(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029663
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】非接触信号接続式トランス
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
B25B23/14 610B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-517577(P2014-517577)
(86)(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公表番号】特表2014-518166(P2014-518166A)
(43)【公表日】2014年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2012061320
(87)【国際公開番号】WO2013000726
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年5月21日
(31)【優先権主張番号】1150615-1
(32)【優先日】2011年6月30日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】カルリン,カルル−グスタフ
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−160479(JP,A)
【文献】
特表2009−514203(JP,A)
【文献】
実開昭60−039434(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
H01F 19/00
H01F 38/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定本体(110)、
少なくとも一つのセンサを有し、前記固定本体(110)に対して軸方向及び回転方向に移動可能である軸(120)、及び
トランス
を備えた動力工具(100)であって、
前記動力工具(100)が、
・前記本体(110)に対して固定され、一つ又は複数の固定子巻線(216)を有する固定子(210)と
・前記軸(120)と共に移動可能であり、一つ又は複数の回転子巻線(226)を有する回転子(220)と
を備え、それにより、
磁界Bが、前記一つ又は複数の固定子巻線(216)及び前記一つ又は複数の回転子巻線(226)によってシェアされ、かつ、前記本体(110)と前記軸の前記少なくとも一つのセンサとの間の非接触信号接続を生成するために用いられる
動力工具(100)において、
・前記固定子(210)が、実質的に均一の外径を有する実質的に筒状の形態を有し、かつ、第一の長さ(214)の第一部分と、第二の長さ(212−214)の第二部分とを有し、前記第一部分が前記第二部分より短く、第一部分が、第二部分の内径(215)より小さい内径(213)を有し、
・前記回転子(220)が、実質的に均一の内径を有する実質的に筒状の形態を有し、かつ、第一の長さ(222−224)の第一部分と、第二の長さ(224)の第二部分とを有し、前記第一部分が前記第二部分より長く、第一部分が、回転子の第二部分の外径(225)より小さく、かつ、固定子(210)の第二部分の内径(215)より小さい外径(223)を有し、
・回転子(220)が、固定子(210)の中に配置され、
回転子(220)の第一部分の位置が、固定子(210)の第二部分の内側に達し、
固定子(210)の前記第二部分と、回転子(220)の前記第一部分との間にエアポケット(233)が形成され、
前記エアポケット(233)内で、固定子(210)の第二部分の一部が、所定の長さ(Lair)隔てて、回転子(220)の第一部分に面するようにし、
・固定子巻線(216)が、固定子(210)の第一部分の近くの固定子(210)の第二部分に沿って配置され、
回転子巻線(226)が、回転子(220)の第二部分の近くの回転子(220)の第一部分に沿って配置され、
固定子巻線(216)及び回転子巻線(226)がオーバーラップしないようにし、
・前記固定子(210)及び前記回転子(220)の少なくとも一つに、前記固定子(210)と前記回転子(220)との間の漏れ磁束を低減させる遮蔽手段(217,227)を少なくとも部分的に配置し、
前記遮蔽手段(217,227)が、長さ(Lair)の前記エアポケット(233)の固定子巻線(216)と回転子巻線(226)との間の部分に亘って前記固定子(210)及び前記回転子(220)の一方に配置される
ことを特徴とする動力工具。
【請求項2】
第一遮蔽手段(217)が前記固定子(210)上に配置され、
第二遮蔽手段(227)が前記回転子(220)上に配置され、
