特許第6029636号(P6029636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タカラバイオ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6029636-RNAの検出方法 図000005
  • 特許6029636-RNAの検出方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029636
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】RNAの検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20161114BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   C12Q1/68 A
   C12N15/00 AZNA
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-224007(P2014-224007)
(22)【出願日】2014年11月4日
(62)【分割の表示】特願2010-527774(P2010-527774)の分割
【原出願日】2009年8月31日
(65)【公開番号】特開2015-23874(P2015-23874A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2008-225519(P2008-225519)
(32)【優先日】2008年9月3日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】302019245
【氏名又は名称】タカラバイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】碓井 圭名子
(72)【発明者】
【氏名】上森 隆司
(72)【発明者】
【氏名】向井 博之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 郁之進
【審査官】 高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/119815(WO,A1)
【文献】 国際公開第2003/072798(WO,A2)
【文献】 Biosci. Biotechnol. Biochem.,2003年,Vol. 67, No. 11,pp.2474-2476
【文献】 Analytical Biochemistry,2004年,Vol.333,pp.246-255
【文献】 The Journal of Biochemistry,2007年,Vol.142,pp.273-281
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNAを検出するための方法であって、
(C)逆転写酵素、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドプライマー、少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び逆転写反応の鋳型となるRNAを含有する組成物を逆転写反応に供して得られるcDNAと鋳型となったRNAとで形成されるDNA/RNAハイブリッドと、耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性リボヌクレアーゼ H、及びインターカレーティング色素を含む成分とを混合して組成物を調製する工程、
(D)工程(C)で調製した組成物を90℃以上、15秒〜10分の熱処理と連続してポリメラーゼ連鎖反応に供し、核酸を増幅する工程、並びに
(E)工程(D)において増幅された核酸を、インターカレーティング色素からの蛍光シグナルの強度を測定することによって検出する工程、
を含む方法。
【請求項2】
工程(E)が工程(D)におけるポリメラーゼ連鎖反応中に実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、(F)工程(E)で測定されたシグナル強度から鋳型となるRNAの定量を行う工程を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載のRNAを検出するための方法に使用するための組成物であって、
耐熱性DNAポリメラーゼ、
耐熱性リボヌクレアーゼ H、及び
インターカレーティング色素
を含有してなる組成物。
【請求項5】
さらに、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドプライマー、少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び反応用緩衝液からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有してなる請求項4記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNAの検出方法、及び、該方法に有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸増幅方法、なかでもポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、PCR)法は、試験管内において簡便に所望の核酸断片を増幅する技術であり、近年、遺伝子に関する研究のみならず、生物学、医学、農業等幅広い分野において不可欠の実験手法となっている。また、PCRによる核酸の増幅を、例えばインターカレーティング色素を利用して経時的に測定することで、鋳型となるDNAの定量を精度良く行う方法が開発されている(非特許文献1)。この方法は、それまで知られていた定量的PCRと区別する意味で、リアルタイムPCR法と呼ばれている。
【0003】
リアルタイムPCR法は、インターカレーティング色素を用いる方法以外に、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)オリゴヌクレオチドプローブを用いる方法も知られている。FRETオリゴヌクレオチドプローブを用いるリアルタイムPCRとしては、DNAポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を利用する方法(Taq Man Probe法)、Molecular Beaconプローブを用いる方法、標的核酸にハイブリダイズした場合にFRETが起こるように設計された2種類のオリゴヌクレオチドプローブを用いる方法(HybriProbe法)、及びリボヌクレオチドを含有するFRETオリゴヌクレオチドプローブと耐熱性リボヌクレアーゼ H(RNase H)とを利用する方法(CycleavePCR法、特許文献1)等が知られている。
【0004】
PCR法は、RNAの検出方法にも応用され、Reverse Transcriptase PCR(RT−PCR)法と呼ばれている。RT−PCR法は、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性、すなわち逆転写活性を有する逆転写酵素、あるいは逆転写活性を併せ持つDNAポリメラーゼを用いてRNAに相補的なDNA転写物(cDNA)を合成し、続いてこれを鋳型としてPCRを行うことによりRNA由来cDNAを特異的に増幅、検出する方法である。RT−PCR法は、mRNA由来のcDNAのクローニングやcDNAライブラリーの作製に利用されるほか、特定のmRNAの発現状態を調べる方法としても有用である。また、RT−PCRをリアルタイムPCRに応用したリアルタイムRT−PCR法は、mRNAの定量を精度良く行えるため、遺伝子の発現解析や発現プロファイルの作成等に応用されている。
【0005】
RT−PCRにおいて、逆転写反応後のcDNAは逆転写酵素の鋳型として用いたRNAとDNA/RNAハイブリッドを形成している。このため、RT−PCRが開発された当初より、RT−PCRの反応性を向上させるためには、逆転写反応後にアルカリ、熱、又は酵素での処理によって、PCRの前にcDNAを一本鎖にしておくことが良いとされている。例えば、鋳型となるRNAのGC含量が高い場合には、逆転写反応後に大腸菌由来のリボヌクレアーゼ Hによる酵素処理の実施が効果的であるとの報告がある(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2003/074696号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Biotechnology (N Y). 1993 Sep;11(9):1026−1030.
