(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029672
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】素早く懸濁可能な粉末状組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20161114BHJP
C04B 28/14 20060101ALI20161114BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20161114BHJP
C08L 55/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B28/14
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/26 H
C08L55/00
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-532343(P2014-532343)
(86)(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公表番号】特表2014-534150(P2014-534150A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】EP2012068827
(87)【国際公開番号】WO2013045419
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年9月24日
(31)【優先権主張番号】11183537.7
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514080431
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コンストラクション ソリューションズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Construction Solutions GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ビヒラー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シナベック
(72)【発明者】
【氏名】ノアベアト シュタイドル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアナー シュトラウス
(72)【発明者】
【氏名】マークス マイアー
(72)【発明者】
【氏名】マークス ヴィルデ
【審査官】
佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−306663(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/066576(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C08L 55/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状組成物であって、少なくとも1種の無機バインダーを包含する粉末を、
(I)カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、無水カルボン酸及びカルボン酸イミドの群からの少なくとも1個の基を包含する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと、
(II)ポリアルキレンオキシド基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーとを包含するモノマーの混合物の重合によって得られる少なくとも1種のコポリマーを包含する、該組成物の全質量を基準として0.01〜10質量%の液状成分と接触させることによって製造可能な、ここで、該液状成分は、少なくとも1質量%の少なくとも1種のコポリマーと、少なくとも30質量%の有機溶剤とを含有する、粉末状組成物。
【請求項2】
前記無機バインダーが、ポルトランドセメントベースのセメント、白色セメント、アルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント、硫酸カルシウムのn水和物及び潜在水硬性バインダー若しくはポゾラン性バインダーの群からの少なくとも1種のバインダーであることを特徴とする、請求項1記載の粉末状組成物。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和モノマー(I)が、(Ia)、(Ib)及び(Ic)の群からの下記一般式
【化1】
[式中、
R
1及びR
2は、互いに無関係に、水素又は1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基であり、
Yは、H、−COOM
a、−CO−O(C
qH
2qO)
r−R
3、−CO−NH−(C
qH
2qO)
r−R
3であり、
Mは、水素、一価若しくは二価の金属カチオン、アンモニウムイオン又は有機アミン基であり、
aは、1/2又は1であり、
R
3は、水素、1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜14個の炭素原子を有する、場合により置換されたアリール基であり、
qは、互いに無関係に、すべての(C
qH
2qO)単位について同じであるか又は異なっており、かつ2、3若しくは4であり、並びに
rは、0〜200であり、
Zは、O、NR
3である]、
【化2】
[式中、
R
4及びR
5は、互いに無関係に、水素、1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、又は6〜14個の炭素原子を有する、場合により置換されたアリール基であり、
Qは、同じであるか又は異なっており、かつNH、NR
3又はOによって表され、ここで、R
3は、上で挙げた意味を有し、
R
6は、同じであるか又は異なっており、かつn=0、1、2、3又は4である(C
nH
2n)−SO
3H、n=0、1、2、3又は4である(C
nH
2n)−OH;n=0、1、2、3又は4である(C
nH
2n)−PO
3H
2、n=0、1、2、3又は4である(C
nH
2n)−OPO
3H
2、(C
6H
4)−SO
3H、(C
6H
4)−PO
3H
2、(C
6H
4)−OPO
3H
2及びn=0、1、2、3又は4であり、かつb=2又は3である(C
nH
2n)−NR
8bによって表され、
R
7は、H、−COOM
a、−CO−O(C
qH
2qO)
r−R
3、−CO−NH−(C
qH
2qO)
r−R
3であり、ここで、M
a、R
3、q及びrは、上で挙げた意味を有し、
R
8は、水素、1〜10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、又は6〜14個の炭素原子を有する、場合により置換されたアリール基である]の少なくとも1つによって表されることを特徴とする、請求項1又は2記載の粉末状組成物。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和モノマー(II)が、下記一般式
【化3】
[式中、
pは、0〜6の整数であり、
yは、0又は1であり、
vは、3〜500の整数であり、
wは、互いに無関係に、すべての(C
wH
2wO)単位について同じであるか又は異なっており、かつ2〜18の整数であり、
ここで、R
1、R
2及びR
3は、上で挙げた意味を有する]によって表されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の粉末状組成物。
【請求項5】
