(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記点火制御部は、前記点火信号の発生開始時に前記点火プラグに印加される電圧では前記点火放電が発生しないシリンダ内圧力となるタイミングで、前記点火信号を発生させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のリーク検出装置。
前記点火制御部は、前記気筒に設けられたピストンの吸気下死点近傍と膨張下死点近傍とのうち少なくとも一方に対応するタイミングで、前記点火信号を発生させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関のリーク検出装置。
前記プラグ状態検出部は、前記点火信号の発生期間の後半と前記点火放電の後とのうち少なくとも一方のタイミングで前記イオン電流検出回路から出力される出力信号に基づいて、前記点火プラグのリーク状態を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のうちの何れか一項に記載の内燃機関のリーク検出装置。
前記プラグ状態検出部は、前記イオン電流検出回路の出力信号に基づいて点火放電持続時間を検出する点火放電持続時間検出部を備え、前記点火放電持続時間検出部で検出された点火放電持続時間と前記点火制御部により点火放電するタイミング以外の前記イオン電流検出回路の出力信号とに基づいて前記点火プラグのリーク状態を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1から7のうちの何れか一項に記載の内燃機関のリーク検出装置。
前記気筒休止制御部は、前記プラグ状態検出部によりリーク有りと判定されたときに前記吸気バルブ及び前記排気バルブを駆動して前記点火プラグのリークを清浄するように構成されていることを特徴とする請求項1から8のうちの何れか一項に記載の内燃機関のリーク検出装置。
前記気筒休止制御部は、前記プラグ状態検出部によりリーク有りと判定されたときに前記気筒休止運転の継続を禁止するように構成されていることを特徴とする請求項1から9のうちの何れか一項に記載の内燃機関のリーク検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置について説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置を適用した内燃機関を示す概略構成図であって、複数気筒のうちの一つの気筒のみを示している。
図1に於いて、内燃機関の気筒100の頂部には、点火コイル装置2に接続された点火プラグ3が設けられている。気筒100のシリンダ101の内部にはクランク軸50に連結されたピストン40が収容されている。又、気筒100には燃料を噴射するための燃料噴射弁6が設けられている。燃料噴射弁6は、後述する気筒休止指示に基づき、燃料噴射を停止する。
【0016】
更に、内燃機関の気筒100には、吸気バルブ4、排気バルブ5、及び吸気バルブ4と排気バルブ5を駆動するためのバルブ駆動機構10が設けられている。バルブ駆動機構10は、気筒休止指示に基づき、吸気バルブ4及び排気バルブ5を閉じた状態に固定することができる。
【0017】
後述する
図8に示すように、点火プラグ3は、火花放電を行うための点火電圧が印加される中心電極としての第1の電極31と、接地電位に維持される接地電極(側方電極とも称されることもある)である第2の電極32とを備えている。第1の電極31と第2の電極32は、対向間隙を介して対向している。第1の電極31と第2の電極32との間に前述の点火電圧が印加されることにより、対向間隙に火花放電が発生して気筒100に於けるシリンダ101の燃焼室内の可燃混合気に点火若しくは着火(以下、単に、点火と称する)し燃焼させる。気筒休止運転時に気筒100が休止気筒となれば、気筒休止指示に基づき気筒100の燃料噴射弁6による燃料噴射を停止するため、シリンダ101の燃焼室内での燃焼は発生せず、点火プラグ3の第1の電極31と第2の電極32との間の対向間隙に火花放電が発生するのみの状態となる。この状態に於いては、燃焼が発生していないのでイオンは発生しない。
【0018】
図1に於いて、点火コイル装置2は、点火プラグ3と機械的に一体に固定されており、後述する
図3に示すように、バッテリからなる電源に接続された1次コイル21と、この1次コイル21に磁気鉄心を介して結合された2次コイル22と、イオン電流検出回路203を備えている。点火プラグ3、燃料噴射弁6、吸気バルブ4、排気バルブ5等の動作は、エンジンコントロールユニット(以下、ECUと称する)1により制御される。
【0019】
図2は、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置の構成を示すブロック図である。
図2に於いて、ECU1は、点火制御部201と、信号取込部204と、プラグ状態検出部205と、気筒休止制御部206とを備えている。点火制御部201と信号取込部204とプラグ状態検出部205と気筒休止制御部206は、夫々、ソフトウェアにより構成されている。
【0020】
点火コイル装置2は、高電圧発生部202と、イオン電流検出回路203とを備えている。高電圧発生部202は、前述の1次コイル21と、2次コイル22とを備えている。イオン電流検出回路203は、点火プラグ3の第1の電極と第2の電極との間にバイアス電圧を印可してイオン電流を流すと共に、そのイオン電流とイオン電流と共に流れるリーク電流とを検出する機能を有する。
【0021】
点火プラグ3は、点火コイル装置2の2次コイル22から第1の電極31と第2の電極32との間に印可される点火電圧により、燃料と空気との混合気に点火するための火花放電を発生する点火放電機能301と、前述のイオン電流検出回路203によるイオン電流及びリーク電流を検出するためのイオン電流検出プローブ機能302とを有する。
【0022】
ECU1の信号取込部204は、イオン電流検出回路203により検出されたイオン電流及び/又はリーク電流が増幅されてイオン電流検出回路203から出力された信号(以下、単に、イオン電流信号と称する)を取り込み、取り込んだイオン電流信号をイオン電圧信号に変換してプラグ状態検出部205に出力する。プラグ状態検出部205は、入力されたイオン電圧信号に基づいて検出した点火プラグ3の汚損状態に基づいて気筒休止信号を気筒休止制御部206に出力する。気筒休止制御部206は、入力され気筒休止信号に基づいて、燃料噴射弁6の燃料噴射を停止し、バルブ駆動機構10を制御して吸気バルブ4及び排気バルブ5を閉じる。
【0023】
図3は、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置の構成を示す回路構成図である。
