(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スイッチ素子を上下アームとする第1レグと第2レグとが並列に接続され、前記第1レグの上アーム又は下アームのスイッチ素子と前記第2レグの下アーム又は上アームのスイッチ素子とをそれぞれ組として動作する第1回路と、
一方向性素子を上下アームとする第3レグと第4レグとが並列に接続され、前記第3レグもしくは前記第4レグの上下アーム又は前記第3レグ、前記第4レグの上アーム同士もしくは下アーム同士を構成する前記一方向性素子にそれぞれ並列にスイッチ素子が接続される第2回路と、
1次巻線側に前記第1回路が接続され、2次巻線側に前記第2回路が接続されるトランスと、
前記1次巻線側又は前記2次巻線側に接続されるインダクタンス手段と、
制御対象を検出する制御対象検出手段と、
前記スイッチ素子に与える駆動信号を形成する制御回路と、を備えたコンバータであって、
前記制御回路は、前記制御対象検出手段によって検出した前記コンバータの制御対象検出値と予め定めた基準値との差に対応する誤差増幅信号を求め、前記第1回路のそれぞれ組となるスイッチ素子のうちの一方のスイッチ素子用の第1の三角波状信号、前記第1回路のそれぞれ組となるスイッチ素子のうちの他方のスイッチ素子用の第2の三角波状信号、及び前記第2回路のスイッチ素子用の第3の三角波状信号を、前記第2の三角波状信号が前記第1の三角波状信号よりも大きく、前記第3の三角波状信号が第2の三角波状信号よりも大きくなるように、且つ前記誤差増幅信号が変動する範囲に前記第1、第2及び第3の三角波状信号が存在するように形成し、前記誤差増幅信号と前記第1、第2又は第3の三角波状信号とを比較し、
前記誤差増幅信号が前記第1の三角波状信号と交わるときは、前記誤差増幅信号と前記第1の三角波状信号とが交わる時点に対応して前記第1回路の組となる一方のスイッチ素子の駆動信号をパルス幅変調させ、
前記誤差増幅信号が前記第2の三角波状信号と交わるときは、前記誤差増幅信号と前記第2の三角波状信号とが交わる時点に対応して前記第1回路の組となる他方のスイッチ素子の駆動信号をパルス幅変調させ、
前記誤差増幅信号が前記第3の三角波状信号と交わるときは、前記誤差増幅信号と前記第3の三角波状信号とが交わる時点に対応して前記第2回路のスイッチ素子用の駆動信号をパルス幅変調させることを特徴とするコンバータ。
前記第2回路側から入力される電力を前記第1回路側に供給する場合は、前記第2回路は、前記第3レグ及び第4レグの上下アームを少なくともスイッチ素子で構成し、前記第3レグの上アーム又は下アームのスイッチ素子と前記第4レグの下アーム又は上アームのスイッチ素子とがそれぞれ前記第2回路の組として動作し、
前記制御回路は、
前記第1の三角波状信号を前記第2回路の組となるスイッチ素子のうちの一方のスイッチ素子用、前記第2の三角波状信号を前記第2回路の組となるスイッチ素子のうちの他方のスイッチ素子用、及び、前記第3の三角波状信号を前記第1レグもしく前記第2レグの上下アーム又は前記第1レグ、前記第2レグの上アーム同士もしくは下アーム同士のスイッチ素子用として、前記第1、第2又は第3の三角波状信号と前記誤差増幅信号とを比較し、
前記誤差増幅信号が前記第1の三角波状信号と交わるときは、前記誤差増幅信号と前記第1の三角波状信号とが交わる時点に対応して前記第2回路の組となる一方のスイッチ素子の駆動信号をパルス幅変調させ、
前記誤差増幅信号が前記第2の三角波状信号と交わるときは、前記誤差増幅信号と前記第2の三角波状信号とが交わる時点に対応して前記第2回路の組となる他方のスイッチ素子の駆動信号をパルス幅変調させ、
前記誤差増幅信号が前記第3の三角波状信号と交わるときは、前記誤差増幅信号と前記第3の三角波状信号とが交わる時点に対応して前記第1回路のスイッチ素子用の駆動信号をパルス幅変調させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のコンバータ。
スイッチ素子を上下アームとする第1レグと第2レグとが並列に接続された第1回路は前記第1レグの上アーム又は下アームのスイッチ素子と前記第2レグの下アーム又は上アームのスイッチ素子とをそれぞれ組として動作し、
一方向性素子を上下アームとする第3レグと第4レグとが並列に接続される第2回路は前記第3レグもしくは前記第4レグの上下アーム又は前記第3レグ、前記第4レグの上アーム同士もしくは下アーム同士を構成する前記一方向性素子にそれぞれ並列にスイッチ素子が接続され、
前記第1回路に接続されたトランスの1次巻線側に又は前記第2回路に接続された前記トランスの2次巻線側にインダクタンス手段が接続され、
制御対象を検出し、
検出した前記制御対象の検出値と予め定めた基準値との差に対応する誤差増幅信号を求め、前記第1回路のそれぞれ組となるスイッチ素子のうちの一方のスイッチ素子用の第1の三角波状信号、前記第1回路のそれぞれ組となるスイッチ素子のうちの他方のスイッチ素子用の第2の三角波状信号、及び前記第2回路のスイッチ素子用の第3の三角波状信号を、前記第2の三角波状信号が前記第1の三角波状信号よりも大きく、前記第3の三角波状信号が第2の三角波状信号よりも大きくなるように、且つ前記誤差増幅信号が変動する範囲に前記第1、第2及び第3の三角波状信号が存在するように形成し、前記誤差増幅信号と前記第1、第2又は第3の三角波状信号とを比較し、
前記誤差増幅信号が前記第1の三角波状信号と交わるときは、前記誤差増幅信号と前記第1の三角波状信号とが交わる時点に対応して前記第1回路の組となる一方のスイッチ素子の駆動信号をパルス幅変調させ、
前記誤差増幅信号が前記第2の三角波状信号と交わるときは、前記誤差増幅信号と前記第2の三角波状信号とが交わる時点に対応して前記第1回路の組となる他方のスイッチ素子の駆動信号をパルス幅変調させ、
前記誤差増幅信号が前記第3の三角波状信号と交わるときは、前記誤差増幅信号と前記第3の三角波状信号とが交わる時点に対応して前記第2回路のスイッチ素子用の駆動信号をパルス幅変調させることを特徴とするコンバータの制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一形態であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、本明細書の以下の実施形態及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一の名称のものを示すものとする。
【0013】
(第1の実施形態)
図1〜
図5によって本発明に係る第1の実施形態のコンバータについて説明する。
図1に、本発明の第1の実施形態に係るコンバータの構成図を示す。第1の実施形態に係るコンバータは、第1回路1と、第2回路2と、第1回路1に1次巻線11aが接続されると共に、第2回路2に2次巻線11bが接続されるトランス11と、1次巻線11aに直列接続されたインダクタンス手段Lと、制御対象を検出する制御対象検出手段18と、第1回路1、第2回路2のスイッチ素子に与える駆動信号を形成する制御回路3とを備える。
