【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明においては、代謝修飾が細菌の生存率の証拠になるという事実を利用して、他の糖が、少なくとも所定のカテゴリーの細菌のグリカン代謝修飾のターゲットとして、該細菌を遺伝子修飾せずに、使用できるか否かを調べた。
【0023】
したがって、本発明の方法は、
図2Bに概略的に示すような全体として迅速な過程で、生体直交型の化学レポーターを含んでいる修飾糖成分を生菌の膜グリカン、とりわけリポ多糖に取り込むことで細胞表面を装飾し、化学反応、とりわけクリックケミストリー(click chemistry)反応によって検出できるようにし、さらには化学レポーターを検出できるようにすることによって、生菌の膜グリカン、とりわけLPSの代謝修飾を通じて細菌膜を標識することで生菌を本質的に検出することを含む方法である。
【0024】
本発明によれば、ウロソン酸又はウロソン酸塩残基を有する修飾糖は、そのような残基を全てのグラム陰性菌の細菌膜のグリカン、とりわけLPSに見出すことができ、さらに、上記グラム陰性菌のグリカン、とりわけLPSに取り込まれる形態へと直接同化することができるが、LPSの他の糖のほとんどは異なる単糖前駆体由来であるという点から、特に有利であることが分かった。
【0025】
ウロソン酸(ケトアルドン酸又はアルドウロソン酸とも呼ばれる)はケトース類に属する単糖であり、C−2にケトン基を、C−1にカルボン酸を有する。オクツロソン酸及びノヌロソン酸は別種の天然グリカン類、例えば様々な形態の細菌グリカン類(とりわけLPS、CPS、糖タンパク質)などに見られる。これらのグリカンの合成へと至る生合成経路には、通常、遊離のウロソン酸が中間体として関与する。この遊離のウロソン酸はその後、CMP−糖供与体の形態で直接活性化される。これは、単糖そのものの少しの種類の一次活性供与体からヌクレオチド二リン酸−糖供与体の形態で直接生合成されることが多い他の多くの単糖とは対照的である。
【0026】
本発明は、生菌の外膜のグリカンに結合する第1の反応性化学基を取り込むことで、細菌を含有する試料中の所定のカテゴリーの細菌の生菌を特異的に標識する方法を提供する。
【0027】
より厳密には、本発明は、細菌を含有する試料中の所定のカテゴリーの細菌の生菌を特異的に標識する方法であって、
a)単糖化合物の類似体の少なくとも1つと共に上記試料の上記細菌をインキュベートするステップであって、
上記単糖は上記所定のカテゴリーの細菌の外膜のグリカンの内在性単糖残基であり、
上記内在性単糖残基はウロソン酸又はウロソン酸塩残基を含み、
上記単糖化合物の類似体は、標識化分子の第2の反応性基と反応できる第1の反応性化学基によって所定の位置が置換された修飾単糖であり、
上記所定の位置は、好ましくは、上記細菌の外膜のグリカン内に取り込まれた上記内在性単糖残基中の遊離型の基を有する位置である、ステップと、
b)上記第2の反応性基を有する上記標識化分子と上記細菌を接触させて、上記生菌の外膜のグリカン内に取り込まれた上記類似体残基の上記第1の反応性基を上記標識化分子の上記第2の反応性基と反応させるステップと
を含む方法を提供する。
【0028】
生菌には、増殖可能な細菌だけでなく、増殖できないが生存はしている細菌も含まれる。ほとんどの衛生上の規則が、増殖可能な細菌、とりわけ固体増殖培地上で増殖可能な細菌の計数について言及しているように、本発明は、特に、増殖可能な細菌を特異的に標識する方法であって、上記細菌が培養培地でインキュベートされ、その(液体培地)中又は(固体培地)上で上記細菌が増殖可能である、方法を提供するものであり、有利である。
【0029】
好ましくは、本発明の方法は、さらに、
c)上記細菌がその外膜のグリカンに結合した上記標識化分子を含むか否かを検出すること、及び/又は、上記標識化分子を含んでいる上記生菌を固体基材に固定化することにより、生菌を検出するステップ
を含む。
【0030】
上記検出ステップc)は、液体培地中又は固体基材上で行うことができる。
【0031】
より具体的には、上記標識化分子は、検出可能な物質を含む検出可能な分子、又は、検出可能な物質と反応若しくは結合できる検出可能な分子であるか、又は、
上記標識化分子は上記第2の反応性基を有する第1の分子であり、
該第1の分子は第2の分子及び/又は固体基材と反応又は結合でき、
好ましくは上記第2の分子は検出可能な物質を含んでいるか、及び/又は、上記固体基材に結合している。
【0032】
第1の実施形態においては、上記標識化分子は、検出可能な分子、すなわち検出可能な物質そのものである分子又は検出可能な物質を含む分子、すなわち、蛍光色素若しくは発光物質又はペルオキシダーゼなどの酵素のような検出が可能な物質である。上記酵素は、より具体的には、共反応体と反応した後に検出される。
【0033】
生菌を単離するために有用なさらに具体的な実施形態においては、ステップb)を行う際に上記標識化分子が固体基材に結合していてもよい。
【0034】
さらに具体的な実施形態においては、上記標識化分子は、上記第2の反応性基を有する第1のリガンド又は第1の結合タンパク質である分子であり、
ステップc)において、上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質に結合した上記生菌は、上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質を、上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質と特異的に反応又は結合する第2のリガンド又は第2の結合タンパク質である第2の分子と接触させることにより検出及び/又は固定化される。
【0035】
その場合、上記第1又は第2のリガンド又は結合タンパク質は、蛍光色素若しくは発光物質又はペルオキシダーゼなどの酵素のような上記検出可能な物質を含む第3の結合タンパク質と反応又は結合することができ、有利である。上記第3の結合タンパク質は、上記第1及び/又は第2のリガンド又は結合タンパク質に特異的に結合する。上記第2のリガンド又は第2の結合タンパク質又は第3の結合タンパク質を介して上記検出可能な物質を検出することにより、上記検出可能な物質のシグナルを増幅することができる。
【0036】
より具体的には、上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質は以下のものであってもよい。
・ビオチン(この場合、上記第2及び第3の結合タンパク質はそれぞれアビジン又はストレプトアビジン(ビオチンに対する抗体)である)、あるいは、
・アビジン又はストレプトアビジン(この場合、上記第2のリガンド及び上記第3の結合タンパク質はそれぞれビオチン(アビジン又はストレプトアビジンに対する抗体)である)、あるいは、