【非特許文献2】Biosci Biotechnol Biochem. 2003 Nov;67(11):2474−2476.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
RT−PCRにおいて、逆転写反応後にアルカリ、熱、又は酵素による処理を行うと、これらの処理を行わない場合に比べて反応終了までにより多くの時間を要する。また、アルカリや酵素での処理を行う場合には、逆転写反応液にアルカリや酵素を添加する工程が必要となるため、操作が煩雑となり、コンタミネーションの危険も増す。従って、これらの問題点の改善が望まれている。
【0009】
本発明の課題は、従来のものに比べて優れた、RNAの検出方法、及び該方法にて用いる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意努力した結果、驚くべきことに、RNAを鋳型とした逆転写反応によって合成されたcDNAを鋳型とする核酸増幅反応において、耐熱性リボヌクレアーゼ Hを利用することによって、簡便で、高い特異性で、かつ高い効率での核酸増幅反応が可能であることを見出した。また、更に驚くべきことに、インターカレーティング色素の存在下であっても耐熱性リボヌクレアーゼ Hが機能することを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明の第1の発明は、耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性リボヌクレアーゼ H、及びインターカレーティング色素を含有する、逆転写反応によって合成されたcDNAを増幅し、逆転写反応の鋳型となったRNAを検出するための組成物に関する。本発明の第1の発明において、耐熱性DNAポリメラーゼとしては高度好熱菌由来のDNAポリメラーゼが例示される。また、本発明の第1の発明において、耐熱性リボヌクレアーゼ Hとしては、Thermus属細菌やThermococcus属古細菌のような高度好熱菌に由来するリボヌクレアーゼ Hが例示される。本発明の第1の発明の組成物は、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドプライマー、少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び反応用緩衝液からなる群より選ばれる少なくとも1つをさらに含有していても良い。
【0012】
本発明の第2の発明は、
(A)逆転写酵素、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドプライマー、少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び逆転写反応の鋳型となるRNAを含有する組成物を調製する工程、
(B)工程(A)で調製した組成物をインキュベーションし、cDNAを合成する工程、
(C)工程(B)で合成したcDNA、耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性リボヌクレアーゼ H、及びインターカレーティング色素を含有する組成物を調製する工程、
(D)工程(C)で調製した組成物を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い、核酸を増幅する工程、並びに
(E)工程(D)において増幅された核酸を、インターカレーティング色素からの蛍光シグナルの強度を測定することによって検出する工程、
を包含する、RNAを検出するための方法に関する。本発明の第2の発明において、工程(E)は工程(D)におけるポリメラーゼ連鎖反応中に実施されていても良い。また、工程(E)で測定されたシグナル強度から鋳型となるRNAの定量が実施されても良い。
【0013】
本発明の第3の発明は、耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性リボヌクレアーゼ H、及びインターカレーティング色素を含有する、RNAを検出するためのキットに関する。本発明の第3の発明における耐熱性DNAポリメラーゼ及び耐熱性リボヌクレアーゼ Hとしては、本発明の第1の発明において例示されたものと同様のものが例示される。本発明の第3の発明のキットは、逆転写酵素、少なくとも1種のプライマー、少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び反応用緩衝液からなる群より選ばれる少なくとも1つをさらに含有していても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、従来に比べて作業時間が短く、簡便な操作で行うことができ、かつ反応性が優れた、RNA検出用試薬、RNAの検出方法、及びRNAの検出用キットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】PCR反応液中のRNase H量とCt値との関係を示す図である。
図2】PCR反応液中のRNase H量とCt値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)本発明の組成物
本発明の組成物は、耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性リボヌクレアーゼ H、及びインターカレーティング色素を含む。