図3に於いて、点火コイル装置2に設けられたイオン電流検出回路203は、2次コイル22の低圧側に接続されたコンデンサ242と、コンデンサ242と点火コイル装置2の接地電位部位Gとの間に挿入されたダイオード243と、コンデンサ242に並列接続された電圧制限用のツェナーダイオード244と、1次コイル21に直列接続されたトランジスタにより構成されたスイッチング素子250とを含む。コンデンサ242とダイオード243とツェナーダイオード244は、点火プラグ3の第1の電極31と第2の電極32との間にバイアス電圧を印可するバイアス回路を構成する。スイッチング素子250は、ECU1からの点火信号がハイレベル(以下、Hレベルと称する)となることにより導通し、点火信号がローレベル(以下、Lレベルと称する)となることにより非導通となる。
【0024】
点火プラグ3の第1の電極31と第2の電極32との間に2次コイル22に発生した点火電圧が印加されると、第1の電極31と第2の電極32とが対向する対向間隙に絶縁破壊が発生し、火花を伴う放電電流が流れる。この放電電流は、接地電位部位G、第2の電極32、第1の電極31、2次コイル22、コンデンサ242、ダイオード243、及び接地電位部位Gからなる閉回路を流れる。この閉回路は、コンデンサ242に対する充電回路となり、前述の放電電流によりコンデンサ242を例えば100[V]程度の所定電圧に充電する。所定電圧に充電されたコンデンサ242は、イオン電流出用のバイアス電源として機能し、放電電流の消滅後、第1の電極31と第2の電極32との間に所定電圧をバイアス電圧として印可する。
【0025】
第1の電極31と第2の電極32とが対向する対向間隙内に火花放電が発生することにより、その対向間隙及びその近傍にイオンが形成される。従って、第1の電極31と第2の電極32の間に前のバイアス電圧が印加されることにより、第1の電極31、第2の電極32、点火コイル装置2の接地電位部位G、イオン電流整形回路241、コンデンサ242、及び2次コイル22からなる閉回路にイオン電流が流れる。点火プラグ3に
図3に破線で示すリーク経路34が形成されているときは、このリーク経路34を流れるリーク電流が前述のイオン電流に重畳されて流れる。ここで、イオン電流整形回路241は、イオン電流とリーク電流を増幅する等の処理を行なう。前述のコンデンサ242とツェナーダイオード244とダイオード243とイオン電流整形回路241は、イオン電流検出回路203を構成している。
【0026】
図2及び
図3に於いて、ECU1は、イオン電流整形回路241の出力を信号取込手段204により取得する。信号取込手段204は、イオン電流整形回路241からのイオン電流信号をイオン電圧信号に変換し、AD変換器を介してマイクロコンピュータで処理するためのディジタル信号に変換してプラグ状態検出部205に入力する。プラグ状態検出部205は入力されたイオン電圧信号を処理し、点火プラグ3にリークが発生しているか否かの判定を行う。
【0027】
又、ECU1は、気筒休止制御部206により、内燃機関の運転条件に応じ、燃料噴射弁6による燃料噴射を停止させ、且つ吸気バルブ4及び排気バルブ5を閉じた位置で停止させる気筒休止指示を発生する。又、逆に、吸気バルブ4及び排気バルブ5を停止から駆動へと復帰するバルブ駆動復帰指示を発生する。
【0028】
更に、ECU1は、プラグ状態検出部205により、リーク有りと判定した場合は、バルブ駆動復帰指示を内燃機関の工程の数サイクルの間発生させ、シリンダ101内に於ける気体の流動による点火プラグ3の清浄化を行なうと共に、気筒休止運転の継続を禁止して通常運転へ復帰を実施する。
【0029】
図4A、
図4B、
図4C、及び
図4Dは、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置のリーク検出装置の動作を説明するタイミングチャートであり、横軸は「クランク角度」(時刻に対応する)、縦軸は上段から順次、「点火信号」、1次コイル21に流れる「一次電流」、2次コイル22に発生する「二次電圧」、2次コイル22に流れる「二次電流」、「イオン電流」、及び内燃機関の気筒100に於ける「シリンダ内圧力[Kpa]を、夫々示している。そして、
図4Aは、点火プラグ3にリークが発生していない状態、
図4B及び
図4Cは、点火プラグ3にリークが発生している状態、
図4Dは、点火プラグ3にリークが発生していないが、点火信号オン時の誘導電圧による放電電流が流れた場合、を夫々示している。
【0030】
先ず、点火プラグ3にリークが発生していない状態での動作について説明する。
図4Aに於いて、ECU1内の点火制御部201は、時刻t1にて点火コイル装置2を動作させるための点火信号をLレベルからHレベルに切り替える。これにより、点火コイル装置2のスイッチング素子250が導通し、点火コイル装置2の1次コイル21に一次電流が時刻t1から流れ始め漸次増大する。1次コイル21に一次電流が流れることで、点火コイル装置2はエネルギーの蓄積を開始する。又、この一次電流に基づいて2次コイル22に誘導電圧としての二次電圧が発生し漸次減少する。尚、点火信号がHレベルとなる時刻t1で2次コイルに発生する二次電圧を、以下の説明では「点火信号オン時の誘導電圧」と称する。この点火信号オン時の誘導電圧は、通常、最大1[kV]程度の値である。
【0031】
次に、点火制御部201は、時刻t2にて点火信号をHレベルからローレベルに切り替える。これによりスイッチング素子250は非導通となり1次コイル21に流れる一時電流は遮断される。その結果、2次コイル22に負極性の点火電圧としての二次電圧が瞬時に生成される。点火信号がHレベルからLレベルに切り替わる時刻t2は、通常、点火タイミングと称される。時刻t2で2次コイル22に生成される点火電圧は極めて高い電圧であり、点火プラグ3の第1の電極31へと伝えられる。第1の電極31に印加された点火電圧により、第1の電極31と第2の電極32との間の対向間隙に絶縁破壊が発生し、点火放電電流、即ち負極性の二次電流が時刻t2から流れ始める。この点火放電電流は、点火コイル装置2に蓄積されたエネルギーの量に対応して持続される。尚、時刻t1やt2のタイミングでイオン電流検出回路203にノイズ電流N1、N2が流れるため、これらの時刻t1、t2ではノイズ電流N1、N2をマスクする対策が実施されることが多い。
【0032】