・第1の抗体(この場合、上記第2及び第3の結合タンパク質はそれぞれ上記第1の抗体に特異的な第2及び第3の抗体である)。
【0037】
より具体的には、上記標識化分子は、上記第2の反応性基を有する第1のリガンド、好ましくはビオチンであり、
ステップc)において、上記第1のリガンドに結合した上記生菌は、上記第1のリガンドに特異的な抗体と上記細菌との反応によって検出され、上記抗体は検出可能な物質、好ましくは蛍光色素分子又は発光分子又は酵素を含む。
【0038】
また、より具体的には、上記標識化分子は、上記第2の反応性基を有する第1のリガンド、好ましくはビオチンであり、ステップc)において、上記第1の結合タンパク質に結合した上記生菌は、上記第1のリガンドと、上記第2の結合タンパク質、好ましくはアビジン又はストレプトアビジンに結合した固体基材、好ましくは磁気ビーズとの反応によって固定化される。その後、上記生菌は、細菌DNAの酵素的増幅によって、又は、上記細菌と、上記第1のリガンド若しくは第2の結合タンパク質と特異的に反応若しくは結合する第3の結合タンパク質との反応によって検出される。上記第3の結合タンパク質は検出可能な物質、好ましくは蛍光色素分子又は発光分子又は酵素を含み、上記第3の結合タンパク質は、好ましくは上記第1のリガンド又は第1の結合タンパク質に特異的な抗体である。
【0039】
上記生菌が上記固体基材上に固定化される上記実施形態によれば、試料を上記細菌そのものへと濃縮することができ、PCR、とりわけリアルタイムPCRなどのDNAの酵素的増幅や、ELISAテストなどの標識抗体との免疫学的反応を用いた方法などの公知の方法によって上記生菌を定量化することができる。
【0040】
より具体的には、本発明は、細菌を含有する試料中の所定のカテゴリーの細菌の生菌を特異的に検出する方法であって、
上記標識化分子は、検出可能な物質を含む検出可能な分子であり、
上記方法は、c)上記細菌がその外膜のグリカンに結合した上記検出可能な分子を含むか否かを検出することにより、生菌を検出するステップを含む、方法を提供する。
【0041】
ステップa)では、生菌の外膜のグリカン、とりわけリポ多糖層に上記単糖化合物の類似体の残基を取り込むことにより、上記カテゴリーに属する全ての生菌が特異的に標識されることとなる。
【0042】
ステップb)では、上記培養細菌の上記グリカン中、とりわけLPS中の上記修飾単糖の上記第1の反応性基と、上記第2の反応性基を有する上記標識化分子とを適切な条件下かつ適切で好適な反応体の存在下、反応させることにより、上記標識化分子が生菌の上記グリカン、とりわけLPSに取り込まれた類似体残基と結合することとなる。
【0043】
ステップa)において、上記内在性単糖の上記所定の位置は、上記細菌の外膜のグリカン内に取り込まれた上記内在性単糖残基中の遊離型の基を有する位置であるのが好ましい。「遊離型の基(free group)」とは、上記グリカン中、とりわけLPS中の共有結合に関与していない位置を意味する。
【0044】
修飾ウロソン酸又はウロソン酸塩を代謝的に同化することによって、代謝的に活性/生存しているグラム陰性菌を迅速に検出する(全工程が1日未満で終了)上記方法が使用できる。細菌株にもよるが、生存細菌の検出には通常2日間から1ヶ月を超える期間が必要である事実を考慮すると、上記方法は非常に強力である。
【0045】
グラム陰性菌のなかには重大な病原体が隠れており、生存細胞を迅速に同定することは衛生上重要な課題である。したがって、本発明は、代謝的に活性なグラム陰性菌の細胞表面の標識を、修飾ウロソン酸又はウロソン酸塩残基をそのリポ多糖に代謝的に取り込ませた後、クリックケミストリーを用いてさらに結合させることにより行う簡易な方策を提供する。
【0046】
内在性同等物(KDOなど)との競合状態での、細菌細胞における外因性ウロソン酸塩類似体(KDO類似体など)の同化及びそのLPS内への取り込みは全く明らかにはなっていない。これは、これらの分子の極性が高く、膜を通過しにくいからである。抗菌剤としてのKDO類似体を使用した試みは、該類似体の細胞内濃度を充分高くすることが難しいため、失敗している[10]。
【0047】
より具体的には、細菌濃度が10
11cell/ml以内、より具体的には10
9cell/ml以内のものを検出するためには、ステップa)におけるインキュベーション時間は1時間〜24時間、好ましくは2時間〜12時間であり、単糖類似体化合物の濃度は10
−8M〜1M、より具体的には10
−5M〜1Mである。
【0048】
特に、上記類似体単糖は、以下の式(I)又は(II)の1つで表される置換ウロソン酸又はそのウロソン酸塩である。
【0049】
【化1】
【0050】
(式中、
A、B及びCは、独立に、保護基で置換されているか又は置換されていないH、OH、NH
2、OH及びNH
2、好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基で置換されているOH及びNH
2であってもよく、
Dは、炭素数2〜4のアルキル鎖であって、その各炭素はOH又はNH
2で置換されているか又は置換されておらず、該OH及びNH
2は保護基で置換されているか又は置換されておらず、好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基で置換されており、
A、B、C又はD基のうち少なくとも1つは上記第1の反応性基で置換されている)
【0051】
一方がピラノース環を有する式(I)であり、他方がフラノース環を有する式(II)であるこれら2つの化学式は、実際には2つの種が自然に平衡状態にあるが、通常は式(I)の方が優勢である。
【0052】
より具体的には、OHの場合、保護基は好ましくはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基又はホルミル基であってもよい。
【0053】
より具体的には、NH
2の場合、保護基はアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基から選択することができる。
【0054】
NH
2は1つ又は2つの保護基によって保護することができ、とりわけ1つのCH
3基と1つのアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ホルミル基又はイミドイル基、とりわけアセチル基(Ac)、アセトイミドイル基(Am)、N−メチル−アセトイミドイル基、N,N−ジメチル−アセトイミドイル基、ホルミル基(Fo)又はヒドロキシブタノイル基とによって保護することができる。
【0055】
より具体的には、上記単糖化合物の類似体は、置換オクツロソン酸又はオクツロソン酸塩化合物である。
【0056】