前記一般式(II)において、
pが、0〜4の整数であり、
xが、5〜500の整数であり、
wが、互いに無関係に、すべての(CwH2wO)単位について同じであるか又は異なっており、かつ2又は3であることを特徴とする、請求項4記載の粉末状組成物。
【請求項6】
前記コポリマー中での前記モノマー(I)の割合が5〜95モル%であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の粉末状組成物。
【請求項7】
前記コポリマー中での前記モノマー(II)の割合が1〜89モル%であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の粉末状組成物。
【請求項8】
前記有機溶剤が、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、メチルエチルケトン、エチルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエン、キシレン若しくは高沸点アルキルベンゼン、ポリエチレングリコールエーテル若しくはポリプロピレングリコールエーテル若しくは200〜2000g/モルの平均モル質量を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシドのランダムコポリマー、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール若しくはトリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール若しくはトリプロピレングリコール、1、2、3個以上のエチレングリコール単位及び/又はプロピレングリコール単位を有するメチルポリアルキレングリコールエーテル、エチルポリアルキレングリコールエーテル、プロピルポリアルキレングリコールエーテル、ブチルポリアルキレングリコールエーテル若しくはより高級なアルキルポリアルキレングリコールエーテル、200〜20000g/モルの分子量を有するグリセリンエトキシレート、ペンタエリスリトールアルコキシレート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネート、グリセリンホルマール及び2,3−O−イソプロピリデングリセリンの群からの少なくとも1種の溶剤であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の粉末状組成物。
【請求項9】
前記の少なくとも1種の本発明によるコポリマーが、前記液状成分中に少なくとも50質量%の割合で溶解した形で存在することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の粉末状組成物。
【請求項10】
5〜99.5質量%の前記無機バインダーを含有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の粉末状組成物。
【請求項11】
前記モノマー(I)又は(II)が、160〜10000g/モルの分子量を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシドのランダムコポリマーを包含することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の粉末状組成物。
【請求項12】
プレミックス固練りモルタルが、殊に、レンガモルタル、下塗りモルタル、複合断熱システム用モルタル、修復用上塗り、目地モルタル、タイル接着剤、薄層モルタル、スクリード材料、グラウトモルタル、圧入モルタル、フィラー、シールスラリー又はライニングモルタルであることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の粉末状組成物。
【請求項13】
液状成分に溶解して存在し、ここで、該液状成分が、少なくとも1質量%の
下記コポリマー及び少なくとも30質量%の有機溶剤を含有することを特徴とする、
当該コポリマー
であって、
A)少なくとも1個のカルボン酸官能基及び/又はカルボン酸塩を包含する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー50〜95モル%並びに
B)式(III)
【化4】
[式中、
R9、R10及びR11は、互いに無関係に、水素又は1〜5個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基であり、
hは、0〜150の整数であり、
(CeH2eO)fは、エチレンオキシド/プロピレンオキシドのランダムコポリマーであり、ここで、プロピレンオキシド単位のモル割合は、エチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位の合計を基準として10〜30%であり、fは、10〜150の整数であり、かつeは、2又は3である]の少なくとも1種のモノマー5〜50モル%
を包含するモノマーの混合物の重合によって得られるコポリマー。
【請求項14】
少なくとも30質量%の有機溶剤、最大30質量%の水、並びに
(I)カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、無水カルボン酸及びカルボン酸イミドの群からの少なくとも1個の基を包含する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと、
(II)ポリアルキレンエーテル基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーとを包含するモノマーの混合物の重合によって得られるコポリマー
を包含する液状成分の製造法において、該モノマーの重合を水含有溶剤中で実施し、ここで、反応混合物全体の含水率が10質量%より多く、重合生成物に有機溶剤を混ぜ、かつ水を除去することを特徴とする、製造法。
【請求項15】
少なくとも30質量%の有機溶剤、及び少なくとも1質量%の、
(I)カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、無水カルボン酸及びカルボン酸イミドの群からの少なくとも1個の基を包含する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと、
(II)ポリアルキレンエーテル基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーとを包含するモノマーの混合物の重合によって得られるコポリマーを包含する液状成分を、少なくとも1種の無機バインダーを包含する粉末の処理のために、水による該粉末の均一な分散を速めるために用いる使用であって、ここで、全質量を基準として0.01〜10質量%の該液状成分を用いる使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の無機バインダーを包含する粉末を、少なくとも1種のコポリマー及び有機溶剤を含有する液状成分と接触させることによって製造可能な、素早く懸濁可能な粉末状組成物に関する。さらに、液状成分を製造するための方法、液状成分の使用並びに特殊なコポリマーを開示する。
【0002】
無機固体懸濁液の改善された加工性、すなわち、混練性、塗布性、噴霧性、ポンプ供給性又は流動性を達成するために、無機固体懸濁液に、しばしば混和剤が分散剤又は可塑剤の形で添加される。この種の無機固体は、建築工業において、たいていの場合、無機バインダー、例えばポルトランドセメントベースのセメント(EN 197)、特別な性質を有するセメント(DIN 1164)、白色セメント、アルミン酸カルシウムセメント若しくはアルミナセメント(EN 14647)、スルホアルミン酸カルシウム、特殊セメント、硫酸カルシウムのn水和物(n=0〜2)、石灰若しくは建築用石灰(EN 459)並びにポゾラン若しくは潜在水硬性バインダー、例えばフライアッシュ、メタカオリン、シリカダスト、スラグ砂を包含する。さらに、無機固体懸濁液は、一般に、充填材、殊に、例えば炭酸カルシウムから成る岩石粒、石英又は種々の粒度及び粒形の他の天然岩石並びに更に別の無機及び/又は有機添加剤(混和剤)を、建築用化学製品の性質、例えば水和反応速度、レオロジー特性又は空気量に適切に影響を及ぼすために含有する。それ以外に、有機バインダー、例えばラテックス粉末が含まれていてよい。
