(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の列車情報には、無線通信装置を搭載した第1の列車で測定された前記第1の列車の在線位置、パンタ点電圧の電圧値、架線から供給される電流の電流値、力行電力、回生電力、および前記第1の列車で推定された回生可能電力の情報が含まれ、
前記第2の列車情報には、無線通信装置を搭載していない第2の列車の在線位置、力行電力、回生電力、および回生可能電力の情報が含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の直流き電電圧算出装置。
前記第1の列車情報には、無線通信装置を搭載した第1の列車で測定された前記第1の列車の在線位置、パンタ点電圧の電圧値、架線から供給される電流の電流値、力行電力、および回生電力の情報が含まれ、
前記第2の列車情報には、無線通信装置を搭載していない第2の列車の在線位置、力行電力、回生電力、および回生可能電力の情報が含まれ、
前記列車運転情報推定部は、前記第1の列車情報に含まれる前記電圧値および前記電流値に基づいて、前記第1の列車の回生可能電力を推定し、推定した前記第1の列車の回生可能電力の情報を前記列車運転情報に含めて出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の直流き電電圧算出装置。
前記列車運転情報推定部は、前記複数の変電所で測定された電圧値および列車の方面別のき電線の電流値、前記変電所の位置情報、前記第1の列車情報に含まれる前記第1の列車の在線位置、パンタ点電圧の電圧値、および架線から供給される電流の電流値、に基づいて、前記第2の列車の在線有無を推定し、前記第2の列車の在線有無の情報を前記列車運転情報に含めて出力する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の直流き電電圧算出装置。
前記列車運転情報推定部は、分割された区間のうち複数の区間で前記第2の列車が在線していると推定した場合、前記第2の列車が在線していると推定された区間を全て含む区間を1つの区間とみなし、1つの区間とみなした区間において、前記第2の列車情報を推定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の直流き電電圧算出装置。
電気鉄道の直流電化区間におけるき電線へ電力を供給する変電所および前記き電線の電圧値を測定する電圧センサと接続され、前記き電線へ印加する変電所電圧を算出する直流き電電圧算出装置であって、
前記直流電化区間に在線する列車における回生電力絞り込み量を制御する情報を含む列車モデル情報と、前記変電所および前記電圧センサの位置情報を含むき電網モデル情報と、前記変電所電圧の制御情報を含む変電所モデル情報とを含むモデル情報を格納するモデル情報格納部と、
前記モデル情報と、前記変電所で測定された電圧値および列車の方面別のき電線の電流値と、前記電圧センサで測定された電圧値と、無線通信装置を搭載した列車の第1の列車情報とに基づいて、前記直流電化区間に在線する無線通信装置を搭載していない列車の第2の列車情報を推定し、前記第1の列車情報および前記第2の列車情報を含む列車運転情報を出力する列車運転情報推定部と、
前記モデル情報と前記列車運転情報とに基づいて、前記直流電化区間に在線する回生車における回生電力が高まるように前記変電所電圧を制御する変電所電圧設定値を算出し、前記変電所電圧設定値を前記変電所に出力する変電所電圧設定値算出部と、
を備えることを特徴とする直流き電電圧算出装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態にかかる直流き電電圧算出装置、直流き電電圧制御システム、および直流き電電圧算出方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる直流き電電圧算出装置100の構成例を示すブロック図である。直流き電電圧算出装置100は、モデル情報格納部1と、列車運転情報推定部2と、変電所電圧設定値算出部3と、無線通信部4と、を備える。
【0011】
図2は、実施の形態1にかかる直流き電電圧制御システム200の構成例を示す図である。直流き電電圧制御システム200では、直流き電電圧算出装置100が、例えば、図示しない指令所などに配置され、LAN(Local Area Network)などのネットワーク300を介して変電所5に接続されている。また、直流き電電圧算出装置100は、無線通信によるネットワーク400を介して列車8に接続されている。直流き電電圧制御システム200は、電気鉄道の直流電化区間におけるき電線へ印加する変電所電圧を制御するシステムである。
【0012】
ここで、直流き電電圧算出装置100における直流き電電圧制御概念について説明する。直流電化区間を走行する列車は、制動の際、回生ブレーキにより電力回生を行う。以下、この電力回生を行っている列車を「回生車」、回生ブレーキで発生した回生電力の最大値であって回生電力絞り込み制御がなければ回生できる予定だった電力を「回生可能電力」、回生可能電力の場合に回生車から架線へ供給される電流を「回生可能電流」、回生可能電力に回生電力絞り込み量を考慮した電力であって実際に架線へ回生できる電力を「回生電力」と称する。また、回生車で発生した回生電力は、力行を行っている列車に架線を通じて供給される。以下、この力行を行っている列車を「力行車」、力行車の走行に必要な電力を「力行電力」と称する。
【0013】
図3は、回生車における回生絞り込み制御の一例を示す図である。横軸は回生車のパンタグラフが架線に接する点の電圧であるパンタ点電圧を示し、縦軸は回生車から架線に供給される回生電流を示す。回生電力はパンタ点電圧と回生電流との積である。回生車が回生電流、すなわち回生電力を架線に供給すると、パンタ点電圧が上昇する。このとき、回生電力量に対して力行車が少ないと、回生電力過多となり架線電圧が過大となる。これを避けるため、回生車は、パンタ点電圧が図中に示す回生絞り込み開始電圧値未満の領域では全ての回生電流を回生可能電流として架線へ供給するが、パンタ点電圧が回生絞り込み開始電圧値以上となる領域では回生電流を減少させる制御を行う。この制御を回生絞り込み制御と呼ぶ。なお、一般に1500V系の直流電化区間では、回生絞り込み開始電圧値が例えば約1650Vから約1780V程度に設定され、回生絞り込み終了電圧値が例えば約1700Vから約1800V程度に設定される。このような直流電化区間に在線する回生車では、回生絞り込み開始電圧値から回生絞り込み終了電圧値までの間で電圧が高まるほど回生絞り込み量を高めるように回生絞り込み制御が行われる。
