特許第6029644号(P6029644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029644
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/10 20060101AFI20161114BHJP
   B43K 7/12 20060101ALI20161114BHJP
   B43K 29/02 20060101ALI20161114BHJP
   B43K 24/12 20060101ALN20161114BHJP
【FI】
   B43K24/10
   B43K7/12
   B43K29/02 D
   !B43K24/12
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-249073(P2014-249073)
(22)【出願日】2014年12月9日
(62)【分割の表示】特願2013-273692(P2013-273692)の分割
【原出願日】2008年2月29日
(65)【公開番号】特開2015-83383(P2015-83383A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2014年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2007-54868(P2007-54868)
(32)【優先日】2007年3月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大池 茂
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−139080(JP,A)
【文献】 特開2006−123324(JP,A)
【文献】 特開2007−30239(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/105227(WO,A1)
【文献】 LOOK UP 2001/2001年パイロット総合カタログ,日本,株式会社パイロット,2001年 1月 1日,p.106,120
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱変色性インキを内蔵した熱変色性筆記具であって、軸筒内に少なくとも1本の筆記用芯体と少なくとも1本の摩擦用芯体とを前後方向に移動可能に収容し、前記筆記用芯体が、ペン先と、前記ペン先を前端に備え且つ内部に熱変色性インキが収容されたインキ収容管とからなり、前記ペン先が、前端にボールが回転可能に抱持されるとともに前記ボールがボール用弾発体により前方に付勢され且つ内向きの前端縁部内面に密接されるボールペンチップよりなり、前記筆記用芯体の内部に発色状態において、透明、白色、灰色、及び淡色以外の色を呈し、加熱により前記発色状態から無色に熱変色する熱変色性インキを収容し、前記熱変色性インキが、低温側変色点が−30℃〜−10℃、高温側変色点が60℃〜80℃である可逆熱変色性インキであり、前記筆記用芯体の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先を設け、前記摩擦用芯体の前端に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低摩耗性の軟質材料からなるチップを設け、前記筆記用芯体のペン先と前記摩擦用芯体のチップを択一的に軸筒の前端孔から出没可能にする出没機構を備え、前記ペン先が突出した状態で、前記軸筒の前端部により前記筆記用芯体の前記ペン先の外面又はペン先近傍外面を支持し、前記チップが突出した状態で、前記軸筒の前端部により前記チップの外面又はチップ近傍外面を支持するとともに、前記筆記用芯体と前記摩擦用芯体が、前記軸筒内に交換可能に収容されてなり、
前記摩擦用芯体が、前記チップと、該チップを前端に備える硬質材料よりなる軸部とからなり、前記摩擦用芯体のチップが、略円柱形状の前部と、軸部内径より大きい外径を有する中間部と、略円柱形状の後部とからなり、前記中間部が前記軸部の前端に当接し、前記後部が前記軸部の前端開口部に圧入されてなることを特徴とする熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記前端孔を有する軸筒の前端部が透明な硬質材料よりなる請求項1記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱変色性インキを内蔵した熱変色性筆記具において、特許文献1には、熱変色性インキによる筆跡を摩擦熱で熱変色させるための摩擦体を、キャップの頂部に設ける構成や、軸胴の後端に設ける構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−148744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の熱変色性筆記具は、キャップ式であるため、キャップの着脱動作を両手で行なう必要があり、片手しか使用できない場合、迅速に筆記可能状態または保管状態にすることが困難である。