【0014】
第1回路1は、第1、第2端子T1、T2との間に接続され、第2回路2は第3、第4端子T3、T4との間に接続される。このコンバータは、第1端子T1及び第2端子T2側から入力される直流を交流に変換してから出力し、トランス11を介して第2回路2で交流を直流に変換して出力側の第3端子T3、第4端子T4側へ直流電力を供給する。第1端子T1、第2端子T2は外付けされる電源からの電力が入力される入力端子であり、第3端子T3、第4端子T4は、外付けされる負荷等に接続される出力端子である。
【0015】
第1回路1は、スイッチ素子Q1、Q2を上、下アームとする第1レグ12と、スイッチ素子Q3、Q4を上、下アームとする第2レグ13とが並列に接続される。スイッチ素子Q1には並列に一方向性素子としてのダイオードD1とコンデンサC1とが接続され、これをスイッチング素子S1とする。同様に、スイッチ素子Q2、Q3、Q4には並列に一方向性素子としてダイオードD2、D3、D4とコンデンサC2、C3、C4とがそれぞれ接続され、これらをスイッチング素子S2、S3、S4とする。第1回路1は、第1レグ12の上、下アームのスイッチ素子Q1、Q2と第2レグ13の下、上アームのスイッチ素子Q3、Q4とを、すなわちスイッチ素子Q1とQ4又はスイッチ素子Q2とQ3とを、それぞれ組として動作する。
図1では、第1回路1のそれぞれ組となる一方のスイッチ素子を第1レグ12の上下アームを構成するスイッチ素子Q1とQ2とし、第1回路のそれぞれ組となる他方のスイッチ素子を第2レグ13の上下アームを構成するスイッチ素子Q3とQ4としている。ここでは、一例として、この組となるスイッチ素子Q1とQ4又はQ2とQ3とが同時にオン状態にあるときに、他方のスイッチ素子Q3又はQ4は、一方のスイッチ素子Q1又はQ2よりも先にオフする。
【0016】
第2回路2は、一方向性素子としてダイオードD5、D6を上、下アームとする第3レグ14と、一方向性素子としてダイオードD7、D8を上、下アームとする第4レグ15とが並列に接続される。第3レグ14もしく第4レグ15の上下アーム又は第3レグ14、第4レグ15の上アーム同士もしくは下アーム同士を構成する一方向性素子にそれぞれ並列にスイッチ素子が接続される。
図1では、第3レグ14の上、下アームは、一方向性素子としてダイオードD5、D6にそれぞれ並列にスイッチ素子Q5、Q6が接続され、さらにこれらに並列にコンデンサC5、C6が接続されたスイッチング素子S5、S6で構成されている。なお、ここでは、一方向性素子D7、D8は、ダイオードを用いているが、スイッチング素子S5、S6と同様のスイッチング素子を用いてもよい。
【0017】
トランス11は、1次巻線11a側に第1回路1が接続され、2次巻線11b側に第2回路2が接続される。1次巻線11aは、第1回路1の第1レグ12の上下アームを構成するスイッチング素子S1とS2との接続点側と第1回路1の第2レグ13の上下アームを構成するスイッチング素子S3とS4との接続点側とにそれぞれ接続される。2次巻線11bは、第2回路2の第3レグ14の上下アームを構成するスイッチング素子S5とS6との接続点側と第2回路2の第4レグ15の上下アームを構成する一方向性素子D7とD8との接続点側とにそれぞれ接続される。
【0018】
インダクタンス手段Lは、1次巻線11a側又は2次巻線11b側に接続される。
図1では、インダクタンス手段Lは、トランス11の1次巻線11aを介して、第1レグ12の上、下アームの接続点側と第2レグ13の上、下アームの接続点側とに接続される。インダクタンス手段L1を2次巻線11b側に接続させる場合は、2次巻線11bを介して、第3レグ14の上下アームのスイッチング素子S5、S6が直列に接続される接続点側と第4レグ15の一方向性素子D7、D8が直列に接続される他方の接続点側とに接続される。つまり、インダクタンス手段Lは、1次巻線11a又は2次巻線11bと直列に接続される。また、
図1では、インダクタンス手段Lの一端が第1レグ12の上、下アームの接続点側に、他端がトランス11の1次巻線11a側に接続されているが、インダクタンス手段Lの一端を第2レグ13の上、下アームの接続点側に、他端をトランス11の1次巻線11a側に接続させてもよい。インダクタンス手段Lが2次巻線11bを介して接続される場合も同様である。なお、インダクタンス手段Lは、少なくとも1次巻線11a又は2次巻線11bに直列接続させればよいので、1次巻線11aと2次巻線11bの双方に直列接続させてもよい。また、インダクタンス手段Lは、その一部または全部がトランスの漏れインダクタンスであってもよい。
【0019】
図1では、コンデンサ16は第1、第2端子T1、T2の間に接続され、第1、第2端子T1、T2から第1回路1には直流電圧が入力される。また、コンデンサ17は、第3端子T3、第4端子T4の間に接続され、直流電圧が第3端子T3、第4端子T4の間に出力される。第3端子T3、第4端子T4は、外付けされる負荷等に接続される出力端子である。
【0020】
制御対象を検出する制御対象検出手段として、第1の実施形態のコンバータでは、
図1に示した電圧検出手段18を備え、第3端子T3及び第4端子T4間に出力される第2回路2の出力電圧を検出し、出力電圧検出信号を制御回路3に入力する。ここでは、一例として、コンバータの制御対象を出力電圧とし、電圧検出手段18を用いているが、制御対象は出力電流もしくは出力電力又は入力側の電圧、電流、もしくは電力であってもよい。制御対象を電流とする場合は、電流検出手段を備える。また、制御対象を電力とする場合は、電圧と電流をそれぞれ検出し、検出した電圧信号と電流検出信号とを乗算することにより、電力検出信号を求めることができる。
【0021】
制御回路3は、上述の制御対象検出手段18によって検出したコンバータの制御対象検出値と予め定めた基準値との差分に対応する誤差増幅信号x0を求める。例えば、不図示のオペアンプなどの比較手段を用い、オペアンプの一端に予め定められた目標値である基準値を入力し、他端に電圧検出手段18の検出値を入力し、オペアンプから出力されるその差分値を誤差増幅信号x0として得る。
【0022】
制御回路3は、スイッチ素子、ここでは、第1回路1のスイッチ素子Q1からQ4及び第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6に与える駆動信号を形成する。第1の実施形態では、三角波状信号を用いて各スイッチング素子の駆動信号を形成する電圧モード制御について示す。制御回路3は、例えば不図示の三角波状信号形成回路によって、第1回路のそれぞれ組となるスイッチ素子のうちの一方のスイッチ素子用の第1の三角波状信号x1、第1回路のそれぞれ組となるスイッチ素子のうちの他方のスイッチ素子用の第2の三角波状信号x2、及び第2回路のスイッチ素子用の第3の三角波状信号x3を形成する。
