特許第6029798号(P6029798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6029798
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】転造加工装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 17/04 20060101AFI20161114BHJP
   B21D 41/02 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   B21D17/04
   B21D41/02 C
   B21D41/02 D
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-531087(P2016-531087)
(86)(22)【出願日】2016年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2016057381
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-54191(P2015-54191)
(32)【優先日】2015年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】714003416
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100182925
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 明弘
(72)【発明者】
【氏名】西島 進之助
(72)【発明者】
【氏名】冨村 宏紀
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第6244088(US,B1)
【文献】 特開平11−314120(JP,A)
【文献】 特開2000−210723(JP,A)
【文献】 特開平11−207410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 17/04
B21D 41/02
B21D 15/04−15/06
B21H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸線を中心として回転可能な軸部と、
前記軸部の外周より、前記第1軸線を中心とした円周に沿って外方に突出し、前記第1軸線を含む平面で切断した断面形状が、外方に向かって凸状である第1溝付け部と、
前記第1軸線と平行な第2軸線を中心として回転可能で、前記第1軸線と前記第2軸線を通る平面で切断した断面形状が凹状であり、前記第1軸線に沿った方向において、前記第1溝付け部と対応する位置に配置可能で、前記第1溝付け部に対して近接及び離間する方向に移動可能な第2溝付け部と、
前記軸部の外周における、前記第1溝付け部よりも基端側に取り付けられ、前記第1溝付け部との間の前記第1軸線に沿った方向の距離が可変である鍔状の管端位置決め部材と、
被処理対象の管状部材の外周に装着されるリング部材の外周を、前記管状部材の軸である第3軸線を中心として回転可能に支える支持部材と、
を備える管状部材の転造加工装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記リング部材を間に挟む凹状の支持ローラを備える、
請求項1に記載の転造加工装置。
【請求項3】
前記支持ローラは、上下動可能であり、前記リング部材の周方向において少なくとも2箇所に設けられている、
請求項2に記載の転造加工装置。
【請求項4】
前記支持ローラは、前記管端位置決め部材に近接及び離間する方向に移動可能である、
請求項2又は3に記載の転造加工装置。
【請求項5】
前記管端位置決め部材は、前記軸部の外周において、前記第1軸線に沿った方向に移動可能である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の転造加工装置。
【請求項6】
前記第2溝付け部材の前記凹状の前記第1軸線に沿った方向における中心の、前記第1溝付け部材の前記凸状の前記第1軸線に沿った方向における中心に対する、前記第1軸線に沿った方向の相対位置を変更可能である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の転造加工装置。
【請求項7】
前記第2溝付け部材と前記第1溝付け部材との間の相対位置を測定可能な位置検出装置を備える、
請求項1から6のいずれか1項に記載の転造加工装置。
【請求項8】
前記リング部材は、前記管状部材に対して着脱可能である
請求項1から7のいずれか1項に記載の転造加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理対象である管状部材に溝を形成する転造加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道配管として、ダグタイル鋳鉄管が多く用いられている。ダグタイル鋳鉄管は鋳物製であるため形状の自由度が高い。このため、多種多様な継手が存在し、適材適所に利用されている。
一方、ステンレス鋼(SUS)の水道配管も存在するが、継手の加工が容易でないため、特定の径に限定されている。以下では、ステンレス鋼(SUS)製の水道配管を、SUS管と記す。しかし、SUS管は、ダグタイル鋳鉄管と比べて耐用年数が長い。さらに、赤水、青水等の問題が発生しにくく、常温環境下では応力腐食割れが発生しないので、ランニングコストが安い。このため、今後、種々の径のSUS管の使用が求められている。