また、前記従来の熱変色性筆記具は、摩擦体を軸胴の後端に設ける構成の場合、筆記後、熱変色性インキによる筆跡を摩擦変色する際に、軸胴の把持箇所をペン先側から後端側に反転させ、軸胴を大きく持ち替える必要あり、迅速に摩擦変色作業に移行できない。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、片手しか使用できない場合でも、迅速に筆記可能状態(ペン先突出状態)または保管状態(ペン先没入状態)にすることができるとともに、筆記後、軸筒を片手に把持した状態のまま、軸筒を大きく持ち替えることなく、迅速に摩擦変色作業に移行できる、熱変色性インキを内蔵した熱変色性筆記具を提供しようとするものである。また、本発明は、軸筒内に収容する前における他の筆記用芯体との識別が容易となる筆記用芯体レフィルを提供しようとするものである。また、本発明は、軸筒内に収容する前における筆記用芯体との識別が容易となる、前記熱変色性筆記具に用いる摩擦用芯体レフィルを提供しようとするものである。
【0006】
尚、本発明で、「前」とは、ペン先及びチップが突出する側を指し、「後」とは、その反対側を指す。また、本発明で、「ペン先没入状態」とは、ペン先が軸筒内に没入した状態をいい、「ペン先突出状態」とは、ペン先が軸筒の前端より外部に突出した状態をいう。また、本発明で、「チップ没入状態」とは、チップが軸筒内に没入した状態をいい、「チップ突出状態」とは、チップが軸筒の前端より外部に突出した状態をいう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の発明は、熱変色性インキを内蔵した熱変色性筆記具であって、軸筒2内に少なくとも1本の筆記用芯体6と少なくとも1本の摩擦用芯体7とを前後方向に移動可能に収容し、前記筆記用芯体6の内部に熱変色性インキ63を収容し、前記筆記用芯体6の前端に前記熱変色性インキ63が吐出可能なペン先61を設け、前記摩擦用芯体7の前端に、前記熱変色性インキ63の筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能なチップ71を設け、前記筆記用芯体6のペン先61と前記摩擦用芯体7のチップ71を択一的に軸筒の前端孔31から出没可能にする出没機構を備えたことを要件とする。
【0008】
前記第1の発明の熱変色性筆記具1は、前記筆記用芯体6のペン先61と前記摩擦用芯体7のチップ71(即ち複数の芯体の中から1本の芯体のペン先61またはチップ71)を択一的に軸筒2の前端孔31から出没可能にしたことにより、片手で迅速に筆記可能状態(ペン先突出状態)または保管状態(ペン先没入状態)にすることができるとともに、筆記後、その熱変色性インキ63による筆跡を摩擦変色する際に、軸筒2を片手に把持した状態のまま、軸筒2を大きく持ち替えることなく、チップ突出状態にでき、迅速に摩擦変色作業に移行できる。前記筆記用芯体6は、少なくとも1本(即ち1本または複数本)が軸筒2内に収容され、前記摩擦用芯体7は、少なくとも1本(即ち1本または複数本)が軸筒2内に収容される。
【0009】
前記第1の発明において、前記出没機構は、軸筒2内に設けられる。前記出没機構は、操作部81の押圧または回転等の操作によりペン先61とチップ71を択一的に出没させるものである。前記操作部81は、軸筒2の後端や軸筒2の側壁に設けられる。前記操作部81は、熱変色性筆記具1を片手で把持した状態で、その把持した手によって、操作可能である。
【0010】
前記出没機構は、例えば、前記操作部81を軸筒2の後端より後方に突設させ、前記操作部81を前方に押圧操作することにより、ペン先61またはチップ71を前端孔31より外部に突出させる構成(いわゆる後端ノック式)、前記操作部81を軸筒2側壁より径方向外方に突設させ、前記操作部81を前方に押圧操作することにより、ペン先61またはチップ71を前端孔31より外部に突出させる構成(いわゆるサイドスライド式)、前記操作部81を軸筒2側壁より径方向外方に突設させ、前記操作部81を筆記用芯体6の径方向内方に押圧操作することにより、ペン先61またはチップ71を前端孔31より外部に突出させる構成(いわゆるサイドノック式)、または、軸筒2の後部に設けた操作部81を軸筒2の前部に対して回転させることによりペン先61またはチップ71を前端孔31より外部に突出させる構成(いわゆる回転式)等を挙げることができる。尚、前記ペン先61は、例えば、ボールペンチップ、繊維束の樹脂加工体、繊維束の熱融着加工体、フェルト加工体、パイプ状ペン体、先端にスリットを有する万年筆型板状ペン体、毛筆ペン体、合成樹脂の多孔質気泡体、軸方向のインキ誘導路を有する合成樹脂の押出成形体等が挙げられる。
【0011】
