(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第三の水相が、工程段階b)において使用される抽出剤以外の有機化合物を、第三の水相の総質量に対して3質量%以下含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
さらなる工程段階h)において、工程段階d)およびe)の少なくとも1つにおいて分離された抽出剤の少なくとも一部を、工程段階b)にリサイクルする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
段階f)において得られた少なくとも1つの成分iiが、少なくとも2つの成分iiの混合物であり、且つ、さらなる工程段階j)において、少なくとも1つの成分iiが、この混合物から少なくとも部分的に分離される、請求項2から7までのいずれか1項に記載の方法。
成分iiの少なくとも1つの有機化合物が、カルボン酸、アルデヒドおよびケトンから選択される少なくとも1つの有機化合物である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
工程段階e)、f)およびj)の少なくとも1つにおいて分離された少なくとも1つの成分iiが、メタクリル酸であるかまたはメタクリル酸を含み、且つ、このメタクリル酸の少なくとも一部が、工程段階a2)において得られた粗製水相に、または工程段階a3)において得られた粗製有機相に添加される、請求項11に記載の方法。
段階k)、m)およびn)の少なくとも1つにおいて得られた少なくとも1つのエステルの少なくとも一部を、工程段階b)における抽出剤として使用する、請求項13から15までのいずれか1項に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクリル酸の製造方法、メタクリル酸エステルの製造方法、および少なくとも1つの有機化合物を含む水相の処理方法に関する。
【0002】
メタクリル酸(MMA)およびメタクリル酸エステル、例えばメチルメタクリレート(MMA)およびブチルメタクリレートは、広範な用途において使用される。メタクリル酸の商業的な製造は、とりわけ、イソブチレン、tert−ブタノール、メタクロレインまたはイソブチルアルデヒドの、不均一触媒気相酸化によって行われる。そのように得られたガス状の反応相を、冷却および凝縮によってメタクリル酸水溶液へと変換し、随意に低沸点物質、例えばアセトアルデヒド、アセトン、酢酸、アクロレインおよびメタクロレインから分離し、その後、溶剤抽出塔へと導入して、適した抽出剤、例えば短鎖炭化水素を用いてメタクリル酸を抽出し且つ分離する。分離されたメタクリル酸をさらに、例えば蒸留によって精製して、高沸点の不純物、例えば安息香酸、マレイン酸およびテレフタル酸を分離し、純粋なメタクリル酸を得る。かかる公知の方法は、例えばEP0710643号、US4618709号、US4956493号、EP386117およびUS5248819号内に記載されている。
【0003】
かかる公知の方法は、様々な工程段階で多量の廃水を生成し、その中でも、急冷相からのメタクリル酸の抽出後に残っている水相の形態であるものが最も多い。その水は主に、気相酸化段階へと添加される蒸気または水、および冷却および凝縮段階における急冷剤としての水の使用、並びにそれ自体の酸化反応に由来する。この廃水は、著しい量の有機化合物を含有し、且つ、少なくとも部分的にそれらの有機化合物を除去するためのさらなる処理をすることなく、再利用または安全に処分することができない。かかる有機化合物は一般に、有機抽出剤への不完全な抽出により、所望の生成物、例えばメタクリル酸を含み、並びに、酸化段階の他の副生成物、例えばアクリル酸、酢酸およびプロピオン酸を含み、それらも商業的な価値がある。この廃水中の有機物含有率は、かなりの希釈、著しい時間および非常に大きな処理設備を必要とすることなく、水処理方法、例えば生物学的処理、例えば活性スラッジ法に適合させるためには一般に高すぎるので、商業的なメタクリル酸の生産においては、廃水は多くの場合、例えばUS4618709号内に記載されるとおり、燃焼される。しかしながら、廃水の燃焼は、環境的にも経済的にも望ましくなく、高いエネルギー入力を必要とし、環境中に放出する前にさらなる処理を必要とすることがある放出物をもたらし、且つ、廃水中に存在する潜在的に価値がある有機化合物の損失並びに廃水それ自体の損失ももたらす。
【0004】
従って、廃水中に存在する有機化合物を少なくとも部分的に回収できることが有利である。随意にさらなる処理をすることなく生物学的処理に供し且つ/または環境中に排出されるために充分に低い有機含有率で、または例えば工業的なプロセス水としてまたは反応それ自体において、例えば酸化および/または急冷段階において、その水が再利用可能であるために充分な純度で、少なくともいくらかの廃水それ自体を回収することも有利である。CN1903738号は、膜分離装置を使用し、次に清留塔を使用してアクリル酸の生産からの廃水を精製し、且つ、アクリル酸、トルエンおよび酢酸を回収することを提案している。膜ろ過の欠点は、フィルターを通り抜けない成分を洗い流すために、一般に大量の水(多くの場合、廃水それ自体が使用される)が必要とされることである。その際、有機化合物の濃度が高められたこの洗浄水を、それ自体、さらに処理するかまたは燃焼しなければならない。
【0005】
本発明の課題は、一般に、従来技術の方法の前記の欠点を可能な限り克服することである。
【0006】
さらなる課題は、有機化合物をプロセスの廃水から回収することによって、メタクリル酸の製造方法の全体的な効率および/または収率を向上させることである。
【0007】
本発明のさらなる課題は、有機化合物による廃水の汚染を可能な限り低減し、有機化合物と共に燃焼するよりはむしろ、その水を再利用でき、生物学的精製工程に供することができ、または随意に生物学的精製工程または他の種の精製工程の後、環境中に排出することができるようにすることである。
【0008】
上記の課題を解決するために、以下の工程段階を含むメタクリル酸およびメタクリル酸エステルの少なくとも1つの製造方法が寄与する:
a1) 少なくとも1つのC
4化合物を気相酸化して、メタクリル酸を含む反応相を得る段階;
a2) 前記反応相を急冷して、メタクリル酸を含む粗製水相を得る段階;
a3) メタクリル酸を含む粗製水相から、メタクリル酸の少なくとも一部を有機溶剤中へと抽出して、メタクリル酸を含む粗製有機相および第一の水相を得る段階、
ここで、前記第一の水相は、以下の成分を含む:
i. 第一の水相の総質量に対して、少なくとも65質量%、好ましくは65質量%〜99.9質量%の範囲、より好ましくは70質量%〜99.8質量%の範囲の水、さらにより好ましくは75質量%〜99質量%の範囲、より好ましくは76質量%〜98.5質量%の範囲、より好ましくは77質量%〜98質量%の範囲、さらにより好ましくは78質量%〜97.5質量%の範囲、さらにより好ましくは79質量%〜95質量%の範囲、さらにより好ましくは80質量%〜90質量%の範囲の水、および
ii. 第一の水相の総質量に対して、35質量%以下、好ましくは0.1質量%〜35質量%の範囲、好ましくは0.2質量%〜30質量%の範囲、より好ましくは1質量%〜25質量%の範囲、さらにより好ましくは1.5質量%〜24質量%の範囲、より好ましくは2質量%〜23質量%の範囲、さらにより好ましくは2.5質量%〜22質量%の範囲、さらにより好ましくは5質量%〜21質量%の範囲、さらにより好ましくは10質量%〜20質量%の範囲の、工程段階a3)において抽出剤として使用された有機溶剤以外の少なくとも1つの有機化合物、
ここで、iおよびiiの質量の合計は100質量%になる;
a4) メタクリル酸の少なくとも一部を、工程段階a3)において得られた粗製有機相から分離し且つ随意に精製する段階;
a5) 段階a4)において得られたメタクリル酸の少なくとも一部を随意にエステル化する段階;
b) 段階a3)において得られた第一の水相の少なくとも一部、好ましくは全てを、抽出剤を用いて抽出して、成分iiを含む抽出相および第二の水相を形成する段階、ここで、第二の水相は、第一の水相と比較して、成分iiが減少している;
c) 段階b)において得られた第二の水相を、段階b)において得られた抽出相から少なくとも部分的に分離する段階;
d) 随意に、少なくとも1つの有機化合物を、段階c)において得られた第二の水相から少なくとも部分的に分離して、第二の水相と比較して少なくとも1つの有機化合物が減少した第三の水相を得る段階;
e) 随意に抽出剤の少なくとも一部を抽出相から分離して、少なくとも1つの成分iiを含む抽出物を得る段階。
【0009】
上記の課題を解決するために、以下の工程段階を含む、少なくとも1つの有機化合物を含む水相の処理方法も寄与する:
a) 以下の成分を含む第一の水相を準備する段階:
i. 第一の水相の総質量に対して、少なくとも65質量%、好ましくは65質量%〜99.9質量%の範囲、より好ましくは70質量%〜99.8質量%の範囲の水、さらにより好ましくは75質量%〜99質量%の範囲、より好ましくは76質量%〜98.5質量%の範囲、より好ましくは77質量%〜98質量%の範囲、さらにより好ましくは78質量%〜97.5質量%の範囲、さらにより好ましくは79質量%〜95質量%の範囲、さらにより好ましくは80質量%〜90質量%の範囲の水、および
ii. 第一の水相の総質量に対して、35質量%以下、好ましくは0.1質量%〜35質量%の範囲、好ましくは0.2質量%〜30質量%の範囲、より好ましくは1質量%〜25質量%の範囲、さらにより好ましくは1.5質量%〜24質量%の範囲、より好ましくは2質量%〜23質量%の範囲、さらにより好ましくは2.5質量%〜22質量%の範囲、さらにより好ましくは5質量%〜21質量%の範囲、さらにより好ましくは10質量%〜20質量%の範囲の少なくとも1つの有機化合物、
ここで、iおよびiiの質量の合計は100質量%になる;
b) 第一の水相の少なくとも一部、好ましくは全てを、抽出剤を用いて抽出して、少なくとも1つの成分iiを含む抽出相および第二の水相を形成する段階、ここで、第二の水相は、第一の水相と比較して少なくとも1つの成分iiが減少している;
