信号に対応する機能に関する設定方法を案内する画面を表示する。
【0024】
サーバ80は、電話システム100を統括するサーバ装置である。サーバ80は、携帯電話1に対してアプリケーションプログラムを提供する。サーバ80は、アプリケーションプログラムを更新した場合には、更新したアプリケーションプログラムを携帯電話1に対して提供する。このようにサーバ80から携帯電話1には最新のアプリケーションプログラムが逐次提供されるため、携帯電話1では、更新前のアプリケーションプログラムでは補助できなかった設定変更を補助できるようになる。
【0025】
パターン情報生成装置90は、DTMF信号の識別に用いられるパターン情報を生成するコンピュータである。パターン情報生成装置90は、例えば、さまざまな条件下で取得されたDTMF信号のパターン(以下、正例パターンという)と、DTMF信号以外のさまざまな音信号のパターン(以下、負例パターンという)とに基づいて、所定の周波数成分の大きさを示す情報を含むパターン情報を生成する。また、パターン情報生成装置90は、複数の正例パターンからなる正例パターン群、及び複数の負例パターンからなる負例パターン群に基づいて、DTMF信号とDTMF信号以外の音信号との境界を示す識別関数(カーネル関数と称される)を生成する。具体的には、パターン情報生成装置90は、複数のDTMF信号に含まれる複数の周波数成分の大きさと、DTMF信号以外の信号に含まれる複数の周波数成分の大きさとに基づいて、識別関数を生成する。
【0026】
パターン情報生成装置90は、生成した識別関数のパラメータと、正例パターン及び負例パターンを含む学習データとを含むパターン情報を携帯電話1に提供する。携帯電話1は、パターン情報生成装置90から取得したパターン情報を用いることにより、DTMF信号の種別を識別する。携帯電話1は、DTMF信号の種別に関連付けられたパターン情報に基づいてDTMF信号の種別を識別することにより、DTMF信号を誤認識する確率を低減し、DTMF信号の識別精度を向上させることができる。
【0027】
図2は、正例パターン及び負例パターンの例を示す図である。図2(a)及び図2(b)は、それぞれ異なる条件下で取得されたDTMF信号の周波数−振幅関係パターンである正例パターンを示す図である。図2(c)及び図2(d)は、それぞれ異なる条件下で取得されたDTMF信号以外の音信号の周波数−振幅関係パターンである負例パターンを示す図である。パターン情報生成装置90は、図2に示すような多数の正例パターン及び負例パターンに基づいて、DTMF信号とDTMF信号以外の音信号との境界領域を示す識別関数を生成する。
【0028】
図3は、識別関数の概念を示す図である。図3に示すように、正例パターン及び負例パターンは、高次元ベクトル空間において、識別関数が示す曲線を境界線として、正例パターンが含まれる領域と負例パターンが含まれる領域とに分けられる。携帯電話1は、識別関数を用いて、CS用端末70から送信されるDTMF信号のパターンと、それぞれのDTMF信号種別に関連付けられた正例パターン及び負例パターンの少なくとも一部のパターンとの内積を演算することにより、正例パターンと類似するDTMF信号種別を識別することができる。DTMF信号種別の識別方法の詳細については後述する。
【0029】
[携帯電話1の構成]
続いて、本発明の携帯電話1の機能構成について説明する。図4は、携帯電話1の機能構成を示すブロック図である。
図4に示すように、携帯電話1は、制御部2と、入力部3と、通信部4と、増幅部5と、スピーカ6と、マイク7と、表示部8と、記憶部9と、パターン情報記憶部10と、を含んで構成される。
【0030】
入力部3は、例えば、ボタンや、表示部8に重ねて配置される接触センサ等により構成される。入力部3は、携帯電話1のユーザから操作、例えば、表示部8に表示された情報を選択する操作を受け付ける。
通信部4は、基地局との間で無線通信を行い、無線通信回線を介して音信号を受信する。すなわち、通信部4は、制御部2から出力された信号を変調してRF(Radio Frequency)信号を生成し、アンテナ(不図示)を介して当該RF信号を基地局に無線送信する。また、通信部4は、アンテナを介して受信したRF信号を復調して、復調された信号に含まれている音信号を制御部2に出力する。
【0031】