【0014】
回生絞り込み制御が実施された場合、所謂回生失効により回生電力の一部が回生車で無駄に消費されるため、消費された回生電力を力行電力として有効に活用することができなくなる。回生車による回生電力を有効活用するためには、各変電所5と架線との接続点の電圧である変電所電圧が最適な値となるように制御する必要があるが、最適な変電所電圧を決定するためには列車状況を正確に把握する必要がある。近年では無線通信ネットワークを活用して無線通信装置を搭載した列車と地上装置とを無線で繋ぐ列車制御システムが普及しており、この種のシステムでは列車から無線で送信される車上情報により列車状況を把握することが可能である。ところが、このような列車制御システムが適用された路線に、無線通信装置を搭載していない異なる鉄道事業者の列車が乗り入れた場合、全ての列車状況を把握することが困難となる。
【0015】
本実施の形態にかかる直流き電電圧算出装置100は、複数の変電所5に列車の進行方向の方面別のき電線に設置された電流センサ6で測定された電流の電流値である電流i
sn、複数の変電所5に設置された電圧センサ7で測定された電圧の電圧値である電圧v
sn、各変電所5の位置を示す変電所位置x
sn、第1の列車である無線通信装置81を搭載した列車8で測定された架線から供給される電流の電流値である電流i
tn、列車8で測定されたパンタ点電圧の電圧値である電圧v
tn、および列車8の位置を示す在線位置x
tnを用いる。直流き電電圧算出装置100では、無線通信装置を搭載していない回生車が直流電化区間に在線する場合でも、列車運転情報推定部2が、全ての列車の状況を推定する。また、直流き電電圧算出装置100では、変電所電圧設定値算出部3が、列車運転情報推定部2による推定結果である列車運転情報20を用いて変電所電圧の設定値を算出することで、変電所電圧が最適な値となるように制御され、回生車による回生電力の有効活用を図ることができる。
【0016】
つぎに、
図1に戻り、直流き電電圧算出装置100の各構成部について説明する。モデル情報格納部1は、直流電化区間内を走行する各列車の列車モデル情報、各変電所5の変電所モデル情報、およびき電網モデル情報を格納する。列車モデル情報は、直流電化区間に在線する各列車における回生電力絞り込み量を制御するための情報であり、例えば、回生絞り込み開始電圧値および回生絞り込み終了電圧値などを含む。また、変電所モデル情報は、各変電所5の変電所電圧を制御するための情報であり、例えば、内部抵抗および変電所電圧の最大値などを含む。また、き電網モデル情報は、例えば、各変電所5の位置情報、架線間あるいは架線と変電所5との間の接続状態を示すものとして架線の長さおよび抵抗率などの情報を含む。なお、以下の説明では、特に言及しない限り、列車モデル情報、変電所モデル情報、き電網モデル情報を単に「モデル情報10」と省略して説明する。
【0017】
変電所5は、電気鉄道の直流電化区間におけるき電線へ電力を供給する。変電所5は、電流センサ6および電圧センサ7を備える。変電所5において、電流センサ6は、例えば、列車の進行方向の方面別の架線またはき電線に設置され、電圧センサ7は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)整流器などの電圧制御装置と地上側との間に設置されている。変電所5は、電流センサ6で測定された電流の電流値である電流i
snの情報、および電圧センサ7で測定された電圧の電圧値である電圧v
snの情報を含む「変電所情報50」を列車運転情報推定部2に送信する。なお、変電所5では電流i
snおよび電圧v
snの情報を変電所情報50としてまとめて送信せず、電流センサ6および電圧センサ7が、個別に電流i
snの情報および電圧v
snの情報を送信してもよい。
【0018】
列車8は、直流き電電圧算出装置100と無線通信を行う無線通信装置81を備える。列車8は、列車8の在線位置、列車8の位置でのパンタ点電圧の電圧値である電圧v
tn、架線から列車8に供給される電流の電流値である電流i
tn、力行電力、回生電力を測定する。また、列車8は、電圧v
tnおよび回生電力から回生可能電圧を推定する。列車8は、列車8の在線位置、電圧v
tn、電流i
tn、力行電力、回生電力、および回生可能電圧の情報を含む第1の列車情報である「列車情報80」を列車運転情報推定部2に送信する。
【0019】
無線通信部4は、列車8から送信された列車情報80を受信し、受信した列車情報80を列車運転情報推定部2に出力する。
【0020】
列車運転情報推定部2は、モデル情報格納部1に格納されたモデル情報10と、変電所5から取得した変電所情報50と、列車8から取得した列車情報80とに基づいて、変電所5間、または変電所5と列車8との間、または列車8間に、第2の列車である無線通信装置を搭載していない列車が在線しているか否かを推定する。列車運転情報推定部2は、無線通信装置を搭載していない列車が在線していると推定した場合、無線通信装置を搭載していない列車の第2の列車情報、具体的には、無線通信装置を搭載していない列車の在線位置、力行電力、回生電力、パンタ点電圧、および回生可能電力を推定する。列車運転情報推定部2における第2の列車情報の推定方法の例については後述する。列車運転情報推定部2は、列車8から取得した列車情報80、第2の列車の在線有無の情報を「列車運転情報20」として変電所電圧設定値算出部3に送信する。列車運転情報推定部2は、第2の列車が在線している場合、さらに、無線通信装置を搭載していない列車について推定した第2の列車情報を列車運転情報20に含めて変電所電圧設定値算出部3に送信する。
【0021】