次に、時刻t3に至ると、点火コイル装置2に蓄積されたエネルギーが少なくなり、二次電流である点火放電電流が点火放電を維持できるレベルを下回ることになり、点火放電が終了する。そして、点火コイル装置2に残留する残留エネルギーで再び点火プラグ3の対向間隙に絶縁破壊を発生させようとするがその絶縁破壊を発生させることができず、点火コイル装置2の2次コイル22のインダクタンスや2次コイル側の浮遊容量やコンデンサ242等によるLC共振によるノイズ電流N3が発生する。このLC共振によるノイズ電流N3は容量電流である。LC共振によるノイズ電流N3は、イオン電流検出回路203に流れるため、正方向の電流のみが放電終了時の電流として検出される。点火タイミングである時刻t2からLC共振によるノイズ電流N3が検出される時刻t3までの時間が、点火放電持続時間である。
【0033】
又、点火プラグ3に於ける点火放電動作に伴って、点火コイル装置2内に設けられたイオン電流検出回路203は、気筒100のシリンダ101に於ける燃焼室内の可燃混合気が燃焼することに伴って発生するイオンを検出するための電気エネルギーとしての所定のバイアス電圧、例えば100[V]程度の一定電圧を生成し、火花放電終了後に点火プラグ3の第1の電極31に印加する。
【0034】
前述のように、点火プラグ3は点火放電機能301に加えてイオン電流検出プローブ機能302も備えており、コンデンサ242によるバイアス電圧が第1の電極31に印加されることで可燃混合気の燃焼に伴って発生したイオンに基づく電気量としてのイオン電流を発生させる。しかし、気筒休止(燃料噴射停止)状態に於いては、燃焼に伴うイオンが存在せずイオン電流は発生しない。よって、
図4Aに示すようにノイズ電流N1、N2、N3だけがイオン電流検出回路203に検出されることとなる。
【0035】
次に、点火プラグ3にリークが発生している場合について説明する。
図8は、内燃機関の点火プラグのリークを説明する説明図である。
図8に示すように、点火プラグ3に導電性成分の付着があり、第1の電極31と、接地電位に維持される取付金具36や第2の電極32と、の間で短絡等による絶縁抵抗値の低下が発生している場合は、前述のバイアス電圧を充電しているコンデンサ242から電荷がリークし、後述する
図4Bや
図4Cに示すように漏洩電荷に伴うリーク電流ILが発生し、このリーク電流ILがイオン電流検出回路203によりイオン電流として検出される。
【0036】
気筒休止運転時には、内燃機関の吸排気損失、即ちポンピングロスの低減のために、休止気筒の吸気バルブ4及び排気バルブ5を全閉状態としているので、ピストン40の下死点近傍では大きな負圧となっており、クランクケース51からオイル等がシリンダ101内へ浸入するオイル上がりが生じる。このオイル上がりにより、金属粉や煤、水分等の導電性成分が含まれているオイル等が
図8に示すように点火プラグ3に付着した場合は、点火プラグ3にリーク経路34が形成されリークが発生してしまう。リーク発生の初期では、ピストン40の下死点近傍で短期間にリークが発生し、そのリーク電流のレベルは低い。しかし、リークの度合い悪化するにつれて、リーク電流レベルが大きくなり、且つ長期間発生する傾向がある。これは、
図8に示すようにオイル等が、時間と共に点火プラグ3の碍子33と取付金具36との間の間隙の奥へ蓄積してオイル溜まり35が形成されるのでリーク経路34が維持され易くなるためである。
【0037】
又、点火プラグ3による絶縁破壊電圧は、パッシェンの法則で知られている様に雰囲気の圧力に依存し、その圧力が高い程大きくなる。つまり、
図4Dに示すように、シリンダ内圧力が負圧状態であるような圧力が低い状態では、第1の電極31と第2の電極32との間の電圧が低くても絶縁破壊が発生し易く、点火信号がLレベルからHレベルに切り替わる時刻t1で2次コイル22に発生する点火信号オン時の誘導電圧(最大1[kV]程度)により点火プラグ3に点火放電が発生してしまう可能性がある。
図4Dは、点火プラグ3にリークが発生していないが点火信号オン時の誘導電圧による放電電流IDが時刻t1から時刻t11まで発生しているので、その放電電流IDがイオン電流検出回路203により検出される。従って、この点火信号オン時の誘導電圧に基づいて時刻t1からt11まで流れる放電電流IDをリーク電流と区別する必要がある。
【0038】
そこで、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置によれば、ECU1の点火制御部201は、
図4Bに示すように、点火信号オン時の誘導電圧の値では点火放電しないシリンダ内圧力である時刻t1で点火信号をHレベルに立ち上げる。
図4Bに於ける時刻t1は、クランク角度がほぼ50[°]の近傍にあるタイミングであり、シリンダ内圧力は、例えば、180[KPa]から200[KPa]の範囲内にある。このシリンダ内圧力であれば、点火信号オン時の誘導電圧の値では点火放電しない。この点火信号オン時の誘導電圧の値では点火放電しないシリンダ内圧力の値は、予め実験等から得ることができる。
【0039】
このように、点火信号オン時の誘導電圧の値では点火放電しないシリンダ内圧力である時刻t1に於いて点火信号をLレベルからHレベルに切り替えるようにすれば、点火プラグ3の第1の電極31及び第2の電極32との間に点火信号オン時の誘導電圧が印可されても、時刻t1でのシリンダの内圧が比較的高いので、点火信号オン時の誘導電圧による点火放電は発生せず、
図4Dに示すような放電電流IDは流れない。そしてピストン40の下死点近傍に対応する時刻tbに至ると、シリンダ内圧力は最大の負圧となるが、この時刻tbでは既に2次コイルに誘導された誘導電圧である二次電圧が低下しており、時刻tbでも点火放電は発生せず、
図4Dに示すような放電電流IDは流れない。
【0040】
図4Bに示すように、ピストン40が下死点近傍となる時刻tbではシリンダ内圧力がほぼ最大の負圧となり、オイル上がりが突発的に発生して点火プラグ3を汚損し突発的なリーク経路34が形成されることがある。前述したように時刻t1から時刻t2の間に発生している二次電圧が点火プラグ3の第1の電極31及び第2の電極32の間に印可されているので、その二次電圧により、点火プラグ3に突発的に形成されたリーク経路34にリーク電流ILが流れ、このリーク電流ILがイオン電流検出回路203により検出されることになる。この場合、前述したように、点火放電は発生していないので、イオン電流検出回路203により検出された電流は、放電電流IDではなくリーク電流ILであると明確に判定されることになる。
【0041】
気筒100は休止気筒の状態にあり燃料噴射が停止されているので、万一、点火プラグ3の対向間隙に絶縁破壊が発生して点火放電が生じても燃焼することはない。従って、点火タイミングである時刻t2は、任意に設定することができる。
【0042】
この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置によれば、