【0017】
また、耐熱性DNAポリメラーゼ及び耐熱性リボヌクレアーゼ Hを含み、かつリボヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドプローブを含まない組成物も本発明の一態様である。この態様の組成物は、FRETオリゴヌクレオチドプローブを用いるリアルタイムRT−PCRや、RT−PCRによって得られた増幅産物を電気泳動により確認する方法等に有用である。
【0018】
核酸増幅反応の反応性は、特に限定するものではないが、PCRにおいて核酸増幅量がある一定量に達する時の温度サイクル数(Ct値)により確認することができる。例えば、2つの異なる核酸増幅反応系の反応性を比較する場合、同じ量の鋳型を用いてそれぞれの系の核酸増幅反応を実施してCt値を確認すれば、Ct値が低い方を反応性が高い核酸増幅反応系と見なすことができる。
【0019】
本明細書において、耐熱性DNAポリメラーゼとは、75℃以上の温度で30分間処理した後であっても活性を保持するDNA依存性DNAポリメラーゼの事を言う。当該耐熱性DNAポリメラーゼは、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性、及び/又はRNA依存性DNAポリメラーゼ活性をさらに有していてもよい。
【0020】
本発明に使用される耐熱性DNAポリメラーゼは、PCRに使用可能なものであればよく、すでに多くの種類のものが市販されている。本発明を特に限定するものではないが、本発明に使用される耐熱性DNAポリメラーゼとしては、高度好熱菌由来のDNAポリメラーゼが例示される。高度好熱菌とは75℃以上の環境下でも生育できる菌の事を指す。高度好熱菌としては、例えば真正細菌ではThermus aquaticu、Thermus thermophilus、Thermus flavus、及びThermus filiformisのようなThermus属の真正細菌、古細菌ではPyrococcus furiosus、Pyrococcus woseii、Pyrococcus horikoshiiのようなPyrococcus属の古細菌、並びにThermococcus litoralis、Thermococcus celler、Thermococcus siculi、Thermococcus sp. KS−1、及びThermococcus kodakaraensisのようなThermococcus属の古細菌が挙げられる。なお、本発明における耐熱性DNAポリメラーゼとしては、2種以上の耐熱性DNAポリメラーゼの混合物を用いても良い。
【0021】
リボヌクレアーゼ Hとは、DNA/RNAハイブリッドのRNA鎖のみを特異的にエンド型で切断する加水分解酵素の事を言い、RNase Hと表記されることもある。本明細書において、耐熱性リボヌクレアーゼ Hとは、60℃以上の温度で15分間処理した後であっても活性を保持するリボヌクレアーゼ Hの事を言う。
【0022】
本発明における耐熱性リボヌクレアーゼ Hとしては、特に限定するものではないが、高度好熱菌由来のリボヌクレアーゼ Hが例示され、Thermus thermophilusやThermus flavus等のThermus属細菌由来リボヌクレアーゼ H、及びThermococcus litoralis等のThermococcus属古細菌由来リボヌクレアーゼ Hがより好適に例示される。国際公開第02/22831号パンフレットにも耐熱性リボヌクレアーゼ Hが開示されている。
【0023】
インターカレーティング色素とは、二本鎖核酸へのインターカレーションにより蛍光が増強される色素のことを言う。例えば臭化エチジウム、SYBR(登録商標)Green I、PicoGreen、SYTO9、SYTO13、EvaGreen、YOYO、TOTO、及びこれらの類似体等がリアルタイムPCR用のインターカレーティング色素として利用されている。本発明におけるインターカレーティング色素としては、上記の色素が例示されるが、特にこれらに限定されるものではなく、核酸へのインターカレーションにより蛍光が増強される色素であれば、本発明におけるインターカレーティング色素に包含される。
【0024】
本発明の組成物には、耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性リボヌクレアーゼ H、及びインターカレーティング色素に加えて、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドプライマー、少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び/又は反応用緩衝液が含まれていても良い。
【0025】
オリゴヌクレオチドプライマー(単に、プライマーともいう)は、使用される反応条件において鋳型となる核酸又は相補鎖側のプライマー伸長鎖に対してアニールするオリゴヌクレオチドであれば特に限定されるものではない。プライマーの鎖長は、特異的なアニーリングを行う観点から、好ましくは6ヌクレオチド以上であり、より好ましくは10ヌクレオチド以上であり、オリゴヌクレオチドの合成の観点から、好ましくは100ヌクレオチド以下であり、より好ましくは30ヌクレオチド以下である。前記オリゴヌクレオチドは、例えばABI社(Applied Biosystem Inc.)のDNAシンセサイザー394型を用いて、ホスホアミダイト法により合成出来る。他にもリン酸トリエステル法、H−ホスホネート法、チオホスホネート法等いかなる方法で合成されたものであっても良い。また、生物試料由来のオリゴヌクレオチドであっても良く、例えば天然の試料より調製したDNAの制限エンドヌクレアーゼ消化物から単離して作製しても良い。