両方の遮蔽手段(217,227)が、長さ(Lair)の前記エアポケット(233)の固定子巻線(216)と回転子巻線(226)との間の部分に亘って配置される
請求項1に記載の動力工具(100)。
【請求項3】
前記磁界Bが、
・前記固定子(210)から前記回転子(220)への励起信号及び
・前記回転子(220)から前記固定子(210)へのセンサ信号を
伝達し、
前記センサ信号が前記励起信号に基づく励起の結果に基づいている
請求項1又は2に記載の動力工具。
【請求項4】
前記軸(120)が、少なくとも一つの超音波センサを有し、
前記励起信号が超音波信号である
請求項3に記載の動力工具。
【請求項5】
前記超音波センサが、動力工具によってクランプされる部分に及ぼされる締め付け荷重に比例するセンサ信号を提供するよう配置されている
請求項4に記載の動力工具。
【請求項6】
前記励起信号が、動力工具(100)によって締め具上に及ぼされるトルクに比例する信号である
請求項3に記載の動力工具。
【請求項7】
前記動力工具(100)が締め具組立工具である
請求項1〜6の何れか一項に記載の動力工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に定義されたトランスに関する。
【0002】
また、本発明は、請求項18の前文に定義された非接触信号接続を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
締め具を締め付けるように構成された、例えば、ナットランナーのような締結工具のような動力工具では、締結工具によって締め付けられる時に、例えば、ナットのようなネジ付き締め具によって、ジョイントに加えられるクランプ力を決めることができるようにすることが重要である。通常、締め具に加えられるトルクのトルク値及び対応する角度値が、このクランプ力を推定するために利用される。
【0004】
ジョイントに加えられるトルクは、ここでは、締結工具の減速ギヤ装置内で発生する反作用トルクとして測定され、それは、締め付け動作中に締め具が締結工具に及ぼすトルクに対応する。締め具が高速で締め付けられている時には測定精度が低いので、前記反作用トルクは、締め具に加えられる動トルクを完全に反映するものではない。
【0005】
従って、測定中の動的応答の悪さの影響を除去する別の解決手段が好ましい。一つの解決手段は、出力軸上に直接設けた一つ又は複数のセンサを利用することにある。
【0006】
この解決手段のためには、前記したような測定を実行できるようにするために、使用中に回転する締結工具の軸に設けられた一つ又は複数のセンサへの励磁信号及びセンサからのセンサ信号が、締結工具の軸と本体との間で接続される必要がある。これらのセンサ信号は、励磁信号に基づいている励起に起因する。励起信号は、例えば、トルク励起信号又は超音波励起信号であり得る。
【0007】
一つのこのような信号接続による解決手段は、トルクの測定時に軸と本体との間の信号を接続するためにスリップリングを利用する。しかし、スリップリングの使用は、例えば、しばらくの間、使用した後に、摩擦摩耗によって、スリップリングが摩滅する危険がある。また、ストップリングの使用は、軸に対する最高許容回転速度を制限し得る。
【0008】
従って、センサ信号の非接触式伝達がより好ましい。これは、回転トランスを使用することによって達成され得る。回転トランスは、特に、相互に回転する二つの部材の間の信号を接続するように構成されたトランスである。回転トランスは、通常、相互に物理的に接続していない分離した第一及び第二の部分に、各々第一及び第二の巻線を有する。第一及び第二巻線間の相互インダクタンス結合エネルギを用いることによって、磁束が、第一及び第二の部分の接続を提供する。このような回転トランスは、欧州特許0 502 748号に簡潔に説明されている。ここでは、歪みゲージがメインスピンドル上、言い換えれば軸上に直接適用され、歪みゲージの出力信号が、回転トランスによって提供される。回転トランスは、メインスピンドルに設けられた第一コイルと、工具のハウジングに設けられた第二コイルとを有する。
【0009】
しかし、締め付けられるべきジョイントに対して固定された本体/ハウジングを有する締結工具におけるトルク測定に用いられる公知の回転トランスは、固定された工具の軸と本体との間のそれらの電磁結合が、締め具を締め付ける時に影響を及ぼすという問題がある。従って、締め具が何回も回転させられ、それによって、締め具がネジ山を下方に移動した後、回転トランスの信号接続は失われる。印加トルクの測定及びクランプ力の決定に影響するので、信号接続が失われることは非常に危険である。これによって、不十分なクランプ力がジョイントに与えられる場合がある。これは、ジョイントの信頼性に深刻な影響を与え、ジョイントにダメージを与えることになり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許0 502 748号公報