図4Bに示すように、ピストン40の下死点近傍の時刻tbでは、通常の点火放電後にコンデンサ242の充電電圧により印可されるバイアス電圧(100[V]程度の一定電圧)より高い電圧である二次電圧を点火プラグ3の第1の電極31に印加することができるので、小さなリーク電流レベルでも確実に検出することが可能となる。従って、オイル上がり等により点火プラグ3にリーク経路34が形成し始める早い段階でリーク電流を検出することが可能となるため、点火プラグ3の清浄動作や気筒休止継続禁止等の対処により点火プラグ3の汚損を防止し、気筒休止運転から通常の運転に復帰したときの失火を防止することができる。
【0043】
尚、点火信号の通電時間、即ち点火信号がHレベルである時間が長いと点火コイル装置2等の発熱が懸念されるときは、二次電圧に代えて点火放電後のバイアス電圧(100[V]程度)を点火プラグ3に印可してイオン電流検出回路203により検出するようにすればよい。実験等からも明らかなように、シリンダ内圧力が大きな負圧であっても100[V]程度の一定電圧では点火プラグ3の電極間の絶縁破壊はほとんど発生することはない。
【0044】
即ち、点火放電後の100[V]程度の一定のバイアス電圧を点火プラグ3に印加してイオン電流検出回路203によりリーク電流を検出する場合は、先ず、クランク角度が270[°]近傍の時刻t3以降の時刻、或いは、ピストン40の下死点より遅角側の時刻で点火信号をLレベルからHレベルに切り替えて点火信号をオンとし、その後、点火信号をHレベルからLレベルに切り替えて点火信号をオフとして点火電圧を点火プラグ3に印加して点火放電を発生させ、それ以降の点火信号がLレベルにあるときに点火プラグ3に印加されるコンデンサ242により点火プラグ3に印加されるバイアス電圧により、リーク電流を検出する。この場合の動作を、
図4Cに基づいて説明する。
【0045】
即ち
図4Cは、点火放電後のバイアス電圧を点火プラグに印可してイオン電流検出回路によりリーク電流を検出する場合を示している。
図4Cに示すように、ピストン40の下死点に対応する時刻tbより遅角側の時刻t1に於いて点火信号をLレベルからHレベルに切り替え、クランク角度が270[°]以降の時刻t2に於いて点火信号をHレベルからLレベルに切り替える。点火プラグ3は、時刻t2で点火放電するが、気筒100は休止気筒であり燃料は供給されていないので、時刻t2での点火放電によるイオンの発生はない。しかし、時刻t2での点火放電の後、時刻t3からクランク軸50の次の回転サイクルに於ける時刻t1まで、コンデンサ242によるバイアス電圧が点火プラグ3の第1の電極31に印可されているので、ピストン40の下死点近傍でシリンダ内圧力が最大負圧となるタイミングで突発的に発生するリークによるリーク電流ILは、イオン電流検出回路203により検出することができる。
【0046】
図4Cに示す動作の場合、前述の
図4Bに示す動作の場合のように点火信号オン時以降の誘導電圧である二次電圧が点火プラグ3に長時間印可されることはないので、点火コイル装置2等の発熱を抑えることができる。
【0047】
前述の
図4B、
図4Cに示す動作によりイオン電流検出回路203にて検出されたリーク電流ILは、電流増幅されてECU1内の信号取込部204へと伝達され、プラグ状態検出部205により、点火プラグ3にリークが発生しているか否かが判定される。
【0048】
次に、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置の具体的な動作について説明する。
図5は、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置の動作を示すフローチャートであって、所定の時間毎に繰り返される。
図5に於いて、ステップS501では、先ず気筒休止運転の指示が有るか否かの判定を行う。気筒休止運転を行なうか否かは、基本的には内燃機関の回転数、負荷状態、油温、水温等の条件で決定される。ステップS501で気筒休止運転の指示が有ると判定された場合は(YES)、ステップS502へと進む。ステップS502では燃料噴射停止指示を発生して燃料噴射弁6の燃料噴射を停止させ、ステップS503へと進む。
【0049】
ステップS503では、詳細は後述するが、ECU1にて記憶されている点火プラグ3の状態がリーク有りの状態かリーク無しの状態かの判定を行う。ここで判定を行う点火プラグ3の情報は、現時刻の前に記憶された点火プラグ3の状態を示す情報を利用することとなる。ステップS503にて点火プラグ3のリーク有りと判定した場合は(YES)、ステップS504へと進み、吸気バルブ4及び排気バルブ5の駆動を指示し、点火プラグの清浄を行う。尚、この処理は、点火プラグ3のリーク有りの状態が所定サイクル継続した場合に実施するようにしてもよい。一方、ステップS503にて点火プラグ3のリーク無しであると判定した場合は(NO)、ステップS505へと進み、吸気バルブ4及び排気バルブ5の停止を指示する。以上の処理を実施し、ステップS506へと進む。
【0050】
ステップS501で判定したように現時刻では気筒休止運転の指示中であるが、リークの有無を検出するために点火プラグ3による点火を実施する。そのため、ステップS506では、現時刻が予め実験等から得られる点火信号オン時の誘導電圧では点火放電しないシリンダ内圧力となるクランク角度のタイミングであるか否かの判定を行う。ステップS506での判定の結果、現時刻が点火信号オン時の誘導電圧では点火放電しないシリンダ内圧力となるクランク角度のタイミングであると判定した場合は(YES)、ステップS507へ進み、点火信号をLレベルからHレベルに切り替えて点火開始動作を行なう(
図4Bの時刻t1)。その結果、その時刻t1では点火信号オン時の誘導電圧で点火放電しない。更にオイル上がりの発生しやすいピストン40の下死点近傍の時刻tbでも
図4Bで説明したとおり点火放電は発生しないので、点火信号オン時の誘導電圧による放電電流は存在せず、リーク電流ILのみを検出することができ、点火プラグの状態を正確に判定することが可能となる。
【0051】
以上の処理を実施後、又は、ステップS506での判定の結果、現時刻は点火信号オン時の誘導電圧では点火放電しないシリンダ内圧力となるクランク角度のタイミングではないと判定した場合は(NO)、ステップS508へと進む。ステップS508では、現時刻はクランク角度が点火信号終了の角度のタイミング、即ち点火放電のタイミングであるか否かの判定を行う。尚、前述したように、ピストンの下死点近傍の時刻tbを含む点火信号のHレベルの後半の期間に於いては、2次コイル21に発生している二次電圧が点火プラグ3に印加されているが、この二次電圧では点火プラグ3に点火放電は発生しない。
【0052】
ステップS508での判定の結果、現時刻はクランク角度が点火信号終了の角度のタイミングであると判定した場合は(YES)、ステップS509へ進み、点火信号をHレベルからLレベルへ切り替える(
