(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029666
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】指向性超音波伝送スタイラス
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20161114BHJP
G06F 3/043 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/043
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-520237(P2014-520237)
(86)(22)【出願日】2012年7月9日
(65)【公表番号】特表2014-523048(P2014-523048A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】US2012045940
(87)【国際公開番号】WO2013009693
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年7月7日
(31)【優先権主張番号】61/507,084
(32)【優先日】2011年7月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504056082
【氏名又は名称】ルイディア インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ジング,ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】ハレル,ヤコブ
【審査官】
▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−534230(JP,A)
【文献】
特表2002−541603(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0331869(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸に沿って延在するハウジングであって、胴体部と前記ハウジングの一端におけるチップ部とを含み、前記チップ部が前記胴体部に取り付けられるか、前記胴体部と一体化されるハウジングと、
作業面上に配置するための端部を有する、前記作業面においてポインティングするための前記チップ部におけるチップと、
前記ハウジングの中を長手方向に延在するとともに、前記チップ近傍の第1の端部および前記第1の端部と長手方向反対の第2の端部において複数の孔部を有し、前記第1の端部が複数の孔部を含む、キャビティと、
前記キャビティの前記第2の端部に位置し、前記第2の端部を形成する前記第1の端部に面する前部放射面を有する、音波の送信機であって、前記音波の送信機は、前記キャビティからの出口であって音波が前記キャビティから前記チップの前記端部に向かって移動できる前記キャビティからの出口を有するポートを形成する前記孔部を有する前記第1の端部に向けて、前記キャビティ内部に主波長で音波を伝送するよう構成される、音波の送信機と、
前記音波の送信機を駆動する電子回路であって、前記電子回路のための電源を含む、電子回路と、
を備えるスタイラスであって、
前記音波の送信機は、前記電子回路によって駆動される場合、および前記チップの前記端部が前記作業面と接触している場合、音波が前記音波の送信機の前部放射面から前記キャビティ内の前記孔部へ向けて発せられ、前記チップの前記端部へ向けて前記ポートの出口から出るように、編成され、
前記ポートの出口と前記チップの前記端部との間の距離は、前記主波長の4分の1未満であり、
前記ポートの出口から放射される前記音波は、前記作業面によって反射され、前記作業面から空気の経路を通って移動し、反射後に前記作業面から離間されている複数の音響センサによって検出可能であり、前記センサによって検出される前記音波は、前記作業面上の前記チップの前記端部の位置を決定することに使用できる、
スタイラス。
【請求項2】
請求項1に記載のスタイラスにおいて、更に、電磁信号の送信機を備えるスタイラス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスタイラスにおいて、前記キャビティは前記チップ部内に形成されるスタイラス。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のスタイラスにおいて、前記キャビティは前記長手方向において前記主波長の半分の整数の長さを有するスタイラス。
【請求項5】
請求項4に記載のスタイラスにおいて、前記長手方向における前記キャビティの前記長さは1主波長分であるスタイラス。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のスタイラスにおいて、前記音波の送信機は超音波を伝送するよう構成されているスタイラス。
