【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1である群管理エレベータ装置の乗場を示す斜視図である。
【0014】
本実施例の群管理エレベータ装置は、複数(
図1では4台)のエレベータ号機(A〜D)と、乗場階床における乗場内あるいは乗場入口の近辺に固定的に配置される集中配置型の行き先階登録装置2と、乗り場呼びに応答したエレベータ号機の乗りかごの到着を上下方向別に知らせる到着灯3と、各エレベータ号機の乗場ドア上に配置され、音声あるいは文字表示によって情報を出力する出力装置4とを有している。なお、乗場呼びは、後述するように、行き先階登録のために行き先階登録装置2の操作面1が操作される時に登録される。
【0015】
本実施例においては、乗場空間の両側に、2台ずつエレベータ号機が配置される。隣り合う2台のエレベータ号機の間に位置する壁面には、行き先階登録装置10が設けられる。エレベータ利用客は、行き先階登録装置2による行き先階登録を失念した場合や、行き先階登録装置2により登録した行き先階を変更したい場合などに、行先階登録装置10によって、行き先階を登録すること、あるいは登録し直すことができる。
【0016】
さらに、本実施例は、行き先階登録装置2または行き先階登録装置10を操作して行き先階登録を行っている利用客を撮影する画像カメラ5を備えている。画像カメラ5は、身体障害の属性(車椅子使用,松葉杖使用,視覚障害)を識別するための画像データを取得する。
【0017】
図2は、
図1の行き先階登録装置2における操作面1の構成例を示す正面図である。行き先階登録装置2の操作面1には、行き先階を登録する際に利用客が押す複数の数値ボタン(
図2ではテンキー)からなる階床ボタン7と、行き先階の登録を行う利用客が身体障害を通知する場合に押す身体障害通知ボタン8と、利用客が押した行き先階を表示したり、登録された行き先階、および行き先階登録装置2が設置された階床の乗場呼びに割り当てられたエレベータ号機を示す文字や記号を表示したり、身体障害通知ボタン8が操作されたとき、前記のようにして行き先階および乗場呼びに割り当てられたエレベータ号機を示す音声案内を出力したりする表示出力部6と、を有している。なお、検出部24は、後述する実施例2(
図9)におけるICカード23のデータを読み取るためのカードリーダ部である。
【0018】
図3は、本実施例の群管理エレベータ装置の制御システムを示すブロック図である。
【0019】
本制御システム30において、画像カメラ5や、
図2に示した出力部6,階床ボタン7,身体障害通知ボタン8からの信号が群管理制御装置31の制御部18に取り込まれる。制御部18は、取り込まれた信号に基づいて、通常の制御として、到着灯制御部20によって到着灯(
図1中の符号3)を制御したり、出力案内制御部19により各エレベータ号機の出力装置(
図1中の符号4)を制御したりする。
【0020】
また、制御部18は、身体障害通知ボタン8からの信号に基づいて、記憶部17から読み込む身体障害対応制御用ソウトウェアに従って、群管理制御装置31の各部を制御して、次のように機能させる。
【0021】
身体障害確認部9は、身体障害通知ボタン8からの信号に基づいて、身体障害を確認する。このように、本実施例においては、身体障害確認部9および身体障害通知ボタン8によって、身体障害確認装置が構成される。身体障害確認部9が身体障害を確認すると、身体障害属性判定部10は、画像カメラ5からの画像データを画像処理して身体障害の属性を判定する。身体障害属性判定部10は、属性として、車いす使用,松葉杖使用,視覚障害を識別する。本実施例においては、このように、画像カメラ5および身体障害属性判定部10によって身体障害属性判定装置が構成される。
【0022】
移動時間抽出部12は、身体障害属性判定部10によって判定された身体障害の属性に対応する制御情報、すなわち利用客のエレベータ号機前までの移動時間を、移動時間データ記憶部11から抽出する。ここで、移動時間データ記憶部11は、身体障害の属性ごとに、行き先階登録装置2から各エレベータ号機までの移動時間と乗りかご内への乗りこみに要する時間を記憶している。号機割り当て部13は、移動時間抽出部12によって抽出された利用客の移動時間を考慮して、利用客の待ち時間を短縮できるエレベータ号機を選択して、そのエレベータ号機を、登録された行き先階および利用客が居る階床の乗場呼びに割り当てる。
【0023】
出力通知部14は、割り当てられたエレベータ号機の番号や名称などの識別情報を、行き先階登録装置2の出力部6によって文字表示や音声によって出力する。ドア開閉調整部16は、身体障害属性判定部10によって判定された身体障害の属性に応じて、号機割り当て部13によって割り当てられたエレベータ号機のドア開閉を制御するように、エレベータ号機制御盤15に制御指令を与える。
【0024】
