(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セパレータのメチルエチルカーボネートをプローブ分子として測定し、算出したブルッグマン指数が、2.0〜3.0である、請求項1又は2に記載のリチウムイオンキャパシタ。
前記負極活物質は、活性炭の表面に炭素材料を被着させることにより形成され、かつ、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)とするとき、
0.010≦Vm1≦0.250、
0.001≦Vm2≦0.200、及び
1.5≦Vm1/Vm2≦20.0を満たす複合多孔性材料である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオンキャパシタ。
前記正極活物質は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、
0.3<V1≦0.8、及び
0.5≦V2≦1.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が1500m2/g以上3000m2/g以下である活性炭である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
一般に、リチウムイオンキャパシタ(以下「キャパシタ」ともいう。)は、正極電極体、セパレータ、負極電極体、電解液及び外装体を主な構成要素とするが、本発明の実施の形態では、ポリエチレンを含むポリオレフィン樹脂から成るセパレータが使用される。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0028】
<正極電極体>
本発明のキャパシタに用いられる正極電極体は、正極集電体上に正極活物質層を設けたものである。正極集電体は金属箔であることが好ましく、さらに好ましくは、1〜100μmの厚みのアルミニウム箔である。
【0029】
正極活物質層は正極活物質と結着剤を含有し、必要に応じて導電性フィラーを含有する。正極活物質としては、活性炭が好ましく使用される。
活性炭の種類及びその原料には特に制限はないが、高容量(すなわち高エネルギー密度)と高出力特性(すなわち、高出力密度)とを両立させるために、活性炭の細孔を最適に制御することが好ましい。具体的には、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)としたとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が1500m
2/g以上4000m
2/g以下である活性炭が好ましい。
【0030】
メソ孔量V1は、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましく、また、蓄電素子の容量の低下を抑える点から、0.8cc/g以下であることが好ましい。また上記V1は、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、さらに好ましくは、0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
【0031】
一方、マイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cc/g以上であることが好ましく、また、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加させ、単位体積あたりの容量を増加させるという点から、1.0cc/g以下であることが好ましい。また上記V2は、より好ましくは、0.6cc/g以上1.0cc/g以下、さらに好ましくは、0.8cc/g以上1.0cc/g以下である。
【0032】
また、マイクロ孔量V2に対するメソ孔量V1の比(V1/V2)は、0.3≦V1/V2≦0.9の範囲であることが好ましい。すなわち、高容量を得ながら出力特性の低下を抑えることができる程度に、マイクロ孔量に対するメソ孔量の割合を大きくするという点から、V1/V2が0.3以上であることが好ましく、また、高出力特性を得ながら容量の低下を抑えることができる程度に、メソ孔量に対するマイクロ孔量の割合を大きくするという点から、V1/V2は0.9以下であることが好ましい。また、より好ましいV1/V2の範囲は、0.4≦V1/V2≦0.7、さらに好ましいV1/V2の範囲は、0.55≦V1/V2≦0.7である。
【0033】
本発明において、マイクロ孔量及びメソ孔量は以下のような方法により求められる値である。すなわち、試料を500℃で一昼夜真空乾燥し、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行なう。このときの脱着側の等温線を用いて、マイクロ孔量はMP法により、メソ孔量はBJH法により算出する。
【0034】
MP法とは、「t−プロット法」(B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965))を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、M.Mikhail, Brunauer, Bodorにより考案された方法である(R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45 (1968))。また、BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、Barrett, Joyner, Halendaらにより提唱されたものである(E. P. Barrett, L. G. Joyner and P. Halenda, J. Amer. Chem. Soc., 73, 373(1951))。
【0035】
活性炭の平均細孔径は、出力を最大にする点から、17Å以上であることが好ましく、18Å以上であることがより好ましく、20Å以上であることが最も好ましい。また容量を最大にする点から、25Å以下であることが好ましい。本明細書で記載する平均細孔径とは、液体窒素温度における各相対圧力下での窒素ガスの各平衡吸着量を測定して得られる重量あたりの全細孔容積をBET比表面積で除して求めたものを指す。
【0036】
活性炭のBET比表面積は、1500m
2/g以上3000m
2/g以下であることが好ましく、1500m
2/g以上2500m
2/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が1500m
2/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、一方、BET比表面積が3000m
2/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる傾向がある。
【0037】
上記のような特徴を有する活性炭は、例えば以下に説明するような原料及び処理方法を用いて得ることができる。
本発明の実施形態では、活性炭の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他合成木材、合成パルプ等、及びそれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
【0038】
これらの原料を上記活性炭とするための炭化及び賦活の方式としては、例えば固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の既知の方式を採用できる。
【0039】
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガス等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400〜700℃(好ましくは450〜600℃)程度で30分〜10時間程度に亘って焼成する方法が挙げられる。
【0040】
上記炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が好ましく用いられる。このうち、賦活ガスとして、水蒸気又は二酸化炭素を使用する方法が好ましい。
【0041】
この賦活方法では、賦活ガスを0.5〜3.0kg/h(好ましくは0.7〜2.0kg/h)の割合で供給しながら、上記炭化物を3〜12時間(好ましくは5〜11時間、さらに好ましくは6〜10時間)かけて800〜1000℃まで昇温して賦活するのが好ましい。
【0042】
さらに、上記炭化物の賦活処理に先立ち、あらかじめ上記炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、炭素材料を水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で焼成してガス賦活することができる。
【0043】
上記炭化方法における焼成温度及び焼成時間と、上記賦活方法における賦活ガス供給量及び昇温速度及び最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、本発明の実施形態において使用できる、上記の特徴を有する活性炭を製造することができる。
【0044】
活性炭の平均粒径は、1〜20μmであることが好ましい。本明細書で記載する平均粒径とは、粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定した際、全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒子径(すなわち、50%径(Median径))を指す。
【0045】
上記平均粒径が1μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。一方で、平均粒径が20μm以下であると、高速充放電には適合し易くなる傾向がある。さらに、上記平均粒径は、好ましくは2〜15μmであり、更に好ましくは3〜10μmである。
【0046】
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体などを使用することができる。正極活物質層における結着剤の混合量は、正極活物質に対して3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%の範囲がさらに好ましい。
【0047】
上記正極活物質層には、活性炭及び結着剤以外に、必要に応じて正極活物質よりも導電性の高い導電性炭素質材料からなる導電性フィラーを混合することができる。このような導電性フィラーとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、これらの混合物などが好ましい。正極活物質層における導電性フィラーの混合量は、正極活物質に対して0〜20質量%が好ましく、1〜15質量%の範囲がさらに好ましい。導電性フィラーは高入力の観点からは混合したほうが好ましいが、混合量が20質量%よりも多いと正極活物質層における正極活物質の含有量が少なくなるために、体積あたりのエネルギー密度が低下するので好ましくない。正極活物質層の厚みは、通常50〜200μm程度である。
