(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のスピニング加工機500で用いられる油圧ポンプ523及びモータ524は、装置全体の最大負荷を確保する必要があり、各油圧シリンダ521a,521b,521cで必要な最大負荷の合計に相当する能力以上を備える必要があった。しかも、スピンニング加工機500の稼動中は、常時、油圧ポンプ523及びモータ524をフル運転して各油圧シリンダ521a,521b,521cで必要な最大負荷の合計以上の負荷を発生させていた。そのため、油圧ポンプ523及びモータ524としては大型のものが必要であり、油圧ポンプ523及びモータ524の騒音が大きく、しかもモータ524やバルブV1,V2,V3による電気消費量が大きいという問題があった。また、油圧ポンプ523及びモータ524は、常時フル運転しているため、心押し金型513や成形ローラ15が停止中のときは無駄にエネルギーが消費されるという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑み、油圧回路における騒音の低減及び節電を可能とする
成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る
成形装置は、
車両用ホイールにおける鋳造又は鍛造されたワークを
成形するための成形装置であって、
上記ワークが取り付けられ且つモータによって回転する主軸が連結された成形金型と、成形金型に取り付けられたワークを押さえて固定する心押し金型と、回転するワークの外周に押し当て
成形を行う成形ローラとを備え、
上記心押し金型のワーク押し付け方向への送り機構、上記成形ローラのワーク径方向への送り機構、及び上記成形ローラのワーク回転軸方向への送り機構は、各々独立した油圧ユニットによって構成され、
各油圧ユニットは、往復駆動するピストンロッドを有する油圧シリンダと、油圧シリンダに接続され且つ油圧シリンダのピストンロッドを往復駆動するための作動油を給排する2つの給排ポートを有する双方向回転油圧ポンプと、双方向回転油圧ポンプを正方向と逆方向のいずれかに回転駆動するサーボモータとを備え、各油圧ユニットごとにサーボモータの回転数と回転方向を制御することにより油圧シリンダのピストンロッドの位置を制御する構成としたものである。
これにより、各油圧ユニットごとに、サーボモータの回転を制御して必要な時だけ必要な速度で双方向回転油圧ポンプを回転駆動するので、エネルギー効率が高く且つ低騒音とすることができる。
【0007】
本発明の第1の局面では、
上記油圧ユニットは、上記双方向回転油圧ポンプとして小油量と大油量の2つの双方向回転油圧ポンプがサーボモータと同軸に結合され、大きな力が要求されない移動動作のときには小油量双方向回転油圧ポンプと共に大油量双方向回転油圧ポンプから油圧シリンダに作動油を送出し、成形時等の大きな力が要求されるときには小油量双方向回転油圧ポンプのみから油圧シリンダに作動油を送出する構成とす
る。
これにより、成形開始と成形終了後において成形ローラや心押し金型を速やかに移動させることができ、成形に要する全体時間を大幅に削減することができ、生産性を向上することができる。また、油圧ポンプの必要能力として小油量双方向回転油圧ポンプは成形時に必要な最小限の能力のものとし、大油量双方向回転油圧ポンプは高速移動動作を補う低圧能力のものとし、成形時と移動時とで使い分けることにより、サーボモータの負荷が軽減されて大幅な省電力化を図ることができる。
【0008】
本発明の第2の局面では、
上記成形金型にはワーク取り外し用エジェクター棒を備え、
上記エジェクター棒の可動機構は、上記各送り機構とは独立した油圧ユニットとして、往復駆動するピストンロッドを有する油圧シリンダと、油圧シリンダに接続され且つ油圧シリンダのピストンロッドを往復駆動するための作動油を給排する2つの給排ポートを有する双方向回転油圧ポンプと、双方向回転油圧ポンプを正方向と逆方向のいずれかに回転駆動するサーボモータとを備え、サーボモータの回転数と回転方向を制御することにより油圧シリンダのピストンロッドの位置を制御するように構成す
る。
これにより、省電力且つ低騒音でありつつ、成形金型から成形後のワークの取り外しを円滑に行うことができる。
【0009】
本発明の第3の局面では、
上記油圧ユニットは、油空圧シリンダを備え、
上記油圧シリンダは、片ロッド復動形であってロッド側室の容積がヘッド側室の容積よりも小さくなっており、
上記油空圧シリンダは、上記油圧シリンダのロッド側室から双方向回転油圧ポンプにつながる引き側経路に第1パイロットチェック弁及びソレノイドバルブを介して接続されるとともに、油圧シリンダのヘッド側室から双方向回転油圧ポンプにつながる押し側経路に第2パイロットチェック弁を介して接続されており、
双方向回転油圧ポンプが油圧シリンダの作動油をロッド側室から吸引してヘッド側室に供給する場合は、
大きな力が要求されない移動動作のときは、ソレノイドバルブが閉弁位置とされ、ヘッド側室での不足分の作動油は油空圧シリンダから第2パイロットチェック弁を通して押し側経路に補充され、油空圧シリンダのエアー圧がヘッド側室に作用してピストンヘッドが押し込まれ、双方向回転油圧ポンプによるロッド側室の作動油の吸引によりピストンロッドの出力端の移動速度が制御され、
