(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記皮膚および/または皮下組織の疾患が炎症、毛包傷害、皮膚アトロフィー、打撲傷、熱傷、口唇炎、乾燥肌、潮紅、脱毛症、色素増加症、色素脱失症、浸潤、線維症、注射部位反応、薬剤の血管外漏出、爪の変化、光線過敏症、掻痒症、痒み、皮剥け、落、にきび、ざ瘡痒、放射線照射に伴う皮膚炎、多形性紅斑、手足皮膚反応、皮膚の損傷、褥瘡、皮膚線条、毛細血管拡張症、潰瘍および蕁麻疹からなる群より選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【背景技術】
【0002】
[0002] 皮膚は、人体で最大の器官であり、身体と環境との間の主要な障壁であり、病原体ならびに物理的および化学的なストレスまたは刺激からの第1の防衛線である。皮膚は、物理的および化学的な保護をもたらすのみならず、効果的に受動的および能動的な免疫応答を引き起こし、それによって人体を防護する免疫器官でもある。
【0003】
[0003] 外側から内側に、皮膚は表皮、真皮および皮下組織から構成される三層構造を有する。最外層の表皮は保護機能を担う。表皮層の内側の真皮層は皮膚の最も重要な部分であり、表皮の支持を担い、様々な線維を交絡して支持網を形成し、また、血管、リンパ管、神経、皮脂腺、汗腺および毛包などは真皮層に分配される。皮膚の最内層は皮下組織であるが、この組織は、広義には脊椎動物の真皮の深層を指し、狭義には真皮と真皮下の骨および筋肉との間の脂肪結合組織を指す。主に脂肪細胞により形成される皮下組織は、真皮との明瞭な境界線を持たず、熱の遮断、振動の吸収ならびにエネルギー源の供給を担う。皮下組織は脂肪代謝の主要部位でもある。
【0004】
[0004] 皮膚および/または皮下組織は、先天的または後天的な要因に起因して患者の不快感をもたらす様々な疾患を具えることがあり、外観の変化は患者に心理的な負担を生じる。しかし、現在採用されている皮膚および/または皮下組織の薬剤はステロイドまたは酸性薬剤であり、誤った使用により大きな副作用が生じ得ることから、既存の薬剤の使用は適切な治療ではない。
【0005】
[0005] 皮膚および/または皮下組織の疾患では、放射線療法により生じる傷害は重要な類型の1つであり、放射線療法は、常に放射性皮膚炎、疲労、放射性肺炎やリンパ浮腫などの副作用を誘発する(McCormickら、1989、Int J Radiat Oncol Biol Phys.、17:1299-1302;Lingosら、1991、Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys.、21:355-360;Taylorら、1995、Int J. Radiat. Oncol. Biol. Phys.、31:753-764;Gorodetskyら、1999、Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys.、45:893-900;Ericksonら、2001、J. Natl. Cancer Inst、93:96-111)。一例としての乳癌では、約50%〜60%の乳癌患者が手術後の放射線療法を要する。手術的切除および全身化学療法の後、患者には常に脱毛、好中球減少、悪心および嘔吐などの副作用が発生する。その結果、患者は恐怖のために、治療を忌避するか拒否する場合がある。医学界は、放射線療法の副作用を低減するために、治療機器および技術を改良してきた。放射線照射により生じる皮膚紅斑および色素沈着、ならびに少数の患者にある潰瘍などの重大な副作用については、医学界は常にAmifostineなどのある種の放射線防護剤を使用しようと試みる(Yuhasら、1980、Cancer Clin. Trials.、3:211-216)。しかし、該薬剤は、付随する強い副作用、不明瞭な効果または高価格により、実際の医療行為にはほぼ使用されない。放射線療法を受ける癌患者に利益をもたらすために、放射線防護または放射線作用増強の効果を有し、放射線量を低減させることのできる薬剤は今なお求められている。
【0006】
[0006] ジュズダマ(Job’s tears)とも呼ばれるハトムギ(Coix lachryma-jobi L. var. ma-yuen Stapf)種子は、伝統的な漢方薬(TCM)の一つであり、いぼ(warts)、あかぎれ肌(chapped skin)、リウマチ(rheumatism)および神経痛(neuralgia)を治療するための抗炎症剤として長らく使用されてきた(Li, S.C. Pen-t'sao kangmu(Systematic Pharmacopoeia);China、1596)。最近の研究により、殻なしハトムギ(dehulled adlay, DA)はラットの腸管の微生物叢(microbiota)を調節することが示された(Chiang, W.、Cheng, C.、Chiang, M.、Chung, K. T. J.、Agric. Food Chem. 2000、48、829-832)。また、ハトムギの抗炎症効果および抗酸化効果がin vitroでも解明された(Lee, M. Y.、Tsai, S. H.、Kuo, Y. H.、Chiang, W. Food Sci. Biotechnol. 2008、17、1265-1271;Kuo, C. C.、Shih, M. C.、Kuo, Y. H.、Chiang, W. J. Agric. Food Chem. 2001、49、1564-1570)。異なる由来からのハトムギ種子中の効力のある種々の成分の含量が定量された(Wu, T. T.、Charles, A. L.、Huang, T. C. Food Chem. 2007、104、1509-1515)。ハトムギ種子からはいくつかのフェノール性抗酸化物質が単離され、抽出された生理活性成分が加工処理の間に安定であることが見出された(Hsu, H. Y.、Lin, B. F.、Lin, J. Y.、Kuo, C. C.、Chiang, W. J. Agric. Food Chem. 2003、51、3763-3769)。アッセイ案内分離法(assay-guided isolation)において、ハトムギ籾殻(adlay hull, AH)からリグナン(Lignans)およびフェノール性化合物が単離された(Kuo, C. C.