(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする1つ目の技術的課題は、先行技術に対して、カット精度が高く、カットされた部材の表面平滑度が高い高精度亜鉛基合金電極線を提供することである。
【0006】
本発明が解決しようとする2つ目の技術的課題は、上記の高精度亜鉛基合金電極線の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が上記の技術的課題を解決するために採用した技術的解決手段は、その材質が黄銅である芯材と、芯材の表面を被覆するシェル層と、を含む高精度亜鉛基合金電極線であって、前記シェル層中の各成分の質量パーセントの構成が次のとおりであることを特徴とするものである。
Zn:70.5〜95%
Cu:2.5〜27%
X :0.02〜4.0%
Y :0.002〜0.4%。その他は、原材料に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.3%以下である。
【0008】
そのうち、Xは、Ni、Ag、Cr、Si、Zrのうちの任意の2種類の金属で、当該2種類の金属の含量範囲はいずれも0.01〜2.0%である。Yは、Ti、Al、Co、B、Pのうちの任意の2種類の元素で、当該2種類の元素の含量範囲はいずれも0.001〜0.2%である。
【0009】
前記シェル層の厚さは2〜4umで、前記シェル層の構造のうちε相の含量は80wt%以上、その残量はγ相又はη相で、前記ε相は芯材の表面に均一に分布する。
好ましくは、前記シェル層中の各成分の質量パーセントの構成は次のとおりである。
Zn:78.5〜85%
Cu:12.5〜19%
X :0.02〜4.0%
Y :0.002〜0.4%。その他は、原材料に付随する不可避の不純物である。
【0010】
前記シェル層の構造はε相で、その他の相はなく、前記ε相は芯材の表面に均一に分布する。
【0011】
上記の高精度亜鉛基合金電極線の製造方法は、次のステップを含むことを特徴とする。
【0012】
(1)比率に従って合金の配合をする。質量パーセントによるその成分構成は、銅が57%〜68%、Xが0.03〜4.5%、Yが0.004〜0.5%で、その残量は亜鉛と、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物とで、不可避の不純物の含量の和は0.5%以下である。そのうち、Xは、Ni、Ag、Cr、Si、Zrの内の任意の2種類の金属で、当該2種類の金属の含量範囲はいずれも0.015〜2.25%である。Yは、Ti、Al、Co、B、Pのうちの任意の2種類の元素で、当該2種類の元素の含量範囲はいずれも0.002〜0.25%である。
【0013】
(2)配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径8〜15mmの合金線ブランクを製造する。
【0014】
(3)その後、製造した線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しすることで直径0.5〜5mmの母線を製造する。
【0015】
(4)さらに、製造した母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをし、亜鉛メッキ層の厚さを0.5〜50umとして、第1の線ブランクを得る。電気メッキの電流は1500〜3000A、電圧は150〜220Vとする。
【0016】
(5)電気メッキをした第1の線ブランクに連続引張り、連続焼鈍し加工を行い、第2の線ブランクを製造する。
【0017】
(6)最後は、第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.05〜0.35mmの電極線の完成品を得る。
【0018】
前記ステップ(5)中の引張速度を500〜2000m/min、焼鈍し電圧を10〜100V、焼鈍し電流を10〜50Aとし、メッキ層中の亜鉛原子を母線に向かって拡散移動させることで、新しい結晶組織を形成して、その後の熱処理加工に資するようにする。
【0019】
前記ステップ(6)中の熱処理温度を50〜230℃、熱処理時間を3〜30時間として、最終的に製造される完成品にε相組織のシェル層が形成させることに資するようにする。
【発明の効果】
【0020】
先行技術と比べて、本発明の利点は次のとおりである。
【0021】
(1)通常のコーティング電極線と比べて、本発明の電極線は、カットする際に十分な陽電子・陰電子を迅速に提供することができ、放電のカットが緩やかで、効果的なカットを保つことができるとともに、シェル層が一定の銅亜鉛合金層を有し、気化温度が高いので、より多くの熱量を奪うのに都合がよく、洗浄効果が改善されている。そのため、カット加工の正確さを向上するのに有利である上、非常に優れた表面の品質が得られる。
【0022】
(2)本発明の電極線にX、Yの元素を加えることで、引張過程において銅亜鉛合金の原子の転位が増加させられ、粒界における格子ひずみが大きくなり、エネルギーが高くなって、熱処理過程でシェル層のη相の亜鉛原子が芯材(α+β相)に向かって拡散移動しやすくなり、シェル層にε相組織が形成されるのに役立つ。ε相(80wt%以上)のシェル層の構造をした電極線は、良好な靭性を有し、カットする際の電流と洗浄力によってもたらされる電極線の振動を効果的に抑制できるので、電極線が靭性の不足によって裂けることを避けられる。また、この種の電極線は、比較的高い融点を有し、瞬間の高パルス電流と大きなカット電流に耐えることができ、瞬間の放電ギャップも短く、カット処理をする金属ワークの表面平滑度も高く、表面の品質もよいため、カット精度が効果的に向上していて、特に、仕上げ及び3回以上の多回数カットに適する。また、X、Yの元素を加えた後熱処理温度と熱処理時間を低減でき、加工効率が向上される。
【0023】
(3)本発明で採用した製造プロセスは、完成品の電極線のシェル層にε相を形成し、結晶体がさらに拡散してγ相等の相組織が形成されることを避けるのに都合がよい。また、当該製造方法は、プロセスが簡単で、実施可能性が高く、製造ステップも少なく、生産設備も簡単で、条件にかなう製品を得られやすい上、生産の大規模化、自動化を実現しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面、実施例と関連付けて、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0026】