【0003】
SUS管を接続する場合、接続する2本の管の端部の外周に溝を形成し、それらの溝に係合する継手を取り付ける。
このような溝を形成する装置として、従来、ケーシングに収容され且つ回転出力部を有する駆動伝達機構と、駆動伝達機構を駆動する電気駆動モータと、管の内面に沿って取付けられ且つ全周溝を有する駆動ローラと、管を挟んで駆動ローラに向かって押付けられ且つ全周凸部を有する溝付けローラと、管に固定され且つ管の軸線方向に対して垂直な軌道面を有する軌道リングと、軌道面に沿って管の全周にわたって移動可能にケーシングに取付けられた移動ローラを有する転造加工装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−103237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の転造加工装置は、一定の管サイズを対象とし、及び管端から一定の位置に溝を作成するものである。今後、上述のように種々の径のSUS管の使用が予想されるが、径が異なると、管端からの溝の位置も異なってくるので従来の転造加工装置を使用することはできない。
本発明の課題は、被処理対象である管状部材における多様なサイズに適用可能で、管端から任意の位置に溝を作成することできる転造加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、第1軸線を中心として回転可能な軸部と、前記軸部の外周より、前記第1軸線を中心とした円周に沿って外方に突出し、前記第1軸線を含む平面で切断した断面形状が、外方に向かって凸状である第1溝付け部と、前記第1軸線と平行な第2軸線を中心として回転可能で、前記第1軸線と前記第2軸線を含む平面で切断した断面形状が凹状であり、前記第1軸線に沿った方向において、前記第1溝付け部と対応する位置に配置可能で、前記第1溝付け部に対して近接及び離間する方向に移動可能な第2溝付け部と、前記軸部の外周における、前記第1溝付け部よりも基端側に取り付けられ、前記第1溝付け部との間の前記第1軸線に沿った方向の距離が可変である鍔状の管端位置決め部材と、被処理対象の管状部材の外周に装着されるリング部材の外周を、前記管状部材の軸である第3軸線を中心として回転可能に支える支持部材と、を備えることを特徴とする、前記管状部材の転造加工装置を提供する。
【0007】
また、前記支持部材は、前記リング部材を間に挟む凹状の支持ローラを備えてもよい。
【0008】
また、前記支持ローラは、上下動可能であり、前記リング部材の周方向において少なくとも2箇所に設けられていてもよい。
【0009】
また、前記支持ローラは、前記管端位置決め部材に近接及び離間する方向に移動可能であってもよい。
【0010】
また、前記管端位置決め部材は、前記軸部の外周において、前記第1軸線に沿った方向に移動可能であってもよい。
【0011】
また、前記第2溝付け部材の前記凹状の前記第1軸線に沿った方向における中心の、前記第1溝付け部材の前記凸状の前記第1軸線に沿った方向における中心に対する、前記第1軸線に沿った方向の相対位置を変更可能であってもよい。
【0012】
前記第2溝付け部材と前記第1溝付け部材との間の相対位置を測定可能な位置検出装置を備えてもよい。
【0013】
また、前記リング部材は、前記管状部材に対して着脱可能であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被処理管における多様なサイズに適用可能で、管端から任意の位置に溝を作成することできる転造加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の転造加工装置の概略断面図である。
図2】転造加工装置を、前方から見た概念図である。
図3】リング部材の正面図(a)及び側面図(b)である。
図4】転造加工の動作を説明する図である。
図5】リング部材の変形形態の正面図(a)及び側面図(b)である。
図6】凹ローラの中心が、凸ローラの中心と一致している場合に発生する場合がある現象を説明する図である。
図7】長手側における、凹ローラと凸ローラとの間の距離が、管端側よりも狭い場合に製造される凸部形状を示す図である。
図8】2本の被処理管を連結した状態を示す断面図である。
図9】移動機構による凹ローラの移動を説明する図である。
図10】第2実施形態の転造加工装置の概略断面図である。
図11】管端支持部を示す図である。
図12】表2の結果をグラフにしたものである。
図13】第2実施形態の転造加工装置における転造加工動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明による転造加工装置1の第1実施形態を説明する。本実施形態の転造加工装置1は、被処理対象である管状部材(被処理管2)を、溝付けの型となる凸ローラ(第1溝付け部)14と凹ローラ(第2溝付け部)15との間に挟んで回転させ、金属の可塑性を利用した「塑性加工」により被処理管2に溝を付ける転造加工装置である。
【0017】
図1は本発明の第1実施形態の転造加工装置1の、後述する第1軸線C1に沿った概略断面図である。ただし、図は説明容易のため簡略化したものであり、正確な断面を示すものではない。
以下、図示するように、軸部13の第1軸線C1に沿った方向を前後方向とし、被処理管2が装着される側を前、反対側を後ろとして説明する。また、転造加工装置1が配置されたときの上下となる方向を上下方向とする。
