(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または請求項2において、前記継手鉄筋は、布基礎のL形または十字形の角部に設けられる鉄筋であって、屈曲形状または湾曲形状であるねじ式鉄筋継手使用の布基礎配筋構造。
布基礎長さ方向に延びる複数の主筋とせん断補強筋とを有する布基礎の配筋構造であって、前記主筋に、請求項1または請求項2に記載の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造が用いられた布基礎配筋構造。
請求項5において、布基礎の十字形の角部を成す2つの直線状基礎部分のうちの一方の直線状基礎部分を通過して、主筋とせん断補強筋とが組み立てられた鉄筋組立体が配置され、他方の直線状基礎部分では、角部を挟み互いに離れて、主筋とせん断補強筋とが組み立てられた一対の鉄筋組立体が配置され、これら互いに離れて配置された一対の鉄筋組立体の複数の主筋がそれぞれ互いに接続される鉄筋が前記継手鉄筋であり、前記継手鉄筋は、前記十字形の角部を成す一方の直線状基礎部分における主筋を避けるように湾曲した湾曲部付きの鉄筋である布基礎配筋構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ねじ式鉄筋継手は、上記のように施工が短時間で行える点で優れているが、接続強度確保のために、端部の雄ねじ部を拡径処理することが必要である。拡径処理の従来の手法として、別体の太径のねじ軸を鉄筋端部に摩擦圧接により接合する方法と、鉄筋を加熱し、圧縮力を与えて拡径する方法とがある。しかし、これらの摩擦圧接や加熱圧縮の処理は、精度や信頼性確保のために、大がかりな設備が必要であり、生産性確保も難しい。
【0006】
住宅の布基礎等の配筋では、L形や十字形の角部において、一般的に短尺の角部用の鉄筋が用いられる。このような短尺の鉄筋では、雄ねじ部の形成に効率的な加工方法が考えられる。しかし、従来のねじ式鉄筋継手において、このような角部の鉄筋と直線部の鉄筋との接続について考慮したものはない。上記のような角部に直線部同士のねじ式鉄筋継手と同じ構造の継手を用いるのでは、無駄の多い構造となる。
【0007】
また、住宅の布基礎の配筋方法として、モジュール長の複数倍等となる一定長さ毎に、主筋とせん断補強筋とを組合わせた鉄筋組立体を製作しておき、現場でこのような鉄筋組立体を型枠内に配置し、対向する主筋を接続する方法が採られることがある。この方法では、現場で各主筋とせん断補強筋とを個別に組んで行く配筋方法に比べ、効率良く、短期間で配筋を完了させることができる。
しかし、一対の鉄筋端部の雄ねじ部に渡ってねじ筒を螺合させる一般のねじ式鉄筋継手では、ねじ筒のねじ込みの進行に伴い、そのねじ込み量だけ鉄筋を長さ方向に移動させることが必要となる。上記のような鉄筋組立体の主筋同士を接続する場合に、上記一般のねじ式鉄筋継手を用いると、鉄筋組立体ごと、ねじ筒のねじ込みの進行に伴って移動させることが必要であり、しかも複数設けられる主筋の全てのねじ式鉄筋継手の接続作業を同時に行うことが必要となる。
【0008】
特に、上記のような鉄筋組立体の主筋同士を接続する場合や、先に打設されたコンクリート等に既に片方が固定された鉄筋をねじ式鉄筋継手で接続する場合、両側の鉄筋の端部に設けられた雄ねじ部が、互いに同一の仮想ねじ面上にあることが必要である。片方の鉄筋の雄ねじ部のねじ面を延長した仮想ねじ面に対して、もう片方の鉄筋の雄ねじ部のねじ面が軸方向にずれていると、ねじ筒等を螺合させることができない。
【0009】
この発明の目的は、鉄筋端部の雄ねじ部の形成が容易で、生産性に優れ、かつ雄ねじ部の強度にも優れ、さらに継手用鉄筋につき、雄ねじ部の形成がより容易に行える異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造を提供することである。
この発明の他の目的は、既に組まれた鉄筋組立体の主筋同士や接続する場合や、コンクリート内に片方が固定された鉄筋を接続する場合にも接続可能であり、鉄筋継手における優れた施工性、施工期間短縮の利点が得られるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、主筋とせん断補強筋が組まれた鉄筋組立体の主筋相互をねじ式鉄筋継手で接続することができて、施工性に優れた布基礎配筋構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の第1の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造は、一対の被接続鉄筋の端部間に継手鉄筋
が介在
し、この継手鉄筋の両端と被接続鉄筋の対向する端部と
がそれぞれねじ式鉄筋継手により接続
されてなる。
前記各被接続鉄筋は、鉄筋本体の外周面に突条を有する異形鉄筋であっ
て、長さ方向の一部に他の部分よりも拡径
し外径
が前記鉄筋の前記突条を含む鉄筋最外径
以下である雄ねじ部
が形成
されている。
前記継手鉄筋は前記被接続鉄筋よりも大径の鉄筋であって両端部に雄ねじ部を有する。
前記各ねじ式鉄筋継手は、継手鉄筋の雄ねじ部とこれに対向する被接続鉄筋の雄ねじとに渡って、内周が雌ねじ部に形成されたねじ筒の
前記雌ねじ部が螺合
して
なる。
前記被接続鉄筋は、前記雄ねじ部に続く部分が、前記外周面の突条に、前記ねじ筒の雌ねじ部におけるねじ山と嵌まり合う螺旋状逃がし溝が形成された逃がし用ねじ部である。
【0011】
この構成によると、ねじ式鉄筋継手につき、鉄筋の端部を拡径化部としてねじ加工した雄ねじ部としたため、端部にそのままねじ加工したものに比べて雄ねじ部の径が太く、接続部の強度が確保される。雄ねじ部は
例えば鉄筋の拡径化部に加工するが、拡径化部は異形鉄筋の突条を含む鉄筋外径である鉄筋最外径以下であるため、異形鉄筋の製造時に拡径化部付きの鉄筋として製造することができる。すなわち、異形鉄筋をロール成形するときに、赤熱した加熱状態で長さ方向に移動する鉄筋は、外周面の突条でガイドに接して案内されるが、突条以上の外径の拡径化部があると、その拡径化部がガイドに接して持ち上がり、鉄筋に曲がりが生じる。この曲がりは鉄筋の冷却後にもある程度残り、曲がりを生じた異形鉄筋となる。そのため、このような太い拡径化部は、鉄筋製造時に製造することはできず、鉄筋の製造完了後に、上記のように加熱圧縮で加工することが必要となる。しかし、拡径化部が突条を含む鉄筋外径である鉄筋最外径以下であると、鉄筋製造時にガイドに接して鉄筋が曲がることがなく、異形鉄筋の製造時に拡径化部付きの鉄筋として製造することができる。そのため、鉄筋製造設備とは別に、拡径処理設備を設けることが不要で、設備の簡素化が図れ、また生産性に優れる。
なお、前記鉄筋の雄ねじ部
が転造ねじである
と、ねじ溝を切削する場合と異なり、材料の除去がなくて、ねじ溝とねじ山とで断面積が相殺され、拡径化部が鉄筋最外径以下という限られた範囲で、拡径による補強の効果をできるだけ高めることができる。
なお、被接続鉄筋は、両端に前記雄ねじ部が形成されたものであっても、一端のみに前記雄ねじ部が形成されたものであっても良い。