正極電極体は、正極活物質と結着剤(必要に応じて導電性フィラー)とを溶媒に分散させたペーストを作成し、このペーストを正極集電体上に塗布し、乾燥し、必要に応じてプレスすることにより得られる。塗布方法を例示すれば、バーコート法、転写ロール法、Tダイ法、スクリーン印刷法などをあげることができ、ペーストの物性と塗布厚に応じた塗布方法を適宜選択できる。
【0048】
<負極電極体>
本発明のキャパシタに用いられる負極電極体は、負極集電体上に負極活物質層を設けたものである。負極集電体は金属箔であることが好ましく、さらに好ましくは1〜100μmの厚みの銅箔である。
負極活物質層は負極活物質と結着剤を含有し、必要に応じて導電性フィラーを含有する。負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵放出できる炭素材料である。また、負極集電体には、この炭素材料に加えて、リチウムチタン複合酸化物、導電性高分子等の、リチウムイオンを吸蔵放出する他の材料が含まれることができる。炭素材料としては、例えば、難黒鉛性カーボン、易黒鉛性カーボン、複合多孔性材料等を挙げることができる。
【0049】
負極活物質は、さらに好ましくは、活性炭の表面に炭素材料を被着させて成る複合多孔性材料であって、該複合多孔性材料におけるBJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)としたとき、0.010≦Vm1≦0.250、0.001≦Vm2≦0.200、及び1.5≦Vm1/Vm2≦20.0を満たす材料である。
【0050】
上記負極活物質は、1種類のみで使用するか、又は2種以上を混合して使用してもよい。
上記複合多孔性材料は、例えば、活性炭と炭素材料前駆体とを共存させた状態で、これらを熱処理することにより得ることができる。
【0051】
上記の複合多孔性材料の原料に用いる活性炭に関し、得られる複合多孔性材料が所望の特性を発揮する限り、活性炭を得るための原材料に特に制限はなく、石油系、石炭系、植物系、高分子系等の各種の原材料から得られた市販品を使用することができる。特に、平均粒径が1μm以上15μm以下の活性炭粉末を用いることが好ましい。該平均粒径は、より好ましくは、2μm以上10μm以下である。なお上記平均粒径の測定方法は、上述の正極活物質である活性炭の平均粒径に用いる測定方法と同様である。
【0052】
一方、上記の複合多孔性材料の原料に用いる炭素材料前駆体とは、熱処理することにより、活性炭に炭素材料を被着させることができる、固体、液体、又は溶剤に溶解可能な有機材料であり、例えば、ピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、フェノール樹脂等の合成樹脂等を挙げることができる。これらの炭素材料前駆体の中でも、安価であるピッチを用いることが製造コスト上好ましい。ピッチは、大別して石油系ピッチと石炭系ピッチとに分けられる。例えば、石油系ピッチとしては、原油の蒸留残査、流動性接触分解残査(デカントオイル等)、サーマルクラッカーに由来するボトム油、ナフサクラッキングの際に得られるエチレンタール等が例示される。
【0053】
上記ピッチを用いる場合、複合多孔性材料は、活性炭の表面でピッチの揮発成分又は熱分解成分を熱反応させることによって、該活性炭に炭素材料を被着させることにより得られる。この場合、200〜500℃程度の温度において、ピッチの揮発成分又は熱分解成分の活性炭細孔内への被着が進行し、400℃以上で該被着成分が炭素材料となる反応が進行する。熱処理時のピーク温度は得られる複合多孔性材料の特性、熱反応パターン、熱反応雰囲気等により適宜決定されるものであるが、400℃以上であることが好ましく、より好ましくは450℃〜1000℃であり、さらに好ましくは500〜800℃程度のピーク温度である。また、熱処理時のピーク温度を維持する時間は、30分間〜10時間であればよく、好ましくは1時間〜7時間、より好ましくは2時間〜5時間である。例えば、500〜800℃程度のピーク温度で2時間〜5時間に亘って熱処理する場合、活性炭表面に被着している炭素材料は多環芳香族系炭化水素になっているものと考えられる。
【0054】
上記の複合多孔性材料の製造方法は、例えば、炭素材料前駆体から揮発した炭化水素ガスを含む不活性雰囲気中で活性炭を熱処理し、気相で炭素材料を被着させる方法が挙げられる。また、活性炭と炭素材料前駆体とを予め混合し熱処理する方法、又は溶媒に溶解させた炭素材料前駆体を活性炭に塗布して乾燥させた後に熱処理する方法も可能である。
【0055】
複合多孔性材料は、活性炭の表面に炭素材料を被着させたものであるが、活性炭の細孔内部に炭素材料を被着させた後の細孔分布が重要であり、メソ孔量及びマイクロ孔量により規定できる。本発明においては、特に、メソ孔量及びマイクロ孔量の絶対値と共に、メソ孔量/マイクロ孔量の比率が重要である。すなわち、本発明の一態様において、上記の複合多孔性材料におけるBJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)としたとき、0.010≦Vm1≦0.250、0.001≦Vm2≦0.200、かつ1.5≦Vm1/Vm2≦20.0であることが好ましい。
【0056】
メソ孔量Vm1については、0.010≦Vm1≦0.225がより好ましく、0.010≦Vm1≦0.200が更に好ましい。マイクロ孔量Vm2については、0.001≦Vm2≦0.150がより好ましく、0.001≦Vm2≦0.100が更に好ましい。メソ孔量/マイクロ孔量の比率については、1.5≦Vm1/Vm2≦15.0がより好ましく、1.5≦Vm1/Vm2≦10.0が更に好ましい。メソ孔量Vm1が上限以下(Vm1≦0.250)であれば、リチウムイオンに対する高い充放電効率が維持でき、メソ孔量Vm1及びマイクロ孔量Vm2が下限以上(0.010≦Vm1、0.001≦Vm2)であれば、高出力特性が得られる。
【0057】
また、孔径の大きいメソ孔内ではマイクロ孔よりもイオン伝導性が高い為、高出力特性を得るためにはメソ孔量が必要であり、一方、孔径の小さいマイクロ孔内では、蓄電素子の耐久性に悪影響を及ぼすとされる水分等の不純物が脱着し難い為、高耐久性を得るためにはマイクロ孔量を制御する必要があると考えられる。したがって、メソ孔量とマイクロ孔量との比率の制御が重要であり、下限以上(1.5≦Vm1/Vm2)の場合、すなわち炭素材料が活性炭のメソ孔よりもマイクロ孔に多く被着し、被着後の複合多孔性材料のメソ孔量が多く、マイクロ孔量が少ない場合に、高エネルギー密度、高出力特性かつ高耐久性(サイクル特性、フロート特性等)が得られる。メソ孔量とマイクロ孔量との比率が上限以下(Vm1/Vm2≦20.0)の場合、高出力特性が得られる。
本発明において、上記のメソ孔量Vm1及びマイクロ孔量Vm2の測定方法は、先述した正極活物質における測定方法と同様である。
【0058】
本発明の一態様においては、上述のように、活性炭の表面に炭素材料を被着した後のメソ孔量/マイクロ孔量の比率が重要である。本発明で規定する細孔分布範囲の複合多孔性材料を得る為には、原料に用いる活性炭の細孔分布が重要である。
負極活物質としての複合多孔性材料の形成に用いる活性炭においては、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)としたとき、0.050≦V1≦0.500、0.005≦V2≦1.000、かつ0.2≦V1/V2≦20.0であることが好ましい。
【0059】
メソ孔量V1については、0.050≦V1≦0.350がより好ましく、0.100≦V1≦0.300が更に好ましい。マイクロ孔量V2については、0.005≦V2≦0.850がより好ましく、0.100≦V2≦0.800が更に好ましい。メソ孔量/マイクロ孔量の比率については、0.22≦V1/V2≦15.0がより好ましく、0.25≦V1/V2≦10.0が更に好ましい。活性炭のメソ孔量V1が0.500以下である場合及びマイクロ孔量V2が1.000以下である場合、上記本発明の一態様の複合多孔性材料の細孔構造を得る為には適量の炭素材料を被着させれば足りるので、細孔構造を制御し易くなる傾向がある。一方、活性炭のメソ孔量V1が0.050以上である場合及びマイクロ孔量V2が0.005以上である場合、V1/V2が0.2以上である場合、及びV1/V2が20.0以下である場合は、該活性炭の細孔分布から上記本発明の一態様の複合多孔性材料の細孔構造が容易に得られる傾向がある。
【0060】
本発明における複合多孔性材料の平均粒径は1μm以上10μm以下であることが好ましい。下限については、より好ましくは2μm以上であり、更に好ましくは2.5μm以上である。上限については、より好ましくは6μm以下であり、更に好ましくは4μm以下である。平均粒径が1μm以上10μm以下であれば良好な耐久性が保たれる。上記の複合多孔性材料の平均粒径の測定方法は、上述の正極活物質の活性炭の平均粒径に用いる測定方法と同様である。
【0061】
上記の複合多孔性材料において、水素原子/炭素原子の原子数比(以下、H/Cともいう。)は、0.05以上0.35以下であることが好ましく、0.05以上0.15以下であることがより好ましい。H/Cが0.35以下である場合には、活性炭表面に被着している炭素材料の構造(典型的には多環芳香族系共役構造)が十分に発達するので、容量(エネルギー密度)及び充放電効率が高くなるため好ましい。一方、H/Cが0.05以上である場合には、炭素化が過度に進行することはないため十分なエネルギー密度を得られる。なお、H/Cは元素分析装置により測定される。
【0062】
また、通常、上記複合多孔性材料は、原料の活性炭に由来するアモルファス構造を有するとともに主に被着した炭素材料に由来する結晶構造を有する。X線広角回折法によると、該複合多孔性材料は、高い出力特性を発現するためには結晶性が低い構造が好ましく、充放電における可逆性を保つには結晶性が高い構造が好ましいという観点から、(002)面の面間隔d
002が3.60Å以上4.00Å以下であり、このピークの半価幅から得られるc軸方向の結晶子サイズLcが8.0Å以上20.0Å以下であるものが好ましく、d
002が3.60Å以上3.75Å以下であり、このピークの半価幅から得られるc軸方向の結晶子サイズLcが11.0Å以上16.0Å以下であるものがより好ましい。
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体などを使用することができる。負極活物質層における結着剤の混合量は、負極活物質に対して3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%の範囲がさらに好ましい。
【0063】
上記負極活物質層には、上記リチウムイオン吸蔵可能炭素材料及び結着剤以外に、必要に応じて負極活物質より導電性の高い炭素質材料からなる導電性フィラーを混合することができる。該導電性フィラーとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、これらの混合物をあげることができる。該導電性フィラーの混合量は、負極活物質に対して0〜20質量%が好ましく、1〜15質量%の範囲がさらに好ましい。導電性フィラーは高入力の観点からは混合したほうが好ましいが、混合量が20質量%よりも多いと負極活物質層における負極活物質の含有量が少なくなるために、体積あたりのエネルギー密度が低下するので好ましくない。