図2は、転造加工装置1を、前方から見た概念図である。以下、図示するように、前後方向及び上下方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0018】
転造加工装置1は、溝付け機構10と、被処理管2の管端2aを位置決めする管端位置決め部材30と、被処理管2を支持する管支持機構50と、を備え、全体がフレーム70に固定されている。
【0019】
(フレーム)
まず、転造加工装置1のフレーム70について説明する。
フレーム70は、転造加工装置1の前後方向の両端に設けられたそれぞれ2本の前脚部71及び後脚部72と、2本の前脚部71の間を左右に架け渡された前板部73と、2本の後脚部72の間を左右に架け渡された後板部74と、前板部73と後板部74との間に前後に架け渡された溝付板部75と、を備える。
溝付板部75には、図示するように、長手方向に沿って細長いスライドガイド溝79が形成されている。スライドガイド溝79は、左右方向の中央部において溝付板部75を貫通している。
フレーム70は、さらに、後述の駆動モータ11が固定される固定台76と、固定台76の前側から上方に延びる保持板77と、保持板77の左右に設けられたレール保持壁78と、を備える。
【0020】
(溝付け機構)
溝付け機構10は、駆動モータ11と、駆動モータ11の回転軸に連結され、ベアリング部12により回転自在に固定台76に保持された軸部13と、軸部13の前側の外周に設けられた凸ローラ14とを備える。
【0021】
(軸部)
軸部13は円柱状で、第1軸線C1を中心として回転する。
軸部13の基端は、上述のように固定台76に固定されたベアリング部12を介して駆動モータ11の回転軸に取り付けられている。
【0022】
(凸ローラ)
凸ローラ14は、軸部13の外周において第1軸線C1を中心とした円環状に形成されている。凸ローラ14は軸部13と別体で軸部13の外周に装着するものであってもよく、また軸部13と一体形成されているものであってもよい。
凸ローラ14の前後方向の断面は、図1に示すように軸部13の外方に突出した半円状が好ましい。
【0023】
また、溝付け機構10は、凸ローラ14の上部に配置された凹ローラ15と、凹ローラ保持部16と、凹ローラ15及び凹ローラ保持部16を上下するシリンダ17と、を備える。
【0024】
(凹ローラ)
凹ローラ15は、図1に示すように、2つの円板部材15aの間に円柱部材15bを配した形状で、前後方向の断面が略H型の部材である。
凹ローラ15の中心には、第2軸線C2に沿って回転軸15cが挿入され、回転軸15cの両端は円板部材15aから突き出している。
凹ローラ15と凸ローラ14とは、間に被処理管2を挟むことにより被処理管2に溝を形成する。
【0025】
(凹ローラ保持部)
凹ローラ保持部16は、矩形の本体部16dの前後の両端より、2つの矩形の保持板16aが下方に延びた部材で、図1に示すように断面はコの字型である。
保持板16aには、それぞれ孔16bが設けられている。この孔16bにはベアリング16cが配置されており、ベアリング16cには凹ローラ15の回転軸15cが挿入されている。これによって凹ローラ15は、凹ローラ保持部16に対して回転可能となり、軸部13及び被処理管2の回転に合わせて回転することができる。
【0026】
凹ローラ保持部16の上部には、シリンダ17のシリンダロッド17aが取り付けられている。シリンダ17は、シリンダチューブ17bの中にピストン(図示せず)が配置され、ピストンがシリンダチューブ17b内を上下動することによって、ピストンから延びるシリンダロッド17aも上下動する。
【0027】
さらに、転造加工装置1は、シリンダ17を介して溝付け機構10を前後に移動させる移動機構80を備える。
移動機構80は、シリンダ17を保持する移動ブロック81と、移動ブロック81に設けられた挿通ねじ孔82を貫通するボールねじ83と、ボールねじ83を回転させるハンドル84と、移動ブロック81をスライドさせるレール85とを備える。
【0028】
移動ブロック81は、矩形の厚板部材で、前後に貫通するように形成された挿通ねじ孔82を備える。移動ブロック81の下面の左右縁部には、スライド部86が取り付けられ、移動ブロック81の中央部には開口部87が設けられている。
開口部87には、シリンダ17がはめ込まれて固定されている。
挿通ねじ孔82は、本実施形態では移動ブロック81の左側に設けられ、内面がねじ切りされている。そしてその挿通ねじ孔82には、ボールねじ83が挿入されている。
【0029】
レール85は、フレーム70における上述のレール保持壁78の上部に取り付けられている。スライド部86は、下面にスライドガイド溝88が設けられ、スライドガイド溝88にレール85が挿入されている。
ボールねじ83の端部に取り付けられたハンドル84を回転させると、ボールねじ83が回転し、それによって移動ブロック81は前後に移動する。
【0030】
(管端位置決め部材)
軸部13における、凸ローラ14とベアリング部12との間には、円環状の管端位置決め部材30が配置されている。管端位置決め部材30は、所定厚さの円環板部材である。
管端位置決め部材30の内径は軸部13の外径と略同径で、軸部13の外周に装着されている。管端位置決め部材30の外径は、凸ローラ14の外径に被処理管2の厚みを足した長さより長い。
管端位置決め部材30には、外周側から内周側に延びる貫通ねじ孔32が設けられている。貫通ねじ孔32には、長ねじ31が螺合されている。