【0012】
継手鉄筋は、前記被接続鉄筋よりも大径の鉄筋であって両端部に雄ねじ部を有するものであるため、素材として通常の異形鉄筋等を用い、その端部に雄ねじ部を加工すれば良く、より一層製造が容易である。例えば、前記継手鉄筋は、前記被接続鉄筋よりも大径の異形鉄筋の両端に切削加工等で真円加工部を設け、この真円加工部に雄ねじ部を形成したものとできる。
継手鉄筋は、被接続鉄筋よりも大径の鉄筋を用いるため、拡径加工等を施さずに雄ねじ部を形成しても、強度低下の問題がない。また、継手鉄筋は、一般部分となる被接続鉄筋に比べて短いものとされるため、被接続鉄筋よりも大径の鉄筋を用いても、大径の鉄筋を用いることによる材料増化の問題が少なく、材料増化によるコスト造よりも、雄ねじ部の形成の容易化による生産性向上,コスト低下の利点が大きくなる。
このように、鉄筋端部の雄ねじ部の形成が容易で、生産性に優れ、かつ雄ねじ部の強度にも優れ、さらに継手用鉄筋につき、雄ねじ部の形成がより容易に行える異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造となる。
【0013】
前記継手鉄筋は、鉄筋コンクリート構造物の角部、例えば、布基礎のL形または十字形の角部に設けられる鉄筋であっても良い。
布基礎のL形または十字形の角部では、一般的に短尺の鉄筋が用いられ、かつ布基礎の角部形状に応じてL字形に屈曲したり、また十字形の角部では交差する鉄筋と干渉回避するように湾曲した形状とされる。このような角部の鉄筋を前記継手鉄筋としても良い。これにより、この発明の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造がより効果的なものとなる。
【0014】
前記被接続鉄筋は、前記雄ねじ部に続く部分
が、前記外周面の突条に、前記ねじ筒の雌ねじ部におけるねじ山と嵌まり合う螺旋状逃がし溝が、
例えば転造により形成された逃がし用ねじ部
である。
前記異形鉄筋の前記逃がし用ねじ部とした部分は、異形鉄筋における一般部分よりも鉄筋本体の外径を大きくすることが好ましい。
【0015】
このように、逃がし用ねじ部が設けてあると、被接続鉄筋である異形鉄筋の突条との干渉の問題を生じることなく、ねじ筒をその全体が一方の鉄筋から突出しない位置まで奥側にねじ込んでおくことができる。ねじ筒で接続作業を行うときには、前記一方の鉄筋の端部に他方の鉄筋を対向させてからねじ戻すことで、両側の鉄筋に渡って螺合させることができる。このような接続方法によると、ねじ筒を回転させて接合するときに、ねじ込みに伴って鉄筋を大きく移動させる必要がない。
すなわち、異形鉄筋の突条を含む径である鉄筋最外径以下の拡径化部に雄ねじ部を形成した場合、これに螺合するねじ筒を雄ねじ部よりも奥く側までねじ込もうとしても、ねじ筒の雌ねじ部内径が鉄筋最外径以下となるため、ねじ筒のねじ山が異形鉄筋の突条に干渉し、雄ねじ部よりも奥側にねじ込むことができない。この干渉を、前記逃がし用ねじ部で回避することができる。
このため、例えば片方の被接続鉄筋が既にコンクート内に埋め込まれていて、もう片方の被接続鉄筋が鉄筋組立体とされていても、接続が可能となる。なお、互いに接続される鉄筋は、雄ねじ部が互いに同一の仮想ねじ面上にあることが必要であり、ずれている場合はその調整が必要がであるが、調整に必要な鉄筋移動距離は、例えば1〜2mm程度であり、この程度の調整であれば、コンクート内に埋め込まれた鉄筋と、埋め込みまでは行われていなくて鉄筋組立体とされている鉄筋との接続であっても可能である。
【0016】
また、異形鉄筋の突条のうち、長さ方向に沿って延びる突条であるリブは、鉄筋の断面積に寄与していて、切削加工等により前記リブに前記螺旋状逃がし溝を形成した場合は、それだけ断面欠損が発生することになり、引張り力の負荷時にその部分が強度不足になる恐れがある。しかし、上記螺旋状逃がし溝を転造により形成した場合、ねじ加工によりリブに生じた断面欠損分の鉄筋材料は、同じ長さ方向位置で前記リブとは別の周方向部分に塑性流動することになり、鉄筋全体の断面積は螺旋状逃がし溝の加工にかかわらず一定となる。したがって、螺旋状逃がし溝の形成により強度低下を生じる問題が回避される。
ただし、この部分で終局時に破断することは好ましくなく、異形鉄筋の前記逃がし用ねじ部とした部分は、異形鉄筋における一般部分よりも鉄筋本体の外径を大きくするのが良い。例えば、リブ断面積に相当する断面積を、谷部を浅くしてカバーするのが良い。
なお、雄ねじ部の長さを長くすることによっても、ねじ筒を鉄筋端面から突出しない位置までねじ込んでおくことが可能であるが、その場合、雄ねじ部の長さを長くした鉄筋部分は異形鉄筋の断面形状に比べてコンクリートの付着性能が低下する。鉄筋の継手として使用しない箇所は、異形鉄筋の最も大きな機能であるコンクリートの付着性能を確保することが必要である。
これにつき、鉄筋外周面の突条に螺旋状逃がし溝を転造した構成であると、継手の接続作業の容易性と、コンクリート付着機能との二つの機能を共に得ることができる。
【0017】
この発明の第2の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造は、被接続鉄筋と端部鉄筋とがねじ式鉄筋継手により接続されてなる接続構造である。
前記被接続鉄筋は、
鉄筋本体の外周面に突条を有する異形鉄筋であって、長さ方向の一部に他の部分よりも拡径し外径が前記鉄筋の前記突条を含む鉄筋最外径以下である雄ねじ部が形成されている。
前記端部鉄筋は前記被接続鉄筋よりも大径の鉄筋であって一端部に雄ねじ部を有する。
前記ねじ式鉄筋継手は、
前記端部鉄筋の雄ねじ部と被接続鉄筋の雄ねじとに渡って、内周が雌ねじ部に形成されたねじ筒が螺合してなる。
前記被接続鉄筋は、前記雄ねじ部に続く部分が、前記外周面の突条に、前記ねじ筒の雌ねじ部におけるねじ山と嵌まり合う螺旋状逃がし溝が形成された逃がし用ねじ部である。
【0018】
この構成は、布基礎等の鉄筋コンクリート体のT形の角部やその他の箇所であって、他端側は他の鉄筋と接続されない端部鉄筋と被接続鉄筋との接続に適用される。前記端部鉄筋は、より具体的には、例えばL字形に形成され、布基礎のT形の角部等に埋め込まれて一端が主筋である被接続鉄筋と接続され、他端が片方が下向きまたは上向きとされる鉄筋である。この異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造も、第1の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造につき前述したと同様の各作用が得られ、鉄筋端部の雄ねじ部の形成が容易で、生産性に優れ、かつ雄ねじ部の強度にも優れ、さらに端部鉄筋につき、雄ねじ部の形成がより容易に行えるという利点が得られる。
【0019】
この発明の布基礎配筋構造は、布基礎長さ方向に延びる複数の主筋とせん断補強筋とを有する布基礎の配筋構造であって、前記主筋に、この発明の上記いずれかの構成の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造を用いたものである。