【0003】
殊に無機バインダーをベースとする建築材料混合物を、使用準備の整った加工可能な形に変えるために、一般に、引き続き行われる水和プロセス若しくは硬化プロセスに不可欠とされる量よりずっと多い混練水が必要である。後で気化することになる過剰の水によって形成された建築体中の空隙部分が、機械的な強度、安定性及び耐久性の著しい悪化につながる。
【0004】
所定の加工コンシステンシーにおけるこの過剰な含水分を減らし、かつ/又は所定の水/バインダー比における加工性を改善するために、建築化学において減水剤又は可塑剤と一般的に呼称される混和剤が用いられる。この種の試剤として、なかでも、ナフタレンスルホン酸又はアルキルナフタレンスルホン酸若しくはスルホン酸基含有メラミン−ホルムアルデヒド樹脂をベースとする重縮合生成物が公知である。
【0005】
DE3530258は、無機バインダー及び建築材料のための混和剤としての水溶性ナトリウムナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物の使用を記載している。これらの混和剤は、バインダー、例えばセメント、硬石膏又は石膏並びにそれらを用いて製造された建築材料の流動性の改善のために記載されている。
【0006】
DE2948698は、メラミン−ホルムアルデヒド縮合生成物及び/又はスルホン化されたホルムアルデヒド−ナフタレン縮合物及び/又はリグニンスルホン酸塩をベースとする可塑剤並びにバインダーとしてポルトランドセメント、粘土含有石灰質泥灰岩、粘土クリンカー及び弱燃焼クリンカーを含有する、スクリード用の水硬性モルタルを記載している。
【0007】
本質的にカルボン酸基及びスルホン酸基を含有する、純粋にアニオン性の可塑剤の他に、可塑剤のより新しいグループとして、通常は主鎖にアニオン電荷を持ち、かつ非イオン性ポリアルキレンオキシド側鎖を含有する、弱アニオン性の櫛形ポリマーが記載されている。
【0008】
WO01/96007は、ビニル基含有モノマーのラジカル重合によって製造され、かつ主成分としてポリアルキレンオキシド基を含有する、水性鉱物懸濁液用のこれらの弱アニオン性の可塑剤及び粉砕助剤を記載している。
【0009】
DE19513126及びDE19834173は、不飽和ジカルボン酸誘導体とオキシアルキレングリコール−アルケニルエーテルとをベースとするコポリマー、及び水硬性バインダー、殊にセメント用の混和剤としてのその使用を記載している。
【0010】
建築工業における可塑剤の添加の目的は、バインダー系の可塑性を高めるか、又は同じ加工条件において必要とされる水量を減らすためである。
【0011】
リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩及びポリナフタレンスルホン酸塩をベースとする可塑剤が、弱アニオン性のポリアルキレンオキシド含有コポリマーと比べて、その作用に関して明らかに劣っていることがわかっている。これらのコポリマーは、ポリカルボキシレートエーテル(PCE)とも呼称される。ポリカルボキシレートエーテルは、無機粒子を、主鎖に含まれているアニオン性基(カルボキシレート基、スルホネート基)に基づく静電帯電によって分散させるのみならず、付加的に分散粒子を、水分子の吸収によって安定化保護層を粒子の周りに形成するポリアルキレンオキシド側鎖に基づく立体効果によって安定化する。
【0012】
それによって、ある特定のコンシステンシーに調整するために必要とされる水の量を、古典的な可塑剤と比較して減らすことができるか、さもなければ、湿式建築材料混合物の可塑性が、ポリカルボキシレートエーテルの添加によって、自己充填コンクリート又は自己充填モルタルを低い水/セメント比において製造することができる程度にまで減らされる。また、ポリカルボキシレートエーテルの使用は、比較的長期にわたってポンプ供給可能であり続けるレディーミクストコンクリート若しくはレディーミクストモルタルの製造、又は低い水/セメント比に調整することによる高強度コンクリート若しくは高強度モルタルの製造を可能にする。
【0013】
その間に、記載されるポリカルボキシレートエーテルの他に、改良された作用プロファイルを有する一連の誘導体が公知となっている。例えば、US2009312460は、エステル官能基が、セメント状の水性混合物中への導入後に加水分解され、かつ、これによってポリカルボキシレートエーテルが形成される、ポリカルボキシレートエステルを記載している。ここで、ポリカルボキシレートエステルは、それらが、少し後になってから、セメント状の混合物中でその作用を発揮し、かつ、これによって分散化作用を比較的長期にわたって維持することができるという利点を有する。
【0014】
ポリカルボキシレートエーテル及びそれらの誘導体をベースとする分散剤は、固体として粉末形で、又は水溶液として提供されている。粉末状ポリカルボキシレートエーテルを、例えば、プレミックス固練りモルタルに、その製造において混ぜてよい。プレミックス固練りモルタルに水を混ぜてかき回すと、ポリカルボキシレートエーテルは溶解し、かつ続けてその作用を発揮することができる。
【0015】
代替的に、ポリカルボキシレートエーテル又はそれらの誘導体を無機固体懸濁液に溶解した形で加えることも可能である。殊に、分散剤は、混練水に直接計量供給してよい。
【0016】
しかしながら、可塑剤を無機固体懸濁液中に導入する、これまでに公知のあらゆる方法は、分散化作用が混練水の添加直後に発揮しないという欠点を有する。分散剤が粉末として又は水溶液で加えられることとは無関係に、例えば、固練りモルタルの場合−水対セメントの比(w/z値)若しくは水要求量に応じて−強力な撹拌下での混練量の添加後に均一な懸濁液が得られるまで100秒以上かかる可能性がある。これは、殊に混合ポンプを使用した場合に問題となる。
【0017】
それに従って、本発明の課題は、これまで公知の組成物を用いて可能だった時間より素早く水で均一に分散することができる、無機バインダー系をベースとする粉末状組成物を提供することであった。
【0018】
この課題は、粉末状組成物であって、少なくとも1種の無機バインダーを包含する粉末を、
(I)カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、無水カルボン酸及びカルボン酸イミドの群からの少なくとも1個の基を包含する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと、
(II)ポリアルキレンオキシド基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー
とを包含するモノマーの混合物の重合によって得られる少なくとも1種のコポリマーを包含する、組成物の全質量を基準として0.01〜10質量%、殊に0.05〜5質量%、特に有利には0.1〜2質量%の液状成分と接触させることによって製造可能な、ここで、液状成分は、少なくとも1質量%の、有利には5〜60質量%の、殊に25〜50質量の少なくとも1種のコポリマーと、少なくとも30質量%の、有利には98〜35質量%の、殊に90〜40質量%の、特に有利には80〜50質量%の有機溶剤とを含有する、粉末状組成物によって解決された。
【0019】
これに関して、意想外にも、提起した課題を全面的に解決することができたのみならず、粉末状組成物が、非常に優れた分散性の他に、同時に際立った加工特性を有し、ここで、ポンプ供給性は改善され、かつ混合プロセスにおいて不可欠な電力を抑えることができるようになった。殊に、粉末状組成物の取扱いにおけるダスト形成の明らかな減少を観察することができた。さらに、意想外にも、本発明による粉末組成物の貯蔵性は、液状成分によって悪化させられないか、又は本質的には悪化させられなかった。