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、上記した問題を解決するトランス及び方法を提供することにある。
【0012】
本発明は、従来技術において公知のトランス及び方法より柔軟性のあるトランス及び方法を提供することを目的としている。
【0013】
この目的は、請求項1の特徴部分に従った上述のトランスによって達成される。
【0014】
また、この目的は、請求項18の特徴部分に従った方法によって達成される。
【0015】
本発明によるトランス及び方法は、トランスによって非接触信号接続が提供され、かつ、非接触信号接続が締結工具の軸の回転及び軸線方向運動の両方を操作し得ることを特徴とする。この柔軟性のある信号接続は、締め具がねじ山を下方に移動する時に非接触センサ信号接続を提供し、トランスの固定子及び回転子の幾何学的構造によって達成される。従って、固定子及び回転子は、相互に幾何学的関係を有するように形成され、励起信号及びセンサ信号の伝達に影響を及ぼすことなく、軸が軸線方向に動くことを可能にする。
【0016】
その結果、工具本体に対する軸のあらゆる動きの間、その信号接続を無傷に維持する信頼性のあるトランスが提供される。その結果、その工具は、軸の軸線方向の動きが原因で信号接続が失われる危険なしに、工具の固定を含む多くの状況で柔軟性をもって使用され得る。それにより、より強固なクランプ力が提供される。
【0017】
本発明の一実施例によれば、相互の幾何学的関係は、固定子の少なくとも一部と回転子の少なくとも一部との間の幾何学的関係を含み、この幾何学的関係は、軸の回転運動及び軸線方向運動の両方の間、本質的に変えられない。
【0018】
本発明の一実施例によれば、この幾何学的関係は、固定子の少なくとも一部と回転子の少なくとも一部との間の相互距離によって決められる。従って、トランスの使用中、軸が回転している時にも、そして、例えば、ナットのような締め具の締め付けのために軸が軸線方向に動いている時にも、固定子と回転子との間の距離は不変である。それにより、トランスの信号接続は、例えば、締結組立工具の軸のあらゆる動きに対して信頼性のあるものになり、かつ、柔軟性のあるものになる。
【0019】
本発明の一実施例によれば、固定子は一つのリム内面を有するように形成され、回転子は一つのリム外面を持つように形成される。これらリム表面は、軸の軸線方向の動きを可能にし、かつ、この軸線方向の動きの間、変わらない幾何学的関係を一緒に形成し、それにより、信号接続が信頼性を持って提供される。
【0020】
本発明の一実施例によれば、固定子及び回転子の少なくとも一方が、少なくとも部分的に遮蔽される。ここでは、遮蔽手段は、固定子と回転子との間のエアポケットの範囲を定める少なくとも一つの壁の少なくとも一部に適用される。これにより、エアポケットからの漏れ磁束が非常に減らされ、トランスの作用が改善される。
【0021】
本発明の一実施例によれば、トランスは、超音波センサのための励起信号及びセンサ信号を伝達するために用いられる。
【0022】
超音波センサのため、本質的に、超音波センサと締め具との間の接触が失われない。従って、本発明により信号接続を失うことなく軸の軸線方向の動きを可能にするので、本発明は、超音波センサの使用には特に適用可能である。
【0023】
本発明によるトランス及び方法の幾つかの実施例及び利点は、幾つかの好ましい実施例を記載した添付図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2c】本発明に従って組み合わされた固定子及び回転子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、締結工具100を概略的に示している。この図面では、本発明の機能のために必要となる部分だけが示されている。ハンドル、動力供給ケーブル又はバッテリ、電気モータ、ギヤ装置及び締め具を保持するソケットのような締結工具100の他の特徴も、当業者によって理解されるように、締結工具100には含まれる。
【0026】
締結工具100は、本体110と、本体110に対して移動可能である軸/スピンドル120とを有する。使用中、軸120は、例えば、ナットのような締め具を締め付ける時に、本体110に対して回転運動を実行する。また、工具100はトランス130を有し、該トランス130は、締結工具100の軸120と本体110との間のセンサ信号接続を提供する。従って、軸120に設けられたセンサが、トランス130によって本体110から軸120に送られるトルク励起信号や超音波励起信号のような励起信号を受ける。より詳細には、本体110内に設けられた制御ユニットがトランス130に接続されている。制御ユニットは、トランス130に励起信号を供給する。また、制御ユニットは、工具100の外側にあってもよく、本体及び/又はトランス130に、ケーブルや無線接続のような適当な接続手段によって接続されてもよい。
【0027】