この配筋構造であると、複数の主筋とせん断補強筋とを組み立てた鉄筋組立体を用いるため、現場で複数の主筋とせん断補強筋を個別に配筋する場合に比べて、施工性が向上する。また、複数の主筋とせん断補強筋とを組み立てた鉄筋組立体を用いており、主筋が略位置固定となる場合があるが、この発明の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造を用いるため、主筋の僅かな移動が可能であれば、支障なく、主筋を対向する主筋と接続することができる。
【0020】
この発明の布基礎配筋構造において、布基礎のL形の角部を構成する両側の基礎部分に、それぞれ、主筋とせん断補強筋とを組み立て
た鉄筋組立体が配置され、両鉄筋組立体の前記主筋が前記被接続鉄筋であり、両鉄筋組立体の主筋を相互に接続するL形の主筋が前記継手鉄筋とされていても良い。
布基礎のL形の角部では、一般的に平面形状L形の短い鉄筋が用いられる。そのため、この平面形状L形の鉄筋に前記大径の継手鉄筋を用いることで、鉄筋使用量の無駄を生じることなく、また必要強度の雄ねじ部を生産性良く加工することができる。
【0021】
この発明の布基礎配筋構造において、布基礎の十字形の角部を成す2つの直線状基礎部分のうちの一方の直線状基礎部分を通過して、主筋とせん断補強筋と
が組み立て
られた鉄筋組立体
が配置
され、他方の直線状基礎部分では、角部を挟み互いに離
れて、主筋とせん断補強筋と
が組み立て
られた一対の鉄筋組立体
が配置
され、これら互いに離
れて配置
された一対の鉄筋組立体の複数の主筋
がそれぞれ互いに接続
される鉄筋
が前記継手鉄筋
であり、前記継手鉄筋は、前記十字形の角部を成す
一方の直線状基礎部分における主筋を避けるように湾曲
した湾曲部付きの鉄筋
であっても良い。
布基礎の十字形の角部では、十字形の角部を成す他方の直線状基礎部分における主筋を避けるように湾曲させた短い湾曲部付きの鉄筋が用いられる。そのため、この湾曲させた鉄筋に前記の太い継手鉄筋を用いることで、鉄筋使用量の無駄を生じることなく、また必要強度の雄ねじ部を生産性良く加工することができる。
【0022】
この発明において、布基礎の長さ方向に延びる主筋とせん断補強筋と
が組み立て
られた鉄筋組立体
が用い
られた布基礎配筋構造であって、
布基礎のT字形の角部におけるT字の頭部側の基礎部分を通過して、一つの鉄筋組立体
が配置
され、脚部側の基礎部分に、頭部側の基礎部分に対して垂直な他の鉄筋組立体が配置
され、前記脚部側の基礎部分の鉄筋組立体の主筋
が、
請求項5記載の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造における被接続鉄筋
であり、この被接続鉄筋に接続されてT字の頭部側の基礎部分内に埋め込まれる立ち下がり部分または立ち上がり部分を有する側面形状L形の鉄筋
が、端部鉄筋
であっても良い。
布基礎のT形の角部では、一般的に、立ち下がりまたは立ち上がり部分を有する側面形状L形で短い鉄筋が用いられる。そのため、この側面形状L形の鉄筋を、被接続鉄筋よりも太い前記端部鉄筋を用いることで、鉄筋使用量の無駄を生じることなく、必要強度の雄ねじ部を生産性良く加工することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明の異形鉄筋の第1のねじ式鉄筋継手使用の接続構造は、一対の被接続鉄筋の端部間に継手鉄筋
が介在
し、この継手鉄筋の両端と被接続鉄筋の対向する端部と
がそれぞれねじ式鉄筋継手により接続
されてなり、 前記各被接続鉄筋は、鉄筋本体の外周面に突条を有する異形鉄筋であっ
て、長さ方向の一部に他の部分よりも拡径
し外径
が前記鉄筋の前記突条を含む鉄筋最外径
以下である雄ねじ部
が形成
されており、前記継手鉄筋は前記被接続鉄筋よりも大径の鉄筋であって両端部に雄ねじ部を有し、前記各ねじ式鉄筋継手は、継手鉄筋の雄ねじ部とこれに対向する被接続鉄筋の雄ねじとに渡って、内周が雌ねじ部に形成されたねじ筒の
前記雌ねじ部が螺合
して
なり、前記被接続鉄筋は、前記雄ねじ部に続く部分が、前記外周面の突条に、前記ねじ筒の雌ねじ部におけるねじ山と嵌まり合う螺旋状逃がし溝が形成された逃がし用ねじ部であるため、鉄筋端部の雄ねじ部の形成が容易で、生産性に優れ、かつ雄ねじ部の強度にも優れ、さらに継手用鉄筋につき、雄ねじ部の形成がより容易に行える。
前記被接続鉄筋は、前記雄ねじ部に続く部分が、前記外周面の突条に、前記ねじ筒の雌ねじ部におけるねじ山と嵌まり合う螺旋状逃がし溝が形成された逃がし用ねじ部であるため、既に組まれた鉄筋組組立体の主筋同士や接続する場合や、コンクリート等に片方が固定された鉄筋を接続する場合にも接続可能であり、鉄筋継手における優れた施工性、施工期間短縮の利点が得られる。
【0024】
この発明の第2の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造は、被接続鉄筋と端部鉄筋と
がねじ式鉄筋継手により接続
されてなり、前記被接続鉄筋
は、長さ方向の一部に他の部分よりも拡径
し外径
が前記鉄筋の前記突条を含む鉄筋最外径以下
である雄ねじ部
が形成
されており、前記端部鉄筋は前記被接続鉄筋よりも大径の鉄筋であって一端部に雄ねじ部を有し、前記ねじ式鉄筋継手は、継手鉄筋の雄ねじ部と被接続鉄筋の雄ねじとに渡って、内周が雌ねじ部に形成されたねじ筒が螺合
してなるため、鉄筋端部の雄ねじ部の形成が容易で、生産性に優れ、かつ雄ねじ部の強度にも優れ、さらに端部鉄筋につき、雄ねじ部の形成がより容易に行える。
前記被接続鉄筋は、前記雄ねじ部に続く部分が、前記外周面の突条に、前記ねじ筒の雌ねじ部におけるねじ山と嵌まり合う螺旋状逃がし溝が形成された逃がし用ねじ部であるため、既に組まれた鉄筋組組立体の主筋同士や接続する場合や、コンクリート等に片方が固定された鉄筋を接続する場合にも接続可能であり、鉄筋継手における優れた施工性、施工期間短縮の利点が得られる。
【0025】
この発明の布基礎配筋構造は、布基礎長さ方向に延びる複数の主筋とせん断補強筋とを有する布基礎の配筋構造であって、前記主筋に、この発明の上記いずれかの構成の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造を用いたため、主筋とせん断補強筋が組まれた鉄筋組立体の主筋相互をねじ式鉄筋継手で接続することができて、施工性に優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1(A)に示すように、この異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造は、一対の被接続鉄筋1,1の端部間に継手鉄筋3を介在させ、この継手鉄筋3の両端と被接続鉄筋1の対向する端部とを、それぞれねじ式鉄筋継手5により接続してなる。被接続鉄筋1および継手鉄筋3は、いずれも両端に雄ねじ部1c,3cを形成した異形鉄筋であるが、これら雄ねじ部1c,3cの加工や鋼材使用量から得失を考慮して、継手鉄筋3は被接続鉄筋1よりも大径の鉄筋、例えば、規格上で1サイズ大径の鉄筋が用いられる。各ねじ式鉄筋継手5は、継手鉄筋3の雄ねじ部3cとこれに対向する被接続鉄筋1の雄ねじ部1cとに渡って、内周が雌ねじ部に形成されたねじ筒2を螺合させてなる。