【0020】
本発明に従ったコポリマーは、少なくとも2つのモノマー構成単位を含有する。或いはまた、3つ以上の構成単位を有するコポリマーを使用することも好ましくあり得る。
【0021】
有利な実施形態においては、エチレン性不飽和モノマー(I)は、(Ia)、(Ib)及び(Ic)の群からの下記一般式の少なくとも1つによって表される:
【化1】
【0022】
モノカルボン酸又はジカルボン酸の誘導体(Ia)及び環状の形で存在するモノマー(Ib)−ここで、Z=O(酸無水物)又はNR
2(酸イミド)を表す−において、R
1及びR
2は、互いに無関係に、水素又は1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、好ましくはメチル基である。Yは、H、−COO
Ma、−CO−O(C
qH
2qO)
r−R
3、−CO−NH−(C
qH
2qO)
r−R
3である。Mは、水素、一価若しくは二価の金属カチオン、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン又はマグネシウムイオン、さらに、アンモニウムイオン又は有機アミン基であり、並びにaは、Mが一価若しくは二価の金属カチオンかに応じて、1/2又は1である。有機アミン基として、好ましくは、第一級、第二級若しくは第三級C
1-20−アルキルアミン、C
1-20−アルカノールアミン、C
5-8−シクロアルキルアミン及びC
6-14−アリールアミン由来の置換されたアンモニウム基が用いられる。相応するアミンの例は、プロトン化された(アンモニウム)形におけるメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミンである。
【0023】
R
3は、水素、1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、又は6〜14個の炭素原子を有し、場合によりさらに置換されていてよいアリール基であり、qは、2、3又は4であり、並びにrは、0〜200、好ましくは1〜150である。ここで、脂肪族炭化水素基は、線状又は分枝状並びに飽和又は不飽和であってよい。有利なシクロアルキル基として見なされるのは、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基であり、有利なアリール基として見なされるのは、フェニル基又はナフチル基であり、これらの基は、殊に、ヒドロキシル基、カルボキシル基又はスルホン酸基によってさらに置換されていてよい。
【0024】
下記式は、モノマー(Ic)を表す:
【化2】
【0025】
これに関して、R
4及びR
5は、互いに無関係に、水素、1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、又は6〜14個の炭素原子を有する、場合により置換されたアリール基である。Qは、同じであるか又は異なっていてよく、かつNH、NR
3又はOによって表され、ここで、R
3は、上で挙げた意味を有する。
【0026】
さらに、R
6は、同じであるか又は異なっており、かつn=0、1、2、3又は4である(C
nH
2n)−SO
3H、n=0、1、2、3又は4である(C
nH
2n)−OH;n=0、1、2、3又は4である(C
nH
2n)−PO
3H
2、n=0、1、2、3又は4である(C
nH
2n)−OPO
3H
2、(C
6H
4)−SO
3H、(C
6H
4)−PO
3H
2、(C
6H
4)−OPO
3H
2及びn=0、1、2、3又は4であり、かつb=2又は3である(C
nH
2n)−NR
8bによって表さる。
【0027】
R
7は、H、−COOM
a、−CO−O(C
qH
2qO)
r−R
3、−CO−NH−(C
qH
2qO)
r−R
3であり、ここで、M
a、R
3、q及びrは、上で挙げた意味を有する。
【0028】
R
8は、水素、1〜10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、又は6〜14個の炭素原子を有する、場合により置換されたアリール基である。
【0029】
本発明の意味においてさらに有利には、エチレン性不飽和モノマー(II)は、下記一般式
【化3】
[式中、pは、0〜6の整数であり、yは、0又は1であり、vは、3〜500の整数であり、かつwは、互いに無関係に、すべての(C
wH
2wO)単位について同じであるか又は異なっており、かつ2〜18の整数である]によって表される。
R
1、R
2及びR
3は、上で挙げた意味を有する。
【0030】
有利な実施形態においては、一般式(II)において、pは、0〜4の整数であり、vは、5〜500の整数であり、かつwは、互いに無関係に、すべての(C
wH
2wO)単位について同じであるか又は異なっており、かつ2又は3である。殊に有利なのは、少なくとも部分領域が、エチレンオキシド/プロピレンオキシドのランダムコポリマーによって形成され、かつプロピレンオキシド単位のモル割合が、エチレンオキシド/プロピレンオキシドのランダムコポリマーのエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位の合計を基準として10〜30%である場合である。
【0031】
本発明によるコポリマー中でのモノマー(I)及び(II)のモル割合は、幅広い範囲内で自由に選択することができる。特に好ましいと判明したのは、コポリマー中でのモノマー(I)の割合が、5〜95モル%、有利には30〜95モル%、殊に55〜95モル%である場合である。さらに有利な実施形態においては、コポリマー中でのモノマー(II)の割合は、1〜89モル%、殊に1〜55モル%、特に有利には1〜30モル%である。
【0032】
これに関して、有利と見なされるのは、モノマー(II)が500〜10000g/モルの分子量を有することである。
【0033】
有利な実施形態においては、本発明によるコポリマーは、12000〜75000g/モルの分子量を持つ。
【0034】
有機溶剤として、有利には、本発明によるコポリマーが良好な溶解性を示すあらゆる有機溶剤を用いてよい。殊に、有利には、溶剤及びコポリマーの全質量を基準として、少なくとも1質量%、有利には少なくとも25質量%、殊に少なくとも40質量%のコポリマーが有機溶剤に溶解することが望ましい。コポリマーの溶解性は、具体的に選択されたモノマー及び用いられるモノマーの量比に依存し、かつ簡単な試験によって突き止められることができる。殊に、溶剤は、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、メチルエチルケトン、エチルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエン、キシレン若しくは高沸点アルキルベンゼンの群からの少なくとも1種の溶剤である。さらに、溶剤は、ポリエチレングリコールエーテル若しくはポリプロピレングリコールエーテル若しくは200〜2000g/モルの平均モル質量を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシドのランダムコポリマー、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール若しくはトリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール若しくはトリプロピレングリコール、1、2、3個以上のエチレングリコール単位及び/又はプロピレングリコール単位を有するメチルポリアルキレングリコールエーテル、エチルポリアルキレングリコールエーテル、プロピルポリアルキレングリコールエーテル、ブチルポリアルキレングリコールエーテル若しくはより高級なアルキルポリアルキレングリコールエーテル、例えばメトキシプロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルポリエチレングリコールエーテル、プロピルポリエチレングリコールエーテル、エチルポリエチレングリコールエーテル、メチルポリエチレングリコールエーテル、ジメチルポリエチレングリコールエーテル、ジメチルポリプロピレングリコールエーテル、200〜20000g/モルの分子量を有するグリセリンエトキシレート、ペンタエリスリトールアルコキシレート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネート、グリセリンホルマール及び2,3−O−イソプロピリデングリセリンであってよい。