トランス130は、また、軸120からのセンサトルク信号を本体110に伝達する。トランス130は、また、軸120に設けられた一つ又は複数のセンサに接続される。従って、工具の本体110に設けられた制御ユニットは、センサベースによって提供されるセンサトルク信号を、トランス130を介して受ける。これらのセンサトルク信号は、励起信号に基づいている。
【0028】
本発明によれば、トランス130は固定子及び回転子を備え、前記固定子は締結工具100の本体の内部に固定され、前記回転子は軸120によって移動可能である。従って、軸120が回転する時、回転子は、それと共に回転する。
【0029】
本発明による固定子210及び回転子220が、
図2a及び
図2bに各々示されている。本発明による固定子210及び回転子220は、組み合わされた時に、それらが、それらの間で幾何学的関係を持つように配置され、軸210が本体110に対して回転運動を実行した時でも、軸120が本体110に対して軸線方向運動を実行した時でも、非接触信号接続が提供されることを可能にする。従って、固定子210及び回転子220は、相互に幾何学的関係を有し、即ち、軸120の軸線方向運動が発生した時でも、完全な信号接続を維持するような使用中の相互の関係及び形態を各々有する。このことは、
図2a〜
図2cを参照して以下により詳細に説明される。
【0030】
固定子210は、本質的に筒状の形態であり、本質的に固定子210の全長に対して等しい外径211を有する。さらに、固定子210は、第一の長さ214を有する固定子の第一部分に対する第一の内径213と、固定子の第二部分に対する第二の内径215とを有し、第一の内径213は第二の内径215より小さい。言い換えれば、固定子210は、本質的に筒状であり、一つの段を有し、即ち、固定子210の第二部分の第二の内径215より小さい第一の内径213を有する第一部分を備えている。言い換えれば、固定子210は一つのリムを含む内面を有する。
【0031】
また、回転子220は、回転子220の全長222に亘って本質的に等しい内径221を持った本質的に筒状の形態を有する。回転子220は、さらに、固定子の第一部分に対する第一の外径223と、第二の長さ224を有する回転子の第二部分に対する第二の外径225とを有し、第一の外径223は第二の外径225より小さい。従って、回転子220は、本質的に、一つの段部を有する外表面を備えた筒状体であり、即ち、固定子210の第二部分の第二の外径225より小さい第一の外径223を持つ第一部分を有する。言い換えれば、回転子220は、一つのリムを含む外面を有する。
【0032】
また、回転子220の第一の外径223は、固定子の第一の内径213より小さく、回転子220の第二の外径225は、固定子の第二の内径215より小さい。従って、回転子220は、固定子210の中に挿入され得る。固定子210及び回転子220がこのように組み合わせられた時、即ち、回転子が固定子の中に挿入された時、回転子及び固定子の第一部分の間、及び回転子及び固定子の第二部分の間の各々に、エアギャップが形成される。従って、各々、第一及び第二の距離/幅231,232を有するエアギャップは、以下に説明するように、回転子220の第二(大きい方)の外径225と固定子220の第二(大きい方)の内径215とによって、かつ、回転子220の第一(小さい方)の外径223と固定子210の第一(小さい方)の内径213とによって径方向に各々制限される。
【0033】
図2cは、使用中の固定子210の一部及び回転子220の一部の概略長手方向断面図を示している。即ち、
図2cにおいて、固定子210と回転子220とは、回転子220が固定子210の中に挿入されるように組み立てられている。
図2cに明確に示すように、固定子210の一つの段/リムを有する内面と、回転子220の一つの段/リムを有する外面とが一緒に、回転子210と固定子220との間の相互の幾何学的関係を形成している。従って、固定子210の第一の内径213及び第二の内径215と、回転子220の第一の外径223及第二の外径225が、一緒に、この相互の幾何学的関係を形成している。固定子210の第一の内径213及び第二の内径215と、回転子220の第一の外径223及び第二の外径225とが一緒に、固定子210及び回転子220の第一及び第二部分の間の第一の相互距離231及び第二の相互距離232を各々形成している。また、
図2cは、一つ又は複数の固定子巻線216及び一つ又は複数の回転子巻線226を示している。
【0034】
本発明の実施例によれば、相互の幾何学的関係は、固定子210及び回転子220の間のこれらの第一の相互距離231及び第二の相互距離232の少なくとも一つを含む。従って、幾何学的関係は、固定子210の少なくとも一部分と、回転子220の少なくとも一部分との間に形成される。この相互の幾何学的関係は、本質的に、軸120が回転方向に動いた時も、軸線方向Aに所定の距離Lまで動いた時も変わらない。
【0035】