式(I)のオクツロソン酸又はオクツロソン酸塩化合物は、D基として炭素数2のアルキル鎖を有する。
【0057】
式(II)のオクツロソン酸又はオクツロソン酸塩化合物は、D基として炭素数3のアルキル鎖を有する。
【0058】
上記単糖化合物の類似体は、置換ノヌロソン酸又はノヌロソン酸塩化合物であってもよい。
【0059】
式(I)のノヌロソン酸又はノヌロソン酸塩化合物は、D基として炭素数3のアルキル鎖を有する。
【0060】
式(II)のノヌロソン酸又はノヌロソン酸塩化合物は、D基として炭素数4のアルキル鎖を有する。
【0061】
内在性ウロソン酸又はウロソン酸塩残基のうち、特によく見られるのが以下のカテゴリーの細菌に特異的に存在するものである。
【0062】
以下の式(I)の1−オクツロソン酸又はオクツロソン酸塩残基(式中、Dは−CHOH−CH
2OH(Ia−1、Ia−2)又は−CHOH−CH
2NH
2(Ia−3)である):
【0063】
1.1)
【0064】
【化2】
【0065】
・(Ia−1)Kdo(3−デオキシ−D−マンノ−オクト−2−ウロソン酸、又は、ケトデオキシオクトン酸)。これは以下のカテゴリーの細菌に特異的なものである。グラム陰性菌の全て。Kdoはシュワネラ属(Shewenella)の一部を除く全てのグラム陰性菌のLPS内部コアや、プロビデンシア属(Providencia)、クロノバクター属(Cronobacter)及びシュードアルテロモナス属(Pseudoalteromonas)の細菌のLPSのO−抗原で見ることができ、大腸菌(E.coli)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、リゾビア(rhizobia)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)、モラクセラ・ノンリクファシエンス(Moraxella nonliquefaciens)、類鼻疽菌(バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei))、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、バークホルデリア・カリベンシス(Burkholderia caribensis)、シュードアルテロモナス・ニグリファシエンス(Pseudoalteromonas nigrifaciens)の一部の莢膜多糖(CPS)にも見られる。
【0066】
1.2)
【0067】
【化3】
【0068】
・(Ia−2)Ko(D−グリセロ−D−タロ−オクト−2−ウロソン酸、又は、ケトオクトン酸)。(Ia−2)は以下のカテゴリーの細菌において見ることができる。エルシニア属(Yersinia)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、バークホルデリア属(Burkholderia)。
【0069】
1.3)
【0070】
【化4】
【0071】
・(Ia−3)Kdo8N(8−アミノ−3,8−ジデオキシ−D−マンノ−オクト−2−ウロソン酸)。(Ia−3)はシュワネラ属(Schewanella)細菌に見られる。
【0072】
下記式の2−ノヌロソン酸又はノヌロソン酸塩残基(式中、Dは−CHNH
2−CHOH−CH
3(Ib−1、Ib−2、Ib−5、Ib−6)、−CHOH−CHOH−CH
2OH(Ib−3、Ib−4)、−CHNH
2−CHNH
2−CH
3(Ib−7)):
【0073】
2.1)
【0074】
【化5】
【0075】
・(Ib−1)4eLeg(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−D−グリセロ−D−タロ−ノヌ−2−ウロソン酸)。(Ib−1)は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)細菌のLPS及びシュワネラ・ジャポニカ(Schewanella japonica)に見られる。
【0076】
2.2)
【0077】
【化6】
【0078】
・(Ib−2)8eLeg(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−L−グリセロ−D−ガラクト−ノヌ−2−ウロソン酸)。(Ib−2)は大腸菌株、プロビデンシア・スチュアルティイ(Providencia stuartii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、エルシニア・ラッケリ(Yersinia ruckeri)、サルモネラ・アリゾネ(Salmonella arizonae)、モーガネラ・モーガニイ(Morganella morganii)、シュワネラ・プトレファシエンス(Shewanella putrefaciens)に見られる。
【0079】
2.3)
【0080】
【化7】
【0081】
・(Ib−3)Kdn(3−デオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−ノヌ−2−ウロソン酸)。(Ib−3)は臭鼻菌(Klebsiella ozaenae)及びシノリゾビウム・フレディ(Sinorhizobium fredii)(5−O−メチルKdnの形態)のCPSにおいて見られる。Kdnを含有する多糖又はオリゴ糖は、グラム陽性菌(アクチノマイセタレス(Actinomycetales)目)の細胞壁に見られる。
【0082】
2.4)
【0083】
【化8】
【0084】
・(Ib−4)Neu(5−アミノ−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−ノヌ−2−ウロソン酸)。(Ib−4)は、大腸菌、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、モラクセラ・ノンリクファシエンス(Moraxella nonliquefaciens)及びマンヘミア(パスツレラ)・ヘモリチカ(Mannheimia(Pasteurella) haemolytica)、ストレプトコッカス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)(グラム陽性)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)(グラム陽性)のCPSや、ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、エシェリヒア・アルベルティ(Escherichia albertii)、サルモネラ菌(Salmonella enterica)、大腸菌、シトロバクター(Citrobacter)、コレラ菌(ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae))、シュワネラ・アルガ(Shewanella algae)などの細菌のLPSのO−抗原、並びに、髄膜炎菌(N.meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、インフルエンザ菌(H.influenzae)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、ヒストフィルス・ソムニ(Histophilus somni)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)及びヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)などの種々の病原体のLPSコアに見ることができる。