【0064】
負極電極体は、リチウムイオン吸蔵可能炭素材料と結着剤(必要に応じ、導電性フィラー)とを溶媒に分散させたペーストを作成し、このペーストを負極集電体上に塗布し、乾燥し、必要に応じてプレスすることにより得られる。塗布方法としては、正極電極体と同様の方法が使用可能であり、ペーストの物性と塗布厚に応じた塗布方法を適宜選択できる。上記負極活物質層の厚みは、通常50〜200μm程度である。
【0065】
本発明のキャパシタに用いられる負極活物質には、予めリチウムをドープしておくことができる。リチウムをドープしておくことにより、キャパシタの初期効率、容量および出力特性を制御することが可能である。ドープ量は負極活物質が吸蔵できるリチウムイオンの30〜100%の範囲であり、より好ましくは40〜80%の範囲である。
【0066】
負極活物質にリチウムイオンを予めドープする方法は、本発明では特に制限しないが、公知の方法を用いることができる。例えば、負極活物質を電極に成型した後、該負極電極体を作用極、金属リチウムを対極に使用し、非水系電解液を組み合わせた電気化学セルを作製し、電気化学的にリチウムイオンをドープする方法が挙げられる。また、該負極電極体に金属リチウム箔を圧着し、非水系電解液に入れることで負極活物質にリチウムイオンをドープすることも可能である。
【0067】
<セパレータ>
本発明のキャパシタに用いられるセパレータは、正極電極体と負極電極体が直接電気的に接触しないように絶縁すると共に、その内部の空隙に電解液を保持して電極間のリチウムイオンの伝導経路を形成する役割を担う。本実施形態では、セパレータは、ポリエチレンを含むポリオレフィン樹脂から成り、そしてセパレータを非拘束状態で1時間に亘って100℃に保ったときに、セパレータの熱収縮率が、第一の方向では3%以上10%以下であり、かつ第一の方向と直交する第二の方向では2%以上10%以下である。セパレータの熱収縮率は、より好ましくは、第一の方向では4%以上9%以下であり、第二の方向では3%以上9%以下であり、さらに好ましくは、第一の方向では5%以上8%以下であり、第二の方向では3.5%以上5%以下である。
【0068】
第一の方向をMD方向(シート状に製膜されたセパレータをロールに巻き取るときの進行方向であり、「長手方向」ともいう)とし、第二の方向をTD方向(MD方向と直交する方向であり、「幅方向」又は「短手方向」ともいう)とするのが、セパレータの製造が容易となるので好ましい実施態様である(以降、第一の方向をMD、第二の方向をTDと表記する場合がある。)。本明細書では、「非拘束状態」とは、対象が固定されていない状態を意味し、例えば、シート状態のセパレータをそのままオーブンに入れることを意味する。この熱収縮率は、下記実施例に記載の方法に準じて測定される。
更に、本発明の該正極電極体の正極活物質層の面積又は該負極電極体の負極活物質層の負極面積のいずれか大なる電極面積と該セパレータの面積とが、(セパレータ面積)>(電極面積)であり、且つ、上面視における、該セパレータの第一の方向と平行となる任意の直線において、該任意の直線における該電極面積と該セパレータとが重なる部分の長さをAとし、該電極面積と該セパレータが重ならない部分の長さをL
1、L
1’とした時、L
1、L
1'のいずれかが最も短くなるような任意の直線のL
1又はL
1'を下記式(1):
X
1=(L
1又はL
1'/(A/2))×100
に代入して求めたX
1と、
上面視における、該セパレータの第二の方向と平行となる任意の直線において、該任意の直線における該電極面積と該セパレータとが重なる部分の長さをBとし、該電極面積と該セパレータが重ならない部分の長さをL
2、L
2’とした時、L
2、L
2'のいずれかが最も短くなるような任意の直線のL
2又はL
2'を下記式(2):
X
2=(L
2又はL
2'/(A/2))×100
に代入して求めたX
2がいずれも0.5以上8.0以下である。
【0069】
図1により、X
1を求めるためのA、L1、L1’について説明する。1は、セパレータを示し、2は、該正極電極体の正極活物質層の面積又は該負極電極体の負極活物質層の負極面積のいずれか大なる方の電極、3は、2の電極における集電体(活物質層は塗布されていない部位)を示している。X
2についても同様である。
X
1及びX
2は好ましくは2.0以上6.0以下であり、更に好ましくは3.0以上5.0以下である。
【0070】
図3により、本発明における「マージン」の概念を説明する。
(1)着目点
マージンを、電極からはみ出したセパレータの幅(L
1、L
2、L
3、L
4)と電極幅(A
1、A
2)との割合で規定した。
最も短い幅のマージン部分(L
1)が、最も早く加熱により電極の内側に縮み、短絡を生じることになる。(L
1<L
3<L
2<L
4)。そこで、最も短い幅のマージン部分(L
1)を様々な形状に対応する特定方法とした。
(2)特定方法
まず、セパレータの方向を特定する。セパレータには製造上,MD方向、TD方向が存在し、流通品も分解して加熱し、熱収縮状態から方向が特定できる。よって、MD方向,TD方向で特定することとした。ここで、MD方向=第一方向、TD方向=第二方向とした。
次いで、マージンを規定した。上記特定された方向に並行な任意の線を想定し、電極の幅(A
1、A
2)、セパレータのはみ出し幅(L
1、L
2、L
3、L
4)を特定し、セパレータのはみ出し幅が最も短いL
1を用いてマージンを規定した。
マージン=[L
1/(A
1/2)]×100(%)
電極幅を(A
1/2)を基準とすることで「A
1とL
1、L
3」、「A
2とL
2、L
4」の熱収縮の割合を均等化した。
【0071】
ラミネートフィルム外装体を使用した密閉型の蓄電素子は、電解液の沸点を大幅に超える異常高温状態に長時間さらされると、電解液が気化して圧力により外装体が開封する。このようなセパレータは、異常高温状態の継続によりキャパシタ内の電解液が気化してその圧力により外装体を開封させる前にキャパシタを短絡させることができるので、キャパシタを破裂及び発火から防ぎ、安全性を向上させる観点から好ましい。ここで「破裂」とは、外装体の開封時に電極積層体が破壊されて電解液とともに飛散する状態をいう。
【0072】
リチウムイオン電池のセパレータにおいては、異常高温時にシャットダウンさせることは必要であるが、さらに高温になることによりメルトダウンして正極電極体と負極電極体とが短絡することは可能な限り避ける必要がある。そのため、熱収縮率が低くメルトダウンし難いセパレータが使用されてきた。一方、リチウムイオンキャパシタのセパレータにおいては、異常高温時にシャットダウンさせる必要性はないと考えられてきたのでシャットダウンせず、さらに高温になってもメルトダウンもしない紙セパレータが使用されてきた。しかしながら、本発明者は、リチウムイオンキャパシタにおいても、高容量・高出力化を進めると破裂・発火のリスクがあり、それを防止するには、異常高温時にシャットダウンすると、ほぼ同時にメルトダウンさせる機能が有効であることを見出した。すなわち、上記のような熱収縮率を有し、かつポリエチレンを含むポリオレフィン樹脂から成るセパレータは、異常高温時に短時間でメルトダウンすることで、異常高温状態の継続による外装体の開封時に、破裂及び発火することなく安全にキャパシタを短絡させ、安全性を向上させることができるので好ましいことを見出したのである。
【0073】
以上より、本発明のセパレータの熱収縮率は、第一の方向では3%以上、第二の方向では2%以上であれば、異常高温時に短時間でメルトダウンすることができ、破裂や発火することなく安全にキャパシタを短絡させ、安全性を向上でき、第一の方向では10%以下、第二の方向では10%以下であれば、通常使用温度範囲では短絡することなくキャパシタ機能を維持することができる。
また、X
1及びX
2については、0.5%以上であれば、通常使用温度範囲では短絡することなくキャパシタ機能を維持することができ、8.0%以下であれば、異常高温時に短時間でメルトダウンすることができ、破裂や発火することなく安全にキャパシタを短絡させ、安全性を向上できる。
【0074】
本実施形態では、セパレータは微多孔膜であることが好ましく、そして微多孔膜の突刺強度(絶対強度)は、200g以上であることが好ましく、300g以上であることがより好ましい。突刺強度を200g以上とすることは、キャパシタ用のセパレータとして微多孔膜を使用する場合において、キャパシタに備えられる電極材等の鋭利部が微多孔膜に突き刺さった際にも、ピンホールや亀裂の発生を低減し得る観点から好ましい。突刺強度の上限として特に制限はないが、1000g以下であることが好ましい。なお、突刺強度は、下記実施例に記載の方法に準拠して測定される。
本実施形態の微多孔膜の空孔率は、30%〜70%が好ましく、より好ましくは、55〜70%である。空孔率を30%以上とすることは、微多孔膜をキャパシタのセパレータとして用いた場合に、ハイレート時のリチウムイオンの急速な移動に追従する観点からも好ましい。一方、空孔率を70%以下とすることは、膜強度を向上する観点から好ましく、微多孔膜をキャパシタのセパレータとして用いた場合に自己放電抑制の観点からも好ましい。空孔率は、下記実施例に記載の方法に準拠して測定される。
【0075】
また、本実施形態の微多孔膜の交流抵抗は、キャパシタのセパレータとして用いた場合の出力の観点から0.9Ω・cm
2以下が好ましく、0.6Ω・cm
2以下がより好ましく、0.3Ω・cm
2以下が更に好ましい。微多孔膜の交流抵抗は、下記実施例に記載の方法に準拠して測定される。
【0076】
なお、上記のような各種特性を備える微多孔膜を形成する手段としては、例えば、押出時のポリオレフィンの濃度、ポリオレフィンにおけるポリエチレン及びポリプロピレンなど各種ポリオレフィンの配合比率、ポリオレフィンの分子量、延伸倍率、抽出後の延伸及び緩和操作を最適化する方法が挙げられる。
また、セパレータのMD方向及びTD方向における熱収縮率は、熱固定時の延伸温度、倍率を最適化することで調整することができる。
また、微多孔膜の態様は、単層体の態様であっても積層体の態様であってもよい。
【0077】
次に、本実施形態の微多孔膜の製造方法について、例示的に説明する。ただし、得られる微多孔膜が、上記微多孔膜であれば、本実施形態の製造方法は、ポリマーの種類、溶媒の種類、押出方法、延伸方法、抽出方法、開孔方法、熱固定・熱処理方法など、何ら限定されることはない。
【0078】
本実施形態の微多孔膜の製造方法は、ポリマーと可塑剤とを、あるいは、ポリマーと可塑剤とフィラーとを溶融混練し成形する工程と、延伸工程と、可塑剤(及び必要に応じてフィラー)抽出工程と、熱固定工程とを含むことが、透過性及び膜強度の物性バランスを適度にコントロールする観点から好ましい。
【0079】
より具体的には、例えば、下記(1)〜(4):
(1)ポリオレフィンと、可塑剤と、必要に応じてフィラーとを混練して、混練物を形成する混練工程;
