(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外管の内面のうち前記伝熱面積拡大管の外面に密着される部分と、前記伝熱面積拡大管の外面のうち前記外管の内面に密着される部分と、前記内管の外面のうち前記伝熱面積拡大管の内面に密着される部分と、前記伝熱面積拡大管の内面のうち前記内管の外面に密着される部分とはそれぞれ、溝無し面である、
請求項1または2の二重管式熱交換器。
前記伝熱面積拡大管に前記溝を形成した後、該伝熱面積拡大管を前記外管と前記内管との間の前記環状領域に挿入し、前記外管を縮管するか又は前記内管を拡管することによって、該伝熱面積拡大管は、該外管及び該内管に支持される、
請求項1〜3の何れか一項の二重管式熱交換器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る二重管式熱交換器の内部構造を管軸と直交する向きで示す図であり、
図2は、
図1のII-II線による二重管式熱交換器の断面図である。なお、図の明瞭性を優先し、
図1には、後述する伝熱面積拡大管の図示を省略している。二重管式熱交換器1は、相対的に直径の大きな円管である外管3の内側に、相対的に直径の小さな円管である内管5を同心的に挿入した二重管構造を有している。内管5の内側空間は、第一流路7として機能する。一方、内管5の外側であって外管3の内側である環状領域9には、伝熱面積拡大管11が収容されている。
【0012】
伝熱面積拡大管11は、径方向に関する相対的な凹凸としての複数の凸部13及び複数の凹部15を有している。複数の凸部13は、
図2の横断面に示されるように、伝熱面積拡大管11における径方向外側に向け突出するように放射状に設けられている。また、複数の凸部13は、周方向にほぼ等間隔で配置されている。一方、複数の凹部15は、それぞれが、対応する一対の凸部13における周方向の間に位置している。これら凹部15もまた、周方向にほぼ等間隔で位置している。よって、伝熱面積拡大管11全体でみると、複数の凸部13と複数の凹部15とが周方向に交互に位置している。
【0013】
本発明では、伝熱面積拡大管に関する
図2の横断面においてみた凸部の凸形状及び凹部の凹形状は、様々な態様が考えられるが、一例として、本実施の形態1では次のとおりである。伝熱面積拡大管11は、複数の外側密着部17と、複数の内側密着部19と、複数の連続部21とを含んでいる。
図2に示されるように、伝熱面積拡大管11の外側密着部17の外面17aと外管3の内面3bとは密着しており、特に本例では、外面17aと内面3bとが面接触している。すなわち、伝熱面積拡大管11の外側密着部17の外面17aは、外管3の内面3bとほぼ同一の湾曲を有している。同様に、伝熱面積拡大管11の内側密着部19の内面19bと内管5の外面5aとは密着しており、特に本例では、内面19bと外面5aとが面接触している。すなわち、伝熱面積拡大管11の内側密着部19の内面19bは、内管5の外面5aとほぼ同一の湾曲を有している。なお、この同一の湾曲状態は、外管3、内管5、伝熱面積拡大管11それぞれの単体状態で得られていてもよいし、二重管式熱交換器1の中心側あるいは半径方向外側から何らかの力の付与を伴う組み立てプロセスの終了した状態で得られていてもよい。
【0014】
連続部21はそれぞれ、隣り合う外側密着部17と内側密着部19との間に位置している。本実施の形態では、複数の外側密着部17は周方向に等間隔で位置しており、複数の内側密着部19もまた周方向に等間隔で位置している。伝熱面積拡大管11全体を通してみると、周方向に、外側密着部17、連続部21、内側密着部19、連続部21の順の配置態様が繰り返されている。なお、凸部13及び凹部15は明確な境界を有するものではなく、凸部13は、外側密着部17と連続部21の半径方向外側寄りの部分とで構成され、凹部15は、内側密着部19と連続部21の半径方向内側寄りの部分とで構成されている。
【0015】
前述した環状領域9のうち、凸部13の内側及び凹部15の外側は、第二流路23として機能する。すなわち、伝熱面積拡大管11により環状領域9内に第二流路23が画定される。
【0016】
より詳細には、第二流路23は、二つの態様の部分を含んでおり、第一の態様の部分は、外側密着部17の内面17bと、対応する一対の連続部21の内面21bと、内管5の外面5aとで画定されている。また、第二の態様の部分は、内側密着部19の外面19aと、対応する一対の連続部21の外面21aと、外管3の内面3bとで画定されている。第一の態様の部分と、第二の態様の部分とは、周方向に交互に並んでいる。