図4は、本実施例の群管理エレベータ装置における行き先階登録の処理動作を示すフローチャートである。本
図4は、利用客が、行き先階を登録するために、行き先階登録装置2の階床ボタン7および身体障害通知ボタン8を操作する場合における処理動作を示す。
【0025】
本実施例の群管理エレベータ装置の群管理制御装置31は、エレベータ装置が稼働している時には行き先階登録装置2を監視しており、一監視動作として、行き先階登録装置2からの通知信号の有無に基づいて、身体障害通知ボタン8が押圧されたか否かを判定している(ステップS1)。身体障害通知ボタン8が押圧されたと判定されると、身体障害に配慮した制御用ソフトウェアが作動される(ステップS1,YES)。身体障害通知ボタン8が押圧されたことが判定されなければ、行き先階登録装置2の監視が継続される(ステップS1,NO)。
【0026】
群管理制御装置31は、身体障害通知ボタン8が押圧操作されたと判定すると(ステップS1,YES)、次に、行き先階登録装置2からの行き先階信号の有無に基づいて、行き先階登録装置2の階床ボタン7が押圧されたか否かを判定する(ステップS2)。階床ボタン7が押圧されたと判定すると(ステップS2,YES)、出力通知部14が行き先階登録装置2の出力部6に、行き先階信号が示す階床識別情報を文字表示あるいは音声により出力する。この時点で、号機割り当て部13は、上記のように、階床ボタン6に基づいて好適なエレベータ号機の割り当てを行う機能を有するが、身体障害確認部9によって身体障害が確認されているため、行き先階および乗場呼びにエレベータ号機を割り当てる処理を保留する。
【0027】
次に、群管理制御装置31は、エレベータ号機の割り当てに先だって、身体障害確認部9からの確認信号を受けた身体障害属性判定部10を用いて、画像カメラ5から取得した画像データに画像処理を施すことにより、身体障害の属性、本実施例では、車椅子使用,松葉杖使用,視覚障害を識別する判定を行う(ステップS3)。例えば、取得した画像と、車椅子使用,松葉杖使用,視覚障害の基準画像との一致度を計測するような公知の画像処理を適用することができる。なお、身体障害の属性は、これらの属性に限らず、エレベータ利用状況や運転制御の仕方に応じて、適宜、集約あるいは細分して設定することができる。例えば、車椅子使用,松葉杖使用をまとめて、肢体不自由としても良い。
【0028】
次に、群管理制御装置31は、移動時間抽出部12を用いて、移動時間データ記憶部11に予め格納された移動時間データの中から、ステップS3における属性判定結果に対応する制御情報として、操作中の行き先階登録装置2の前から各エレベータ号機まで移動するのに要する時間データおよび乗り込み時間データを抽出する(ステップS4)。その後、移動時間抽出部12によって、移動時間データは号機割り当て部13に送信され、乗り込み時間データドア開閉時間調整部16に送信される。
【0029】
次に、群管理制御装置31は、号機割り当て部13を用いて、号機割り当て部13が受け取った移動時間データおよびエレベータ号機制御盤15から送信されるエレベータ号機の運転状態に基づいて、利用客が到着した乗りかごに確実に乗車することができると共に利用客の待ち時間を低減できるような好適なエレベータ号機を選択して、行き先階および乗場呼びに割り当てる(ステップS5)。ここで、群管理制御装置31は、移動時間が経過した後に、乗場階床に乗りかごが到着する運転状態にあるエレベータ号機を割り当てる。
【0030】
さらに、群管理制御装置31は、割り当てられたエレベータ号機に関するデータ、例えばエレベータ号機の番号や名称などの識別データを、出力通知部14を介して行き先階登録装置2に送信すると共に、割り当てたエレベータ号機を制御している号機エレベータ制御盤15へ、行き先階および乗場呼びに関する信号を送信する。行き先階登録装置2において受信したエレベータ号機の識別データは、文字表示や音声によって出力部6から出力され、行き先階登録装置2を操作した利用客に通知される(ステップS6)。なお、エレベータ号機の識別データは、ドア開閉時間調整部16にも送信される。
【0031】
さらに、群管理制御装置31は、ドア開閉時間調整部16を用いて、上記のようにドア開閉時間調整部16が受信した乗り込み時間データとエレベータ号機の識別データに基づいて、身体障害の属性に応じた乗り込み時間と、割り当てられたエレベータ号機のドア開閉時間とを比較して、ドアの開閉時間を延長すると判断したら、ドア開閉を調整する指令を、割り当てられたエレベータ号機のエレベータ号機制御盤15へ送信する。
【0032】
上述したような本実施例によれば、身体障害の属性に応じて、利用客が行き先階登録装置2の位置から割り当てられたエレベータ号機の前まで移動するのに要する時間を考慮して、好適なエレベータ号機を割り当てることができる。これにより、利用客が、エレベータ号機前まで移動するのに時間を要しても、到着した乗りかごに確実に乗ることができる。