、Shih, M. C.、Kuo, Y. H.、Chiang, W. J. Agric. Food Chem. 2001、49、1564-1570)。ハトムギ種子の抗炎症性画分からはフラバノンおよびいくつかのフェノール酸が単離された(Huang, D. W.、Kuo, Y. H.、Lin, F. Y.、Lin, Y. L.、Chiang, W. J. Agric. Food Chem. 2009、57、2259-2266;Huang, D. W、Chung, C. P.、Kuo, Y. H.、Lin, Y. L.、Chiang, W. J. Agric. Food Chem. 2009、57、10651-10657;Chen, H. J.、Chung, C. P.、Chiang, W.、Lin, Y. L. Food Chem. 2011、126、1741-1748)。ハトムギ種皮(adlay testa, AT)中のフェノールアルコールは抗アレルギー活性を持つことが報告された(Chen, H. J.、Shih, C. K.、Hsu, H. Y.、Chiang, W. J. Agric. Food Chem. 2010、58、2596-2601)。さらに、殻なしハトムギおよびハトムギふすま(adlay bran, AB)が抗炎症経路を介して発癌を遅延させることが示され(Shih, C. K.、Chiang, W.、Kuo, M. L. Food Chem. Toxicol. 2004、42、1339-1347;Li, S. C.、Chen, C. M.、Lin, S. H.、Chiang, W.、Shih, C. K. J. Sci. Food Agric. 2011、91、547-552)、さらに進んだ研究ではフェルラ酸(ferulic acid)が抗炎症の活性成分と見なされた(Chung, C. P.、Hsu, H. Y.、Huang, D. W.、Hsu, H. H.、Lin, J. T.、Shih, C. K.、Chiang, W. J. Agric. Food Chem. 2010、58、7616-7623)。
【0007】
[0007] ハトムギ種子の多くの使用が報告されているものの、ハトムギ種子抽出物の様々な適用はまだ開発されていない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0028] 本発明はハトムギふすま(bran)抽出物を含む組成物を提供し、該ハトムギふすま抽出物はハトムギふすまのC1〜C7アルコール抽出物(A)とハトムギふすまの超臨界流体二酸化炭素抽出物(B)とを含み、ハトムギふすまのC1〜C7アルコール抽出物(A)とハトムギふすまの超臨界流体二酸化炭素抽出物(B)との重量比は約3:1〜約1:4である。
【0016】
[0029] 本発明は、本発明の様々な実施形態、実施例、および関連する記載を伴う化学図式及び表に対する詳細な記載を参照することにより、より容易に理解することができる。本発明の化合物、組成物および/または方法を公開し説明する前に、特許請求の範囲によって具体的に別段の指示がない限り、本発明は、特別な調製方法、担体もしくは製剤、または本発明の化合物を局所、経口もしくは非経口の投与を意図した製品もしくは組成物に製剤化する特定の態様に限定されないことは理解されよう。そのようなものは当然変更し得ると、当業者が十分承知しているためである。また、本明細書で使用されている専門用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、本発明の技術的範囲の限定を意図しない。
【0017】
[0030] 本願の開示に従って利用するように、以下の用語は、別段の指示がない限りは以下の意味を持つと理解されるものとする。
【0018】
[0031] 本明細書では、範囲を「約」1つの特定の値からおよび/または「約」別の特定の値までと表現することが多い。そのような範囲を表現する場合、実施形態は、一方の特定の値からおよび/または他方の特定の値までを含む。同様に、「約」という言葉を使用して値を概算として表現する場合、特定の値は別の実施形態を成すことが理解されよう。さらに、各範囲の端点は、全て顕著性を有し、一方の端点と他方の端点は関連することと独立することとのどちらの上でも意味があることが理解されよう。
【0019】
[0032] 「任意選択の」または「任意選択により」は、次いで記載された事象または状況が起こり得るか起こり得ないことを意味し、その事象または状況が起こる事例と起こらない事例とが記載に含まれることを意味する。例えば、「任意選択により薬剤を含む」という言い回しは、薬剤が存在し得るか存在し得ないことを意味する。
【0020】
[0033] 本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するように、単数形の「一」および「該」、「前記」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り複数の指示物を含むことに留意しなければならない。ゆえに、文脈によって別段の必要がない限り、単数形の用語は複数を含み、複数形の用語は単数を含むものとする。
【0021】
[0034] 本明細書で使用する「対象」という用語は、任意の動物、好ましくは哺乳類動物、より好ましくはヒトを示す。対象の例としては、ヒト、非ヒト霊長類動物、齧歯類動物、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、イヌおよびネコが挙げられる。
【0022】
[0035] 本明細書に示す活性成分の「有効量」という用語は、遺伝子発現、タンパク質機能や特定の型の応答の誘導などといった所望の機能の所望の調節を提供するために十分な成分の量を意味する。下記に指摘するように、確実な必要な量は対象によって異なり、対象の病態、体調、年齢、性別、種および体重、ならびに組成物の特有のアイデンティティおよび配合などに依存するであろう。投薬計画は最適な治療反応を誘発するように適合させてもよい。例えば、いくつかの分割用量を毎日投与してもよく、治療状況の緊急度により表示される通りに相応に投与量を低減してもよい。したがって、正確な「有効量」を特定することはできない。しかし、当業者は、通常の実験のみを使用して、適切な有効量を決定することができる。