<実施例1>
比率に従って合金配合をする。その成分構成は、質量パーセントで、Cuが65%、Niが2.0%、Siが1.2%、Tiが0.12%、Coが0.2%で、その残りはZnと、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.5%である。配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径が9mmである合金線ブランクを製造する。その後、得られた線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しすることで直径0.5〜5mmの母線を製造する。さらに、得られた母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを0.5umとして、第1の線ブランクを得る。電気メッキの電流は2000A、電圧は200Vとする。続いて、第1の線ブランクに連続引張り、連続焼鈍しをして加工し、第2の線ブランクを製造する。
図1に示すように、第2の線ブランクには芯材1とメッキ層2とが含まれている。引張速度は600m/min、焼鈍し電圧は20V、焼鈍し電流は15Aとする。第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.10mmでシェル層の厚さが2umである電極線の完成品を得る。熱処理温度は172℃、熱処理時間は11時間とする。
図1及び
図2に示すように、熱処理過程で、芯材1及びメッキ層2に拡散が生じて、芯材1の直径が小さくなる一方で、メッキ層2の厚さが増すことで、安定したシェル層3が形成される。最後に、熱処理をして得られた完成品が、様々なタイプのシャフトに巻きつけられる。
【0027】
電極線の完成品のシェル層の化学成分は、Znが70.5%、Cuが27%、Niが1.5%、Siが0.6%、Tiが0.1%、Coが0.1%、不純物が0.2%である。本実施例では、Ni、Si、Ti及びCoを加えてから、引張過程において線ブランク中の銅亜鉛合金の原子の転位が増加させられ、粒界における格子ひずみが大きくなり、エネルギーが高くなって、熱処理過程でシェル層のη相の亜鉛原子が芯材(α+β相)に向かって拡散移動しやすくなり、シェル層にε相組織が形成されるのに役立つ。シェル層と芯材との間の原子移動に伴って、引張りによってもたらされる原子転位、原子空位等の欠陥が次第に少なくなって、転位密度もこれに伴って減少し、拡散活性化エネルギーも低下するとともに、ε相組織の融点がもとのη相の純亜鉛に対して次第に高くなって、原子間の結合力も強くなる上、本実施例の熱処理条件下では、シェル層のε相組織の形成にも資している。
図3に示すように、電極線の完成品の芯材はα+β相で、シェル層の構造のうちε相の含量は86wt%で、その残りはγ相であり、さらに、ε相は芯材の表面に均一に分布する。
【0028】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、本実施例で製造した高精度亜鉛基合金電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0029】
<実施例2>
比率に従って合金配合をする。その成分構成は、質量パーセントで、Cuが66%、Crが1.5%、Zrが1.5%、Pが0.15%、Bが0.06%で、その残りはZnと、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.3%である。配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径が8mmである合金線ブランクを製造する。その後、得られた線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しをすることで直径3mmの母線を製造する。さらに、得られた母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを40umとして、第1の線ブランクを得る。ただし、電気メッキの電流は1500A、電圧は200Vとする。続いて、電気メッキをした第1のに連続引張り、連続焼鈍しをして加工し、第2の線ブランクを製造する。引張速度は500m/min、焼鈍し電圧は80V、焼鈍し電流は50Aとする。第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.10mmでシェル層の厚さが4umである電極線の完成品を得る。熱処理温度は121℃、熱処理時間は23時間とする。最後に、熱処理をして得られた完成品が、様々なタイプのシャフトに巻きつけられる。
【0030】
電極線の完成品のうちシェル層の化学成分は、Znが95%、Cuが2.5%、Crが1.0%、Zrが1.1%、Pが0.1%、Bが0.03%、不純物が0.27%である。本実施例では、Cr、Zr、P及びBを加えてから、引張過程において線ブランク中の銅亜鉛合金の原子の転位が増加させられ、粒界における格子ひずみが大きくなり、エネルギーが高くなって、熱処理過程でシェル層のη相の亜鉛原子が芯材(α+β相)に向かって拡散移動しやすくなり、シェル層にε相組織が形成されるのに役立つ。シェル層と芯材との間の原子移動に伴って、引張りによってもたらされる原子転位、原子空位等の欠陥が次第に少なくなって、転位密度もこれに伴って減少し、拡散活性化エネルギーも低下するとともに、ε相組織の融点がもとのη相の純亜鉛に対して次第に高くなって、原子間の結合力も強くなる上、本実施例の熱処理条件下では、シェル層のε相組織の形成にも資している。
図4に示すように、電極線の完成品の芯材はα+β相で、シェル層の構造のうちε相の含量は92wt%で、その残りはη相であり、さらに、ε相は芯材の表面に均一に分布する。
【0031】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、本実施例で製造した高精度亜鉛基合金電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0032】