成形時等の大きな力が要求されるときは、ソレノイドバルブが開弁位置とされ、ヘッド側室での不足分の作動油は油空圧シリンダから第1パイロットチェック弁を通して引き側経路に補充され、双方向回転油圧ポンプから供給される作動油の油圧がヘッド側室に作用してピストンヘッドが押し込まれ、双方向回転油圧ポンプによる油圧によりピストンロッドの出力端での加圧力が制御される構成とす
る。
これにより、油圧シリンダにおいて必要に応じて大きな力を発現させたり高速移動を行わせることができる。例えば、成形時には成形ローラの必要な成形力を十分に確保することができ、また、原点から成形ポイント並びに成形終了後の原点復帰に要する時間を短縮することができる。
【0010】
上記油圧ユニットは、双方向回転油圧ポンプとサーボモータとが結合され且つ双方向回転油圧ポンプの各々の給排ポートが油圧シリンダのロッド側ポートとヘッド側ポートとの各々に接続された閉じた回路を構成し、油圧シリンダ、双方向回転油圧ポンプ及びサーボモータが一体化されていることが望ましい。
これにより、配管やバルブの複雑な配設が不要となり、各油圧ユニットをコンパクトに構成することができ、配管やバルブのための多くの空間も不要となって小型で軽量な成形装置を得ることができる。
【0011】
上記成形ローラは、ワークの周囲に等間隔に4台設置され、各成形ローラには、各々独立して上記油圧ユニットにより構成された送り機構を備え、
4台の成形ローラのうち2台は、成形金型側に押し当ててホイールリヤリム部を成形するための粗絞りローラと仕上げローラとし、残りの2台は、心押し金型側に押し当ててホイールフロントリム部を成形するための粗絞りローラと仕上げローラとし、
上記リヤリム部用の粗絞りローラと上記フロントリム部用の粗絞りローラとを同時に可動させてワークに対してリヤリム部とフロントリム部を同時に粗絞り加工を開始し、次に、上記リヤリム部用の仕上げローラと上記フロントリム部用の仕上げローラとを同時に可動させてワークに対してリヤリム部とフロントリム部を同時に仕上げ加工を開始するように、各送り機構を制御する構成とすることができる。
これにより、車両用ホイールのリヤリム部とフロントリム部の成形を同時に行うことで、省電力且つ低騒音でありつつ、成形の加工時間を大幅に短縮することができ、生産性を向上することができる。
また、粗絞りローラによるワークの粗絞り加工後に仕上げローラを可動してワークの仕上げ加工を行うことでもよいが、粗絞りローラを可動させてこれより遅れて仕上げローラを可動させて粗絞り加工と仕上げ加工とを並行して行うことで、更に成形の加工時間を大幅に短縮することができ、更なる生産性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、
成形装置において油圧回路の騒音の低減及び節電を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、実施形態のスピニング加工機について図面を参照しながら説明する。
スピニング加工機1は、車両用ホイールの円盤状の鋳造素材又は鍛造素材からなるワークWをスピニング加工する装置である。
図1に示すように、スピニング加工機1は、モータ11によって回転される主軸10と、主軸10と連結され且つワークWが取り付けられる成形金型12と、成形金型12に取り付けられたワークWを上から押さえて固定する心押し金型13と、回転するワークWの外周に押し当てスピニング加工を行う成形ローラ15とを備える。
【0015】
心押し金型13は、取付台14に対して回動可能に取り付けられており、取付台14には取付台14とともに心押し金型13を上下方向(ワーク押さえ方向)に移動させる油圧シリンダ21aを備えた送り機構20aが設けられている。
成形ローラ15は、クロステーブル3に取り付けられている。クロステーブル3は、固定台31と、固定台31上にワークWの回転軸方向(Z軸方向又は上下方向)に移動可能に取り付けられた昇降台32と、昇降台32上にワークWの径方向(X軸方向又は横方向)に移動可能に取り付けられた横行台33とを有する。横行台33のワーク対向側に成形ローラ15が取り付けられている。そして、クロステーブル3において、昇降台32には昇降台32とともに成形ローラ15をワークWの回転軸方向に移動させる油圧シリンダ21bを備えた送り機構20bが設けられており、また、横行台33には横行台33とともに成形ローラ15をワークWの径方向に移動させる油圧シリンダ21cを備えた送り機構20cが設けられている。
【0016】
そして、スピニング加工は、成形金型12にワークWをセットして心押し金型13でワークWを上から押さえて固定し、主軸10を回転させてワークWを回転させた状態で、成形ローラ15をワーク径方向へ移動させてワークWの外周に押し当てると共に成形ローラ15をワーク回転軸方向へ移動させることにより、ワークWにおいて車両用ホイールのリムの成形が行われる。また、成形ローラ15は、