c) 第二の水相を、抽出相から少なくとも部分的に分離する段階;
d) 随意に、少なくとも1つの有機化合物を、段階c)において得られた第二の水相から少なくとも部分的に分離して、第二の水相と比較して少なくとも1つの有機化合物が減少した第三の水相を得る段階;
e) 随意に、抽出剤の少なくとも一部を抽出相から分離して、少なくとも1つの成分iiを含む抽出物を得る段階。
【0010】
本発明による方法の段階a1)において気相酸化に供されるC
4化合物は、好ましくはイソブチレン、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルデヒドおよびメタクロレインから選択されるC
4化合物、またはそれらの2つまたはそれより多くの混合物である。本発明の好ましい態様において、C
4化合物はメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)またはエチルtert−ブチルエーテル(ETBE)の解離から誘導される。
【0011】
本発明による方法の段階a1)における気相酸化は、好ましくは少なくとも1つの酸化触媒の存在下で行われる。C
4化合物がイソブチレンまたはtert−ブチルアルコールである場合、メタクリル酸を含む気相を得るための気相酸化を一段階で行うことができ、この場合、本願の文脈における一段階とは、メタクロレインへの最初の酸化とメタクリル酸へのさらなる酸化とが、実質的に同じ反応領域において少なくとも1つの触媒の存在下で行われることを意味するとみなされる。選択的に、段階a1)における気相酸化を、1つより多くの段階、好ましくは二段階で、好ましくは互いに分離された2つまたはそれより多くの反応領域において行うことができ、この場合、2つまたはそれより多くの触媒が好ましくは存在し、各々の触媒は好ましくは互いの触媒とは別途の反応領域内に存在する。二段階の気相酸化においては、第一の段階で、好ましくは、C
4化合物がメタクロレインへと少なくとも部分的に酸化され、続いてメタクロレインがメタクリル酸へと少なくとも部分的に酸化される。従って、例えば、第一の反応段階において、好ましくは、少なくとも1つのC
4化合物のメタクロレインへの酸化のために適した少なくとも1つの触媒が存在し、且つ、第二の反応段階において、メタクロレインのメタクリル酸への酸化のために適した少なくとも1つの触媒が存在する。
【0012】
気相触媒酸化のための適した反応条件は、例えば温度約250℃〜約450℃、好ましくは約250℃〜約390℃、および圧力約1atm〜約5atmである。空間速度は、1時間あたり約100〜約6000(NTP)、および好ましくは1時間あたり約500〜約3000で変化できる。C
4原料、例えばイソブチレンの、メタクロレインおよび/またはメタクリル酸への酸化、例えば気相触媒酸化、並びにそのための触媒は、文献、例えばUS5248819号、US5231226号、US5276178号、US6596901号、US4652673号、US6498270号、US5198579号、US5583084号からよく知られている。
【0013】
イソブチレンまたはtert−ブタノールのメタクロレインおよび/またはメタクリル酸への酸化のために適した特に好ましい触媒および方法は、EP0267556号内に記載され、且つ、メタクロレインのメタクリル酸への酸化のために適した特に好ましい触媒および方法は、EP0376117号内に記載されている。これらの文献は、参照をもって本願内に含まれ、且つ、本発明の開示の一部を形成する。
【0014】
本発明による方法における、メタクロレインからメタクリル酸への気相酸化は、好ましくは温度約250〜約350℃およびそれ未満、圧力約1〜約3atm、および容積負荷約800〜約1800Nl/l/hで行われる。
【0015】
酸化剤として、一般には酸素が、例えば空気の形態で、または純粋な酸素、もしくは反応条件下で不活性な少なくとも1つのガス、例えば窒素、一酸化炭素および二酸化炭素の少なくとも1つで希釈された酸素の形態で使用され、この際、酸化剤としては空気が好ましく、且つ、希釈ガスとしては窒素および/または二酸化炭素が好ましい。二酸化炭素が希釈ガスとして使用される場合、好ましくは、これは燃焼、好ましくは反応ガスおよび/または副生成物の触媒燃焼または熱的燃焼からリサイクルされた二酸化炭素である。本発明による方法の段階a1)における気相酸化に供されるガスは、好ましくは水も含み、それは一般には水蒸気の形態で存在する。酸素、単数または複数の不活性ガス、および水を反応相に導入するか、または気相反応の前もしくは気相反応の間、または気相反応の前および間に、C
4化合物と混合できる。
【0016】
本発明による方法の好ましい実施態様において、少なくとも1つのC
4化合物、空気または酸素およびリサイクルされた酸化反応器流出ガス、好ましくはリサイクル前に燃焼された酸化反応器流出ガスを含む混合物を、段階a1)に供給する。反応器流出ガスは好ましくは、分離条件、および燃焼段階の存在および燃焼段階の作用に依存して、少なくとも1つの未反応のC
4化合物、少なくとも1つの炭素酸化物、窒素および酸素、並びに水を含む。
【0017】
本発明による二段階の気相酸化において、第一の段階におけるC
4化合物:O
2:H
2O:不活性ガスの好ましい容積比は、一般に、1:0.5〜5:1〜20:3〜30、好ましくは1:1〜3:2〜10:7〜20である。第二の段階におけるメタクロレイン:O
2:H
2O:不活性ガスの容積比は、好ましくは1:1〜5:2〜20:3〜30、好ましくは1:1〜4:3〜10:7〜18である。
【0018】
本発明による方法の段階a2)において、メタクリル酸を含む気相を冷却し且つ凝縮して(一般に急冷として知られる)、粗製メタクリル酸含有水溶液の形態での凝縮物を得る。前記凝縮を当業者に公知であり且つ適していると考えられる任意の手段によって、例えばメタクリル酸含有気相をその成分の少なくとも1つ、特に水およびメタクリル酸の少なくとも1つの露点未満の温度に冷却することによって行うことができる。適した冷却方法は、当業者に公知であり、例えば少なくとも1つの熱交換器を用いた、または急冷による、例えば気相に液体、例えば水、水性組成物または有機溶剤、例えば芳香族または脂肪族炭化水素、またはそれらの少なくとも2つの混合物から選択される有機溶剤を噴霧することによる冷却であり、その際、好ましい有機溶剤は急冷条件下で比較的低い蒸気圧を有し、例えばヘプタン、トルエンまたはキシレンであり、その際、水が本発明による急冷液として好ましく、且つ、急冷段階自体において形成された凝縮物の少なくとも一部がさらにより好ましい。適した急冷方法は、例えばDE2136396号、EP297445号、EP297788号、JP01193240号、JP01242547号、JP01006233号、US2001/0007043号、US6596901号、US4956493号、US4618709号、US5248819号から当業者に公知であり、アクリル酸およびメタクリル酸の急冷に関するその開示は本願に含まれ、本開示の一部を形成する。本発明によれば、気相を40〜80℃の温度に冷却し、水および/または急冷段階からの凝縮物で洗浄して、メタクリル酸を含む水溶液を得ることが好ましく、前記メタクリル酸を含む水溶液は、種々の量の不純物、例えば酢酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、アクリル酸およびギ酸、並びにアルデヒド、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレイン、メタクロレイン、ケトンおよび未反応の単数または複数のC
4化合物も含んでいることがある。高純度のメタクリル酸を得るためには、それらの不純物並びに水を、可能な最大限まで、メタクリル酸から分離しなければならない。
【0019】
粗製メタクリル酸含有水溶液からの、少なくとも一部のメタクリル酸の抽出を、工程段階a3)において、有機抽出剤、例えば少なくとも1つの有機溶剤、好ましくは本質的に水と不混和性の少なくとも1つの溶剤を用いて行い、水相および有機相を形成できる。工程段階a3)は、水相および有機相の互いからの分離も含む。本発明による方法の段階c)において使用できる好ましい有機溶剤は、メタクリル酸の沸点とは異なる、好ましくはそれよりも低い沸点を有する。好ましくは、本発明による方法において、工程段階a3)において使用される有機抽出剤は、大気圧で測定して161℃未満の沸点を有する。その際、有機抽出剤を、例えば蒸留によって、好ましくは少なくとも部分的に、好ましくは本発明による方法の段階a4)における実質的な程度で、原理的にメタクリル酸から分離でき、ここで、それは好ましくは少なくとも部分的に低沸点物として、蒸留装置内で、純粋なメタクリル酸よりも高い水準で除去される。分離された有機抽出剤またはそれらの一部を、随意に少なくとも1つの冷却および/または精製段階の後に、工程段階a3)に返送できる。この段階のための好ましい有機溶剤は、特に、アルカン、および芳香族、好ましくはアルキル芳香族、炭化水素から選択され、その際、C
6〜C
8−炭化水素から選択される少なくとも1つの有機溶剤が好ましく、その際、ヘプタン、トルエンおよびキシレンが特に好ましく、且つヘプタン、好ましくはn−ヘプタンが最も好ましい。工程段階a3)を、当業者に公知であり且つ適していると考えられる任意の手段によって、好ましくは向流抽出として、例えば溶剤抽出塔、パルス充填塔もしくは充填塔、回転抽出機、洗浄塔、相分離器、または有機相を用いた水相の抽出および水相からの有機相の分離に適した他の装置を用いて実施できる。本発明によれば、少なくとも一部、好ましくは少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも約70質量%、好ましくは少なくとも約80質量%、より好ましくは少なくとも約90質量%の、メタクリル酸水溶液中に含まれるメタクリル酸を有機相に抽出することが好ましい。
【0020】