<実施例3>
比率に従って合金配合をする。その成分構成は、質量パーセントで、Cuが60%、Siが0.12%、Agが0.07%、Tiが0.18%、Bが0.02%で、その残りはZnと、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.3%である。配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径が10mmである合金線ブランクを製造する。その後、得られた線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しをすることで直径4mmの母線を製造する。さらに、得られた母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを40umとして、第1の線ブランクを得る。ただし、電気メッキの電流は2500A、電圧は150Vとする。続いて、電気メッキをした第1の線ブランクに連続引張り、連続焼鈍しをして加工し、第2の線ブランクを製造する。引張速度は1000m/min、焼鈍し電圧は55V、焼鈍し電流は30Aとする。第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.10mmでシェル層の厚さが3umである電極線の完成品を得る。熱処理温度は202℃、熱処理時間は5時間とする。最後に、熱処理をして得られた完成品が、様々なタイプのシャフトに巻きつけられる。
【0033】
電極線の完成品のシェル層の化学成分は、Znが75%、Cuが24.5%、Siが0.11%、Agが0.06%、Tiが0.15%、Bが0.015%、不純物が0.165%である。本実施例では、Si、Ag、Ti及びBを加えてから、引張過程において線ブランク中の銅亜鉛合金の原子の転位が増加させられ、粒界における格子ひずみが大きくなり、エネルギーが高くなって、熱処理過程でシェル層のη相の亜鉛原子が芯材(α+β相)に向かって拡散移動しやすくなり、シェル層にε相組織が形成されるのに役立つ。シェル層と芯材との間の原子移動に伴って、引張りによってもたらされる原子転位、原子空位等の欠陥が次第に少なくなって、転位密度もこれに伴って減少し、拡散活性化エネルギーも低下するとともに、ε相組織の融点がもとのη相の純亜鉛に対して次第に高くなって、原子間の結合力も強くなる上、本実施例の熱処理条件下では、シェル層のε相組織の形成にも資している。
図5に示すように、電極線の完成品の芯材はα+β相で、シェル層の構造のうちε相の含量は95wt%で、その残りはγ相であり、さらに、ε相は芯材の表面に均一に分布する。
【0034】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、本実施例で製造した高精度亜鉛基合金電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0035】
<実施例4>
比率に従って合金配合をする。その成分構成は、質量パーセントで、Cuが57%、Niが2.25%、Crが0.9%、Tiが0.01%、Coが0.015%で、その残りはZnと、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.5%である。配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径が12mmである合金線ブランクを製造する。その後、得られた線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しをすることで直径2mmの母線を製造する。さらに、得られた母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを15umとして、第1の線ブランクを得る。電気メッキの電流は2500A、電圧は220Vとする。続いて、電気メッキをした第1の線ブランクに繰り返し引張り加工と焼鈍し加工とを行い、第2の線ブランクを製造する。引張速度は1500m/min、焼鈍し電圧は10V、焼鈍し電流は15Aとする。第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.10mmでシェル層の厚さが3umである電極線の完成品を得る。熱処理温度は60℃、熱処理時間は26時間とする。最後に、熱処理をして得られた完成品が、様々なタイプのシャフトに巻きつけられる。
【0036】
電極線の完成品のシェル層の化学成分は、Znが90%、Cuが7.5%、Niが2%、Crが0.3%、Tiが0.007%、Coが0.005%、不純物が0.188%である。本実施例では、Ni、Cr、Ti及びCoを加えてから、引張過程において線ブランク中の銅亜鉛合金の原子の転位が増加させられ、粒界における格子ひずみが大きくなり、エネルギーが高くなって、熱処理過程でシェル層のη相の亜鉛原子が芯材(α+β相)に向かって拡散移動しやすくなり、シェル層にε相組織が形成されるのに役立つ。シェル層と芯材との間の原子移動に伴って、引張りによってもたらされる原子転位、原子空位等の欠陥が次第に少なくなって、転位密度もこれに伴って減少し、拡散活性化エネルギーも低下するとともに、ε相組織の融点がもとのη相の純亜鉛に対して次第に高くなって、原子間の結合力も強くなる上、本実施例の熱処理条件下では、シェル層のε相組織の形成にも資している。
図6に示すように、電極線の完成品のうち芯材はα+β相で、シェル層の構造のうちε相の含量は98wt%で、その残りはη相であり、さらに、ε相は芯材の表面に均一に分布する。
【0037】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、本実施例で製造した高精度亜鉛基合金電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0038】
<実施例5>