【0023】
制御回路3では、誤差増幅信号x0と第1、第2又は第3の三角波状信号x1、x2、x3とを比較する。誤差増幅信号x0が第1の三角波状信号x1と交わるときは、誤差増幅信号x0と第1の三角波状信号x1とに対応して第1回路1の組となる一方のスイッチ素子の駆動信号をパルス幅変調させる。誤差増幅信号x0が第2の三角波状信号x2と交わるときは、誤差増幅信号x0と第2の三角波状信号x2とに対応して第1回路1の組となる他方のスイッチ素子の駆動信号をパルス幅変調させる。誤差増幅信号x0が第3の三角波状信号x3と交わるときは、誤差増幅信号x0と第3の三角波状信号x3とに対応して第2回路2のスイッチ素子用の駆動信号をパルス幅変調させる。
【0024】
次に、制御回路3が形成するスイッチ素子の駆動信号についてより詳しく説明する。
図2は、3つの三角波状信号x1〜x3と誤差増幅信号x0との関係を示す波形図であり、横軸を時間、縦軸を信号レベルとする。信号レベルとしては、例えば、ここでは電圧値を用いる。
【0025】
図2に示すように、第1の三角波状信号x1、第2の三角波状信号x2、第3の三角波状信号x3は、それぞれ直流電圧部分とその直流電圧部分に重畳された三角波電圧部分とからなる。第1の三角波状信号x1の最小値、最大値をp1n、p1x、第2の三角波状信号x2の最小値、最大値をp2n、p2x、第3の三角波状信号x3の最小値、最大値をp3n、p3xとする。ここでは、例として、第1の三角波状信号x1は、最小値p1n、最大値p1x、次の最小値p1nをつないだ三角波を用い、第2、第3の三角波状信号x2、x3についても同様である。スロープL11は、第1の三角波状信号x1の最大値p1xと最小値p1nとを結んだ傾きがある直線、スロープL12は、第1の三角波状信号x1の最小値p1nと最大値p1xとを結んだ傾きがある直線とする。スロープL2は、第2の三角波状信号x2の最小値p2nと最大値p2xとを結んだ傾きがある直線であり、スロープL3は、第3の三角波状信号x3の最小値p3nと最大値p3xとを結んだ傾きがある直線とする。
【0026】
図2に示すように、信号レベルは、最低値0、第1、第2、第3の三角波状信号x1、x2、x3の順に大きい。つまり、最低値0、第1の三角波状信号x1の最小値p1n、最大値p1x、第2の三角波状信号x2の最小値p2n、最大値p2x、第3の三角波状信号x3の最小値p3n、最大値p3xの順に大きい。
【0027】
第1の三角波状信号の最小値p1nから次の最小値p1nまで又は第1の三角波状信号の最大値p1xから次の最大値p1xまでの時間幅は、第1回路のそれぞれ組となるスイッチ素子のうちの一方のスイッチ素子の半周期と等しくする。第2、第3の三角波状信号についても同様に、第1回路のそれぞれ組となるスイッチ素子のうちの他方のスイッチ素子、第2回路のスイッチ素子の半周期と等しくする。
【0028】
本発明のコンバータは次の条件(1)〜(3)を兼ね備える。
条件(1)第1、第2、第3の三角波状信号x1、x2、x3それぞれの信号レベルは、三角波状信号x1、x2、x3の順に大きくする。つまり、第2の三角波状信号を第1の三角波状信号よりも大きく、かつ、第3の三角波状信号を第2の三角波状信号よりも大きく設定する。
条件(2)第1、第2、第3の三角波状信号x1、x2、x3は重ならない。
図2を例にすると、三角波状信号x1の最大値p1xより第2の三角波状信号x2の最小値p2nの方が大きく、三角波状信号x2の最大値p2xよりも第3の三角波状信号x3の最小値p3nの方が大きい。
条件(3)誤差増幅信号x0の変動する範囲に第1、第2、第3の三角波状信号x1、x2、x3が存在する。このため、誤差増幅信号x0は、同一時刻において、第1、第2、第3の三角波状信号x1、x2、x3のいずれか一つの三角波状信号と交わるときは、他の三角波状信号とは交わらない。
【0029】
基本的には、制御回路3は、
図2に示すように、誤差増幅信号x0と信号レベルの異なる3つの第1〜第3の三角波状信号x1、x2、x3とを比較する。誤差増幅信号x0が、第3の三角波状信号x3と交わり、この第3の三角波状信号x3よりも低い三角波状信号x1、x2と交わらない大きさとなる場合を、区間(1)とする。区間(1)では、誤差増幅信号x0と第3の三角波状信号x3とに対応して第2回路のスイッチ素子用の駆動信号をパルス幅変調させる。
誤差増幅信号x0が、第2の三角波状信号x2と交わり、三角波状信号x1、x3と交わらない大きさとなる場合を、区間(2)とする。区間(2)では、誤差増幅信号x0と第2の三角波状信号x2とに対応して第1回路の組となる他方のスイッチ素子の駆動信号をパルス幅変調させる。
誤差増幅信号x0が、第1の三角波状信号x1と交わり、第2、第3の三角波状信号x2、x3と交わらない大きさとなる場合を、区間(3)とする。区間(3)では、誤差増幅信号x0と第3の三角波状信号x3とに対応して第1回路の組となる一方のスイッチ素子の駆動信号をパルス幅変調させる。
【0030】
次に、
図1〜
図5を用いて第1の実施形態のコンバータの詳細な動作について説明する。
図3は、誤差増幅信号x0が第3の三角波状信号x3と交わる区間(1)の動作を説明するための図である。
図4は、
図2において、第2の三角波状信号x2と交わる信号レベルにある区間(2)の動作を説明するための図である。また、
図5は、
図2において、第1の三角波状信号x1と交わる信号レベルにある区間(3)の動作を説明するための図である。
【0031】
図3〜
図5において、(A)は第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6のそれぞれの駆動信号、(B)は第1回路1の他方の組となるスイッチ素子、ここでは第2レグ13のスイッチ素子Q3、Q4に与えられる駆動信号、(C)は第1回路1の組となる一方のスイッチ素子、ここでは第1レグ12のスイッチ素子Q1、Q2の駆動信号を、それぞれ同一の時間軸で示した波形図である。(A)のスイッチ素子Q5、Q6の駆動信号は、それぞれ(D)のスイッチ素子Q6の駆動信号と(E)のスイッチ素子Q5の駆動信号に振り分けられる。また、(B)のスイッチ素子Q3、Q4の駆動信号は、それぞれ(F)のスイッチ素子Q4の駆動信号と(G)のスイッチ素子Q3の駆動信号に振り分けられる。さらに、(C)のスイッチ素子Q1、Q2の駆動信号は、それぞれ(H)のスイッチ素子Q2の駆動信号と(I)のスイッチ素子Q1の駆動信号に振り分けられる。
【0032】
ここでは、スイッチ素子Q1〜Q4の駆動信号はパルス幅制御、スイッチ素子Q5、Q6の駆動信号は位相シフト制御とする場合について説明する。
図3〜