図4Bの時刻t8)。これにより、スイッチング素子250が非導通となって2次コイル22に負極性の高圧の点火電圧が発生し、オイル上がりが発生し易いピストン40の下死点近傍の時刻tbでバイアス電圧(100[V]程度)より大きい点火電圧が点火プラグ3に印可され、リーク電流の検出感度が高くなる。以上の処理実施後、又は、ステップS508での判定の結果、現時刻はクランク角度が点火信号終了に対応する角度のタイミングでないと判定した場合に(NO)、ステップS510へと進む。
【0053】
尚、図示していないが、前述の点火信号の発生処理(LレベルからHレベルへの切り替え)や点火信号の終了処理(HレベルからLレベルへの切り替え)は、吸気下死点と膨張下死点の両方、つまり内燃機関の1サイクルに2回実施してもよい。これにより点火プラグ3の汚損状態を検出する機会が増え、より早く点火プラグの汚損を検出することができる。
【0054】
次に、ステップS510では、現時刻はクランク角が点火信号発生中(点火信号がHレベル)で且つ前述した点火信号発生の後半(
図4Bの時刻tb以降)であるか否かの判定を行ない、その条件が成立の場合は(YES)、ステップS512へと進む。一方、ステップS510での判定の結果、その条件が不成立の場合は(NO)、ステップS511へと進み、現時刻はクランク角度が点火放電後の角度であるタイミングか否かの判定を行う。点火タイミング(
図4Bに於ける時刻t2)から、LC共振によるノイズ電流N3が検出されるタイミング(
図4Bに於ける時刻t3)までの時間が点火放電持続時間となる。従って、ステップS511では、LC共振によるノイズ電流N3が検出された後のタイミングを点火放電後と判定する。ステップS511での判定の結果、点火放電後であると判定した場合は(YES)、ステップS513へと進む。
【0055】
ステップS513では、前述したように、ECU1はイオン電流検出回路203で検出されたイオン電流信号を信号取込手段204で取得しているため、この取得したイオン電流信号から、イオン電流ピーク値Ipk2を取得する。但し、イオン電流ピーク値に限られるものではなく、イオン電流積算値を用いてもよい。短時間のノイズによりイオン電流ピーク値が大きくなるので、イオン電流信号を誤検出することを防止できる。
【0056】
次に、ステップS517に於いて、このイオン電流ピーク値Ipk2がリーク判定閾値TH2より大きいか否かを判定し、イオン電流ピーク値Ipk2がリーク判定閾値TH2より大きければ(YES)、ステップS518に於いて、点火プラグ3の状態がリーク有りの状態(プラグ異常)であると記憶して処理を終了し、イオン電流ピーク値Ipk2がリーク判定閾値TH2より小さければ(NO)、ステップS519に於いて、点火プラグ3の状態がリーク無しの状態(プラグ正常)であると記憶して処理を終了する。
【0057】
一方、ステップS510からステップS512へと進んだ場合は、ステップS512では、前述したように、ECU1はイオン電流検出回路203で検出されたイオン電流信号を信号取込手段204で取得しているため、この取得したイオン電流信号から、イオン電流ピーク値Ipk1を取得する。但し、イオン電流ピーク値に限られるものではなく、イオン電流積算値を用いてもよい。短時間のノイズによりイオン電流ピーク値が大きくなるので、イオン電流信号を誤検出することを防止できる。
【0058】
次に、ステップS514に於いて、このイオン電流ピーク値Ipk1がリーク判定閾値TH1より大きいか否かを判定し、イオン電流ピーク値Ipk1がリーク判定閾値TH1より大きければ(YES)、ステップS515に於いて、点火プラグ3の状態がリーク有りの状態(プラグ異常)であると記憶して処理を終了し、イオン電流ピーク値Ipk1がリーク判定閾値TH1より小さければ(NO)、ステップS516に於いて、点火プラグ3の状態がリーク無しの状態(プラグ正常)であると記憶して処理を終了する。
【0059】
又、図示していないが、イオン電流ピーク値Ipk1と点火プラグ3に印加されている電圧値Vpk1とから絶縁抵抗値RL*(=Vpk*/Ipk*)を算出し、その値が所定閾値より小さいときにリーク有りと判定するようにしてもよい。同様に、イオン電流ピーク値Ipk2と点火プラグ3に印加されている電圧値Vpk2とから絶縁抵抗値RL*(=Vpk*/Ipk*)を算出し、その値が所定閾値より小さいときにリーク有りと判定するようにしてもよい。
【0060】
電圧値Vpk1は、
図4Bに於ける時刻tbのタイミングでの二次電圧であり、点火信号がLレベルからHレベルへ切り替えられた時刻1と予め実験した二次電圧との関係から予測される。又、電圧値Vpk2歯、
図4Bに於ける時刻t3のタイミングでの二次電圧であり、前述した点火放電後に印加されるバイアス電圧(100[V]程度)となる。下死点の時刻tbでの絶縁抵抗値RL2と下死点経過後の絶縁抵抗値RL1との差が大きい場合は、オイル上がりの多い下死点の時刻tbで瞬間的にリークが発生している状態(プラグ汚損初期)であると記憶し、絶縁抵抗値RL2と絶縁抵抗値RL1との差が小さい場合は、断続的にリークが発生している状態(プラグ汚損進行)であると記憶してもよい。
【0061】
以上のようにして記憶した点火プラグ3の状態を示す情報に基づいて、前述したステップS503に於いて点火プラグ3のリーク有無の判定を行い、ステップS504でバルブ駆動を指示し、点火プラグの清浄が行われることとなる。イオン電流ピーク値が大きく(絶縁抵抗値が小さい)、プラグ汚損進行状態の場合は、バルブ駆動サイクルを長く設定するようにしてもよい。これによりプラグの清浄効果が増大する。
【0062】
又、前述の記憶した点火プラグ3の状態を示す情報に基づいて、ステップS501にて気筒休止の継続を行なうか否かの指示の判定を行ってもよい。イオン電流のピーク値や絶縁抵抗値から点火プラグ3の汚損の初期段階では気筒休止を指示しないことで、点火プラグ3の汚損進行を防ぐことができる。この判定により気筒休止継続時間を予め短めに設定しなくてもよくなり、気筒休止継続時間を長くできるので、燃費を向上させることがする。
【0063】
以上述べたこの発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置によれば、気筒休止運転中に於いて、前述したように、ピストン40の下死点近辺のタイミングのような休止気筒のシリンダの負圧が大きくなるタイミングのときでも点火放電しない二次電圧が点火プラグ3に印加されるので、放電電流をリーク電流と誤検出することなく、気筒休止機構を備える内燃機関の点火プラグ状態の異常を精度良く検出することができる。
【0064】