変電所電圧設定値算出部3は、モデル情報格納部1に格納されたモデル情報10と、列車運転情報推定部2から取得した列車運転情報20とに基づいて、直流電化区間に在線する回生車における回生電力が高まるように、変電所電圧を制御する変電所電圧設定値30を算出し、変電所電圧設定値30を変電所5に出力する。なお、変電所電圧設定値算出部3における変電所電圧設定値30の算出手法については、上述した各種情報を用いて既知の算出手法により算出することができるため説明を割愛する。またこの変電所電圧設定値30の算出手法により、本発明が限定されるものではない。
【0022】
変電所電圧設定値30を受信した変電所5は、変電所電圧の値が変電所電圧設定値30となるように制御する。
【0023】
以下では、列車運転情報推定部2における第2の列車情報の推定方法の例について、
図4から
図6を参照して説明する。
図4は、実施の形態1にかかる列車運転情報推定部2の第2の列車情報の推定処理における変数を設定した図である。
図4において、x
s1は
図4の左側に示される変電所5−1の位置、i
s1は変電所5−1の電流センサ6によって測定された架線の電流、v
s1は変電所5−1の電圧センサ7によって測定された架線とレールとの間の電圧である。また、x
s2は
図4の右側に示される変電所5−2の位置、i
s2は変電所5−2の電流センサ6によって測定された架線の電流、v
s2は変電所5−2の電圧センサ7によって測定された架線とレールとの間の電圧である。変電所5−1,5−2は
図1に示す変電所5と同様の構成とする。また、x
tは列車無線装置を搭載していない列車9の在線位置、i
tは架線から列車9に供給される電流、v
tは列車9の位置でのパンタ点電圧、p
tは列車9の列車電力、ρは架線の長さに対する抵抗率である。なお、電流i
tは架線から列車9に流れる向きを正とする。また、列車電力p
tは、正のときは力行電力を表し、負のときは回生電力を表す。
【0024】
なお、未知の変数はx
t、i
t、v
t、p
tであり、x
s1、x
s2、ρはモデル情報格納部1に格納されているものとする。
【0025】
このとき、変電所5−1と列車9との間のオームの法則より(1)式を得る。
【0027】
変電所5−2と列車9との間のオームの法則より(2)式を得る。
【0029】
列車9におけるキルヒホッフの法則より(3)式を得る。
【0031】
また、列車電力は(4)式の電圧と電流の積で表される。
【0033】
上記4つの式から、x
t、i
t、v
t、p
tは(5)式から(8)式で表される。
【0038】
ただし、変電所5−1と変電所5−2との間に在線する列車9の消費電力が0であるような場合、i
s1とi
s2が等しくなり、変電所間に列車9が在線しているかどうかが分からず、上手く列車9の在線位置を推定できない。しかしながら、i
s1とi
s2が等しいということは列車9の消費電力が0であることを意味しているため、変電所電圧の算出には影響を与えないことに注意する。上述した方法により列車9の在線位置、および力行電力または回生電力の列車電力の推定が可能となる。
【0039】
つぎに、回生可能電力の推定方法を説明する。
図5は、実施の形態1にかかる列車運転情報推定部2において回生効率の良い列車の回生可能電力推定における変数を表す図である。なお、回生可能電力を推定する対象の列車が、回生効率の良い列車または回生効率の良くない列車であるかの情報は、モデル情報格納部1の列車モデル情報に含まれているものとする。v
tは上記(7)式で推定される回生車のパンタ点電圧、v
startは回生車の回生絞り込み開始電圧値、v
endは回生車の回生絞り込み終了電圧値、i
tは上記(6)式で推定される回生車の回生電流、I
tは回生車の回生可能電流である。回生可能電力P
tは(9)式のパンタ点電圧v
tと回生可能電流I
tとの積で表される。
【0041】
なお、未知の変数はI
tであり、v
start、v
endはモデル情報格納部1に格納されているものとする。
【0042】
回生車の回生絞り込み制御方法の一つとして、
図5に示すように、回生絞り込み開始電圧値での回生電流i
tから回生絞り込み終了電圧値までの回生電流i
tを直線で結んだ制御方法がある。
【0043】
パンタ点電圧v
tがv
start未満であるとき、回生絞り込み制御が行われていないことが分かる。そのため、回生可能電流I
tは(10)式で表すことができる。
【0045】
また、パンタ点電圧v
tがv
start以上v
end未満であるとき、パンタ点電圧v
tに対応した回生電流i
tが回生可能電流I
tとして推定され、パンタ点電圧v
tがv
endであるとき、回生電流i
tが0と推定される。線形補完すると回生可能電流I
tは(11)式で表すことができる。
【0047】
最後に、パンタ点電圧v
tがv
end以上であるとき、回生電流i
tは全て絞り込まれているため、i
t=0となり、回生可能電流I
tを上手く推定できない。しかしながら、一般的に列車の回生絞り込み終了電圧値v
endは高めに設定されているため、回生電流i
tが全て絞り込まれる状況、すなわちパンタ点電圧v
tがv
end以上になる状況はほとんど起こらない。回生電流i
tが全て絞り込まれた状況において、回生可能電流I
tがどのような値であっても変電所5から力行列車に十分な電力を供給できるようにするためパンタ点電圧v
tがv
end以上であるときは回生可能電流I
tを(12)式のように推定する。
【0049】
列車運転情報推定部2は、(9)式の回生可能電流I
tに、(10)式から(12)式で得られた回生可能電流I
tを適用することで、回生可能電力P
tを推定することができる。
【0050】
図6は、実施の形態1にかかる列車運転情報推定部2において回生効率の良くない列車の回生可能電力推定における変数を表す図である。
図6において、Iは最大回生可能電流であり、モデル情報格納部1に格納されているものとする。
【0051】
パンタ点電圧v
tがv
start未満であるときは
図5と同様、I
tは(10)式で表すことができる。
【0052】
また、パンタ点電圧v
tがv
start以上v
end未満であるとき、パンタ点電圧v
tに対応した回生電流i
tが回生可能電流I
tとして推定され、パンタ点電圧v
tがv
endであるとき、回生電流i
tが0と推定される。線形補完すると回生可能電流I
tは(13)式で表すことができる。
【0054】
パンタ点電圧v
tがv
end以上であるときは