増幅部5は、通信部4が受信した音信号を増幅してスピーカ6に入力する。増幅部5は、例えば制御部2の制御により増幅率を変化させることができるスピーカアンプである。
【0032】
スピーカ6は、増幅部5が音信号を増幅することにより得られた音を出力するスピーカである。マイク7は、通話時等にスピーカ6から出力された音を入力するマイクである。CSのオペレータは、通話中に、ユーザに対してスピーカホン設定をオンにすることを促す。これに伴いユーザが携帯電話1を操作すると、音制御部27は、スピーカホン設定をオン設定にする。これにより、無線通信回線を介して受信した音がスピーカ6から携帯電話1の周囲に向けて出力されることになるため、受信した音に含まれるDTMF信号音をマイク7で取得することができる。
【0033】
音制御部27は、特定の電話番号に対する発信又は特定の電話番号からの着信により所定の端末と接続された場合に、スピーカ6から音信号を出力させるスピーカホンの状態に設定してもよい。
【0034】
表示部8は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等により構成される。表示部8は、制御部2の制御に応じて文字や図形等を表示する。
【0035】
記憶部9は、例えば、ROM及びRAM等により構成され、携帯電話1にDTMF信号を識別させ、変更補助機能を実現させるためのアプリケーションプログラムや各種データを記憶する。
図5Aは、記憶部9に記憶されている、変更補助信号に対応付けられた動作定義情報の一例を示す。
【0036】
変更補助信号は、複数のDTMF信号から構成されるDTMF信号群である。なお、本実施形態では、夫々の変更補助信号は、特定のDTMF信号(例えば、♯)から開始するDTMF信号群である。
DTMF信号は、図5Bに示すように、低群及び高群の2つの音周波数帯域の合成信号であり、0から9までの数字と、*、♯、A、B、C、Dの記号との計16種類の符号をあらわす合成信号である。
【0037】
動作定義情報は、携帯電話1が有する動作モードの設定変更を補助するための動作を定義する情報である。例えば、変更補助信号「♯222」に対応する動作定義情報「Z01A」は、海外渡航時の設定、すなわち、海外で携帯電話1を用いるための設定の変更を補助するための動作が定義されている。
【0038】
なお、設定変更を補助するための動作は、携帯電話の機種毎に異なることがある。そこで、記憶部9は、携帯電話の機種に対応付けて動作定義情報を記憶することとしてもよい。図5Aを参照すると、同じ変更補助信号「♯222」であっても、機種「ABC11」には動作定義情報「Z01A」が対応付けられ、機種「DEF22」には動作定義情報「Z01B」が対応付けられている。
【0039】
図4に戻り、パターン情報記憶部10は、例えばROM又はフラッシュメモリにより構成され、DTMF信号の種別に関連付けて、DTMF信号の種別ごとの特徴を示すパターン情報を記憶している。具体的には、パターン情報記憶部10は、パターン情報として、DTMF信号である可能性が高いことを示す複数の正例パターンを含む正例パターン群と、DTMF信号でない可能性が高いことを示す複数の負例パターンを含む負例パターン群との境界を規定する識別関数のパラメータを、DTMF信号の種別に関連付けて記憶している。より具体的には、パターン情報記憶部10は、DTMF信号の種別に関連付けて、パターン情報生成装置90において生成された、以下の式(1)で示される識別関数に含まれるパラメータa、b、tを記憶している。
【数1】
【0040】
上記の式(1)におけるデータxは、それぞれの正例パターン及び負例パターンに含まれる複数の周波数成分の振幅を示すデータである。本明細書においては、本データを学習データという。パターン情報記憶部10は、DTMF信号の種別に関連付けて、複数の正例パターン及ぶ負例パターンに対応する複数の学習データxをさらに記憶してもよい。なお、正例パターン群と負例パターン群との境界線からの距離が比較的大きな正例パターン及び負例パターンに対応するパラメータaの値は0になる。したがって、パターン情報記憶部10は、正例パターン群と負例パターン群との境界線からの距離が所定の大きさより小さな正例パターン及び負例パターンを学習データxとして記憶することにより、パターン情報記憶部10の容量、及び後述の識別部23における処理量を低減することができる。