殊に有利には、アルキルポリアルキレングリコールエーテル、特に有利にはメチルポリエチレングリコールエーテル及びポリエチレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル並びに200〜2000g/モルの平均モル質量を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシドのランダムコポリマーである。さらに有利なのは、カーボネート、殊にエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びグリセリンカーボネートをベースとする溶剤である。
【0035】
本発明による液状成分は、水も含有してよい。液状成分の高い含水量は、粉末状組成物の内容物質に依存して、殊に用いられる無機バインダーに依存して、本発明による粉末状組成物の貯蔵性の悪化につながり得る。それゆえ、特に有利には、含水量は、<10質量%、殊に<1質量%である。殊に、含水量は、液状成分の30〜0.01質量%、好ましくは10〜0.01質量%、特に有利には1〜0.1質量%であってよい。そのため、殊に、捕水剤の使用が好ましくあり得る。ここで、捕水剤は、バインダーが水と反応することができ、かつ製品特性の不都合な障害を引き起こす前に、水を結晶構造中に組み込むか、又は水を他のメカニズムにより消費する。殊に、モレキュラーシーブ又は素早く水と化合する塩、例えばCaOであってよい。捕水剤により、本発明による粉末状組成物は、より高い水分許容度を有することになり得、ここで、この場合、本発明による粉末状組成物の悪化は観察されない。
【0036】
液状成分中での本発明によるコポリマーの溶解性に関して、特に好ましいと判明したのは、モノマー(I)又は(II)が、160〜10000g/モル、殊に500〜6000g/モルの分子量を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシドのランダムコポリマーを有し、ここで、プロピレンオキシド単位のモル割合が、エチレンオキシド/プロピレンオキシド単位の合計を基準として、有利には10〜30%である場合である。殊に有利には、この場合、有機溶剤は、アルキルポリアルキレングリコールエーテル、特に有利にはメチルポリエチレングリコールエーテル及びポリエチレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル並びに200〜2000g/モルの平均モル質量を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシドのランダムコポリマーである。
【0037】
本発明による粉末状組成物の可能な限り素早い分散性を達成するために、液状成分中の少なくとも1種の本発明によるコポリマーが、少なくとも50質量%、有利には少なくとも80質量%、特に有利には少なくとも99質量%の割合で溶解した形で存在する場合に好ましい。殊にコポリマーは、液状成分中に溶解して存在する。
【0038】
少なくとも1種の無機バインダーを包含する粉末と、本発明によるコポリマーを含有する液状成分との接触は、このために当業者に公知の任意の手法で行うことができる。特に適していると判明したのは、液状成分を、吹付け又は噴霧によって粉末と接触させる場合であり、ここで、この方法は、有利には混合工程を包含する。このようにして、均一な塗布を簡単に、同時に良好な付着及びタックのもとで保証することができる。当然のことながら、粉末と液状成分との接触は、任意に他の適した手法で行うこともできる。これに関してまた考慮に入れられるのは、殊に、ブレンディング若しくは撹拌であり、ここで、しかしながら、噴霧塗布が明らかに有利であり、なぜなら、これは、極めて簡単かつ最も経済的に魅力的な塗布の変形例だからである。
【0039】
特に有利な実施形態においては、液状成分に、使用目的に応じて、更に別の添加剤をなお混ぜてもよく、ここで、これらは有利には溶解した形で存在する。殊に、液状成分は、混合物全体を基準として0.5〜69質量%の少なくとも1種の更に別の添加剤を含有してよい。これによって、粉末状組成物に、更に別の添加剤を簡単に混ぜることができ、このことは、特に経済的な手法に相当し、かつ場合により個別の乾燥工程を省いてもよい。更に別の添加剤の特に均一な分散によって、水との混練直後のその効果を改善することができ、このことは、この実施形態の更に別の利点として見なされる。
【0040】
さらに有利な実施形態においては、液状成分は、有機溶剤に溶解した本発明によるコポリマーの溶液から成る。
【0041】
粉末状組成物は、本発明の範囲内では、好ましくは乾燥した形で存在し、ここで、これは、粉末状組成物が、カール・フィッシャー法に従って5質量%未満、好ましくは1質量%未満、特に有利には0.1質量%未満の含水率を有することを意味する。
【0042】
少なくとも1種の無機バインダーを包含する粉末が、0.1〜1000μm、特に有利には1〜200μmの平均粒径を有する場合に有利である。この場合、粒径は、有利にはレーザー回折法によって測定される。
【0043】
本発明の更に別の対象は、有機溶剤、殊にアルキルポリアルキレングリコールエーテル、特に有利にはメチルポリエチレングリコールエーテル及びポリエチレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル並びに200〜20000g/モルの平均モル質量を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシドのランダムコポリマー中への特に良好な溶解性によって際立つ特殊なコポリマーである。本発明によるコポリマーは、
A)少なくとも1個のカルボン酸官能基及び/又はカルボン酸塩を包含する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー50〜95モル%及び
B)式(III)
【化4】
の少なくとも1種のモノマー5〜50モル%
を包含するモノマーの混合物の重合によって得られる。
【0044】
これに関して、R
9、R
10及びR
11は、互いに無関係に、水素又は1〜5個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基である。さらに、hは、0〜150の整数である。(C
eH
2eO)
fは、エチレンオキシド/プロピレンオキシドのランダムコポリマーであり、ここで、プロピレンオキシド単位のモル割合は、エチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位の合計を基準として10〜30%であり、fは、10〜150の整数であり、かつeは、2又は3である。
【0045】
有利な実施形態においては、成分B)は、2000〜10000g/モル、好ましくは2500〜9000g/モル、殊に3000〜5000g/モルの分子量を有する。
【0046】
殊に、好ましいと判明したのは、モノマーA)がアクリル酸である場合である。
【0047】