管端位置決め部材30を軸部13の外周に装着し、貫通ねじ孔32より長ねじ31をねじ込んで、長ねじ31を軸部13に押圧することで、管端位置決め部材30を軸部13に固定することができる。
また、長ねじ31を緩めると、管端位置決め部材30を軸部13の長手方向(前後方向)の任意の位置に移動させることができる。
すなわち、管端位置決め部材30と凸ローラ14との間隔は、任意に調整可能である。
【0031】
(管支持機構)
管支持機構50は、被処理管2の外周に装着されるリング部材51と、リング部材51を回転可能に支持する支持ローラ55と、支持ローラ55を回転可能に支持するローラ支持部57とを備える。
【0032】
(リング部材)
図3は、リング部材51の正面図(a)及び側面図(b)である。
図示するように、リング部材51は、被処理管2の外周に装着される部材である。リング部材51は、2つの半円部52,53に分割されており、半円部52,53は、ボルト54によって連結されている。
一方の半円部52の端部には、ボルト孔52aが設けられている。
他方の半円部53の端部は、ボルト54の頭部54aが貫通せず且つボルト54のねじ部54bが貫通する孔53aが設けられた壁部53bを形成するようにカットされている。
リング部材51の内径は、被処理管2の外径と略同様で、ボルト54を半円部53の壁部53bの孔53aより挿入し、一方の半円部52の端部のボルト孔52aにねじ込むことにより、リング部材51を被処理管2に固定可能である。
リング部材51は、被処理管2の外径に応じて、複数用意されており、被処理管2の寸法に合わせて交換可能である。
【0033】
(支持ローラ)
支持ローラ55は、リング部材51を下方より保持するようにリング部材51の周囲に2つ(第1支持ローラ55A、第2支持ローラ55B)設けられている。
それぞれの支持ローラ55は、図1に示すように、2つの円板部材55aの間に円柱部材55bを配した状態の断面H型のローラである。
支持ローラ55の中心には、回転軸56が挿入され、回転軸56の両端は円板部材55aから突き出している。
【0034】
(ローラ支持部)
ローラ支持部57は、2つの同形の矩形の横板(第1横板57a、第2横板57b)の底辺の間に、1つの矩形の底板57cを配置して第1横板57aと第2横板57bとを連結した部材で、図1に示すように断面コの字型である。
第1横板57a、第2横板57bには、図2に示すように、それぞれ2つの孔58(第1孔58a、第2孔58b)が設けられている。
ローラ支持部57における第1横板57aの第1孔58aに第1支持ローラ55Aの回転軸56の突出部の一方が挿入され、第2横板57bの第1孔58aに第1支持ローラ55Aの回転軸56の突出部の他方が挿入されている。
また、ローラ支持部57における第1横板57aの第2孔58bに第2支持ローラ55Bの回転軸56の突出部の一方が挿入され、第2横板57bの第2孔58bに第2支持ローラ55Bの回転軸56の突出部の他方が挿入されている。
これにより、第1支持ローラ55A、第2支持ローラ55Bは、ローラ支持部57に対して回転可能となり、リング部材51を回転自在に保持することができる。
【0035】
(円柱部材)
ローラ支持部57は、円柱部材59に保持されている。円柱部材59の外周面には、ねじ切り部59aが形成されている。
円柱部材59は、矩形のスライド部60を貫通し、さらに上述の溝付板部75のスライドガイド溝79を貫通している。
スライド部60の左側端部には、2つのボルト用孔60aが設けられている。そのボルト用孔60aに挿入されたボルト60bは、ボルト頭がスライド部60の上面に保持され、ねじ部がスライド部60及び溝付板部75のスライドガイド溝79に挿通されている。
ねじ部には、スライドガイド溝79の左右の幅より径の大きいナット60cが、溝付板部75の下面側よりねじ込まれている。ナット60cを締めることにより、スライド部60は溝付板部75に対して固定される。ナット60cを緩めることにより、スライド部60は前後方向にスライドガイド溝79に沿って移動可能となる。これにより、支持ローラ55及びローラ支持部57の前後移動が可能となる。
【0036】
円柱部材59のスライド部60より下部には、スクリュージャッキ61が配置されている。スクリュージャッキ61からは回転操作軸61aが左右方向に延び、その先端にハンドル61bが取り付けられている。
ハンドル61bを回すと、スクリュージャッキ61の内部のギアが回転し、円柱部材59を上下する。円柱部材59が上下すると、円柱部材59より上方に配置されている支持構造も上下する。
なお、ローラ支持部57から2本のガイド62が下方に延びてスライド部60を挿通し、ローラ支持部57の回転や傾きを抑制している。
【0037】
(動作の説明)
次に、本実施形態の転造加工装置1の動作について説明する。
1)まず、ハンドル84を回転させることにより、移動ブロック81を前後方向に移動させる。そして凹ローラ15の中心(前後方向の中心)が、凸ローラ14の中心(前後方向の中心)と一致するように、凹ローラ15の前後方向位置を合わせる。
【0038】
2)管端位置決め部材30から凸ローラ14の中心P1までの距離が、被処理管2の管端2aから被処理管2において溝を形成する転造加工位置までの距離と同じになる第1位置P2に、管端位置決め部材30を軸部13の外周においてスライドさせる。
第1位置P2において、管端位置決め部材30の貫通ねじ孔32から、長ねじ31をねじ込んで、長ねじ31を軸部13に押圧する。これにより、管端位置決め部材30が軸部13の所望の第1位置P2に固定される。
【0039】
