(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029857
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】濃淡バーナ
(51)【国際特許分類】
F23C 99/00 20060101AFI20161114BHJP
F23D 14/02 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
F23C99/00 329
F23D14/02 JZAB
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-117824(P2012-117824)
(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公開番号】特開2013-245838(P2013-245838A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】小田 大志
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−151410(JP,A)
【文献】
特開平06−257721(JP,A)
【文献】
特開2007−042354(JP,A)
【文献】
特開2004−308945(JP,A)
【文献】
特公昭57−012923(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 99/00
F23D 14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスと燃焼用空気とを混合した淡ガスが供給される内筒と、その内筒に同軸で外装され、前記内筒との間にガスと燃焼用空気とを混合した濃ガスが供給される外筒とを備えた濃淡バーナであって、
前記内筒の開口に、複数の小孔を有し、先端へ行くに従って小径となる突出体が設けられる一方、
前記内筒の下端開口に、淡ガス供給用のノズルが、前記内筒と前記外筒との間の下端に、濃ガス供給用のノズルがそれぞれ上向きに保持されており、前記内筒と前記外筒との間には、前記濃ガス供給用のノズルから噴出される濃ガスを、上方へ行くに従って拡開させると共に、前記内筒の軸心へ近づくように導く誘導路が形成されていることを特徴とする濃淡バーナ。
【請求項2】
前記小孔の総面積を、前記内筒の開口面積以上としたことを特徴とする請求項1に記載の濃淡バーナ。
【請求項3】
前記内筒の外周で前記外筒の内側に、前記内筒の内部と連通して前記淡ガスが供給される中間筒が同軸で設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の濃淡バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、淡ガスが供給される内管と、その内管に同軸で外装されて濃ガスが供給される外管とを備えて、温風暖房機等のガス燃焼器具に用いられる濃淡バーナ(低NOxバーナ)に関する。
【背景技術】
【0002】
温風暖房機等のガス燃焼器具においては、NOx(窒素酸化物)の排出量削減のために、淡炎孔で理論空燃比より燃料の希薄な混合気(淡ガス)を燃焼させて主炎を形成し、その淡炎孔に隣接した濃炎孔で理論空燃比より燃料の濃い混合気(濃ガス)を燃焼させて袖火を形成する濃淡バーナ(低NOxバーナ)が用いられることがある。
例えば特許文献1においては、内管と外管とを備えた二重管から構成され、内管の端部を淡炎孔、内管と外管との間を濃炎孔として使用する濃淡バーナにおいて、安定した着火と淡ガスの混合改善とを行うために、二重管の端面全体を金網で被覆した発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−147426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の濃淡バーナにおいては、淡炎孔の総面積は内管の径によって決定されるため、淡炎孔の総面積を大きくして火炎の表面積を大きくすることができず、安定した燃焼には至っていない。
【0005】