【0085】
2.5)
【0086】
【化9】
【0087】
・(Ib−5)Pse(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−L−グリセロ−L−マンノ−ノヌ−2−ウロソン酸)。(Ib−5)は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ボイド赤痢菌(Shigella boydii)、大腸菌、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、シュードアルテロモナス・アトランティカ(Pseudoalteromonas atlantica)、シュードアルテロモナス・ディスティンクタ(Pseudoalteromonas distincta)、シノリゾビウム・フレディ(Sinorhizobium fredii)及びコレラ菌(ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae))、シュードアルテロモナス・アトランティカ(Pseudoalteromonas atlantica)のO−抗原(LPS)、並びに、クリベラ属(Kribella spp.)5(グラム陽性)及びアクチノプラネス・ウタヘンシス(Actinoplanes utahensis)(グラム陽性)の細胞壁、並びに、腸炎ビブリオ(ビブリオ・パラヘモリティカス(vibrio parahaemolyticus))のLPSコア、並びに、グラム陽性カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)及びボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の鞭毛の糖タンパク質、並びに、シノリゾビウム属(Sinorhizobium)細菌のCPSに見ることができる。
【0088】
2.6)
【0089】
【化10】
【0090】
・(Ib−6)Leg(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−ノヌ−2−ウロソン酸)。(Ib−6)は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ビブリオ・アルギノリチカス(Vibrio alginolyticus)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)及びビブリオ・サルモニシダ(Vibrio salmonicida)に見られる。
【0091】
2.7)
【0092】
【化11】
【0093】
・(Ib−7):5,7,8−トリアミノ−3,5,7,8,9−ペンタデオキシノヌ−2−ウロソン酸(C−8での立体配座が未知)は、テナキバクラム・マリティマム(Tenacibaculum maritimum)(以前は海産魚の滑走細菌症菌(Flexibacter maritimus))に見られる。
【0094】
上記式Ib−iにおいて、iが1〜7の場合、NH
2基はN−アセチル(NHAc)の形態か、又は、N−アセトイミドイル(NHAm)、N−(N−メチルアセトイミドイル)、N−(N,N−ジメチルアセトイミドイル)、N−ホルミル(NHFo)、NH−ヒドロキシブタノイル(NH−Hb)の形態であってもよく、さらにN−メチル化されていてもされていなくてもよい。
【0095】
好ましくは、上記所定のカテゴリーの細菌はグラム陰性菌を構成し、上記細菌の外膜のLPS層の上記内在性単糖残基はデオキシオクツロソン酸塩残基であり、上記単糖化合物の類似体は、置換デオキシオクツロソン酸又はデオキシオクツロソン酸塩化合物(ケトデオキシオクトネート(いわゆるKDO)とも呼ばれる)である。
【0096】
「グラム陰性菌」というのは、上記KDOを用いた方法では、グラム陽性菌と、同じ内在性単糖を有していない他のグラム陰性菌の標識ができないことを意味する。実際に、グラム陰性菌のLPSは全て上記デオキシオクツロソン酸塩残基を有しているのに対し、グラム陽性菌のグリカン中にはその残基は含まれていない。
【0097】
「デオキシオクツロソン酸塩」(Kdoとも呼ぶ)は、式(Ia−1)の3−デオキシ−D−マンノ−オクツロソン酸塩残基を意味する。
【0098】
より具体的には、上記デオキシオクツロソン酸塩残基は、単糖環の3位、4位、5位、7位又は8位、好ましくは3位、7位又は8位から選択される位置が上記反応性基によって置換されている。上記内在性単糖の2位は、LPSとの共有結合に関与している。
【0099】
グラム陰性菌は全て、少なくとも1つの残基の3位、4位、5位、7位又は8位の1つにおいて上記第1の反応性基によって置換することができる遊離型の基を有する上記デオキシオクツロソン酸塩残基を含む。また、シュワネラ属(Shewenella)細菌の一部を除き、グラム陰性菌は全て、少なくとも1つの残基の8位に遊離型の基を有する。
【0100】
グラム陰性菌を特異的に検出するために、ステップa)及びb)においてグラム陰性菌に特異的な培養培地を用い、それによりグラム陽性菌を培養させないことがより有利である場合がある。
【0101】
より具体的には、上記デオキシオクツロソン酸塩残基は、式(I)又は(II)の化合物、より具体的には式(Ia−1)の化合物であって、8位が上記反応性基R
1で置換されている。すなわち、式(I)中、D=−CHOH−CH
2−R
1、A=H、B=OH、C=OH、又は、式(II)中、D=−CHOH−CHOH−CH
2−R
1、A=H、B=OH。
【0102】
より具体的には、取り込まれた内在性KDOを有する上記グラム陰性菌は、大腸菌、ネズミチフス菌(サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium))、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)及び緑膿菌(シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))から選択される。これらの細菌は、8位が遊離型である内在性KDOを有する。