3)溝を形成する被処理管2の外径に適した内径を有するリング部材51を選択する。そして、リング部材51の2つの半円部52、53を被処理管2の外周に配置し、ボルト54を、半円部53の壁部53bの孔53aより挿入し、一方の半円部52の端部のボルト孔52aにねじ込む。これにより、リング部材51が被処理管2に固定される。
【0040】
4)次いで、凸ローラ14に被処理管2を被せ、被処理管2の管端2aを管端位置決め部材30に接触させる。これにより、被処理管2の転造加工位置が、凸ローラ14と凹ローラ15との中心P1に配置される。
【0041】
5)スライド部60のボルト60bを緩め、スライドガイド溝79に沿ってスライド部60をスライドさせる。そして、支持ローラ55における第1支持ローラ55Aと第2支持ローラ55Bにおける、円柱部材55b上の保持凹部が、被処理管2に装着されているリング部材51の位置にくるように、支持ローラ55の前後方向位置を調整する。
【0042】
6)スクリュージャッキ61のハンドル61bを回転させて、支持ローラ55の保持凹部にリング部材51が入るように、支持ローラ55の上下方向位置を調整する。これにより、被処理管2が水平に保たれる。
そして、再度、スライドガイド溝79に沿ってスライド部60をスライドさせて、被処理管2の管端2aが管端位置決め部材30に当接するように被処理管2を押し付けることで、被処理管2の前後方向の微調整を行う。この状態で、ボルト60bを締め、スライド部60、すなわちリング部材51及び被処理管2の前後方向の位置を固定する。
以上の工程により、転造加工の準備が完了する。
【0043】
7)次に、被処理管2に溝を形成する転造加工を行う。図4は転造加工の動作を説明する図である。
転造加工を行う際、シリンダ17を作動させ、シリンダロッド17a及び凹ローラ15を下降させ、凹ローラ15を被処理管2の外周に接触させる(図4(a)の状態)。
【0044】
8)駆動モータ11を作動させ、軸部13及びその外周に設けられた凸ローラ14を回転させた状態で、凹ローラ15を凸ローラ14に近接する方向にさらに下降させる。
凹ローラ15が被処理管2に接触した後、さらに凹ローラ15を下降させると、接触箇所であるQ1,Q3において凹ローラ15が被処理管2の壁面を内側に押圧する。一方、凸ローラ14と被処理管2との接触箇所であるQ2の上下方向の位置は変わらないので、図4(b)に示すように、被処理管2の壁面に凸部20が形成される。
軸部13は第1軸線C1を中心として回転しているので、この回転に合わせて凸ローラ14も回転し、被処理管2も、被処理管2自体の中心である第3軸線C3を中心として回転する。この回転により被処理管2の全周に凸部20が形成され、溝となる。
【0045】
9)凹ローラ15の下降に伴って溝が形成されると、溝の深さと同程度(被処理管2の板厚減少が生じるため、溝の深さと被処理管2の下がる量とは完全には一致しない)被処理管2も下がる。被処理管2を水平に保つように、再度スクリュージャッキ61を回転させて、図4に示すように、支持ローラ55の中心軸線である第4軸線C4の位置を下げて支持ローラ55の高さ調整を行う。
【0046】
10)被処理管2の溝の深さが目的の深さになるまで凹ローラ15の下降と支持ローラの高さ調整を行う(図4(c))。なお、支持ローラ55の高さ調整は、凹ローラ15の圧下とリニアに対応していなくても、管端から管端位置決め部材30が外れなければ、前後方向の位置決めは可能である。ある程度の全周凸部20が形成されれば、凸ローラ14と凹ローラ15に被処理管2が挟み込まれ、全周凸部20がガイドの役目もするため、支持ローラ55をリング部材51から退避させても成形が可能となる。
そして、溝の深さが所望の深さになった時点で、転造加工を終了する。
【0047】
以上、本実施形態の転造加工装置1は以下の効果を有する。
(1)第1軸線C1を中心として回転可能な軸部13と、軸部13の外周より、第1軸線C1を中心とした円周に沿って外方に突出し、第1軸線C1を含む平面で切断した断面形状が、外方に向かって凸状の凸ローラ14と、第1軸線C1と平行な第2軸線C2を中心として回転可能で、第1軸線C1と前記第2軸線C2を含む平面で切断した断面形状が凹状で、第1軸線C1に沿った方向において、凸ローラ14と同位置に配置可能で、凸ローラ14に対して近接及び離間する方向に移動可能な凹ローラ15と、を備える。
これにより、凹ローラ15と凸ローラ14との間に被処理管2を挟んだ状態で凹ローラ15を凸ローラ14に対して近接させることで、被処理管2に凸部20を形成することができる。
そして、凸ローラ14を回転させすることで、被処理管2に形成された凸部20を被処理管2の周囲に延ばし、溝を形成することができる。
【0048】
(2)また、軸部13の外周における、凸ローラ14よりも基端側に取り付けられ、凸ローラ14との間の第1軸線C1に沿った方向の距離が可変である鍔状の管端位置決め部材30と、被処理管2の外周に装着されるリング部材51の外周を、被処理管2の第2軸線C2を中心として回転可能に支えられた凹ローラ15と、を備える。
このように管端位置決め部材30は、凸ローラ14との間の第1軸線C1に沿った方向の距離が可変であるので、管端2aから任意の位置に溝を作成することできる。
【0049】
(3)また、被処理管2に装着されるリング部材51の外周を、第4軸線C4を中心として回転可能に支えられた支持ローラ55と支持部材57と、を備える。
これにより、被処理管2の加工中のずれを防止することができる。
【0050】
(4)支持部材57は、被処理管2に固定されたリング部材51を間に挟む凹状の支持ローラ55を備える。このため、被処理管2及びリング部材51が回転しても、滑らかに保持することができる。