【0026】
デオキシリボヌクレオチドは、有機塩基に結合しているデオキシリボースにホスホエステル結合によってリン酸基が結合したものである。天然型DNAは、4種類のヌクレオチドを含有する。アデニン、グアニン、シトシン及びチミン塩基を有する各ヌクレオチドが天然型DNAに含まれる。塩基のアデニン、グアニン、シトシン、及びチミンはそれぞれ、A、G、C、及びTと略されることが多い。
【0027】
デオキシリボヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオシドの一リン酸型、二リン酸型及び三リン酸型(すなわち、リン酸部分が、それぞれ、1つ、2つ又は3つのリン酸基を有する)を含む。従って、デオキシリボヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(例えば、dATP、dCTP、dITP、dGTP及びdTTP)並びにそれらの誘導体を含む。好適には、dATP、dCTP、dGTP及びdTTPの4種のデオキシリボヌクレオチドを含有する組成物が本発明に使用される。
【0028】
デオキシリボヌクレオチド誘導体は、[αS]dATP、7−デアザ−dGTP、7−デアザ−dATP、及び核酸分解に抵抗性を示すデオキシヌクレオチド誘導体を含む。ヌクレオチド誘導体は、例えば、32P若しくは35Sなどの放射性同位体、蛍光部分、化学発光部分、生物発光部分又は酵素で検出できるように標識されているデオキシリボヌクレオチドを含む。これらのデオキシリボヌクレオチド誘導体は、必要に応じて本発明の組成物に添加され、又は前記の天然型DNAに対応するデオキシリボヌクレオチドと置換される。
【0029】
反応用緩衝液とは、反応液のpHを調節するための1種又は複数の緩衝成分を含む溶液のことを示し、2価陽イオン及び1価陽イオンをさらに含む場合もある。反応用緩衝液は前記の成分の他、界面活性剤や耐熱性DNAポリメラーゼ及び/又は耐熱性リボヌクレアーゼ Hの活性や安定性を向上させるための成分を含んでもよい。
【0030】
本発明の組成物の調製方法に特に限定はなく、具体的には、例えば、耐熱性DNAポリメラーゼ、インターカレーティング色素、必要により、少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び反応用緩衝液を含有する混合物に、耐熱性リボヌクレアーゼ H及び少なくとも1種のオリゴヌクレオチドプライマーを混合することで調製することができる。なお、耐熱性DNAポリメラーゼ、インターカレーティング色素、デオキシリボヌクレオチド、及び反応用緩衝液を含有する混合物としては、SYBR(登録商標) Premix Ex TagTM(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)等の市販品を好適に使用することができる。
【0031】
本発明の組成物の一つの態様として、本発明の組成物に鋳型DNAを添加して、滅菌蒸留水等で用時に希釈することにより、各種成分がPCRに適した濃度となるように配合された、濃縮型の組成物が挙げられる。本態様により、核酸増幅用反応液を簡便に調製することが可能となる。
【0032】
(2)本発明の方法
本発明のRNAの検出方法は、
(A)逆転写酵素、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドプライマー、少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び鋳型となるRNAを含有する組成物を調製する工程、
(B)工程(A)で調製した組成物をインキュベーションし、cDNAを合成する工程、
(C)工程(B)で合成したcDNA、耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性リボヌクレアーゼ H、及びインターカレーティング色素を含有する組成物を調製する工程、
(D)工程(C)で調製した組成物を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い、核酸を合成する工程、並びに
(E)工程(D)において合成された核酸を、インターカレーティング色素からの蛍光シグナルの強度を測定することによって検出する工程、
を含む。
【0033】
上記の工程(A)における逆転写酵素は、逆転写活性、すなわちRNAを鋳型としてこれに相補的なDNAを合成する活性を有するものであれば本発明に使用でき、このような逆転写酵素としては、モロニーマウス白血病ウイルス由来逆転写酵素(MMLV由来逆転写酵素)やトリ骨髄芽球症ウイルス由来逆転写酵素(AMV由来逆転写酵素)等のウイルス由来の逆転写酵素、サーマス(Thermus)属細菌由来DNAポリメラーゼ(Tth DNAポリメラーゼ等)や好熱性バチルス(Bacillus)属細菌由来DNAポリメラーゼ(Bca DNAポリメラーゼ等)等の真正細菌由来の耐熱性の逆転写酵素が例示される。市販の逆転写酵素を使用してもよい。
【0034】