2つの相: 本発明による方法の段階a4)に導かれるメタクリル酸含有粗製有機相と、成分iおよびii(水および少なくとも1つの有機化合物)を上述の量で含む第一の水相とが、本発明による方法の段階a3)においてそのように得られる。第一の水相中で成分iiとして含まれることがある有機化合物は、気相酸化反応の間に形成される任意の有機化合物、例えば急冷段階において得られた粗製水相に関連して上述されたもの、並びに未反応のC
4化合物、および水相中に残留している任意のメタクリル酸である。例えば第一の水相からの有機相の分離が不完全であったために、第一の水相が、工程段階a2)における抽出のために使用された少量の有機溶剤を含むことがあり得るが、この溶剤は成分iiとしてはみなされない。
【0021】
本発明による方法の段階a4)において、段階a3)において得られたメタクリル酸を含む粗製有機相を分離、好ましくは熱分離法に供して、工程段階a3)において抽出剤として使用された有機溶剤から、そこに含まれるメタクリル酸の少なくとも一部を分離する。熱分離が使用される場合、これは、好ましくは蒸留であり、それによって工程段階a3)における抽出のために使用された有機溶剤が好ましくは蒸留塔の塔頂生成物として、もしくは蒸留塔のより高い水準で取り出される一方で、メタクリル酸またはメタクリル酸を多く含む相は、蒸留塔の塔底生成物として、もしくは抽出溶剤よりも低い水準で取り出される。例えば分留塔または精留塔を使用して、メタクリル酸よりも高い沸点を有する不純物を塔底生成物内に残留させ、且つより高純度のメタクリル酸を、塔底生成物よりも高い水準で取り出すことができるようにすることも可能である。抽出のために使用される有機溶剤が、メタクリル酸の沸点よりも高い沸点を有する場合、メタクリル酸相を塔頂部および/または塔のより高い水準で取り出すことも可能である。そのように得られたメタクリル酸またはメタクリル酸を多く含む相のさらなる精製は、さらなる熱工程、例えば蒸留または精留によって、または他の手段によって、例えば結晶化によるものであってよい。本発明による方法において、工程段階a4)の前またはその間に、中間段階、例えば低沸点物または高沸点物を分離するための1つまたはそれより多くのストリッピングまたは蒸留、固体の不純物を除去するためのろ過、結晶化、洗浄およびその種のものが含まれてもよい。精製および他の分離段階の数は、汚染の量およびメタクリル酸最終生成物の所望の純度に依存する。メタクリル酸がそのままで、例えばメタクリル酸ポリマーの調製のためのモノマーまたはコモノマーとして使用される場合、特に最終用途に依存して、より高い純度が好ましいことがある。メタクリル酸がエステル化される場合、例えばエステルの最終生成物を、メタクリル酸より単純に、より効果的に、またはより効率的に精製できるのであれば、より低い純度のメタクリル酸が許容可能である。
【0022】
そのように得られたメタクリル酸の少なくとも一部の、工程段階a5)におけるエステル化を、当業者に公知であり且つ適していると考えられる任意の方法で、随意にメタクリル酸および/またはメチルメタクリレートの重合を妨げるための重合阻害剤の存在中で、行うことができる。段階a5)におけるエステル化の実施手段は特に限定されない。エステル化を、例えばUS6469202号、JP1249743号、EP1254887号、US4748268号、US4474981号、US4956493号またはUS4464229号内に記載されるように実施でき、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル化に関するそれらの開示は本願に含まれ、且つ本開示の一部を形成する。液相のエステル化が好ましい。エステル化がメタクリル酸とアルコールとの間の直接反応によって生じる場合、適した触媒によって反応を触媒することが好ましい。エステル化触媒は当業者に公知であり、且つ、例えば、不均一触媒または均一触媒、例えば固体状態の触媒または液体の触媒を含む。エステル化触媒は、好ましくは酸性のイオン交換樹脂、例えばUS6469292号、JP1249743号、EP1254887号内に記載されるもの、またはAmberlyst(登録商標)(Rohm and Haas Corp.)、Dowex(登録商標)(Dow Corp.)またはLewertit(登録商標)(Lanxess AG)の商品名で市販されているもの、またはエステル化を触媒できる酸、例えば硫酸、H
2SO
4である。
【0023】
本発明による工程段階a5)において調製されるメタクリレートエステルは、好ましくは式[CH
2=C(CH
3)C(=O)O]
n−Rを有し、且つ、メタクリル酸と式R(OH)
mのアルコールとのエステル化によって形成でき、前記式中、nおよびmは1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数を表し、且つ、Rは線状または分枝の、飽和または不飽和の、脂肪族または芳香族の、環式または直鎖の炭化水素、および線状または分枝の、飽和または不飽和の、脂肪族または芳香族の、環式または直鎖のヘテロ原子含有炭化水素、例えばアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、他の窒素および/または酸素含有基、グリコール、ジオール、トリオール、ビスフェノール、脂肪酸基からなる群から選択され、ここでRは好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、ブチル、特にn−ブチル、イソ−ブチル、ヒドロキシエチル、好ましくは2−ヒドロキシエチル、およびヒドロキシプロピル、好ましくは2−ヒドロキシプロピルまたは3−ヒドロキシプロピル、2−エチルヘキシル、イソデシル、シクロヘキシル、イソボルニル、ベンジル、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、ステアリル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、2−tert−ブチルアミノエチル、エチルトリグリコール、テトラヒドロフルフリル、ブチルジグリコール、メトキシポリエチレングリコール−350、メトキシポリエチレングリコール500、メトキシポリエチレングリコール750、メトキシポリエチレングリコール1000、メトキシポリエチレングリコール2000、メトキシポリエチレングリコール5000、アリル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、ジウレタン、エトキシ化ビスフェノールA、10個のエチレンオキシド単位を有するエトキシ化ビスフェノールA; トリメチロールプロパン、例えば25個のエチレンオキシド単位を有するエトキシ化C
16〜C
18−脂肪アルコール、2−トリメチルアンモニウムエチルを表す。
【0024】
メタクリル酸エステルを、当業者に公知の他の方法によって、例えばエステル交換反応によって、メチルメタクリレートから調製することもできる。ヒドロキシエステル誘導体のさらなる可能な調製において、本発明によるメタクリル酸を、相応の酸素含有環、例えばエポキシド、特にエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの開環反応において反応させることができる。
【0025】
好ましいメタクリル酸エステルは、アルキルメタクリレート、特にメチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、ブチル、メタクリレート、特にメチル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチルメタクリレート、特にメチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヒドロキシエステルメタクリレート誘導体、例えばヒドロキシエチルメタクリレート、好ましくは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、およびヒドロキシプロピルメタクリレート、好ましくは2−ヒドロキシプロピルメタクリレートまたは3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、および他のメタクリレートエステル、例えばエチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、2−tert−ブチルアミノエチルメタクリレート、エチルトリグリコールメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ブチルジグリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール−350メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール500メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール750メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール1000メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール2000メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール5000メタクリレート、アリルメタクリレート、エトキシ化された(随意に例えば25モルのEOを有する)C
16〜C
18−脂肪酸アルコールのメタクリル酸エステル、2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロリド; エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート、ポリエチレングリコール400ジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシ化(随意に、例えば、10個のEOを有する)ビスフェノールAジメタクリレート; トリメチロールプロパントリメタクリレートであり、その際、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレートおよびヒドロキシエステルメタクリレート誘導体が特に好ましい。