【0023】
[0036] 本明細書で使用する「治療する」または「治療」という用語は、そのような用語が適用される障害、疾患もしくは状態、またはそのような障害、疾患もしくは状態の1つもしくは複数の症状を、好転、軽減、進行阻害または改善することを示す。
【0024】
[0037] 本明細書で使用する「担体」または「賦形剤」という用語は、それ自体は治療剤ではなく、対象に治療剤を送達するための担体および/もしくは希釈剤および/もしくはアジュバントまたは媒剤として使用されるか、または製剤に添加して、取り扱いもしくは保存特性を高めるか組成物の単位用量を経口投与に適したカプセル剤や錠剤などの単位用量へ形成するのを可能または容易にする、任意の物質を指す。適した担体または賦形剤は、医薬製剤または食品の製造分野の当業者によく知られている。担体または賦形剤としては、緩衝剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、粘着剤、湿潤剤、ポリマー、滑沢剤、流動促進剤、不快な味または匂いをマスキングまたは中和するために添加する物質、香味料、染料、芳香剤、および組成物の外観を改善するために添加する物質を実例として挙げることができるが、これらに限定されない。許容される担体または賦形剤としては、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、重炭酸塩緩衝液、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、炭酸マグネシウム、タルク、ゼラチン、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、デキストリン、マンニトール、ソルビトール、乳糖、ショ糖、デンプン、ゼラチン、セルロース材(アルカン酸のセルロースエステルやセルロースアルキルエステルなど)、低融点ワックスココアバター、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば血清アルブミン)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、塩化ナトリウムまたは他の塩、リポソーム、マンニトール、ソルビトール、グリセロールまたは粉末、ポリマー(ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールやポリエチレングリコールなど)および他の薬学的に許容される材料が挙げられる。担体は、治療剤の薬理活性を破壊するべきではなく、薬剤の治療量を送達するのに十分な用量を投与した場合に、非毒性であるべきである。
【0025】
[0038] 本発明による組成物はハトムギふすま抽出物を含む。本発明によるハトムギふすまは、好ましくは殻なしハトムギ種子から得る。本明細書で使用する「殻なしハトムギ種子」という用語は、籾殻、種皮(testas)、外皮(coverings)、殻(shells)または莢(pods)のないハトムギの種子を指す。ハトムギ種子からの籾殻、外皮、殻または莢の取り除き方は、この分野の当業者によく知られている。一般に、殻なしハトムギ種子はふすまと胚乳(endosperm)とを含み、殻なしハトムギ種子からのふすまの取り方は、この分野の当業者によく知られている。
【0026】
[0039] この発明で指し示すハトムギ種子は具体的に限定されない。好ましくは、ハトムギはGramineae科、Panicoideae亜科、Coix属、または、Poales目、Poaceae科、Coix属に属する。より好ましくは、ハトムギはCoix lachryma−jobi、Coix lachryma−jobi L.、Coix lachryma−jobi L. var. ma−yuen Stapf、Coix agrestis Lour.、Coix arundinacea Lam.、Coix exaltata Jacq.またはCoix lacryma L.である。
【0027】
[0040] 本発明のハトムギふすま抽出物は、ハトムギふすまのC1〜C7アルコール抽出物(A)とハトムギふすまの超臨界流体二酸化炭素抽出物(B)とを含む。
【0028】
[0041] 本明細書で使用する「C1〜C7アルコール」という用語は、直鎖または分岐鎖の、置換または非置換の、単官能基または多官能基の、および飽和または不飽和のアルコールであり、好ましくは非置換の単官能基の飽和アルコールである。一方、該C1〜C7アルコールはC1〜C4アルコールであることが好ましい。本発明の好ましい一実施形態では、C1〜C7アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール(n-propanol)、イソプロパノール(isopropanol)、n−ブタノール(n-butanol)、iso−ブタノール(iso-butanol)、sec−ブタノール(sec-butanol)、tert−ブタノール(tert-butanol)、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ヘキサノール、2,4−ヘキサジエン−1−オール、2−メチル−シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1−へプタノール、2−へプタノールまたはシクロへプチルアルコールからなる群より選択される。より好ましくは、C1〜C7アルコールはメタノールまたはエタノールであり、最も好ましくは、C1〜C7アルコールはエタノールである。C1〜C7アルコールは単独または組み合わせて使用することができる。
【0029】
[0042] 本明細書で使用するC1〜C7アルコールは、好ましくは約49%〜約99.9%、より好ましくは約75%〜約99.9%、いっそう好ましくは約90%〜約98.0%の濃度のアルコール水溶液である。
【0030】
[0043] 本明細書で使用する場合、「ハトムギふすまのC1〜C7アルコール抽出物(A)」という用語は、ハトムギふすまをC1〜C7アルコールで抽出することにより得られる抽出物を指す。溶液で種子部分を抽出する仕方は、この分野の当業者によく知られている。本発明の好ましい一実施形態では、抽出のためにハトムギふすまをアルコール溶液に浸漬し、より好ましくは、ハトムギふすまをアルコール溶液に浸漬して超音波振動抽出に供する。