【請求項7】
請求項6に記載のスタイラスにおいて、前記超音波は40kHzの主周波数を有するスタイラス。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のスタイラスにおいて、前記孔部は前記長手軸を囲んでいるスタイラス。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のスタイラスにおいて、前記音波の送信機は超音波を伝送するよう構成され、直径が前記主波長の半分未満の円に沿って均一に分布する前記長手軸を囲む6つの前記孔部があるスタイラス。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のスタイラスにおいて、更に、スイッチであって、前記チップの前記端部が前記作業面に押し付けられた場合、前記スイッチが前記電子回路を起動して、音波が前記音波の送信機の前記前部放射面から前記キャビティ内の前記孔部へ向けて発せられ、前記チップの前記端部へ向けて前記ポートから出るように、前記チップに機械的に結合されるスイッチを備えるスタイラス。
【請求項11】
請求項10に記載のスタイラスにおいて、更に、電磁放射の送信機と、前記電源および前記電磁放射の送信機に結合され、前記電磁放射の送信機を駆動するよう動作する電子回路とを備え、前記スイッチは更に、前記チップの前記端部が前記作業面に押し付けられた場合、前記スイッチが前記電子回路を起動して前記電磁放射の送信機を駆動し、電磁放射のパルスが前記スタイラスから発せられるように編成されるスタイラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願
本発明は、2011年7月12日に出願された、「指向性超音波伝送スタイラス(DIRECTIONAL ULTRASOUND TRANSMITTING STYLUS)」という名称の、第1の発明者Dingへの米国仮特許出願第61/507,084号明細書の優先権を主張するものであり、その内容は参照により本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
超音波を用いて、例えば、ホワイトボードまたは投影スクリーン等の作業面上の位置決定を行うことが知られている。本発明者は、かかるシステムをペンストローク注釈キャプチャシステムと呼ぶ。本説明では、スタイラスという用語を用いて、超音波および、例えば、赤外線(IR)信号等の電磁信号の送信機を含む可動ポインティングデバイスについて言及する。その位置が決定されるべき作業面近くに配置されたキャプチャシステムは、送信された超音波を受信し、検知するための超音波受信機と赤外線信号を受信するためのセンサとを含んでいる。赤外線信号は時間基準を提供する。かかるスタイラスは、例えば、ペンまたは改良されたペン等でマーキングを行うか、対話に用いられるマーキングを行わないポインティングデバイス、または消去装置であってもよい。様々な方法が、スタイラスから2つ(またはそれを上回る数)の超音波受信機へ送信された超音波の到達時間の差を考慮して、作業面におけるスタイラス/ペン/ポインタの位置を決定するよう用いることができる。かかるキャプチャシステムは通常、情報をコンピュータへ送信するための、例えば、USB接続またはワイヤレス接続等のインターフェースを含んでいる。かかるシステムは、コンピュータと組み合わせて、マーキングを行うスタイラスの場合、ペンの色を含む、コンピュータ上のペンストロークや、いずれかの消去を捕捉する。
【0003】
近年では、スタイラスの作用領域となる領域をスクリーン上に投影するプロジェクタを有する位置決定システムが広く使用されている。従って、コンピュータに接続される(概して、本発明者が「キャプチャシステム」と呼ぶ)電子ペンストローク注釈キャプチャシステムを追加することによって、投影スクリーン領域として使用される、例えば、ホワイトボード等のいずれの平面も、ペンストロークがコンピュータに捕捉可能な領域に変換できる。従って、1つまたは複数のコンピュータ生成画像が投影スクリーン表面に投影されてもよく、ペンストロークがコンピュータ生成画像上でスタイラスによって描かれてもよい。かかるペンストロークは、次いで、ロケーションシステムによって捕捉可能であり、コンピュータに移動することができる。投影画像上に描かれたペンストロークは、1つまたは複数の投影画像と共に同調した再生を含む後の再生および解析のためにコンピュータにおいて捕捉されてもよい。
【0004】