図5と同様、I
tは(12)式で表すことができる。
【0055】
列車運転情報推定部2は、(9)式の回生可能電流I
tに、(10)式、(12)式および(13)式で得られた回生可能電流I
tを適用することで、回生可能電力P
tを推定することができる。
【0056】
本実施の形態では、
図4に示す変電所5−1,5−2の一方を、列車無線装置81を搭載した列車8に置き換えてもよい。すなわち、直流き電電圧算出装置100は、2つの変電所5−1,5−2に挟まれた直流電化区間において、列車無線装置81を搭載した列車8を既知の列車として、列車無線装置を搭載していない未知の列車の在線状況を推定することができる。
【0057】
図7は、実施の形態1にかかる直流き電電圧算出装置100において未知の列車9の在線状況を推定する処理を示す図である。ここでは、一例として、2つの変電所5−1,5−2の間に既知の列車8−1,8−2の2つが在線している場合について説明するが、2つの変電所5−1,5−2の間にある既知の列車8の数は1つまたは3つ以上でもよい。ここでは、既知の列車8−1における在線位置をx
t1、パンタ点電圧の電圧値をv
t1、架線から供給される電流の電流値をi
t1、列車電力をp
t1とする。また、既知の列車8−2における在線位置をx
t2、パンタ点電圧の電圧値をv
t2、架線から供給される電流の電流値をi
t2、列車電力をp
t2とする。列車8−1,8−2は
図1に示す列車8と同様の構成とする。
【0058】
変電所5−1と列車8−1との間に未知の列車がいない場合、上記(1)式から(3)式により、(14)式のように表すことができる。
【0060】
同様に、列車8−1と列車8−2との間に未知の列車がいない場合、上記(1)式から(3)式により、(15)式のように表すことができる。
【0062】
また、列車8−2と変電所5−2との間に未知の列車がいない場合、上記(1)式から(3)式により、(16)式のように表すことができる。
【0064】
なお、実際には、変電所5および列車8で測定される電流値および電圧値には誤差が含まれることが想定される。そのため、厳密には未知の列車が在線していない場合でも(14)式から(16)式が成り立たない可能性がある。そのため、(14)式から(16)式は電圧を示す式であることから、列車運転情報推定部2は、閾値として±ΔV(V)以内の誤差のときには(14)式から(16)式は成立しているものとみなす。
【0065】
(14)式から(16)式は、いずれも間に未知の列車9がいない場合に成立する式であり、間に未知の列車9があって回生または力行している場合、その区間では(14)から(16)式は成立しない。すなわち、変電所5または既知の列車8で区切られた区間において、上記(14)式から(16)式が成立しない区間には、未知の列車9が在線していることになる。したがって、列車運転情報推定部2は、(17)式が成り立つ場合、変電所5−1と列車8−1との間に未知の列車9が在線していると推定できる。
【0067】
また、列車運転情報推定部2は、(18)式が成り立つ場合、列車8−1と列車8−2との間に未知の列車が在線していると推定できる。
【0069】
また、列車運転情報推定部2は、(19)式が成り立つ場合、列車8−2と変電所5−2との間に未知の列車が在線していると推定できる。
【0071】
列車運転情報推定部2は、未知の列車についての在線位置、パンタ点電圧、架線から供給される電流、および列車電力を、上記(1)式から(8)式を用いて推定することができる。すなわち、変電所5−1,5−2の位置および列車8−1,8−2の在線位置によって直流電化区間が複数の区間に分割される場合、列車運転情報推定部2は、分割された各区間において未知の列車9の在線有無を推定し、未知の列車9が在線していると推定した区間において、第2の列車情報を推定する。一例として、変電所5−1と列車8−1との間に未知の列車が在線していた場合を例にして説明する。
図8は、実施の形態1にかかる直流き電電圧算出装置100において変電所5−1と既知の列車8−1との間の未知の列車9の在線状況を推定する処理を示す図である。未知の列車9における在線位置をx
t、パンタ点電圧の電圧値をv
t、架線から供給される電流の電流値をi
t、列車電力をp
tとする。列車運転情報推定部2は、上記(1)式から(4)式と同様、(20)式から(23)式を得ることができる。
【0076】
列車運転情報推定部2は、上記(20)式から(23)式より、(24)式から(27)式を得ることができ、未知の列車9の在線位置x
t、パンタ点電圧v
t、架線から供給される電流i
t、列車電力p
tを推定することができる。
【0081】
このように、列車運転情報推定部2は、モデル情報10、変電所5−1,5−2から取得した変電所情報50、および既知の列車8から取得した列車情報80に基づいて、未知の列車9の在線位置x
t、パンタ点電圧v
t、架線から供給される電流i
t、列車電力p
tを推定することができる。また、列車運転情報推定部2は、(9)式から(13)式を用いることで、未知の列車9の回生可能電力を求めることができる。
【0082】
本実施の形態にかかる直流き電電圧制御システム200における直流き電電圧制御処理について説明する。
図9は、実施の形態1にかかる直流き電電圧制御システム200における直流き電電圧制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0083】
無線通信装置81を搭載した既知の列車8は、自列車の在線位置、パンタ点電圧、架線から供給される電流、力行電力、回生電力を測定し、さらに回生可能電力を推定し(ステップST101)、測定した在線位置、パンタ点電圧、架線から供給される電流、力行電力、回生電力、および推定した回生可能電力の情報を列車情報80として直流き電電圧算出装置100に送信する(ステップST102)。直流き電電圧算出装置100では、無線通信部4が、
図2に示されるネットワーク400を介して列車情報80を受信し、受信した列車情報80を列車運転情報推定部2に出力する。
【0084】
変電所5では、列車の方面別のき電線に設置された電流センサ6が電流を測定し、電圧センサ7が電圧を測定する(ステップST103)。変電所5は、電流センサ6で測定された電流および電圧センサ7で測定された電圧の情報を変電所情報50として列車運転情報推定部2に送信する(ステップST104)。直流き電電圧算出装置100では、列車運転情報推定部2が、
