(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029850
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/00 20060101AFI20161114BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
H05B3/00 310E
H05B3/00 330Z
H05B3/00 320Z
B60H1/22 611D
B60H1/22ZHV
B60H1/22 651B
B60H1/22 671
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-108323(P2012-108323)
(22)【出願日】2012年5月10日
(65)【公開番号】特開2013-235758(P2013-235758A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】前村 好信
【審査官】
横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−035248(JP,A)
【文献】
特開昭61−122453(JP,A)
【文献】
特開平07−199701(JP,A)
【文献】
特開平09−045464(JP,A)
【文献】
特許第3519264(JP,B2)
【文献】
特開2011−144976(JP,A)
【文献】
特開2002−178741(JP,A)
【文献】
特許第2976224(JP,B2)
【文献】
特開2012−020227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
B60H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する有底円筒状の発熱部を有するヒータと、
前記発熱部が収容され、該発熱部との間に熱媒体の流路を形成する筐体と、
前記流路にて前記熱媒体の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段にて検出された前記熱媒体の温度に応じて前記ヒータへの通電を遮断する通電遮断手段と
を備えた加熱装置であって、
前記温度検出手段は前記発熱部に接触され、
前記筐体は1又は複数の鋳造体からなり、且つ前記加熱装置は車両に搭載され、
前記筐体は、前記ヒータの長手方向と垂直に穿孔されるとともに前記温度検出手段が挿入される貫通孔を有し、前記筐体の内面と前記ヒータの外周面との間に前記流路としてのクリアランスを確保し、
前記温度検出手段は、前記貫通孔に複数のシール部材を介して固定されていることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記温度検出手段は前記発熱部に面接触されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱装置に関し、特にヒータの発熱部との間に熱媒体の流路を形成する筐体を備えた加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱装置には、通電により発熱する発熱部を有するヒータと、この発熱部が収容され、該発熱部との間に熱媒体の流路を形成する筐体と、この流路にて熱媒体の温度を検出する温度検出手段と、この検出された熱媒体の温度に応じてヒータへの通電を遮断する通電遮断手段とを備えたものが知られている。
【0003】
そして、特許文献1には、サーモスタットや温度ヒューズを発熱部の発熱面と同一面上の筐体外の部位に設けることにより、温度ヒューズの誤作動を防止しながら、流路に熱媒体が存在しない場合に発生する空焚きを防止した加熱装置が開示されている。
また、特許文献2には、温度ヒューズを通電端子に設けることにより、通電端子を介して伝達される発熱部の熱によって、流路における熱媒体の液位に関係なくヒータへの通電を遮断し、空焚きを防止する加熱装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献3では、筐体の内側に凸となる凸部を設け、この筐体の凸部を介して温度ヒューズを発熱部と接触させることで空焚きを防止した加熱装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4561319号公報
【特許文献2】特許第4293091号公報
【特許文献3】特許第3395571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜3では、何れも筐体外に位置するヒータの非発熱部に温度検出手段を接触させ、非発熱部を介して伝達された熱に基づいてヒータへの通電を遮断するため、通電遮断手段の応答性が悪化し、ヒータを迅速に停止することができず、また、空焚き検知の精度が低下し、ひいては加熱装置の発煙発火に至るおそれがある。
【0007】
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、熱媒体の温度を検出しながら空焚きを高精度に検出し、応答性に優れた通電遮断を行うことができ、発煙発火を確実に防止することにより信頼性を高めた加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の加熱装置は、通電により発熱する