近年、作業面上ではなく、表面からいくらか離れた距離に、超音波受信機およびIRセンサを持ちたいという要望がある。例えば、プロジェクタの場合ではスクリーン領域である作業面から離間されているが、比較的近いプロジェクタがいくつかある。例えば、日本国東京の日本電気株式会社は、モデルWT610およびモデルWT615等のプロジェクタのシリーズを製造している。かかるNECプロジェクタのそれぞれは、革新的な高度に複雑なミラーリングシステムを用いて達成された、対角線長40インチの画像を表面距離わずか5.5インチで画像を投影することができる。3Mおよび他のメーカも、スクリーンから短い距離で画像を投影できるシステムを製造している。かかるシステムを用いて、超音波受信機および赤外線受信機と共に、位置決定電子回路、例えば、超音波受信機および関連する電子回路をプロジェクタ自体に組み込むことが可能であり、望まれている。かかる場合において、受信機は、スクリーンである作業面よりも、わずかに異なる平面にある。
【0005】
図1は、簡略化し、誇張した形態で、作業面を形成するスクリーンから、いくらか比較的短い距離で床に置かれたプロジェクタを示している。プロジェクタは、既知の位置にある超音波センサと電子回路に結合される赤外線センサとを含み、超音波変換器を含む超音波送信機と赤外線送信機とを含むペンまたはポインティングデバイスまたは消去装置等のスタイラスの位置を決定するよう処理するセンサアレイを含んでいる。
図1は、極大に拡大した形態で、ポインティングデバイスのチップ(tip)を示す。
【0006】
例えば、投影の場合ではあるが、ホワイトボードの場合、またはLCDディスプレイまたはプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの場合等の他の状況において、作業面と同一平面にない超音波受信機を有することが望ましい。超音波送信機が作業面からオフセットされており、超音波受信機が作業面と同一平面にない場合、超音波ベースの位置捕捉システムにとっていくつかの課題がある。これらの問題のうちで最も重要なものには、作業面からの反射、スタイラスチップのオフセット、および低すぎる信号強度が含まれる。
【0007】
作業面からの反射
超音波受信機が作業面に位置していない場合、例えば、ペンまたはポインタ等のスタイラスが超音波信号を送信していたとしても、信号にとって、望まれるような1つの経路ではなく、
図1に示すような、直接信号と作業面からの反射信号との、2つの主経路が存在する。2つの信号の位相差は、1波長未満から40KHz超音波に対する2,3波長までの範囲にわたることが多い。受信機は、直接信号および反射信号の両方を拾い、差が半波長の奇数倍(2n−1)π、n=1,2,3...である場合、信号は互いに減衰し合う傾向があり、利用可能な信号を大きく減少させる。作業面から離間されてプロジェクタ上に位置する超音波受信機は、スタイラスに対する近接と角度次第で、直接波と反射波との間の異なる量の干渉を受けて、受信機間で著しく異なる合成波形を生じる場合がある。
【0008】
スタイラスチップのオフセット
スタイラスが保持される角度の差は、作業面からの変換器の傾きによって増幅され、超音波受信システムによって解消されるような、例えば、ペン、消去器、またはポインタのチップ等のスタイラスチップの位置が、異なる傾きが存在する箇所で変化する。
【0009】
低すぎる信号強度
受信された超音波信号強度は、超音波が硬質表面に沿って、例えば、作業面に沿って伝搬する場合に増大され、超音波が空気を介して直接伝搬する場合に減衰される。更に、作業面からの超音波の反射が、半分の波長の整数の奇数倍に近い位相で直接信号に破壊的に加わる場合、信号強度は著しく低減される。
【0010】
米国特許出願第11/764,757号明細書は、方法およびスタイラスを説明している。スタイラスは、第1の位置における音響送信機と、音波送信機からスタイラスのチップ端部近くのチップ位置に音波を向けるよう構成される波向機構とを含んでいる。一変形形態は導波管を含んでいる。別の変形形態は、音波送信機からチップ位置への音波を集束するよう整形される、音響送信機の後ろの整形反射鏡を含んでいる。別の変形形態は、超音波エネルギーをチップ位置へ向けて集束するよう編成される電子回路によって駆動される超音波変換器のアレイを用いることを含んでいる。更に別の変形形態は、音響レンズを使用している。
【0011】
発明者Todaに対する米国特許出願公開第20040169439号明細書は、チップと、超音波変換器と、ホルダとホルダの少なくとも2つの離間した表面間に広がる円筒形圧電フィルムとを有する円筒形圧電変換器、またはダイヤフラムとダイヤフラムの表面に配設される圧電材料とを有する平面変換器のいずれかと、を含むスタイラスを説明している。Todaは、エネルギーをチップ上に集束するよう設計された導波管を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、誇張し、簡略化した形態で、ポインティングデバイス(ペンまたはスタイラス)の位置が捕捉される作業面を形成するスクリーンから、通常、比較的短い距離で床に置かれたプロジェクタの実施形態を示している。
図1はまた、先行技術のスタイラスを示している。
【
図2】
図2は、誇張し、簡略化した形態で、異なる先行技術のスタイラスについての、
図1に類似の図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の特徴を含むスタイラスの一実施形態の側面図を示す。