比率に従って合金配合をする。その成分構成は、質量パーセントで、Cuが60%、Niが1.8%、Siが0.1%、Pが0.12%、Bが0.07%で、その残りはZnと、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.4%である。配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径が15mmである合金線ブランクを製造する。その後、得られた線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しをすることで直径1mmの母線を製造する。さらに、得られた母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを10umとして、第1の線ブランクを得る。電気メッキの電流は3000A、電圧は220Vとする。続いて、電気メッキをした第1の線ブランクに連続引張り、連続焼鈍しをして加工し、第2の線ブランクを製造する。引張速度は2000m/min、焼鈍し電圧は40V、焼鈍し電流は20Aとする。第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.10mmでシェル層の厚さが3umである電極線の完成品を得る。熱処理温度は83℃、熱処理時間は19時間とする。最後に、熱処理をして得られた完成品が、様々なタイプのシャフトに巻きつけられる。
【0039】
電極線の完成品のシェル層の化学成分は、Znが82%、Cuが16.4%、Niが1.2%、Siが0.05%、Pが0.07%、Bが0.04%、不純物が0.24%である。本実施例では、Ni、Si、P及びBを加えてから、引張過程において線ブランク中の銅亜鉛合金の原子の転位が増加させられ、粒界における格子ひずみが大きくなり、エネルギーが高くなって、熱処理過程でシェル層のη相の亜鉛原子が芯材(α+β相)に向かって拡散移動しやすくなり、シェル層にε相組織が形成されるのに役立つ。シェル層と芯材との間の原子移動に伴って、引張りによってもたらされる原子転位、原子空位等の欠陥が次第に少なくなって、転位密度もこれに伴って減少し、拡散活性化エネルギーも低下するとともに、ε相組織の融点がもとのη相の純亜鉛に対して次第に高くなって、原子間の結合力も強くなる上、本実施例の熱処理条件下では、シェル層のε相組織の形成にも資している。
図7に示すように、電極線の完成品の芯材はα+β相で、シェル層の構造のうちε相の含量は殆ど100wt%で、その他の相はなく、さらに、ε相は芯材の表面に均一に分布する。ε相の含量が殆ど100wt%であることは、シェル層の金属相構造がすべてε相で、ε相以外にその他の相がないことを指しているが、酸化物、不純物等が含まれることもある。ε相の含量が殆ど100wt%であることについての明細書の他の項目における解釈もこれと同じである。
【0040】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、本実施例で製造した高精度亜鉛基合金電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0041】
<実施例6>
比率に従って合金配合をする。その成分構成は、質量パーセントで、Cuが68%、Zrが0.8%、Crが0.04%、Tiが0.016%、Alが0.002%で、その残りはZnと、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.2%である。配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径が11mmである合金線ブランクを製造する。その後、得られた線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しをすることで直径5mmの母線を製造する。さらに、得られた母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを50umとして、第1の線ブランクを得る。ただし、電気メッキの電流は3000A、電圧は180Vとする。続いて、電気メッキをした第1の線ブランクに連続引張り、連続焼鈍しをして加工し、第2の線ブランクを製造する。引張速度は1500m/min、焼鈍し電圧は100V、焼鈍し電流は10Aとする。第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.10mmでシェル層の厚さが3.5umである電極線の完成品を得る。熱処理温度は163℃、熱処理時間は8時間とする。最後に、熱処理をして得られた完成品が、様々なタイプのシャフトに巻きつけられる。
【0042】
電極線の完成品のシェル層の化学成分は、Znが80%、Cuが19.2%、Zrが0.5%、Crが0.02%、Tiが0.008%、Alが0.001%、不純物が0.271%である。本実施例では、Zr、Cr、Ti及びAlを加えてから、引張過程において線ブランク中の銅亜鉛合金の原子の転位が増加させられ、粒界における格子ひずみが大きくなり、エネルギーが高くなって、熱処理過程でシェル層のη相の亜鉛原子が芯材(α+β相)に向かって拡散移動しやすくなり、シェル層にε相組織が形成されるのに役立つ。シェル層と芯材との間の原子移動に伴って、引張りによってもたらされる原子転位、原子空位等の欠陥が次第に少なくなって、転位密度もこれに伴って減少し、拡散活性化エネルギーも低下するとともに、ε相組織の融点がもとのη相の純亜鉛に対して次第に高くなって、原子間の結合力も強くなる上、本実施例の熱処理条件下では、シェル層のε相組織の形成にも資している。
図7に示すように、電極線の完成品のうち芯材はα+β相で、シェル層の構造のうちε相の含量は殆ど100wt%で、その他の相はなく、さらに、ε相は芯材の表面に均一に分布する。
【0043】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、本実施例で製造した高精度亜鉛基合金電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0044】
<実施例7>