第一相互距離231及び第二相互距離232が、固定子210及び回転子220が相互に回転した時に変わらないことが明らかであることは、
図2cから容易に理解することができる。また、第一相互距離231及び第二相互距離232が、固定子210及び回転子220が相互に軸線方向Aに動いても、移動距離が所定の長さLより短い限りは、変わらないことも明らかに示されている。従って、距離Lは、固定子の第一部分の長さ214及び回転子の第二部分の長さ224に依存している。
図2cに示されているように、第一及び第二相互距離231,232は、固定子の第一長さ214及び回転子の第二長さ224の短い方に対応する軸線方向の長さに達するまで、変えられずに維持される。
図2cに示した非限定的実施例では、固定子の第一長さ214が回転子の第二長さ224より短いので、長さLは、固定子の第一長さ214に対応している。
【0036】
本発明の一実施例によれば、所定の長さLは、最小長さLminより大きい。従って、固定子の第一長さ214及び回転子の第二長さ224の短い方は、最小長さLminより長い。
【0037】
実施例によれば、最小長さLminは、継ぎ手を締め付けるために締め付けられる締付具の長さに対応する。典型的には、ネジ又はボルトをしっかり締め付けることができるように、最小長さLminは、工具によって締め付けるべきねじ又はボルトのねじ山の長さに対応する。
【0038】
一実施例によれば、最小長さLminは、回転トランスの軸線方向長さに関連する。従って、最小長さLminは、固定子210の全長212又は回転子220の全長222に関連する。言い換えれば、固定子の第一部分の第一の長さ214は固定子210の全長212に関連し、回転子220の第二部分の第二の長さ224は、回転子220の全長222に関連する。
【0039】
より詳細には、一実施例によれば、最小長さLminは、固定子210の全長212の30%〜60%、好ましくは、45%〜50%に対応し、及び/又は回転子220の全長222の30%〜60%、好ましくは45%〜50%に対応する。従って、固定子の第一の長さ214が、回転子の第二の長さ224より短い場合には、固定子の第一の長さ214は、固定子の全長212の30%〜60%、好ましくは45%〜50%である。それに応じて、固定子の第二部分の第二の長さ224が、固定子の第一部分の第一の長さ214より短い場合には、回転子の第二部分の第二の長さ224は、回転子220の全長222の30%〜60%、好ましくは、45%〜50%になる。言い換えれば、固定子210の内面及び回転子220の外面のリムは、各々、固定子及び回転子の全長212,222の30〜60%、好ましくは、45%〜50%に配置されている。固定子210の一つの段/リム付き内面及び回転子220の一つの段/リム付き外面は、一緒に、固定子210及び回転子220間の相互幾何学的関係を形成する。
【0040】
非接触信号接続の遮断なしに締め具が完全に締め付けられ得るように、最小長さLminは、典型的には、数センチメートルから数十センチメートルであり得、即ち、1〜20センチメートル、好ましくは3〜15センチメートルであり得る。
【0041】
固定子210と回転子220とを組み合わせた時に、固定子210と回転子220との間にエアポケット233が形成される。エアポケット233の軸線方向の長さLairは、固定子の第一部分の第一の長さ214及び回転子の第二の長さ224によって、即ち、固定子210及び回転子220の各々の段/リムによって軸線方向に制限される。本発明の一実施例によれば、エアポケット長Lairは、固定子の全長212の5〜10%、好ましくは6〜7%に対応し、及び/又は回転子の全長222の5〜10%、好ましくは6〜7%に対応する。
【0042】
従って、上述した形態を有し、かつ、一緒に組立てられる固定子210及び回転子220は、それらの間に形成される相互幾何学的関係をもたらし、固定子巻線216と回転子巻線226によってシェアされる磁界Bが、工具の軸の回転運動及び軸線方向運動の両方の間の接続を提供する非接触信号接続として利用可能になる。例えば、工具が固定的に配置されている状況においては、これは非常に有利である。
【0043】
固定子巻線216は、固定子の第二部分の内側に配置され、回転子の第一部分の外面に面している。即ち、固定子巻線216は、固定子210の第二内径215上に配置されている。回転子巻線226は、回転子の第一部分の外側に配置され、固定子の第二部分の内側に面している。即ち、回転子巻線226は、回転子220の第一外径223上に配置されている。
【0044】
従って、固定子巻線216及び回転子巻き線226は、それらが固定子210及び回転子220の間に形成されたエアポケット233に面するように配置されている。エアポケット223は、ここでは、回転子220の第一(小さい方)の外径223及び固定子210の第二(大きい方)の内径215によって径方向に制限されている。
【0045】