【0031】
[0044] 抽出温度は、好ましくは約10℃〜約100℃、より好ましくは約15℃〜約50℃、いっそう好ましくは約20℃〜約40℃である。
【0032】
[0045] 本発明の好ましい一実施形態では、ハトムギふすまのC1〜C7アルコール抽出物(A)は、
(a)ハトムギふすまを用意する工程と、
(b)ハトムギふすまを細片に切り分ける工程と、
(c)工程(b)の細片をC1〜C7アルコールで抽出して抽出物を得る工程と
を含む製造方法により調製される。
【0033】
[0046] 本発明の製造方法によれば、工程(b)の前に、ハトムギふすまは好ましくは乾燥している。
【0034】
[0047] 本発明の好ましい一実施形態では、工程(b)は該細片を粉末に撹拌・粉砕工程をさらに含む。切り分け方および/または撹拌・粉砕方法は、この分野の当業者によく知られている。
【0035】
[0048] 殻なしハトムギ種子とアルコール溶液との比率(w/v)は具体的に制限されないが、約1:1〜約1:10、好ましくは約1:3〜約1:8、最も好ましくは約1:5とすることができる。
【0036】
[0049] 本発明の好ましい一実施形態では、抽出工程(c)は繰り返すことができ、抽出物を集めて合わせる。
【0037】
[0050] 好ましくは、該製造方法は(d)抽出物から液体画分を得る工程をさらに含み、固体画分は取り除かれる。液体画分を得るための固体画分の取り除き方は、この分野の当業者によく知られている。
【0038】
[0051] 望ましくは、該製造方法はさらに濃縮工程を含む。減圧濃縮機によるなどの濃縮の仕方は、この分野の当業者によく知られている。
【0039】
[0052] 本発明によるハトムギふすまの超臨界流体二酸化炭素抽出物(B)は、ハトムギふすまを二酸化炭素超臨界流体で抽出することにより得られる抽出物を指す。超臨界流体とは、臨界温度よりも高温かつ臨界圧よりも高圧に達した場合、気体と液体の物性が同様になり、最後に得られる均一な(homogenous)流体相を指す。超臨界流体は気体と同様に圧縮性を有し、且つ流体と同様に流動性を有し、抽出に使用することができる。さらに、市販の超臨界流体抽出設備は入手可能であり、例えば、NATEX、SEPAREX、UHDEおよびTAIWAN SUPERCRITICAL TECHNOLOGY Co.,Ltd.は市販の超臨界流体抽出設備を提供しており、要件に従って適した超臨界流体抽出設備を選択することができるように、一般に設備の仕様は、選択のための500g〜2000kgなどの抽出槽の処理可能な容量で表示される。
【0040】
[0053] 本発明の好ましい一実施形態では、ハトムギふすまの超臨界流体二酸化炭素抽出物(B)は、約150bar〜約500bar、より好ましくは約200bar〜約400bar、いっそう好ましくは約350bar〜約380barの圧力で抽出される。
【0041】
[0054] 本発明の好ましい一実施形態では、ハトムギふすまの超臨界流体二酸化炭素抽出物(B)は、約30℃〜約80℃、より好ましくは約40℃〜約70℃、いっそう好ましくは約50℃〜約60℃の温度で抽出される。
【0042】
[0055] 本発明の好ましい一実施形態では、ハトムギふすまの超臨界流体二酸化炭素抽出物(B)は、約20kg/h〜約50kg/h、より好ましくは約30kg/h〜約45kg/h、いっそう好ましくは約38kg/h〜約40kg/hの超臨界流体二酸化炭素の流量で抽出される。
【0043】
[0056] 本発明の好ましい一実施形態では、ハトムギふすまの超臨界流体二酸化炭素抽出物(B)の抽出時間は、約40分〜約100分、より好ましくは約50分〜約80分である。
【0044】
[0057] 本発明の好ましい一実施形態では、ハトムギふすまの超臨界流体二酸化炭素抽出物(B)は、約1%〜約10%の95%エタノールなどの共溶媒の存在下で抽出される。
【0045】
[0058] 好ましくは、超臨界流体二酸化炭素抽出方法はさらに濃縮工程を含む。減圧濃縮機によるなどの濃縮の仕方は、この分野の当業者によく知られている。
【0046】
[0059] 本発明によれば、ハトムギふすまのC1〜C7アルコール抽出物(A)とハトムギふすまの超臨界流体二酸化炭素抽出物(B)との重量比は約3:1〜約1:4である。その範囲では、皮膚および/または皮下組織の疾患の治療における薬効は非常に効果的である。好ましくは比率が約3:2〜約1:2であり、より好ましくは比率が約3:2、約3:1、約1:2または約1:4である。
【0047】
[0060] 本発明の好ましい一実施形態では、ハトムギふすま抽出物は高性能液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography, HPLC)アッセイに供される。試料は、アセトンを溶媒として使用することにより、1g/mLの濃度として調製し、0.45μmフィルターで濾過する。濾過試料20μLをHitachi(登録商標)解析HPLCにより解析し、解析カラムはRP−18で、検出器はフォトダイオードアレイ検出器(photo-diode array detector)である。カラムは逆相C18カラム(250×4.6mm内径;YMC Co.,INC)である。カラム温度は40℃である。クロマトグラムは280nmでモニタリングする。移動相には溶液A:5%酢酸水および溶液B:0.5%酢酸水/100%アセトニトリル(1:1、v/v)を使用する。勾配溶出プログラムを表1に示す。
【0049】
[0061] ハトムギふすまのC1〜C7アルコール抽出物(A)のスペクトログラムを
図1に示し、ハトムギふすまの超臨界流体二酸化炭素抽出物(B)のスペクトログラムを
図2に示し、C1〜C7アルコール抽出物(A)とハトムギふすまの超臨界流体二酸化炭素抽出物(B)とを重量比1:4で含むハトムギふすま抽出物のスペクトログラムを
図3に示す。
図3に示すように、得られたスペクトログラムは、約12.5分〜約13.5分、約14分〜約15.5分、約15.5分〜約16.5分、約21分〜約22.5分および約32分〜約35分の保持時間にピークを含む。
【0050】
[0062] 本発明による組成物は、好ましくは医薬組成物、食品組成物または化粧品組成物である。
【0051】