又、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置によれば、
図4Bに示すように、ピストン40の下死点近傍の時刻tbでは、通常の点火放電後にコンデンサ242の充電電圧により印可されるバイアス電圧(100[V]程度の一定電圧)より高い電圧である二次電圧を点火プラグ3の第1の電極31に印加することができるので、小さなリーク電流レベルでも確実に検出することが可能となる。従って、オイル上がり等により点火プラグ3にリーク経路34が形成し始める早い段階でリーク電流を検出することが可能となるため、点火プラグ3の清浄動作や気筒休止継続禁止等の対処により点火プラグ3の汚損を防止し、気筒休止運転から通常の運転に復帰したときの失火を防止することができる。
【0065】
又、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置によれば、点火制御部201は、
図4Bに示すように、予め実験等から得られる点火信号オン時の誘導電圧で点火放電しないシリンダ内圧力で点火信号をHレベルにする(時刻t1)ため、点火信号オン時の誘導電圧による放電電流をリーク電流と誤検出することなく、気筒休止機構を備える内燃機関の点火プラグ状態の異常を精度良く検出することができる。
【0066】
更に、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置によれば、
図4Cに示すように点火放電後(
図4Cに於ける時刻t3以降)のイオン電流検出回路203の出力信号に基づいてリーク状態を検出するようにすれば、点火信号オン時の誘導電圧による放電電流をリーク電流と誤検出することなく、ピストンの下死点近傍の幅広い範囲でリーク状態を検出することができる。
【0067】
又、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置によれば、点火制御部201は、点火信号の発生処理や終了処理を、ピストン40の吸気下死点と膨張下死点の両方で(つまり内燃機関の燃焼行程の1サイクルに2回)実施することができるため、プラグ状態の検出の機会が増え、より早く点火プラグの汚損を検出することができる。
【0068】
又、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置によれば、イオン電流検出回路203の出力信号のピーク値に基づいてリーク状態を検出するようにすれば、リーク有無の検出に加え、前述した絶縁抵抗値を算出することもできる。
【0069】
又、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置によれば、イオン電流検出回路203の出力信号の積算値に基づいてリーク状態を検出するようにすれば、短時間のノイズでイオン電流ピーク値が大きくなり、リーク誤検出することを防止できる。
【0070】
更に、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置によれば、気筒休止制御部206は、プラグ状態検出部205でリーク有と判定された時に吸気バルブ4及び排気バルブ5を駆動し、点火プラグ3のリークを清浄することができるため、点火プラグ汚損の進行や気筒休止から復帰時の失火を防止することができる。
【0071】
又、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置によれば、気筒休止制御部206は、イオン電流のピーク値や絶縁抵抗値に基づいて点火プラグの汚損状態を判定し、点火プラグ汚損初期段階で気筒休止を指示しないことで、プラグ汚損進行を防ぐことができ、更に、その判定により気筒休止継続時間を予め短めに設定しなくてもよくなり、気筒休止継続時間を長くできる分、燃費を向上させることができる。
【0072】
又、この発明の実施の形態1による内燃機関のリーク検出装置によれば、イオン電流検出回路203を備えているので、気筒休止指示中以外では、燃焼に伴い発生するイオン電流を検出し、燃焼状態の検出も実施することができる。
【0073】
実施の形態2.
前述の実施の形態1では、主に点火信号の発生タイミングや終了タイミング、及びイオン電流の検出タイミングの調整により、点火信号オン時の誘導電圧による放電電流をリーク電流として誤検出することを防止するようにしたが、この発明の実施の形態2による内燃機関のリーク検出装置では、点火信号発生時のイオン電流ピーク値が点火信号オン時の放電閾値TH3より小さくリーク判定閾値TH1より大きい場合に、リーク有りの判定を行うようにしたものである。その他の構成、及び処理の内容は実施の形態1の場合と同様である。
【0074】
図6は、この発明の実施の形態2による内燃機関のリーク検出装置の動作を示すフローチャートである。基本的な流れは、前述の実施の形態1に於ける
図5に示すフローチャートの場合と同じであるが、
図6に示すフローチャートのステップS530とステップS531が
図5のフローチャートとは異なる。
図6に於いて、ステップS550では点火信号が発生中か否かを判定し、点火信号発生中であれば(YES)、ステップS512へ進み、イオン電流ピーク値Ipk1を検出する。
【0075】
図4Eは、この発明の実施の形態2による内燃機関のリーク検出装置のリーク検出装置の動作を説明するタイミングチャートである。失火に影響を及ぼし始める点火プラグの絶縁抵抗値は約10[MΩ]であるため、
図4Eに示すように、時刻t1での点火信号オン時の誘導電圧が1[kV]であるとすると、流れるリーク電流ILは、
IL=1[kV]/10[MΩ]=0.1[mA]
となる。
【0076】
一方、前述の
図4Dに示すように、時刻t1での点火信号オン時の誘導電圧による放電電流ILは1[mA]〜5[mA]のレベルで発生する。従って、
図6のステップS531にて、イオン電流ピーク値Ipk1が点火信号オン時の放電閾値TH3(例えば、1[mA])より小さく、リーク判定閾値TH1(例えば、0.1[mA])より大きい場合に(YES)、ステップS515にてリーク有りと判定し、その条件が成立しない場合に(NO)、ステップS516にてリーク無し(プラグ正常)と判定する。
【0077】
以上述べたこの発明の実施の形態2による内燃機関のリーク検出装置によれば、プラグ状態検出部205は、点火信号発生中のイオン電流検出回路203の出力信号のピーク値が所定値以下のときに点火プラグのリーク状態を検出するため、点火信号オン時の誘導電圧による放電電流をリーク電流として誤検出することがなく、点火信号発生時刻t1をピストン40の下死点近傍のオイル上がりが発生しやすいタイミングに設定することができ、より低いリーク電流レベルからリーク状態を検出することができる。
【0078】
実施の形態3.