【0051】
(5)支持ローラ55は、上下動可能であり、リング部材51の周方向において少なくとも2箇所に設けられている。このため、多様なサイズの被処理管2を保持することが可能である。
【0052】
(6)支持ローラ55は、管端位置決め部材30に近接及び離間する方向に移動可能である。このため、被処理管2を管端位置決め部材30に押し付けることが可能で、被処理管2の安定した加工が可能となる。
【0053】
(7)管端位置決め部材30は、軸部13の外周において、第1軸線に沿った方向に移動可能である。これによると、上述のように管端位置決め部材30は、凸ローラ14との間の第1軸線C1に沿った方向の距離が可変であるので、管端2aから任意の位置に溝を作成することできる。
【0054】
(8)リング部材51は、被処理管2に対して着脱可能であるので、1つのリング部材51を複数の被処理管2に使用することができ、コスト削減が可能である。
【0055】
(9)また、本実施形態において、図4(a)に示すQ1,Q2,Q3,Q4の箇所が接触しているので、加工初期での水平状態を確保可能することが可能である。そして加工が進み、溝部がある程度形成されると、溝部自体がガイドとなるため倒れ込みや、加工部がズレることが防止される。
【0056】
(変形形態)
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0057】
上記実施形態では、リング部材51が、2つの半円部52,53に分割されており、半円部52,53は、ボルト54によって連結されている形態について説明したが、これに限定されない。図5は、リング部材の変形形態の正面図(a)及び側面図(b)である。
変形形態のリング部材51’は、外周側から内周側に延びる貫通ねじ孔51a、51bが2か所に設けられている。貫通ねじ孔51a、51bには、それぞれ長ねじ51c、51dが螺合されている。
リング部材51’を被処理管2の外周に装着し、貫通ねじ孔51a、51bより長ねじ51c、51dをねじ込んで、長ねじ51c、51dを被処理管2に押圧することで、リング部材51’を被処理管2に固定することができる。
また、長ねじ51c、51dを緩めると、リング部材51’を被処理管2の長手方向(前後方向)の任意の位置に移動させることができる。
本変形形態においても、リング部材51’は、被処理管2の外径に応じて、複数用意されており、被処理管2の寸法に合わせて交換可能である。
【0058】
上記実施形態では、支持ローラ55が、リング部材51の周囲に2つ(第1支持ローラ55A、第2支持ローラ55B)設けられている形態について説明した。しかし発明はこれに限定されず、被処理管2の上下方向及び前後方向の位置のずれを制限することができれば、支持ローラ55は、被処理管2の周方向において1箇所だけに設けられてもよいし、3箇所以上に設けられてもよい。
【0059】
上記実施形態では、リング部材51の断面が凸状で、支持ローラ55の断面が凹状である例について説明したが、これに限定されない。例えば、リング部材51の断面が凹状で、支持ローラ55の断面が凸状であってもよい。
【0060】
上記実施形態では、凸ローラ14が被処理管2の内面に配置され、凹ローラ15が被処理管2の外面に配置された例について説明したが、これに限定されない。例えば、凸ローラが被処理管2の外面に配置され、凹ローラが被処理管2の内面に配置されていてもよい。
【0061】
上記実施形態では、駆動モータ11によって軸部13を回転する形態について説明したが、これに限定されず、手動により軸部13を回転してもよい。
【0062】
さらに、本実施形態では、軸部13が固定され、管端位置決め部材30が軸部13に対して移動可能な形態について説明したが、これに限定されない。
例えば、管端位置決め部材30が固定台76bに対して固定され、軸部13に設けられた凸ローラ14が固定台76に対して移動可能な形態であってもよい。
この場合、本実施形態は凹ローラ15が、第1軸線C1に沿った方向に移動可能であるので、凸ローラ14の位置に合わせて凹ローラ15の位置を調整することができる。
【0063】
(第2実施形態)
第1実施形態では、上述のように、ハンドル84を回転させることにより、移動ブロック81を前後方向に移動させる。そして凹ローラ15の中心が、凸ローラ14の中心(前後方向の中心)と一致するように、凹ローラ15の前後方向位置を合わせる。この凹ローラ15の中心と凸ローラ14の中心とが一致した状態で、転造加工を行い、凸部20を形成する。
【0064】
第1実施形態のように、凹ローラ15の中心と凸ローラ14の中心とが一致している場合、通常は良好な凸部20が形成される。しかし、被処理管2の材料の硬度や、凸ローラ14を押圧する速度や力の関係で、以下の現象が生じる場合がある。
【0065】
図6は、凹ローラ15の中心が、凸ローラ14の中心と一致している際に、発生する場合のある現象を説明する図であり、図4に対応している。
まず、第1実施形態において説明したように、凹ローラ15を被処理管2の外周に接触させる(図6(a)の状態)。
凸ローラ14を回転させた状態で、凹ローラ15を凸ローラ14に近接する方向にさらに下降させる。
凹ローラ15が被処理管2に接触した後、さらに凹ローラ15を下降させると、接触箇所において凹ローラ15が被処理管2の壁面を内側に押圧し、図6(b)に示すように、被処理管2の壁面に凸部20が形成される。
軸部13は第1軸線C1を中心として回転しているので、この回転に合わせて凸ローラ14も回転し、被処理管2も、被処理管2自体の中心である第3軸線C3を中心として回転する。この回転により被処理管2の全周に凸部20が形成され、溝となる。