そこで、本発明は、火炎の表面積を大きくして安定した燃焼を実現することができる濃淡バーナを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ガスと燃焼用空気とを混合した淡ガスが供給される内筒と、その内筒に同軸で外装され、内筒との間にガスと燃焼用空気とを混合した濃ガスが供給される外筒とを備えた濃淡バーナであって、内筒の開口に、複数の小孔を有し、先端へ行くに従って小径となる突出体
が設けられる一方、
内筒の下端開口に、淡ガス供給用のノズルが、内筒と外筒との間の下端に、濃ガス供給用のノズルがそれぞれ上向きに保持されており、内筒と外筒との間には、濃ガス供給用のノズルから噴出される濃ガスを、上方へ行くに従って拡開させると共に、内筒の軸心へ近づくように導く誘導路が形成されていることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、小孔の総面積を、内筒の開口面積以上としたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、内筒の外周で外筒の内側に、内筒の内部と連通して淡ガスが供給される中間筒
が同軸で設けられることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、突出体の表面に形成される淡ガス火炎の表面積を大きくして安定した燃焼を実現することができる。
特に、誘導路の採用により、濃ガスが誘導路を通る際に、拡開しながら内筒に沿って周回する格好となるため、濃ガスを内筒と外筒との間の濃ガス流路内へ均等に行き渡った状態で上昇させることができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、淡ガス火炎の表面積が確実に大きくなって安定燃焼に好適となる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、突出体の根元に小孔から噴出する淡ガスよりも流速の遅い淡ガス火炎が形成されるため、淡ガス火炎の安定性が増す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】濃淡バーナの説明図で、(A)が平面、(B)が正面をそれぞれ示す。
【
図5】中子の説明図で、(A)が平面、(B)が正面、(C)がC−C断面をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、濃淡バーナの一例を示す説明図で、(A)が平面、(B)が正面をそれぞれ示し、
図2がA−A線断面を、
図3がB−B線断面をそれぞれ示している。
この濃淡バーナ1は、内筒2と、内筒2に同軸で外装される外筒3との二重管構造となっている。
まず内筒2は、内下筒2aと、内下筒2aに同軸で内挿される内上筒2bとからなり、内上筒2bの上端開口には、突出体としての円錐状のバーナヘッド4が同軸で嵌着されている。このバーナヘッド4は、複数の小孔(淡炎孔)5,5・・を千鳥状に配列したパンチングメタルを円錐状に形成したもので、小孔5,5同士の間隔は、小孔5の直径の2〜3倍となっている。また、小孔5の総面積は、内上筒2bの上端開口の面積よりも大きくなっている。
よって、ここには、内筒2の内部を上昇してバーナヘッド4の各小孔5,5・・に至る淡ガス流路6が形成される。
【0010】
さらに、内上筒2bの上端外周には、下端を閉塞して上端を開口した中間筒7が嵌着されて、内上筒2bとの間にリング状の副淡炎孔8を形成している。内上筒2bにおける中間筒7の嵌着部分には、周方向に所定間隔をおいて複数の貫通孔9,9・・が形成されて、内筒2の内部を副淡炎孔8と連通させている。
10は、内下筒2aの下端が同軸で挿入される円盤状のベースで、下方に突出する突出部11には、内下筒2aの内部と連通する大径の一次空気導入孔12,12が形成されると共に、内下筒2aの下端開口に同軸で遊挿する淡ガス用ノズル13が上向きに保持されている。
【0011】
次に、外筒3は、ベース10に組み付けられて内下筒2aに同軸且つ非接触で外装される外下筒3aと、外下筒3aに同軸で連結される外上筒3bとからなる。外下筒3aは、下半分が下方へ行くに従って大径となるテーパ状に形成されて、内下筒2aと外下筒3aとの間でベース10には、小径の一次空気導入孔15,15を側面に有する濃ガス用ノズル14が上向きに取り付けられている。