【
図4A】
図4Aは、
図3のスタイラス実施形態のチップ部の実施形態のある図を示す。
【
図4B】
図4Bは、
図3のスタイラス実施形態のチップ部の実施形態の別の図を示す。
【
図4C】
図4Cは、
図3のスタイラス実施形態のチップ部の実施形態の別の図を示す。
【
図4D】
図4Dは、
図3のスタイラス実施形態のチップ部の実施形態の別の図を示す。
【
図4E】
図4Eは、
図3のスタイラス実施形態のチップ部の実施形態の別の図を示す。
【
図5A】
図5Aは、
図3のスタイラス実施形態のチップ部の実施形態の機械的部品の斜視図を示す。
【
図5B】
図5Bは、
図3のスタイラス実施形態のチップ部の実施形態の機械的部品の斜視図を示す。
【
図5C】
図5Cは、
図3のスタイラス実施形態のチップ部の実施形態の機械的部品の斜視図を示す。
【
図5D】
図5Dは、
図3のスタイラス実施形態のチップ部の実施形態の機械的部品の斜視図を示す。
【
図5E】
図5Eは、
図3のスタイラス実施形態のチップ部の実施形態の機械的部品の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特定の実施形態は、チップ部と胴体部とを含み、キャビティを有するスタイラスを含んでいる。キャビティは、複数の孔部を第1の端部に有し、例えば、超音波等の音波の送信機を、第1の端部と長手方向反対の第2の端部に有している。チップ部はチップを有している。チップ端部は、孔部の出口端部から波長の4分の1未満である。チップの端部が作業面に押し付けられて配置された場合、スタイラスは、送信機に、送信機からキャビティを通って移動し、孔部から出て、チップに比較的近い作業面へ波長の4分の1未満移動する音波を伝送させるよう編成される。
【0014】
特定の実施形態は、長手軸に沿って延在するハウジングにおいて、胴体部とハウジングの一端におけるチップ部とを含むハウジングを備えるスタイラスを含んでいる。一変形形態において、チップ部は、胴体部に取り付けられ(および、それから取り外し可能であり)、別の実施形態において、チップ部は胴体部と一体化される。スタイラスは、作業面においてポインティングするためのチップ部におけるチップを含んでいる。チップは、作業面上に配置するための端部を有している。スタイラスは更に、チップ近傍の第1の端部および第1の端部と長手方向反対の第2の端部において複数の孔部を含む、長手方向に延在するキャビティを備えている。スタイラスはまた、キャビティの第2の端部に位置し、孔部を有する第1の端部に向けて、キャビティ内部に主波長で音波を伝送するよう構成される、例えば、超音波等の、音波の送信機も含んでいる。孔部は、音波がチップの端部に向かって移動できるキャビティからの出口を有している。スタイラスは更に、音波の送信機を駆動する電子回路を備えている。音響送信機は、電子回路によって駆動される場合、およびチップの端部が作業面と接触している場合、音波が音響変換器の前部放射面からキャビティ内の孔部へ向けて発せられ、チップの端部へ向けてポートから出るように、編成されている。ポートの出口とチップの端部との間の距離は、主波長の4分の1未満である。音波は、複数の音響センサによって検出可能であり、検出された音波は、作業面上のチップの端部の位置を決定することに使用できる。
【0015】
スタイラスの一変形形態は、電磁信号の送信機を含む。
【0016】
一変形形態において、キャビティはチップ部内に形成されている。
【0017】
一変形形態において、音波の送信機は、キャビティの第2の端部を形成する前部放射面を有している。
【0018】
一変形形態において、キャビティは長手方向において主波長の半分の整数の長さを有している。例えば、長手方向におけるキャビティの長さは、1主波長分である。
【0019】
一変形形態において、孔部は長手軸を囲んでいる。例えば、一変形形態において、直径が主波長の半分未満の円に沿って均一に分布する、長手軸を囲む6つの孔部がある。
【0020】
特定の実施形態は、これらの態様、特徴、または利点のすべて、いくつかを提供してもよく、または何れも提供しなくてもよい。特定の実施形態は、1つまたは複数の他の態様、特徴、または利点を提供してもよく、それらのうちの1つまたは複数は、本明細書の図面、説明、および請求項から、当業者にとっては容易に明らかとなろう。
【0021】
スタイラスの実施形態
スタイラスという用語は、本説明において、例えば、ペンまたは改良されたペン等のマーキングを行うポインティングデバイス、またはポインティングを行うまたは消すための、マーキングを行わないポインティングデバイスについて述べるために使用する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態が有用であるキャプチャシステムの一例を示す。
図1は、簡略した形態で、互いに対して既知の位置における少なくとも2つの超音波センサと赤外線センサとを含む超音波受信システム117を含むプロジェクタ121を示し、かかるセンサは、電子回路に結合され、作業面付近から超音波および赤外線を伝送するスタイラスのチップ103の作業面上の位置を決定するよう処理し、動作する。