【0041】
式(1)におけるx’は、識別する対象となるDTMF信号に含まれる複数の周波数成分の振幅を示すデータである。本明細書においては、本データを識別対象データという。式(1)におけるNは、DTMF信号の識別に使用する学習データの個数である。それぞれの正例パターン又は負例パターンに対して1つの学習データが存在するので、Nは、正例パターン及び負例パターンの合計数に等しい。
【0042】
図6は、学習データの一例を示す図である。図6(a)は、DTMF信号“8”に対応する正例パターン及び負例パターンの周波数と振幅との関係を示す図である。図6(a)における実線は、第1の正例パターン(学習データ1)を示しており、破線は第2の正例パターン(学習データ2)を示している。横軸は、DTMF信号を構成する8つの区分の周波数に対応しており、「3」は、低群の周波数852Hzに対応し、「6」は高群の周波数1336Hzに対応している。縦軸は、音の強さを示している。
【0043】
図6(b)は、パターン情報記憶部10に記憶されている学習データを示すテーブルであり、図6(a)に対応している。図6(b)に示すように、パターン情報記憶部10には、学習データごとに、周波数と音の強さとを関連付けた情報が記憶されている。パターン情報記憶部10は、このような学習データを多数記憶している。
【0044】
なお、図6に示した学習データは、周波数の区分が8つであり、音の強さが0.2刻みであるが、周波数の区分をより多くしたり、音の強さの刻みをより小さくしたりすることにより、パターン情報記憶部10が記憶する学習データの数を増やすこともできる。学習データの数を増やすことにより、DTMF信号の識別精度をさらに向上させることができる。
【0045】
また、正例パターン及び負例パターンは携帯電話1の機種によって異なる。したがって、パターン情報記憶部10は、機種に関連付けて、正例パターン及び負例パターンに対応する学習データを記憶してもよい。
【0046】
パターン情報記憶部10に記憶されているパターン情報は、所定のタイミングで、パターン情報生成装置90等の外部装置から取得したパターン情報に更新される。例えば、制御部2は、パターン情報生成装置90から新たなパターン情報を受信すると、受信したパターン情報をパターン情報記憶部10に書き込む。
【0047】
制御部2は、例えば、CPUにより構成され、記憶部9に記憶されたアプリケーションプログラムを実行することで、検出部21、判定部22、識別部23、動作取得部24、表示制御部25、設定変更部26及び音制御部27として機能する。
【0048】
検出部21は、携帯電話1の発着信を検出する。判定部22は、検出した発着信が特定の電話番号に対応する発信、又は特定の電話番号からの着信であるか否かを判定する。なお、特定の電話番号とは、CSの電話番号である。
すなわち、検出部21及び判定部22は、携帯電話1の発着信がCSに対するものであるか否かを監視する。
【0049】
識別部23は、スピーカ6から出力され、マイク7から入力された音信号の波形と、パターン情報記憶部10に記憶されたパターン情報とに基づいて、入力されたDTMF信号の種別を識別する。具体的には、識別部23は、まず、パターン情報記憶部10に記憶されているパラメータ及び学習データと、入力されたDTMF信号の識別対象データとを式(1)に代入し、識別関数値、すなわちy(x’)の値を算出する。
【0050】
続いて、識別部23は、算出した識別関数値に基づいて、入力DTMF信号が複数のDTMF信号の種別のうち、どの種別に最も類似するかを判定することにより、入力DTMF信号の種別を識別する。具体的には、識別部23は、例えば、y(x’)の値が正の値となったDTMF信号の種別を、入力DTMF信号の種別であると識別することにより、複数の正例パターンに類似し、負例パターンに類似しない種別を識別することができる。識別部23は、例えばy(x’)の算出に使用する学習データを変更することにより、複数のDTMF信号の種別のうち、入力されたDTMF信号が複数の正例パターンのうちの所定数以上に類似し、かつ、入力されたDTMF信号が複数の負例パターンのいずれにも類似していないDTMF信号の種別を、入力DTMF信号の種別であると識別してもよい。
【0051】