【0012】
外上筒3bは、点対称位置に上端から切れ込みをそれぞれ形成すると共に、各切れ込みを挟む格好でフランジ16,16をそれぞれネジ止めした筒体で、組み付け状態で内筒2と外筒3との間に、内筒2と外筒3との間を上昇して中間筒7と外上筒3bとの間の濃炎孔18に至る濃ガス流路17を形成している。
また、対向するフランジ16,16同士も互いにネジ止めされているが、この対向するフランジ16,16の間には、上端を除いて板状のスペーサ19が介在されており、対向するフランジ16,16の間に、切れ込みを介して濃ガス流路17と連通する扁平な火移り流路20が形成されている。
【0013】
一方、内下筒2aと外下筒3aとの間には、中子21が収容されている。この中子21は、
図4,5に示すように、濃ガス用ノズル14が挿入されるスリット22を有した平面視C字状のリング体で、スリット22の上側は、上方へ行くに従って徐々に間隔が広がるV字状の拡開部23に形成されている。また、中子21は、外下筒3aのテーパ形状に合わせて、下方へ行くに従って肉厚且つ大径となるテーパ状となっている。
よって、内下筒2aと外下筒3aとの間には、中子21により、濃ガス用ノズル14の延長上に位置し、上方へ行くに従って拡開すると共に内下筒2aの軸心へ近づく誘導路24が形成されることになる。
【0014】
以上の如く構成された濃淡バーナ1は、淡ガス用ノズル13に燃料ガスが供給されると、淡ガス用ノズル13から燃料ガスが上向きに噴出することで、一次空気導入孔12,12から一次空気が吸引され、燃料ガスと一次空気とが内筒2内で混合されて淡ガス(等量比1.0以下)となって淡ガス流路6を上昇し、バーナヘッド4の各小孔5,5・・から噴出する。よって、図示しない点火電極によって点火されると、淡ガスが燃焼して各小孔5ごとに淡ガス火炎F1,F1・・を形成する。
また、淡ガス流路6内の淡ガスの一部は、内上筒2aの貫通孔9から中間筒7内に流出し、副淡炎孔8から上方へ噴出して燃焼する。よって、バーナヘッド4の根元にも、淡ガス火炎F2がリング状に形成されることになる。なお、副淡炎孔8から噴出する淡ガスは、バーナヘッド4の各小孔5から噴出する淡ガスよりも流速が遅い。
【0015】
一方、濃ガス用ノズル14に燃料ガスが供給されると、一次空気導入孔15,15から一次空気が吸引され、燃料ガスと一次空気とが混合された濃ガス(等量比1.0以上)が上向きに噴出する。この濃ガスは、中子21の部分で誘導路23を通ることで、拡開しながら内筒2に沿って周回する格好となるため、濃ガス流路17内へ均等に行き渡った状態で上昇する。そして、内筒2と外筒3との間の濃炎孔18から噴出して燃焼し、リング状の濃ガス火炎F3を形成する。また、濃炎孔18は、火移り流路20と連通していることから、火移り流路20から噴出する濃ガスもここで燃焼して濃ガス火炎F4を形成する。
このように、バーナヘッド4の周囲に濃ガス火炎F3がリング状に形成されることで、淡ガス火炎F2が保炎されてリフトが防止され、安定した燃焼が可能となる。また、低NOxも達成できる。
【0016】
そして、この濃淡バーナ1は、例えば
図6に示すような温風暖房機30に使用される。ここでは空気入口32を備えたケーシング31内に、複数の濃淡バーナ1,1・・を収容した燃焼室33を設けている。この燃焼室33には、ケーシング31内に開口する二次空気導入孔34と二次空気調整用ファン35とが設けられている。また、燃焼室33での濃淡バーナ1,1・・は、
図7に示すように、外上筒3bのフランジ16が互いに隣接する向きで一列で直線状に並設されて、各バーナヘッド4を、燃焼室33の上部に連設されたパイプ状の熱交換器36にそれぞれ挿入している。37はガス管である。
【0017】
各熱交換器36は、ケーシング31の上部に形成された加熱室38内で所定形状に屈曲した後、加熱室38の上部で合流し、排気管39と接続されている。熱交換器36の合流後で排気管39の上流側には、燃焼用ファン40が設けられている。一方、加熱室38の後方には、送風ファン41が設けられて、加熱室38に吸い込んだ空気を熱交換器36を通過させて前方へ供給可能としている。
【0018】