(2)混練工程の後に混練物を押し出し、単層の又は複数層が積層したシート状に成形して冷却固化させるシート成形工程;
(3)シート成形工程の後、必要に応じて可塑剤及び/又はフィラーを抽出し、更にシート(シート状成形体)を一軸以上の方向へ延伸する延伸工程;
(4)延伸工程の後、必要に応じて可塑剤及び/又はフィラーを抽出し、更に熱処理を行う後加工工程;
の各工程を含む微多孔膜の製造方法を用いることができる:
【0080】
上記(1)の混練工程において用いられるポリオレフィンは、ポリエチレンを必須成分として含む。ポリオレフィンは、1種のポリエチレンからなるものであってもよく、複数種のポリオレフィンを含むポリオレフィン組成物であってもよい。
ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンが挙げられ、これらを2種類以上ブレンドした混合物として用いてもよい。以下、ポリエチレンを「PE」、ポリプロピレンを「PP」と略記することがある。
【0081】
ポリオレフィンの粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは5万〜300万、より好ましくは15万〜200万である。粘度平均分子量が5万以上であることにより、高強度な微多孔膜を得られる傾向となり好ましく、300万以下であることにより、押出工程を容易にさせる効果が得られる傾向となり好ましい。粘度平均分子量は、下記実施例に記載の方法に準拠して測定される。
【0082】
また、ポリオレフィンの融点は、好ましくは100〜165℃、より好ましくは110〜140℃である。融点が100℃以上であることにより高温環境下での機能が安定する傾向となり好ましく、165℃以下であることにより、高温時のメルトダウンの発生又はヒューズ効果が得られる傾向となり好ましい。なお、融点は、示差走査熱量(DSC)測定における融解ピークの温度を意味する。また、ポリオレフィンが複数種の混合物として用いられる場合のポリオレフィンの融点は、その混合物のDSC測定において、融解ピーク面積の最も大きいピークの温度を意味する。
ポリオレフィンとしては、孔の閉塞を抑制しつつ、より高温で熱固定を行うことができるという点から、高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0083】
このような高密度ポリエチレンのポリオレフィン中に占める割合は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。その割合が5質量%以上であることにより、更に、孔の閉塞を抑制しつつ、より高温で熱固定を行うことができる。一方、高密度ポリエチレンのポリオレフィン中に占める割合は、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下である。その割合が50質量%以下であることにより、微多孔膜が、高密度ポリエチレンによる効果だけでなく、他のポリオレフィンによる効果をもバランス良く併せ持つことができる。
【0084】
また、ポリオレフィンとしては、微多孔膜をキャパシタのセパレータとして用いた場合のシャットダウン特性を向上させ、あるいは釘刺し試験の安全性を向上させる観点から、粘度平均分子量(Mv)が10万〜30万のポリエチレンを用いることが好ましい。
【0085】
このような10万〜30万のポリエチレンがポリオレフィン中に占める割合は、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上である。その割合が30質量%以上であることにより、更に、微多孔膜をキャパシタのセパレータとして用いた場合のシャットダウン特性を向上させ、あるいは釘刺し試験の安全性を向上させることができる。一方、10万〜30万のポリエチレンがポリオレフィン中に占める割合は、好ましくは100質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下である。
ポリオレフィンとして、メルトダウン温度を制御する観点から、ポリプロピレンを添加して用いてもよい。
【0086】
このようなポリプロピレンがポリオレフィン中に占める割合は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上である。その割合が5質量%以上であることは、高温での耐破膜性を向上させる観点から好ましい。一方、ポリプロピレンがポリオレフィン中に占める割合は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは18質量%以下である。その割合が20質量%以下であることは、微多孔膜が、ポリプロピレンによる効果だけでなく、他のポリオレフィンによる効果をもバランス良く併せ持つ微多孔膜を実現する観点から好ましい。
【0087】
(1)の混練工程において用いられる可塑剤としては、従来、ポリオレフィン製微多孔膜に用いられているものであってもよく、例えば、フタル酸ジオクチル(以下、「DOP」と略記することがある。)、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジブチルのようなフタル酸エステル;アジピン酸エステル及びグリセリン酸エステル等のフタル酸エステル以外の有機酸エステル;リン酸トリオクチル等のリン酸エステル;流動パラフィン;固形ワックス;ミネラルオイルが挙げられる。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ポリエチレンとの相溶性を考慮すると、フタル酸エステルが特に好ましい。
【0088】
また、(1)の混練工程では、ポリオレフィンと可塑剤とを混練して混練物を形成してもよく、ポリオレフィンと可塑剤とフィラーとを混練して混練物を形成してもよい。後者の場合に用いられるフィラーとしては、有機微粒子及び無機微粒子の少なくとも一方を用いることもできる。
有機微粒子としては、例えば、変性ポリスチレン微粒子及び変性アクリル酸樹脂粒子が挙げられる。
【0089】
無機微粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ(珪素酸化物)、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛及び酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン及び窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維が挙げられる。
【0090】
(1)の混練工程におけるポリオレフィンと可塑剤と必要に応じて用いられるフィラーとのブレンド比は特に限定されるものではない。ポリオレフィンの混練物中に占める割合は、得られる微多孔膜の強度と製膜性との面から、25〜50質量%が好ましい。また、可塑剤の混練物中に占める割合は、押し出しに適した粘度を得る観点から、30〜60質量%が好ましい。フィラーの混練物中に占める割合は、得られる微多孔膜の孔径の均一性を向上させる観点から10質量%以上が好ましく、製膜性の面から40質量%以下が好ましい。
【0091】
なお、混練物には、更に必要に応じて、ペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤;光安定剤;帯電防止剤;防曇剤;及び着色顔料等の各種添加剤を混合してもよい。
【0092】
(1)の混練工程における混練方法に特に制限はなく、従来用いられた方法であってもよい。例えば、混練する順番は、ポリオレフィン、可塑剤及び必要に応じて用いられるフィラーのうちの一部を予め混合したものを、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、プロシェアミキサー及びリボンブレンダー等の一般的な混合機を用いて予め混合してから、残りの原料と共に更に混練してもよいし、原料の全てを同時に混練してもよい。
また、混練に用いる装置も特に制限はなく、例えば、押出機、ニーダー等の溶融混練装置を用いて混練することができる。
【0093】
(2)のシート成形工程は、例えば、上記混練物を、Tダイ等を介してシート状に押し出し、その押出物を熱伝導体に接触させて冷却固化させる工程である。当該熱伝導体としては、金属、水、空気、及び可塑剤自体を使用できる。また、押出物を一対のロール間で挟み込むことにより冷却固化を行うことは、得られるシート状成形体の膜強度を増加させる観点、及びシート状成形体の表面平滑性を向上させる観点から好ましい。
【0094】
(3)の延伸工程は、シート成形工程を経て得られたシート(シート状成形体)を延伸して延伸シートを得る工程である。延伸工程におけるシートの延伸方法としては、ロール延伸機によるMD一軸延伸、テンターによるTD一軸延伸、ロール延伸機とテンターとの組合せ、又はテンターとテンターとの組合せによる逐次二軸延伸、同時二軸テンター又はインフレーション成形による同時二軸延伸が挙げられる。より均一な膜を得るという観点からは、シートの延伸方法は同時二軸延伸であることが好ましい。延伸の際のトータルの面倍率は、膜厚の均一性、並びに引張伸度、空孔率及び平均孔径のバランスの観点より、8倍以上が好ましく、15倍以上がより好ましく、30倍以上が更に好ましい。トータルの面倍率が30倍以上であると、高強度の微多孔膜が得られやすくなる。延伸温度は、高透過性と高温低収縮性とを付与する観点から、121℃以上が好ましく、膜強度の観点からは、135℃以下であることが好ましい。
【0095】
(3)の延伸工程における延伸又は(4)の後加工工程における熱処理に先立つ抽出は、抽出溶媒にシート又は延伸シートを浸漬したり、あるいは、抽出溶媒をシート又は延伸シートにシャワーしたりする方法により行なわれる。抽出溶媒は、ポリオレフィンに対して貧溶媒であり、且つ可塑剤及びフィラーに対して良溶媒であると好ましく、沸点がポリオレフィンの融点よりも低いと好ましい。このような抽出溶媒としては、例えば、n−ヘキサン及びシクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン及びフルオロカーボン等のハロゲン化炭化水素;エタノール及びイソプロパノール等のアルコール;アセトン及び2−ブタノン等のケトン類;並びにアルカリ水が挙げられる。抽出溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
なお、フィラーは、全工程内のいずれかの工程で全量又は一部を抽出されてもよく、最終的に得られる微多孔膜に残存させてもよい。また、抽出の順序、方法及び回数については特に制限はない。
【0096】