有底円筒状の発熱部を有するヒータと、前記発熱部が収容され、該発熱部との間に熱媒体の流路を形成する筐体と、前記流路にて前記熱媒体の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段にて検出された前記熱媒体の温度に応じて前記ヒータへの通電を遮断する通電遮断手段とを備えた加熱装置であって、前記温度検出手段は前記発熱部に接触され、前記筐体は1又は複数の鋳造体からなり、且つ前記加熱装置は車両に搭載され
、前記筐体は、前記ヒータの長手方向と垂直に穿孔されるとともに前記温度検出手段が挿入される貫通孔を有し、前記筐体の内面と前記ヒータの外周面との間に前記流路としてのクリアランスを確保し、前記温度検出手段は、前記貫通孔に複数のシール部材を介して固定されている(請求項1)。
【0009】
好ましくは、前記温度検出手段は前記発熱部に面接触されている(請求項2)
。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱媒体の流路にて熱媒体の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段にて検出された前記熱媒体の温度に応じてヒータへの通電を遮断する通電遮断手段とを備え、前記温度検出手段がヒータの発熱部に接触されていることにより、熱媒体の温度を検出しながら空焚きを高精度に検出し、応答性に優れた通電遮断を行うことができ、発煙発火を確実に防止することができるため、信頼性の高い加熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加熱装置の縦断面図である。
【
図2】
図1の加熱装置をA−A方向から見た要部断面図である。
【
図3】本発明の変形例に係る加熱装置を
図1のA−A方向から見た要部断面図である。
【
図4】本発明の別の変形例に係る加熱装置を
図1のA−A方向から見た要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の加熱装置に係る一実施形態について説明する。
図1に概略的に示されるように、加熱装置1はヒータ2、及びヒータ2が収容されるケース(筐体)4を備えている。
図2に概略的に示されるように、ヒータ2は、通電により発熱する電熱線ヒータであり、有底円筒状の金属パイプ(発熱部)6内にニクロム線などのコイル状の電熱線8を挿入し、金属パイプ6内に高い電気絶縁性及び熱伝導性を有する酸化マグネシウムなどの耐熱絶縁材10を加圧充填して電熱線8を封入することで形成されている。
【0013】
金属パイプ6の一端開口部には、シリコンやガラスなどを鋳込みモールド成形した端子部12が設けられ、端子部12からは電熱線8に接続されたリード線14が引き出されている。リード線14は外部の図示しない電源装置に電気的に接続され、電熱線8に通電するための図示しない通電回路を構成している。なお、
図1ではヒータ2は1本しか示されていないが、ヒータ2を複数本設けても良い。
【0014】
一方、ケース4は、1又は複数の鋳造体から構成され、ケース4内には金属パイプ6の両端近傍を環状のOリング16を介して気密に囲繞することでヒータ2が収容されている。ケース4の内面4aと金属パイプ6の外周面6aとの間にはクリアランスが確保され、このクリアランスはエチレングリコールなどのLLC(冷却水、不凍液)としての熱媒体が流れる流路18として使用される。また、ケース4の外面4bの適宜位置には、熱媒体の入口パイプ20と出口パイプ22とが流路に連通するように突設されている。
【0015】
このように概略構成される加熱装置1は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車などの車両に搭載され、ハイブリッド自動車の場合には、エンジンの不足する廃熱を補うようにして熱供給する補助熱源として、電気自動車の場合には、存在しないエンジンに代わって熱供給する代替熱源として、車両用空調装置の冷凍回路を循環する冷媒などの加熱に用いられる。
【0016】
例えばハイブリッド自動車の場合には、エンジン冷却用の図示しない冷却水回路を循環するLLCが流路18に入口パイプ20を介して流入され、ヒータ2により加熱される。エンジン及び加熱装置1で加熱されたLLCの熱は、車両用空調装置に設けられた冷凍回路を循環する冷媒の加熱に用いられ、この加熱された冷媒によって車室内空気の冷暖房が行われる。冷媒の加熱に供したLLCは、流路18から出口パイプ22を介して流出されて冷却水回路に戻され、エンジンを再び冷却する。
【0017】
ここで、本実施形態では、ケース4のヒータ2の長手方向と垂直方向に貫通孔24が穿孔され、貫通孔24には流路18を流れるLLCの温度を検出する温度センサ(温度検出手段)26が挿入されている。温度センサ26は、略円柱形状の外観を有するサーミスタであって、その温度測定端部28が平坦な先端面30においてヒータ2の金属パイプ2の外周面6aに線接触されている。これより温度センサ26はLLCの温度のみならずヒータ2の発熱部である金属パイプ6の表面温度をも検出可能である。
【0018】