本願の第2の発明は、前記第1の発明において、前記筆記用芯体6が、ペン先61と、前記ペン先61を前端に備え且つ内部に熱変色性インキ63が収容されたインキ収容管62とからなり、前記ペン先61が、前端にボールが回転可能に抱持されるとともに前記ボールがボール用弾発体65により前方に付勢され且つ内向きの前端縁部内面に密接されるボールペンチップ71よりなり、前記摩擦用芯体7が、軟質材料よりなるチップ71と、該チップ71を前端に備える硬質材料よりなる軸部72とからなることを要件とする。
【0012】
前記第2の発明の熱変色性筆記具1は、筆記用芯体6のペン先61が、ボール用弾発体65により前方に付勢されたボールが内向きの前端縁部内面に密接される構成であるため、非筆記時において、筆記用芯体6のペン先61からのインキの蒸発及びインキの漏出を防止できる。また、前記第2の発明の熱変色性筆記具1は、摩擦用芯体7が、軟質材料よりなるチップ71と、該チップ71を前端に備える硬質材料よりなる軸部72とからなることにより、摩擦熱を容易に発生させ迅速に熱変色性インキ63による筆跡を変色させることができると同時に、摩擦用芯体7のチップ71の安定した出没作動が得られる。
【0013】
本願の第3の発明は、前記第1または第2の発明において、前記筆記用芯体6を後方に付勢する弾発体21と、前記摩擦用芯体7を後方に付勢する弾発体21とを軸筒2内に収容し、前記筆記用芯体6の後端に操作体8を連結し、前記摩擦用芯体7の後端に操作体8を連結し、前記軸筒2の側壁に前後方向に延びる複数の窓孔41を径方向に貫設し、前記各々の窓孔41から径方向外方に前記各々の操作体8を突出させ、一つの操作体8を窓孔41に沿って前方にスライドさせることにより、その一つの操作体8に対応した筆記用芯体6のペン先61または摩擦用芯体7のチップ71を軸筒2の前端孔31から外部に突出させるとともに、先に突出状態にあった筆記用芯体6のペン先61または摩擦用芯体7の
チップ71を軸筒2内に没入させてなる出没機構を備え、前記筆記用芯体6の後端に連結した操作体8が、その筆記用芯体6内に収容される熱変色性インキ63の発色状態の色を呈する表示部を備え、前記摩擦用芯体7の後端に連結した操作体8が、軸筒2内に収容される筆記用芯体6の表示部の色以外の色を呈する表示部を備え、前記各々の表示部が外部より視認可能に構成されることを要件とする。
【0014】
前記第3の発明の熱変色性筆記具1は、摩擦用芯体7を使用する際、摩擦用芯体7の表示部を容易に識別でき、筆記用芯体6と間違えることなく、確実に、摩擦用芯体7のチップ71を軸筒2の前端孔31から外部に突出させることができる。
【0015】
本願の第4の発明は、前記第3の発明において、筆記用芯体6内に収容される熱変色性インキ63が、発色状態において、透明、白色、灰色、及び淡色以外の色を呈し、前記筆記用芯体6の後端に連結した操作体8が、その筆記用芯体6内に収容される熱変色性インキ63の発色状態の色を呈する表示部を備え、前記摩擦用芯体7の後端に連結した操作体8が、透明、白色、灰色、または淡色のいずれかを呈する表示部を備えることを要件とする。
【0016】
筆記用芯体6の後端に連結した操作体8の表示部が、透明、白色、灰色、及び淡色以外の色(即ち透明、白色、灰色、及び淡色ではない色)を呈し、摩擦用芯体7の後端に連結した操作体8の表示部が、透明、白色、灰色、または淡色のいずれかを呈することにより、摩擦用芯体7を使用する際、摩擦用芯体7の表示部を容易に識別でき、筆記用芯体6と間違えることなく、より確実に、摩擦用芯体7のチップ71を軸筒2の前端孔31から外部に突出させることができる。尚、本発明で、淡色とは、その色による筆跡を目視により容易に確認できない程度の淡い色をいう。尚、前記透明、白色、灰色、及び淡色以外の色とは、例えば、黒、青、赤、黄、緑、橙、紫、紺、ピンク、水色等が挙げられる。前記透明は、例えば、無色透明、または、白色、灰色もしくは黒味を帯びた有色透明等が挙げられる。前記摩擦用芯体7の表示部は、白色または灰色(即ち、黒色を除く無彩色)が好ましい。
【0017】
本願の第5の発明は、前記第1、第2、第3、または第4の発明において、前記前端孔31を有する軸筒2の前端部が透明な硬質材料よりなり、前記摩擦用芯体7のチップ71が軟質材料よりなり、前記チップ71が前端孔31から出没する際、前記チップ71が前端孔31内面を摺動することを要件とする。
【0018】
前記第5の発明の熱変色性筆記具1は、チップ71の出没時の摺動により、前端孔31内面に付着した熱変色性インキ63を除去、または摩擦熱で有色から無色に変化する熱変色性インキ63を消去(無色化)することができ、軸筒2の前端部の見栄えが損なわれるおそれがない。前記硬質材料よりなる前端孔31を有する軸筒2の前端部は、ペン先61が前端孔31より外部に突出された状態(即ち筆記時)のペン先61の外面または筆記用芯体6のペン先61近傍外面を支持し、且つ、チップ71が前端孔31より外部に突出された状態(即ち摩擦変色時)のチップ71の外面または摩擦用芯体7のチップ71近傍外面を支持する。特に、前記前端孔31を有する軸筒2の前端部により、軟質材料よりなるチップ71の外面が支持され、摩擦変色時のチップ71のぐらつきが効果的に抑えられる。前記前端部を構成する硬質材料は、例えば、ポリカーボネイト、ポリプロプレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂が採用される。