【0103】
ウロソン酸又はウロソン酸塩残基の少なくとも1つの位置が遊離型である他のグラム陰性病原菌は、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、バルトネラ・バシリホルミス(Bartonella bacilliformis)、バルトネラ・クインターナ(Bartonella quintana)(ロシャリメア・クインターナ(Rochalimaea quintana))、バルトネラ属(Bartonella spp.(ロシャリメア属(Rochalimaea spp.))、気管支敗血症菌(ボルデテラ・ブロンキセプティカ(Bordetella bronchiseptica))、パラ百日咳菌(ボルデテラ・パラペルツッシス(Bordetella parapertussis))、百日咳菌(ボルデテラ・パータッシス(Bordetella pertussis))、ブラキスピラ属(Brachyspira spp.)、カンピロバクター・フェタス(Campylobacter fetus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター属(Campylobacter spp)、カルジオバクテリウム・ホミニス(Cardiobacterium hominis)、クラミドフィラ・アボルタス(Chlamydophila abortus)、クラミドフィラ・キャビエ(Chlamydophila caviae)、クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)、クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae(肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae))、エドワジェラ・タルダ(Edwardsiella tarda)、エーリキア属(Ehrlichia spp.)、エイケネラ・コローデンス(Eikenella corrodens)、エリザベトキンギア・メニンゴセプティカ(Elizabethkingia meningoseptica)(フラボハクテリウム・メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)、クリセオバクテリウム(Chryseobacterium)、エニンゴセプチカム(eningosepticum))、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)(=クレブシエラ・モビリス(Klebsiella mobilis))、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクター属(Enterobacter spp.)、腸球菌(エンテロコッカス)属(Enterococcus spp.)、野兎病菌亜種ホルアークティカ(Francisella tularensis subsp. holarctica(“Francisella tularensis var. palaearctica”))、野兎病菌タイプB(Francisella tularensis type B)、壊死桿菌(フソバクテリアム・ネクロフォラム(Fusobacterium necrophorum))、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘモフィルス属(Haemophilus spp.)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、カンピロバクター・ピロリ(Campylobacter pylori)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、肺炎桿菌(クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae))、クレブシエラ属(Klebsiella spp.)、レジオネラ・ボゼマナエ(Legionella bozemanae corrig.(フルオリバクター・ボゼマナエ(Fluoribacter bozemanae))、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、レジオネラ属(Legionella spp.)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)、レプトスピラ・アレキサンデリを含む広義のレプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans sensu lato inclut Leptospira alexanderi)、レプトスピラ・ボルグペテルセニイ(Leptospira borgpetersenii)、レプトスピラ・ファイネイ(Leptospira fainei)、レプトスピラ・イナダイ(Leptospira inadai)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)、レプストピラ・カースクネリー(Leptospira kirschneri)、レプストピラ・ノグチ(Leptospira noguchii)、レプストピラ・サンタロサイ(Leptospira santarosai)、レプトスピラ・ウェイリイ(Leptospira weilii)、モーガネラ・モーガニイ(Morganella morganii)(プロテウス・モーガニイ(Proteus morganii))、淋菌(ナイセリア・ゴナーリエ(Neisseria gonorrhoeae))、髄膜炎菌(ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis))、ネオリケッチア・センネツ(Neorickettsia sennetsu(エーリキア・センネツ(Ehrlichia sennetsu)、リケッチア・センネツ(Rickettsia sennetsu))、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、パスツレラ属(Pasteurella spp.)、プレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas spp.)、プレボテラ属(Prevotella spp.)