比率に従って合金配合をする。その成分構成は、質量パーセントで、Cuが65%、Niが2.25%、Siが0.015%、Tiが0.14%、Coが0.25%で、そののこりはZnと、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.5%である。配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径が13mmである合金線ブランクを製造する。その後、得られた線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しをすることで直径3mmの母線を製造する。さらに、得られた母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを30umとして、第1の線ブランクを得る。電気メッキの電流は2000A、電圧は200Vとする。続いて、第1の線ブランクに連続引張り、連続焼鈍しをして加工し、第2の線ブランクを製造する。
図1に示すように、第2の線ブランクには芯材1とメッキ層2とが含まれている。引張速度は600m/min、焼鈍し電圧は20V、焼鈍し電流は15Aとする。第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.10mmでシェル層の厚さが2.5umである電極線の完成品を得る。熱処理温度は50℃、熱処理時間は30時間とする。最後に、熱処理をして得られた完成品が、様々なタイプのシャフトに巻きつけられる。
【0045】
電極線の完成品のシェル層の化学成分は、Znが78.5%、Cuが19%、Niが1.9%、Siが0.01%、Tiが0.12%、Coが0.2%、不純物が0.27%である。本実施例では、Ni、Si、Ti及びCoを加えてから、引張過程において線ブランク中の銅亜鉛合金の原子の転位が増加させられ、粒界における格子ひずみが大きくなり、エネルギーが高くなって、熱処理過程でシェル層のη相の亜鉛原子が芯材(α+β相)に向かって拡散移動しやすくなり、シェル層にε相組織が形成されるのに役立つ。シェル層と芯材との間の原子移動に伴って、引張りによってもたらされる原子転位、原子空位等の欠陥が次第に少なくなって、転位密度もこれに伴って減少し、拡散活性化エネルギーも低下するとともに、ε相組織の融点がもとのη相の純亜鉛に対して次第に高くなって、原子間の結合力も強くなる上、本実施例の熱処理条件下では、シェル層のε相組織の形成にも資している。
図7に示すように、電極線の完成品のうち芯材はα+β相で、シェル層の構造のうちε相の含量は殆ど100wt%で、その他の相はなく、さらに、ε相は芯材の表面に均一に分布する。
【0046】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、製造された本実施例における高精度亜鉛基合金電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0047】
<実施例8>
比率に従って合金配合をする。その成分構成は、質量パーセントで、Cuが60%、Agが1.0%、Niが2.1%、Alが0.15%、Pが0.09%で、その残りはZnと、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.4%である。配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径が15mmである合金線ブランクを製造する。その後、得られた線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しをすることで直径2mmの母線を製造する。さらに、得られた母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを25umとして、第1の線ブランクを得る。電気メッキの電流は3000A、電圧は220Vとする。続いて、電気メッキをした第1の線ブランクに連続引張り、連続焼鈍しをして加工し、第2の線ブランクを製造する。引張速度は2000m/min、焼鈍し電圧は40V、焼鈍し電流は20Aとする。第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.10mmでシェル層の厚さが4umである電極線の完成品を得る。熱処理温度は230℃、熱処理時間は3時間とする。最後に、熱処理をしてから得られた完成品が、様々なタイプのシャフトに巻きつけられる。
【0048】
電極線の完成品のシェル層の化学成分は、Znが85%、Cuが12.5%、Agが0.7%、Niが1.5%、Alが0.09%、Pが0.06%、不純物が0.15%である。本実施例では、Ag、Ni、Al及びPを加えてから、引張過程において線ブランク中の銅亜鉛合金の原子の転位が増加させられ、粒界における格子ひずみが大きくなり、エネルギーが高くなって、熱処理過程でシェル層のη相の亜鉛原子が芯材(α+β相)に向かって拡散移動しやすくなり、シェル層にε相組織が形成されるのに役立つ。シェル層と芯材との間の原子移動に伴って、引張りによってもたらされる原子転位、原子空位等の欠陥が次第に少なくなって、転位密度もこれに伴って減少し、拡散活性化エネルギーも低下するとともに、ε相組織の融点がもとのη相の純亜鉛に対して次第に高くなって、原子間の結合力も強くなる上、本実施例の熱処理条件下では、シェル層のε相組織の形成にも資している。
図7に示すように、電極線の完成品のうち芯材はα+β相で、シェル層の構造のうちε相の含量は殆ど100wt%で、その他の相はなく、さらに、ε相は芯材の表面に均一に分布する。
【0049】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、本実施例で製造した高精度亜鉛基合金電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0050】
<実施例9>
比率に従って合金配合をする。その質量パーセントによる成分構成は、Cuが64%、Zrが0.02%、Siが1.3%、Pが0.15%、Coが0.05%で、その残りはZnと、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.5%である。配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径が12mmである合金線ブランクを製造する。その後、得られた線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しをすることで直径1.5mmの母線を製造する。さらに、得られた母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを15umとして、第1の線ブランクを得る。電気メッキの電流は2500A、電圧は220Vとする。続いて、電気メッキをした第1の線ブランクに連続引張り、連続焼鈍しをして加工し、第2の線ブランクを製造する。引張速度は1500m/min、焼鈍し電圧は10V、焼鈍し電流は15Aとする。第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.10mmでシェル層の厚さが3umである電極線の完成品を得る。熱処理温度は140℃、熱処理時間は16時間とする。最後に、熱処理をして得られた完成品が、様々なタイプのシャフトに巻きつけられる。