【0019】
本願の第6の発明は、軸筒2内に少なくとも1本(即ち1本または複数本)の筆記用芯体6を前後方向に移動可能に収容し、前記筆記用芯体6の内部に熱変色性インキ63を収容し、前記筆記用芯体6の前端に前記熱変色性インキ63が吐出可能なペン先61を設け、前記筆記用芯体6のペン先61を軸筒2の前端孔31から出没可能にする出没機構を備えた熱変色性筆記具1に用いる筆記用芯体レフィルであって、ペン先61と、該ペン先61を前端に備え且つ内部に熱変色性インキ63が収容されたインキ収容管62と、該インキ収容管62の後端に連結され、使用時、軸筒2の側壁より突出され、前方にスライド操作することにより軸筒2の前端孔31からペン先61を突出させる操作体8とからなり、前記操作体8が、前記熱変色性インキ63の発色状態の色を呈する、外部より視認可能な表示部を備えることを要件とする。
【0020】
前記第6の発明の筆記用芯体レフィルは、操作体8の表示部を外部より視認することによって、軸筒2内に収容する前における他の筆記用芯体(または他の筆記用芯体レフィル)との識別が容易となる。尚、前記筆記用芯体レフィルの操作部8の表示部の色(即ち熱変色性インキの発色状態の色)は、例えば、黒、青、赤、黄、緑、橙、紫、紺、ピンク、水色等が挙げられる。
【0021】
本願の第7の発明は、軸筒2内に少なくとも1本(即ち1本または複数本)の筆記用芯体6と少なくとも1本(即ち1本または複数本)の摩擦用芯体7とを前後方向に移動可能に収容し、前記筆記用芯体6の内部に熱変色性インキ63を収容し、前記筆記用芯体6の前端に前記熱変色性インキ63が吐出可能なペン先61を設け、前記摩擦用芯体7の前端に、前記熱変色性インキ63の筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能なチップ71を設け、前記筆記用芯体6のペン先61と前記摩擦用芯体7のチップ71を択一的に軸筒2の前端孔31から出没可能にする出没機構を備えた熱変色性筆記具1に用いる摩擦用芯体レフィルであって、軟質材料よりなるチップ71と、該チップ71を前端に備える硬質材料よりなる軸部72と、該軸部72の後端に連結され、使用時、軸筒2の側壁より突出され、前方にスライド操作することにより軸筒2の前端孔31からチップ71を突出させる操作体8とからなり、前記操作体8が、透明、白色、灰色、または淡色のいずれかを呈する、外部より視認可能な表示部を備えることを要件とする。
【0022】
前記第7の発明の摩擦用芯体レフィルは、操作体8の表示部を外部より視認することによって、軸筒2内に収容する前における筆記用芯体6(または筆記用芯体レフィル)との識別が容易となる。
【0023】
・チップ
尚、本発明で、前記チップ71を構成する軟質材料とは、弾性を有する樹脂(ゴム、エラストマー)が挙げられ、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記チップ71を構成する軟質材料は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、低摩耗性の弾性材料からなるものが、磨耗屑が生じない点で有効である。
【0024】
・熱変色性インキ
尚、本発明で、前記熱変色性インキ63は、可逆熱変色性インキが好ましい。前記可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態又は消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、又は、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独又は併用して構成することができる。
【0025】
また、前記可逆熱変色性インキに含有される可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、従来より公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させたものが有効である。
【0026】
本発明の熱変色性インキ63に適用される可逆熱変色性組成物は、図8に示すように、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t〜tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で記憶保持できる色彩記憶保持型熱変色性組成物が適用されることが好ましい。図8において、ΔHは、ヒステリシスの程度を示す温度幅(即ちヒステリシス幅)を示す。ΔHの値が小さいと、変色前後の両状態のうち一方の状態しか存在しえない。ΔHの値が大きいと、変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0027】