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ペンネリ(Proteus penneri)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、プロビデンシア・アルカリファシエンス(Providencia alcalifaciens)、プロビデンシア・レットゲリ(Providencia rettgeri(プロテウス・レットゲリ(Proteus rettgeri))、プロビデンシア属(Providencia spp.)、緑膿菌(シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リケッチア属(Rickettsia spp.)(オリエンティア(リケッチア)・ツツガムシ(Orientia(Rickettsia) tsutsugamushi)を除く)、リケッチア・アカリ(Rickettsia akari)、リケッチア・カナデンシス(Rickettsia canadensis)、リケッチア・コノリイ(Rickettsia conorii)、リケッチア・モンタネンシス(Rickettsia montanensis)、リケッチア・プロワゼキイ(Rickettsia prowazekii)、リケッチア・リケッチィ(Rickettsia rickettsii)及び発疹熱リケッチア(リケッチア・チフィ(Rickettsia typhi))、サルモネラ・エンテリカ亜種アリゾネ(Salmonella enterica subsp. Arizonae(サルモネラ・アリゾネ(Salmonella arizonae)、サルモネラ・コレラエスイス亜種アリゾネ(Salmonella choleraesuis subsp. arizonae))、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型エンテリティディス((Salmonella enterica subsp. enterica serovar Enteritidis(サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis))、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型パラチフィA(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Paratyphi A(サルモネラ・パラチフィ(Salmonella paratyphi))、パラチフィB(Paratyphi B)及びパラチフィC(Paratyphi C)、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型ティフィムリウム(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhimurium(ネズミチフス菌(サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)))、ボイド赤痢菌(シゲラ・ボイディイ(Shigella boydii))、志賀赤痢菌(シゲラ・ディゼンテリエ(Shigella dysenteriae))(タイプ1を除く)、フレクスナー赤痢菌(シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri))、ソンネ赤痢菌(シゲラ・ソンネイ(Shigella sonnei))、ストレプトバチルス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、トレポネーマ・カラテウム(Treponema carateum)、梅毒トレポネーマ(トレポネーマ・パリズム(Treponema pallidum))、トレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)(トレポネーマ・パリズム亜種ペルテヌエ(Treponema pallidum subsp. pertenue))、トレポネーマ属(Treponema spp.)、コレラ菌(ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae))、腸炎ビブリオ(ビブリオ・パラヘモリティカス(vibrio parahaemolyticus))(=ベネッケア・パラヘモリティカ(Beneckea parahaemolytica))、ビブリオ属(Vibrio spp.)、エルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)、偽結核菌(エルシニア・シュードツベルクローシス(Yersinia pseudotuberculosis))、ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)(狭義)、ブルセラ・メリテンシス次亜種アボルツス(Brucella melitensis biovar Abortus(ブルセラ・アボルツス(Brucella abortus))、ブルセラ・メリテンシス次亜種カニス(Brucella melitensis biovar Canis(ブルセラ・カニス(Brucella canis))、ブルセラ・メリテンシス次亜種スイス(Brucella melitensis biovar Suis(ブルセラ・スイス(Brucella suis))、鼻疽菌(バークホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei)(シュードモナス・マレイ(Pseudomonas mallei))、類鼻疽菌(バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)(シュードモナス・シュードマレイ(Pseudomonas pseudomallei))、クラミドフィラ・シタッシ(Chlamydophila psittaci)(クラミジア・シタッシ(Chlamydia psittaci))、コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetii)、野兎病菌亜種チュラレンシス(Francisella tularensis subsp. Tularensis(フランシエラ・チュラレンシス亜種ニアークティカ(Francisella tularensis subsp. nearctica)、フランシエラ・チュラレンシス次亜種チュランレンシス(Francisella tularensis biovar Tularensis)、フランシエラ・チュラレンシス タイプA(