図5において、鎖線a、bは、第3の三角波状信号x3の最大値p3xと最小値p3nとの間に位置させ、第3の三角波状信号の制限値とする。鎖線aは最小の場合は第3の三角波状信号x3の最大値p3xとし、鎖線bは最大の場合は第3の三角波状信号x3の最大値p3nとなる。スイッチ素子Q5、Q6の駆動信号は位相シフト制御を行うので、鎖線a、bは、第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6の位相シフト上限値、位相シフト下限値を決定し、鎖線a、b間は、第2回路2のスイッチ素子の駆動信号が位相シフトする範囲となる。鎖線cは、第2の三角波状信号x2の最大値p2xと最小値p2nとの間に位置し、第1回路の組となる他方のスイッチ素子Q3又はQ4のパルス幅の上限値(最大パルス幅)を決定する。鎖線dは第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6の動作停止レベルを示し、誤差増幅信号x0が鎖線dを下回るときにはスイッチ素子Q5、Q6をオフのままの状態に保持する。鎖線eは、第1の三角波状信号x1の最大値p1xと最小値p1nとの間に位置し、第1レグ12のスイッチ素子Q1、Q2のパルス幅の上限値(最大パルス幅)を決定する。
【0033】
第1の三角波状信号x1の最大値p1xから次の最大値p1xまでの幅を第1回路1の組となる一方のスイッチ素子の半周期とする。これは、第1の三角波状信号x1の最小値p1nから次の最小値p1nであってもよい。第2の三角波状信号x2は、他方のスイッチ素子Q3、Q4の駆動信号を形成するためのもので、第2の三角波状信号x2と誤差増幅信号x0又は第2の三角波状信号x2の制限値となる鎖線cとに対応して定まる第1回路1の他方のスイッチ素子Q3、Q4の駆動信号を第1の三角波状信号x1と第1の三角波状信号の制限値である波線eとに対応して定まる第1回路1の一方のスイッチ素子Q1、Q2の駆動信号よりも先にオフさせる。また、第3の三角波状信号x3は、第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6用の駆動信号を形成するためのもので、第3の三角波状信号x3と誤差増幅信号x0又は第3の三角波状信号の制限値となる波線aとに対応して定まるスイッチ素子Q6(又はQ5)をオン状態とする駆動信号を第1の三角波状信号x1及び第2の三角波状信号x2によって定まる第1回路1の一方のスイッチ素子Q1(又はQ2)及び他方のスイッチ素子Q4(又はQ3)の駆動信号が共にオン状態となる駆動信号のときに与える。
【0034】
[誤差増幅信号x0が第3の三角波状信号x3と交わる区間(1)の動作]
第3、第4端子T3とT4との間の出力電圧(制御対象)が低下することによって、誤差増幅信号x0が大きくなり、
図3に示すように誤差増幅信号x0が第3の三角波状信号x3と交わった状態にあるとする。この状態では、誤差増幅信号x0は、第1の三角波状信号x1の制限値(最大パルス幅)を示す鎖線e及び第2の三角波状信号x2の制限値(最大パルス幅)を示す鎖線cを超えている。
【0035】
制御回路3は、
図3(C)に示す組となる一方のスイッチ素子Q1、Q2の駆動信号を、第1の三角波状信号x1と鎖線eとの交点で定まる最大パルス幅で制御する。スイッチ素子Q1、Q2の駆動信号のオンのタイミングをスロープL11と鎖線eの交点から定まる時点とし、オフのタイミングをスロープL12と鎖線eの交点で定まる時点とする。スイッチ素子Q1、Q2が共にオフするデットタイムは、スロープL12と鎖線eの交点で定まる時点からスロープL11と鎖線eの交点で定まる時点までとする。このスイッチ素子Q1、Q2のデットタイムは、スイッチ素子Q1とQ2とが同時に導通するのを防止することができる期間とする。
図3(C)の駆動信号は、(H)スイッチ素子Q1と(I)スイッチ素子Q2の駆動信号にそれぞれ振り分けられる。
【0036】
制御回路3は、
図3(B)に示す組となる他方のスイッチ素子Q3、Q4の駆動信号がオフするタイミングを、第2の三角波状信号x2と鎖線cとの交点で決定する。ここでは、スイッチ素子Q3、Q4の駆動信号がオンするタイミングは、第2の三角波状信号x2の最小値p2nとなる時点としている。また、オフするタイミングは、スロープL2と第2の三角波状信号の制限値である鎖線cとの交点で定まる時点となるので、このときのパルス幅は、スイッチ素子Q3、Q4の最大パルス幅となる。
図3(B)の駆動信号は、(G)スイッチ素子Q3と(F)スイッチ素子Q4の駆動信号としてそれぞれ振り分けられる。
【0037】
制御回路3は、第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6を一定幅のパルスで位相シフトさせる制御を行う。スイッチ素子Q5、Q6の駆動信号は、一定幅のパルスを、誤差増幅信号x0と第3の三角波状信号x3とが交わる時点でオフさせるタイミングを定めることで位相シフト量が決定する。
図3では、誤差増幅信号x0が、スロープL3と交わる時点t1、t2で、
図3(A)スイッチ素子Q5、Q6の駆動信号をオフさせる。
図3(A)の駆動信号は、(D)スイッチ素子Q6と(E)スイッチ素子Q5の駆動信号にそれぞれ振り分けられる。時刻t1で、オン状態の(E)スイッチ素子Q5の駆動信号がオフすると、予め決められたデッドタイムの後に(D)スイッチ素子Q6の駆動信号がオンする。同様に、時刻t2で、オン状態の(D)スイッチ素子Q6の駆動信号がオフすると、予め決められたデッドタイムの後に(E)スイッチ素子Q5の駆動信号がオンする。なお、スイッチ素子Q5、Q6が共にオフするデッドタイムは、スイッチ素子Q5とQ6が同時に導通することを防止することができる期間とする。
【0038】
位相シフトの変動量は、スロープL3と交わる誤差増幅信号x0が、鎖線aと一致する場合に最大(位相シフト上限値)、鎖線bと一致する場合に最小(位相シフト下限値)とし、この最大値から最小値の間をシフトさせる。なお、誤差増幅信号x0が、鎖線aよりも大きい場合は位相シフト上限値でパルス制御をし、誤差増幅信号x0が、鎖線bよりも低く、鎖線dよりも高いときは、位相シフト下限値のパルス制御をする。
【0039】
誤差増幅信号x0の値が大きくなるほどスロープL3と交わる点が
図3の右側の方向となり、スイッチ素子Q5、Q6の駆動信号は
図3の右方向にシフトする。よって、スイッチ素子Q6のオン期間は、スイッチ素子Q2とQ3とが同時にオンする期間と一致する時間が長くなる。同様に、スイッチ素子Q5のオン期間は、スイッチ素子Q1とQ4とが同時にオンする期間と一致する時間が長くなる。
【0040】
ここで、区間(1)の動作について詳しく述べる。
図3(H)、(F)に示すように、第1回路1の組となる一方のスイッチ素子Q1と他方のスイッチ素子Q4とに共にオン信号が与えられている状態から、他方のスイッチ素子Q4を先にオフし、その後に、一方のスイッチ素子Q1を後からオフさせる。同様に、