前述の実施の形態1及び実施の形態2では、イオン電流ピーク値や積算値から点火プラグのリーク発生の有無を判定するようにしたが、実施の形態3では、点火放電持続時間もリーク発生の有無の判定に利用するようにしたものである。その他の構成、及び処理の内容は、実施の形態1の場合と同様である。
【0079】
図4Fは、この発明の実施の形態3による内燃機関のリーク検出装置のリーク検出装置の動作を説明するタイミングチャートである。オイル上がりによる液滴等により、点火プラグ3の第1の電極31と第2の電極32との間の放電経路が変化する、例えば長くなる等の変化を生じる可能性がある。
図4Fに於いて、オイル上がりが無い場合は、点火放電後の二次電圧と二次電流は夫々一点鎖線で示すように変化するが、オイル上がりが発生して放電経路が長くなると、点火放電後の二次電圧と二次電流は夫々実線で示すように変化する。放電経路が長くなると点火電圧(二次電圧)(実線)は、放電経路が短い場合の点火電圧(二次電圧)(一点鎖線)より高くなる。そうすると、点火コイル装置2に蓄積されるエネルギーは同じであるため、オイル上がりが無い場合の点火放電持続時間[t2〜t3´]に対して、オイル上がりが発生して放電経路が長くなった場合の点火放電持続時間[t2〜t3]は短くなる。
【0080】
図7は、この発明の実施の形態3による内燃機関のリーク検出装置の動作を示すフローチャートである。
図7に示す処理の基本的な流れは、前述の実施の形態1の場合の
図5と同じであるが、
図7のステップS550と、ステップS551が異なる。
【0081】
点火タイミング(
図4Fの時刻t2)からLC共振によるノイズ電流N3、N3´が検出されるタイミング(
図4Fの時刻t3、t3´)までの時間が、点火放電持続時間T2となる。従って、
図7のステップS511にてLC共振によるノイズ電流N3が検出された後のタイミングを点火放電後と判定すると共に、ステップS550に於いて点火放電持続時間T2を検出する。LC共振ノイズ発生タイミングAPと点火タイミングIGTから点火放電持続時間T2を[T2=AP−IGT]により算出して取得することになる。
【0082】
そして、ステップS551に於いて、取得した点火放電持続時間T2を点火放電持続時間閾値TH4と比較し、且つイオン電流ピーク値Ipk2をイオン電流ピーク閾値TH2と比較し、[Ipk2>TH2又はT2<TH4]であれば(YES)、ステップS518において、点火プラグ状態がリーク有りであると記憶し、[Ipk2>TH2又はT2<TH4]でなければ(NO)、ステップS519において、点火プラグ状態がリーク無しであると記憶し、処理を終了する。
【0083】
以上述べたこの発明の実施の形態3による内燃機関のリーク検出装置によれば、プラグ状態検出部205は、点火放電持続時間検出部を備えているので、点火プラグ3にリーク経路ができる前であっても、ピストン40の下死点近傍でのオイル上がりが放電経路に影響を及ぼしているか否かを検出するため、予兆段階から点火プラグ3のリーク状態を検出することができる。
【0084】
又、図示していないが、点火放電持続時間T2が点火放電持続時間閾値TH5より長く(T2>TH5)、イオン電流ピーク値Ipk1がイオン電流ピーク閾値TH1より大きくイオン電流ピーク値Ipk2がイオン電流ピーク閾値TH2より大きい場合は、正規放電ができていない点火プラグ状態、即ち、点火プラグ3の第1の電極31と第2の電極32間にオイルブリッジができ、絶縁抵抗値が低い状態である等との判定を行うこともできる。
【0085】
ここで、前述した点火放電持続時間閾値TH4や点火放電持続時間閾値TH5は、予め実験等から得られる値に設定してもよいし、点火プラグ汚損の少ない状態と考えられる気筒休止突入直後の点火放電持続時間T2の平均値を用いてもよい。
【0086】
この発明の内燃機関のリーク検出装置は、内燃機関を利用する自動車、二輪車、船外機、他特機等に搭載され、内燃機関を効率良く運転できるようにし、燃料枯渇問題、環境保全に役立つものである。
【0087】
尚、以上述べたこの発明による内燃機関のリーク検出装置は、前述の実施の形態1から実施の形態3に限られるものではなく、これ等の実施の形態を適宜組み合わせることが可能である。
【0088】
以上述べたこの発明の実施の形態1から3による内燃機関のリーク検出装置は、下記の発明のうちの少なくとも一つの発明を具体化したものである。
【0089】
(1)気筒休止運転の機能を備えた内燃機関の点火プラグのリーク状態を検出するようにした内燃機関のリーク検出装置であって、
内燃機関の気筒に設けられた吸気バルブと排気バルブを駆動するバルブ駆動機構と、
前記前記内燃機関の気筒に設けられた燃料噴射弁と、
前記気筒休止運転を行うとき、運転を休止する気筒の前記バルブ駆動機構と前記燃料噴射弁の動作停止を指示する気筒休止制御部と、
前記気筒休止制御部の前記指示に基づき前記燃料噴射弁と前記バルブ駆動機構の動作が停止しているときに、前記気筒の燃焼室内に配設された点火プラグに対して少なくとも1回の点火信号を発生させる点火制御部と、
前記点火信号に基づいて前記点火プラグを点火放電させ、前記点火放電により前記燃焼室内の可燃混合気が燃焼したとき前記燃焼室内に発生するイオンに基づく電気量を検出するイオン電流検出回路を備えた点火コイル装置と、
前記点火プラグのリーク状態を検出するプラグ状態検出部と、
を備え、
前記プラグ状態検出部は、前記点火コイル装置により前記点火放電するタイミング以外のタイミングで発生する前記イオン検出回路の出力信号に基づいて、前記点火プラグのリーク状態を検出する、
ことを特徴とする内燃機関のリーク検出装置。
この発明による内燃機関のリーク検出装置によれば、気筒休止中に発生する点火信号オン時の誘導電圧により点火放電するタイミング以外のイオン電流検出回路の出力信号に基づいて、リーク有無を判定するため、点火信号オン時の誘導電圧による放電電流をリーク電流と誤検出することなく、気筒休止機構を備える内燃機関の点火プラグ状態の異常を精度良く検出することができる。
【0090】