また、温度センサ26の側面26aには2つの環状溝32が形成され、各環状溝32にはそれぞれOリング(シール部材)34が装着されており、温度センサ26は各Oリング34を介して貫通孔24に気密に接続固定されている。
温度センサ26は、その外端部36から引き出されたリード線38によって図示しないインバータに電気的に接続され、インバータは、上述した電源装置及び通電回路を介し、温度センサ26にて検出されるLLCの温度及び/又は金属パイプ10の表面温度に応じて、ヒータ2への通電をオンオフする通電制御を行う(通電遮断手段)。
【0019】
この通電制御では、流路18にLLCが存在する場合、温度センサ26によってLLCの温度が適正範囲に制御されるため、ヒータ2が異常に温度上昇することはない。
一方、従来において、冷却水回路へのLLCの未供給状態や冷却水回路からのLLCの漏洩等の理由により、流路18にLLCが存在しないか或いは非常に少ない場合、ヒータ2からの熱を伝達する熱媒体が存在しない、或いは熱媒体が少量の状態となるため、加熱装置1が空焚き状態となってヒータ2自体の温度が異常上昇してしまうという不具合が生じ得る。このような空焚き状態が生じても、温度センサ26が金属パイプ6に非接触であってLLCの温度のみを検出する位置に配置されている従来の場合には、温度センサ26の周囲に存在する空気による断熱効果によって温度センサ26の応答性が悪化し、空焚き検知が遅延した結果、流路18内の温度が上昇し続け、ひいては加熱装置1の発煙発火に至るおそれがある。
【0020】
これに対し本実施形態では、温度センサ26をヒータ2の発熱部である金属パイプ6の外周面6aに直接接触させ、且つLLCが流れる流路18に配置することにより、液体であるLLCと空気である気体との伝熱性の差異に着目し、流路18にLLCが存在するときにはLLCの温度が支配的になる一方、流路18にLLCが存在しない、或いは少量であるときにはヒータ2自体の温度が支配的になることを利用した通電制御が行われる。
【0021】
以上のように本実施形態では、流路18にLLCが存在するときには加熱装置1を保護停止せずに通常の通電制御を行え、一方、流路18にLLCが存在しない、或いは少量であるときには異常処理を行うことで加熱装置1を迅速に保護停止することができる。従って、温度センサ26による通常の通電制御を行いながら、空焚きを高精度且つ迅速に検知し、発煙発火を確実に防止することにより信頼性を高めた加熱装置1を提供することができる。
【0022】
また、温度センサ26の側面26aに形成された各環状溝32にそれぞれOリング34を装着することにより、温度センサ26は各Oリング34を介して貫通孔24に気密に接続固定されるため、いわゆるダブルシールによってケース4からのLLCの漏洩を防止することができ、流路18のLLC減少に伴う空焚きの発生自体を防止し、加熱装置1の信頼性を更に高めることができる。なお、温度センサ26にOリング34を1つのみ装着する場合であっても、ケース4からのLLCの漏洩を防止するのは可能である。
【0023】
本発明は、上記実施形態の加熱装置1に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、温度センサ26の温度測定端部28の先端面30は平坦であることから、温度測定端部28は金属パイプ6の外周面6aに線接触される。しかし、温度センサ26と金属パイプ6との伝熱面積をより大きくするために、温度センサ26と金属パイプ6との接触面積をより大きくするのが好ましい。
【0024】
具体的には、
図3に示されるように、金属パイプ6の外周面6aの一部に平坦面40を形成し、この平坦面40に温度測定端部28の先端面30を当接させ、温度センサ26と金属パイプ6とを面接触させることにより、温度センサ26と金属パイプ6との伝熱面積がより大きくなるため、通電遮断手段の応答性を更に高め、空焚きを更に高精度に検知することができる。
【0025】
また、
図4に示されるように、温度センサ26の温度測定端部28の先端面30に金属パイプ6の外周面6aの曲率半径と略同一半径となる凹曲面42を形成し、この凹曲面42に金属パイプ6の外周面6aを当接させ、温度センサ26と金属パイプ6とを面接触させるようにしても良い。
また、上記実施形態では、温度センサ26の側面26aの2つの環状溝32にそれぞれOリング34が装着され、2つのOリング34が設けられているが、Oリング34の数はこれに限らない。しかし、Oリング34を少なくとも複数個設けることにより、上述したダブルシール効果の他、貫通孔24に対する温度センサ26の芯ずれを抑制する調芯効果をも得ることができる。従って、通電遮断手段の応答性及び空焚き検知精度を確実に高めることができる。
【0026】
また、上記実施形態では、温度センサ26を温度検出手段とし、通電制御を行うインバータを通電遮断手段としているが、温度検出手段及び通電遮断手段を一体に備えた温度ヒューズなどを金属パイプ6に接触させても良い。
また、本発明の加熱装置1は、ハイブリッド自動車や電気自動車の車両用空調装置に組み込むのみならず、他の用途の熱源としても利用可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
1 加熱装置
2 ヒータ
4 ケース(筐体)
6 金属パイプ(発熱部)
18 流路
26 温度センサ(温度検出手段)
34 Oリング(シール部材)