【0026】
本発明による方法の工程段階b)において、成分iおよびiiを含む第一の水相の少なくとも一部、好ましくは全部を、抽出剤を用いて抽出して、抽出相と第二の水相とを形成する。本発明によれば、少なくとも1つの成分iiの少なくとも一部を抽出相中に抽出することにより、第二の水相が、第一の水相と比較して、少なくとも1つの成分iiが減少していることが好ましい。好ましくは、抽出を、周囲温度または高められた温度で、好ましくは約15℃〜約70℃の範囲の温度、好ましくは約20℃〜約65℃の範囲の温度、より好ましくは約30℃〜約60℃の範囲の温度、さらにより好ましくは約40℃〜約55℃の範囲の温度で行う。該抽出は、好ましくは液体−液体抽出である。抽出を、当業者に公知であり且つ適していると考えられる任意の手段によって、例えば抽出塔、洗浄塔、相分離器または当業者に公知であり且つ液体−液体抽出のために適していると考えられる他の装置を用いて行うことができる。本発明による方法の工程段階b)のために適していることが判明している抽出剤は、有機溶剤、イオン性液体および有機または無機のオイルである。本発明による方法の工程段階b)において使用するために適した抽出剤、特に有機溶剤は、下記i)〜iv)の好ましくは少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは少なくとも3つの、より好ましくは全ての特性によって特徴付けられる:
i) 本願内に記載される方法によって、25℃での抽出剤・水の系において酢酸について測定された平均k値が、0.1〜100の範囲、好ましくは0.2〜90の範囲、より好ましくは0.3〜80の範囲、さらにより好ましくは0.3〜70の範囲、より好ましくは0.4〜60の範囲である;
ii) 蒸発エンタルピーが、2260kJ/kg以下、好ましくは2000kJ/kg以下、好ましくは1500kJ/kg以下、より好ましくは1000kJ/kg以下、さらにより好ましくは800kJ/kg以下である;
iii) 沸点が、35〜140℃の範囲、好ましくは35〜125℃の範囲、より好ましくは40〜120℃の範囲、さらにより好ましくは40〜110℃の範囲である;
iv) 水中での可溶性が、温度25℃、好ましくは温度35℃、より好ましくは温度45℃、さらにより好ましくは温度50℃で、150g/l以下、好ましくは130g/l以下、より好ましくは110g/l以下、さらにより好ましくは100g/l以下、さらにより好ましくは90g/l以下である。
【0027】
特段記載されない限り、上記の特性は、約50℃且つ大気圧で測定される。用語「k値」は、分配係数、即ち、有機(抽出)相と水相との間の、本発明の成分iiのそれぞれの有機化合物の平衡状態での分布比に関する。1よりも大きいk値は、それぞれの有機化合物が、水相中よりも多く有機(抽出)相中に存在することを意味する。1未満のk値を有する抽出剤を、本発明による方法の良い効果Iのために使用できる一方で、より高いk値、例えば1より大きいk値が好ましく、なぜなら、それらは、第一の水相から抽出相への、有機化合物のより完全な抽出を示すからである。100までのk値が可能である一方で、本発明によれば、約5、10、20、30、40、50、60、70、80または90までのk値を有する抽出剤も好ましいことがある。より低いk値、特に5未満および上記の範囲内のk値も、例えば、特に抽出剤も1つまたはそれより多くの他の好ましい特性を有利な範囲で有する場合には許容可能である。抽出剤が有機溶剤である場合、その蒸発エンタルピーおよび沸点は、好ましくは、特に抽出が実施される温度で抽出剤が好ましくは液体であるという実施上の限定の範囲内で可能な限り低い。前記蒸発エンタルピーは、好ましくは約22kJ/molを下回らず、且つ沸点は好ましくは0℃より高く、且つより好ましくは抽出が実施される稼働温度を下回らない。前記蒸発エンタルピーは、本発明による方法の段階c)における抽出相からの第二の水相の分離後の第二の水相中に残留している任意の残留抽出剤を熱分離するために必要なエネルギー入力を可能な限り多く減少させるために、好ましくは水の蒸発エンタルピー、2260kJ/kgまたは40.65kJ/molを上回らない。前記蒸発エンタルピーは、成分iiの1つまたはそれより多くの有機化合物から抽出剤を熱分離するために必要なエネルギー入力を可能な限り多く減少させるために、好ましくは成分iiの有機化合物の少なくとも1つの蒸発エンタルピーも上回らない。前記蒸発エンタルピーがメタクリル酸、アクリル酸および酢酸の少なくとも1つの蒸発エンタルピーを上回らないことが特に好ましい。同じ理由、および抽出剤の分離を容易にするために、抽出剤の沸点は、好ましくは成分iiの有機化合物の少なくとも1つの沸点よりも低く、好ましくはメタクリル酸、アクリル酸および酢酸の少なくとも1つの沸点よりも低く、好ましくは、好ましい範囲において可能な限り低い。イオン性液体または有機もしくは無機のオイルを抽出剤として使用する場合、それらの蒸発のエンタルピーおよび沸点は、好ましくは可能な限り高く、好ましくは水、および成分iiの少なくとも1つの有機化合物の少なくとも1つよりも高い。抽出剤は、抽出相と第二の水相との分離を可能な限り完全にすることを可能にするために、特に抽出温度で、水中での好ましくは低い可溶性しか有さず、且つ、好ましくは本質的または完全に水中で不溶性であり、並びに好ましくは本質的または完全にそれらと不混和性である。
【0028】
本発明による方法の工程c)において、第二の水相が少なくとも部分的に抽出相から分離される。本発明による方法の段階b)の抽出および工程段階c)の分離を、当業者に公知であり且つ適していると考えられる任意の手段によって、好ましくは向流抽出によって実施でき、その際、工程段階b)およびc)は、好ましくは同一の装置内で、例えば抽出塔、パルス充填塔もしくは充填塔、回転抽出機、特に分離のために遠心力を使用するもの、洗浄塔、相分離器、または水相からの有機相またはイオン性液体の分離のために適した他の装置を用いて実施される。工程段階b)における抽出剤として有機溶剤を使用する場合、工程段階c)における分離後に得られた抽出相を焼却することが可能である。かかる焼却は、本質的に有機抽出相が燃焼として作用し、従って燃料を購入する必要が減少するという利点を有する。この選択肢は、例えば燃料のコストまたは関連する要求、例えば輸送の容易さおよび/またはコストが不利となる場合、および/または成分iiの有機化合物の1つまたはそれより多くの市場価値が、特にそれらの分離および/または精製のために必要とされる全体的な努力および費用に比して低い場合に、好ましいことがある。
【0029】
第二の水相は、工程段階b)において使用される抽出剤以外の有機化合物を、第二の水相の総質量に対して好ましくは5.0質量%以下、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらにより好ましくは2.5質量%以下含む。第二の水相中の抽出剤以外の有機化合物の量は、好ましくは可能な限り少なく、且つ好ましくは0質量%であるが、0.5質量%、0.8質量%、1.0質量%または1.2質量%の下限も許容可能である。工程段階b)からのいかなる残留抽出剤も含まない第二の水相中の有機化合物の総量(一般にはホルムアルデヒド)は、第二の水相の総質量に対して約1.5質量%までであってよく、且つ、その残りはC
2またはそれより多くのC鎖の有機化合物、特にC
2〜C
6−またはC
2〜C
4−化合物で構成される。かかる有機化合物の総量は、工程段階b)の抽出に含まれる抽出段階または抽出サイクルの数、およびこの抽出において使用される抽出剤の量に依存する。抽出段階の数がより多いと、第二の水相の有機化合物含有率はより低くなるが、一般により長く、且つ/または多段階の抽出、および/またはより多くの量の抽出剤も必要とされ、そのことが、さらに処理または焼却されなければならないより大容積の抽出相につながりかねない。
【0030】
本発明による方法は、中間段階、例えば低沸点物を除去するためのストリッピング、または低沸点物または高沸点物を除去するための蒸留を含むこともできる。
【0031】
本発明による方法の随意の段階d)において、少なくとも1つの有機化合物を少なくとも部分的に第二の水相から分離して、少なくとも1つの有機化合物が第二の水相と比較して減少されている第三の水相を得る。好ましくは、第三の水相は、工程段階b)において使用される抽出剤以外の有機化合物を、第三の水相の総質量に対して3.0質量%以下、好ましくは2.8質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.2質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下含む。第三の水相における有機化合物の量は、好ましくは可能な限り低く、且つ好ましくは0質量%である。有機化合物が第三の水相中に存在する場合、約1.5質量%までがホルムアルデヒドの形態であってよく、その残りは、工程段階b)において使用された抽出剤以外のC
2またはそれより多くのC鎖の化合物、特にC
2〜C
6−またはC
2〜C
4−化合物を含む。従って、好ましくは、第三の水相は、C