本発明に鑑みて、A)及びB)を包含するモノマーの混合物の重合によって得られる本発明によるコポリマーは、有利には液状成分中に溶解して存在し、ここで、液状成分は、少なくとも1質量%のコポリマーと、少なくとも30質量%の有機溶剤とを含有する。液状成分は、有利には5〜40質量%、殊に25〜35質量%のコポリマーを含有する。液状成分中での有機溶剤の割合は、有利には30〜95質量%、殊に35〜70質量%である。
【0048】
殊に、本発明による無機バインダーは、ポルトランドセメントベースのセメント、白色セメント、アルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント、硫酸カルシウムのn水和物又は潜在水硬性バインダー若しくはポゾラン性バインダー、例えばフライアッシュ、メタカオリン、シリカダスト及びスラグ砂の群からの少なくとも1種のバインダーであってよい。特に有利なのは、ポルトランドセメントベースのセメント、硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム無水物及びアルミン酸カルシウムセメントである。
【0049】
有利には、本発明による粉末状組成物は、2〜99.9質量%、殊に8〜50質量%、特に有利には10〜40質量%の無機バインダーを含有する。
【0050】
少なくとも1種の無機バインダーを有する本発明による粉末状組成物は、有利には、固練りモルタル又は固練りコンクリートである。大幅な合理化並びに改善された製品品質が常に追い求められてきたことにより、建築領域において極めて多岐にわたった使用領域のためのモルタルが、今日では実質的にもはや現場そのもので出発材料から一緒に混合されなくなっている。このタスクは、今日では主として建築材料工業により工場で担われており、かつ使用準備の整った混合物が、いわゆるプレミックス固練りモルタルとして提供される。ここで、現場でもっぱら水の添加及び混合によって加工可能にされる完成した混合物は、DIN 18557によれば、プレミックスモルタル、殊にプレミックス固練りモルタルと呼称される。この種のモルタル系は、非常に多岐にわたった建築物理的な問題を解決することができる。提起される課題に応じて、例えばセメント及び/又は石膏及び/又は硫酸カルシウムを含有してよいバインダーに、更に別の添加剤若しくは混和剤が、プレミックス固練りモルタルを特別な使用目的に合わせるために加えられる。これらは、例えば、収縮低減剤、膨張剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、AE剤、腐食防止剤であってよい。本発明によるプレミックス固練りモルタルは、殊に、レンガモルタル、下塗りモルタル、複合断熱システム用モルタル、修復用上塗り、目地モルタル、タイル接着剤、薄層モルタル、スクリード材料、グラウトモルタル、圧入モルタル、フィラー、シールスラリー又はライニングモルタル(例えば飲料水管用)であってよい。
【0051】
本発明の意味においては、プレミックス固練りモルタルとの用語は、骨材を含まない無機バインダー、殊にポルトランドセメント及び/又はアルミン酸カルシウムセメント及び/又は硫酸カルシウムを意味する。この場合、これから製造された本発明による粉末状組成物はまた、続けて充填材及び添加剤と混合されてよく、これによって、例えば、セメント若しくは硫酸カルシウムをベースとするレンガモルタル、目地モルタル、タイル接着剤、薄層モルタル、スクリード材料、グラウトモルタル、圧入モルタル、フィラー又はライニングモルタル(例えば飲料水管用)が得られる。そのように製造されたプレミックス固練りモルタルの水による特に素早い均一な分散性が、この手法によっても達成される。
【0052】
特別な実施形態においては、本発明によるプレミックス固練りモルタルは、セルフレベリング性の流動性改良剤であってよい。これは特に好ましく、なぜなら、僅かな層厚のための係る粉末状組成物は、一般に非常に微細であり、かつ、それゆえ比較的ゆっくりと水と混合され得るからである。
【0053】
同様に含められるのは、現場での製造において、水以外にも、更に別の成分、殊に液状成分及び/又は粉末状添加剤及び/又は岩石粒をさらに備えてよい(二成分系)プレミックスモルタルである。
【0054】
少なくとも1種の無機バインダーを有する本発明による組成物は、或いはまた、コンクリート又はコンクリートを製造するための組成物であってもよい。
【0055】
無機バインダーは、さらに石膏であってもよい。"石膏"との表記は、本明細書中では、硫酸カルシウムと同義的に使用され、ここで、硫酸カルシウムは、結晶水を含むものや含まない、その様々な無水の形及び水和された形で存在してよい。天然石膏は、実質的に硫酸カルシウム二水和物("二水和物")を包含する。結晶水を含まない硫酸カルシウムの天然形は、"無水物"との表記に包含されている。天然で出現する形の他に、硫酸カルシウムは、工業プロセスの典型的な副生成物であり、それは、その場合には"合成石膏"を意味する。工業プロセスからの合成石膏に関する典型的な例が、排煙脱硫である。或いはまた、合成石膏は、同様にリン酸又はフッ酸の製造法の副生成物としても発生する可能性があり、ここで、これらの場合、半水和物形、例えばCaSO
4×1/2H
2O("半水和物")が形成される。典型的な石膏(CaSO
4×2H
2O)は、結晶水を分離することによりか焼することができる。非常に多岐にわたったか焼法の生成物は、α−半水和物又はβ−半水和物である。β−半水和物は、開放容器中での急速な加熱から生じ、同時に水が素早く蒸発して空隙が形成される。α−半水和物は、密閉オートクレーブ中での石膏の脱水によって製造される。この場合の結晶形は、比較的密度が高く、それゆえ、このバインダーは、液化のために必要とされる水がβ−半水和物より少ない。他方で、半水和物は水と再水和して二水和物結晶となる。通常、石膏の完全な水和のためには、数分〜数時間の時間を要することが不可欠とされ、その結果、完全な水和に数時間〜数日を要するセメントと比較して加工時間は短縮される。これらの特性は、石膏を、非常に多岐にわたった適用領域におけるバインダーとしてのセメントに代わる有用な代替物にする。それ以外に、硬化した石膏製品は、顕著な硬度及び圧縮強度を示す。
【0056】
非常に多岐にわたった適用領域のために、β−半水和物が選択され、なぜなら、これはより入手し易く、かつ経済的な観点から数多くの利点を示すからである。しかしながら、これらの利点は、β−半水和物が、そもそも流動性のスラリーを得るために、加工においてより多い水を必要とすることによって部分的に再び打ち消される。そのうえ、これから製造された乾燥させられた石膏製品は、ある程度脆弱になりがちであり、これは、硬化において結晶マトリックス中に留まっている残留水の量に起因し得る。このため、相応する製品は、より少ない量の混練水で調製されている石膏製品より低い硬度を示す。
【0057】
それゆえ、特に有利には、本発明の意味においては、石膏はβ−硫酸カルシウム半水和物である。これに関して、本発明によるβ−硫酸カルシウム半水和物は、殊に石膏ベースのフロースクリード中での使用に適している。
石膏ベースのフロースクリードの調製は、これまで、無水物又はα−半無水物をベースとするバインダーを用いてのみ可能であった。この種類のバインダーは、石膏に改良を加えたものであり、これらは、非常に低い水要求量を有し、ひいては高強度のバインダーである。しかしながら、両方の成分は、コスト的にも、それらの入手可能性の点でも、β−半水和物と比べて明らかな欠点を有する。それに対して、β−半水和物の使用は、先行技術によれば可能ではなく、なぜなら、高い水要求量に基づき、その結果生じる強度が、フロースクリードを十分な品質で製造するには低すぎるからである。
リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩及びポリナフタレンスルホン酸塩をベースとする可塑剤が、β−半水和物の水要求量を十分に減らすことができないとわかった。
ポリカルボキシレートエーテルの使用は、水を十分に減らすことを可能にするが、しかしながら、先行技術に相当するポリカルボキシレートエーテルが効果を発揮する速度は、マシン適用されるフロースクリードのためには低すぎる。