【0028】
継手鉄筋3は、後述の布基礎の角部や交差部等に用いられる鉄筋であって、一般の被接続鉄筋1に比べて短尺の鉄筋とされる。継手鉄筋3は、例えば、
図1(A)に示すようなL形とされ、または
図1(B)のように交差鉄筋1′を避けるように中間部を浅いV字状等に湾曲させた湾曲部3v付きの形状とされるが、
図1(C)のように直線状としても良い。
直線状の継手鉄筋3は、例えば長さ調整に用いられる。すなわち、被接続鉄筋1は、定尺のものが準備され、布基礎等の鉄筋コンクート体の長さに応じて、
図1(E)のようにねじ式鉄筋継手5Aで接続される。しかし定尺の被接続鉄筋1を接続した場合に、その鉄筋接続体の長さが鉄筋コンクート体の長さに合わず、短い鉄筋が必要とされることがある。そのような箇所に、直線状の継手鉄筋3が用いられる。
【0029】
布基礎等の鉄筋コンクート体の端部等では、鉄筋端部の定着のために、
図1(D)のようにL字状に屈曲した端部鉄筋4が用いられる場合がある。このような端部鉄筋4の場合、継手鉄筋3と同じく、被接続鉄筋1よりもサイズ大径の鉄筋が用い、被接続鉄筋1とねじ式鉄筋継手5で接続したねじ式鉄筋継手使用の接続構造が用いられる。
【0030】
図2は、
図1(A)のねじ式鉄筋継手使用の接続構造の拡大図である。同図に示すように、被接続鉄筋1は、鉄筋本体1aの外周面に、長さ方向に沿って延びるリブ1baや、円周方向に延びる節1bb等の突条1bを有する異形鉄筋である。節1bbは、長さ方向に離れた一定間隔おきに設けられている。長さ方向に延びるリブ1baは、図示の例では円周方向に離れた2箇所に設けているが、円周方向に離れた3〜4か所に設けても良い。また節1bbは、全周に渡る円形に形成されているが、節1bbを半円形とし、鉄筋外周の半周部分と残り半周部分に位置する半径形の節を長さ方向に交互に設けても良い。
【0031】
被接続鉄筋1は、このような異形鉄筋であって、素材となる鉄製の線材のロール成形により前記外周面の突条1bを成形すると共に、長さ方向の一部に他の部分よりも拡径した拡径化部W1d(
図6(B)参照)を成形し、この拡径化部W1dの外径D4を、被接続鉄筋1の前記突条1bを含む鉄筋最外径D1(
図2)以下とし、この拡径化部W1dを転造により雄ねじ部1cに形成してある。
【0032】
なお、
図2において、鉄筋1の雄ねじ部1cの外径は、完成状態で鉄筋最外径D1以下でかつ鉄筋本体の外径D2以上となっているが、転造ねじの場合、必ずしも完成状態で鉄筋最外径D1以下である必要はなく、転造前の拡径化部W1dの状態で鉄筋最外径D1以下であれば良い。転造ねじとする場合、素材外径よりも転造後のねじ山外径の方が大きくなることがあり、また拡径化部W1dの外径を規制するのは、雄ねじ部1cを転造するよりも前のロール成形の過程における都合上の理由のためである。鉄筋1の雄ねじ部1cの溝底径は、鉄筋1の鉄筋本体の外径D2以上とする。
【0033】
被接続鉄筋1の雄ねじ部1cと継手鉄筋3の雄ねじ部3cとは、この実施形態では、互いに同径、同ピッチで、かつ螺旋方向が同方向とされ、かつ各鉄筋1,3の雄ねじ部1c,3cの長さL1,L1′は、ねじ筒の長さL2に、両鉄筋1,3の端面間に生じる隙間分を加えた長さとされている。なお、両鉄筋1,3の雄ねじ部1c,3cは、径、ピッチ、螺旋方向が異なっていても良い。例えば、両鉄筋1の雄ねじ部1c,3cが互いに逆ねじとされていても良い。
【0034】
被接続鉄筋1の雄ねじ部1cの基端に続く部分は、逃がし用ねじ部1eとする。逃がし用ねじ部1eは、鉄筋1の外周面のリブ1baおよび節1bb等の突条1bに、ねじ筒2の雌ねじ部2aにおけるねじ山と嵌まり合う螺旋状逃がし溝1eaを、転造によって形成した部分である。逃がし用ねじ部1eの長さL3は、ねじ筒2の長さL2から雄ねじ部1cの長さL1を差し引いた長さか、またはこれよりも僅かに長い長さとする。
螺旋状逃がし溝1eaの断面形状は、この例では雄ねじ部1cのねじ溝と同じ形状としているが、ねじ結合に寄与する形状である必要はない。ねじ筒2のねじ山を逃がすことができる断面形状であれば良く、ねじ山間の噛み合い部分に隙間が大きく生じる断面形状であっても良い。
逃がし用ねじ部1eの螺旋状逃がし溝1eaの溝底径は、鉄筋本体1aの外径D2以上とするが、加工の誤差等により、鉄筋本体1aの外径D2未満となっても良い。螺旋状逃がし溝1eaは転造で加工するため、溝底径にかかわらず、鉄筋1の断面寸法に変化が生じないためである。
【0035】
被接続鉄筋1の前記逃がし用ねじ部1eとした部分は、鉄筋1における一般部分1fよりも鉄筋本体1aの外径を大きくしてある。
図6(B)は、雄ねじ部1cおよび螺旋状逃がし溝1eaの転造前の被接続鉄筋1の形状を示す。
【0036】
逃がし用ねじ部1eとなる部分の外径(半径)R2′〈
図3(B)〉は、一般部分1fの鉄筋本体1aの最小径部分の外径(半径)R2よりも大径とされている(なお、D2=R2×2)。換言すれば、逃がし用ねじ部1eとなる部分では、隣合う節1bb間の谷部となる深さH2を、一般部分1fにおける谷部となる深さH1よりも浅くしている。このようにして、リブ1baの断面積に相当する断面積またはそれ以上の断面積を、谷部を浅くして補っている。
【0037】
なお、被接続鉄筋1の前記逃がし用ねじ部1eとした部分は、必ずしも、鉄筋1における一般部分1fよりも鉄筋本体1aの外径を大きくする必要はなく、一般部分1fと同じ同じ形状で外径であっても良い。
【0038】
図2において、継手鉄筋3は、異形鉄筋の端部に真円部(図示せず)を切削加工等で施し、その真円部を雄ねじ部3cに、転造または切削によって加工したものである。雄ねじ部3cは、被接続鉄筋1の雄ねじ部1cと同じ形状,寸法とされている。継手鉄筋3は、拡径化部を塑性加工することなく必要径の雄ねじ部3cが形成できるように、上記のように被接続鉄筋1よりも大径の異形鉄筋を用いている。そのため継手鉄筋3は、異形鉄筋の鉄筋本体の外径が、形成する雄ねじ部3cの溝底径よりも大径であることが望ましい。継手鉄筋3は、この例では、被接続鉄筋1cよりも1サイズ大径の異形鉄筋を用いている。例えば、鉄筋規格として、直径がD16mm、D19mm、D22mm、D25mmのものが備えられる場合、被接続鉄筋1にD16mmの鉄筋を用いる場合は、継手鉄筋3にはD19mmの鉄筋が、被接続鉄筋1にD19mmの鉄筋を用いる場合は、継手鉄筋3にはD22mmの鉄筋が、被接続鉄筋1にD22mmの鉄筋を用いる場合は、継手鉄筋3にはD25mmの鉄筋が、それぞれ使用される。継手鉄筋3の鉄筋本体3aや突条3b(リブ3ba,節3bb)の形状は、被接続鉄筋1の一般部1fと同様な形状のもので良い。
【0039】
継手鉄筋3は、このようにして両端に雄ねじ部3cを形成した異形鉄筋を、使用箇所等に応じて
図1(A),(B)等に示すように、種々の形状に曲げ加工される。加工順としては、曲げ加工後に雄ねじ部3cを形成しても良い。