【0017】
このような構成において、第一流路7内には第一流体が流通され、第二流路23には第二流体が流通される。第一流体と第二流体とは温度が異なり、内管5及び伝熱面積拡大管11の熱伝導を介して、第一流体と第二流体との間で熱交換が行われる。
【0018】
一般に、交換熱量Q、伝熱面積A、熱伝達率K、第一流体及び第二流体の温度差dT、の間には、式(1)に示す関係がある。
【0020】
また、熱伝達率Kは、式(2)で表すことができる。
【0022】
なお、各表記の意味は次のとおりである。α1:流体1の熱伝達率、d1:流路1の水力直径、α2:流体2の熱伝達率、d2:流路2の水力直径、λ:内管の熱伝導率、dio:内管の外径、doi:内管の内径、R:熱抵抗
【0023】
上述した伝熱面積拡大管11は、内管5と接触することでフィンとして作用するため、伝熱面積を拡大することができ、第一流体及び第二流体の交換熱量を大きくすることができる。
【0024】
ここで、第二流路23に気液二相流が流れる場合の冷媒の流動状態について、
図3及び
図4も参照しながら説明する。
図3は、
図2と同態様の図であり第二流路を拡大して示す図であり、
図4は、
図3の部分に関し、説明のため外管、伝熱面積拡大管及び内管を相互に分離して示す図である。ここで、一般に、二相流のうち、熱伝達率の高い液冷媒は管壁に密着し、熱伝達率の低いガス冷媒は管壁から離れた部位を流れる。つまり、
図3に示す符号3b,5a,17b,19a,21a,21bで示す壁面に液冷媒が集中する。
【0025】
そこで、本発明では、次のような溝非形成範囲と溝形成候補範囲とを設定し、溝非形成範囲は溝なし面とし、溝形成候補範囲の少なくとも一部又は全部に、流れ方向に沿って延びる溝を形成している。本実施の形態1は、そのうちの、溝形成候補範囲の全部に溝を形成した場合の例である。
【0026】
溝非形成範囲と溝形成候補範囲との詳細について説明する。具体的には、伝熱面積拡大管11の内面のうちでも外管3の内面3bに密着した伝熱面積拡大管11の部分の内面(外側密着部17の内面17b)が溝非形成範囲である。さらに、外管3の内面3bのうち伝熱面積拡大管11の外面と協働して第二流路23を画定する部分も溝非形成範囲である。これら溝非形成範囲それぞれには、後述する溝25を形成しない。
【0027】
また、溝形成候補範囲は、伝熱面積拡大管11の内面のうち内管5の外面5aと協働して第二流路23を画定する部分から前述の溝非形成範囲(外側密着部17の内面17b)を除いた部分(連続部21の内面21b)と、伝熱面積拡大管11の外面のうち外管3の内面3bと協働して第二流路23を画定する部分(連続部21の外面21a及び内側密着部19の外面19a)と、内管5の外面5aのうち伝熱面積拡大管11の内面と協働して第二流路23を画定する部分とから成る。
【0028】
本実施の形態1では、上記のように溝非形成範囲には溝を形成せず、且つ、溝形成候補範囲の全部に溝を形成しており、さらに具体的には次のとおりである。外側密着部17及び一対の連続部21と協働して第二流路23を画定する内管5の外面5aの部分と、伝熱面積拡大管11の内側密着部19の外面19aと、連続部21の外面21a及び内面21bとに溝25を形成する。また、外側密着部17の内面17bと、内側密着部19及び一対の連続部21と協働して第二流路23を画定する外管3の内面3bの部分とは、溝無し面としておく。なお、本発明として特に限定されるものではないが、本実施の形態1では、伝熱面積拡大管11の外側密着部17の外面17aと、その外面17aに密着する外管3の内面3bの部分とを、溝無し面とし、さらに、内側密着部19の内面19bと、その内面19bに密着する内管5の外面5aの部分とを、溝無し面としている。
【0029】
溝25は、冷媒を流れ方向へ円滑に流すために、流れ方向に沿って延びる態様で形成する。なお、
図3及び
図4における溝は模式的に描いたものであり、また、
図2では、図の明瞭性を優先し溝の図示を省略している。
【0030】
なお、伝熱面積拡大管11は、プレス成形や引き抜き加工で成形することが考えられるため、加工を簡便にするには、プレス成形時や引き抜き加工時に同時に溝25を成形する。また、伝熱面積拡大管11は、溝25が形成された伝熱面積拡大管11を、外管3と内管5との間の環状領域9に挿入し、外管3を縮管するか又は内管5を拡管するかによって、外管3及び内管5に支持される。
【0031】