前記実質的二相保持温度域は、目的に応じて設定できるが、本発明では、前記高温側変色点〔完全消色温度(t)〕を、25℃〜95℃(好ましくは、36℃〜90℃)の範囲に設定し、前記低温側変色点〔完全発色温度(t)〕を、−30℃〜+20℃(好ましくは、−30℃〜+10℃)の範囲に設定することが有効である。それにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができると共に、可逆熱変色性インキによる筆跡をチップ71による摩擦熱で容易に変色することができる。
【0028】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、粒子径の平均値が0.5〜5.0μm、好ましくは1〜4μmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が5.0μmを越える系では、ボールペンチップ71やマーキングペンチップ71の毛細間隙からの流出性が低下し、平均粒子径が0.5μm未満の系では高濃度の発色性を示し難くなる。
【0029】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、インキ組成物全量に対し、2〜50重量%(好ましくは3〜40重量%、更に好ましくは、4〜30重量%)配合することができる。2重量%未満では発色濃度が不充分であり、50重量%を越えるとインキ流出性が低下し、筆記性が阻害される。
【0030】
前記熱変色性インキ63は、摩擦熱により有色から無色に変化するインキが有効である。それにより、熱変色性インキ63よりなる有色の筆跡を、摩擦用芯体7のチップ71の摩擦による摩擦熱で前記筆跡を無色化でき、その無色状態の被筆記面に、再度筆記することにより、熱変色性インキ63よりなる有色の筆跡を形成することができる。これは、ユーザーに、あたかも、鉛筆芯によりなる筆跡を消しゴムで消去し、その後、その被筆記面に再度筆記するような感覚を与える。具体的には、前記熱変色性インキ63は、加熱により有色状態から無色状態に変化し、冷却により無色状態から有色状態に変化する可逆熱変色性インキが有効である。尚、本発明の熱変色性インキ63は、マイクロカプセル中またはインキ中に非熱変色性の着色剤(染料、顔料等)を配合することにより、摩擦熱により有色からその有色とは異なる有色に変化するインキを採用することもできる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、片手しか使用できない場合でも、迅速に筆記可能状態及び保管状態にすることができるとともに、筆記後、軸筒を片手に把持した状態のまま、軸筒を大きく持ち替えることなく、迅速に摩擦変色作業に移行できる、熱変色性インキを内蔵した熱変色性筆記具を提供できる。
【0032】
本発明は、軸筒内に収容する前における他の筆記用芯体(または他の筆記用芯体レフィル)との識別が容易となる筆記用芯体レフィルを提供できる。
【0033】
本発明は、軸筒内に収容する前における筆記用芯体(または筆記用芯体レフィル)との識別が容易となる摩擦用芯体レフィルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の熱変色性筆記具の実施の形態のペン先及びチップの両方が没入した状態(保管状態)を示す縦断面図である。
図2図1の熱変色性筆記具のペン先が突出した状態(筆記時)を示す縦断面図である
図3図1の熱変色性筆記具のチップが突出した状態(摩擦変色時)を示す縦断面図である
図4図1の熱変色性筆記具の後端の開口部を閉鎖した状態を示す側面図である。
図5図1の熱変色性筆記具の後端の開口部を開放した状態を示す側面図である。
図6図1の筆記用芯体の後端に操作体が連結した状態(即ち筆記用芯体レフィル)を示す縦断面図である。
図7図1の摩擦用芯体の後端に操作体が連結した状態(即ち摩擦用芯体レフィル)を示す縦断面図である。
図8】可逆熱変色性組成物の変色挙動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1乃至図7に本発明の実施の形態を示す。
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、軸筒2内に、1本の筆記用芯体6と1本の摩擦用芯体7の各々が前後方向(軸方向)に移動可能に収容されている。前記筆記用芯体6、摩擦用芯体7の各々は、弾発体21(具体的には圧縮コイルスプリング)により、後方に付勢されている。
【0036】
・軸筒
前記軸筒2は、先細状の円筒体からなる前軸3と、該前軸3の後端部と螺合または圧入により取り付けられる円筒状の後軸4とからなる。前記前軸3の前端には、筆記用芯体6のペン先61及び摩擦用芯体7のチップ71が突出可能な前端孔31が軸方向に貫設される。前記前軸3及び後軸4は、透明な合成樹脂(例えば、ポリカーボネイト等)の射出成形により得られる。尚、前記軸筒2(前軸3及び後軸4)は、金属により形成してもよい。
【0037】
前記後軸4の後部の側壁には、軸筒2内に収容する筆記用芯体6及び摩擦用芯体7の本数に応じた複数(ここでは2本)の前後方向に延びる細長状の窓孔41が、径方向に貫設される。また、前記後軸4の後端部には、軸方向に貫通し且つ径方向外方に開口する開口部42が形成される。前記開口部42は、後軸4の後端(即ち軸筒2の後端)において窓孔41と連通され、それにより、窓孔41後端が後方に切り欠かれ後方に開口されている。一方、前記窓孔41の前端は常時閉鎖されている。