【0051】
電極線の完成品のシェル層の化学成分は、Znが89%、Cuが10.1%、Zrが0.012%、Siが0.8%、Pが0.05%、Coが0.02%、不純物が0.018%である。本実施例では、Zr、Si、P及びCoを加えてから、引張過程において線ブランク中の銅亜鉛合金の原子の転位が増加させられ、粒界において格子ひずみが大きくなり、エネルギーが高くなって、熱処理過程でシェル層のη相の亜鉛原子が芯材(α+β相)に向かって拡散移動しやすくなり、シェル層にε相組織が形成されるのに役立つ。シェル層と芯材との間の原子移動に伴って、引張りによってもたらされる原子転位、原子空位等の欠陥が次第に少なくなって、転位密度もこれに伴って減少し、拡散活性化エネルギーも低下するとともに、ε相組織の融点がもとのη相の純亜鉛に対して次第に高くなって、原子間の結合力も強くなる上、本実施例の熱処理条件下では、シェル層のε相組織の形成にも資している。
図6に示すように、電極線の完成品の芯材はα+β相で、シェル層の構造のうちε相の含量は97wt%で、その残りはη相であり、さらに、ε相は芯材の表面に均一に分布する。
【0052】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、本実施例で製造した高精度亜鉛基合金電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0053】
<実施例10>
比率に従って合金配合をする。その成分構成は、質量パーセントで、Cuが68%、Zrが0.8%、Agが0.05%、Bが0.08%、Coが0.03%で、その残りはZnと、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.2%である。配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径が11mmである合金線ブランクを製造する。その後、得られた線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しをすることで直径5mmの母線を製造する。さらに、得られた母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを45umとして、第1の線ブランクを得る。電気メッキの電流は3000A、電圧は180Vとする。続いて、電気メッキをした第1の線ブランクに連続引張り、連続焼鈍しをして加工し、第2の線ブランクを製造する。引張速度は1500m/min、焼鈍し電圧は100V、焼鈍し電流は10Aとする。第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.10mmでシェル層の厚さが4umである電極線の完成品を得る。熱処理温度は80℃、熱処理時間は25時間とする。最後に、熱処理をして得られた完成品が、様々なタイプのシャフトに巻きつけられる。
【0054】
電極線の完成品のシェル層の化学成分は、Znが87%、Cuが12.2%、Zrが0.5%、Agが0.03%、Bが0.03%、Coが0.01%、不純物が0.23%である。本実施例では、Zr、Ag、B及びCoを加えてから、引張過程において線ブランク中の銅亜鉛合金の原子の転位が増加させられ、粒界における格子ひずみが大きくなり、エネルギーが高くなって、熱処理過程でシェル層のη相の亜鉛原子が芯材(α+β相)に向かって拡散移動しやすくなり、シェル層にε相組織が形成されるのに役立つ。シェル層と芯材との間の原子移動に伴って、引張りによってもたらされる原子転位、原子空位等の欠陥が次第に少なくなって、転位密度もこれに伴って減少し、拡散活性化エネルギーも低下するとともに、ε相組織の融点がもとのη相の純亜鉛に対して次第に高くなって、原子間の結合力も強くなる上、本実施例の熱処理条件下では、シェル層のε相組織の形成にも資している。
図6に示すように、電極線の完成品の芯材はα+β相で、シェル層の構造のうちε相の含量は99wt%で、その残りはη相であり、さらに、ε相は芯材の表面に均一に分布する。
【0055】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、本実施例で製造した高精度亜鉛基合金電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0056】
<比較例1>
比率に従って合金配合をする。その成分構成は、質量パーセントで、Cuが66%で、その残りはZnと、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.3%である。配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径が8mmである合金線ブランクを製造する。その後、得られた線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しをすることで直径3mmの母線を製造する。さらに、得られた母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを40umとして、第1の線ブランクを得る。電気メッキの電流は1500A、電圧は200Vとする。続いて、電気メッキをした第1の線ブランクに連続引張り、連続焼鈍しをして加工し、第2の線ブランクを製造する。ただし、引張速度は500m/min、焼鈍し電圧は80V、焼鈍し電流は50Aとする。第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.10mmでシェル層の厚さが4umである電極線の完成品を得る。熱処理温度は208℃、熱処理時間は72時間とする。最後に、熱処理をしてから得られた完成品が、様々なタイプのシャフトに巻きつけられる。電極線の完成品のシェル層の化学成分は、Znが92.1%、Cuが7.6%、不純物が0.3%である。