図2に示されるネットワーク400を介して変電所情報50を受信する。
【0085】
列車運転情報推定部2は、モデル情報格納部1に格納されたモデル情報10として、列車モデル情報、変電所モデル情報、およびき電網モデル情報を取得し(ステップST105)、既知の列車8から列車情報80として既知の列車8の在線位置、パンタ点電圧、架線から供給される電流、力行電力、回生電力、回生可能電力の情報を取得し(ステップST106)、変電所5から変電所情報50として変電所5の電流センサ6で測定された電流および電圧センサ6で測定された電圧の情報を取得する(ステップST107)。
【0086】
列車運転情報推定部2は、取得したモデル情報10、列車情報80、および変電所情報50に基づいて、直流き電電圧制御システム200が管轄する直流電化区間に未知の列車9が在線しているか否かを推定する(ステップST108)。列車運転情報推定部2は、未知の列車9が在線していると推定した場合(ステップST108:Yes)、取得したモデル情報10、列車情報80、および変電所情報50に基づいて、未知の列車9の在線位置、力行電圧、回生電力、回生可能電力を推定する(ステップST109)。列車運転情報推定部2は、未知の列車9が在線していないと推定した場合(ステップST108:No)、ステップST109の処理を省略する。列車運転情報推定部2は、未知の列車9の在線有無、列車の在線位置、力行電圧、回生電力、および回生可能電力の情報を含む列車運転情報20を変電所電圧設定値算出部3に送信する(ステップST110)。列車運転情報推定部2は、未知の列車9が在線していた場合、列車8,9の在線位置、力行電圧、回生電力、および回生可能電力の情報を列車運転情報20に含め、未知の列車9が在線していない場合、列車8の在線位置、力行電圧、回生電力、および回生可能電力の情報を列車運転情報20に含める。
【0087】
変電所電圧設定値算出部3は、モデル情報格納部1からモデル情報10として、列車モデル情報、変電所モデル情報、およびき電網モデル情報を取得し(ステップST111)、列車運転情報推定部2から列車運転情報20として、未知の列車9の在線有無、列車の在線位置、力行電圧、回生電力、および回生可能電力の情報を取得する(ステップST112)。変電所電圧設定値算出部3は、取得したモデル情報10および列車運転情報20に基づいて、変電所5の変電所電圧設定値30を算出し(ステップST113)、算出した変電所電圧設定値30の情報を変電所5に出力する(ステップST114)。
【0088】
変電所5は、
図2に示されるネットワーク400を介して変電所電圧設定値30の情報を取得し、変電所電圧設定値30の情報に基づいて変電所電圧を制御する。
【0089】
直流き電電圧算出装置100は、上述した処理を実施することにより、無線通信装置を搭載していない列車が在線している場合でも列車運転情報20を推定し、最適な変電所電圧が決定でき、回生電力の有効活用が可能となる。
【0090】
なお、
図9では、列車8の処理の後に変電所5の処理の順番になっているが、一例であり、変電所5の処理の後に列車8の処理の順番にしてもよいし、列車8の処理および変電所5の処理を並行して行うようにしてもよい。
【0091】
つづいて、直流き電電圧算出装置100のハードウェア構成について説明する。直流き電電圧算出装置100において、モデル情報格納部1はメモリにより実現される。無線通信部4は無線通信のインタフェース回路により実現される。列車運転情報推定部2および変電所電圧設定値算出部3は処理回路により実現される。すなわち、直流き電電圧算出装置100は、未知の列車9の在線位置、力行電圧、回生電力、回生可能電力を推定し、変電所5の変電所電圧設定値30を算出するための処理回路を備える。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)およびメモリであってもよい。
【0092】
図10は、実施の形態1にかかる直流き電電圧算出装置100の列車運転情報推定部2および変電所電圧設定値算出部3を専用のハードウェアで構成する場合の例を示す図である。処理回路が専用のハードウェアである場合、
図10に示す処理回路91は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。列車運転情報推定部2および変電所電圧設定値算出部3の各機能を機能別に処理回路91で実現してもよいし、各機能をまとめて処理回路91で実現してもよい。
【0093】
図11は、実施の形態1にかかる直流き電電圧算出装置100の列車運転情報推定部2および変電所電圧設定値算出部3をCPUおよびメモリで構成する場合の例を示す図である。処理回路がCPU92およびメモリ93で構成される場合、列車運転情報推定部2および変電所電圧設定値算出部3の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ93に格納される。処理回路では、メモリ93に格納されたプログラムをCPU92が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、直流き電電圧算出装置100は、列車運転情報推定部2および変電所電圧設定値算出部3が処理回路により実行されるときに、未知の列車9の在線位置、力行電圧、回生電力、回生可能電力を推定するステップ、変電所5の変電所電圧設定値30を算出するステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ93を備える。また、これらのプログラムは、直流き電電圧算出装置100の手順および方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、CPU92は、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、またはDSP(Digital Signal Processor)などであってもよい。また、メモリ93とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。モデル情報格納部1を実現するメモリは、メモリ93と同一であってもよい。