【0038】
また、前記後軸4の窓孔41の相互間の側壁内面には、前後方向に延びるリブよりなる係止壁部43が形成され、前記係止壁部43に、ペン先61またはチップ71が突出した際のその突出したペン先61またはチップ71に対応した操作体8の後端が係止される。
【0039】
前記後軸4の窓孔41の相互間の側壁外面には、クリップ44が設けられる。
【0040】
ペン先61が軸筒2の前端より外部に突出した状態(筆記時)において、前端孔31内面がペン先61の径方向外面を支持し、チップ71が軸筒2の前端より外部に突出した状態(摩擦変色時)において、前端孔31内面がチップ71の径方向外面を支持する。前記前端孔31を備える軸筒2の前端部は、軸筒2(前軸3)と一体に形成されるため、軸筒2と同じ硬質材料(例えば、ポリカーボネイト樹脂)によって構成される。
【0041】
・蓋部
前記後軸4の後端部には、前記開口部42を開閉自在にする蓋部5が回動自在に設けられる。前記蓋部5の一端部は、クリップ44基部に、ヒンジ部52により回動自在に取り付けられる。前記蓋部5の前面には、当接壁部51が形成される。前記当接壁部51に、ペン先没入状態の筆記用芯体6の後端に連結された操作体8の後端、及びチップ没入状態の摩擦用芯体7の後端に連結された操作体8の後端が当接される。
【0042】
前記蓋部5の他端部の前面には、凹部または孔部からなる係合部53が設けられる。軸筒2(後軸4)の後端には、前記係合部53と係合可能な凸部からなる被係合部45が設けられる。前記係合部53の内面には、内向突起が形成され、一方、前記被係合部45の外面には、前記内向突起と乗り越え係止可能な外向突起が形成される。
【0043】
前記係合部53と前記被係合部45とは、蓋部5が開口部42を閉鎖した際、互いに係合状態にあり(具体的には内向突起と外向突起が乗り越え係止状態にあり)、弾発体21の後方への付勢による操作体8と蓋部5前面の当接壁部51との当接では、その係合状態は解除されず、蓋部5が開くことはない。
【0044】
・筆記用芯体
前記筆記用芯体6は、ボールペンレフィルであり、前端にボールが回転可能に抱持されたボールペンチップ(即ちペン先61)と、該ボールペンチップを前端に備え且つ後端が開口されたインキ収容管62とからなる。前記インキ収容管62の内部には、剪断減粘性を有する水性ゲルよりなる熱変色性インキ63が収容される。前記インキ収容管62内の熱変色性インキ63の後端には、該インキの消費に伴い前進する高粘度流体からなる追従体64が充填される。
【0045】
前記ペン先61は、前端に回転可能に抱持されたボールを備えるボールペンチップからなる。前記ペン先61の内部には、前端のボールを前方に押圧するボール用弾発体65が収容される。前記ボール用弾発体65は、圧縮コイルスプリングの前端部にロッド部を備えた構成であり、前記ロッド部の前端がボール後面に接触している。非筆記時、前記ボール用弾発体65の前方付勢によりボールがボールペンチップ前端の内向きの前端縁部内面に密接され、ペン先61の前端からのインキの漏出及びインキの蒸発を防止できる。また、ボールペンチップは、インキ収容管62の前端開口部に圧入等により直接、取り付けてもよいが、本実施の形態ではペン先ホルダーを介してインキ収容管62の前端開口部に固着される。
【0046】
前記熱変色性インキ63は、低温側変色点(完全発色温度t)が−30℃〜−10℃の範囲の任意の温度に設定され、高温側変色点(完全消色温度t)が60℃〜80℃の範囲の任意の温度に設定され、ヒステリシス幅ΔHが40℃〜60℃の範囲を示す可逆熱変色性組成物を有するインキが採用される。前記熱変色性インキ63は、発色状態において、透明、白色、灰色、及び淡色以外の色を呈する。前記熱変色性インキ63は、発色状態において、例えば、黒、青、赤、黄、緑、橙、紫、紺、ピンク、水色等を呈する。前記熱変色性インキ63は、消色状態において、無色となる。
【0047】
・摩擦用芯体
摩擦用芯体7は、チップ71と、該チップ71が前端に取り付けられる軸部72とからなる。前記軸部72は、筆記用芯体6のインキ収容管62と同一の円筒状の部材が採用されている。前記チップ71は、軟質材料(例えば、SBS樹脂、SEBS樹脂)よりなる。前記軸部72は、硬質材料(例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂、またはステンレス鋼等の金属)よりなる。前記チップ71は、軸部72に直接、取り付けられるか、または、チップホルダー等の別部材を介して軸部72に取り付けられる。また、前記チップ71の軸部72からの突出量を調節するために、軸部72内に繰り出し機構を設けることもできる。
【0048】
・チップ