図1は、極大に拡大した形態で、ポインティングデバイスのチップ範囲を示す。かかる領域は、端部チップ103と、超音波変換器を含む超音波送信機105を設置している別のスタイラスチップ領域107とを含んでいる。
図1の送信機は、円筒形の缶内部にあり、前方(チップ)方向に向けて超音波を発する。プロジェクタにおける1つの受信機を、受信機115として示している。これを超音波センサとする。
図1から強調された形態で明らかなように、センサ115は、直射ビーム127および作業面113から反射された反射ビーム125の両方を検知する可能性がある。更なる問題は、スタイラスがプロジェクタスクリーンの表面に対してある角度をなす場合、スタイラスチップオフセットを含む。
【0023】
図2は、本発明の実施形態が有用であるキャプチャシステムであるが、異なる先行技術のスタイラスを用いる別の例を示す。再度、ポインティングデバイスのチップ範囲を、極大に拡大した形態で示す。このスタイラスにおいて、超音波送信機は、例えば、ディスク等の平面状である。かかる状況において、スタイラスがプロジェクタスクリーンの表面に対してある角度をなす場合、問題が起こる可能性がある。
【0024】
図3は、本発明の特徴を含むスタイラス300の一実施形態の側面図を示す。スタイラス300は、LAで示す長手軸に沿って延在するハウジングを有し、胴体部303およびチップ部301を含んでいる。スタイラスは、チップ部のチップ端部におけるチップ305と、例えば、超音波等の音波の送信機311と、赤外線(IR)信号の送信機313と、音波送信機311を駆動するための電子回路と、IR信号の送信機313を駆動するための電子回路とを含んでいる。音波送信機311は、主周波数で、主波長を有する波を空気を介して送信する。一実施形態において、音波は、室温において、主周波数が40kHzであり、主波長が8.28mm(小数点以下2桁で四捨五入)である超音波である。代替実施形態において、異なる種類の、例えば、波長の音波が用いられてもよい。代替実施形態において、IR以外のいずれの電磁信号が用いることができる。スタイラスはまた、スイッチ、異なる機能を起動するための1つまたは複数のボタン、および、例えば、音響送信機、および音波の送信機311およびIRパルスの送信機313用の駆動電子回路に接続されるバッテリ等の電源も含んでいる。チップ部301は、チップ305が装着されるか取り付けられるチップ端部と、チップの端部から長手方向に反対の胴体部端部とを有する。チップ部は、胴体部に取り付けられてもよく、或いは胴体部と一体である。図示の実施形態において、チップ部は、胴体部に取り付けられており(それから取り外されてもよく)、チップベース309と呼ばれる前部ケースと、チップ305と、IR送信機である赤外線ウィンドウを有するエレメント307とを含んでいる。キャビティ315は、超音波送信機311の前部放射面と、超音波がチップ305の端部に向かってスタイラスの前部から出るポートを形成する複数の孔部との間に形成されている。孔部の1つを符号317で示す。チップ305の端部が作業面に押し付けられると、スイッチが駆動電子回路を起動させてIRパルスを赤外線ウィンドウ307から出し、超音波パルスをチップ305の端部付近の複数の孔部317から出す。
【0025】
超音波は、複数のセンサにおいて検知を行うためのものである。多くの用途において、複数のセンサは、作業面と略同一平面ですらなく、逆に離間されている。距離は、5cmと短くてもよく、それよりも長くてもよい。距離は、スタイラスチップの位置を決定するために検出され、用いられる音波が、作業面から反射されるエネルギーであることを意味している。従って、スタイラスが、作業面に対して垂直ではなく傾けられている場合でさえも、動作可能であるように設計されることが重要である。更に、センサがチップ端部の範囲から反射される超音波を拾い、スタイラスからのエネルギーを指向するのではないように、スタイラスが、設計されることが重要である。このため、超音波がスタイラスのチップ端部に向けて指向されるのが望ましい。米国特許出願第11/764,757号明細書は、特に、音波を音波送信機からスタイラスのチップ端部付近のチップ位置まで指向するよう構成される波向機構を有するスタイラスについて述べている。波向機構は、導波管、音響レンズ、または、超音波エネルギーをチップ位置に向けて集束するよう配置される電子回路によって駆動される超音波変換器のアレイを含む超音波送信機を有することによって、音波を音波送信機からチップ位置へ集束させる形状を成す超音波送信機の後ろの整形反射鏡であってもよい。米国特許出願公開第20040169439号明細書もまた、エネルギーをチップ上に集束するよう設計された導波管を説明している。
【0026】
本発明の特徴の一つは、何らかの追加波向機構を用いることによってではなく、注意深く設計することによって、音響エネルギーをチップ端部付近の比較的小さな領域へ指向する安価な方法である。