1化合物(ホルムアルデヒド)以外且つ工程段階b)において使用された抽出剤以外の有機化合物を、第三の水相の総質量に対して5000ppm未満、好ましくは4000ppm未満、より好ましくは3000ppm未満、好ましくは0〜3000ppmの範囲、より好ましくは0〜2500の範囲、より好ましくは0〜2200ppmの範囲、最も好ましくは2000ppm以下含み、ここで、第三の水相の意図されるさらなる用途および/または処理に依存して、500ppm、または1000ppm、または1500ppm、または1800ppmの下限が許容可能である。工程段階d)における分離は、好ましくは熱分離、例えば、好ましくは大気圧での蒸留または共沸蒸留である。工程段階d)において、第二の水相中に残留している工程段階b)からの残留抽出剤を可能な最大の程度で分離することが好ましい。工程段階b)において使用された抽出剤が水との共沸物を形成する場合、その分離は共沸蒸留、例えば共留剤を使用する共沸蒸留を含むことができる。本発明による方法の段階d)の好ましい態様において、蒸留による、特に分留または精留による分離が工程段階d)において使用される場合、低沸点成分、特に抽出剤よりも低い沸点を有する成分が塔頂部で分離され、抽出剤が塔の側方出口で引き出され、且つ、任意の成分iiが抽出剤と共に、または塔のさらなる側方出口で、好ましくは抽出剤が引き出される側方出口よりも下の側方出口で引き出されることが好ましい。そのように分離された任意の抽出剤を、その後、本発明による方法の段階b)における抽出にリサイクルでき、それが本発明による方法の段階h)に相応する。成分iiの1つまたはそれより多くの有機化合物が、この段階において分離された任意の抽出剤と同じ相中に分離される場合、この相を工程段階c)において分離される抽出相に添加することができる。成分iiの1つまたはそれより多くの有機化合物が、抽出剤とは異なる相中に分離される場合、この異なる相を本発明による方法の段階f)または段階j)にみちびくことができる。本発明による方法の段階d)は、好ましくは、有機溶剤が本発明の方法の工程段階b)における抽出剤として使用される場合に行われるが、しかし、イオン性液体またはオイル抽出が工程段階b)において使用された場合もそれが実施されることがある。
【0032】
本発明による方法の段階e)において、工程段階b)において使用された抽出剤が、抽出相から少なくとも部分的に分離されて、少なくとも1つの成分iiを含む抽出物が得られる。有機溶剤が抽出剤として使用された場合、工程段階e)における分離は好ましくは熱分離法によって行われる。適した熱分離法は当業者に公知であり、その際、本発明によれば蒸留、分留、精留およびその種のものが好ましく、真空蒸留が好ましい。1つまたはそれより多くの分離法を、本発明による工程段階e)に含めることができる。工程段階b)において抽出剤として使用される有機溶剤が、分離されるべき1つまたはそれより多くの成分iiよりも低い沸点を有する、好ましい熱分離工程において、抽出剤は蒸留塔の塔頂部または分留塔または精留塔の単数または複数のより高い水準で、好ましくは塔の上半分で取り出され、且つ、1つまたはそれより多くの成分ii、または少なくとも1つの成分iiを含む抽出物は、抽出剤が取り出される水準に対してより低い単数または複数の水準で取り出されるか、または塔底部で取り出される。工程段階b)における抽出剤としての少なくとも1つの成分iiの沸点よりも低い沸点を有する有機溶剤を使用することの利点は、成分iiのいくつかまたは全て、特にメタクリル酸およびアクリル酸が熱に敏感であり、且つ、温度上昇の際に二量体化、オリゴマー化、ポリマー化の傾向が高まることである。従って、高められた温度でのそれらの化合物の熱処理は、一般に、重合阻害剤の添加を必要とする。より低い沸点の抽出剤を分離すべき場合、および/または該分離が真空蒸留である場合、この分離を、それぞれの成分iiの沸点より下である、より低い温度で行い、ポリマー化傾向を低減し、従って重合阻害剤の必要性も低減することができる。
【0033】
イオン性液体または有機もしくは無機のオイルが工程段階b)における抽出剤として使用される場合、工程段階e)における分離は、好ましくは相分離または蒸発によって、好ましくは単数または複数の揮発性成分の蒸発によって行われる。
【0034】
本発明による方法は、工程段階のいずれかまたは全ての間に、1つまたはそれより多くの中間段階、例えば低沸点物を除去するためのストリッピング、または低沸点物もしくは高沸点物を除去するための蒸留を含むこともできる。
【0035】
本発明による方法の好ましい実施態様において、該方法はさらに、以下の工程段階:
f) 少なくとも1つの成分iiの少なくとも一部を抽出物から分離する段階
を含む。
【0036】
工程段階f)における分離は、好ましくは熱分離法、好ましくは蒸留、分留または精留、好ましくは真空蒸留であり、その際、少なくとも1つの成分iiの少なくとも一部が抽出物から分離される。抽出物は、例えば、分離されるべき少なくとも1つの成分iiのほかに、抽出剤または他の成分iiを含むことができる。抽出物中に1つより多くの成分ii、例えば2つまたはそれより多くの成分iiが含まれる場合、工程段階f)において1つだけの成分iiを分離するか、または2つまたはそれより多くの成分iiを分離することが可能である。分離手段としての蒸留、分留または精留の選択は、当業者によって容易に決定でき、且つ、主に少なくとも1つの成分iiが分離されるべき抽出物中の他の化合物の数および量に依存し、並びに、分離されるべき1つまたはそれより多くの成分iiのそれぞれの沸点および分離されることが意図されていない抽出物の成分の沸点、特に抽出物の他の成分の沸点の、分離されるべき少なくとも1つの成分iiの沸点との近さ、および1つより多くの成分iiが分離されるべき場合は、互いに分離されるべき成分iiの沸点の近さに依存する。考慮すべき他の要因は、分離されるべき少なくとも1つの成分の所望の純度である。本発明による方法の段階f)における分離に続いて、少なくとも1つの成分iiのさらなる精製が望ましいか、またはさらには必要であることがある。
【0037】
本発明による方法において、さらなる工程段階において、
g) 第三の水相を少なくとも1つの生物学的精製処理に供する
ことが可能である。
【0038】
本発明の文脈において、用語「生物学的精製処理」とは、例えば汚染物または不純物、好ましくは1つまたはそれより多くの生物学的生物および/または微生物、または生物学的もしくは生化学的に活性な物質、例えばかかる生物または微生物から誘導される物質による有機汚染物を除去することによって、水の純度を高める任意の処理を意味することが意図されている。このように除去されるべき汚染物および不純物は、一般に、第三の水相中に残っている有機化合物である。除去は、有機化合物のいくつかまたは全ての消化または破壊によって行われる。水の純度の向上は、達成される純度に依存して、好ましくは、廃水を例えば工業的なプロセス水として、または本発明による方法において、特に工程段階a1)またはa2)の1つまたは両方において再利用できるか、または環境もしくは給水系に放出できることを意味する水準への、例えば汚染物質および/または不純物の減少、および/または水の生化学的酸素要求量(BOD)もしくは化学的酸素要求量(COD)の減少によって測定される。生物学的精製処理は、当業者に公知であり、且つ、例えば1つまたはそれより多くのいわゆる活性スラッジ処理であってよい。かかる処理は慣例的であり、且つ当業者によく知られている。生物学的精製処理を1つまたはそれより多くの段階で行うことができ、且つ、それは連続的または断続的であってよい。
【0039】
第三の水相が、工程段階g)において少なくとも1つの生物学的精製処理に供される場合、この処理は好ましくは好気性処理および嫌気性処理の少なくとも1つである。2つまたはそれより多くの段階を有する処理の1つの実施態様において、例えば、第一の嫌気性処理の後に好気性処理をしてもよいし、第一の好気性処理の後に嫌気性処理をしてもよいし、または、例えば連続的なバッチ式反応器内での一連の嫌気性処理および/または好気性処理を使用してもよい。
【0040】
本発明による方法の1つの態様において、さらなる工程段階において、
h) 工程段階d)およびe)の少なくとも1つにおいて分離された抽出剤の少なくとも一部を、工程段階b)にリサイクルする。
【0041】
より多くの揮発性成分を除去するための1つまたはそれより多くの中間段階、例えば冷却、精製、例えば蒸留によるもの、洗浄もしくはその種のもの、またはストリッピングを随意に用いて、工程段階d)およびe)の1つまたは両方において分離された抽出剤の一部または実質的に全てを、工程段階b)に返送できる。抽出剤のそのようなリサイクルは、工程における抽出剤の総量が減少する、特に、廃棄されなければならないむだな抽出剤の量が減少するという利点を有する。
【0042】
本発明による方法の工程段階f)における分離が熱分離である場合、それは常に可能ではないか、または、例えば2つまたはそれより多くの成分が非常に類似した沸点を有する場合、成分を互いに分離することが例えば経済的もしくは技術的に実用的ではないことがある。これは特に、工程段階f)に供される抽出物が比較的多数の成分を含む場合、特に、1つまたはそれより多くの成分iiが工程段階f)において分離されるべき少なくとも1つの成分iiと類似した沸点を有する場合であって、工程段階f)における1つだけの成分iiの分離の微細な調節がより困難になるようなケースに該当し得る。その際、2つまたはそれより多くの成分iiをさらなる工程段階j)において分離することが、より適切またはより実用的であることがあり、それぞれの成分iiの特定の分離の要求のためのそのような適合を、より容易に達成することができる。従って、本発明による方法の1つの態様において、段階f)において得られた少なくとも1つの成分iiは、少なくとも2つの成分iiの混合物であり、且つ、さらなる工程段階j)において、少なくとも1つの成分iiが、この混合物から少なくとも部分的に分離される。
【0043】
本発明による方法の工程段階j)における分離は、1つまたはそれより多くの分離段階、例えば、本発明による方法における他の分離段階について上記で既に議論したような熱分離、クロマトグラフィーによる分離、例えば1つの成分iiを優先的に反応させて1つまたはそれより多くの他の成分iiからより容易に分離可能な反応生成物を形成することによる、または、2つまたはそれより多くの成分iiを反応させて互いからより容易に分離可能な反応生成物を形成することによる、化学的分離、または当業者に公知であり且つ適していると考えられる他の分離手段を含むことができる。
【0044】
本発明による方法の好ましい実施態様において、成分iiの少なくとも1つの有機化合物、好ましくは、工程段階j)において少なくとも部分的に分離された少なくとも1つの成分iiは、カルボン酸、アルデヒドおよびケトンから選択される少なくとも1つの有機化合物である。それらの中で、本発明によれば、少なくとも1つの成分ii、好ましくは工程段階j)において少なくとも部分的に分離された少なくとも1つの成分iiは、酢酸、アクリル酸、プロピオン酸およびメタクリル酸の少なくとも1つであることが好ましい。