図8に示すように、シェル層の構造のうちε相の含量は8wt%で、その残りはη相である。
【0057】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、比較例1で製造した電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0058】
<比較例2>
比率に従って合金配合をする。その成分構成は、質量パーセントで、Cuが60%で、その残りはZnと、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.4%である。配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径が15mmである合金線ブランクを製造する。その後、得られた線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しをすることで直径1mmの母線を製造する。さらに、得られた母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを10umとして、第1の線ブランクを得る。電気メッキの電流は3000A、電圧は220Vとする。続いて、電気メッキをした第1の線ブランクに連続引張り、連続焼鈍しをして加工し、第2の線ブランクを製造する。引張速度は2000m/min、焼鈍し電圧は40V、焼鈍し電流は20Aとする。第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.10mmでシェル層の厚さが3umである電極線の完成品を得る。熱処理温度は105℃、熱処理時間は100時間とする。最後に、熱処理をして得られた完成品が、様々なタイプのシャフトに巻きつけられる。電極線の完成品のうちシェル層の化学成分は、Znが65.2%、Cuが34.62%、不純物が0.18%である。
図9に示すように、シェル層の構造のうちε相の含量は10wt%で、その残りはγ相である。
【0059】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、比較例2で製造した電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0060】
<比較例3>
比率に従って合金配合をする。その成分構成は、質量パーセントで、Cuが60%、Agが1.5%、Niが0.02%で、その残りはZnと、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.3%である。配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径が8mmである合金線ブランクを製造する。その後、得られた線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しをすることで直径1mmの母線を製造する。さらに、得られた母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを15umとして、第1の線ブランクを得る。電気メッキの電流は1600A、電圧は200Vとする。続いて、電気メッキをした第1の線ブランクに連続引張り、連続焼鈍しをして加工し、第2の線ブランクを製造する。引張速度は1000m/min、焼鈍し電圧は50V、焼鈍し電流は25Aとする。第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.10mmでシェル層の厚さが3.5umである電極線の完成品を得る。熱処理温度は190℃、熱処理時間は60時間とする。最後に、熱処理をして得られた完成品が、様々なタイプのシャフトに巻きつけられる。電極線の完成品のシェル層の化学成分は、Znが82.1%、Cuが16.92%、Agが0.6%、Niが0.009%、不純物が0.371%である。
図10に示すように、シェル層の構造のうちε相の含量は60wt%で、その残りはγ相及びη相である。
【0061】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、比較例3で製造した電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0062】
<比較例4>
比率に従って合金配合をする。その成分構成は、質量パーセントで、Cuが58%、Tiが0.15%、Coが0.004%で、その残りはZnと、原材料に付随する及び熔錬の際に付随する不可避の不純物で、不可避の不純物の含量の和は0.3%である。配合された材料を誘導炉に混合投入して熔錬し、鋳造して直径が10mmである合金線ブランクを製造する。その後、得られた線ブランクを押し出して又は多段で引っ張り、焼鈍しをすることで直径1mmの母線を製造する。さらに、得られた母線に脱脂―酸洗―水洗―亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを12umとして、第1の線ブランクを得る。電気メッキの電流は1700A、電圧は210Vとする。続いて、電気メッキをした線ブランクに連続引張り、連続焼鈍しをして加工し、第2の線ブランクを製造する。引張速度は600m/min、焼鈍し電圧は10V、焼鈍し電流は5Aとする。第2の線ブランクに合金化熱処理をして、直径が0.10mmでシェル層の厚さが3umである電極線の完成品を得る。熱処理温度は135℃、熱処理時間は56時間とする。最後に、熱処理をして得られた完成品が、様々なタイプのシャフトに巻きつけられる。電極線の完成品のシェル層の化学成分は、Znが80.3%、Cuが19.448%、Tiが0.06%、Coが0.002%、不純物が0.19%である。
図11に示すように、シェル層の構造のうちε相の含量は58wt%で、その残りはη相及びγ相である。