本発明の方法には、ウイルス由来の逆転写酵素が好適に使用され、MMLV由来逆転写酵素がより好適に使用される。また、逆転写活性を有する範囲で天然由来のアミノ酸配列に改変が施された逆転写酵素も本発明に使用できる。
【0035】
鋳型となるRNAは、プライマーがアニーリングした場合に、プライマーからの逆転写反応の鋳型として働くことができるRNAである。工程(A)で調製される組成物中には、1種類の鋳型RNAが含まれていても、又は異なるヌクレオチド配列を有する複数種の鋳型が含まれていてもよい。特定の鋳型RNAに特異的なプライマーを使用することによって前記鋳型に相補的なcDNAを作製することができる。複数の鋳型RNAにアニーリングしうるプライマーを選択した場合には、核酸混合物中の複数種の鋳型についてプライマー伸長産物を作製することができる。複数の鋳型は、異なる核酸内に存在しても同一の核酸内に存在してもよい。
【0036】
本発明に適用することができる鋳型となるRNAとしては特に制限はなく、試料中の全RNA、即ち、mRNA、tRNA、rRNA等のRNA分子群、あるいは特定のRNA分子群(例えば、共通の塩基配列モチーフを有するRNA分子群、RNAポリメラーゼによる転写物、サブトラクション法によって濃縮されたRNA分子群)が挙げられ、逆転写反応に使用されるプライマーが作製可能な任意のRNAが挙げられる。
【0037】
本発明において、鋳型となるRNAは、例えば細胞、組織、血液のような生体由来試料、食品、土壌、排水のような生物を含有する可能性のある試料に含有されたものであっても良く、該試料等を公知の方法で処理することによって得られる核酸含有調製物に含有されたものであっても良い。該調製物としては、例えば細胞破砕物やそれを分画して得られる試料、該試料中の全RNA、あるいは特定のRNA分子群、例えば、mRNAを富化した試料等が挙げられる。
【0038】
逆転写反応を行うための組成物、すなわち逆転写反応液の調製方法は当業者に周知であり、上記の各種成分を適切な濃度で含む反応液を調製すればよい。市販の逆転写用キットを使用すれば容易に逆転写反応液を調製できる。
【0039】
上記の方法における工程(B)では、鋳型となるRNAに相補的なcDNAが合成される。当該工程(B)におけるインキュベーションの条件としては、特に限定するものではないが、温度条件としては30℃〜65℃が例示され、37℃〜45℃がより好適である。また、反応時間としては、5分〜120分が例示され、15分〜60分がより好適である。前記条件は使用する逆転写酵素や鋳型RNA量に応じて適宜調節すればよい。
【0040】
上記の方法における工程(C)では、工程(B)で合成したcDNA、耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性リボヌクレアーゼ H、及びインターカレーティング色素を含有する組成物を調製する。耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性リボヌクレアーゼ H、及びインターカレーティング色素としては、前記の(1)「本発明の組成物」に記載のものが例示され、工程(B)で合成したcDNAに、本発明の組成物を混合して調製してもよい。
【0041】
上記の方法における工程(D)では、工程(C)で調製した組成物を用いて、工程(B)において合成されたcDNAを鋳型にポリメラーゼ連鎖反応により核酸増幅を行う。本発明の方法におけるPCRは、3段階の温度を1サイクルとする温度サイクルで行うPCRであっても良く、2段階の温度を1サイクルとする温度サイクルで行うシャトルPCRであっても良い。PCRは、例えば20サイクル〜50サイクルの温度サイクルで行えばよい。
【0042】
また、上記の3段階又は2段階の温度サイクルの前に、90℃以上、15秒〜10分の熱処理を施しても良い。逆転写反応により生成したcDNAを鋳型とするPCRにおいては、反応性の向上の観点から、PCRの温度サイクル前に熱処理を行うことが好ましい。驚くべきことに、cDNAを鋳型とするPCRに本発明の組成物を用いた場合には、上記のPCRの温度サイクル前に熱処理を行うPCRの増幅効率が更に向上する。
【0043】
上記方法における工程(E)では、工程(D)において増幅された核酸を、インターカレーティング色素からの蛍光シグナルの強度を測定することによって検出する。これにより、増幅された核酸の鋳型となったRNAを検出することができる。インターカレーティング色素からの蛍光シグナルは、インターカレーティング色素の励起光を反応組成物に照射することによって発せられ、2本鎖核酸量の増大とともにその強度が増大する。蛍光シグナル強度の検出は、PCR反応終了後に行っても良いし、工程(D)におけるPCR反応の温度サイクルごとに行っても良い。PCR反応の温度サイクルごとにインターカレーティング色素からの蛍光シグナル強度を測定することにより、PCRの鋳型のcDNA量を定量することが可能であり、さらには、定量されたcDNA量から、増幅されたcDNAの鋳型となったRNA量を決定することが可能となる。従って、本発明のRNAの検出方法は、さらに、(F)工程(E)で測定されたシグナル強度から鋳型となるRNAの定量を行う工程を含んでもよい。
【0044】
PCR反応における蛍光シグナル強度の測定には、例えば市販のリアルタイムPCR用の機器を用いれば良い。市販のリアルタイムPCR用の機器としては、Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time System(タカラバイオ社製)、Smart Cycler(登録商標) II System(タカラバイオ社製)が例示される。