(4)の後加工工程における熱処理の方法としては、延伸工程を経て得られた延伸シートに対して、テンター及び/又はロール延伸機を用いて、所定の温度で延伸及び/又は緩和操作を行う熱固定方法が挙げられる。緩和操作とは、膜のMD及び/又はTDへ、所定の緩和率で行う縮小操作のことである。緩和率とは、緩和操作後の膜のMD寸法を操作前の膜のMD寸法で除した値、あるいは、緩和操作後のTD寸法を操作前の膜のTD寸法で除した値、あるいは、MD及びTDの双方で緩和した場合は、MDの緩和率とTDの緩和率とを乗じた値のことである。上記所定の温度は、熱収縮率の制御又は膜抵抗の制御の観点より130℃以下であると好ましく、123℃以下であるとより好ましい。一方、延伸性の観点から、上記所定の温度は115℃以上であると好ましい。また、熱収縮率及び透過性の観点より、後加工工程にて、延伸シートをTDへ1.5倍以上に延伸することが好ましく、TDへ1.8倍以上に延伸することがより好ましい。一方、安全性の観点から、延伸シートをTDへ6.0倍以下に延伸することが好ましく、膜強度と透過性のバランスを維持する観点から、4.0倍以下がより好ましい。所定の緩和率は、熱収縮の抑制の観点から、0.9倍以下であると好ましく、しわ発生防止と気孔率及び透過性との観点より、0.6倍以上であると好ましい。緩和操作は、MD及びTDの両方向に行ってもよいが、MD及びTDのいずれか片方だけの緩和操作であってもよい。MD及びTDのいずれか片方だけの緩和操作であっても、その操作方向だけでなく、他方の方向にも、熱収縮率を低減することが可能である。
【0097】
得られる微多孔膜の粘度平均分子量は、20万〜100万が好ましい。その粘度平均分子量が20万以上であれば、膜の強度が維持されやすく、100万以下であると成形性に優れる。
また、微多孔膜の膜厚は、安全性の観点から、5μm以上であると好ましく、高出力・高容量密度の観点から35μm以下であると好ましく、より好ましくは25μm以下である。この膜厚は、下記実施例に記載の方法に準じて測定される。
【0098】
また、微多孔膜の孔径は、0.01μm〜0.1μmであり、かつ孔数は、100〜250個/μm
2であることが好ましい。孔径については、0.01μm以上であると、イオンが十分に拡散できる大きさであり、また0.1μm以下であると、膜表面のラフネスを小さくすることができるため電極が食い込むことによる短絡を防止することができる。孔数については、100個/μm
2以上であると、イオンが拡散するのに十分な空隙を持つことができ、また250個/μm
2以下であると、膜の強度を保つことができる。この孔径及び孔数は、下記実施例に記載の方法に準じて測定される。
【0099】
また、微多孔膜のメチルエチルカーボネートをプローブ分子として測定し、算出したブルッグマン指数が、2.0〜3.0であることが好ましい。ブルッグマン指数とは、メチルエチルカーボネートをプローブ分子としてパルス磁場勾配核磁気共鳴法(PFG−NMR法)より得られる拡散係数(D)を用いて、ε×D=ε
α×D
0(ここで、εは膜の空孔率、D
0は自由空間中での拡散係数、αはブルッグマン指数を示す)より算出される、空孔率に依存しない膜の孔構造の質を表現する値のことである。したがって、ブルッグマン指数は小さいものほど孔構造がイオン拡散に優れていることになる。本指数が2.0以上であれば膜の強度を保つことができ、また3.0以下であればイオンが拡散するのに十分に適した孔構造を持つことができる。この指数は、下記実施例に記載の方法に準じて測定される。
【0100】
なお、微多孔膜の製造方法は、上記(1)〜(4)の各工程に加え、積層体を得るための工程として、単層体を複数枚重ね合わせる工程を有することができる。また、その製造方法は、微多孔膜に、電子線照射、プラズマ照射、界面活性剤塗布及び化学的改質などの表面処理を施す工程を有してもよい。
【0101】
<キャパシタ>
本発明のキャパシタは、正極電極体と負極電極体とをセパレータを介して積層した電極積層体を作製し、該電極積層体にラミネートフィルム等の外装体を装着して、セパレータの耐熱温度以下の温度に設定された乾燥機によって加熱乾燥し、電解液を注入する方法で作製することができる。あるいは、上記電極積層体を事前に加熱乾燥させた後に外装体を装着して電解液を注入する方法や、積層する前に、各電極体及びセパレータを個別に加熱乾燥させた後に、電極積層体を作製し、外装体を装着し電解液を注入する方法でも構わない。加熱乾燥をさせる時には、減圧条件下で加熱乾燥することが、乾燥時間を短くすることができるのでより好ましい。
【0102】
例えば、上記で説明したポリオレフィン樹脂からなるセパレータを本発明のキャパシタに使用する場合は80℃で加熱乾燥すればよい。このような温度条件に設定することで、電解液を注入する前の電極積層体の加熱によって、セパレータに開いている細孔を閉塞させることなく乾燥することができ、キャパシタの出力特性を維持したまま信頼性を向上させることができる。注液前の電極積層体の加熱乾燥によってキャパシタの信頼性が向上する理由の詳細は、明らかではないが、正極や負極に含有される水分量を低減させることができるためと考えられる。
本発明のリチウムイオンキャパシタは、該リチウムイオンキャパシタを30℃以下の温度から5℃/分で昇温する環境下において加熱したときに、120℃以上150℃以下の範囲に短絡開始温度及び完全短絡温度を有し、該短絡開始温度と該完全短絡温度の差が20℃以下である。そのため、このような異常高温状態が継続したとしても、キャパシタ内の電解液が気化してその圧力により外装体を開封させる前にキャパシタを短絡させることができるので、キャパシタを破裂及び発火から防ぎ、安全性を向上させる観点から好ましい。ここで「破裂」とは、外装体の開封時に電極積層体が破壊されて電解液とともに飛散する状態をいう。該短絡開始温度と該完全短絡温度の差は、15℃以下がより好ましく、10℃以下が更に好ましい。
【0103】
ここで、短絡開始温度と完全短絡温度とは、キャパシタの表面温度であり、例えば、該キャパシタの主面の中央部に耐熱性テープで貼り付けられた熱電対によって測定することができる。短絡開始温度とは、上記加熱条件下において電圧曲線が急に減少する開始点の温度を意味し、
図2の実施例1−2では点Aが該当する。また、完全短絡温度とは、上記加熱条件下において電圧曲線が始めて0になった点の温度を意味し、
図2の実施例1−2では点Bが該当する。
尚、本発明のキャパシタは、正極電極体と負極電極体とをセパレータを介して捲回した電極体を用いて作製することも可能である。その際、捲回される正極及び負極電極体、セパレータは帯状となっており、この帯状の短手方向にあたるX
1又はX
2のいずれか1つのみを規定することができ、このいずれか1つが、0.5以上8.0以下であればよい。
【0104】
また、本発明のキャパシタは、静電容量が1000F以上5000F以下であることが好ましい。静電容量が1000F以上であると、キャパシタが蓄える電気量が大きいため、本発明のキャパシタが持つ安全に瞬時に短絡できうる効果がより有効である。また、静電容量が5000F以下であると、セルを効率的に作製することができる。
【0105】
本発明のキャパシタに用いられる非水系電解液は、リチウムイオン含有電解質を含む非水系液体であればよい。そのような非水系液体は、溶媒を含んでよく、そのような溶媒としては、例えば、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)に代表される環状炭酸エステル、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(MEC)に代表される鎖状炭酸エステル、γ−ブチロラクトン(γBL)などのラクトン類、ならびにこれらの混合溶媒を用いることができる。
これら溶媒に溶解する塩としては、LiBF
4、LiPF
6などのリチウム塩を用いることができる。電解液の塩濃度は、0.5〜2.0mol/Lの範囲が好ましい。0.5mol/L以上ではアニオンが十分に存在し、キャパシタの容量が維持される。一方で、2.0mol/L以下では、塩が電解液中で十分に溶解し、電解液の適切な粘度及び伝導度が保たれる。
【0106】
電極積層体において、正極電極体に正極端子の一端を電気的に接続し、負極電極体に負極端子の一端を電気的に接続する。具体的には、正極集電体の正極活物質層未塗布領域に正極端子、負極集電体の負極活物質層未塗布領域に負極端子を電気的に接続する。正極端子の材質はアルミニウムであり、負極端子の材質がニッケルメッキされた銅であることが好ましい。
【0107】
電極端子は、一般的には略矩形をしており、その一端は電極積層体の集電体と電気的に接続され、他端は使用時に外部の負荷(放電の場合)または電源(充電の場合)と電気的に接続される。ラミネートフィルム外装体の封止部となる、電極端子の中央部には、電極端子とラミネートフィルムを構成する金属箔との短絡を防ぎ、かつ封止密閉性を向上させるためにポリプロピレン等の樹脂製のフィルムが貼りつけられていることが好ましい態様である。
前述した電極積層体と電極端子との電気的な接続方法は、例えば、超音波溶接法が一般的であるが、抵抗溶接、レーザー溶接等でもよく、限定するものではない。
【0108】
また、外装体に使用されるラミネートフィルムは、金属箔と樹脂フィルムを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内層樹脂フィルムから成る3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分又はガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内層樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、ヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、例えば、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどが好適に使用できる。
【実施例】
【0109】
以下に、本発明の実施形態を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、セパレータ用微多孔膜の各種物性は下記方法により測定した:
(1)粘度平均分子量(Mv)
試料の劣化防止のため、デカヒドロナフタリンに、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.1質量%の濃度となるように溶解させ、これ(以下、「DHN」と略記する。)を試料用の溶媒として用いた。試料をDHNへ0.1質量%の濃度となるように150℃で溶解させて試料溶液を得た。試料溶液を10mL採取し、キャノンフェンスケ粘度計(SO100)により135℃での標線間を通過するのに要する秒数(t)を計測した。また、DHNを150℃に加熱した後、10mL採取し、同様の方法により粘度計の標線間を通過するのに要する秒数(t
B)を計測した。得られた通過秒数t、t
Bを用いて、下記の換算式により極限粘度[η]を算出した。
[η]=((1.651t/t
B−0.651)
0.5−1)/0.0834
【0110】
求められた[η]より粘度平均分子量(Mv)を算出した。原料のポリエチレン、原料のポリオレフィン組成物及び微多孔膜のMvは下記式により算出した。
[η]=6.77×10
-4Mv
0.67
また、原料のポリプロピレンについては、下記式によりMvを算出した。
[η]=1.10×10
-4Mv
0.80【0111】
(2)膜厚(μm)
東洋精機製の微小測厚器であるKBM(商標)を用いて、23±2℃の雰囲気温度にて膜厚を測定した。
【0112】
(3)空孔率(%)