なお、識別部23は、パターン情報記憶部10が、携帯電話1の機種に関連付けてパターン情報を記憶している場合、携帯電話1の機種と、機種に関連付けられたパターン情報に基づいて、DTMF信号の種別を識別してもよい。
【0052】
識別部23は、例えば、特定の電話番号に対する発信、又は特定の電話番号からの着信であると判定部22により判定されることを条件に、スピーカ6から出力され、マイク7から入力された音信号に含まれるDTMF信号の種別を識別する。識別部23は、通話中の音信号にDTMF信号が含まれている場合に、そのDTMF信号の種別を識別する。
【0053】
また、本実施形態では、識別部23は、DTMF信号に対応する16種類の符号のうち電話のボタンで用いることの少ないA,B,C,Dを除く12種類の符号に対応するDTMF信号を識別する。このとき、変更補助信号は、特定のDTMF信号(例えば、♯)から開始することとしているため、識別部23は、初めに、特定のDTMF信号のみを識別する処理を実行しておき、その後、特定のDTMF信号が識別されたことを条件に、他の11種類の符号に対応するDTMF信号の識別処理を開始することとしてもよい。これにより、携帯電話1のCPU使用率が軽減されるため、電力消費を抑えることができる。
【0054】
識別部23がDTMF信号の識別処理を終了するタイミングは任意であり、例えば、CSとの通話が終了したタイミングでDTMF信号の識別処理を終了することとしてもよく、また、その他のタイミングで終了することとしてもよい。例えば、識別部23は、動作定義情報に対応するDTMF信号、すなわち、変更補助信号が抽出されることを条件に、音信号からのDTMF信号の識別処理を終了することとしてもよい。
【0055】
また、識別部23は、動作定義情報に対応するDTMF信号群に含まれる複数のDTMF信号のうちの所定数のDTMF信号が識別されてから所定時間が経過したことを条件に、DTMF信号の識別処理を終了することとしてもよい。変更補助信号が特定のDTMF信号(例えば、♯)から開始することを考慮すると、識別部23は、例えば、特定のDTMF信号が識別されてから変更補助信号を構成するために必要な全長分の時間が経過することを条件にDTMF信号の識別処理を終了することとしてもよい。
【0056】
動作取得部24は、識別したDTMF信号に基づいて、記憶部9から動作定義情報を取得する。すなわち、動作取得部24は、識別したDTMF信号が変更補助信号と一致する場合、この変更補助信号に対応する動作定義情報を取得する。なお、動作取得部24は、携帯電話1の機種情報を参照して、携帯電話1の機種に適した動作定義情報を取得することが好ましい。
【0057】
表示制御部25は、取得した動作定義情報に基づいて動作モードの設定を変更するための設定画面を表示部8に表示する。
設定変更部26は、表示部8に表示された設定画面を用いてユーザが設定操作をした場合に、携帯電話1の設定を変更する。
音制御部27は、ユーザの操作に基づいてスピーカホン設定をオン設定にしたり、オフ設定にしたりする制御を行う。
【0058】
[DTMF信号の識別手順]
図7は、識別部23がDTMF信号を識別する方法を示すフローチャートである。
識別部23は、まず、マイク7から入力されたDTMF信号をデジタルデータに変換し、記憶部9に一時的に記憶させる(S21)。その後、識別部23は、入力されるDTMF信号の長さよりも短い時間間隔(例えば、40ms間隔)で、デジタル化されたDTMF信号をフーリエ変換することにより周波数領域の信号を生成する(S22)。具体的には、識別部23は、周波数領域の信号として、所定の周波数に対応させて、周波数と振幅とを関連付けたN個の識別対象データを生成する。
【0059】
続いて、識別部23は、識別する対象となるDTMF信号の種別を選択する(S23)。例えば、識別部23は、まず、DTMF信号として“1”を選択する。続いて、識別部23は、上記の式(1)に、DTMF信号“1”に関連付けてパターン情報記憶部10に記憶されている学習データと、マイク7から入力されたDTMF信号に対応する識別対象データを代入して、識別関数値、すなわちy(x’)の値を算出する(S24)。具体的には、識別部23は、DTMF信号の種別に関連付けられたパラメータを含む式(1)の識別関数に、N個の学習データ及びN個の識別対象データを順次代入し、識別関数値を算出する。識別部23は、算出した識別関数値を記憶部9に一時的に記憶させる(S25)。