よって、この温風暖房機30においては、まず燃焼用ファン40が回転した後、一番端の濃淡バーナ1に点火して当該濃淡バーナ1が燃焼すると、火移り流路20の濃ガス火炎F4を介して隣接する濃淡バーナ1が燃焼し、この繰り返しによって並設される全ての濃淡バーナ1,1・・が燃焼する。そして、燃焼用ファン40の回転により燃焼排ガスを吸い込んで熱交換器36を通過させることで、送風ファン41によって供給される空気との熱交換を行う。よって、加熱室38の前方へ温風が送出される。また、燃焼排ガスの吸込により、空気入口32から燃焼用空気が導入され、一次空気と二次空気との供給がなされる。
なお、二次空気調整用ファン35は、濃淡バーナ1の点火時から燃焼安定時の間にのみ作動させる。これは以下の理由による。
【0019】
燃焼用空気の総量は、点火時は質量基準で大きく、燃焼中の平衡状態では小さい。よって、空燃比(燃料ガスと一次空気との比)も点火時の方が平衡時に比べて小さくなる。そこで、点火時に空燃比を平衡時に近づけるために、二次空気調整用ファン35を点火時から燃焼が安定するまで作動させることで、二次空気を増やして一次空気を減らし、空燃比を平衡時に近づけるようにしたものである。
【0020】
但し、一般的に点火時に二次空気を増やして一次空気を減少させる方法としては、二次空気調整用ファンの採用に限らず、二次空気の通路に開閉弁を配置し、点火時から燃焼が安定するまでは開閉弁を閉じ、その後開弁するようにしたり、一次空気の通路に補助ファンを配置し、点火時から燃焼が安定するまで停止させ、その後作動させるようにしたりすることも考えられる。
【0021】
このように、上記形態の濃淡バーナ1によれば、内筒2の開口に、複数の小孔5,5・・を有し、先端へ行くに従って小径となるバーナヘッド4を設けたことで、バーナヘッド4の表面に形成される淡ガス火炎F1,F1・・の表面積を大きくして安定した燃焼を実現することができる。
特にここでは、小孔5,5・・の総面積を、内筒2の開口面積より大きくしているので、淡ガス火炎F1の表面積が確実に大きくなって安定燃焼に好適となる。
また、内筒2の外周で外筒3の内側に、内筒2の内部と連通して淡ガスが供給される中間筒7を同軸で設けているので、バーナヘッド4の根元に小孔5,5・・から噴出する淡ガスよりも流速の遅い淡ガス火炎F2が形成され、淡ガス火炎F1の安定性が増す。
【0022】
なお、突出体は、上記形態のバーナヘッドのように直線的に先細りとなる円錐状にするものに限らず、曲線的に先細りとなる形状としたり、円錐でなく角錐としたりしても差し支えない。小孔も、形状や配列は上記形態に限らず、隣同士の火炎が繋がらない形態であれば、適宜変更可能である。また、小孔の総面積を、内筒の開口面積と等しくすることもできる。
さらに、上記形態では、内筒及び外筒を上下に二分割しているが、三分割以上であってもよいし、逆にそれぞれ単一の筒体で形成してもよい。すなわち、内筒及び外筒の構造は適宜設計変更可能である。
加えて、突出体での淡ガス火炎が安定していれば、中間筒を省略することもできる。
【0023】
一方、上記形態では、中子を用いて濃ガスを導く誘導路を形成しているが、内筒の外周又は外筒の内周に、中子のスリット形状に相当する間隔を有する一対のリブを立設したり、内筒又は外筒の肉厚を変えたりすることで、濃ガス用ノズルから噴出される混合気を、上方へ行くに従って拡開させると共に、内筒の軸心へ近づくように導く誘導路を形成することも可能である。
その他、濃淡バーナは、温風暖房機に限らず、これ以外の他のガス燃焼器具にも採用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1・・濃淡バーナ、2・・内筒、2a・・内下筒、2b・・内上筒、3・・外筒、3a・・外下筒、3b・・外上筒、4・・バーナヘッド、5・・小孔、6・・淡ガス流路、7・・中間筒、8・・副淡炎孔、10・・ベース、12,15・・一次空気導入孔、13・・淡ガス用ノズル、14・・濃ガス用ノズル、17・・濃ガス流路、18・・濃炎孔、20・・火移り流路、21・・中子、22・・スリット、23・・拡開部、24・・誘導路、30・・温風暖房機、31・・ケーシング、33・・燃焼室、34・・二次空気導入孔、35・・二次空気調整用ファン、36・・熱交換器、38・・加熱室、40・・燃焼ファン、41・・送風ファン。