ここでは、磁界Bは、固定子巻線216と回転子巻線226との間の相互インダクタンス結合エネルギを用いて固定子210と回転子220との間の接続を提供する。従って、固定子巻線216に印加される電気エネルギが、本質的に直ちに、回転巻線226に伝達されることになる。それに応じて、回転子巻線226に印加される電気エネルギは、本質的に直ちに、固定子巻線216に伝達されることになる。
【0046】
これにより、固定子210と回転子220との間に、及びそれによって動力工具100の本体110と軸120に配置された少なくとも一つのセンサとの間にも非接触信号接続が生み出される。この信号接続は、固定子210から回転子220への励起信号の伝達及び回転子220から固定子210へのセンサ信号の伝達に用いられる。
【0047】
これにより、軸120に配置された少なくとも一つのセンサが、軸がナットのような締め具に及ぼすトルクに関連するセンサ信号、例えば、トルクに比例するセンサ信号を提供し得、それは、トランスを介して工具の本体と関わり合う。制御ユニットは、工具の本体内又は工具の外部に設けられ得る。また、制御ユニットは、トランスによって伝達される信号を受信するように配置される。
【0048】
本発明の一実施例によれば、第一相互距離231及び第二相互距離232の少なくとも一方が、固定子210と回転子220との間にエアギャップを形成する。従って、ここでは、幾何学的関係は、固定子210の少なくとも一部と回転子220の少なくとも一部との間のエアギャップ間隔によって構成される。これらのエアギャップ231,232の幅は、上述したように、一定であり、言い換えれば、軸120の回転方向R及び軸線方向Aの動きの間、不変である。
【0049】
上述したように、一実施例によれば、少なくとも一つの超音波センサが軸上に配置されている。ここでは、一つ又はそれ以上の超音波センサは、トランス200によって軸120に供される励起信号によって励起される。この少なくとも一つの超音波センサは圧電素子を含み得、外部に存在する物(the external entity)と接触していなければならず、外部に存在する物の歪み、従って、与えられたクランプ力を検出できるようにするために軸が例えば締め具と係合する。従って、超音波センサが、センサと外部に存在する物との間の接触が失われないように使用されることが非常に重要である。従って、非接触信号接続の性能が軸120の軸線方向の動きの間も保証されるので、本発明は、超音波センサが用いられる時に使用するのに非常に有利である。
【0050】
本発明の一実施例によれば、少なくとも一つの遮蔽手段217,227が、固定子210及び回転子220の少なくとも一方に設けられる。この少なくとも一つの遮蔽手段217及び227は、固定子210と回転子220との間に形成される上述したエアポケット233を区切る少なくとも一つの壁に設けられる。好ましくは、少なくとも一つの遮蔽手段217及び227は、一つ又は複数の回転子220の第一の外径223及び固定子210の第二内径215に配置される。
【0051】
トランス200では、必要な磁束は、固定子210と回転子220との間の第一及び第二相互距離231及び232から成るエアギャップを通過する磁束である。しかし、一般的には、固定子210と回転子220との間のエアフローポケット233を通過する漏れ磁束が存在する。本発明のこの実施例によれば、一つ又は複数の固定子210及び回転子220を遮蔽することによって、この望まれない漏れ磁束は低減され、それが、より効果的なトランスの働きをもたらすので、有利である。
【0052】
本発明の一実施例によれば、遮蔽手段217及び227は、銅のような金属又は適当な遮蔽特性を有する他の金属で形成される。
【0053】
本発明の一つの特徴によれば、工具100のために非接触信号接続を提供する方法が提示される。工具100は、上述したように、本体110及び軸120を有し、軸120は本体110に対して移動可能である。本体110に対して固定された固定子210と、軸120と共に移動可能である回転子220とを備え、固定子210及び回転子220の両方が一つ又は複数の巻線216及び226を含むトランス130及び200が利用される。これらの巻線によってシェアされている磁界Bが、本体110と軸120の少なくとも一つのセンサとの間に非接触信号接続を生み出すために用いられる。本発明の方法によれば、固定子210及び回転子220の形状及び相互の組み合わせによって、固定子210と回転子220との間に相互の幾何学的関係が形成され、軸120の異なる軸線方向及び回転方向の動きの両方に対して非接触接続が完全なまま維持されるようになる。
【0054】
本発明によるトランス及び方法は、当業者によって、上述した典型的な実施例から変更することができる。
【0055】
当業者には明らかなように、上述した典型的な実施例には、複数の他の実施形態、改良、バリエーション及び/又は追加があり得る。本発明が、このような、請求項に記載の発明の範囲に含まれる他の実施形態、改良、バリエーション及び/又は追加の全てを含むことは理解される。