【0063】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、比較例4で製造した電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0064】
<比較例5>
亜鉛メッキ電極線であって、直径が0.5〜5mmである銅亜鉛合金により芯材を構成し、芯材のうちCuは63%で、その他はZnと不可避の不純物で、不可避の不純物の含量は0.3%以下である。芯材の表面に直接亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを20umとし、その後、さらに連続引張り、連続焼鈍しをして加工して、直径が0.05〜0.35mmである亜鉛メッキ電極線を製造し、シェル層の構造はη相とする。
【0065】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、上記の亜鉛メッキ電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0066】
<比較例6>
黄銅電極線であって、直径が0.5〜5mmである銅亜鉛合金により線ブランクを構成し、線ブランクのうちCuは63%で、その他はZnと不可避の不純物で、不可避の不純物の含量は0.3%以下である。そのまま連続引張り、連続焼鈍しをして加工して、直径が0.05〜0.35mmである黄銅電極線を製造し、シェル層の構造はα+β相とする。
【0067】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、上記の黄銅電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0068】
<比較例7>
高速電極線であって、直径が0.5〜5mmである赤銅により芯材を構成し、その後、芯材の表面に亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを50umとして、第1の線ブランクを得る。第1の線ブランクに熱処理をし、熱処理プロセスの温度を550℃、時間を10時間として、第2の線ブランクを得て、最後に、熱処理をした第2の線ブランクに連続引張り、連続焼鈍しをして加工して、直径が0.05〜0.35mmである高速電極線を製造し、シェル層の構造はβ相とする。
【0069】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、上記の高速電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0070】
<比較例8>
コーティング電極線であって、直径が0.5〜5mmである銅亜鉛合金により芯材を構成する。当該芯材の成分構成は、実施例1における完成品の電極線中の芯材と同じである。芯材の表面に亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを30umとして、第1の線ブランクに熱処理をし、熱処理プロセスの温度を450℃、時間を6時間として、第2の線ブランクを得て、最後に、熱処理をした第2の線ブランクに連続引張り、連続焼鈍しをして加工して、直径が0.05〜0.35mmであるコーティング電極線を製造し、シェル層の構造はγ相とする。
【0071】
マルチ電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、上記のコーティング電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0072】
<比較例9>
複合電極線であって、直径が0.5〜5mmである銅亜鉛合金により芯材を構成する。当該芯材の成分構成は、実施例3における完成品の電極線の芯材と同じである。芯材の表面に亜鉛メッキをして、亜鉛メッキ層の厚さを40umとして、第1の線ブランクに熱処理をし、熱処理プロセスの温度を600℃、時間を12時間として、第2の線ブランクを得て、上記の線ブランクに1回目の連続引張り、連続焼鈍しをして加工をし、さらに、表面に一層のγ相黄銅をメッキして、最後に、以上の熱処理をした線ブランクに2回目の連続引張り、連続焼鈍しをして加工をして、直径が0.05〜0.35mmである複合電極線を製造し、シェル層の構造はβ+γ相とする。
【0073】
万能電子伸縮計でその伸び率をテストして、示差熱分析計を用いてそのシェル層の融点をテストし、SKD61素材を試料として、上記の複合電極線の放電加工精度及びカット速度をテストすると、テストで得られるデータは、表1に示すとおりとなる。
【0074】
(表1)各実施例及び各比較例における電極線のシェル層の金属相構造、放電加工精度比
【0075】
比較例5の放電加工精度を基準とした、実施例1〜10及び比較例1、2、3、4、6、7、8、9の加工精度とその比率は、それらの加工精度の性能パラメータを表すものである。
【0076】
以上から、本発明における高精度亜鉛基合金電極線の放電加工精度は明らかな優位性を有していて、カット速度も同種の製品の水準に達しているとともに、伸び性能にも優れ、融点も相対的に高くなっている。
【0077】
上記の各実施例は、本発明を解釈、説明するためのものであって、本発明について限定をするものではない。本発明の趣旨及び請求項の保護範囲内で本発明についてするいかなる修正及び変更もすべて本発明の保護範囲に含まれるものである。
本発明は、高精度亜鉛基合金電極線に関し、そのシェル層中の各成分の構成は、質量パーセントで、Znが70.5〜95%、Cuが2.5〜27%、Xが0.02〜4.0%、Yが0.002〜0.4%で、その他は原材料に付随する不可避の不純物である。そのうち、Xは、Ni、Ag、Cr、Si、Zrのうちの任意の2種類の金属で、当該2種類の金属の含量範囲はいずれも0.01〜2.0%である。Yは、Ti、Al、Co、B、Pのうちの任意の2種類の元素で、当該2種類の元素の含量範囲はいずれも0.001〜0.2%である。シェル層の構造のうちε相の含量は80wt%以上で、その残量はγ相又はη相である。本発明は、当該電極線の製造方法についても開示しており、先行技術と比べて、本発明の電極線でカット処理をした金属ワークは、表面平滑度が高く、表面の品質もよいため、カット精度が高くなっている。また、本発明の電極線は、製造プロセスが簡単で、実施可能性が高く、製造ステップも少なく、生産の大規模化、自動化を実現しやすい。