【0027】
図4A〜4Eは、チップ部301を詳細に示す。
図4Aは、チップ部301の側面図である。
図4Bは、後方に向かって、
図4AにおいてAと示す視野方向におけるチップ部301の端面図である。
図4Cは、IRウィンドウ部307および内側取付エレメントの無い状態で、後方から後部に向かって、
図4AにおいてBと示す視野方向におけるチップ部301の端面図である。
図4Dおよび4Eは、チップ部301の斜視図である。
【0028】
図4Aの側面図を参照すると、チップ部は、チップベース309と、IRウィンドウ部307と、チップベース309の孔部に嵌合するペグを有するフィンガー部を含むチップ305とを含んでいる。超音波が複数の孔部317を介して出ていく平面411がある。発明の1つの特徴は、超音波がぶつかる作業面上の領域が比較的小さくなるように、孔部同士が近接していることにある。送信機311からの超音波は、主波長を有している。発明の別の特徴は、出射面411からチップ端部までの距離、従って、作業面までの距離が波長(主波長)の4分の1未満であり、その結果、出射面から出て出射面に戻る波による往復が主波長の半分未満であることである。これにより、反射波による入射波の弱め合う干渉が無いことを確実にする。
図4Aにおいて、この距離を符号dで示す。40kHzの超音波に対し、室温における波長は約8.3mmであり、発明の一実施形態において、dは2mmである。
【0029】
発明の別の特徴は、長手軸LAに沿ったキャビティ長さが半波長の整数であり、その結果、送信機311の前部(チップ端部)から出て、キャビティ315の前部で反射する超音波が、送信機311の前部(チップ端部)に最初に到達した場合に、波長の整数で前後に移動することである。長手軸LAに沿ったキャビティ長さを、図面において、符号Lで示す。一実施形態において、Lは、40kHzの超音波に対し、1波長、例えば、8.28mmである。
【0030】
これらの性質を有するスタイラスを構成する方法は多々あるが、一実施形態において、孔部317は、チップベース309およびチップの一部分における間隙を通る開口部から形成される。ここで
図4Bおよび4Cを参照すると、一実施形態において、6つの孔部があり、その結果、送信機がスイッチによって起動されると、6つの細い超音波のビームが、チップの端部の作業面に向かって移動する。一実施形態において、符号hで示される孔部の直径は1mmである。一実施形態において、6つの孔部は均等に分布され、それらの各中心は、符号Dで示される、直径が主波長の半分未満の円上にある。1つの変形形態では、孔部は2mm間隔で置かれる。超音波の主周波数が40kHzである一実施形態において、Dは約3.5mmである。
【0031】
図5A〜5Eは、一実施形態のチップ部301の機械的部品の斜視図である。
図5Aは、一実施形態において、アセタール、ポリアセタール、およびポリホルムアルデヒドとしても知られる、ポリオキシメチレン(POM)から成るチップ305を示している。代替の実施形態において、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の他の材料を用いてもよい。チップ305は、チップ端部511と、それぞれがペグ515を含む6つのフィンガー部513とを含んでいる。
図5Bは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリカーボネート、または他の硬質材料から成り、チップペグ515がかかる孔部517に堅固に嵌合するよう設計された孔部517を有するチップフィンガー部513のための凹部を含むチップベース309を示す。チップベース309は、前部に開口部519を含んでいる。そのチップフィンガー部513を有するチップ305は開口部519の大半を覆うが、開口部519の一部から形成される6つの孔部317は、チップ305によって覆われない。
【0032】
図5Cは、チップベース309の内側を裏打ちするゴムまたは類似の材料から成るリングガスケット503を示す。リングガスケットの内側は、キャビティ315の側壁を形成している。裏面は、超音波送信機により押圧され、それにより、送信機311缶の場合の出口ポートおよび孔部317の出口とは異なる方法で、キャビティが音響的にシールされるように設計される。
【0033】
図5Dは、一実施形態において、円筒形のアルミニウム缶である送信機311のケースを、チップ部内部で固定するよう設計され、リングガスケットに抗する力を与えて音響的シールを確実にすることを含む固定エレメント505を示す。
【0034】
図5Eは、IRエネルギーが出るIRウィンドウを含む部分307を示す。
【0035】
図6Aおよび6Bは、
図5A〜5Dのエレメントがどのようにアルミニウム缶を含む送信機311と嵌合し合うかを示すために、IRウィンドウ部307を除いたチップ部301の2つの断面図を示す。内部に超音波変換器を含む送信機の内側は、図示されていない。
図6Aおよび6Bは、長手軸を中心として互いに90度回転されている。