【0045】
工程段階e)、f)およびj)の少なくとも1つにおいて分離された少なくとも1つの成分iiが、メタクリル酸であるかまたはメタクリル酸を含む場合、本発明による方法の好ましい実施態様において、このメタクリル酸相の少なくとも一部を、工程段階a2)において得られた粗製水相に、および/または工程段階a3)において得られた粗製有機相に添加する。この実施態様は、例えば工程段階e)、f)およびj)の1つまたはそれより多くにおいて分離されたメタクリル酸が、その最終的な用途のために望ましい純度ではない場合に好ましいことがある。粗製水相への添加は、例えば、分離されたメタクリル酸が、メタクリル酸よりも低い沸点を有する1つまたはそれより多くの成分と共に分離されている場合に好ましいことがある。粗製有機相への添加は、例えば、メタクリル酸以外の成分がメタクリル酸よりも高い沸点を有する場合に好ましいことがあり、なぜなら、そのようなより高い沸点のものは、工程段階a4)において分離できるからである。工程段階e)、f)およびj)の少なくとも1つにおいて分離されたこのメタクリル酸含有相をどの相に添加するかを決定する上で、メタクリル酸の他の成分に対する、特に他の成分iiに対する相対比も役割を果たし得る一方で、工程段階e)、f)およびj)の少なくとも1つにおいて分離された少なくとも1つの成分ii中の他の成分の性質がより大きなウェートを占める。例えば、工程段階e)、f)およびj)の少なくとも1つにおいて分離されたメタクリル酸が比較的純粋である、例えば約5質量%以下、好ましくは約4質量%以下、好ましくは約3質量%以下、好ましくは約2質量%以下、好ましくは約1質量%〜約2質量%の範囲の不純物または他の成分iiを含む場合、このメタクリル酸を工程段階a4)の随意の精製段階に導入することが好ましいことがある。
【0046】
本発明による方法の他の態様において、工程段階e)、f)およびj)の少なくとも1つにおいて分離された少なくとも1つの成分iiの少なくとも一部、または工程段階a3)において得られた第一の水相の少なくとも一部を、工程段階:
k) エステル化して、少なくとも1つのエステルを含むエステル相を得る段階
に供する。
【0047】
この段階は、それぞれ少なくとも1つの成分iiがカルボン酸である場合に好ましいことがある。エステル化段階の詳細は、本発明による方法の工程段階a5)について上述されたものと同じである。例えば、分離されたそれぞれの成分iiの得られる純度、それぞれの成分iiについて、そのエステルと比較した市場またはさらなる用途によっては、工程段階e)、f)およびj)の少なくとも1つにおいて分離された少なくとも1つの成分iiをエステル化することが、それぞれ少なくとも1つの成分iiそれ自体を得ることよりも、またはそれに加えて、好ましいことがある。例えば、第一の水相が少ない割合のみの不純物および/または分離されることが意図されていない成分ii、例えば不純物の総量が第一の水相の総質量に対して約6質量%未満、好ましくは約5質量%未満、好ましくは約4質量%未満、より好ましくは約3質量%未満である不純物および/または分離されることが意図されていない成分ii、特に例えば成分iiそれ自体からよりもそれぞれの成分iiのエステルからのほうがより容易に分離できる不純物を含む場合、工程段階a3)において得られた第一の水相中に含まれる少なくとも1つの成分iiのエステル化が好ましいことがある。
【0048】
本発明によるエステル相中に含まれる特に好ましいエステルは、C
1〜C
4−カルボン酸およびC
1〜C
4−アルコールに基づき、その際、C
2〜C
4−カルボン酸に基づくエステルが好ましい。工程段階a5)と関連して述べられたメタクリレートエステルの他に特に好ましいエステルは、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、イソブチルアセテート、sec−ブチルアセテート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、n−プロピルプロピオネート、イソプロピルプロピオネート、n−ブチルプロピオネート、イソブチルプロピオネート、sec−ブチルプロピオネートであり、その中で、アセテートおよびアクリレートが好ましい。
【0049】
本発明によれば、エステル相は少なくとも2つのエステルを含むことが可能である。これは、工程段階e)、f)およびj)の少なくとも1つにおいて分離された少なくとも1つの成分ii、または工程段階a3)において得られた第一の水相の少なくとも一部が、反応してエステルを形成できる少なくとも2つの成分ii、特に少なくとも2つのカルボン酸を含む場合であり得る。この実施態様は、反応してエステルを形成できる少なくとも2つの成分iiが、例えばそれらの特性、例えば沸点、特定の溶剤中での可溶性および揮発性が非常に近く、例えば熱または他の手段によって特に分離困難である一方で、それらのエステルは互いからあまり困難ではなく分離できる場合に、好ましいことがある。
【0050】
本発明による方法はさらに、工程段階
m) 少なくとも1つのエステルを、エステル相から少なくとも部分的に分離する段階、
n) 工程段階m)において分離された少なくとも1つのエステルを随意に精製する段階
を含むことができる。
【0051】
一般に、該エステル相は、少なくとも1つのエステルの他に、溶剤、例えば水、またはエステル化反応のために適した少なくとも1つの有機溶剤またはそれらの混合物、並びに未反応の成分iiおよび場合により単数または複数のさらなるエステルを含むことがある。工程段階m)における分離は、当業者に公知であり且つそれぞれのエステルをエステル相から分離するために適していると考えられる任意の分離手段によるものであってよい。適した分離手段の例は、例えば熱分離、例えば蒸留、分留もしくは精留、エステル相の他の成分と比較した少なくとも1つのエステルの異なる可溶性に基づく分離手段、固体−液体分離手段、例えば特にろ過である。必要であるかまたは望ましい場合、工程段階m)において分離された少なくとも1つのエステルの精製を行うこともできる。精製手段は、エステルに依存し、例えば熱的な手段による精製、クロマトグラフィー手段による精製、洗浄による精製、または結晶化による精製を全て考慮することができる。
【0052】
本発明による方法の好ましい実施態様において、工程段階k)、m)およびn)の少なくとも1つにおいて得られた少なくとも1つのエステルの少なくとも一部を、工程段階b)における抽出剤として使用する。
【0053】
本発明による方法の1つの実施態様において、該方法はさらに、
aa1) メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を解離させて少なくとも1つのC
4化合物およびメタノールを得る段階
を含み、その際、少なくとも1つのC
4化合物の少なくとも一部を原料として工程段階a1)の少なくとも1つの気相酸化に供給する。MTBEは、イソブチレンのための供給原料として広く使用されており、且つ、MTBEの解離は当該技術分野でよく知られている。MTBEの解離は、当業者に公知の任意の適した手段によって行うことができる。適した触媒および反応条件は、例えばEP1149814号、WO04/018393号、WO04/052809号; Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第五版、Vol.A4、488ページ; V. Fattore, M. Massi Mauri, G. Oriani, G. Paret, Hydrocarbon Processing、1981年8月、101−106ページ; Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第五版、Vol. A16, 543−550ページ; A. Chauvel, G. Lefebvre, "Petrochemical Processes, Technical and Economic Characteristics"、Vol. 1、Editions Technip、Paris、1989、213ページ以降.; US5336841号、US4570026号、およびそこで挙げられている参考文献内に記載されている。これらの参考文献の開示は、参照をもって本願内に含まれ、且つ、本発明の開示の一部を形成する。
【0054】
MTBEの解離の2つの主生成物は、C
4化合物のイソブチレンおよびメタノールである。さらなるC
4化合物の第三ブタノールも解離反応生成物相内に含まれていることもある。イソブチレンおよび第三ブタノールのいずれかまたは両方を原料として工程段階a1)に供給し、この工程段階のための原料のC
4化合物の含有量全体を構成するか、または他の源からのさらなるC
4含有量に追加することができる。例えば、少なくとも1つのC
4化合物とメタノールとを互いから可能な限り分離し、且つ解離からの任意の副生成物であって気相酸化に悪影響を及ぼしかねないものを除去するために、MTBEの解離とそのように得られた少なくとも1つのC
4化合物を工程段階a1)における気相酸化に供給することとの間の1つまたはそれより多くの中間の分離段階および/または精製段階があることが可能である。分離および/または精製は、当業者に公知であり且つ適していると考えられる任意の手段によるものであってよい。適した精製および分離方法は、例えばEP1149814号、WO04/018393号およびWO04/052809号内に記載されている。メタノールの分離後、C
4化合物のイソブチレンを主成分として含む解離相を、その後、随意に精製し、且つ原料として工程段階a1)に供給することができる。適した精製方法は、当業者に公知であり、且つ、好ましくは蒸留、抽出、吸着、吸収、クロマトグラフィーまたは洗浄の少なくとも1つ、好ましくは蒸留および抽出の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも1つの蒸留、および少なくとも1つの抽出を含む。未反応のMTBEをこの段階においてC
4化合物相から少なくとも部分的に分離することができる。分離されたMTBEを随意に精製し、且つ少なくとも部分的に解離反応にリサイクルすることができる。