【0045】
(3)本発明のキット
本発明のキットは、RNAの検出を行うためのキットであり、耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性リボヌクレアーゼ H、及びインターカレーティング色素を含む。本発明のキットは、逆転写反応によって合成されたcDNAを鋳型とする核酸増幅反応を効率よく行うことができるため、目的の配列を有するRNAの検出に有用であり、また、目的の配列を有するRNAの定量により有用である。
【0046】
本発明のキットには、耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性リボヌクレアーゼ H、インターカレーティング色素に加えて、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドプライマー、少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び/又は反応用緩衝液が含まれていても良い。
【0047】
耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性リボヌクレアーゼ H、インターカレーティング色素、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドプライマー、少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び/又は反応用緩衝液は、これらのうち一部又は全部が混合された状態でキットに包含されていても、それぞれが単独のコンポーネントの状態でキットに包含されていてもよい。例えば、耐熱性DNAポリメラーゼ、インターカレーティング色素、少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び反応用緩衝液が混合されたものとして、SYBR(登録商標) Premix Ex TagTM(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)等の市販品が挙げられる。
【0048】
また、本発明のキットには、逆転写反応を行うための試薬がさらに含有されていても良い。このような試薬としては、逆転写酵素、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドプライマー、少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び/又は反応用緩衝液が挙げられる。なお、ここでいうプライマーとしては、逆転写用に好適に用いられるものが挙げられ、特に限定はない。
【0049】
本発明のキットに含まれる耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性リボヌクレアーゼ H、インターカレーティング色素、逆転写酵素、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドプライマー、少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び反応用緩衝液としては、前記の(1)「本発明の組成物」や(2)「本発明の方法」に記載のものが例示される。
【0050】
本発明の組成物は、cDNA合成の鋳型となったRNAによる核酸増幅反応への影響を抑えることができるため、RNAの検出に有用であり、さらには、RNAを検出し、その定量を行うために使用されてもよい。また、目的の配列を有するRNAのリアルタイムRT−PCRによる定量により有用である。
【実施例】
【0051】
以下に実施例をもってさらに詳細に本発明を説明するが、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。なお、下記実施例において各酵素の活性は、特段の記載がない限り各酵素に添付の説明書の表示に基づいて示した。
【0052】
実施例1
(1)RNAからのcDNAの合成
Human Testis Total RNA(Clontech社製)を鋳型として、PrimeScript(登録商標)RT reagent Kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製、製品コード:RR037A)を利用し、製品の標準プロトコールに従い逆転写反応を行い、cDNAを調製した。
【0053】
(2)cDNAの増幅及び検出
リアルタイムPCR装置としては、Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time System (タカラバイオ社製)を用いた。逆転写反応により得られたcDNAのうち20ng分を鋳型に、SYBR(登録商標) Premix Ex TagTM(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製、製品コード:RR041)を使用して、Apolipoprotein E(APOE)遺伝子の配列を増幅・検出した。