図3(I)、(G)に示すように、第1回路1の組となる一方のスイッチ素子Q2と他方のスイッチ素子Q3とに共にオン信号が与えられている状態から、他方のスイッチ素子Q3が先にオフし、その後に、一方のスイッチ素子Q2を後からオフさせる。
【0041】
第2回路2のスイッチ素子Q6又はQ5は、第1回路1の組となるスイッチ素子Q1、Q4又はスイッチ素子Q2、Q3が共にオン状態にあるときに順方向に導通させる。
図3に示すように、(H)、(F)のスイッチ素子Q1、Q4又は(I)、(G)スイッチ素子Q2、Q3にオン信号の与えられる期間に、(D)スイッチ素子Q6又は(E)スイッチ素子Q5にオン信号が与えられる。このため、トランス11の2次側では、2次巻線11bが短絡状態となり、第1端子、第2端子T1、T2側から入力されるエネルギーがインダクタンス手段Lに蓄積される。この動作は、スイッチ素子Q1、Q4又はスイッチ素子Q2、Q3に共にオン信号が与えられている期間に、スイッチ素子Q6又はQ5のオン信号をオフさせることによって終了する。したがって、(D)スイッチ素子Q6又は(E)スイッチ素子Q5の駆動信号が、
図3において右方向にシフトすると、つまり誤差増幅信号x0が大きくなるほど、インダクタンス手段Lにエネルギーを蓄える期間が長くなるのでインダクタンス手段Lに蓄えられるエネルギーが大きくなる。
【0042】
次に、誤差増幅信号x0と第3の三角波状信号x3とが交わる時刻で、スイッチ素子Q6又はQ5がオフすると、インダクタンス手段Lに蓄えられたエネルギーは、一方向性素子D5、D8又は一方向性素子D6、D7とを通して第3、第4端子T3、T4側に供給される。このとき、第2回路2は、一方向性素子D5〜D8のフルブリッジ整流回路として機能する。
【0043】
以上のことから、区間(1)では、誤差増幅信号x0が大きくなるほど、スイッチ素子Q1、Q4又はスイッチ素子Q2、Q3の駆動信号が共にオン信号のときに、スイッチ素子Q6又はQ5の駆動信号のオン状態が長くなるため、インダクタンス手段Lにエネルギーを蓄える期間が長くなり、コンバータの出力電圧の上昇率が大きくなる。
【0044】
一方、区間(1)において、出力電圧の上昇に伴い誤差増幅信号x0の値が小さくなっていくと、スイッチ素子Q5又はQ6の駆動信号が
図3左方向にシフトし、組となるスイッチ素子Q1、Q4又はQ2、Q3が同時に順方向に導通しているときに、スイッチ素子Q6又はQ5が順方向に導通状態となる期間が短くなる方向に変化する。区間(1)の動作で、第3、第4端子T3、T4の間の出力電圧が上昇して目標値方向に向かうに従って、誤差増幅信号x0が小さくなって鎖線bを下回り、誤差増幅信号x0は、第2の三角波状信号x2と交わる信号レベルまで低下すると次の区間(2)の動作に切り替わる。
【0045】
[誤差増幅信号x0が第2の三角波状信号x2と交わる区間(2)の動作]
誤差増幅信号x0が、
図4に示す第2の三角波状信号x2と交わる信号レベルまで低下したものとする。この状態では、誤差増幅信号x0は、第1の三角波状信号x1の制限値(最大パルス幅)を示す鎖線eを超えており、かつ第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6の動作停止レベルを示す鎖線dよりも上にある。
【0046】
制御回路3は、組となる一方のスイッチ素子Q1、Q2の駆動信号を区間(1)と同様に最大パルス幅で動作させる。また、誤差増幅信号x0は、鎖線dよりも上方であるが第3の三角波状信号の最小制限値を示す鎖線bよりも下方にあるので、制御回路3はスイッチ素子Q5、Q6を第3の三角波状信号と鎖線bとの交点によって定まるタイミングでオフさせる最小の位相シフトで制御する。
【0047】
組となる他方のスイッチ素子Q3、Q4の駆動信号は、誤差増幅信号x0が、第2の三角波状信号x2の最小値p2nから最大値p2xを結ぶスロープL2と交わる時点t3、t4でオフさせる。スイッチ素子Q3、Q4の駆動信号がオンするタイミングは、第2の三角波状信号x2の最小値p2nとなる時点とし、オフするタイミングを変動させてパルス幅を制御する。誤差増幅信号x0が低くなるにつれて、スイッチ素子Q3、Q4がオフするタイミングは、
図4の左側にずれる。誤差増幅信号x0が、第2の三角波状信号x2の制限値である鎖線cと交わるタイミングでオフしたときのパルス幅を最大パルス幅とし、誤差増幅信号x0が鎖線cを超えるときも、スイッチ素子Q3、Q4は最大パルス幅で動作させる。
【0048】
区間(2)では、第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6は、最小の位相シフトで交互にオンオフし、スイッチ素子Q5、Q6を逆方向に電流が流れる期間にオンさせて同期整流させている。ダイオードD5、D6よりも導通損の小さいスイッチ素子Q5、Q6を導通させることにより、導通損失を低減できる。なお、区間(2)では、スイッチ素子Q5又はQ6に、駆動信号を与えないでオフ状態としてもよい。
【0049】
前述したように、区間(2)では、誤差増幅信号x0が低くなるにつれて、スイッチ素子Q3、Q4それぞれの駆動信号のパルス幅が狭くなる。このため、第1端子T1と第2端子T1側から供給される入力電力が、スイッチ素子Q1、Q4又はスイッチ素子Q2、Q3を介して、第2回路側に供給される供給される電力量が減少することになる。誤差増幅信号x0の大きさに従ってこのコンバータの出力電圧を制御し、出力電圧を上昇させるが、区間(2)における出力電圧の上昇率は区間(1)に比べて小さい。
【0050】
制御回路3は、出力電圧の更なる上昇に伴って、誤差増幅信号x0が第2の三角波状信号x2の信号レベルよりも下側で、かつ第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6の動作停止レベルを示す鎖線dよりも下側まで低下すると、下記区間(3)の制御動作に自動的に切り替わる。
【0051】
[誤差増幅信号x0が第1の三角波状信号x1と交わる区間(3)の動作]
図5に示すように、誤差増幅信号x0が第1の三角波状信号x1と交わった状態にあるとする。この状態では、誤差増幅信号x0は、第1の三角波状信号x1の制限値である鎖線eよりも下側にある。このため、制御回路3は、組となる他方のスイッチ素子Q3、Q4及び第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6をオンオフ動作させずに停止状態とし、組となる一方のスイッチ素子Q1、Q2だけを制御する。
【0052】
誤差増幅信号x0が第1の三角波状信号x1と交わる時点で、組となる一方のスイッチ素子Q1、Q2のオン、オフのタイミングを決定する。例えば、
図5に示す時点t5、t6は、スイッチ素子Q1のオン、オフ時点を、時点t7、t8はスイッチ素子Q2のオン、オフ時点をそれぞれ示すものとする。この区間(3)では、組となる一方のスイッチ素子Q1、Q2だけがパルス幅制御で交互にオンオフ動作を繰り返し、スイッチ素子Q1又はQ2がオンの期間に、インダクタンス手段Lと各部容量との共振によって、入力電源からのエネルギーが出力に供給される。