[0063] 本発明による医薬組成物は、好ましくは当分野で知られた任意の方法により局所的にまたは全身に投与され、その方法としては、筋肉内、皮内、静脈内、皮下、腹腔内、鼻腔内、経口、粘膜または外用の経路が挙げられるが、これらに限定されない。適切な経路、製剤および投与計画は当業者が決定することができる。本発明では、医薬組成物は、対応する投与経路に従って、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、散剤、顆粒剤、アンプル剤、注射剤、点滴剤、キット、軟膏剤、ローション剤、リニメント剤、クリーム剤やその組み合わせなど様々に製剤化することができる。必要であれば、滅菌するかまたは薬学的に許容される担体もしくは賦形剤と混合してもよく、その多くは当業者に知られている。例えば[0037]段落を参照されたい。
【0052】
[0064] 本発明で使用する外用経路は局所投与としても知られているが、吹送や吸入による投与に限定されない。局所投与に用いる様々な種類の製剤品の例としては、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、フォーム、経皮パッチにより送達するための製剤品、吹送や吸入用の散剤、スプレー、エアロゾル、カプセルまたはカートリッジ、もしくは滴剤(例えば点眼剤もしくは点鼻剤)、噴霧用の溶液/懸濁液、坐剤、膣坐剤、停留浣腸、およびそしゃく剤又は吸い込み可能な錠剤もしくは粒剤もしくは脂質もしくはマイクロカプセル製剤品が挙げられる。
【0053】
[0065] 軟膏、クリームおよびゲルは、例えば、水性または油性基剤に、適した増粘剤および/またはゲル化剤および/または溶媒を添加することで製剤化することができる。ゆえにそのような基剤としては、例えば、水および/または液体パラフィンやピーナツ油やヒマシ油などの野菜油などの油、またはポリエチレングリコールなどの溶媒が挙げられる。基剤の特質に従って使用することができる増粘剤およびゲル化剤としては、軟パラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、羊毛脂、蜜蝋、カルボキシポリメチレンおよびセルロース誘導体および/またはグリセリルモノステアラートおよび/または非イオン性乳化剤が挙げられる。
【0054】
[0066] ローションは、水性または油性基剤で製剤化することができ、一般に1つまたは複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤または増粘剤をも含有するであろう。
【0055】
[0067] 外用散剤は、例えばタルク、乳糖またはデンプンなどの任意の適した散剤基剤を用いて形成することができる。滴剤は、水性または非水性基剤で製剤化してもよく、1つまたは複数の分散剤、可溶化剤、懸濁剤または保存剤をも含む。
【0056】
[0068] スプレー組成物は、例えば、水性溶液もしくは懸濁液として、または定量吸入器などの予め加圧されたパックから送達されるエアロゾルとして、製剤化してもよく、適切な推進剤を併用してもよい。吸入に適したエアロゾル組成物は、懸濁液と溶液とのどちらかにすることができる。エアロゾル組成物は、任意選択により、例えばオレイン酸やレシチンなどの界面活性剤及び例えばエタノールなどの共溶媒といった、当業者に知られた付加的な製剤賦形剤を含有してもよい。
【0057】
[0069] 局所用製剤品は、患部に対し1日当たり1回または複数回の適用により投与してもよい。皮膚域では貼布法を使用することが好ましい。継続的または長期の送達は粘着剤貯溜システムにより実現することができる。
【0058】
[0070] 本発明による化粧品組成物は水相製剤でよく、本質的に水を含む。該組成物は、水および水混和性溶媒の混合物(25℃で50重量%より高い水中混和性)を含むこともでき、エタノールやイソプロパノールなどの1〜5個の炭素原子を含有する低級モノアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコールやジプロピレングリコールなどの2〜8個の炭素原子を含有するグリコール、C3−C4ケトンおよびC2−C4アルデヒド、ならびにグリセリンである。そのような水性製剤は、好ましくは水性ゲルまたはヒドロゲル製剤の形態である。ヒドロゲル製剤は、液状溶液を濃厚にするために増粘剤を含む。増粘剤の例としては、カルボマー、セルロース基剤材料、ガム、アルギン、寒天、ペクチン、カラギーナン、ゼラチン、ミネラルまたは変性ミネラル増粘剤、ポリエチレングリコールおよびポリアルコール、ポリアクリルアミドおよび他のポリマー系増粘剤が挙げられるが、これらに限定されない。組成物の安定性と最適な流動率とをもたらす増粘剤が好ましくは使用される。
【0059】
[0071] 本発明による化粧品組成物は、乳液またはクリーム製剤の形態であってもよい。該組成物は乳化用界面活性剤を含有することができる。これらの界面活性剤は、アニオン系および非アニオン系の界面活性剤から選ぶことができる。界面活性剤の特性と機能(乳化)については文書「Encyclopedia of Chemical Technology、Kirk−Othmer」、第22巻、333〜432ページ、第3版、1979年、Wileyを、アニオン系および非アニオン系の界面活性剤については具体的にこの参考文献の347〜377ページを参照とすることができる。
【0060】
[0072] 本発明による化粧品組成物に使用する好ましい界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、すなわち脂肪酸、脂肪アルコール、ポリエトキシ化されたステアリルまたはセチルステアリルアルコールなどのポリエトキシ化またはポリグリセロール化された脂肪アルコール、ショ糖の脂肪酸エステル、アルキルグルコースエステル、具体的にはC1−C6アルキルグルコースのポリオキシエチレン化脂肪エステル、およびその混合物;ならびにアニオン性界面活性剤、すなわちアミン、水性アンモニアまたはアルカリ塩で中和されたC16−C30脂肪酸、およびその混合物から選ばれる。水中油型または水中ワックス型の乳液を得ることのできる界面活性剤が好ましくは使用される。
【0061】
[0073] 本発明による化粧品組成物はさらに、ブチル化p−クレゾール、ブチル化ヒドロキノンモノメチルエーテルおよびトコフェロールからなる群より選択される、生理的に許容される抗酸化物質を有効量含んでもよい。
【0062】