【0060】
次に、識別部23は、DTMF信号の全ての種別に対して、S3からS5までの処理を実行したかどうかを判定する(S26)。識別部23は、S6において、S3からS5までの処理を実行していない種別が残っている場合は、S3からS5までの処理を実行する。識別部23は、DTMF信号“0”、“1”、・・・、“*”、“#”までの全ての種別に対してS3からS5までの処理を実行し、算出した識別関数値が正の値となった種別を特定することにより、DTMF信号の種別を識別する(S27)。識別関数値が正の値を示している確率が高い場合、マイク7から入力されたDTMF信号は、選択された種別のDTMF信号である可能性が高い。このようにすることで、識別部23は、高い精度でDTMF信号の種別を識別することができる。
【0061】
識別部23は、マイク7からDTMF信号が入力されている間、S21からS27の処理を繰り返してもよい。そして、識別部23は、識別関数値が正の値を示す種別が複数存在する場合、正の値を示した回数が最も多い種別を、入力されたDTMF信号の種別であると識別してもよい。識別部23は、識別関数値が正の値を示す種別が複数存在する場合、識別関数値が最も大きい種別を、入力されたDTMF信号の種別であると識別してもよい。
【0062】
[携帯電話の処理]
図8は、DTMF信号を含む変更補助信号を受けた携帯電話1における画面遷移図である。図8(A)に示すように、CS用端末80から携帯電話1に変更補助信号が送信され、識別部23が変更補助信号に対応するDTMF信号を識別すると、動作取得部24は、変更補助信号に対応する動作定義情報を取得する。
【0063】
表示制御部25は、取得した動作定義情報に従って設定変更を補助する。一例として、表示制御部25は、図8(B)に示すように、本来、設定メニュー画面71を介して遷移する無線設定画面72を通話中画面から直接、表示部8に表示するとともに、この無線設定画面72においてユーザが行うべき設定内容を示す情報301を表示部8に表示する。ユーザが情報301に従い海外モードに変更ボタン31を操作すると、設定変更部26は、無線設定を国内モードから海外モードに変更する。
【0064】
また、この無線設定画面72において次へボタン302が操作されると、表示制御部25は、図8(C)に示すように、無線設定画面72から直接、ローミング設定画面73を表示するとともに、このローミング設定画面73において設定変更部26が自動的に行った設定内容及びこのローミング設定画面73においてユーザが行うべき設定内容を示す情報303を表示部8に表示する。その後、ユーザが情報303に従いPRL(Preferred Roaming List)ボタン304を操作すると、設定変更部26は、PRLを最新のものに設定する。
【0065】
図9は、携帯電話1の動作フローチャートである。
初めに、制御部2は、携帯電話1の発着信を監視し、通話先がCSに対するものであるか否か、すなわち、発信先又は着信元の電話番号がCSの電話番号であるか否かを判定する(S1)。
【0066】
通話先がCSに対するものである場合、識別部23は、通話中の音信号からDTMF信号の識別処理を開始する(S2)。その後、識別部23は、変更補助信号の開始に相当する「♯」のDTMF信号を識別すると(S3)、変更補助信号を構成するために必要な全長分の時間の計時を開始する(S4)。その後、所定時間が経過すると(S5)、識別部23は、この所定時間内に識別したDTMF信号が変更補助信号に対応するか否かを判定する(S6)。この判定がYESのときは、処理をS7に移し、NOのときは、処理をS3に移し、再度、変更補助信号の識別処理を行う。
【0067】
S7では、識別部23がDTMF信号の識別処理を終了すると、動作取得部24は、識別した変更補助信号に対応する動作定義情報を記憶部9から取得する。続いて、表示制御部25は、動作定義情報に基づいて、携帯電話1の設定変更を補助する画面を表示部8に表示させ(S8)、処理を終了する。すなわち、表示制御部25は、設定画面及び付随する情報(次へボタン302や情報301、303等)を表示することにより、設定変更を補助する。
【0068】