あるいは、さらに確実に内管5及び外管3と伝熱面積拡大管11とを密着させる仕方として、それぞれの接触面をロウ付けして接合する態様も好適である。具体的には、伝熱面積拡大管11を外管3及び内管5に組み付けた後、接触面にロウ材を塗布し、炉中ロウ付けなどにより、ロウ材を溶融させて、接触面をロウ付けしてもよい。また、伝熱面積拡大管11を内管5及び外管3に組み付けた後にロウ材を塗布することが困難な場合は、伝熱面積拡大管11に予めロウ材を塗布したクラッド材を使用することでロウ付けしてもよいだろう。
【0032】
以上のように構成された二重管式熱交換器1によれば次のような優れた利点が得られる。内管5の外面5aの所定部及び内側密着部19の外面19aは、第二流路23を画定する部分のうちでも第一流路7に極めて近い部分であり、伝熱面としての有効度が最も高い部分である。また、連続部21は、第二流路23の上述した第一の態様の部分と第二の態様の部分との間にあり、連続部21の内外面は、連続部21にフィンの効果を発揮させ第一の態様の部分と第二の態様の部分との間(第二流路23の内部関係)で、第二流体間での熱交換を行わせる際に有効な伝熱面である。よって、上記のように溝25が形成されていることで、第一流路7に近い内管5の外面5aの所定部及び内管5に密着した内側密着部19の外面19a、並びに、連続部21の内外面に、液冷媒を積極的に集めることができる。また、それと共に、第一流路7から遠く伝熱面として有効度の低い外管3の内面3bの所定部及び外側密着部17の内面17bは、溝無し面としておくことで、相対的に、外面5aの所定部や外面19aよりも液冷媒が集まりにくくし、その反作用的な効果として、外面5aの所定部、外面19a及び連続部21の内外面に液冷媒が集まることを補助している。すなわち、伝熱面として有効度の低い外管3の内面3bの所定部及び外側密着部17の内面17bにも熱伝達率の高い液冷媒が多く供給されてしまうことでその分、伝熱面として有効度の高い外面5aの所定部、外面19a及び連続部21の内外面への液冷媒の供給量が減少してしまうことを抑制している。このように本実施の形態によれば、第二流路に気液二相流が流れる場合にも、伝熱面を有効に活用することで、熱交換性能を高めることができる。
【0033】
さらに加えて、本実施の形態1では、伝熱面積拡大管11の外側密着部17の外面17aと、その外面17aに密着する外管3の内面3bの部分とが、溝無し面とされ、同様に、内側密着部19の内面19bと、その内面19bに密着する内管5の外面5aの部分とが、溝無し面とされていることで、内管5及び外管3と伝熱面積拡大管11との密着性を高く維持することができ、そればかりではなく、特に内管5と伝熱面積拡大管11との密着性が高いことにより伝熱面積拡大管11による熱伝導の効率を高くでき、伝熱面積拡大管11の存在を効率よく活用することができる。
【0034】
次に、上述した二重管式熱交換器1を適用した冷凍サイクル装置の実施例について、
図5〜
図8を参照しながら説明する。
【0035】
冷凍サイクル装置の実施例1として、
図5に示された冷凍サイクル装置101は、圧縮機103、凝縮器105、膨張弁107、蒸発器109、上述した二重管式熱交換器1を、回路主要構成要素として有している。二重管式熱交換器1において、凝縮器105出口から(膨張弁107の入口に流入前)の高圧液の冷媒(第二流体)と、蒸発器109出口から(圧縮機103の入口に流入前)の低圧ガスの冷媒(第一流体)との間で熱交換を行う。このように二重管式熱交換器1を利用することで、凝縮器105の入口温度が上がるため暖房時の能力を向上させCOP(能力を入力で除した値)を向上せたり、圧縮機へ液冷媒が戻ることを防止させたりすることができる。
【0036】
次に、冷凍サイクル装置の実施例2として、
図6に示された冷凍サイクル装置201は、圧縮機103、凝縮器105、第一膨張弁207a、第二膨張弁207b、蒸発器109、上述した二重管式熱交換器1を、回路主要構成要素として有している。圧縮機103、凝縮器105、第一膨張弁207a及び蒸発器109が、実施例1の場合と同様に、基本的な冷凍サイクル回路を構成している。冷凍サイクル装置201には、さらにバイパス路211が設けられており、このバイパス路211は、第一接続点213aにおいて、凝縮器105の出口から第一膨張弁207aの入口までの間に接続され、第二接続点213bにおいて、蒸発器109の出口から圧縮機103の入口までの間に接続されている。第二膨張弁207bは、バイパス路211に設けられている。
【0037】