【0036】
送信機311の一実施形態は、アルミニウム缶内に密閉された圧電素子を含んでいる。かかる実施形態における送信機311は、40kHzで共鳴する円錐部を含んでいる。一実施形態における送信機311は、40kHzの共鳴周波数を有する、日本の鳥取市の日本セラミック株式会社(Nippon Ceramic Co. Ltd.)製のモデルSR40−10SEである。もちろん、他の形態の超音波送信機を用いてもよい。
【0037】
一実施形態において、チップ305は、チップベース309をそのままにして、交換可能である。もちろん、多くの変更が可能である。チップ部は、様々に構成されてもよい。チップ部は、胴体部と一体化されてもよい。異なる形式の変換器が用いられてもよい。
【0038】
以上、作業面の平面からある距離の平面上に位置する2つ以上の音響受信機セットによって検知される音響エネルギーによる作業面上の位置決定に用いるための音波送信機および電磁エネルギー送信機を含むスタイラスを説明してきた。説明した実施形態は、経済的設計に適しており、導波管、整形反射鏡、音響レンズ等の波向機構、またはビーム形成電子回路を有する変換器のアレイの使用を含む代替の解決法よりも安価であるはずである。
【0039】
本明細書に提示する設計は波向機構の使用を排除していないことに留意されたい。しかしながら、これは必須ではない。
【0040】
本設計は6つの出口ポートを含むが、それよりも多くの、または少ないポートを代替の実施形態において用いてもよい。本明細書中で説明する実施形態で用いるキャビティの断面は円形だが、代替の実施形態は、異なる断面を有していてもよい。本明細書中で説明した実施形態は、缶内でホーン型の、40kHz共鳴周波数を有する送信機を用いているが、代替の実施形態は、異なる周波数を用いてもよく、また、平面状変換器等の異なる形態の変換器を用いてもよい。更に、本明細書中で説明した実施形態は、チップベース内の孔部とチップとの間の間隙によって形成される出口ポートを有しているが、代替の実施形態は、ドリルまたは別の方法で形成された孔部を有するチップ部を用いてもよい。更に、発明の実施形態はリングガスケットを用いているが、代替の実施形態は音響シールを形成するために他の要素を用いてもよい。かかる1つの代替実施形態は、O−リングを用いる。キャビティは、代替のチップベースの壁の内面によって形成される。
【0041】
更に、本明細書中で説明した実施形態は赤外線を用いており、従って、それぞれが赤外線送信機を含んでいるが、一般に、赤外線以外の電磁エネルギー、例えば、RFエネルギーの変換器が、代替の実施形態において用いられてもよいことに留意されたい。
【0042】
スタイラスは、チップ部および胴体部を有し、キャビティがチップ部内にあることを示されていることに留意されたい。一般に、キャビティは、チップ近傍のスタイラス内にある。別体のチップ部および胴体部でなくてもよい。
【0043】
特に明記しない限り、以下の説明から明白なように、明細書全体に渡って、「加工」、「演算」、「計算」、「決定」等の用語を用いる検討は、限定することなく、例えば、電子的等の物理量として表されるデータを、物理量として類似的に表される他のデータに操作し、および/または変換する、電子回路、コンピュータまたは計算システム、または類似の電子計算システム等のハードウェアの動作および/または処理について言及していてもよいことは認識されよう。
【0044】
方法が、いくつかの要素、例えば、いくつかのステップを含んで説明される場合、特に明記しない限り、かかる要素、例えば、かかるステップの順序は含まないことに留意されたい。
【0045】
本明細書全体に渡って、「一実施形態」または「実施形態」に対する言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。従って、本明細書全体にわたる様々な箇所の「一実施形態において」または「実施形態において」という語句の表示は、必ずしも同じ実施形態について言及するものではないが、そうであってもよい。更に、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において、本開示から当業者にとっては明らかであるように、任意の適切な方法で組み合わされてもよい。
【0046】
同様に、上記本発明の例示の実施形態の説明において、発明の様々な特徴が、場合により単一の実施形態、図面、またはその説明において、開示を簡素化し、1つまたは複数の様々な発明の態様の理解を助ける目的でまとめられることを認識するべきである。しかしながら、開示の本方法は、請求する発明が各請求項に明白に記載される特徴よりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、発明の態様は、上記で開示した単一の実施形態のすべての特徴よりも少ないものの中に存在している。従って、例示的実施形態の説明に続く請求項は、本明細書において、各請求項がそれ自体で本発明の別体の実施形態として存在しながら、例示的実施形態の説明に明白に組み込まれる。