【0033】
このような本実施例の効果が生じる状況の一例を
図5に示す。本図は、行き先階登録装置2の近傍を示す。なお、行き先階登録装置2における検出部24(
図2参照)は省略されている。
【0034】
図5において、利用客21は、行き先階登録装置2の位置から割り当てられたエレベータ号機Bの前まで、歩いて5秒で移動できるとする。また、利用客22は、同じ行き先階登録装置2およびエレベータ号機B間を、車椅子や松葉杖を使用して、15秒で移動できるとする。この時、エレベータ群管理制御装置が、従来通り乗場における利用客の待ち時間を考慮して、5秒後に乗りかごが到着するエレベータ号機Bを割り当てたとすると、利用客21は乗り込むことができるが、利用客22は、エレベータ号機Bの乗りかごが出発した後にエレベータ号機前に到達するので、乗り遅れてしまう。これに対し、エレベータ群管理制御装置が、身体障害の属性に応じた移動時間を考慮して、エレベータ号機Bを割り当てれば、乗りかごが、移動時間経過後、すなわち利用客22がエレベータ号機Bの前に到達した時点以降に、乗りかごが乗場階床に到着するので、利用客2は乗り遅れることが無い。しかも、エレベータ群管理制御装置は、待ち時間が移動時間以上の範囲で、より短縮されるように、エレベータ号機を割り当てる。このため、エレベータ号機Bの前に到達後における利用客22の待ち時間が低減される。
【0035】
なお、本実施例において、群管理制御装置は、移動時間データとして、複数の身体障害の属性と移動時間を関係づけたデータテーブルを予め記憶している。
図6は、データテーブルの一例を示す。本例のように、各属性に対して移動時間が設定される。
【0036】
ここで、同じ属性でも、行き先階登録装置から各エレベータ号機までの距離の違いによって移動時間が異なることを考慮して、データテーブルにおいて、複数の身体障害の属性および複数エレベータ号機に対して、移動時間が関係づけられていても良い。このようなデータテーブルの一例を
図7に示す。本例のように、各属性に対し、エレベータ号機ごとに移動時間が設定される。これにより、例えば8台というような多数のエレベータ号機を備えるエレベータバンクにおいても、利用客が確実に乗りかごに乗り込むことができる。
【0037】
さらに、本実施例における群管理制御装置は、
図3に示したように、身体障害の属性に応じて号機割り当て部13で割り当てたエレベータ号機のドア開閉を制御するようにエレベータ号機制御盤15に指令を与えるドア開閉調整部16を備えている。このドア開閉調整部16は、身体障害の属性に応じて抽出した乗り込み時間と、号機割り当て部13で割り当てたエレベータ号機のドア開時間とを比較して、乗り込み時間の方が長ければ、ドア開時間を延長するようにドア開時間を調整する。ここで、属性に応じた乗り込み時間は、移動時間と同様に、
図6のようなデータテーブルによって設定される。
【0038】
なお、ドア開閉調整部16は、ドア開時間が延長されている時に、乗りかご内の操作盤に設けられる戸閉ボタンが操作された場合、戸閉ボタンを無効にする機能を備えても良い。また、ドア開閉調整部16がエレベータ号機制御盤15に指令信号を与えているとき、対応するエレベータ号機を身体障害対応の専用運転に切り替えるようにすることもできる。
【0039】
上述したような、データテーブルにおいて、身体障害の詳細な属性や利用客の属性、例えば、車椅子の大きさ,大人か子供かなどに応じて、属性をさらに細分化しても良い。なお、細分化された属性についても、画像カメラ5によって取得される、行き先階登録装置2を操作する利用客の画像に基づいて判定される。また、
図6または
図7に示すデータテーブルを用いて割り当てられたエレベータ号機の前まで移動した利用客の画像を取得し、取得した画像に基づいて、車椅子の大きさ,大人か子供かなどを判定し、判定結果に基づいて、予め記憶された乗り込み時間の値を補正するようにしても良い。例えば、車椅子の大きさが所定の大きさを越える場合に、乗り込み時間の値をα(>1)倍した値を用いる。
【0040】
上述したような、移動時間や乗り込み時間は、利用客の体調によって適宜補正しても良い。例えば、群管理制御装置は、利用客の体調が悪いと判定したら、エレベータ号機割り当て処理において、データテーブルに設定された値をβ(>1)倍した値を用いる。
【0041】
図8は、利用客の体調に関する情報を発信するセンサの一例を示す。本例は、手首に装着するリストバンド型センサ40であり、健康管理に用いられる。なお、
図8では、バンド部分41は一部図示が省略されている。このセンサは、脈拍や体温などを計測するセンサを備え、センサで検出されたデータを無線信号によって発信する。群管理制御装置は、受信した無線信号から利用客の体温や脈拍などの体調に関する情報を取得し、この情報から利用客の体調を判定する。なお、リストバンド型に限らず、身体に装着するウェアラブルセンサが適用できる。