また、通話先がCSに対するものである場合、携帯電話1の制御部2(表示制御部25)は、変更補助機能に対応していることを示す対応マーク201を携帯電話1の表示部8に表示する(S11)。
【0069】
その後、携帯電話1の入力部3が対応マーク201に対する操作を受け付けると(S12)、表示制御部25は、動作定義情報を選択するための選択ボタン311,312を携帯電話1の表示部8に表示する(S13)。続いて、動作取得部24は、選択ボタン311,312が操作されたか否かを監視し(S14)、選択ボタン311,312が操作された場合には、操作された選択ボタン311,312に対応する動作定義情報を記憶部9から取得し(S15)、処理をS8に移す。
他方、対応マーク201や選択ボタン311,312が操作されない場合は、携帯電話1の制御部2は、処理を終了する。
【0070】
[第1実施形態における効果]
以上のとおり、第1の実施形態に係る携帯電話1は、無線通信回線を介して受信した音信号をスピーカ6から出力し、スピーカ6から出力されてマイク7に入力された音信号に含まれるDTMF信号を識別する。したがって、携帯電話1は、十分に大きな音信号に基づいてDTMF信号を識別することができるので、DTMF信号の識別精度が向上する。
【0071】
また、携帯電話1は、マイク7から入力された音信号の波形と、パターン情報記憶部10に記憶されたパターン情報とに基づいて、DTMF信号の種別を識別する。具体的には、携帯電話1は、カーネル関数を用いて、予め取得されたDTMF信号の波形パターンに類似するか否かを判定することにより、最も確からしいDTMF信号の種別を識別することができる。したがって、DTMF信号と同時に、DTMF信号以外の音が混入した場合であっても、DTMF信号を正しく識別する確率を向上させることができる。
【0072】
<第2の実施形態>
第1の実施形態においては、パターン情報生成装置90がパターン情報を生成し、携帯電話1は、パターン情報生成装置90から取得したパターン情報を用いてDTMF信号を識別していたが、第2の実施形態においては、携帯電話1がパターン情報を生成する点で第1の実施形態と異なり、他の点で同じである。すなわち、携帯電話1は、複数のDTMF信号に含まれる複数の周波数成分の大きさと、DTMF信号以外の信号に含まれる複数の周波数成分の大きさとに基づいてパターン情報を生成する生成部(不図示)をさらに有してもよい。生成部は、例えば無線通信回線を介して、さまざまな音信号のパターンを取得し、パターン情報を更新してもよい。このように、携帯電話1が生成部を有することにより、携帯電話1は、パターン情報生成装置90と通信することなく、第1の実施形態と同等の精度でDTMF信号を識別することができる。
【0073】
<第3の実施形態>
第1の実施形態においては、携帯電話1が、マイク7から入力された音信号に含まれるDTMF信号を識別する場合について説明したが、携帯電話1は、無線通信回線を介して受信した音信号を、スピーカ6及びマイク7を介することなく識別部23に入力してもよい。すなわち、識別部23は、無線通信回線から入力された音信号の波形と、パターン情報記憶部に記憶されたパターン情報とに基づいて、DTMF信号の種別を識別してもよい。
【0074】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。
【0075】
例えば、上記の実施形態においては、CS用端末70から送信されたDTMF信号の種別を識別するという例を説明したが、他の用途においても本発明を適用することができる。また、上記の実施形態においては、携帯電話1がDTMF信号の種別を識別するという例を説明したが、本発明を他の装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0076】
1・・・携帯電話、2・・・制御部、21・・・検出部、22・・・判定部、23・・・識別部、24・・・動作取得部、25・・・表示制御部、26・・・設定変更部、27・・・音制御部、3・・・入力部、4・・・通信部、5・・・スピーカ、6・・・マイク、7・・・表示部、8・・・記憶部、70・・・CS用端末、80・・・サーバ、90・・・パターン情報生成装置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9