【0040】
図1(D)の端部鉄筋4は、継手鉄筋3と同様に、被接続鉄筋1よりも大径の異形鉄筋の端部に真円部(図示せず)を切削加工等で施し、その真円部を雄ねじ部4cに、転造または切削によって加工したものである。端部鉄筋4では、雄ねじ部4cは一端のみに設けられていれば良いが、継手鉄筋3と同じく両端に雄ねじ部4cを有し、L形等に曲げ加工されたものを共通の部品として準備し、配筋作業等の過程で、継手鉄筋3と端部鉄筋4とに任意に使い分けても良い。
【0041】
ねじ筒2は、内周に雌ねじ部2aが略全長に渡って連続して形成された鋼製の円筒状体である。なお、上記のように逆ねじとしても良い。ねじ筒2の雌ねじ部2a、および鉄筋1,3の雄ねじ部1c,3cの断面形状は、三角形状であっても、台形、矩形、または曲線状であっても良い。ねじ筒2の外周面形状は、円筒面に限らず、中間部に膨らみ部を持つなど、種々の形状が採用できる。
【0042】
図1(E)は、被接続鉄筋1,1同士をねじ筒2で接続した接続構造を示し、
図5はその鉄筋継手5Aを示す。この鉄筋継手5Aでは、
図1(A)〜(C)の継手鉄筋3を用いることなく、両被接続鉄筋1,1の対向する雄ねじ部1c,1cにねじ筒2を螺合させて接続する。雄ねじ部1cおよびねじ筒2は、継手鉄筋3を用いる鉄筋継手5と同じ構成である。
【0043】
次に、雄ねじ部1c等を有する被接続鉄筋1の製造方法を説明する。まず、
図6(A)に一部を示す素材となる長尺の異形鉄筋W1を製造する。この異形鉄筋W1の製造時に、長さ方向の複数箇所における鉄筋本体W1aの一部の長さ範囲L1を、その外径D4が、突条1bを含む外径である鉄筋最外径D1以下で、かつ他の部分の鉄筋本体W1aの外径D2よりも大径の拡径化部W1dとする。
【0044】
図11に示すように、この素材異形鉄筋W1は、素材となる鉄製の丸棒状の線材W0を、成形用ロール21,21間に通すことにより、ロール成形による圧延で突条1bを成形する。この成形は、線材W0を加熱しておいて、熱間で行う。成形用ロール21,21によるロール成形の過程で、拡径化部W1dを設ける。具体的には、成形用ロール21,21は、成形型面となる外周面に、鉄筋1の突条1bを成形する凹部(図示せず)を設けたものであるが、この成形用ロール21,21の外周面における円周方向の一部を、拡径化部成形用凹部21aとする。拡径化部成形用凹部21aの周長は、成形する拡径化部W1dの長さ(L1)とする。成形用ロール21,21の外周面における、拡径化部成形用凹部21aの円周方向両側に隣合う部分は、前記の一般部分1f(
図2)よりも鉄筋本体1aの外径を大きくした鉄筋部分を成形する型部分とされる。このような成形用ロール21,21を用いることで、通過した成形後の素材異形鉄筋W1は、長さ方向の一部が拡径化部W1dとされ、残り長さ範囲の部分に突条1bを成形されたものとなる。
【0045】
拡径化部W1dは、鉄筋最外径D1以下であるため、素材となる長尺の異形鉄筋W1のロール成形による製造時に、素材異形鉄筋W1の突条1bに接して加熱状態の素材異形鉄筋W1を案内するロール等のガイド12に拡径化部W1dが接触せず、したがって拡径化部W1dがガイド22に接することによる異形鉄筋W1の曲がりの問題を生じることなく異形鉄筋W1を製造することができる。
【0046】
このように製造された素材となる異形鉄筋W1を、
図6(B)のように、各拡径化部W1dの端で切断し、両端に拡径化部W1dを有する所定の長さの拡径部付き異形鉄筋W1′を複数本得る。拡径化部W1dで切断された残りの鉄筋は、端部に拡径化部W1dが無いたため、隣の拡径化部W1dまで、またはさらに他の幾つか離れた拡径化部W1dまでの部分である端材鉄筋1sを、この発明のねじ式鉄筋継手とは別の用途の鉄筋に利用する。なお、
図11のようにロール成形するときに、成形用ロール11の外周面における拡径化部成形用凹部11aは、円周方向の複数箇所に設け、成形用ロール11の1回転で拡径化部W1dが複数個成形されるようにしても良い。前記所定の長さの拡径部付き異形鉄筋W1は、例えば、住宅等の建物の基礎等に適用する場合、モジュール設計された建物のモジュール(例えば900mm、910mm、1000mm等)の倍数、または前記モジュールの1/2の長さの倍数とするのが良い。
【0047】
この切断された各拡径部付き異形鉄筋W1の拡径化部W1dに、
図12のように一対の転造用ロール13,13の間で、雄ねじ部1cを転造により加工し、両端に拡径した雄ねじ部1cを有する被接続鉄筋1とする。この転造加工時に、雄ねじ部1cが転造された後も転造用ロール13,13間に拡径部付き異形鉄筋W1を送り込み、雄ねじ部1cに続く逃がし用ねじ部1e(
図1)を転造する。
【0048】
図7は、製造された被接続鉄筋1の一例を示す。拡径化部W1dは、
図11の転造ロール11の1周長さ毎に形成されるため、ある程度長い被接続鉄筋1の場合は、同図のように鉄筋長さ方向の中間に、雄ねじ部1cを形成する拡径化部W1dと同径で雄ねじ部未形成の拡径化部W1dが、1か所または複数箇所に設けられたものとなる。
【0049】
すなわち、拡径化部W1dを有する素材異形鉄筋W1を
図11と共に前述したようにロール成形する場合、成形用ロール11の外周長さ毎に拡径化部W1dが形成されることになる。そのため、形成用ロール11の外周長さよりも長い素材異形鉄筋W1では、鉄筋長さ方向の中間に拡径化部W1dが存在することになる。したがって、中間に拡径化部W1dを有しない素材異形鉄筋を成形することは困難であるが、中間に拡径化部W1dがあっても、鉄筋使用時にはコンクリート内に埋め込めば良い。このとき、拡径化部W1dは単なる丸棒状であるため、異形部分に比べてコンクリートに対する付着力が低い。しかし、
拡径化部W1dは短いため、鉄筋として付着力不足の問題が生じない。
【0050】
図7のように、雄ねじ部長さL1の拡径化部W1dを中間に有する鉄筋1とする場合に、
図8に示すように、拡径化部W1dに隣合う逃がし用ねじ部1e(同図は、ねじ加工前の状態)を拡径化部W1dの片方だけとし、もう片方は、一般部分1fが拡径化部W1dに直接に続くように、素材異形鉄筋W1をロール成形しても良い。
【0051】
また、
図9に示すように、拡径化部W1dの片方のみに逃がし用ねじ部1e同図は、ねじ加工前の状態)を隣合って設けた場合に、もう片方に、逃がし用ねじ部1eよりも短い逃がし用ねじ未形成部1gを設けても良い。この逃がし用ねじ未形成部1gは、逃がし用ねじ部1eと同様に一般部分1fよりも鉄筋本体1aの外径を大きくし、雄ねじを未形成とした部分である。この逃がし用ねじ未形成部1gが形成されることで、鉄筋1の断面寸法が拡径化部W1dから一般部分1fに急激に変わることが回避されて、次第に変わるようになり、そのため応力集中が生じ難く、強度的に優れたものとなる。
【0052】