具体的には、cDNAの増幅及び検出用の反応液として、(1)により得られたcDNA 20ngに、Premix Ex TagTM(登録商標)(Perfect Real Time)に添付の2倍濃度の反応液に、配列表の配列番号1に示される塩基配列を有するAPOE−Fプライマー 10pmol、配列表の配列番号2に示される塩基配列を有するAPOE−Rプライマー 10pmol、及び滅菌蒸留水を添加し、さらに、0.0001U、0.001U、0.01U、0.1U、1U、10U、又は100UのThermococcus litralis由来リボヌクレアーゼ H(以下、Tli RNase Hという、国際公開第02/22831号パンフレットの記載に従って調製)を添加したものを加え、Tli RNase Hの含有量がそれぞれ異なる7種類の反応液(各25μL)を調製した。また、Tli RNase Hを含まない以外は上記の反応液と同様の組成を持つ反応液を調製した(計25μL)。上記8種類の反応液について、1段階:95℃、5秒、2段階:60℃、30秒を1Cycleとする40CyclesのPCRに供した(n=2)。このとき、PCRのCycleごとに、SYBR(登録商標) GreenIからの蛍光強度を測定し、増幅産物量の変化を観測した。反応終了後、リアルタイム装置により、Auto設定でCrossing Point法により算出されたCt値を確認し、また、平均値を求めた。
【0054】
(3)結果
算出されたCt値を表1に示す。また、PCR反応液中のRNase H量とCt値との関係を図1のグラフに示す。
【0055】
【表1】
【0056】
その結果、RNase H無添加の場合と比較し、Tli RNase Hを含む反応液では低いCt値であった。このことから、逆転写反応によって合成されたcDNAを鋳型とするPCRの際に、反応液中に耐熱性RNase Hを添加することにより増幅効率が向上することが明らかとなった。
【0057】
実施例2
実施例1と同様の装置及び試薬を使用し、熱変性をPCR核酸増幅前に行った場合についても、RNase Hを添加することでCt値が低下することを確認した。
【0058】
実施例1(1)と同様の方法で調製したcDNA 10ngに、Premix Ex TaqTM(登録商標)(Perfect Real Time)に添付の2倍濃度の反応液に、APOE−Fプライマー 10pmol、APOE−Rプライマー 10pmol、及び滅菌蒸留水を添加し、さらに、1UのTli RNase Hを加えたものを添加して、計25μLのAPOE遺伝子断片の増幅及び検出用反応液を調製した。また、APOE−Fプライマー及びAPOE−Rプライマーの代わりに、配列表の配列番号3に示される塩基配列を有するSOX−Fプライマー及び配列表の配列番号4に示される塩基配列を有するSOX−Rプライマーを用いる以外は上記と同様の方法で、Sex−Determining Region Y Box 18(SOX18)遺伝子断片の増幅及び検出用反応液を調製した。同様に、APOE−Fプライマー及びAPOE−Rプライマーの代わりに、配列表の配列番号5に示される塩基配列を有するNAT−Fプライマー及び配列表の配列番号6に示される塩基配列を有するNAT−Rプライマーを用いてN−acetyltransferase 14(NAT14)遺伝子断片の増幅及び検出用反応液を調製した。また、1UのTli RNase Hを含まない以外は上記の各反応液と同様の組成を持つ各標的配列の増幅及び検出用の反応液を調製した。
【0059】
上記6種類の反応液それぞれについて、PCR前に熱変性を実施しない場合と、PCR前に熱変性を実施する場合の増幅効率を確認した。PCR反応前に熱変性を実施しない場合は、1段階:95℃、5秒、2段階:60℃、30秒を1Cycleとする40CyclesのPCRに反応液を供し、PCR前に熱変性を実施する場合は、熱変性95℃、30秒の処理後に1段階:95℃、5秒、2段階:60℃、30秒を1Cycleとする40CyclesのPCRに反応液を供した(各n=1)。PCRの際には、CycleごとにSYBR(登録商標) GreenIからの蛍光強度を測定して増幅産物量の変化を観測した。反応終了後、リアルタイム装置によりAuto設定でCrossing Point法により算出されたCt値を確認した。算出されたCt値を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
その結果、PCRの反応前に熱変性を実施した場合においても、RNase Hを添加することにより更に反応効率が向上することが分かった。この結果から、逆転写反応後のcDNAと逆転写反応の鋳型となったRNAとで形成されるDNA/RNAハイブリッドを、熱変性により核酸増幅反応前に解消した場合であっても、PCR反応液中の耐熱性RNase Hが効果を示すことが明らかとなった。
【0062】
実施例3
Tli RNaseHの代わりにHybridaseTM(登録商標) Thermostable RNase H(以下、Hybridaseという、Epicentre社製、Thermus属細菌由来耐熱性RNase H)を用いる点、RNase H量を反応液25μL当り0.0001U、0.001U、0.01U、0.1U、及び1Uとする点、並びに95℃、30秒間の初期変性をPCRの前に実施する点以外は、実施例1と同様の方法でcDNAの増幅及び検出を行い、Ct値を確認した。
【0063】
算出されたCt値を表3に示す。また、反応液中のRNase H量とCt値との関係を図2に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