【0053】
この区間(3)では、誤差増幅信号x0が小さくなるほど、スイッチ素子Q1、Q2の駆動信号のパルス幅が狭くなり、コンバータの出力端子である第3、第4端子T3、T4に供給される電力は低下する。スイッチ素子Q1、Q2の駆動信号のパルス幅をゼロにすると、トランス11の2次巻線11bから第3、第4端子T3、T4側に供給される電力をほぼゼロの無負荷状態にできる。軽負荷からほぼ無負荷状態となる区間(3)では、出力電圧の上昇率が前記区間(1)、区間(2)に比べて非常に小さい。
【0054】
上述では、誤差増幅信号x0が小さくなる場合の動作について説明したが、これとは逆に、区間(3)において、コンデンサ17の両端の電圧が降下することによって誤差増幅信号x0が大きくなる方向に変化すると、制御回路3は組となる一方のスイッチ素子Q1、Q2の駆動信号のパルス幅を広くして行く。さらに第4端子T3、T4側電圧が低下し、誤差増幅信号x0が大きくなって、誤差増幅信号x0が第2の三角波状信号x2に交わる信号レベルになると、区間(2)に切り替わる。さらに、誤差増幅信号x0が第3の三角波状信号x3に交わる信号レベルになると、区間(1)の動作に切り替わる。
【0055】
以上で説明したように、この第1の実施形態のコンバータは、第3、第4端子T3、T4間の出力電圧の大きさによって、区間(1)〜区間(3)の制御動作のいずれかに自動的に切り替わって動作するので、昇圧回路及び切り替え回路などを用いることなく、第3、第4端子T3、T4間の出力電圧の上昇率を自動的に変えて短時間で出力電圧を目標値に近づけることができ、広範囲の出力電圧に対応できる。
【0056】
例えば、このコンバータが太陽光発電などに用いられる場合には、太陽光発電による第1、第2端子T1、T2に入力される電圧を制御するのにも有効である。この場合には、図示しないが、太陽光発電装置が接続される第1、第2端子T1、T2間の電圧を検出する電圧検出手段を別途備える。この電圧検出手段で第1、第2端子T1、T2間の電圧を検出し、その電圧検出値と第1、第2端子T1、T2間の目標電圧に対応する基準値とを比較して、誤差増幅信号x0を得る。この誤差増幅信号x0と前記第1〜第3の三角波状信号x1〜x3とを比較し、前述したように区間(1)〜(3)の電圧モード制御を行うことによって、第1、第2端子T1、T2間の制御対象となる電圧の上昇率を自動的に変えて、それらをその目標電圧に近づけることが可能である。制御回路3は、制御対象が第3、第4端子T3、T4間の電圧のときには電圧検出手段18の電圧検出信号を利用し、制御対象が第1、第2端子T1、T2間の電圧のときには前記別途備えた電圧検出手段の電圧検出信号を利用して、前述した誤差増幅信号x0を得る。
【0057】
第1の実施形態のコンバータでは、誤差増幅信号x0が鎖線dで示す動作停止レベルよりも低くなると、制御回路3はスイッチ素子Q5、Q6に駆動信号を与えず、第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6をオフ状態、つまり動作停止状態にしているが、前記動作停止レベルを設けずにオンオフ動作をさせても構わない。また、上述の第1の実施形態の区間(1)、(2)において、一例として、スイッチ素子Q3、Q4の駆動信号がオンするタイミングを、第2の三角波状信号x2の最小値p2nとなる時点としているが、組となる一方のスイッチ素子Q2又はQ1と同時にオン状態になる期間を実現できればよい。
【0058】
上述のように、第1の実施形態のコンバータは、信号レベルの異なる第1〜第3の三角波状信号x1〜x3と誤差増幅信号x0とを比較することにより、簡潔な回路構成で、スイッチ素子に与える駆動信号を形成して各スイッチ素子の動作を切替えることで、広範囲な入出力の電圧、電流、電力を実現できる。
【0059】
(第2の実施形態)
図6に、本発明の第2の実施形態に係る電圧モード制御を行う双方向のコンバータの電気回路図を示す。
図6の双方向のコンバータは、第1回路1側から入力される電力を第2回路2側に供給する(順方向給電)動作と、第2回路2側から入力される電力を第1回路1側に供給する(逆方向給電)動作とを実現する。前者の動作は、第1の実施形態において説明しているため説明を省略する。以下では、主に第1の実施形態に係るコンバータと異なる構成及び電圧モード制御について説明する。
【0060】
図6に示す双方向コンバータでは、第1端子T1と第2端子T2との間の電圧を検出する電圧検出手段19を備え、第1端子T1と第2端子T2との間の電圧に対応する電圧検出信号を制御回路3に与える。第2の実施形態では、電圧検出手段18を第1の電圧検出手段とし、電圧検出手段19を第2の電圧検出手段とする。
【0061】
第1回路1の第1レグ12、第2レグ13は、第1の実施形態の
図1に示す回路構成と同様である。第2回路2の第3レグ14の上下アームは、
図1の回路構成と同様に、スイッチQ5、Q6にそれぞれ並列にダイオードD5、D6及びコンデンサC5、C6が並列に接続されたスイッチ素子S5、S6を用いる。また、第4レグ15の上下アームは、スイッチ素子Q7、Q8にそれぞれ並列にダイオードD10、D11及びコンデンサC7、C8が並列に接続されたスイッチ素子S7、S8を用いる。
【0062】
制御回路3は、一例として、第3、第4端子T3、T4間の電圧を制御対象とする場合に、順方向給電では第1の電圧検出手段18からの電圧検出信号を使用し、第1、第2端子T1、T2間の電圧を制御対象とする場合に、逆方向給電では第2の電圧検出手段19からの電圧検出信号を使用する。
【0063】
順方向給電では、第2回路2の第3レグ14もしくは第4レグ15の上下アーム又は第3レグ、第4レグの上アーム同士もしくは下アーム同士を構成するスイッチ素子Q5からQ8のいずれかを制御する。ここでは、第1の実施形態のコンバータと同様に、第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6を位相シフト制御するものとする。
【0064】
次に、逆方向給電について説明する。第1、第2端子T1、T2間の電圧を制御対象とする場合、制御回路3は、電圧検出手段19からの電圧検出信号に応じてスイッチング素子S8〜S3を制御する。逆方向給電では、第1の実施形態におけるトランス11の1次巻線11aの役割を2次巻線11bが行い、2次巻線11bの役割を1次巻線11aが行う。また、第1回路1のスイッチング素子S1、S2を第2回路2のスイッチング素子S7、S8に読み替え、同様に、第1回路1スイッチング素子S3、S4を2回路2のスイッチング素子S5、S6、第2回路2のスイッチング素子S5、S6を第1回路1スイッチング素子S3、S4にそれぞれ読み替える。さらに、電圧検出手段18を、第2の電圧検出手段19に読み替える。
【0065】