(2)前記点火制御部は、前記点火信号の発生開始時に前記点火プラグに印加される電圧では前記点火放電が発生しないシリンダ内圧力となるタイミングで、前記点火信号を発生させることを特徴とする上記(1)に記載の内燃機関のリーク検出装置。
この発明によれば、点火制御部は、予め実験等から得られる点火信号オン時の誘導電圧で点火放電しないシリンダ内圧力で点火信号を発生させるため、点火信号オン時の誘導電圧による放電電流をリーク電流と誤検出することなく、気筒休止機構を備える内燃機関の点火プラグ状態の異常を精度良く検出することができる。
【0091】
(3)前記点火制御部は、前記気筒に設けられたピストンの吸気下死点近傍と膨張下死点近傍とのうち少なくとも一方に対応するタイミングで、前記点火信号を発生させることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の内燃機関のリーク検出装置。
この発明によれば、点火制御部は、点火信号発生や終了処理を吸気下死点と膨張下死点両方(1サイクルに2回点火)で実施することができるため、プラグ状態検出の機会が増え、より早く点火プラグの汚損を検出することができる。
【0092】
(4)前記プラグ状態検出部は、前記点火信号の発生期間の後半と前記点火放電の後とのうち少なくとも一方のタイミングで前記イオン検出回路から出力される出力信号に基づいて、前記点火プラグのリーク状態を検出することを特徴とする上記(1)から(3)のうちの何れか一つに記載の内燃機関のリーク検出装置。
この発明によれば、プラグ状態検出部は、下死点近傍で点火信号発生後半の点火放電しない点火信号オン時の誘導電圧(後述する点火放電後のバイアス電圧100[V]程度の一定電圧より高い電圧)が点火プラグに印加されるタイミングのイオン電流検出回路の出力信号に基づいてリーク状態を検出する。よって、より高い電圧を点火プラグ3へ印加でき、低いリーク電流レベルから検出可能となるため、早い段階でリークを検出し、点火プラグ清浄や気筒休止継続禁止等の対処により気筒休止から復帰時の失火を防止することができる。また、点火放電後のイオン電流検出回路の出力信号に基づいてもリーク状態を検出するため、点火信号オン時の誘導電圧による放電電流をリーク電流と誤検出することなく、下死点近傍の幅広い範囲でリーク状態を検出することができる。
【0093】
(5)前記プラグ状態検出部は、前記点火信号の発生中に前記イオン電流検出回路から出力される出力信号のピーク値が第1の所定値
より小さいときに、前記点火信号の発生中に前記イオン電流検出回路から出力される前記出力信号に基づいて前記点火プラグのリーク状態
の判定を可能とするように構成されていることを特徴とする上記(1)又は(3)に記載の内燃機関のリーク検出装置。
この発明によれば、プラグ状態検出部は、点火信号発生中のイオン電流検出回路の出力信号のピーク値が所定値以下のときに点火プラグのリーク状態を検出するため、点火信号オン時の誘導電圧による放電電流をリーク電流と誤検出することなく、点火信号発生タイミング(点火信号オン時の誘導電圧MAX1[kV])を下死点近傍のオイル上がりが発生しやすいタイミングに設定でき、より低いリーク電流レベルからリーク状態を検出することができる。
【0094】
(6)前記プラグ状態検出部は、前記点火放電の後に前記イオン電流検出回路の出力信号のピーク値が第2の所定値
より大きいとき、前記点火プラグの状態がリーク有りの状態であると判定するように構成されていることを特徴とする上記(1)から(
4)のうちの何れか一つに記載の内燃機関のリーク検出装置。
この発明によれば、イオン電流検出回路の出力信号のピーク値に基づいてリーク状態を検出するため、リーク有無の検出に加え、点火信号オン時の誘導電圧との関係から点火プラグの絶縁抵抗値を算出することもできる。
【0095】
(7)前記プラグ状態検出部は、前記点火放電の後に前記イオン電流検出回路の出力信号の積算値が所定値
より大きいとき、前記点火プラグの状態がリーク有りの状態であると判定するように構成されていることを特徴とする上記(1)から(
4)のうちの何れか一つに記載の内燃機関のリーク検出装置。
この発明によれば、イオン電流検出回路の出力信号の積算値に基づいてリーク状態を検出するため、短時間のノイズでイオン電流ピーク値が大きくなり、リーク誤検出することを防止できる。
【0096】
(8)前記プラグ状態検出部は、前記イオン検出回路の出力信号に基づいて点火放電持続時間を検出する点火放電持続時間検出部を備え、前記点火放電持続時間検出部で検出された点火放電持続時間と前記点火制御部により点火放電するタイミング以外の前記イオン検出回路の出力信号とに基づいて前記点火プラグのリーク状態を検出することを特徴とする上記(1)から(7)のうちの何れか一つに記載の内燃機関のリーク検出装置。
この発明によれば、プラグ状態検出部は、点火放電持続時間検出手段を備えたので、点火プラグにリーク経路ができる前であっても、下死点近傍のオイル上がりが放電経路に影響を及ぼしているか否かを検出し、予兆段階からリーク状態を検出することができる。
【0097】
(9)前記気筒休止制御部は、前記プラグ状態検出部によりリーク有りと判定されたときに前記吸気バルブ及び前記排気バルブを駆動して前記点火プラグのリークを清浄することを特徴とする上記(1)から(8)のうちの何れか一つに記載の内燃機関のリーク検出装置。
この発明によれば、気筒休止制御部は、プラグ状態検出部でリーク有りと判定された時に吸排気バルブを駆動し、点火プラグのリークを清浄するため、プラグ汚損の進行や気筒休止から復帰時の失火を防止することができる。
【0098】
(10)前記気筒休止制御部は、前記プラグ状態検出部によりリーク有りと判定されたときに前記気筒休止運転の継続を禁止することを特徴とする上記(1)から(9)のうちの何れか一つに記載の内燃機関のリーク検出装置。
この発明によれば、気筒休止制御部は、イオン電流ピーク値や絶縁抵抗値からプラグ汚損初期段階で気筒休止を指示しないことで、プラグ汚損進行を防ぐことができる。また、この判定により気筒休止継続時間を予め短めに設定しなくてもよくなり、気筒休止継続時間を長くできる分、燃費を向上させることができる。