図10は、異形鉄筋のねじ式鉄筋継手のさらに他の例を示す。この例は、前記鉄筋継手5Aに適用した場合を図示しているが、前記各部の鉄筋継手5(5A〜5E)のいずれに用いても良い。この例では、鉄筋1の雄ねじ部1cを形成した拡径化部W1dに続く部分を、逃がし用ねじ部とせずに、一般部分1fとしている。また、ねじ筒2で接続される一対の鉄筋1,1の雄ねじ部1c,1cが、互いに逆ねじとされている。ねじ筒2は、長さ方向の中央を境界としてその両側の雌ねじ部2a,2aを互いに逆ねじとしている。
この例のように、ねじ筒2で接続される一対の鉄筋1,1の雄ねじ部1c,1cを逆ねじとした場合は、ねじ筒2の回転によって両側の鉄筋1,1が引き寄せられることになり、ねじ筒2は両側に鉄筋1,1の雄ねじ部1c,1cに同時に先端からねじ込まれることになるため、逃がし用ねじ部1eを設なくても接続が簡単に行える。
【0053】
なお、前記各例では、逃がし用ねじ部1eを設ける場合、いずれも鉄筋1の断面積を、(雄ねじ部1c)>(逃がし用ねじ部1e)≧(一般部分1f)としたが、逃がし用ねじ部1eの鉄筋本体1aの部分の断面積を大きくし、(逃がし用ねじ部1e)>(雄ねじ部1c)>(一般部分1f)となる関係としても良い。ここで言う鉄筋1の各部の断面積は、各部の最小断面となる部分の断面積である。なお、雄ねじ部1cや逃がし用ねじ部1eでは、ねじ溝の形成によってねじ溝部分が小径となっているが、ねじ溝は螺旋形状であるため、鉄筋1の断面において、半周はねじ溝となり、残り半周は節1baに形成されたねじ山となるため、ねじ溝の形成による断面低下の影響は少ない。
【0054】
上記構成のねじ式鉄筋継手使用の接続構造における各ねじ式鉄筋継手5の接合作業に際しては、
図4に鎖線で示すように、ねじ筒2が被接続鉄筋1の端面から突出しない位置まで、被接続鉄筋1の雄ねじ部1cに深く螺合させておく。この状態で両側の鉄筋1,3を略突き合わせ状態に配置する。この後、ねじ筒2をねじ戻し、
図2のように両側の鉄筋1,3の雄ねじ部1c,3cに渡って螺合させる。これにより、接合が完了する。このように、ナット2をねじ戻して両鉄筋1,3の雄ねじ部1c,3cに螺合させる方法を取ることで、ねじ込みに伴って鉄筋をその螺合長さだけ移動させる必要がない。したがって接続作業が容易に行える。
【0055】
なお、ねじ筒2をねじ戻して接続するときに、対向する被接続鉄筋1と継手鉄筋3の雄ねじ部1c,3cのねじ溝位相が合っていないと接続ができないが、布基礎や梁等におけるコンクリートの打設前の配筋組み立て状態の鉄筋の場合、あるいは被接続鉄筋1のみがコンクリート内に埋め込まれていて、継手鉄筋3が配筋組み立て状態とされている場合、1〜3mm程度の軸方向移動は可能である。この程度の移動が行えれば、対向する被接続鉄筋1と継手鉄筋3の雄ねじ部1c,3cのねじ溝位相が合う位置に調整でき、接続が可能となる。
【0056】
この構成の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造によると、ねじ式鉄筋継手5につき、被接続鉄筋1は端部を拡径化部W1dとしてねじ加工した雄ねじ部1cとしたため、端部にそのままねじ加工したものに比べて雄ねじ部1cの径が太く、接続部の強度が確保される。雄ねじ部1cは鉄筋の拡径化部W1dに加工するが、拡径化部W1dは異形鉄筋1の突条1bを含む鉄筋外径である鉄筋最外径D1以下であるため、素材異形鉄筋W1の製造時に拡径化部付きの鉄筋として製造することができる。すなわち、
図11と共に前述したように素材異形鉄筋W1をロール成形するときに、赤熱した加熱状態で長さ方向に移動する鉄筋は、外周面の突条1bでガイド12に接して案内されるが、突条1b以上の外径の拡径化部があると、その拡径化部がガイドに接して持ち上がり、鉄筋に曲がりが生じる。この曲がりは鉄筋の冷却後にもある程度残り、曲がりを生じた異形鉄筋となる。そのため、このような太い拡径化部は、鉄筋製造時に製造することはできず、鉄筋の製造完了後に、上記のように加熱圧縮で加工することが必要となる。しかし、拡径化部W1dが突条1bを含む鉄筋外径である鉄筋最外径D1以下であると、鉄筋製造時にガイド12に接して鉄筋が曲がることがなく、素材異形鉄筋W1の製造時に拡径化部付きの鉄筋として製造することができる。そのため、鉄筋製造設備とは別に、拡径処理設備を設けることが不要で、設備の簡素化が図れるうえ、生産性にも優れる。
【0057】
また、被接続鉄筋1の雄ねじ部1cは転造ねじであるため、ねじ溝を切削する場合と異なり、材料の除去がなくて、ねじ溝とねじ山とで断面積が相殺され、拡径化部W1dが鉄筋最外径以下という限られた範囲で、拡径による補強の効果をできるだけ高めることができる。
【0058】
継手鉄筋3は、被接続鉄筋1よりも大径の鉄筋を用いるため、拡径加工等を施さずに雄ねじ部3cを形成しても、強度低下の問題がない。また、継手鉄筋3は、一般部分となる被接続鉄筋1に比べて短いものとされるため、被接続鉄筋1よりも大径の鉄筋を用いても、大径の鉄筋を用いることによる材料増化の問題が少なく、材料増化によるコスト造よりも、雄ねじ部3cの形成の容易化による生産性向上,コスト低下の利点が大きくなる。
このように、鉄筋端部の雄ねじ部1c,3cの形成が容易で、生産性に優れ、かつ雄ねじ部1c,3cの強度にも優れ、さらに継手用鉄筋3につき、雄ねじ部3cの形成がより容易に行える異形鉄筋のねじ式鉄筋継手使用の接続構造となる。
【0059】
また、前記雄ねじ部1cは鉄筋最外径D1以下の拡径化部W1dに形成したものであるため、ねじ溝の溝底径は鉄筋最外径D1よりも小径となる。そのため、
図4のようにねじ筒2を被接続鉄筋1の雄ねじ部1cに、その端面から突出しない位置まで深く螺合させておくときに、ねじ筒2が異形鉄筋1の突条1aに干渉する問題が生じる。
しかし、この実施形態では、鉄筋1の雄ねじ部1cに続く部分は、続く逃がし用ねじ部1eとされているので、リブ1baや節1bbにねじ筒2の雌ねじ部2aのねじ山が干渉することなく、ねじ筒2を深くねじ込むことができる。
【0060】
被接続鉄筋1の逃がし用ねじ部1eとした部分は、被接続鉄筋1における一般部分1fよりも鉄筋本体1aの外径を大きくしたため、つまり
図3のR2′>R2としたため、鉄筋に過大な引っ張り荷重が作用しても、継手部分(雄ねじ部1cと逃がし用ねじ部1eの部分)で終局時に破断することがなく、破断は一般部分1fで生じることになる。
【0061】
逃がし用ねじ部1eの形成は、リブ1ba等における断面欠損が生じるが、逃がし用ねじ部1eは転造により加工するため、断面欠損による問題は生じない。すなわち、異形鉄筋1の突条1bのうち、長さ方向に沿って延びる突条であるリブ1baは、鉄筋の断面積に寄与していて、切削加工等により前記リブ1baに前記螺旋状逃がし溝1eaを形成した場合は、それだけ断面欠損が発生することになり、引張り力の負荷時にその部分が強度不足になる恐れがある。しかし、上記螺旋状逃がし溝1eaを転造により形成した場合、ねじ加工によりリブ1baに生じた断面欠損分の鉄筋材料は、同じ長さ方向位置でリブ1baとは別の周方向部分に塑性流動することになり、鉄筋全体の断面積は螺旋状逃がし溝1eaの加工にかかわらず一定となる。したがって、螺旋状逃がし溝1eaの形成により強度低下を生じる問題が回避される。
【0062】