10cm×10cm角の試料を微多孔膜から切り取り、その体積(cm
3)と質量(g)とを求め、それらと膜密度(g/cm
3)とから、下記式を用いて、空孔率を計算した。
空孔率=(体積−質量/膜密度)/体積×100
なお、膜密度はポリエチレンを0.95、ポリプロピレンを0.91として、組成の分率から計算した。なお、種々の膜密度として、JIS K−7112の密度勾配管法によって求めた密度を用いることもできる。
【0113】
(4)熱収縮率(%)
キャパシタに組み込む前のセパレータの場合、MD及びTDのそれぞれ測定する方向に合わせて、100×50mmに切り取った。その試料片を100℃のオーブン中に非拘束で1時間保持した後、室温にて、MD及びTDのそれぞれの長さを測定した。
((加熱前の長さ)−(加熱後の長さ))×100/加熱前の長さ
を熱収縮率とした。
キャパシタに組み込まれたセパレータの場合、キャパシタを解体しセパレータを取り出した後、電解液溶媒(例えば、メチルエチルカーボネート(MEC)等)で浸漬洗浄をして自然乾燥させた。以降、上記記載と同様にて試験をし、熱収縮率を求めた。
ここで、仮にセパレータのTD、MD方向が特定できない場合には、上記自然乾燥によって、最も熱収縮した方向をMD方向と決定し、それと垂直な方向をTD方向と決定して本発明における熱収縮率とした。
尚、取り出したセパレータが帯状(この場合は、電極も帯状となり、電極体は捲回された状態となっている)又は九十九折り状(この場合は、電極は枚葉となり、電極体は積層された状態となっている)で1枚である場合も同様の手法で方向を特定して熱収縮率を特定する。具体的には、マージンとの位置関係を把握した上で、セパレータの一部を切り出し、自然乾燥によって、最も熱収縮した方向をMD方向と決定し、それと垂直な方向をTD方向と決定し、帯状又は九十九折り状のセパレータのMD方向及びTD方向の熱収縮率を決定した。但し、帯状でMD方向の長さがTD方向の長さの4倍より大きい場合に限り、MD方向の規定はせず、TD方向のみの規定とする(X
2のみの規定とする)。
また、取り出したセパレータが枚葉で多数の電極の積層体である場合には、枚葉をそのまま、或いは、マージンとの位置関係を把握した上で一部を切り出し、上記のようにして各セパレータについてMD方向及びTD方向を特定して熱収縮率を決定した。
【0114】
(5)微多孔膜の孔径(μm)、孔数(個/μm
2)
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さい時はポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、微多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、また多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定する。
この場合、多孔膜の孔径d(μm)と曲路率τ
a(無次元)は、空気の透過速度定数R
gas(m
3/(m
2・sec・Pa))、水の透過速度定数R
liq(m
3/(m
2・sec・Pa))、空気の分子速度ν(m/sec)、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力P
s(=101325Pa)、気孔率ε(%)、膜厚L(μm)から、次式を用いて求めることができる。
d=2ν×(R
liq/R
gas)×(16η/3P
s)×10
6
τ
a=(d×(ε/100)×ν/(3L×P
s×R
gas))
1/2
ここで、R
gasは透気度(sec)から次式を用いて求められる。
R
gas=0.0001/(透気度×(6.424×10
−4)×(0.01276×101325))
また、R
liqは透水度(cm
3/(cm
2・sec・Pa))から次式を用いて求められる。
R
liq=透水度/100
【0115】
なお、透水度は次のように求められる。直径41mmのステンレス製の透液セルに、あらかじめアルコールに浸しておいた多孔膜をセットし、該膜のアルコールを水で洗浄した後、約50000Paの差圧で水を透過させ、120sec間経過した際の透水量(cm
3)より、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度とした。
また、νは気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、空気の平均分子量M(=2.896×10
−2kg/mol)から次式を用いて求められる。
ν=((8R×T)/(π×M))
1/2
さらに、孔数B(個/μm
2)は、次式より求められる。
B=4×(ε/100)/(π×d
2×τ
a)
【0116】
(6)微多孔膜のブルッグマン指数
日本電子社製ECA400を用いて、メチルエチルカーボネートをプローブ分子としてパルス磁場勾配核磁気共鳴法(PFG−NMR法)より得られる拡散係数(D)を算出した。ln(E/E
0) = -D×(γ
2δ
2g
2(Δ-δ/3))(ここで、E:各測定点でのピーク強度、E
0:PFGを与えない場合のピーク強度、γ:核スピンの磁気回転比、δ:PFG照射時間、g:PFG強度、Δ:拡散時間を示す)より得られる直線関係より、ln(E/E
0)が−2以上の領域で計算した。次いで、
ε×D=ε
α×D
0
(ここで、εは膜の空孔率、D
0は自由空間中での拡散係数、αはブルッグマン指数を示す)よりブルッグマン指数を算出した。
【0117】
<実施例1−1>
[正極電極体の作製]
破砕されたヤシ殻炭化物を、小型炭化炉において窒素中、500℃で3時間炭化処理した。処理後の該炭化物を賦活炉内へ入れ、1kg/hの水蒸気を予熱炉で加温した状態で該賦活炉内へ投入し、900℃まで8時間かけて昇温した後に取り出し、窒素雰囲気下で冷却して活性炭を得た。得られた活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りした。その後、115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行い、活性炭1を得た。島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて平均粒径を測定した結果、4.2μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)で、細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積は2360m
2/g、メソ孔量(V1)は0.52cc/g、マイクロ孔量(V2)は0.88cc/gであった。
活性炭1を80.8質量部、ケッチェンブラック6.2質量部及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を10質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を3.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、乾燥し、プレスして、活物質層の厚さが55μmの片面正極電極体を得た。同様に、アルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥し、プレスして、両面正極電極体を得た。
【0118】
[負極電極体の作製]
市販のヤシ殻活性炭について、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)で、窒素を吸着質として細孔分布を測定した。比表面積はBET1点法により求めた。また、上述したように、脱着側の等温線を用いて、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法によりそれぞれ求めた。その結果、BET比表面積が1,780m
2/g、メソ孔量が0.198cc/g、マイクロ孔量が0.695cc/g、V1/V2=0.29、平均細孔径が21.2Åであった。
【0119】
このヤシ殻活性炭150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)270gを入れたステンレス製バットの上に置き、電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行った。熱処理は窒素雰囲気下で、600℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持することによって行い、続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、炉から取り出し、負極材料となる複合多孔性材料1を得た。得られた複合多孔性材料1を上記活性炭1と同様に測定したところ、BET比表面積が262m
2/g、メソ孔量(Vm1)が0.1798cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.0843cc/g、Vm1/Vm2=2.13であった。
【0120】
上記複合多孔性材料1を83.4質量部、アセチレンブラックを8.3質量部及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.3質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーをエキスパンド銅箔の両面に塗布し、乾燥し、プレスして、負極活物質層の厚さが60μmの負極電極体を得た。この両面負極電極体の片面に、複合多孔性材料1の単位重量あたり760mAh/gに相当するリチウム金属箔を貼り付けた。
【0121】
[セパレータの作製]
セパレータ1
純ポリマーとしてMvが25万および70万のポリエチレンのホモポリマーをそれぞれ重量比で50:50の割合で準備した。上記純ポリマー99質量%に酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1.0質量%添加し、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物を、系内を窒素置換した二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また、可塑剤として流動パラフィンを押出機のシリンダーにプランジャーポンプにより注入した。二軸押出機により溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの量比が68質量%(すなわち、ポリマー等混合物(PC)の量比が32質量%)となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量12kg/時とした。
【0122】
続いて、得られた溶融混練物を、T−ダイを経て、表面温度40℃に制御された冷却ロール上に押し出してキャストすることにより、厚さ1600μmのゲルシートを得た。
次に、得られたゲルシートを同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸を行い、延伸シートを得た。設定延伸条件は、MDの延伸倍率7.0倍、TDの延伸倍率6.1倍、設定温度121℃であった。