Francisella tularensis type A)、オリエンティア・ツツガムシ(Orientia tsutsugamushi(リケッチア・ツツガムシ(Rickettsia tsutsugamushi))、リケッチア・アカリ(Rickettsia akari)、リケッチア・カナデンシス(Rickettsia canadensis corrig.)、リケッチア・コノリイ(Rickettsia conorii)、リケッチア・モンタネンシス(Rickettsia montanensis corrig.)、リケッチア・プロワゼキイ(Rickettsia prowazekii)、リケッチア・リケッチィ(Rickettsia rickettsii)、発疹熱リケッチア(リケッチア・チフィ(Rickettsia typhi))、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型チフィ(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhi(サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、シゲラ・ディゼンテリエタイプ1(Shigella dysenteriae type 1)及びペスト菌(エルシニア・ペスティス(Yersinia pestis))から選択することができる。
【0104】
他の好ましい実施形態においては、本発明の方法は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌の生菌を特異的に標識する、好ましくは検出するための方法であり、
上記細菌の所定のカテゴリーは上記レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌のカテゴリーであり、
上記細菌の外膜のLPS層の上記内在性単糖残基は、4−エピレジオナミン酸(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−D−グリセロ−D−タロ−ノヌ−2−ウロソン酸)若しくは4−エピレジオナミン酸塩残基、又は、レジオナミン酸(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−ノヌ−2−ウロソン酸)若しくはレジオナミン酸塩残基であり、
上記単糖化合物の類似体は、それぞれ、置換4−エピレジオナミン酸若しくは4−エピレジオナミン酸塩化合物、又は、置換レジオナミン酸若しくはレジオナミン酸塩化合物であり、好ましくはその単糖環の3位、4位、5位、7位、8位及び9位、好ましくは5位、7位及び9位から選択される1つの位置が置換されている。上記内在性単糖の2位はLPSとの共有結合に関与している。
【0105】
上記単糖化合物の類似体は、式(I)、より具体的には(Ib−1)の置換4−エピレジオナミン酸若しくは4−エピレジオナミン酸塩化合物、又は、式(I)、より具体的には(Ib−6)の置換レジオナミン酸若しくはレジオナミン酸塩化合物であって、9位が上記反応性基R
1によって置換されており、D=−CHNH
2−CHOH−CH
2R
1、A=H、B=OH、C=NH
2であることが好ましい。
【0106】
上記単糖化合物の類似体の他の好ましい構造は、式(I)、より具体的には(Ib−1)の置換4−エピレジオナミン酸若しくは4−エピレジオナミン酸塩化合物、又は、式(I)、より具体的には(Ib−6)の置換レジオナミン酸若しくはレジオナミン酸塩化合物であって、5位及び7位のうち少なくとも1つが上記反応性基R
1によって置換されており、D=−CHNHR
2−CHOH−CH
3、A=H、B=OH、C=NHR
3(R
2及びR
3はそれぞれ独立にH又はR
1)であるものである。
【0107】
他の好ましい実施形態においては、本発明の方法は、緑膿菌(シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))の生菌を特異的に標識する、好ましくは検出するための方法であり、
上記細菌の所定のカテゴリーは上記緑膿菌(シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))のカテゴリーであり、
上記細菌の外膜のLPS層の上記内在性単糖残基は、8−エピレジオナミン酸(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−L−グリセロ−D−ガラクト−ノヌ−2−ウロソン酸)若しくは8−エピレジオナミン酸塩残基、又は、プソイダミン酸(5,7−ジアミノ−3,5,7,9−テトラデオキシ−L−グリセロ−L−マンノ−ノヌ−2−ウロソン酸)若しくはプソイダミン酸塩残基であり、
上記単糖化合物の類似体は、それぞれ、置換8−エピレジオナミン酸若しくは8−エピレジオナミン酸塩化合物、又は、置換プソイダミン酸若しくはプソイダミン酸塩化合物であり、好ましくはその単糖環の3位、4位、5位、7位、8位及び9位、好ましくは5位、7位及び9位から選択される1つの位置が置換されている。上記内在性単糖の2位はLPSとの共有結合に関与している。
【0108】
上記単糖化合物の類似体は、式(I)、より具体的には(Ib−2)の置換8−エピレジオナミン酸若しくは8−エピレジオナミン酸塩化合物、又は、式(I)、より具体的には(Ib−5)の置換プソイダミン酸若しくはプソイダミン酸塩化合物であって、9位が上記反応性基R
1によって置換されており、D=−CHNH
2−CHOH−CH
2R
1、A=H、B=OH、C=NH
2であることが好ましい。
【0109】
上記単糖化合物の類似体の他の好ましい構造は、式(I)、より具体的には(Ib−2)の置換8−エピレジオナミン酸若しくは8−エピレジオナミン酸塩化合物、又は、式(I)、より具体的には(Ib−5)の置換プソイダミン酸若しくはプソイダミン酸塩化合物であって、5位及び7位のうち少なくとも1つが上記反応性基R
1によって置換されており、D=−CHNHR
2−CHOH−CH
3、A=H、B=OH、C=NHR
3(R
2及びR
3はそれぞれ独立にH又はR
1)であるものである。
【0110】
より具体的には、上記検出可能な物質は、蛍光又は発光によって検出可能な蛍光色素分子又は発光分子である。
【0111】
上記第1の反応性基R
1は、アジド基(−N
3)そのもの又はアジド基を有する基、及び、アルキン基(−C≡C−)そのもの又はアルキン基を有する基から選択され、
上記第2の反応性基R
2は、アルキン基(−C≡C−)そのもの又はアルキン基を有する基、及び、アジド基(−N
3)そのもの又はアジド基を有する基から選択され、
上記アジド反応性基を上記アルキン基(−C≡CH)と反応させてアジドアルキン付加環化を行うことが好ましい。
【0112】
アジドアルキン付加環化は、銅触媒の存在下で行う周知のいわゆるクリックケミストリー反応である。この反応においては、アジド基はアルキン基と反応してトリアゾールを生成する。