なお、雄ねじ部1cの長さを長くすることによっても、ねじ筒を鉄筋端面から突出しない位置までねじ込んでおくことが可能であるが、その場合、雄ねじ部1cの長さを長くした鉄筋部分は異形鉄筋の断面形状に比べてコンクリートの付着性能が低下する。鉄筋1の継手として使用しない箇所は、異形鉄筋の最も大きな機能であるコンクリートの付着性能を確保することが必要である。これにつき、鉄筋外周面の突条1bに螺旋状逃がし溝1eaを転造した構成であると、継手の接続作業の容易性と、コンクリート付着機能との二つの機能を共に得ることができる。
【0063】
また、上記のねじ付き異形鉄筋の製造方法によると、素材となる異形鉄筋W1の製造時に拡径化部W1d付きの鉄筋として製造する。そのため、鉄筋製造設備とは別に拡径処理設備を設けることが不要で、設備の簡素化が図れ、また生産性に優れる。拡径化部W1dが突条1bを含む鉄筋最外径D1以下であるため、異形鉄筋W1の製造時に拡径化部W1d付きの鉄筋として製造することが可能である。また、雄ねじ部1cは転造するため、ねじ溝を切削する場合と異なり、材料の除去がなくて、ねじ溝とねじ山とで断面積が相殺され、拡径化部が鉄筋最外径以下という限られた範囲で、拡径による補強の効果をできるだけ高めることができる。
【0064】
なお、上記のように異形鉄筋W1の製造過程で拡径化部W1dを形成するのは、鉄筋本体の外径D2が32mm以下の場合であることが好ましい。32mm以下の外径の鉄筋であると、異形鉄筋W1の製造過程で拡径化部W1dを形成する作業が容易に、かつ歪み等を生じることなく行える。住宅の布基礎等ではこのような小径の異形鉄筋1が用いられ、上記実施形態のねじ式鉄筋継手が効果的に使用できる。また、鉄筋継手では、使用場所等に応じて建築基準等でグレードが定められているが、SA級やA級等の高いグレードではなく、下位のB級以下の鉄筋継手では、SA級やA級に比較して高い精度は必要としない。小径(細径)では、ガタ付き等も少なく、A級も十分確保できる。そのため、前記のように鉄筋製造過程で形成した拡径化部W1dに対して、場合によっては真円化に成形する前処理を省略して、直接に転造ねじ加工しても、要求される精度の雄ねじ部1cを得ることができる。住宅の布基礎における鉄筋の鉄筋継手では、B級以下で良く、上記実施形態のねじ式鉄筋継手が効果的に使用できる。
【0065】
次に、
図13〜
図19と共に、上記実施形態に係るねじ式鉄筋継手使用の接続構造を用いた布基礎配筋構造およびその施工方法を説明する。
図18の例と
図19の例は、いずれも住宅の布基礎の伏図であって、基礎の平面形状は互いに同じであるが、配筋の形態が互いに異なっている。
図18,
図19に示した布基礎は、建物の外周部分に沿う外周基礎部分とこの外周基礎部分の中側に設けられた内側基礎部分とがあるが、
図18の例は、外周優先、つまり布基礎のT型や十型の各角部でどのように配筋するかにつき、外周基礎部分の主筋が連続するように配筋を行った例である。また、外周基礎部分の主筋に対して、内周基礎部分の主筋に1サイズ太い鉄筋を使用している。例えば、外周基礎部分の主筋に直径16mmの鉄筋を使用し、内周基礎部分に直径19mmの鉄筋を使用している。
図19の例は、直線優先、つまり外周基礎部分であるか内側基礎部分であるかに係わらずに、布基礎の平行な直線部分(図の上下方向に延びる各直線部分)の主筋が連続するように、配筋を行った例である。主筋には、外周基礎部分と内側基礎部分とに同じ太さの鉄筋を使用している。
【0066】
これら
図18,
図19において、いずれも、(A)と(B)の図は同じ配筋を示すが、(A)は主筋が明確となるように、(B)は継手鉄筋3や端部鉄筋4が明確となるように図示している。なお、
図18(B),
図19(B)において、T型の角部10cに用いられたL形の端部鉄筋4(網点を付して示す)は、図示の都合上で平面形状でL形としているが、実際は側面形状でL形となるように用いられる。まず、
図18の例につき説明し、その後に
図19の例を説明する。
【0067】
図18において、一点鎖線は布基礎10の立ち上がり部の基礎コンクリートの外形を示し、実線は配筋を示す。この布基礎10は、直線部10aと、L形の角部10bと、T形の角部10cと、十形の角部10dとを有しているが、図における「L型」,「T型」の文字は、基礎の平面形状がL型であるかT型であるかに係らず、ねじ式鉄筋継手使用の接続構造の種別を示している。布基礎配筋構造として、各直線部10aには、前記モジュールPの倍数の長さ(例えば2Pまたは3P)の長さの鉄筋組立体11が、配列して設置されている。
【0068】
鉄筋組立体11は、
図13に示すように、主筋となる上端筋12と下端筋13とに、スターラップ等の複数のせん断補強筋14を長さ方向に一定間隔置きに組み立てたものである。上端筋12および下端筋13との組み立ては、バインド線(図示せず)を用いて行っても、また溶接で行っても良い。上端筋12および下端筋13は、
図1等と共に説明した被接続鉄筋1であり、前記雄ねじ部1cが両端に形成されている。鉄筋組立体11は、コンクリート打設用の型枠20内に配置される。
鉄筋組立体11は、例えば
図17(A)〜(C)に示すように、各種の長さものが準備され、使用される。また、鉄筋組立体11は、主筋太さが互いに異なる外周基礎部分用(例えば、主筋直径16mm)と、内側基礎部分用(例えば、主筋直径16mm)のものとが準備される。鉄筋組立体11は、
図17のように長さ方向に延びる補強筋21が、上下方向に中間に全長に渡って設けられていても良い。上端筋12および下端筋13は、
図1等と共に説明した被接続鉄筋1であり、ねじ式鉄筋継手5で接続されるが、長さ方向に延びる補強筋21は、ねじ式鉄筋継手ではなく、重ね継手で隣の鉄筋と接続するものであり、上端筋12および下端筋13よりも両側に突出している。
【0069】
図18において、布基礎各辺の長さ方向に隣合う鉄筋組立体11,11同士は、その主筋である上端筋12および下端筋13が、
図1(D),
図5と共に説明した被接続鉄筋1,1同士の接続用のねじ式鉄筋継手5A(
図18,
図19では、符号「E」で示す)で互いに接続される。前記上端筋12および下端筋13は、
図1〜7では被接続鉄筋1として示されている。
【0070】
布基礎10の各角部10b,10c,10dには、
図1(A)〜(C)のいずれかに記載のねじ式鉄筋継手使用の接続構造L,十,T(
図18,
図19中には、それぞれ「L型」,「十型」,「T型」の符号で示す)が用いられ、その鉄筋同士の接続には、被接続鉄筋1と継手鉄筋3との接続用のねじ式鉄筋継手A,B(
図1(A),(B))、または被接続鉄筋1と端部鉄筋4との接続用のねじ式鉄筋継手D(
図1(C))が用いられる。
【0071】
各L形の角部10bでは、上端筋12および下端筋13と接続する主筋となる継手鉄筋3として、
図1(A)のL型のものが、平面形状でL形となるように用いられる。
図14に示すように、このL形の継手鉄筋3の寸法は、モジュール長さPに対して、例えば縦横ともそれぞれP/2の長さとされる。この縦横寸法がP/2の継手鉄筋3は、1P長さの直線状の継手鉄筋をL字状に屈曲して製造されるが、角部に円弧形状の部分があるため、屈曲前の直線状の継手鉄筋には、詳しくは1P長さよりも若干短い寸法のものを使用する。この継手鉄筋3は、例えば