【0094】
なお、列車運転情報推定部2および変電所電圧設定値算出部3の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。例えば、列車運転情報推定部2の機能については専用のハードウェアとしての処理回路91でその機能を実現し、変電所電圧設定値算出部3の機能についてはCPU92がメモリ93に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
【0095】
このように、処理回路は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0096】
以上説明したように、本実施の形態に係る直流き電電圧算出装置100は、電圧センサ7および列車の進行方向の方面別のき電線に設置された電流センサ6を備える変電所5の位置情報を含むモデル情報10と、電流センサ6で検出された電流と、電圧センサ7で検出された電圧と、既知の列車8から取得した列車情報80とに基づいて、直流電化区間に在線する回生車の回生電力が高まるように変電所電圧を制御する変電所電圧設定値30を算出し、変電所電圧設定値30を各変電所5に出力するように構成されている。この構成により、無線通信装置を搭載していない列車9が在線している場合でも、コストを抑制しつつ、列車状況を推定することができ、最適な変電所電圧が決定でき、回生電力の更なる有効活用が可能となる。
【0097】
また、本実施の形態にかかる直流き電電圧算出装置100は、直流電化区間に在線する列車における回生電力絞り込み量を制御する情報を含む列車モデル情報と、変電所5の位置情報を含むき電網モデル情報と、変電所電圧の制御情報を含む変電所モデル情報とを含むモデル情報10を格納するモデル情報格納部1を備える。また、直流き電電圧算出装置100は、モデル情報10と、変電所5で測定された電圧値および列車の方面別のき電線の電流値と、無線通信装置81を搭載した列車8の第1の列車情報とに基づいて、直流電化区間に在線する無線通信装置を搭載していない列車の第2の列車情報を推定し、第1の列車情報および第2の列車情報を含む列車運転情報を出力する列車運転情報推定部2を備える。また、直流き電電圧算出装置100は、モデル情報10と列車運転情報20とに基づいて、直流電化区間に在線する回生車における回生電力が高まるように変電所電圧を制御する変電所電圧設定値30を算出し、変電所電圧設定値30を複数の変電所5に出力する変電所電圧設定値算出部3を備えることにより、変電所電圧設定値30を精度よく求めることができ、回生電力の更なる有効活用が可能となる。
【0098】
また、列車運転情報推定部2は、モデル情報格納部1に格納されたモデル情報10と、変電所5および列車8で測定された電流および電圧に基づいて、変電所5−1と変電所5−2との間の直流電化区間に在線する無線通信装置を搭載していない列車9の第2の列車情報を推定するように構成されているため、変電所電圧設定値算出部3における変電所電圧設定値30の計算精度を向上させることができる。
【0099】
また、列車運転情報推定部2が、モデル情報格納部1に格納されたモデル情報10を用いて第2の列車情報を推定する構成例について説明したが、モデル情報10は予め列車運転情報推定部2に設定しておくように構成してもよいし、直流き電電圧算出装置100の外部から列車運転情報推定部2へ入力されるように構成してもよい。
【0100】
実施の形態2.
実施の形態2では、既知の列車8は回生可能電力を推定せず、列車運転情報推定部2が既知の列車8の回生可能電力を推定する。実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0101】
図12は、実施の形態2にかかる直流き電電圧算出装置100aの構成例を示すブロック図である。直流き電電圧算出装置100aは、直流き電電圧算出装置100の列車運転情報推定部2を列車運転情報推定部2aに置き換えた構成である。また、直流き電電圧制御システム200aにおいて、直流き電電圧算出装置100aには、無線通信装置81を搭載した列車8aが接続されている。
【0102】
実施の形態2では、既知の列車8aから送信される列車情報80aに回生可能電力が含まれていない点が実施の形態1と異なる。そのため、実施の形態2では、列車運転情報推定部2aが、未知の列車9の回生可能電力を推定するとともに、既知の列車8aの回生可能電力を推定する。列車運転情報推定部2aにおいて、既知の列車8aの回生可能電力を推定する方法は、実施の形態1において未知の列車9の回生可能電力を推定する方法と同様である。
【0103】
実施の形態2にかかる直流き電電圧制御システム200aにおける直流き電電圧制御処理について説明する。
図13は、実施の形態2にかかる直流き電電圧制御システム200aにおける直流き電電圧制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0104】
無線通信装置81を搭載した既知の列車8aは、自列車の在線位置、パンタ点電圧、架線から供給される電流、力行電力、回生電力を測定し(ステップST101a)、測定した在線位置、パンタ点電圧、架線から供給される電流、力行電力、回生電力の情報を列車情報80aとして直流き電電圧算出装置100に送信する(ステップST102a)。変電所5の処理は実施の形態1と同様である。
【0105】
列車運転情報推定部2aは、モデル情報格納部1に格納されたモデル情報10として、列車モデル情報、変電所モデル情報、およびき電網モデル情報を取得し(ステップST105)、既知の列車8aから列車情報80aとして既知の列車8aの在線位置、パンタ点電圧、架線から供給される電流、力行電力、回生電力の情報を取得し(ステップST106a)、変電所5から変電所情報50として変電所5の電流センサ6で測定された電流および電圧センサ6で測定された電圧の情報を取得する(ステップST107)。
【0106】