【0113】
より具体的には、上記反応は、トリス−トリアゾリルリガンド、好ましくはTGTAの存在下、銅触媒条件で行われる。
【0114】
より具体的には、上記検出可能な分子は、末端アルキン基を有するフルオロフォアである。
【0115】
より具体的には、細菌の外膜のLPS層内に取り込まれた内在性3−デオキシ−D−マンノ−オクツロソン酸に置き換わるKdo類似体は、Kdo−N
3(8−アジド−3,8−ジデオキシ−D−マンノ−オクツロソン酸)類似体であり、該類似体をTGTA(トリス((1−(β−D−グリコピラノシル)−1H−[1,2,3]−トリアゾール−4−イル)メチル)アミン)又はTBTA(トリス−[(1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル]アミン)などのトリス−トリアゾールリガンドと、末端アルキン基を有するAlexa標識化フルオロフォア分子と、触媒との存在下で反応させて、上記フルオロフォアと上記Kdo−N
3のアジドアルキン付加環化を行う。
【0116】
よく使用される他の好適なリガンドは、トリス(3−ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン(THPTA)、2−(4−((ビス((1−tert−ブチル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル)アミノ)メチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)エタンスルホン酸(BTTES)、トリス((1−((O−エチル)カルボキシメチル)−(1,2,3−トリアゾール−4−イル))メチル)アミン、バソフェナントロリンジスルホネート、又は、トリス(2−ベンズイミダゾリルメチル)アミン(53)である。
【0117】
以下のような他の反応性基及び他の反応も可能である。Staudingerライゲーション(第1の反応性基=アジド、第2の反応性基=ホスフィン)、銅フリークリックケミストリー(第1の反応性基=アジド、第2の反応性基=束縛(constrained)アルキン(環内アルキン))、カルボニル縮合(第1の反応性基=アルデヒド又はケトン、第2の反応性基=ヒドラジド又はオキシアミン)、His−tag(第1の反応性基=オリゴ−ヒスチジン、第2の反応性基=ニッケル錯体又はニッケルリガンド)、チオール−エンクリックケミストリー(第1の反応性基=チオール、第2の反応性基=アルケン)、ニトリル−オキシド−エンクリックケミストリー(第1の反応性基=ニトリルオキシド又はアルデヒド、オキシム、又は、塩化ヒドロキシモイル又はクロロオキシム、第2の反応性基=アルケン又はアルキン)、ニトリルイミン−エンクリックケミストリー(第1の反応性基=ニトリルイミン又はアルデヒド、ヒドラゾン、又は、塩化ヒドラゾノイル又はクロロヒドラゾン、第2の反応性基=アルケン又はアルキン)、逆電子要請型ディールス・アルダー(inverse electron demand Diels−Alder)ライゲーション(第1の反応性基=アルケン、第2の反応性基=テトラジン)、Suzuki−Miyauraカップリング(第1の反応性基=ハロゲン化アリール、第2の反応性基=ボロン酸アリール)。
【0118】
反応に関与する基の上記リストにおいて、第1の反応性基と第2の反応性基を入れ替えてもよい。
【0119】
他に、2つの異なる上記単糖類似体化合物と2つの異なる検出可能な分子を用いて細菌試料をインキュベートすることにより、より特異性の高い検出を行うことができる。
【0120】
本発明の方法の他の具体的な実施形態においては、上記ステップa)のインキュベーション及び上記ステップb)の反応はメンブランフィルター上で行われ、それにより、もともと同じ細菌から増殖した培養細菌を1つの群にして、顕微鏡を用いて可視化することができ、上記検出可能な分子は上記顕微鏡を用いて可視化することにより検出することができる。したがって、培養可能な細菌の数はそれにより定量化できる。
【0121】
この実施形態により、上記修飾単糖の同化の前に、被験試料をポリエステル膜などの上記メンブランフィルター上でろ過することができ、それにより同化期の間に起こり得る増殖によって生存細菌を多く見積もりすぎることを防ぐことができる。実際に、そのような膜の頂部に固定した細胞が増殖し始める時、該細胞はまとまって存在し、マイクロコロニーを形成するので、同じ単一の細胞に由来するものとして容易に検出することができる。したがって、培養可能な細菌を計数することによって数を数えることができる。
【0122】
本発明は、上記本発明の方法を行うためのキットであって、
上記第1の反応性化学基によって所定の位置が置換されたウロソン酸又はウロソン酸塩化合物を含む上記単糖化合物の類似体と、
上記第1の反応性基と反応できる上記第2の反応性基を有する上記標識化分子と、
上記細菌の外膜のグリカン内に取り込まれた上記類似体残基の上記第1の反応性基を上記標識化分子の上記第2の反応性基と反応させるための反応体と、
上記所定のカテゴリーの細菌を増殖させることができ、好ましくは上記所定のカテゴリーの細菌の増殖に特異的である培養培地又はインキュベーション培地と
を備えるキットも提供する。
【0123】
上記培養培地又はインキュベーション培地は、さらに、増殖速度、及び/又は、上記所定のカテゴリーの細菌のコロニー形成能を高める及び/又は加速させる物質をさらに含むことが好ましい。より具体的には、上記インキュベーション培地は、ピルビン酸塩又はカタラーゼなどの酸化防止剤を少なくとも含む。
【0124】
より具体的には、ある実施形態においては、上記キットは、さらに、
検出可能な物質、好ましくは蛍光色素分子又は発光分子又は酵素を含む上記検出可能な分子又は第2の分子、及び/又は、
上記標識化分子と特異的に反応若しくは結合できる上記第2の分子を含む固体基材
を備える。
【0125】
より具体的には、ある実施形態においては、本発明のキットは、さらに、
上記第1の反応性基と反応できる上記第2の反応性基を有する上記検出可能な分子と、
・上記細菌を、上記単糖化合物の類似体、上記反応体及び上記検出可能な分子と共にインキュベートした後に可視化することができる固体媒体と
を備える。
【0126】
さらに、より具体的には、上記キットは、
アジド基又はアルキン基を含む上記第1の反応性基で置換されたデオキシオクツロソン酸又はデオキシオクツロソン酸塩化合物である上記単糖化合物の類似体と、
それぞれアルキン基又はアジド基を有する検出可能な分子の上記第2の反応性基と、
銅触媒及びトリス−トリアゾリルリガンドを含む上記反応体と
を備える。
【0127】
本発明の他の特徴や利点は、以下に示す図を参照として、以下の発明の詳細な説明からより明確になるであろう。