逆方向給電では、誤差増幅信号x0は、例えば、第2の電圧検出手段19によって検出された第1、第2端子T1、T2間の電圧の電圧検出値と第1、第2端子T1、T2間の電圧の最大電圧値(目標値)に対応する基準値とを不図示のオペアンプなどの比較手段によって差分を増幅して得られる。制御回路3は、第1の実施形態で述べた条件(1)〜(3)に基づき、第1の三角波状信号x1、第2の三角波状信号x2、第3の三角波状信号x3と誤差増幅信号x0とを比較してスイッチング素子S8〜S3を第1の実施形態と同様に制御する。したがって、第2回路2又は第1回路1は、第1の実施形態における第1回路1又は第2回路2と同様に動作する。
【0066】
この双方向のコンバータにおいて、順方向給電又は逆方向給電において、第3、第4端子T3、T4間の電圧を制御対象とする場合には、第1の電圧検出手段18の検出信号を用いればよく、第1、第2端子T1、T2間の電圧を制御対象とする場合には、第2の電圧検出手段19の検出信号を用いればよい。
【0067】
上述のように、第2の実施形態のコンバータは、信号レベルの異なる第1〜第3の三角波状信号x1〜x3と誤差増幅信号x0とを比較することにより、簡潔な回路構成で、スイッチ素子に与える駆動信号を形成して各スイッチ素子の動作を切替えることで、双方向に広範囲な入出力の電圧、電流、電力を実現できる。
【0068】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態ではコンバータの制御対象を電圧とする場合について述べたが、次に、制御対象を電流とする第3の実施形態に係るコンバータについて説明する。このコンバータは、
図7に示すように、制御対象となる第3、第4端子T3、T4を通して流れる電流を検出するための第1の電流検出手段20を備える。また、第3の実施形態に係るコンバータでは、電流モード制御を行うため、第1回路1の第2レグ13のスイッチ素子Q4を通して流れる電流を検出する第2の電流検出手段21及び第2回路2のスイッチ素子Q6を通して流れる電流を検出する第3の電流検出手段22を備える。
図7に示した第3の実施形態は、コンバータの制御対象を電流とし、電流モード制御を行うことから電流検出手段20〜22を備える点が、
図1及び
図6に示した、制御対象を電圧とし電圧モード制御を行う第1及び第2の実施形態のコンバータと異なる。
【0069】
第3の実施形態において、第1回路1側から入力される電力を第2回路2側に供給する順方向給電の動作について説明する。コンバータの制御対象は、第3、第4端子T3、T4からの出力電流とする。この場合、第1の電流検出手段20によって得られる出力電流の検出信号を電圧検出信号に変換し、例えば、不図示のオペアンプなどの比較手段によって、この電圧検出信号を出力電流目標値に対応する基準値と比較し、この差分を増幅して差動増幅信号を得る。この差動増幅信号を第1の実施形態で説明した差動増幅信号x0として用いる。
【0070】
第2の電流検出手段21で検出されるスイッチング素子S4の電流検出信号は、対応する電圧信号に変換され、
図2〜
図5における第1回路1の組となる他方のスイッチ素子Q3、Q4用の第2の三角波状信号x2として用いる。ここで、第2の電流検出手段21で検出されるスイッチング素子S4を通して流れる電流は、インダクタンス手段Lにエネルギーを蓄積してから放出されるので、インダクタンス手段Lの両端電圧、インダクタンス値などで定まる傾きで上昇してから下降する三角波状の信号となる。ここでは、スイッチング素子S4を順方向に流れる三角波状の電流を第2の電流検出手段21で検出し、例えば抵抗、電流センサなどを利用して電圧信号に変換する。第2の電流検出手段21が微小の抵抗を有する場合には、三角波状の電流信号に対応する三角波状の電圧信号を直接得ることができる。この三角波状の電圧信号に適当な大きさの直流電圧を加算して得られる三角波状信号を、第2の三角波状信号x2として形成する。なお、第2の電流検出手段21で検出する電流は、スイッチング素子S4、スイッチング素子S3又はこれら両方のであってもよい。
【0071】
第3の電流検出手段22に検出されたスイッチング素子S6を通して流れる電流の検出信号は、対応する電圧信号に変換され、
図2〜
図5における第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6用の第3の三角波状信号x3として用いる。ここでは、スイッチング素子S6を順方向に流れる電流を用いる。この電流は、スイッチング素子S3を順方向に流れる電流と同様に三角波状であり、この三角波状の電圧信号に適当な大きさの直流電圧値を加算して得られる三角波状信号を第3の三角波状信号x3とする。なお、第3の電流検出手段22で検出する電流は、スイッチング素子S5、スイッチング素子S6又はこれら両方のであってもよい。また、スイッチング素子S3〜S6を順方向に通して流れる電流には、スイッチ素子Q3〜Q6の他、並列に接続されたコンデンサC3〜C6、Ca〜Cdを充電する方向に流れる電流が含まれてもよいし、含まれないようにしてもよい。ここでは、スイッチング素子S3〜S6を順方向に流れる電流としたが、逆方向に流れる電流を含んでもよい。
【0072】
次に、
図2〜
図5における第1回路1の一方のスイッチ素子Q1、Q2用の第1の三角波状信号x1の形成について述べる。第1の実施形態で述べたように、区間(3)のときは、スイッチ素子Q1、Q2の駆動信号はパルス幅制御信号となる。第1回路1及び第2回路2を流れる電流は極めて少ないので、スイッチ素子Q1又はQ2を流れる電流を用いずに、第1の実施形態の
図2〜
図5で示した第1の三角波状信号x1と同様に予め決めた三角波状信号を形成し、これを用いた電圧モード制御を行う。
【0073】
第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、差動増幅信号x0、第1〜第3の三角波状信号x1、x2、x3についての条件(1)から(3)を満たすようにする。制御回路3は、差動増幅信号x0と第1〜第3の三角波状信号x1、x2、x3とを比較し、第1の実施形態と同様に区間(1)〜(3)の動作を行う。ここでは、第3の実施形態において、上述の第1の実施形態とは異なる動作部分について主に説明する。
【0074】
第3の実施形態において、誤差増幅信号x0が第3の三角波状信号x3と交わる区間(1)では、第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6は位相シフト制御を行う。第3の三角波状信号x3と誤差増幅信号x0とが交わる時点で、スイッチ素子Q5、Q6の駆動信号がオフするタイミングを決定する。スイッチ素子Q5、Q6がオフすると、第3の三角波状信号x3として用いるスイッチ素子Q5、Q6の電流はこのオフした時点で最大値となるので、第3の三角波状信号x3の最大値で誤差増幅信号x0と交わる。なお、第1の実施形態の場合とは異なり、最大位相シフト、最小位相シフトを決定する値は、第3の三角波状信号x3を形成するスイッチ素子Q5、Q6の電流値以外の方法で定める。