【0066】
ここで、軸部13は、片持ち状態で保持されている。すなわち、軸部13の長手方向の管端側は、ベアリング部12及び駆動モータ11を介して固定台76に保持されている(図1参照)が、それと逆側(長手側)の凸ローラ14が取り付けられている側は、保持されていない状態である。
このため、例えば、被処理管2の材料の硬度、凸ローラ14を押圧する速度、形成する凸部2の高さ等によっては、軸部13が、図6(b)、図6(c)に示すように、凹ローラ15による押圧方向(図中下方)に傾く場合がある。
【0067】
このように軸部13が傾くと、図6(c)に示すように、第1軸線C1に沿った方向の長手側における、凹ローラ15と凸ローラ14との距離L2が、管端側における凹ローラ15と凸ローラ14との距離L1よりも狭くなる。
図7は、このような場合に製造される可能性のある凸部20を示す図である。図7に示すように、凹ローラ15と凸ローラ14との距離L2が、管端側における凹ローラ15と凸ローラ14との距離L1よりも狭い場合、加工された被処理管2の凸部20における、管端側の厚さt1よりも長手側t2の厚さが薄くなる場合がある。
【0068】
被処理管2として、(1)呼び径80A(外径90mm、板厚3mm)、(2)呼び径150A(外径165mm、板厚3.5mm)、(3)呼び径250A(外径267mm、板厚4.0mm)のSUS304鋼管を用いて、凹ローラ15の中心が、凸ローラ14の中心と一致している際に凸部20を形成し、実際にt1とt2とを測定した結果を以下の表1に示す。なお、凸部20の高さは、それぞれ6mm、8mm、8.5mmである。
【表1】
【0069】
表1に示すように、t1とt2の厚さに差Δtが生じた場合、以下のような現象が生じる場合がある。
図8は、2本の被処理管2を連結した状態を示す断面図である。図示するように、2本の被処理管2を連結する際、ハウジング型の管継手21によって固定される。この場合、凸部20をハウジング23の内周側開口溝24に内側より係合する。このように連結された2本の被処理管2に対して、図8に示すように、両方の管に互いに離れる方向に力が加わると、凸部20における、薄くなっている側(厚さt2)側の強度が弱くなるので、割れが発生する可能性がある。
【0070】
そこで、第2実施形態は、図9(a)の状態から図9(b)の状態となるように、移動機構80(図1に図示)により凹ローラ15を移動させる。そして、凹ローラ15の中心P1Aと、凸ローラ14の中心P1Bとをずらす。なお、本実施形態では凹ローラ15を凸ローラ14に対して移動させるが、これに限定されず、凸ローラ14を凹ローラ15に対して移動させてもよく、両者が相対的に移動する構造であればよい。さらに、例えば、凹ローラ15の回転軸15cの両端に設けられた円板部材15aを左右非対称にし、第1軸線C1に沿った前後方向の向きを変えることにより凹ローラ15の中心P1Aと、凸ローラ14の中心P1Bとをずらすようにしてもよい。
【0071】
図10は第2実施形態の転造加工装置1Aの概略断面図である。
第2実施形態の転造加工装置1Aが第1実施形態と異なる点は、位置検出装置100を備える点と、管端支持部110を備える点である。他の構成については第1実施形態と同様であるので同様な部分の説明は省略する。
【0072】
位置検出装置100は前後(X方向)の位置検出部100Xと、上下方向(Y方向)の位置検出部100Yと、を備える。
例えば、位置検出部100Xは、例えば、レール85に設けられたスケール(図示せず)に対する、自己の位置の検出が可能である。
レール85は、溝付け機構10及びフレーム70に固定されている。したがって、溝付け機構10に対して管端位置決め部材30及び凸ローラ14の位置を固定した状態において、位置検出部100Xは、凸ローラ14の凹ローラ15に対する移動量、すなわち、凹ローラ15の中心P1Aと、凸ローラ14の中心P1Bとのずれ量ΔXを検出可能である。
【0073】
また、位置検出部100Yは、例えば、シリンダチューブ17bに対するシリンダロッド17aの位置を検出可能である。
【0074】
(管端支持部)
図11は管端支持部110を、図10と直交する方向の前側(図中左側)から見た図である。管端支持部110は、2つのベアリング111と、そのベアリング111をそれぞれ回転可能に保持する2枚の板部材112と、を備える。2枚の板部材112はL字型に連結されている。2枚の板部材112の連結部分113の下部からは支持軸114が延び、支持軸114の下端は、支持筒115に挿通されている。支持筒115は、更に下端に設けられた保持筒116に挿通されている。
支持軸114は、支持筒115の上端に設けられたジャッキ117を回転することにより、支持筒115に対して上下動する。支持筒115は、保持筒116に対して伸縮可能である。また、保持筒116を垂直に保持するための3本の脚部118が設けられている。管端支持部110は、被処理管2の、中央よりも前側に配置されている。
【0075】
第2実施形態の転造加工装置1Aによると、上述のように位置検出部100Xは、凸ローラ14と凹ローラ15とのずれ量ΔXを検出可能である。
以下の表は、上述のように被処理管2として(1)呼び径80A(外径90mm、板厚3mm)、(2)呼び径150A(外径165mm、板厚3.5mm)、(3)呼び径250A(外径267mm、板厚4.0mm)のSUS304鋼管を準備し、ずれ量ΔXを変化させて凸部2を形成し、管端側厚みt1(mm)と、長手側厚みt2(mm)とを測定した結果と、その結果より、t1とt2との差Δtを求めた値を示す表である。