二重管式熱交換器1においては、凝縮器105出口から(第一接続点213aに至る前)の高圧液の冷媒(第一流体)と、バイパス路211の第二膨張弁207b出口からの中圧気液二相の冷媒(第二流体)との間で熱交換を行う。二重管式熱交換器1において熱交換した後の中圧ガスの冷媒が圧縮機103に吸入される。このように二重管式熱交換器を利用することで、第一膨張弁207aより下流の冷媒循環量を減少させることができるため、圧力損失を低減でき、COPを向上できる。
【0038】
次に、冷凍サイクル装置の実施例3として、
図7に示された冷凍サイクル装置301は、圧縮機303、凝縮器105、第一膨張弁207a、第二膨張弁207b、蒸発器109、上述した二重管式熱交換器1を、回路主要構成要素として有している。圧縮機303、凝縮器105、第一膨張弁207a及び蒸発器109が、実施例1の場合と同様に、基本的な冷凍サイクル回路を構成している。
【0039】
二重管式熱交換器1においては、凝縮器105出口から(第一接続点213aに至る前)の高圧液の冷媒(第一流体)と、バイパス路211の第二膨張弁207b出口からの中圧気液二相の冷媒(第二流体)との間で熱交換を行う。そして、二重管式熱交換器1において熱交換した後の中圧ガスの冷媒を、圧縮機303の圧縮部中間にバイパスさせる。このように二重管式熱交換器を利用することで、第一膨張弁207aより下流の冷媒循環量を減少させることができるとともに、圧縮工程を多段で行うことができるために、圧縮機の入力を低下させることができ、COPを向上できる。
【0040】
さらに、
図8に示す冷凍サイクル装置401は、二重管式熱交換器1を、基本的な冷凍サイクル回路の凝縮器そのものとして用いたものである。冷凍サイクル装置401は、二重管式熱交換器1において、冷凍サイクル回路の通常の凝縮器の冷媒(第二流体)と、ポンプ415にて送水される水やブラインなどの流体(第一流体)とを熱交換させて、温水を供給するような装置の例である。
【0041】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図9は、本実施の形態2に関する、
図3と同態様の図である。本実施の形態2は、以下に説明する部分を除いては、上述した実施の形態1と同様であり、また、
図5〜
図8の冷凍サイクル装置を構成して実施できることも同様である。
【0042】
二重管式熱交換器51は、溝形成候補範囲の少なくとも一部に、流れ方向に沿って延びる溝25を形成した例である。すなわち、本実施の形態2では、溝形成候補範囲である、内管5の外面5aの上記所定部、内側密着部19の外面19a、及び、連続部21の内外面のうち、
図9に示されるように連続部21の内外面だけに溝25を形成している。このような本実施の形態2においても、実施の形態1と同様、伝熱面として有効度の高い連続部21の内外面に液冷媒を効率よく集めることができ、第二流路に気液二相流が流れる場合にも、伝熱面を有効に活用することで、熱交換性能を高めることができる。
【0043】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
図10は、本実施の形態3に関する、
図3と同態様の図である。本実施の形態3は、以下に説明する部分を除いては、上述した実施の形態1と同様であり、また、
図5〜
図8の冷凍サイクル装置を構成して実施できることも同様である。
【0044】
二重管式熱交換器61もまた、溝形成候補範囲の少なくとも一部に、流れ方向に沿って延びる溝25を形成した例である。本実施の形態3では、溝形成候補範囲である、内管5の外面5aの上記所定部、内側密着部19の外面19a、及び、連続部21の内外面のうち、
図10に示されるように内管5の外面5aの上記所定部、及び、内側密着部19の外面19aだけに溝25を形成している。このような本実施の形態3においても、実施の形態1と同様、第二流路に気液二相流が流れる場合にも、伝熱面を有効に活用することで、熱交換性能を高めることができる。
【0045】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0046】
例えば、上述した実施の形態1において、伝熱面積拡大管11の外側密着部17の外面17aにも溝25を形成するように改変することも可能である。このように改変することで、伝熱面積拡大管11の外面全体に対して一様な加工として溝25を設けることとなり、加工の一様性による製作の簡易化を図ることができる。また、そのように改変しても、外管3と密着する伝熱面積拡大管11の外側密着部17の外面17aは、伝熱面としての重要度は低く、伝熱面の活用の観点で本発明の有効性を何ら低めるものではない。すなわち、本発明における伝熱面の有効活用性を好適に維持したまま製作容易性を向上させることができる。