次いで、延伸シートをメチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に充分に浸漬して、延伸シートから流動パラフィンを抽出除去し、その後、メチルエチルケトンを乾燥除去した。
【0123】
次に、メチルエチルケトンを乾燥除去した延伸シートをTDテンターに導き、熱固定を行った。熱固定温度を121℃、TD最大倍率を2.0倍、緩和率を0.90倍とした。こうして得られた微多孔膜セパレータ1の各種特性の評価結果を、組成と共に以下の表1に示す。
【0124】
[電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とを1:4質量比で混合した溶媒に1mol/lの濃度でLiPF
6を溶解して得た溶液を電解液として使用した。
【0125】
[キャパシタの組立]
得られた片面正極電極体、両面正極電極体、及び両面負極電極体を、100mm×100mmにカットした。次に、最上面と最下面は片面正極電極体を用い、中間部は、両面負極電極体20枚と両面正極電極体19枚とを、微多孔膜セパレータ1を介して交互に積層した後、負極電極体と正極電極体に電極端子を接続して電極積層体とした。この電極積層体をラミネートフィルムからなる外装体内に挿入し、電極端子の端部を引き出した状態で上記電解液を注入して該外装体を密閉し、リチウムイオンキャパシタを組立てた。この時、X
1及びX
2はともに1.0であった。
【0126】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を行った。2Cの電流値で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。次に、キャパシタの一面の中央部に熱電対をポリイミドテープで貼り付け、金属板で挟みリボンヒーターを巻いて加熱媒体に用い、大気雰囲気下の恒温槽内にセッティングした。該リボンヒーターの設定昇温速度は5℃/分とし、キャパシタの電圧と温度とを測定した。短絡開始温度は128℃、完全短絡温度は138℃であり、200℃を超えた時点で、キャパシタは破裂及び発火することなく開封し、ガス噴射はほとんど見られなかった。
作製したキャパシタを、1.5Cの電流値において定電圧充電時間が1時間確保できる定電流定電圧充電によって3.8Vまで充電し、2.2Vまで同じく1.5Cの電流値において定電流放電を施した。その際の容量と電圧変化より本キャパシタの静電容量は1200Fであることが分かった。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は82%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、55%であった。
【0127】
<実施例1−2>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
X
1及びX
2はともに4.0とすること以外は、実施例1−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0128】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は133℃、完全短絡温度は143℃であり、200℃を超えた時点で、キャパシタは破裂及び発火することなく開封し、ガス噴射はほとんど見られなかった。作製したキャパシタの電圧と温度とを測定した。試験結果を
図2に示す。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は82%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、55%であった。
【0129】
<実施例1−3>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
X
1及びX
2はともに7.5とすること以外は、実施例1−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0130】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は133℃、完全短絡温度は149℃であり、200℃を超えた時点で、キャパシタは破裂及び発火することなく開封し、ガス噴射はほとんど見られなかった。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は82%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、55%であった。
【0131】
<実施例2−1>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
セパレータ2
純ポリマーとしてMvが25万のポリエチレンのホモポリマーを準備した。以降、実施例1と同様な手法により、セパレータ2を作製した。ただし、設定延伸条件は、MDの延伸倍率5.0倍、TDの延伸倍率5.0倍、設定温度121℃であった。また、熱固定温度を120℃、TD最大倍率を2.4倍、緩和率を0.85倍とした。こうして得られた微多孔膜セパレータ2の各種特性の評価結果を、組成等と共に表1に示す。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
得られた微多孔膜セパレータ2を用いて、実施例1−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0132】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は131℃、完全短絡温度は143℃であり、200℃を超えた時点で、キャパシタは破裂及び発火することなく開封し、ガス噴射はほとんど見られなかった。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は81%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、53%であった。
【0133】
<実施例2−2>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
実施例2−1と同様に作製した。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
X
1及びX
2はともに4.0とすること以外は、実施例2−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0134】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は132℃、完全短絡温度は145℃であり、200℃を超えた時点で、キャパシタは破裂及び発火することなく開封し、ガス噴射はほとんど見られなかった。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は81%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、53%であった。
【0135】
<実施例2−3>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
実施例2−1と同様に作製した。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
X
1及びX
2はともに7.5とすること以外は、実施例2−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0136】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は130℃、完全短絡温度は150℃であり、200℃を超えた時点で、キャパシタは破裂及び発火することなく開封し、ガス噴射はほとんど見られなかった。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は81%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、53%であった。
【0137】
<実施例3−1>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
セパレータ3
実施例1と同様な手法により、セパレータ3を作製した。ただし、熱固定の緩和率を1.0倍とした(緩和しない)。こうして得られた微多孔膜セパレータ3の各種特性の評価結果を、組成等と共に表1に示す。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
得られた微多孔膜セパレータ3を用いて、実施例1−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0138】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は123℃、完全短絡温度は131℃であり、200℃を超えた時点で、キャパシタは破裂及び発火することなく開封し、ガス噴射はほとんど見られなかった。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は84%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、56%であった。
【0139】
<実施例3−2>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
実施例3−1と同様に作製した。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
X
1及びX
2はともに4.0とすること以外は、実施例3−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0140】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は129℃、完全短絡温度は139℃であり、200℃を超えた時点で、キャパシタは破裂及び発火することなく開封し、ガス噴射はほとんど見られなかった。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は84%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、56%であった。
【0141】
<実施例3−3>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
実施例3−1と同様に作製した。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
X
1及びX