前記チップ71は、略円柱形状の前部と、軸部72内径より大きい外径を有する中間部と、略円柱形状の後部とからなる。前記後部が軸部72の前端開口部に圧入される。前記中間部が軸部72の前端に当接される。前記チップ71の前端は球面状の丸みを有する。それにより、摩擦変色時、チップ71前端と被筆記面との円滑な接触が可能となるとともに、チップ71前端と被筆記面との適正な接触面積が得られることにより摩擦熱の発生が容易となる。前記チップ71の前端は、これ以外にも、チゼル形状、砲弾形状、円柱形状、円錐形状、角柱形状、角錐形状等であってもよい。尚、前記チップ71は、チップ出没時、前端孔31内面と摺動する。
【0049】
・操作体
前記筆記用芯体6の後端(即ちインキ収容管62の後端開口部)と前記摩擦用芯体7の後端(即ち軸部72の後端開口部)の各々には、操作体8が取り付けられる。前記各々の操作体8は、後端部に形成され且つ軸筒2の窓孔41から外部に突出する操作部81と、該操作部81の反対側に設けられる後側突出部83と、該操作部81の反対側の後側突出部83の前方に設けられる前側突出部82と、前端部に形成され且つインキ収容管62の後端開口部に嵌入される嵌入部84と、該嵌入部84の後方に形成される鍔部85とを備える。前記嵌入部84は、インキ収容管62の後端開口部に嵌入された際、インキ収容管62の後端開口部を完全には塞がず、インキ収容管62の内部と外部とを通気可能にする。また、前記鍔部85の前面には、弾発体21の後端が係止される。前記筆記用芯体6の後端に操作体8を連結することによって筆記用芯体レフィルが構成される(図6参照)。前記摩擦用芯体7の後端に操作体8を連結することによって摩擦用芯体レフィルが構成される(図7参照)。
【0050】
筆記用芯体6のペン先61が没入状態のとき(図1及び図3参照)、その筆記用芯体6に取り付けられた操作体8の後端部は、蓋部5の前面に形成された当接壁部51に当接される。一方、筆記用芯体6のペン先61が突出状態のとき(図2参照)、その筆記用芯体6に取り付けられた操作体8の後端部は、軸筒2の内壁に形成された係止壁部43に係止される。
【0051】
同様に、摩擦用芯体7のチップ71が没入状態のとき(図1及び図2参照)、その摩擦用芯体7に取り付けられた操作体8の後端部は、蓋部5の前面に形成された当接壁部51に当接される。一方、摩擦用芯体7のチップ71が突出状態のとき(図3参照)、その摩擦用芯体7に取り付けられた操作体8の後端部は、軸筒2の内壁に形成された係止壁部43に係止される。
【0052】
図2に示すように、チップ没入状態にある摩擦用芯体7の後端に連結された操作体8の前側突出部82は、その操作体8の操作部81を前方にスライド操作した際、先にペン先突出状態にある筆記用芯体6の後端に連結された操作体8の後側突出部83と当接され、筆記用芯体6のペン先突出状態が解除される。また、図3に示すように、ペン先没入状態にある筆記用芯体6の後端に連結された操作体8の前側突出部82は、その操作体8の操作部81を前方にスライド操作した際、先にチップ突出状態にある摩擦用芯体7の後端に連結された操作体8の後側突出部83と当接され、摩擦用芯体7のチップ突出状態が解除される。
【0053】
・表示部
前記筆記用芯体6の後端に取り付けた操作体8は、連結される筆記用芯体6の内部(即ちインキ収容管62内部)に収容された熱変色性インキ63の発色状態と略同じ色に着色される。具体的には、前記操作体8の各々は、連結される筆記用芯体6の熱変色性インキ63の発色状態のインキ色と略同じ色に着色された合成樹脂の成形体からなる。それにより、前記操作体8は、筆記用芯体6内に収容された熱変色性インキ63の発色状態のインキ色を表示する表示部を有する。
【0054】
前記摩擦用芯体7の後端に取り付けた操作体8は、透明、白色、灰色、または淡色を呈する。具体的には、前記操作体8の各々は、透明な合成樹脂、または白色、灰色、若しくは淡色を呈する合成樹脂の成形体からなる。それにより、前記操作体8は、熱変色性インキ63の発色状態のインキ色以外の色を呈する表示部を有する。
【0055】
・弾発体支持部
軸筒2の内壁(即ち後軸4の内壁)には、円筒状の弾発体支持部9が設けられる。前記弾発体支持部9は、筆記用芯体6及び摩擦用芯体7が挿通される複数の内孔91が軸方向に貫設されている。前記弾発体支持部9の後面と、各々の操作体8の鍔部85の前面との間には、各々の弾発体21が配置される。前記各々の弾発体21の内部に筆記用芯体6が遊挿されるとともに、各々の弾発体21の前端は弾発体支持部9の後面により係止され、各々の弾発体21の後端は操作体8の鍔部85の前面に係止される。
【0056】
また、弾発体支持部9の後面の各々の内孔91の周囲には、後方に突出する筒状突出部よりなる保持部92が形成される。前記各々の保持部92の内面は、各々の弾発体21の前端部外面が圧入保持される。それにより、筆記用芯体6及び摩擦用芯体7を交換する際、軸筒2内から開口部42を通して各々の弾発体21が脱落することを防止できる。
【0057】
前記各々の弾発体21は、各々の操作体8(即ち各々の筆記用芯体6)を、常時、後方に付勢している。前記各々の弾発体21は、ペン先突出状態、ペン先没入状態、チップ突出状態、チップ没入状態のいずれにおいても圧縮状態(即ち筆記用芯体6及び摩擦用芯体7が後方に付勢された状態)にあり、それにより、各々の操作体8の前後のがたつきが防止される。