その結果、耐熱性RNase HとしてThermus属細菌由来のものを用いた場合も、RNase Hの添加による核酸増幅効率の向上が見られた。
【0066】
なお、本発明の態様として、以下のものが挙げられる。

〔1〕 逆転写反応によって合成されたcDNAを増幅し、前記逆転写反応の鋳型となったRNAを検出するための組成物であって、
耐熱性DNAポリメラーゼ、
耐熱性リボヌクレアーゼ H、及び
インターカレーティング色素
を含有してなる組成物。
〔2〕 耐熱性DNAポリメラーゼが高度好熱菌由来のDNAポリメラーゼである、〔1〕記載の組成物。
〔3〕 耐熱性リボヌクレアーゼ Hが高度好熱菌由来のリボヌクレアーゼ Hである、〔1〕記載の組成物。
〔4〕 高度好熱菌由来のリボヌクレアーゼ Hが、Thermus属細菌由来リボヌクレアーゼ H、及び/又はThermococcus属古細菌由来のリボヌクレアーゼ Hである、〔3〕記載の組成物。
〔5〕 さらに、
少なくとも1種のオリゴヌクレオチドプライマー、
少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び
反応用緩衝液
からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有してなる〔1〕記載の組成物。
〔6〕 逆転写反応の鋳型となったRNAを検出し、さらに定量するために使用される、〔1〕〜〔5〕いずれか記載の組成物。
〔7〕 RNAを検出するための方法であって、
(A)逆転写酵素、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドプライマー、少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び逆転写反応の鋳型となるRNAを含有する組成物を調製する工程、
(B)工程(A)で調製した組成物をインキュベーションし、cDNAを合成する工程、
(C)工程(B)で合成したcDNA、耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性リボヌクレアーゼ H、及びインターカレーティング色素を含有する組成物を調製する工程、
(D)工程(C)で調製した組成物を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い、核酸を増幅する工程、並びに
(E)工程(D)において増幅された核酸を、インターカレーティング色素からの蛍光シグナルの強度を測定することによって検出する工程、
を含む方法。
〔8〕 工程(E)が工程(D)におけるポリメラーゼ連鎖反応中に実施される、〔7〕記載の方法。
〔9〕 さらに、(F)工程(E)で測定されたシグナル強度から鋳型となるRNAの定量を行う工程を含む、〔7〕又は〔8〕記載の方法。
〔10〕 RNAを検出するためのキットであって、
耐熱性DNAポリメラーゼ、
耐熱性リボヌクレアーゼ H、及び
インターカレーティング色素
を含有してなるキット。
〔11〕 耐熱性DNAポリメラーゼが高度好熱菌由来のDNAポリメラーゼである、〔10〕記載のキット。
〔12〕 耐熱性リボヌクレアーゼ Hが高度好熱菌由来のリボヌクレアーゼ Hである、〔10〕記載のキット。
〔13〕 高度好熱菌由来のリボヌクレアーゼ Hが、Thermus属細菌由来リボヌクレアーゼ H、及び/又はThermococcus属古細菌由来のリボヌクレアーゼ Hである、〔12〕記載のキット。
〔14〕 さらに、逆転写酵素、
少なくとも1種のプライマー、
少なくとも1種のデオキシリボヌクレオチド、及び
反応用緩衝液
からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有してなる〔10〕〜〔13〕いずれか記載のキット。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の組成物、該組成物を用いるRNAの検出方法、及びRNAの検出用キットは、広く遺伝子工学の分野に有用である。なかでも、本発明によりcDNA合成の鋳型となったRNAによる核酸増幅反応への影響を抑えることができるため、RNAの検出に有用であり、また、目的の配列を有するRNAのリアルタイムRT−PCRによる定量により有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0068】
SEQ ID NO:1 ;Primer to amplify the cDNA fragment of human APOE gene.
SEQ ID NO:2 ;Primer to amplify the cDNA fragment of human APOE gene.
SEQ ID NO:3 ;Primer to amplify the cDNA fragment of human SOX18 gene.
SEQ ID NO:4 ;Primer to amplify the cDNA fragment of human SOX18 gene.
SEQ ID NO:5 ;Primer to amplify the cDNA fragment of human NAT14 gene.
SEQ ID NO:6 ;Primer to amplify the cDNA fragment of human NAT14 gene.
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]