[0074] 本発明による化粧品組成物は、さらに天然もしくは修飾アミノ酸、天然もしくは修飾ステロール化合物、天然もしくは修飾コラーゲン、絹タンパク質または大豆タンパク質を含んでもよい。
【0063】
[0075] 本発明による化粧品組成物は、好ましくは皮膚、毛髪、睫毛または爪などのケラチン材への局所適用のために製剤化される。それらは、この種の適用のために標準的に使用される任意の表現形態をとることができ、特に、水性もしくは油性の溶液、水中油型もしくは油中水型の乳液、シリコン乳液、マイクロエマルションもしくはナノエマルジョン、水性もしくは油性のゲルまたは液体、糊状もしくは固体の水和生成物の形態をとる。
【0064】
[0076] 本発明による化粧品組成物は通常流体であってもよく、白色または有色のクリーム、軟膏、ミルク、ローション、セラム、ペースト、ムースまたはゲルの外観を有してもよい。該組成物は、任意選択により、エアロゾル、パッチまたは粉末の形態で皮膚に局所的に適用してもよい。該組成物を固体の形態、例えば棒の形態とすることもできる。該組成物を皮膚のケア製品として、および/またはメークアップ製品として使用してもよい。あるいは、該組成物をシャンプーまたはコンディショナーとして製剤化することができる。
【0065】
[0077] 既知の態様では、本発明による化粧品組成物は、親水性または親油性のゲル化剤、保存剤、抗酸化物質、溶媒、芳香剤、充填剤、色素、臭気吸収剤や染料などの化粧品によくある添加物およびアジュバントを含有することもできる。
【0066】
[0078] 本発明による食品組成物において、ハトムギふすま抽出物は、食品組成物の製造手順中に、従来の食品組成物(すなわち可食の食品もしくは飲料またはその原料)に添加することができる。ほぼ全ての食品組成物は本発明のハトムギふすま抽出物を添加することができる。本発明のハトムギふすま抽出物を添加することのできる食品組成物としては、キャンディ、焼成品、アイスクリーム、乳製品、甘みと風味のあるスナック、スナックバー、代用食製品、ファーストフード、スープ、パスタ、麺、缶詰食品、冷凍食品、乾燥食品、冷蔵食品、油脂、ベビーフード、軟らかい食品、パンに塗られるソース、またはその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
[0079] 本発明は皮膚および/または皮下組織の疾患を治療する医薬の製造における、前記ハトムギふすま抽出物の使用も提供する。
【0068】
[0080] 本発明は対象における皮膚および/または皮下組織の疾患の治療方法も提供し、本法は、有効量のハトムギふすま抽出物と、任意選択により、薬学的に許容される担体または賦形剤とを対象に投与することを含む。
【0069】
[0081] 本明細書で使用する「皮膚および/または皮下組織の疾患」は、皮膚および/または皮下組織に発生した疾患を指す。本発明の好ましい一実施形態では、皮膚および/または皮下組織の疾患は、炎症、毛包傷害、皮膚アトロフィー(skin atrophy)、打撲傷(bruising)、熱傷(burn)、口唇炎(cheilitis)、乾燥肌(dry skin)、潮紅(flushing)、脱毛症(alopecia)、色素増加症(hyperpigmentation)、色素脱失症(hypopigmentation)、浸潤(induration)、線維症(fibrosis)、注射部位反応(injection site reaction)、薬剤の血管外漏出、爪の変化(nail change)、光線過敏症(photosensitivity)、掻痒症(pruritus)、痒み(itching)、皮剥け(rash)、落屑(desquamation)、にきび(acne)、ざ瘡痒(acneiform)、放射線照射に伴う皮膚炎(dermatitis associated with radiation)、多形性紅斑(erythema multiforme)、手足皮膚反応(hand-foot skin reaction)、皮膚の損傷(skin breakdown)、褥瘡(decubitus ulcer)、皮膚線条(striae)、毛細血管拡張症(telangiectasia)、潰瘍(ulceration)および蕁麻疹(urticaria)からなる群より選択される。
【0070】
[0082] 本発明の好ましい一実施形態では、皮膚および/または皮下組織の疾患は放射線照射により生じる。好ましくは、放射線は、腫瘍を治療するための放射線療法の放射線である。腫瘍は、好ましくは乳腫瘍または肺腫瘍である。
【0071】
[0083] 本発明はさらに、インターロイキン1α、インターロイキン1β、インターロイキン6、腫瘍壊死因子α、インターロイキン8、プロスタグランジン2および/またはC反応性タンパク質を低下させる医薬の製造における、前記ハトムギふすま抽出物の使用も提供する。
【0072】
[0084] 本発明は、対象におけるインターロイキン1α、インターロイキン1β、インターロイキン6、腫瘍壊死因子α、インターロイキン8、プロスタグランジン2および/またはC反応性タンパク質の低下方法も提供し、本法は、有効量のハトムギふすま抽出物と、任意選択により、薬学的に許容される担体または賦形剤とを対象に投与することを含む。
【0073】
[0085] 以下の限定を意図しない実施例は、当業者が本発明を容易に実施することができるようにする。これらの実施例は本発明を過度に限定するものではない。当業者が本発明の趣旨と範囲から逸脱しない範囲で、本文で検討する実施例について行われた修正や改変は、依然として本発明の範囲に属する。
【実施例】
【0074】
実施例1:動物モデル
[0086] 薬物および試薬:ハトムギ種子(C. lachrymajobi L.、Taichung Shuenyu no.4、TCS4)は、2009年に栽培され、台湾の台中縣の農家から購入した。
【0075】
[0087] ハトムギふすまのC1〜C7アルコール抽出物(A):ミルを使用してハトムギの殻および種皮を取り除き、ハトムギふすまを粉末に挽いて3倍量の95%(w/v)エタノール中に25℃で浸漬し、24時間の超音波振動抽出に供する。3回の抽出の抽出物を合わせて50℃で減圧で濃縮し、ハトムギふすまのエタノール抽出物を得る。
【0076】