【0058】
・ペン先突出作動
筆記用芯体6の操作体8の操作部81を弾発体21の後方付勢に抗して窓孔41に沿って前方にスライド操作すると、そのスライド操作された操作体8の前側突出部82が、先にチップ突出状態にある摩擦用芯体7の操作体8の後側突出部83を径方向外方に持ち上げる。それにより、軸筒2内壁の係止壁部43と先にチップ突出状態にある操作体8との係止状態が解除され、摩擦用芯体7が弾発体21の後方付勢により後方に移動され、摩擦用芯体7のチップ71が軸筒2内に没入され、摩擦用芯体7の操作体8の後端が、蓋部5の前面の当接壁部51に当接される。前記摩擦用芯体7のチップ71の没入と同時に、前記前方にスライド操作した操作体8に連結された筆記用芯体6のペン先61が、軸筒2の前端孔31より外部に突出されるとともに、前方にスライド操作された操作体8の後端が軸筒2内壁の係止壁部43に係止され、そのペン先突出状態が維持される。
【0059】
本実施の形態では、筆記使用する際、熱変色性筆記具1を片手に持ち、操作部81を前方に押圧操作することによって、迅速にペン先没入状態(図1及び図3の状態)からペン先突出状態(図2の状態)にすることできる。この突出状態にあるペン先61で、紙面等の被筆記面に筆記することにより、熱変色性インキ63による筆跡を被筆記面に形成することができる。
【0060】
・チップ出没作動
摩擦用芯体7の操作体8の操作部81を弾発体21の後方付勢に抗して窓孔41に沿って前方にスライド操作すると、そのスライド操作された操作体8の前側突出部82が、先にペン先突出状態にある筆記用芯体6の操作体8の後側突出部83を径方向外方に持ち上げる。それにより、軸筒2内壁の係止壁部43と先にペン先突出状態にある筆記用芯体6の操作体8との係止状態が解除され、筆記用芯体6が弾発体21の後方付勢により後方に移動され、筆記用芯体6のペン先61が軸筒2内に没入され、筆記用芯体6の操作体8の後端が、蓋部5の前面の当接壁部51に当接される。前記筆記用芯体6のペン先61の没入と同時に、前記前方にスライド操作した操作体8に連結された摩擦用芯体7のチップ71が、軸筒2の前端孔31より外部に突出されるとともに、前方にスライド操作された操作体8の後端が軸筒2内壁の係止壁部43に係止され、そのチップ突出状態が維持される。
【0061】
本実施の形態では、筆記後、その筆跡を摩擦変色させる際、前記熱変色性筆記具1を片手に持った状態で、熱変色性筆記具1を大きく持ち替えること無く、操作部81を前方に押圧操作することによって、迅速にチップ没入状態(図1及び図2の状態)からチップ突出状態(図3の状態)にすることができる。この突出状態にあるチップ71で、被筆記面に形成された前記熱変色性インキ63による筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記筆跡を熱変色(ここでは無色化)させることができる。
【0062】
・筆記用芯体の交換、摩擦用芯体の交換
本実施の形態における筆記用芯体6、摩擦用芯体7、及びそれに対応した操作体8の交換について説明する。筆記用芯体6または摩擦用芯体7を交換する際、蓋部5が軸筒2の後端の開口部42を閉鎖した状態(図4参照)から、蓋部5のヒンジ部52と反対側の操作端部を後方に押圧し、係合部53と被係合部45との係合を解除し、蓋部5を後方に回動させ、軸筒2の後端の開口部42を開口する。前記開口部42を開口させると、前記開口部42から各々の操作体8が、弾発体21の後方付勢により後方外部に突出される。前記軸筒2の後端の開口部42が開口した状態(図5参照)で、操作体8を取り出すことにより、その操作体8と互いに連結状態にある筆記用芯体6(即ち筆記用芯体レフィル)または摩擦用芯体7(即ち摩擦用芯体レフィル)を前記開口部42を介して軸筒2内から取り出し、その後、互いに連結状態にある新たな筆記用芯体6とそれに対応した新たな操作体8、または互いに連結状態にある新たな摩擦用芯体7とそれに対応した新たな操作体8とを開口部42を介して軸筒2内に挿入する。そして、蓋部5の当接壁部51に各々の操作体8の後端を当接させ、各々の操作体8を前方に押圧しながら蓋部5を前方に回動させ、その後、係合部53と被係止部とを係合させ、開口部42を閉鎖する。これにより、筆記用芯体6、摩擦用芯体7、及びそれに対応した操作体8の交換作業が終了する。
【符号の説明】
【0063】
1 熱変色性筆記具
2 軸筒
21 弾発体
3 前軸
31 前端孔
4 後軸
41 窓孔
42 開口部
43 係止壁部
44 クリップ
45 被係合部
5 蓋部
51 当接壁部
52 ヒンジ部
53 係合部
6 筆記用芯体
61 ペン先(ボールペンチップ)
62 インキ収容管
63 熱変色性インキ
64 追従体
65 ボール用弾発体
7 摩擦用芯体
71 チップ
72 軸部
8 操作体
81 操作部
82 前側突出部
83 後側突出部
84 嵌入部
85 鍔部
9 弾発体支持部
91 内孔
92 保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8