図17(D)のように、上端筋となる継手鉄筋3と下端筋となる継手鉄筋3とを、複数のせん断補強筋14と共に組んで鉄筋組立体11Lとし、この鉄筋組立体11Lの状態で直線部の鉄筋組立体11に対して配置し、直線部の鉄筋組立体11と接続される。L型の鉄筋組立体11Lについても、
図17(D)のように長さ方向に延びる補強筋21Lを設けておき、直線部の鉄筋組立体11の補強筋21と接続するようにしても良い。
【0072】
図18において、十型の角部10dでは、上端筋12および下端筋13と接続する主筋となる継手鉄筋3として、
図1(B)の湾曲部付き型のものが用いられる。この場合に、その十字形の角部10dを成す二つの直線状基礎部分10da,10dbのうちのいずれか一方の直線状基礎部分10daに、前記直線の鉄筋組立体11を貫通させて用いる。他方の直線状基礎部分10dbでは、角部10dを挟む一対の基礎部分の鉄筋組立体11の上端筋12,12間および下端筋13,13間に、
図1B,
図17(E)のように湾曲部3v付き型の継手鉄筋3を用いて接続する。これらの湾曲部付き型の継手鉄筋3は、十字形の角部10dを成す一方の直線状基礎部分10daにおける上端筋12および下端筋13を避けるように湾曲部3vを位置を位置させる。
この湾曲部付き型の継手鉄筋3についても、例えば
図17(E)のように、上端筋となる継手鉄筋3と下端筋となる継手鉄筋3とを、複数のせん断補強筋14と共に組んで鉄筋組立体11Bとし、この鉄筋組立体11Bの状態で直線部の鉄筋組立体11に対して配置し、直線部の鉄筋組立体11と接続される。湾曲部付き型の鉄筋組立体11Bについても、
図17(E)のように長さ方向に延びる補強筋21Bを設けておき、直線部の鉄筋組立体11の補強筋21と接続するようにしても良い。
【0073】
図18において、T型の角部10cでは、上端筋12および下端筋13と接続する主筋となる鉄筋として
図1(D)のL型の端部鉄筋4が、側面形状でL型となるように用いられる。この場合にT形の角部10cでは、そのT形の角部10cを成すT字の頭部側の基礎部分10caには、前記直線部の鉄筋組立体11が用いられ、脚部側の基礎部分10cbに、
図15のように、前記頭部側の鉄筋組立体11に垂直な鉄筋組立体11における主筋となる上端筋12および下端筋13に、側面形状でL型の姿勢とした端部鉄筋4が接続される。この側面形状L形の端部鉄筋4は、立ち下がり部分4aまたは立ち上がり部分(図示せず)を、頭部側の基礎部分10caに埋め込むものである。この埋め込みは、立ち下がり部分4aまたは立ち上がり部分が、
図15(B)のように斜めになるように行っても良く、また垂直となるように行っても良い。
【0074】
なお、
図18(A)において、布基礎の外周基礎部分の2か所にある入隅部100は、いずれも外周基礎分同士で接続するL形の継手鉄筋3が用いられていて、これら入隅部
100につづく内部基礎部分の主筋(上端筋12および下端筋13)は、外周基礎部分の主筋とねじ式鉄筋継手では接続できない。そのため、これら入隅部100につづく内部基礎部分の主筋は、外周基礎部分の主筋と接続せずに外周基礎部分内に埋め込んで定着させている。
【0075】
図19の例は、布基礎における各直線部分の主筋の接続を確保することを優先した配筋例である。
図18の配筋例では、外周基礎部分で主筋が全連続しているが、上記のように2か所の入隅部100で、布基礎の直線部分の途中に主筋の非接続部分が生じている。これに対して、
図19の例では、外周基礎部分である内周基礎部分であるかを問わず、布基礎における図の上下方向に延びる4本の個々の直線基礎部分において、主筋(上端筋12および下端筋13)の非接続部分が生じないように、主筋の接続を行っている。また、
図19の例では、外周基礎部分と内周基礎部分とで、同じ太さの被接続鉄筋1を用いている。
【0076】
同図において、図の縦方向に延びる4本の直線基礎部分のうち、左端の直線基礎部分では、直線の鉄筋組立体11を2組接続し、その接続体の両端を、L型の継手鉄筋3で外周基礎部分の横方向の鉄筋組立体11と接続している。
左寄りの中間直線基礎部分では、直線の鉄筋組立体11を2組接続してあり、その接続体の、基礎出隅となる端部ではL型の継手鉄筋3で外周基礎部分の横方向の鉄筋組立体11で接続し、前記接続体の、外周基礎部分の直線部分側の端部では、L型の端部鉄筋4を用い、前記T型の接続構造としている。左寄りの中間直線基礎部分と横方向の各基礎部分との成す角部では、いずれもT型の接続構造としている。
【0077】
右端の縦方向の直線基礎部分では、直線の鉄筋組立体11を1組とし、その両端を、L型の継手鉄筋3で外周基礎部分の横方向の鉄筋組立体11と接続している。
右寄りの縦方向の中間直線基礎部分では、直線の鉄筋組立体11を3組接続してあり、その接続体の、基礎出隅となる端部(図の下側)ではL型の継手鉄筋3で外周基礎部分の横方向の鉄筋組立体11と接続し、前記接続体の、外周基礎部分の直線部分側(図の上側)の端部では、L型の端部鉄筋4を用い、前記T型の接続構造としている。右寄りの縦方向の中間直線基礎部分と横方向の各基礎部分との成す角部では、T型の接続構造とし、右寄りの縦方向の中間直線基礎部分と横方向の基礎直線部分とが交わる十型の角部では、前記十字型の接続構造としている。
【0078】
図19の例において、
図13や
図17(A)〜(E)の各鉄筋組立体11,11L,111T,11Bを用いることについては、
図18の例と同様である。
【0079】
上記
図18,
図19の布基礎10の配筋構造であると、上端筋12および下端筋13とせん断補強筋14を組み立てた鉄筋組立体11を用いるため、現場で上端筋12および下端筋13とせん断補強筋14を個別に配筋する場合に比べて、施工性が向上する。また、鉄筋組立体11を用いており、上端筋12および下端筋13が位置固定となるが、この実施形態のねじ式鉄筋継手A,Bを用いるため、主筋の僅かな移動が可能であれば、支障なく、主筋を対向する鉄筋と接続することができる。
【0080】
布基礎10のL型の角部10bでは、一般的に平面形状L形の短い鉄筋が用いられる。そのため、この平面形状L形の鉄筋に前記大径の継手鉄筋3を用いることで、鉄筋使用量の無駄を生じることなく、また必要強度の雄ねじ部を生産性良く加工することができる。
布基礎10の十字形の角部10dでは、十字形の角部を成す他方の直線状基礎部分における主筋を避けるように湾曲させた短い湾曲部付きの鉄筋が用いられる。そのため、この湾曲させた鉄筋に前記の太い継手鉄筋3を用いることで、鉄筋使用量の無駄を生じることなく、また必要強度の雄ねじ部を生産性良く加工することができる。
布基礎10のT形の角部10cでは、一般的に、立ち下がりまたは立ち上がり部分を有する側面形状L形で短い鉄筋が用いられる。そのため、この側面形状L形の鉄筋に、被接続鉄筋よりも太い前記端部鉄筋4を用いることで、鉄筋使用量の無駄を生じることなく、必要強度の雄ねじ部を生産性良く加工することができる。