【0075】
第3の実施形態において、誤差増幅信号x0が第2の三角波状信号x2と交わる区間(2)では、第1回路1の組となる他方のスイッチ素子Q3、Q4はパルス幅制御を行う。第2の三角波状信号x2と誤差増幅信号x0とが交わる時点で、スイッチ素子Q3、Q4の駆動信号がオフするタイミングが決定する。スイッチ素子Q3、Q4がオフすると、第2の三角波状信号x2として用いるスイッチ素子Q3、Q4の電流はこのオフした時点で最大値となるので、第2の三角波状信号x2の最大値で誤差増幅信号x0と交わる。なお、第1の実施形態の場合とは異なり、最大パルス幅を決定する値は、第2の三角波状信号23を形成する組となる他方のスイッチ素子Q3、Q4の電流値以外の方法で定める。
【0076】
第3の実施形態において、誤差増幅信号x0が第1の三角波状信号x1と交わる区間(3)では、第1の実施形態と同様である。
【0077】
第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に双方向に動作させることができる。この場合、第3の実施形態の第1回路1及び第2回路2は、
図7と同様の回路構成とする。また、第2の実施形態と同様に、逆方向供給の場合の制御対象を検出する第2の検出手段を備える。上述のように、第3の実施形態のコンバータは、第1、第2の実施形態のコンバータと同様に、信号レベルの異なる第1〜第3の三角波状信号x1〜x3と誤差増幅信号x0とを比較することにより、簡潔な回路構成で、スイッチ素子に与える駆動信号を形成して各スイッチ素子の動作を切替えることで、広範囲な入出力の電圧、電流、電力を実現できる。双方向のコンバータについても同様に実現できる。
【0078】
以上の説明では、制御対象が第3、第4端子T3、T4間の電圧若しくは電流又は第1、第2端子T1、T2間の電圧若しくは電流としたが、これらに限定されず、出力電圧、電流もしくは電力又は入力電圧、電流、もしくは電力のいずれかを用いることができる。制御対象を、第3、第4端子T3、T4間又は第1、第2端子T1、T2間の電力とする場合には、第3、第4端子T3、T4間の電圧の検出電圧信号と電流検出信号とを乗算し、又は第1、第2端子T1、T2間の電圧の検出信号と電流の検出信号とを乗算して、第3、第4端子T3、T4間又は第1、第2端子T1、T2間の電力検出信号を求めることができる。制御回路3は、それぞれの電力検出信号と電力基準値とを比較して誤差増幅信号を求め、この誤差増幅信号と前述したような三角波状信号とを比較する。上述の区間(1)〜(3)の制御を切替えることにより、第3、第4端子T3、T4間又は第1、第2端子T1、T2間の電力を目標値に近づけることができる。よって、本発明のコンバータは広範囲の出力電力又は入力電力に対応できる。なお、双方向に動作させる場合についても同様に、制御対象は、順方向供給又は逆方向供給において、出力電圧、電流もしくは電力又は入力電圧、電流、もしくは電力のいずれかを採用でき、順方向、逆方向において同じ制御対象、例えば出力電圧同士、出力電流同士を用いなくてもよい。
【0079】
以上の説明において、一例として、第1、第2の実施形態では、電圧モード制御を用いる場合、第3の実施形態では、電圧モード制御及び電流モード制御を用いる場合についてそれぞれ説明したが、これらに限定させるものではなく、電圧モード制御又は電流モード制御をそれぞれの場合において選択することができる。一般的に、電圧モード制御はスイッチ素子等の電流を検出する必要がないため、電流モード制御に比べて制御回路を簡素化できる。他方、電流モード制御は、電圧モード制御に比べて制御が安定し易く、制御の応答をより高速にできる。
【0080】
第1から第3の実施形態に係るコンバータにおいて、スイッチ素子Q1〜Q8に並列に接続されたダイオードD1〜D6、D10、D11及びコンデンサC1〜C8は、それぞれスイッチング素子S1〜S8の内蔵ダイオード、寄生容量としているが、外付けさせる部品であっても、これらを組み合わせたものであってもよい。また、スイッチング素子S1からS8は、例えばMOSFETなどの半導体素子を用いる。一方向性素子D7、D8としてスイッチング素子を用いる場合についても同様である。なお、この発明の基本的動作においては、コンデンサC1〜C8は必ずしも必要としない。
【0081】
第1に係るコンバータにおいて、スイッチ素子に並列に接続しているコンデンサCa〜Cdは、本発明の必須の構成要素ではないが、これらに並列に接続されたスイッチング素子のターンオフ時におけるスイッチング損失の低減を図るのに有効である。コンデンサCa、Cbを組となるスイッチ素子のうち後からオフさせる他方のスイッチ素子Q3、Q4に並列に接続することにより、ターンオフ時におけるスイッチ素子Q3、Q4の両端電圧の上昇を緩やかにしてスイッチング損失を低減できる。同様にコンデンサCc、Cdを第2回路2のスイッチ素子Q5、Q6にそれぞれ並列することにより、スイッチング素子S5、S6のターンオフ時の損失を低減できる。これらのコンデンサCa〜Cdは、第2及び第3の実施形態に係るコンバータを双方向に動作させた場合にも用いることができる。
【0082】
上述の実施形態において、駆動信号としては、スイッチング素子として用いる半導体素子の種類によって、オン信号、オフ信号を与えるものでもよい。また、オン時点からオフ時点まで継続してずっと信号を与えなくてもよく、例えば、トリガーとして短い時間の信号を与えるものであってもよく、特に限定されるものではない。
【0083】
本発明の電気回路において、接続点とは電気的に接続されて同電位にある部位を言い、物理的に接続された点を言うものではない。また、本発明のコンバータ及び双方向コンバータにおける各部の構成、構造、数、配置、形状、材質などに関しては、上述の具体例に限定されず、当業者が適宜選択的に採用したものも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に包含される。
【0084】
より具体的には、例えば、半導体素子として記号により例示したものなどは、これら特定の電気素子には限定されず、同様の機能または作用を有する単一の電気素子あるいは複数の電気素子を含む電気回路として構成することができ、これらすべての変形は、本発明の範囲に包含される。同様に、ダイオード、コンデンサ、スイッチング素子をはじめとする各回路素子の数や配置関係などについても、当業者が適宜設計変更したものは本発明の範囲に包含される。
【0085】
本発明は、信号レベルの異なる三角波状信号と誤差増幅信号とを比較することにより、スイッチング素子を電圧モード制御又は電流モード制御し、前述した区間(1)〜(3)の動作を自動的に切り替えているので、簡潔な回路構成で、広範囲な入出力の電圧、電流、電力に対応できる。