【表2】
図12は、表2の結果をグラフにしたものである。
表2及び図12のグラフより、(1)呼び径80AのときはΔXが0.9mm付近、(2)呼び径150AのときはΔxが1.0mm付近、(3)呼び径250AのときはΔXが1.2mm付近でΔtがゼロに近くなる。
【0076】
本実施形態においては、このようにΔtが略ゼロになるようなΔXを求めるために、まず、複数のテスト用の被処理管2に対して、ΔXを変化させて転造加工を行う。
そして、ΔXが異なる状態で凸部20が形成された複数の被処理管2における凸部20の管端側の厚みt1と長手側の厚みt2とを測定する。
ここで、図12に示すように、Δtは近似的にΔXの一次関数とみなせる。ゆえに、少なくとも2つのテスト用の被処理管2により求めたΔtのΔXに対する関数を求める。そして、その関数よりΔtがゼロになるときのΔX1を求める。
凸ローラ14に対する位置がΔX1となる位置に、凹ローラ15を配置する。そして、その状態で、転造加工装置1により、転造加工を行う。
【0077】
図13は、ΔtがゼロになるΔX1だけ、凹ローラ15の中心P1Aと凸ローラ14の中心P1Bとをずらした転造加工装置1Aの動作を説明する図である。
まず、第1実施形態において説明したように、凹ローラ15を被処理管2の外周に接触させる(図13(a)の状態)。
凸ローラ14を回転させた状態で、凹ローラ15を凸ローラ14に近接する方向にさらに下降させる。
凹ローラ15が被処理管2に接触した後、さらに凹ローラ15を下降させると、接触箇所において凹ローラ15が被処理管2の壁面を内側に押圧し、図13(b)に示すように、被処理管2の壁面に凸部20が形成される。
【0078】
軸部13は第1軸線C1を中心として回転しているので、この回転に合わせて凸ローラ14も回転し、被処理管2も、被処理管2自体の中心である第3軸線C3を中心として回転する。この回転により被処理管2の全周に凸部20が形成され、溝となる。
【0079】
ここで、軸部13は傾くが、実施形態においてΔX1は、Δtがゼロになるように設定された値であるので、加工された被処理管2の凸部20における、管端側の厚みt1と長手側の厚みt2とは略同じ厚さになる。
【0080】
したがって、本実施形態によると、管端側の厚みt1と長手側の厚みt2とは略同じ厚さになるので、凸部20の強度が偏ることがない。ゆえに、2本の被処理管2が、ハウジング型の管継手21によって連結されている際に、両方の被処理管2に対して互いに離れる方向に力が加わっても、凸部20に割れが発生する可能性が低減される。
本実施形態によると、位置検出部100X,100Yを有しているので、凹ローラ15と凸ローラ14との間の正確な位置を把握可能である。したがって、ΔtがゼロになるようなΔX1の調節が容易であり、Δtをゼロにすることが容易である。
【0081】
また、被処理管2も片持ちである。そうすると、被処理管2が長尺の場合、凸ローラ14によって支えられていない端部(図中左側、前側)が、自重によって撓む可能性がある。しかし、実施形態は管端支持部110を備える。
管端支持部110における被処理管2を保持するベアリング111は、ジャッキによって支持軸114を介して上下動可能である。したがって、異なる径を有する被処理管2に対しても、被処理管2の側面を、転造加工前に被処理管2が水平を保つように保持することが可能である。したがって、転造加工中に、被処理管2の水平が保たれるので、転造加工時における被処理管の変形等が生じない。また、ベアリング111によって保持されているので、被処理管2を前後に容易に異動可能であるので、転造加工装置1Aへの被処理管2の装着も容易である。
【0082】
なお、本実施形態では、ΔtがゼロになるようにΔX1を調節したが、これに限らない。即ち、Δtがマイナス、つまり長手側厚みt2(mm)が管端側厚みt1(mm)よりも厚くなるようにΔX1を調節してもよい。これにより、連結された2本の被処理管2に対して、、互いに離れる方向に力が加わった場合における凸部20の強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0083】
C1 第1軸線
C3 第3軸線
1 転造加工装置
2 被処理管
10 溝付け機構
11 駆動モータ
13 軸部
14 凸ローラ
15 凹ローラ
16 凹ローラ保持部
17 シリンダ
30 管端位置決め部材
50 管支持機構
51 リング部材
52 半円部
53 半円部
55 支持ローラ
57 ローラ支持部
59 円柱部材
70 フレーム
80 移動機構
100X,100Y 位置検出部
110 管端支持部

【要約】
被処理管における多様なサイズに適用可能で、管端から任意の位置に溝を作成することできる転造加工装置を提供する。
本発明の転造加工装置1は、第1軸線C1を中心として回転可能な軸部13と、軸部13の外周より、円周に沿って外方に突出し、断面形状が凸状である凸ローラ14と、第1軸線C1と平行な第2軸線を中心として回転可能で、断面形状が凹状であり、第1軸線C1に沿った方向において、凸ローラ14と対応する位置に配置可能で、凸ローラ14に対して近接及び離間する方向に移動可能な凹ローラ15と、軸部13の外周における凸ローラ14よりも基端側に取り付けられ、凸ローラ14との間の第1軸線C1に沿った方向の距離が可変の管端位置決め部材30と、被処理管2の外周に装着されるリング部材51の外周を、被処理管2の軸である第3軸線C3を中心として回転可能に支える支持部材57とを備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13