[0088] ハトムギふすまの超臨界流体二酸化炭素抽出物(B):ミルを使用してハトムギの殻および種皮を取り除き、ハトムギふすまを粉末に挽いてステンレス鋼抽出用内部槽に装填し、次いで内部槽を超臨界抽出設備の抽出槽内へ設置する。抽出条件は、抽出圧が360bar、抽出温度が55℃、二酸化炭素流量が38〜40kg/h、共溶媒として95%エタノールを2%、抽出時間が60分である。抽出物を集めて減圧濃縮機により濃縮する。
【0077】
[0089] 抽出物の重量比:ハトムギふすま抽出物の給餌用量を100mg/Kgかつ100μL/日とするものと選択し、チューブ給餌体積を100μL/マウスとする。実験で使用するハトムギふすま抽出物は、超音波振動により0.5%CMC(カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose))に懸濁し、チューブを介して給餌し、35日目にマウスを屠殺する。ハトムギふすまのC1〜C7アルコール抽出物(A)0、100、200、300および400mg/kgとハトムギふすまの超臨界流体二酸化炭素抽出物(B)0、100、200、300および400mg/kgとを組み合わせることにより、25種の異なる給餌用量の組み合わせを得る。チューブ給餌体積は100μL/マウス/日である。
【0078】
[0090] 動物の腫瘍放射線療法により引き起こされる皮膚炎症という副作用に対する、抽出物の活性および機序についての考察:チューブを介してハトムギカプセルを動物に給餌し(試験群、抽出物A:抽出物Bは1:4)、放射線療法により生じる皮膚炎症という副作用を軽減する点について、異なる用量の効果を試験する。動物モデルでは、マウス乳癌細胞(4T1、細胞1×10
6個/マウス)をBALB/cマウスの脚部内に移植し、腫瘍径が約4mmである時から、チューブを介して異なる用量の試験試料を給餌する。2日後に放射線療法(照射量各日5Gy、計5日)を開始し、実験が終了するまで、チューブを介して前記ハトムギふすま抽出物を毎日給餌する。実験の過程では、5日毎に、腫瘍サイズおよび体重を測定し、血液を採取する。現行の臨床の放射線療法における皮膚損傷を治療するためのSulfasil剤を対照群として使用する。マウスを屠殺した後、表皮および毛包組織の病理検査のために腫瘍放射線療法部分の組織切片を作製し、病理検査と組み合わせてTUNELアッセイを採用することにより、表皮組織の表皮細胞および線維芽細胞の傷害状況を判断し、免疫染色を使用してNF−kB、COX−2、IL−1βやTNF−αなどの炎症関連分子の発現を検出する。切片の結果を
図4に示す。
【0079】
[0091] 重量変化の結果を
図5に示す。放射線療法を実施するとともに試験試料を腫瘍動物に投与すると、群間で体重変化に有意な差は存在しない。
図6より、放射線療法を実施するとともに試験試料を腫瘍動物に投与すると、無療法群に比べて腫瘍体積が有意に低減し、放射線療法を実施した群間で有意差が存在しないことを知ることができる。
【0080】
[0092] 別の態様では、200および400mg/kgのハトムギカプセル(試験群、抽出物A:抽出物Bは1:4)は、放射線療法により生じる皮膚の炎症反応を有意に低減し、同時に、放射線療法により生じる血清中のIL−1α(
図7)、IL−1β(
図8)、IL−6(
図9)、TNF−α(
図10)、IL−8(
図11)、PGE2(
図12)およびCRP(
図13)の増加を阻害する。100mg/kgのハトムギカプセルはいくつかの指標で有意に阻害効果があるに過ぎない。以上の結果から、200および400mg/kgのハトムギカプセルは、被毛組織の損傷と動物のin vivoの炎症因子の指標を阻害するのに有意な効果がある。
【0081】
[0093] 放射線療法により生じる皮膚および/または皮下疾患の軽減:腫瘍放射線療法により生じるin vivoの表皮応答の毒性グレードを、研究過程において7日毎に評価することを除き、安全性評価に記載されている通りに工程を実施する。in vivo表皮応答毒性グレード付け法では、臨床治療の毒性評価で最もよく使用されているCTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events v3.0)システムを採用する。グレード付けは臨床生理学における巨視的観察と顕微鏡下病理組織生検とにより実施し、定量的評価は皮膚応答スコア表を使用して実施する。治療部分の病理組織切片を作製する。結果を
図14に示す。
【0082】
[0094] 皮膚応答の定量では、CompuSyn(for Drug Combinations and for General Dose-Effect Analysis)ソフトウェアプログラムを使用して、放射線治療により生じる皮膚応答および被毛組織損傷の軽減における実験材料の相乗効果の条件組み合わせを算出する。結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
[0095] 併用指数(combination index, CI)については、CI値<1が相加的な効果であり、CI値=1が独立した効果であり、CI値>1がアンタゴニスト効果であるという定義に従って、実験でスクリーニングにより得た4つの最善の組み合わせ(CI<0.8)を表2に示す。被毛組織炎症の有意な阻害を表しており、抽出物A:抽出物Bは3:1〜1:4の範囲にある。
【0085】
[0096] 表2および
図14の結果から、この実施例の動物腫瘍放射線照射モデルにおいては、動物の炎症、毛包傷害、脱毛症、放射線照射性皮膚炎および/または手/足皮膚応答を軽減可能であることを知ることができる。したがって、本発明によるハトムギふすま抽出物は、皮膚および/または皮下組織の疾患、特に炎症、毛包傷害、脱毛症、放射線照射性皮膚炎および/または手/足皮膚応答を治療するために使用することができる。
【0086】
実施例2:乳癌患者への放射線療法の副作用を軽減する点についてのヒト試験
[0097] 2つのハトムギカプセル(試験群、抽出物A:抽出物Bは1:4)またはオリーブオイルカプセル(対照群)(500mg/カプセル)を毎日朝食後および夕食後に投与し、各日で計4つのカプセルを投与する。
【0087】