【0055】
本発明による方法の好ましい実施態様において、工程段階aa1)において得られたメタノールを工程段階k)に供給する。本発明による方法の他の態様において、工程段階aa1)において得られたメタノールを工程段階a5)に供給することができる。メタノールを、好ましくは熱精製、例えば蒸留、分留または精留、結晶化、抽出、塔または洗浄によって、より好ましくは少なくとも1つの蒸留によって随意に精製できる。メタノールの精製の例は、EP1254887号内に記載されている。
【0056】
本発明は、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルの少なくとも1つを製造するための装置であって、互いに流体接続されている少なくとも以下の要素:
A1) 気相酸化ユニット、
A2) 急冷ユニット、
A3) 第一の抽出ユニット、
A4) 第一の分離ユニット、
A5) 随意に、第一のエステル化ユニット、
B) 第二の抽出ユニット
を含む前記装置にも関する。
【0057】
「流体接続されている」との用語は、本願では、前記ユニットが、流体(液体、気体、蒸気、超臨界流体または任意の他の流体の少なくとも1つであってよい)が1つのユニットから少なくとも1つの他のユニットへとみちびかれ得るように接続されていることを意味するとして理解される。例えば、これは、例えば反応物および支配的な条件に対して耐性がある材料、例えばステンレス鋼またはガラス、または当業者に公知の任意の他の適した材料製のチューブまたはパイプを介した直接的な接続によって、または、タンク輸送手段、もしくはユニット間に配置されたタンクまたはリザーバーを用いて間接的に達成することができる。ガスがガス状の形態で導かれ、且つガス状の形態のままであるべき場合、ガスをみちびく手段は、好ましくは該ガスの露点より高い温度で保持される。液体がみちびかれるべき場合、該液体をみちびく手段は、好ましくは、該液体および/または該液体中に存在する成分の凝固点および/または析出点より高い温度で保持される。これは、それぞれのガスまたは液体をみちびく手段の断熱および/または加熱によって達成できる。全ての反応器、塔、および他の装置の要素は好ましくは、反応物、および特にそれらが供される条件、例えば温度および圧力条件に対して耐性のある材料から製造されている。
【0058】
気相酸化ユニットA1)は、好ましくは、気相反応を行うために適した少なくとも1つの反応器、特に圧力反応器、好ましくは、例えば管型および/またはシェル型反応器として形成される少なくとも1つの多管型反応器、および/または少なくとも1つのプレート型反応器および/または少なくとも1つの流動床反応器を含み、ここで、多管型反応器が好ましい。酸化触媒が少なくとも1つの管内に配置され、好ましくはその際、前記管が酸化触媒で充填されるかまたは被覆され、好ましくは充填されている少なくとも1つの多管型反応器が特に好ましい。本発明による好ましい酸化触媒は、本発明の方法に関連して上述されたものである。反応器の材料は、反応物および反応器内部での支配的な条件に対して耐性があり且つ好ましくは不活性であるべきである。適した反応器は、例えばMAN DWE GmbH(Deggendorfer Werft、ドイツ)から、または株式会社IHI(日本)から市販されており、且つ、当業者の一般的な知識の範疇である。
【0059】
二段階の気相酸化において、気相酸化ユニットは、それぞれ酸化触媒を含む少なくとも2つの反応ゾーンを含むことができる。前記少なくとも2つの反応ゾーンは、単独の反応器内の少なくとも2つの反応ゾーン、または少なくとも2つの反応器であってよい。第一の反応ゾーン内の酸化触媒は、好ましくは、少なくとも1つのC
4化合物、好ましくはイソブチレンおよび/またはtert−ブタノールをメタクロレインに酸化するための酸化触媒であり、且つ、第二の反応ゾーン内の酸化触媒は、好ましくはメタクロレインのメタクリル酸への酸化のために適している。適した触媒は、本発明による方法に関連して上述されたものである。
【0060】
本発明の装置の好ましい態様において、少なくとも1つの酸化剤源、好ましくは酸素、好ましくは空気のための少なくとも1つの供給手段、および水および/または蒸気のための少なくとも1つの供給手段は、気相酸化ユニットと、流体接続されている。気相酸化ユニットが少なくとも第一の酸化領域およびさらなる酸化領域を含む場合、該装置は各々の酸化領域について、少なくとも1つの酸化剤源のための少なくとも1つの供給手段、および水および/または蒸気のための少なくとも1つの供給手段を含むことができる。該装置はさらに、希釈剤、例えば窒素、アルゴン、および/または二酸化炭素、好ましくは窒素または二酸化炭素、例えば触媒燃焼ユニット(CCU)もしくは熱燃焼ユニット(TCU)からの二酸化炭素含有リサイクルガスのための供給手段を含むことができ、好ましくはCCUまたはTCUは本発明による装置の下流にある。それぞれの供給手段は、反応物および支配的な条件に対して耐性のある材料、例えばステンレス鋼またはガラス製であるべきである。好ましい設計においては、酸素、希釈剤および水が、それぞれの反応器に入る前にC
4流に供給され、予め形成された混合物が反応器に入る。
【0061】
本発明による方法の段階a1)は、好ましくは気相酸化ユニット内で行われる。
【0062】
本発明による装置の好ましい実施態様において、急冷ユニットA2)は、吸収ユニットであり、そこでガス状の酸化相が凝縮および/または吸収されて液相が形成される。触媒反応ゾーンを離れ、酸化相中に存在するメタクリル酸が前記吸収ユニット内で凝縮されて、主な酸化生成物としてのメタクリル酸を含む溶液、好ましくは水溶液を形成することが好ましい。吸収ユニット内で、未反応のメタクロレインも分離することができ、且つ、望ましい場合には、さらなる反応のために気相酸化ゾーンへと返送できる。本発明による装置内で使用するために適した急冷ユニットは当業者に公知である。本発明による方法の段階a2)は、好ましくは吸収ユニット内で行われる。
【0063】
本発明による装置の好ましい実施態様において、急冷ユニットA2)の次に第一の抽出ユニットA3)がある。急冷ユニットA2)内で形成されたメタクリル酸含有水溶液を、第一の抽出ユニットA3)にみちびき、そこで、有機溶剤が供給され、その溶剤中にメタクリル酸が好ましくは本質的に抽出される。有機溶剤は、好ましくは本質的に水と不混和性であり、従ってメタクリル酸が少なくとも部分的に減少した水相と、メタクリル酸を含む有機相とが形成される。好ましい有機溶剤に関する詳細は、工程段階a3)の記載において上記で示されている。工程段階a3)は好ましくは、第一の抽出ユニットA3)内で行われる。第一の抽出ユニットA3)として使用するために、当業者に公知であり且つメタクリル酸のかかる抽出のために適していると考えられる任意の抽出ユニットが考慮に入れられる。
【0064】
本発明による装置は、第一の分離ユニットA4)を、第一の抽出ユニットA3)の下流に含む。本発明による装置がメチルメタクリレートの製造用である場合、第一の分離ユニットA4)が、第一のエステル化ユニットA5)の上流、好ましくは第一の抽出ユニットA3)と第一のエステル化ユニットとの間にあり、且つ流体接続されている。第一の分離ユニットA4)は、好ましくはメタクリル酸を分離および好ましくは精製するために、特に、第一の抽出ユニットA3)において使用された抽出剤からメタクリル酸を分離するために適しており、且つ好ましくは、本発明による装置の第一の抽出ユニットA3)から流出し、本発明による方法の工程段階a3)の粗製有機相に相応する、粗製有機相中に存在する他の成分からのメタクリル酸の分離を可能にする。好ましくは、第一の分離ユニットA4)は、好ましくは蒸留塔、分留塔、精留塔、および当業者に公知であり且つ本発明による方法の工程段階a3)の分離のために適していると考えられる任意の他の熱分離手段の少なくとも1つを含む熱分離ユニットである。第一の分離ユニットA4)が、1つまたはそれより多くの分離段階を含むことが可能である。
【0065】
第一の分離ユニット内で分離されたメタクリル酸の精製のための随意の第一の精製ユニットも、第一の分離ユニットの下流に配置されてよい。随意の第一の精製ユニットは、例えば熱精製ユニット、例えば蒸留塔、分留塔、精留塔またはその種のもの、結晶化ユニット、または当業者に公知であり且つメタクリル酸の精製のために適していると考えられる任意の他の装置であってよい。
【0066】
本発明による装置が、上述のユニットもしくは要素のいずれかまたは全ての間に、1つまたはそれより多くのさらなる要素、例えば高沸点成分および/または低沸点成分を分離するための熱的手段またはストリッピング手段、固体/液体分離のための手段、例えば少なくとも1つのフィルターおよび/または遠心分離器、および/または冷却および/または加熱ユニットを、さらに含むことが可能である。好ましい設計においては、例えば、低沸点物のための蒸留塔および随意にフィルターが、急冷ユニットの下流且つ抽出ユニットの上流に配置される。二段階の気相酸化ユニットのさらに好ましい態様において、急冷ユニットが2つの段階の間に配置される。
【0067】
未反応のメタクロレインを、急冷ユニット、第一の抽出ユニット、第一の分離ユニット、第一の精製ユニットのいずれにおいても、または上述のさらなる装置の要素のいずれにおいても分離でき、且つ、さらなる反応のために気相酸化ユニットに返送できる。
【0068】
第一のエステル化ユニットA5)を、第一の分離ユニットA4)または随意に第一の精製ユニットの下流に配置することができる。第一のエステル化ユニットA5)は、特に限定されず、且つ、メタクリル酸からメタクリレートエステル、好ましくはメチルメタクリレートを形成するためのエステル化に適した任意のユニットであってよい。それは好ましくは液相エステル化のために適している。第一のエステル化ユニットA5)は好ましくはエステル化触媒を含み、前記触媒は不均一触媒または均一触媒、例えば固体触媒または液体触媒であってよく、且つ、好ましくは酸性のイオン交換樹脂、例えばUS6469292号、JP1249743号、EP1254887号内に記載されるもの、または商品名Amberlyst(登録商標) (Rohm and Haas Corp.)、Dowex(登録商標) (Dow Corp.)またはLewertit(登録商標) (Lanxess AG)として市販されているもの、またはエステル化を触媒できる酸、例えば硫酸、H