列車運転情報推定部2aは、列車情報80aに基づいて、既知の列車8aの回生可能電力を推定する(ステップST201)。列車運転情報推定部2aは、取得したモデル情報10、列車情報80a、および変電所情報50に基づいて、直流き電電圧制御システム200aが管轄する直流電化区間に未知の列車9が在線しているか否かを推定する(ステップST108)。列車運転情報推定部2aは、未知の列車9が在線していると推定した場合(ステップST108:Yes)、取得したモデル情報10、列車情報80a、および変電所情報50に基づいて、未知の列車9の在線位置、力行電圧、回生電力、回生可能電力を推定する(ステップST109)。列車運転情報推定部2aは、未知の列車9が在線していないと推定した場合(ステップST108:No)、ステップST109の処理を省略する。列車運転情報推定部2aは、未知の列車9の在線有無、列車の在線位置、力行電圧、回生電力、および回生可能電力の情報を含む列車運転情報20を変電所電圧設定値算出部3に送信する(ステップST110)。列車運転情報推定部2aは、未知の列車9が在線していた場合、列車8a,9の在線位置、力行電圧、回生電力、および回生可能電力の情報を列車運転情報20に含め、未知の列車9が在線していない場合、列車8aの在線位置、力行電圧、回生電力、および回生可能電力の情報を列車運転情報20に含める。変電所電圧設定値算出部3の処理は実施の形態1と同様である。
【0107】
以上説明したように、本実施の形態にかかる直流き電電圧算出装置100aは、既知の列車8aの回生可能電力を、直流き電電圧算出装置100aで推定することとした。この場合でも、直流き電電圧制御システム200aでは、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、直流き電電圧算出装置100aの列車運転情報推定部2aでは、既知の列車8aの回生可能電力を推定する処理分の負荷が増えるが、列車8aの処理負荷を低減できる。そのため、直流き電電圧算出装置100aよりも数の多い列車8aの構成を、実施の形態1の列車8と比較して簡略化できる。
【0108】
実施の形態3.
実施の形態3では、直流き電電圧算出装置の無線通信部は、既知の列車から取得した列車情報を、列車運転情報推定部および変電所電圧設定値算出部に出力する。実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0109】
図14は、実施の形態3にかかる直流き電電圧算出装置100bの構成例を示すブロック図である。直流き電電圧算出装置100bは、直流き電電圧算出装置100の列車運転情報推定部2、変電所電圧設定値算出部3、および無線通信部4を、列車運転情報推定部2b、変電所電圧設定値算出部3b、および無線通信部4bに置き換えた構成である。
【0110】
無線通信部4bは、列車8から送信された列車情報80を受信し、受信した列車情報80を列車運転情報推定部2bおよび変電所電圧設定値算出部3bに出力する。
【0111】
列車運転情報推定部2bは、実施の形態1の列車運転情報推定部2と同様の推定処理を行うが、変電所電圧設定値算出部3bへ送信する情報である列車運転情報20bに、列車情報80の情報を含めない点が実施の形態1の列車運転情報推定部2と異なる。
【0112】
変電所電圧設定値算出部3bは、モデル情報格納部1に格納されたモデル情報10と、列車運転情報推定部2bで推定された列車運転情報20bと、列車8から取得した列車情報80とに基づいて、直流電化区間に在線する回生車における回生電力が高まるように、変電所電圧を制御する変電所電圧設定値30を算出し、変電所5に出力する。取得する情報の経路が異なるが、変電所電圧設定値算出部3bにおいて、変電所電圧設定値30を算出する処理は実施の形態1の変電所電圧設定値算出部3と同様である。
【0113】
実施の形態3にかかる直流き電電圧制御システム200bにおける直流き電電圧制御処理について説明する。
図15は、実施の形態3にかかる直流き電電圧制御システム200bにおける直流き電電圧制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0114】
列車8および変電所5の処理は実施の形態1と同様である。直流き電電圧算出装置100bでは、無線通信部4bが、
図2に示されるネットワーク400を介して列車情報80を受信し、受信した列車情報80を列車運転情報推定部2bおよび変電所電圧設定値算出部3bに出力する。
【0115】
列車運転情報推定部2bのステップST105からステップST109までの処理は実施の形態1と同様である。列車運転情報推定部2bは、未知の列車9の在線有無、推定した未知の列車9の在線位置、力行電圧、回生電力、回生可能電力の情報を含む列車運転情報20bを変電所電圧設定値算出部3bに送信する(ステップST110b)。
【0116】
変電所電圧設定値算出部3bは、モデル情報格納部1からモデル情報10として、列車モデル情報、変電所モデル情報、およびき電網モデル情報を取得し(ステップST111)、既知の列車8から列車情報80として既知の列車8の在線位置、パンタ点電圧、架線から供給される電流、力行電力、回生電力、回生可能電力の情報を取得し(ステップST301)、列車運転情報推定部2bから列車運転情報20bとして、未知の列車9の在線有無、未知の列車9の在線位置、力行電圧、回生電力、および回生可能電力の情報を取得する(ステップST112b)。変電所電圧設定値算出部3bは、取得したモデル情報10、列車情報80、および列車運転情報20bに基づいて、変電所5の変電所電圧設定値30を算出し(ステップST113b)、算出した変電所電圧設定値30の情報を変電所5に出力する(ステップST114)。
【0117】
以上説明したように、本実施の形態にかかる直流き電電圧算出装置100bは、既知の列車8から列車情報80を受信した無線通信部4bが、列車情報80を列車運転情報推定部2bおよび変電所電圧設定値算出部3bに出力することとした。この場合でも、直流き電電圧制御システム200bでは、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、直流き電電圧算出装置100bの列車運転情報推定部2bは、変電所電圧設定値算出部3bに送信する列車運転情報20bに列車情報80を含めなくてよい。そのため、列車運転情報推定部2bにおける送信処理の負担を、実施の形態1の列車運転情報推定部2と比較して低減できる。
【0118】
実施の形態4.