【0047】
更に、本明細書中で説明したいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれる特徴のいくつかを含むが、他の特徴は含まない一方で、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者によって理解されるように、発明の適用範囲内にあることを意味し、異なる実施形態を形成する。例えば、以下の請求項において、請求する実施形態のいずれかを、いずれの組み合わせで用いてもよい。
【0048】
本明細書中で提供する説明において、多数の特定の詳細が述べられている。しかしながら、発明の実施形態が、これら特定の詳細を用いずに実施されてもよいことは言うまでもない。他の例において、周知の方法、構造、および手法は、本説明の理解を不明瞭にしないために、詳細に示されてはいない。
【0049】
本明細書中で使用したように、特に明記しない限り、共通の物体を説明するための「第1」、「第2」、「第3」等の序数を表す形容詞の使用は、単に同様の物体の異なる例を言及することを示し、そのように説明された物体が、時間的、空間的、順位、またはその他の方法のいずれかで、与えられた順序であることを暗示する意図はない。
【0050】
本明細書中で引用したすべての米国特許、米国特許出願、および米国を指定する国際(PCT)特許出願は、本明細書に参照により組み込まれる。特許規則または法令が、参照によってそれ自体情報を組み込んでいる資料の参照による組み込みを認めない場合、かかる情報が参照によって本明細書中に明示的に組み込まれていない限り、本明細書中の資料の参照による組み込みは、参照資料によるかかる組み込みにおいて参照によって組み込まれるいずれかの情報を除外する。
【0051】
本明細書における他の技術のいずれに関する検討も、決して、かかる技術が広く知られ、公知であるか、発明時点に当該技術分野において一般知識の一部を形成するということを自認するものと考えられるべきではない。
【0052】
以下の請求項および本明細書中の説明において、備える(comprising)、から構成される(comprised of)、構成する(which comprises)といういずれの用語も、後に続く少なくとも1つの要素/特徴を含むが、他の要素/特徴を排除しないことを意味するオープンタームである。従って、請求項において用いられる場合、備える(comprising)という用語は、それ以降に列挙される手段または要素またはステップに対して限定的であると解釈してはならない。例えば、装置はAおよびBを備える(a device comprising A and B)という表現の適用範囲は、装置が要素AおよびBからのみ成る(devices consisting of only elements A and B)ということに制限すべきではない。本明細書中で用いられるような、含んでいる(including)、含む(which includesまたはthat includes)といういずれの用語もまた、用語に続く少なくとも1つの要素/特徴を含むが、他の要素/特徴を排除しないことを意味するオープンタームである。従って、含んでいる(including)は、備える(comprising)と同義であり、これを意味する。
【0053】
同様に、結合される(coupled)という用語が、請求項内で用いられる場合、それを直接接続のみに限定して解釈してはならないということに留意されたい。「結合される(coupled)」および「接続される(connected)」という用語は、それらの派生語と共に、使用されてもよい。これらの用語が互いの同義語として意図されているものではないことは、言うまでもない。従って、装置Bに結合される装置A(a device A coupled to a device B)という表現の適用範囲は、装置Aの出力が装置Bの入力に直接接続される装置またはシステムに限定されるべきではない。それは、装置Aの出力と装置Bの入力との間に、他の装置または手段を含む経路が存在することを意味する。「結合される(coupled)」は、2つ以上の要素が直接、物理的または電気的にいずれかで接触しているか、または、2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、互いに協働するか、相互作用することを意味してもよい。
【0054】
従って、これまで、発明の好適な実施形態であると考えられるものについて説明してきたが、当業者は、他の、および更なる改良が、発明の精神から逸脱することなく行われてもよく、かかる変更形態および改良形態は発明の適用範囲に入ることを意図するものであることを認識するであろう。例えば、上記のいずれの組成も、使用されてもよい手順の単なる代表的なものでしかない。機能を、図に追加することも、図から削除することもでき、操作を、機能ブロック間で交換してもよい。本発明の適用範囲内において、説明された方法から、ステップを追加しても、削除してもよい。