2SO
4である。
【0069】
第二の精製ユニットを、第一のエステル化ユニットA5)の下流に、そこで製造されたメタクリレートエステルの精製のために配置できる。随意の第二の精製ユニットは、例えば熱精製ユニット、例えば蒸留塔、分留塔、精留塔またはその種のもの、結晶化ユニット、または当業者に公知であり且つメタクリル酸エステル、特にメチルメタクリレートの精製のために適していると考えられる任意の他の装置であってよい。
【0070】
本発明による装置はさらに、第二の抽出ユニットB)を含む。第二の抽出ユニットB)は、第一の抽出ユニットA3)において得られた第一の水相中に含まれる水の少なくとも一部を、少なくとも1つの有機化合物、特に上述の少なくとも1つの成分iiの少なくとも一部から分離して、第二の水相および有機相を得るために役立つ。本発明による方法の工程段階b)は、好ましくは第二の抽出ユニットB)内で行われる。
【0071】
第二の抽出ユニットB)において、第一の水相の少なくとも一部は、抽出剤を用いて抽出されて、第二の水相と抽出相とを形成し、且つ、好ましくは第二の水相も、技術的な制限内で可能な最大の範囲で抽出相から分離される。従って、本発明による方法の少なくとも工程段階b)および好ましくは工程段階c)も、好ましくは第二の抽出ユニットB)内で、最も好ましくは連続的に行う。第二の抽出ユニットB)は好ましくは少なくとも1つの抽出塔、洗浄塔、相分離器、または当業者に公知であり且つ液体−液体抽出のために適し、且つ好ましくは有機相またはイオン性液体相を水相から分離するために、より好ましくは連続法における抽出および分離のために適していると考えられる他の装置、例えば少なくとも1つの蒸留塔、少なくとも1つのパルス充填塔および/または充填塔、少なくとも1つの回転抽出器、特に、分離のために遠心力を使用する少なくとも1つの回転抽出器、少なくとも1つの洗浄塔、および/または少なくとも1つの相分離器を含む。第二の抽出ユニットB)は、好ましくは周囲温度並びに周囲温度以外の温度、特に高められた温度、特に工程段階b)およびc)と関連して上述された温度で耐えることができ、且つ、稼働できる。
【0072】
例えば第二の抽出ユニット内で得られた抽出相を焼却するために、少なくとも1つの焼却炉または燃焼ユニットが本発明による装置に含まれてもよい。
【0073】
本発明による装置はさらに、第三の分離ユニットD)を含むことができる。第三の分離ユニットD)は好ましくは、工程段階b)において使用された任意の残留抽出剤を第二の水相から分離するために役立つ。本発明による方法の工程段階d)は、好ましくは第三の分離ユニットD)内で行われる。第三の分離ユニットD)は、さらに、抽出ユニットであってよいが、好ましくは熱分離ユニット、例えば蒸留塔、分留塔、精留塔、またはその種のものであり、その際、当業者に公知であり且つかかる分離のために適していると考えられる任意の手段が、本発明による装置において考慮に入れられる。
【0074】
本発明による装置はさらに、第四の分離ユニットE)も含むことができる。第四の分離ユニットE)は、本発明の方法の工程段階e)と相応して、抽出剤の少なくとも一部を抽出相から分離して本発明による少なくとも1つの成分iiを含む抽出相を得るための少なくとも1つの熱分離装置を好ましくは含む。本発明の方法の工程段階f)に相応して、本発明による少なくとも1つの成分iiの少なくとも一部を抽出物から分離するために、少なくとも1つのさらなる熱分離装置が含まれることもある。本発明による装置において使用するために、当業者に公知であり且つ工程段階e)およびf)の分離を行うために適していると考えられる熱分離装置、例えば蒸留、分留または精留塔の少なくとも1つまたはその種のものを考慮に入れることができる。
【0075】
本発明による装置内に、さらなる分離ユニットが含まれることもある。好ましいさらなる分離ユニットの1つの例は、本発明による方法の段階j)に相応して、少なくとも1つの成分iiを、本発明による少なくとも2つの成分iiを含む混合物、例えば本発明による方法の段階f)において得られた混合物から分離するために適した分離ユニットである。好ましくは、かかるさらなる分離ユニットは、好ましくは少なくとも1つの蒸留塔、分留塔、精留塔またはその種のものを含む熱分離ユニットである。
【0076】
本発明による装置は好ましくは、第四の分離ユニットE)および/または少なくとも1つのさらなる分離ユニットと、第一の抽出ユニットA3)および/または第一の分離ユニットA4)との間に、メタクリル酸およびメタクリル酸含有相の少なくとも1つを第一の抽出ユニットA3)および第一の分離ユニットA4)の少なくとも1つに返送するための少なくとも1つの導管を含む。
【0077】
本発明による装置は随意に、少なくとも1つの成分iiをエステル化してエステル相を得るための少なくとも1つの第二のエステル化ユニットK)を、好ましくは第二の抽出ユニットB)、第三の分離ユニットD)、および第四の分離ユニットE)のすくなくとも1つの下流に含む。工程段階k)は好ましくは、第二のエステル化ユニット内で行われる。第二のエステル化ユニットに関する詳細は、第一のエステル化ユニットA5)について上述されたものと同じである。
【0078】
本発明による装置は、本発明による方法の工程段階m)に相応して、1つまたはそれより多くのエステルを互いから少なくとも部分的に分離するための、特に少なくとも1つのエステルを少なくとも1つの第二のエステル化ユニットにおいて得られたエステル相から少なくとも部分的に分離するための、少なくとも1つのエステル分離ユニットM)も含むことができる。当業者に公知であり且つエステルの分離のために適していると考えられる任意の装置をエステル分離ユニットM)として使用することができる。既に記載された種類の熱分離装置、並びに結晶化装置、抽出装置、相分離装置が、本発明による装置におけるエステル分離ユニットM)として好ましい。
【0079】
第二のエステル化ユニット内で得られた、または少なくとも1つのエステル分離ユニット内で分離された、単数および/または複数のエステルを精製するために、少なくとも1つのさらなる精製ユニットN)が、本発明による装置内に提供されてもよい。本発明による方法の工程段階n)は、好ましくはさらなる精製ユニットN)内で行われる。このさらなる精製ユニットの詳細は、第一のエステル化ユニットA5)と関連して上述された精製ユニットについての詳細に相応する。
【0080】
本発明による装置は、第二の抽出ユニットB)と、第二のエステル化ユニットK)、エステル分離ユニットM)および少なくとも1つのエステルを精製するためのさらなる精製ユニットN)の少なくとも1つとの間に、少なくとも1つのエステル導管も含んでよい。少なくとも1つのエステル導管は、少なくとも1つのエステルを、第二のエステル化ユニットK)、エステル分離ユニットM)および少なくとも1つのエステルを精製するためのさらなる精製ユニットN)の少なくとも1つから、第二の抽出ユニットB)にみちびくために役立ち、その際、少なくとも1つのエステルを随意に抽出剤として使用することができる。
【0081】
本発明による装置の好ましい態様において、該装置はさらに、MTBE解離ユニットAA1)を、気相酸化ユニットA1)の上流に含む。MTBT解離のための解離ユニットおよび適した触媒は、当該技術分野においてよく知られており、且つ、当業者の一般的な知識の範疇であり、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第五版、Vol.A4、488ページ; V. Fattore, M. Massi Mauri, G. Oriani, G. Paret, Hydrocarbon Processing、1981年8月、101−106ページ; Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第五版、Vol. A16, 543−550ページ; A. Chauvel, G. Lefebvre, "Petrochemical Processes, Technical and Economic Characteristics"、Vol. 1、Editions Technip、Paris、1989、213ページ以降.; US5336841号、US4570026号、およびそこで挙げられている参考文献内に記載されている。
【0082】
イソブチレン分離ユニットS1)は、好ましくはMTBE解離ユニットAA1)と気相酸化ユニットA1)との間に配置されており、且つ、互いに流体接続されている。イソブチレン分離ユニットS1)は、イソブチレン相および好ましくはメタノール相も、第二の触媒活性ゾーンの流出物から分離するために役立ち、前記流出物はイソブチレンおよびメタノールを主成分として含む。イソブチレン分離ユニットS1)は、抽出器、結晶化装置、塔、蒸留装置、精留装置、膜、透析蒸発装置、相分離器、および洗浄装置の少なくとも1つであってよい。イソブチレン分離ユニットS1)は、好ましくは、イソブチレン相のための出口およびメタノール相のための出口を含む。イソブチレン相のための出口は、好ましくは気相酸化ユニットに、随意に中間ユニット、例えば精製ユニット、熱交換器および/または加圧器を介して接続されている。メタノール相のための出口は、好ましくは第一のエステル化ユニットおよび第二のエステル化ユニットの少なくとも1つに、随意に中間のメタノール精製ユニットを介して接続されている。当業者に公知であり且つメタノールを精製するために適していると考えられる任意の装置を、メタノール精製ユニットとして含むことができる。適した精製ユニットの例は、好ましくは、少なくとも1つの蒸留装置、結晶化装置、抽出機、塔または洗浄装置、より好ましくは少なくとも1つの蒸留装置を含む。メタノール用の精製ユニットの例は、EP1254887号内に記載されている。
【0083】
本発明は、本発明による装置内で行われる本発明による方法にも関する。
【0084】
本発明を、以下の図面および限定されない実施例によって、より厳密に説明する。