実施の形態1では、2つの変電所5−1,5−2の間で既知の列車8および未知の列車9が在線していることを想定していたが、路線の末端では変電所が無い場合がある。実施の形態4では、一例として、変電所5−2を削除して電圧センサ7に置き換える。実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0119】
直流き電電圧算出装置100の構成は実施の形態1と同様である。
図16は、実施の形態4にかかる列車運転情報推定部2の第2の列車情報の推定処理における変数を設定した図である。実施の形態1における
図4から、変電所5−2を削除して電圧センサ7に置き換えた状態を示している。変電所5−1、未知の列車9についての電圧、電流などの表示は
図4と同様である。電圧センサ7の位置情報は、変電所5−1の位置情報などと同様、き電網モデル情報としてモデル情報格納部1に格納されている。列車運転情報推定部2は、
図16の状態においては、
図4に示す変電所5−2の部分で電流i
s2=0とすることで、実施の形態1と同様の方法により、未知の列車9の回生可能電力などを推定できる。
図16において、x
s2は
図16の右側に示される電圧センサ7の位置、v
s2は電圧センサ7によって測定された架線とレールとの間の電圧である。
【0120】
なお、実施の形態1について説明したが、実施の形態2,3にも適用可能である。
【0121】
以上説明したように、本実施の形態にかかる直流き電電圧算出装置100は、路線の末端などにおいて変電所5が設置されていない場合、末端部分に設置された電圧センサ7の位置および測定された電圧の情報を用いることとした。これにより、直流き電電圧算出装置100は、実施の形態1と同様の方法で未知の列車9の回生可能電力などを推定でき、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0122】
実施の形態5.
実施の形態1では、変電所5−1、列車8−1、列車8−2、変電所5−2の間のいずれか1つの区間のみで未知の列車9が在線している場合に、列車運転情報推定部2は、未知の列車9の回生可能電圧などを推定することができた。実施の形態5では、複数の区間で未知の列車9が在線している場合に、未知の列車9の回生可能電圧などを推定する方法について説明する。実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0123】
直流き電電圧算出装置100の構成は実施の形態1と同様である。
図17は、実施の形態5にかかる直流き電電圧算出装置100において変電所5−1と既知の列車8−1との間の未知の列車9−1、および既知の列車8−1,8−2間の未知の列車9−2の在線状況を推定する処理を示す図である。未知の列車9−1,9−2は
図4などに示す未知の列車9と同様の構成とする。列車運転情報推定部2は、実施の形態1の(17)式から(19)式のいずれかに該当するときに、未知の列車9が在線している区間を推定し、未知の列車9について回生可能電圧などを推定することができた。しかしながら、列車運転情報推定部2は、
図17のように、変電所5−1と既知の列車8−1との間に未知の列車9−1が在線し、既知の列車8−1と既知の列車8−2との間に未知の列車9−2が在線している場合、未知の列車9−1,9−2のいずれについても回生可能電圧などを推定することはできない。
【0124】
このような場合、列車運転情報推定部2は、変電所5−1と既知の列車8−2との間を1つの区間とし、未知の列車9−1、既知の列車8−1、未知の列車9−2を等化的に1つの未知の列車9とみなし、未知の列車9について回生可能電圧などを推定する。すなわち、列車運転情報推定部2は、分割された区間のうち複数の区間で未知の列車9−1,9−2が在線していると推定した場合、未知の列車9−1,9−2が在線していると推定された区間を全て含む区間を1つの区間とみなし、1つの区間とみなした区間において、第2の列車情報を推定する。
【0125】
図18は、実施の形態5にかかる直流き電電圧算出装置100において変電所5−1と既知の列車8−2との間を1つの区間として未知の列車9の在線状況を推定する処理を示す図である。
図18に示す状態であれば、列車運転情報推定部2は、実施の形態1の(1)式から(8)式より、未知の列車9の回生可能電圧などを推定することができる。
【0126】
以上説明したように、本実施の形態にかかる直流き電電圧算出装置100は、変電所5および既知の列車8によって分割される区間において、複数の区間で未知の列車9が在線していると推定した場合、未知の列車9が在線していると推定された区間を全て含む区間を1つの区間とみなし、1つの区間とみなした区間において、在線している未知の列車、または未知の列車および既知の列車を、1つの未知の列車9とみなして、在線位置および回生可能電圧などを推定数することとした。これにより、直流き電電圧算出装置100は、無線通信装置を搭載していない列車9が在線している区間が複数の区間にまたがる場合でも列車状況を推定することができ、最適な変電所電圧が決定でき、回生電力の更なる有効活用が可能となる。
【0127】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
直流電化区間に在線する列車(8)の回生電力絞り込み量を制御する情報を含む列車モデル情報、変電所(5)の位置情報を含むき電網モデル情報、および変電所電圧の制御情報を含む変電所モデル情報、を含むモデル情報(10)を格納するモデル情報格納部(1)と、モデル情報(10)、変電所(5)で測定された電圧値および列車の方面別のき電線の電流値、および無線通信装置(81)を搭載した列車(8)の第1の列車情報に基づいて、無線通信装置を搭載していない列車の第2の列車情報を推定し、列車運転情報(20)を出力する列車運転情報推定部(2)と、モデル情報(10)および列車運転情報(20)に基づいて、直流電化区間に在線する回生車における回生電力が高まるように変電所電圧を制御する変電所電圧設定値(30)を算出し、変電所(5)に出力する変電所電圧設定値算出部(3)と、を備える。