[0098] この臨床試験では、前向き、無作為群化及び二重盲検法を採用して、試験群と対照群とを設計し、臨床試験を2段階で実施する。すなわち第1段階では、まずハトムギカプセルに対する一般人の反応を試験するが、2つのカプセル(500mg/カプセル)を毎日朝食後および夕食後に投与し、各日で計4つのカプセルを投与し、投与を4週間続行する。試験前には血液検査を実施し、検査には血液ルーチン、肝機能(GOTおよびGPTを含む)、腎機能(BUNおよびCRTNを含む)、通常の血液パラメーター(コレステロール、HDL、LDL、TGおよび食前血糖(AC-sugar)を含む)などを含む。4週間の継続投与後に同じ血液検査を再度実施し、有意な副作用が存在しないことを確定した後に、第2段階の試験を開始する。この段階では、乳癌患者が放射線療法を受けた場合に、放射線照射により生じる皮膚応答をハトムギカプセルが効果的に低減して、生活の質が向上することができるか否かを検査する。また、乳癌患者が放射線療法を受ける前後での免疫機能の変化を血液検査により確認し、ハトムギカプセルが免疫機能を効果的に向上させることができるか否かを検査し、臨床の皮膚応答と生理学的変化について統計学的解析を実施する。
【0088】
[0099] 第2段階の試験では、対象の条件を満たす乳癌患者を2つの群に分ける。すなわち、一方の群は試験群であり、他方の群は対照群である。試験群には、放射線療法の期間中に、2つのハトムギカプセル(500mg/カプセル)を毎日朝食後および夕食後に投与し、各日4つのカプセルを投与し、投与を5〜7週間続行する。対照群には、同じ包装の代替物(偽薬、内容物はオリーブオイル)を同じ投与の仕方で投与する。治療前後で2つの群を血液検査、生活の質についての質問調査および皮膚生理学的検査に供する。
【0089】
患者数:
第1段階:一般人10名
第2段階:試験群および対照群のそれぞれに乳癌患者各80名
[0100] 2段階の総計で対象170名
【0090】
評価方法:
[0101] 第1段階の安全性試験:対象を血液ルーチン、肝機能、腎機能および通常の血液パラメーターについての血液検査に供し、ハトムギカプセルの投与に起因して重大な異常反応が生じるか否かを検査する。第2段階:乳癌患者が試験の受諾に同意し、説明後に対象同意書に署名した後、患者を無作為に試験群と対照群とに分け、血液ルーチン、肝機能(GOTおよびGPTを含む)、腎機能(BUNおよびCRTNを含む)、サイトカイン(IL−1、IL−6およびIL−8を含む)および通常の血液パラメーター(コレステロール、HDL、LDL、TGおよび食前血糖を含む)などを含む血液検査、生活の質と疲労についての質問調査、皮膚生理学的検査(pH値、皮膚表面の水分および脂肪分、湿潤化機能、色、温度、弾力性および皮膚ドップラー超音波など)に供する。放射線療法を開始後、治療期間中の患者の皮膚応答および理学的検査を毎週記録し、記録には胸壁の治療範囲内の皮膚応答および色の変化を含める。放射線療法を終了後、患者を治療前と同じ血液検査、生活の質についての質問調査および皮膚生理学的検査に供する。
【0091】
放射線療法:
[0102] 各乳癌患者は5〜7週間の放射線療法を受け、対象はハトムギカプセルまたは代替物を経口で毎日摂取する必要がある。放射線療法では、治療範囲および体積をコンピュータートモグラフィーにより確定し、用量分布および用量均一性をコンピューター治療実行システムにより得て、皮膚応答およびほかの副作用を毎週患者の再訪時に記録する。
【0092】
結果:
[0103] 試験産物の投与前後に血液検査を実施し、投与を4週間続行する。1名が腹部膨満となり、有害事象または重大な副作用は存在しない。第2段階の試験では、患者67名が対象スクリーニングに参加し、患者51名が登録され、対象のうち患者16名がこのプログラムに参加する意志を持たない。その原因は、皮膚がアレルギーになりやすいこと、化学治療によって生じる下肢の浮腫および不快感、仕事の多忙から治療に協力不能であること、意志がないこと、過剰の薬剤を摂取して参加不能であることである。残りの患者は同意書面に署名し、血液検査、皮膚生理学的検査、患部の写真記録、質問調査および試験産物の投与を受ける。
【0093】
[0104] 第2段階では、患者2名が腹部膨満に、患者1名が軟便となり、このうち患者1名は腹部膨満などの副作用のために試験への参加を中止し、患者1名は試験を辞めた。治療計画によれば、各対象の治療期間は約5〜7週間であり、対象160名の登録が期待される。対象がこの計画に参加する意志を高め、試料数を増やしてデータ収集の信頼性を増やすために、試験群と対照群との比率を1:1から2:1に調整する。データを解析可能な個別症例の数は27例であり、解析結果を表3および表6に示す。
【0094】
[0105] 表3は、第1段階におけるハトムギカプセル投与前後の一般人の血液検査の平均値の比較を示す。この段階では投与前後で試験群と対照群との間に差はなく、このことはハトムギカプセルが肝臓および腎臓の機能に影響しないことを表している。
【0095】
【表3】
【0096】
[0106] 表4は、乳癌患者が治療を受けた場合の皮膚応答RTOG/EORTC指標のグレード付けを示す。結果の予備解析から、試験群の患者の3/14(21.4%)が1より大きい皮膚応答グレード(Grade>1)を有し、対照群の患者の6/13(46.2%)が1より大きい皮膚応答グレード(Grade>1)を有することがわかる。
【0097】
【表4】
【0098】
[0107] 表5は、ハトムギカプセル投与後の乳癌患者の臨床病理学的な特徴を示し、試験群と対照群との間に分布上の差はない。
【0099】
【表5-1】
【0100】
【表5-2】
【0101】
[0108] 表6は、放射線療法後の乳癌患者の治療前後の血液検査の変化を示しており、有意差は存在しない。
【0102】
【表6-1】
【0103】
【表6-2】
【0104】
[0109] この実施例の結果は、乳癌患者の乾燥肌、浸潤、皮剥け、落屑、にきび、多形性紅斑、皮膚の損傷および/または潰瘍を軽減することができることを示す。したがって、本発明によるハトムギふすま抽出物は、皮膚および/または皮下組織の疾患、特に乾燥肌、浸潤、皮剥け、落屑、にきび、多形性紅斑、皮膚の損傷および/または潰瘍を治療するのに使用することができる。
【0105】
[0110] 上記実施例は本発明の原理及びその効果を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。当業者が上記実施例に対して行う改変および変更は本発明の趣旨から逸脱しない。本発明の技術的範囲は以下の特許請求の範囲に示したとおりである。