この種のスクリード混合物をマシンで加工する場合、始めにコンシステンシーが大いに上昇することから、混合物は均一には加工されないか、さもなければ、加工業者は現場でコンシステンシーを水の添加により調整し、それによって、材料の分離が生じることになる。そのうえまた、後で気化することになる過剰の水は、機械的な強度、安定性及び耐久性の著しい悪化につながる。これに対して、本発明によるβ−硫酸カルシウム半水和物をベースとする、マシン適用される石膏ベースのフロースクリードは、先行技術において公知の無水物若しくはα−半無水物をベースとする石膏ベースのフロースクリードのように加工され得、かつ匹敵するか又はそれどころかより良好な機械的な強度、安定性及び耐久性を示す。
【0058】
少なくとも1種の無機バインダーを有する本発明による粉末状組成物は、殊にバインダーコンパウンドであってもよい。それは、本明細書中では、セメント、ポゾラン性バインダー及び/又は潜在水硬性バインダー、白色セメント、特殊セメント、アルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント並びに様々の含水硫酸カルシウム及び無水硫酸カルシウムを意味する。これらは、その場合、場合により更に別の添加剤をなお含有してよい。
【0059】
本発明の更に別の対象は、少なくとも30質量%の有機溶剤、最大30質量%の水、殊に5質量%未満、特に有利には1質量%未満の水、並びに
(I)カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、無水カルボン酸及びカルボン酸イミドの群からの少なくとも1個の基を包含する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと、
(II)ポリアルキレンエーテル基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー
とを包含するモノマーの混合物の重合によって得られるコポリマー
を包含する液状成分の製造法であって、ここで、モノマーの重合を水含有溶剤中で実施し、ここで、反応混合物全体の含水率は10質量%より多く、殊に20質量%より多く、特に有利には40質量%より多く、重合生成物に有機溶剤を混ぜ、かつ水を除去する。
【0060】
水の除去は、このために当業者に公知のあらゆる方法で行うことができる。殊に、薄膜式蒸発器が特に適していると判明した。
【0061】
殊に有利には、モノマー(I)は、すでに上で述べていた式(Ia)、(Ib)及び(Ic)の化合物であり、かつモノマー(II)は、すでに上で述べていた式(II)の化合物である。
【0062】
本発明によるコポリマーの製造における溶剤として、殊に水が適している。或いはまた、水と有機溶剤とから成る混合物を用いることも可能であり、ここで、溶剤は、ラジカル重合反応に対して実質的に不活性に挙動することが望ましい。有機溶剤に関して、殊に、上で挙げた有機溶剤が特に適していると見なされる。
【0063】
重合反応は、有利には、0〜180℃、特に有利には10〜100℃の温度範囲で、常圧でも、高められた又は低められた圧力下でも行われる。場合により、重合は、保護ガス雰囲気下、好ましくは窒素下でも実施されることができる。
【0064】
重合を開始するために、高エネルギーの電磁線、機械的エネルギー又は化学重合開始剤、例えば有機ペルオキシド、例えばベンゾイルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、クモイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド又はアゾ開始剤、例えばアゾイソブチロニトリル、アゾビスアミドプロピル−塩酸塩及び2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を使用することができる。同様に適しているのは、無機ペルオキシ化合物、例えばペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム又は過酸化水素であり、場合により還元剤(例えば亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、硫酸鉄(II))又は還元成分として脂肪族若しくは芳香族スルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸)を含有するレドックス系と併用される。
【0065】
分子量調節剤として通常の化合物が用いられる。適した公知の調節剤は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール及びアミルアルコールといったアルコール、アルデヒド、ケトン、アルキルチオール、例えばドデシルチオール及びt−ドデシルチオール、チオグリコール酸、イソオクチルチオグリコレート、2−メルカプトエタノール、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸及びいくつかのハロゲン化合物、例えば四塩化炭素、クロロホルム及び塩化メチレンである。
【0066】
代替的な更に別の実施形態においては、本発明によるコポリマーを製造するための方法は、有機溶剤中又は数種の有機溶剤の混合物中でも実施することができる。殊に、このためにもう一度、すでにずっと上で挙げていた有機溶剤が特に適していると見なされる。
【0067】
本発明の更に別の対象は、少なくとも30質量%の有機溶剤、及び少なくとも1質量%の、
(I)カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、無水カルボン酸及びカルボン酸イミドの群からの少なくとも1個の基を包含する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと、
(II)ポリアルキレンエーテル基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー
とを包含するモノマーの混合物の重合によって得られるコポリマー
を包含する液状成分を、少なくとも1種の無機バインダーを包含する粉末の処理のために、水による粉末の均一な分散を速めるために用いる使用であって、ここで、全質量を基準として0.01〜10質量%の液状成分を用いる。
【0068】
殊に有利には、モノマー(I)はまた、すでに上で述べていた式(Ia)、(Ib)及び(Ic)の化合物であり、かつモノマー(II)は、すでに上で述べていた式(II)の化合物である。
【0069】
以下の例は、本発明を詳細に説明するものである。
【実施例】
【0070】
例1
ポリカルボキシレートエーテルの製造
温度計、pH計及び還流冷却器を備えた1000mlの四ツ口フラスコに、水385g、ポリエチレングリコール−41−3000−ヒドロキシブチルモノビニルエーテル(20%のPO、ランダム)350g(0.12モル)を装入した。
この混合物を15℃に冷却する。その後、2%のFeSO
4*18H
2O溶液0.5g及び99%のアクリル酸42.4g(0.59モル)を添加する。その後、メルカプトエタノール1.8g及び5gのBrueggolit FF6を添加する。それに次いで、約4.6のpH値が生じる。2分の混合時間後に、50%のH
2O
2溶液2.5gを加える。しばらくしたら、重合が始まり、かつ連続的な温度上昇が生じる。約2分後に、反応は約42℃の最大温度値及び4.2のpH値に達する。さらに5分後に、バッチを20%のNaOH溶液30gでpH=5.5に調節する。51質量%の固形分含有率を有する、僅かに黄色味を帯びた、透明なポリマー水溶液が得られる。
【0071】
例2
メチルポリエチレングリコール 500に溶解したポリカルボキシレートエーテルの溶液の製造
2000mlの丸底フラスコに、例1からの51%のポリカルボキシレートエーテルの水溶液588gを量り入れる。700gのメチルポリエチレングリコール 500(BASF SEのPluriol