2はともに7.5とすること以外は、実施例3−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0142】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は130℃、完全短絡温度は144℃であり、200℃を超えた時点で、キャパシタは破裂及び発火することなく開封し、ガス噴射はほとんど見られなかった。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は84%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、56%であった。
【0143】
<比較例1>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
セルロース紙セパレータ4(各種特性の評価結果を表1に示す。)を用いて、実施例1−2と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0144】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、200℃に到達しても短絡開始せず電力を保持したままであり、210℃を超えた時点でキャパシタは破裂及び発火することなく開封したが、弱いガス噴射が認められた。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は78%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、49%であった。
【0145】
<比較例2−1>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
セパレータ5
純ポリマーとしてMvが20万のポリプロピレンのホモポリマーを準備した。以降、実施例1と同様な手法により、セパレータ5を作製した。ただし、設定延伸条件は、MDの延伸倍率5.0倍、TDの延伸倍率5.0倍、設定温度130℃であった。また、熱固定温度を140℃、TD最大倍率を1.8倍、緩和率を0.85倍とした。こうして得られた微多孔膜セパレータ5の各種特性の評価結果を、組成等と共に以下の表1に示す。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
得られた微多孔膜セパレータ5を用い、更にX
1及びX
2はともに0.3とすること以外は、実施例1−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0146】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は175℃、以降徐々に電圧降下が確認されたが完全短絡までには至らず、200℃を越えた時点でキャパシタは破裂及び発火することなく外装体が開封したが、強いガス噴射が認められた。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は67%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、28%であった。
【0147】
<比較例2−2>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
比較例2−1と同様に作製した。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
X
1及びX
2はともに4.0とすること以外は、比較例2−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0148】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は175℃、以降徐々に電圧降下が確認されたが完全短絡までには至らず、200℃を越えた時点でキャパシタは破裂及び発火することなく外装体が開封したが、強いガス噴射が認められた。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は67%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、28%であった。
【0149】
<比較例2−3>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
比較例2−1と同様に作製した。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
X
1及びX
2はともに11とすること以外は、比較例2−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0150】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は175℃、以降徐々に電圧降下が確認されたが完全短絡までには至らず、200℃を越えた時点でキャパシタは破裂及び発火することなく外装体が開封したが、強いガス噴射が認められた。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は67%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、28%であった。
【0151】
<比較例3>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
X
1及びX
2はともに11とすること以外は、実施例1−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0152】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は140℃、完全短絡温度は175℃であり、200℃を越えた時点でキャパシタは破裂及び発火することなく外装体が開封したが、強いガス噴射が認められた。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は82%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、55%であった。
【0153】
<比較例4>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
X
1及びX
2はともに0.3とすること以外は、実施例1−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0154】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は95℃、完全短絡温度は109℃であり、200℃を越えた時点でキャパシタは破裂及び発火することなく外装体が開封したが、ガス噴射が認められた。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は82%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、55%であった。
【0155】
<比較例5−1>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
セパレータ6
実施例1と同様な手法により、セパレータ6を作製した。但し、二軸延伸、抽出、乾燥工程までで終了し、熱固定を行わなかった。こうして得られた微多孔膜セパレータ6の各種特性の評価結果を、組成等と共に表1に示す。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
得られた微多孔膜セパレータ6を用い、更にX
1及びX
2はともに0.3とすること以外は、実施例1−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0156】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は91℃、完全短絡温度は105℃であり、200℃を越えた時点でキャパシタは破裂及び発火することなく外装体が開封したが、ガス噴射が認められた。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は80%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、50%であった。
【0157】
<比較例5−2>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
比較例5−1と同様に作製した。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
X
1及びX
2はともに4.0とすること以外は、比較例5−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0158】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は93℃、完全短絡温度は107℃であり、200℃を越えた時点でキャパシタは破裂及び発火することなく外装体が開封したが、強いガス噴射が認められた。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は80%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、50%であった。
【0159】
<比較例5−3>
[正極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1−1と同様に作製した。
[セパレータの作製]
比較例5−1と同様に作製した。
[電解液の調製]
実施例1−1と同様に作製した。
[キャパシタの組立]
X
1及びX
2はともに11とすること以外は、比較例5−1と同様な条件にて、リチウムイオンキャパシタを組立てた。
【0160】
[加熱試験と特性評価]
作製したキャパシタの加熱試験を実施したところ、短絡開始温度は135℃、完全短絡温度は165℃であり、200℃を越えた時点でキャパシタは破裂及び発火することなく外装体が開封したが、強いガス噴射が認められた。
作製したキャパシタを25℃の環境下で特性評価を行った。1Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、同上の充電を2時間行った後、300Cの電流値で2.0Vまで放電した。1Cでの放電容量に対する300Cでの放電容量の比率は80%であった。次に、−20℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、200Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1Cでの放電容量に対する、−20℃の200Cでの放電容量の比率は、50%であった。
上記実施例及び比較例から分かるように、本発明のリチウムイオンキャパシタでは、高温時に、熱収縮率が高いセパレータを用いることで、そのメルトダウンにより、安全かつ瞬時に短絡することができ、比較的低温において電力を消費することで熱暴走時の破裂や発火の恐れがない安全なキャパシタの提供が可能である。
【0161】
【表1】