(R)A 500 E)を加える。回転蒸発器によって、それから70℃及び40mbarで水を抜き取る。1質量%より少ない含水率になったら中断し、かつ冷却する。生じた溶液は、僅かに乳白光を発し、かつ30質量%の有効成分含有率を有する。
【0072】
例3
プロピレンカーボネートに溶解したポリカルボキシレートエーテルの溶液の製造
2000mlの丸底フラスコに、例1からの51%のポリカルボキシレートエーテルの水溶液980gを量り入れる。それに次いで、プロピレンカーボネート500gを加える。回転蒸発器によって、それから70℃及び40mbarで水を抜き取る。1質量%より少ない含水率になったら中断し、かつ冷却する。生じた溶液は、僅かに乳白光を発し、かつ50質量%の有効成分含有率を有する。
【0073】
例4
メチルポリエチレングリコール 500/グリセリンカーボネートに溶解したポリカルボキシレートエーテルの溶液の製造
2000mlの丸底フラスコに、例1からの51%のポリカルボキシレートエーテルの水溶液980gを量り入れる。それに次いで、500gのメチルポリエチレングリコール 500(BASF SEのPluriol
(R)A 500 E)/グリセリンカーボネートの混合物(7:3)を加える。薄膜式蒸発器によって、引き続き75℃及び100mbarで水を抜き取る。2質量%より少ない含水率になったら中断し、かつ冷却する。生じた溶液は、僅かに乳白光を発し、かつ50質量%の有効成分含有率を有する。
【0074】
適用例1
(固練りモルタル100質量%を基準として約18質量%の混練量値で)PCE可塑剤0.20質量%を使用した試験配合物としての下記の粉末状組成物(99.80質量%)を、混合速度の測定のために用いる:
【表1】
【0075】
粉末状組成物299.4gを、例2からの溶液2g(固練りモルタルの質量を基準として0.67質量%)で処理を施す(分散剤0.2質量%及び溶剤0.47質量%に相当する)。混合性を評価するために、処理を施した粉末状組成物300gをビーカーに入れ、かつ3枚羽根を有する軸流式撹拌機を用いて毎分500回転で撹拌する。それから、液体(水54gは、固練りモルタルの質量を基準として18質量%に相当する)の添加を行い、かつ目視によりフレッシュモルタルの均一なコンシステンシーが生じる時間を測定する。この試験混合物は、(毎分500回転で)連続的な撹拌下で均一なコンシステンシーに達するまで8秒を要する。
【0076】
比較のために、同一の分散剤(0.6gは、固練りモルタルの質量を基準として0.2質量%に相当する)を粉末状で加えている同一の粉末状組成物を用いる。この均質化された混合物を、同様に軸流式撹拌機を用いて毎分500回転で撹拌する。それから液体の添加を行う。液体として、水54g並びに1.4gのメチルポリエチレングリコール 500(BASF SEのPluriol
(R)A 500 E)を用いる。その時、この混合物中には−本発明による適用例のように−粉末混合物の他に、付加的に0.6gの可塑剤及び1.4gの溶剤が含まれている。液体の添加後に、モルタルは、均一なコンシステンシーに達するまで16秒を要する。
【0077】
適用例2
粉末状組成物:
【表2】
【0078】
粉末状組成物300gを、例2からの溶液2.0g(固練りモルタルの質量を基準として0.67質量%)で処理を施す(分散剤0.2質量%及び溶剤0.47質量%に相当する)。混合性を評価するために、処理を施した粉末状組成物300gをビーカーに入れ、かつ軸流式撹拌機を用いて毎分500回転で撹拌する。それから、液体(水63gは、固練りモルタルの質量を基準として21質量%に相当する)の添加を行い、かつ目視によりフレッシュモルタルの均一なコンシステンシーが生じる時間を測定する。この試験混合物は、均一なコンシステンシーに達するまで9秒を要する。
【0079】
比較のために、同一の分散剤(0.6gは、固練りモルタルの質量を基準として0.20質量%に相当する)を粉末状で加えている同一の粉末状組成物を用いる。この均質化された混合物を、同様に軸流式撹拌機を用いて毎分500回転で撹拌する。それから液体の添加を行う。液体として、水63g並びに1.4gのメチルポリエチレングリコール 500(BASF SEのPluriol
(R)A 500 E)を用いる。その時、この混合物中には−本発明による適用例のように−粉末混合物の他に、付加的に0.6gの可塑剤及び1.4gの溶剤が含まれている。液体の添加後に、モルタルは、均一なコンシステンシーに達するまで18秒を要する。
【0080】
適用例3:
耐火モルタル
粉末状組成物:
【表3】
【0081】
粉末状組成物300gを、例2からの溶液2.0g(固練りモルタルの質量を基準として0.67質量%)で処理を施す(分散剤0.20質量%及び溶剤0.47質量%に相当する)。混合性を評価するために、処理を施した粉末状組成物300gをビーカーに入れ、かつ軸流式撹拌機を用いて毎分500回転で撹拌する。それから、液体(水66gは、固練りモルタルの質量を基準として22質量%に相当する)の添加を行い、かつ目視によりフレッシュモルタルの均一なコンシステンシーが生じる時間を測定する。この試験混合物は、均一なコンシステンシーに達するまで5秒を要する。
【0082】
比較のために、同一の分散剤(0.6gは、固練りモルタルの質量を基準として0.20質量%に相当する)を粉末状で加えている同一の粉末状組成物を用いる。この均質化された混合物を、同様に軸流式撹拌機を用いて毎分500回転で撹拌する。それから液体の添加を行う。液体として、水66g並びに1.4gのメチルポリエチレングリコール 500(BASF SEのPluriol
(R)A 500 E)を用いる。その時、この混合物中には−本発明による適用例のように−粉末混合物の他に、付加的に0.6gの可塑剤及び1.4gの溶剤が含まれている。液体の添加後に、モルタルは、均一なコンシステンシーに達するまで9秒を要する。
【0083】
適用例4:
スタッコ石膏(β−硫酸カルシウム半水和物)32.92kgに、例2と同じように製造していた、メチルポリエチレングリコール 500(有効成分含有率10質量%)に溶解したポリカルボキシレートエーテルの溶液987.57gを、レーディゲミキサー中で噴霧する。ポリカルボキシレートエーテルの溶液の計量供給は、Graco社のエアレスポンプを使って行う。浸入圧力は、約1.5barであり、かつ計量供給速度は、約320ml/分である。計量供給は、27℃の初期温度で開始し、かつ39℃の温度で終える。計量供給プロセスの間、レーディゲミキサーを188rpmの回転速度で運転し、かつカッターヘッドを2段階目に設定する。ポリカルボキシレートエーテルの溶液の噴射量は、流量計によって測定する。混合プロセスを観察するために、前蓋をプレキシガラス製の蓋と取り換える。計量供給後に、均一な混合物が得られるまで、さらになお10分間撹拌する。
【0084】
混合性を評価するために、まず、処理を施したスタッコ石膏103gを、石灰石粉(Omyacarb 6AL)100gで均質化し、そしてビーカーに入れる。毎分200回転で軸流式撹拌機によって粉末状成分を混合している間、混練水(58g)の添加を行う。引き続き、目視によりフレッシュモルタルの均一なコンシステンシーが生じる時間を測定する。本発明による混合物は、そのために約4秒を要する。
【0085】
比較例
比較のために、同一の分散剤(0.3g)を粉末状で加えている、スタッコ石膏(β−硫酸カルシウム半水和物)100g及び石灰石粉(Omyacarb 6AL)100gから成る同一の粉末状組成物を用いる。毎分200回転で軸流式撹拌機によって粉末状成分を混合している間、混練水(58g)と溶剤(2.7gのメチルポリエチレングリコール 500)とから成る液状成分の添加を行う。相応して、混合物中には−1つ目の例と同じように−スタッコ石膏及び石灰石粉の他に、可塑剤0.3g及び溶剤2.7gが存在する。この参照混合物は、均一なコンシステンシーになるまで約7秒を要する。