図2に示すように、ワークWの周囲に等間隔に4台設置し、これら4台の成形ローラ15を同時に可動させることより、スピニングの加工時間を大幅に短縮することができる。なお、成形ローラ15は、4台設置することに限定されず、1台又は他の複数台設置するようにしてもよい。
【0017】
ところで、実施形態のスピニング加工機1において、心押し金型13側の送り機構20a、成形ローラ15側の2軸の各送り機構20b,20cは、各々独立した油圧ユニット2によって構成されている。ここで各油圧ユニット2は、同じ構成要素からなるので、代表して、成形ローラ15をワーク径方向へ移動させる送り機構20cについて、その油圧ユニット2の油圧回路を以下に説明する。
【0018】
図3に示すように、油圧ユニット2は、横行台33に取り付けられて往復駆動するピストンロッド22cを有する油圧シリンダ21cと、油圧シリンダ21cに接続され且つ油圧シリンダ21cのピストンロッド22cを往復駆動するための作動油を給排する2つの給排ポートを有する双方向回転油圧ポンプ23cと、双方向回転油圧ポンプ23cを正方向と逆方向のいずれかに回転駆動するサーボモータ24cと、制御装置4の制御信号に基づいてサーボモータ24cに回転数及び回転方向の指令信号を出力するサーボアンプ25cとを備えた油圧回路によって構成されている。
【0019】
油圧回路には油量調整弁としてシャトル弁26が設けられている。双方向回転油圧ポンプ23cは吸入する作動油量と吐出する作動油量とは等しいが、油圧シリンダ21cは片ロッド複動形であるためピストンロッド22cが存在しているロッド側室の容積は、ピストンロッド22cが存在しないヘッド側室の容積よりも小さくなっている。従って、油量調整弁としてのシャトル弁26を介して油圧シリンダ21cと双方向回転油圧ポンプ23cとの間でやり取りする作動油量の差分を油タンク27から給排して調整することができる。また、作動油の内部漏れに対しても油タンク27から補うことができる。
【0020】
そして、油圧ユニット2は、双方向回転油圧ポンプ23cとサーボアンプ25c付きのサーボモータ24cとが結合され且つ双方向回転油圧ポンプ23cの各々の給排ポートが油圧シリンダ21cのロッド側ポートとヘッド側ポートとの各々に接続された閉じた油圧回路を構成して、油圧シリンダ21c、双方向回転油圧ポンプ23c及びサーボモータ24cが一体化されている。従って、配管やバルブの複雑な配設が不要となり、各油圧ユニット2をコンパクトに構成することができ、しかも配管やバルブのための多くの空間も不要となって小型で軽量なスピニング加工機1を得ることができる。
【0021】
また、油圧ユニット2には、油圧シリンダ21cに隣接してリニアスケール5cが一体に設けられており、リニアスケール5cの検出ロッド51cの先端部が油圧シリンダ21cのピストンロッド22cの取付対象物である横行台33に接続されている。従って、リニアスケール5cは、ピストンロッド21cの位置ひいては成形ローラ15のワーク径方向での位置を検出して制御装置4に電気的に位置情報を出力する。なお、成形ローラ15のワーク回転軸方向の送り機構20bでは、その油圧シリンダ21bのピストンロッド22b及びリニアスケール5bの検出ロッド51bは昇降台32に取り付けられ、心押し金型13のワーク押さえ方向の送り機構20aでは、その油圧シリンダ21aのピストンロッド22a及びリニアスケール5aの検出ロッド51aは取付台14に取り付けられている(
図1参照)。
【0022】
各油圧ユニット2の各々のサーボアンプ25は、制御装置4に電気的に接続されている(
図1参照)。従って、制御装置4は、各油圧ユニット2の各々において、あらかじめ設定された位置情報を基にリニアスケール5から出力されるフィードバック信号を加味した結果の制御信号をサーボアンプ25に出力して、各油圧ユニット2ごとにサーボモータ24の回転数と回転方向を制御して油圧シリンダ21のピストンロッド22の位置を制御する。そして、制御装置4は、各油圧ユニット2の各々において、あらかじめ設定された設定位置に達するとサーボモータ24を回転停止させ油圧ポンプ23を停止させる制御を行い、そのときの油圧回路内の圧力状態を保持させて油圧シリンダ21のピストンロッド22の位置を固定させるようにする。
【0023】
例えば、成形ローラ15のワーク径方向への送り機構20cでは、制御装置4は、あらかじめ設定されたプログラムに従って位置指令信号をサーボアンプ25cに入力すると、その位置指令信号に基づいてサーボアンプ25cによりサーボモータ24cの回転方向、回転速度、回転トルクが制御される。双方向回転油圧ポンプ23cの動作もサーボモータ24cに倣ったものとなる。すなわち、サーボモータ24cの回転方向により双方向回転油圧ポンプ23cの作動油の吐出方向ひいては成形ローラ15の移動方向が決まり、サーボモータ24cの回転速度に比例した双方向回転油圧ポンプ23cの吐出量ひいては成形ローラ15の移動速度となり、サーボモータ24cの回転トルクに比例した双方向回転油圧ポンプ23cの油圧ひいては成形ローラ15の加圧力を得ることができる。そして、リニアスケール5cで油圧シリンダ21cのピストンロッド22cの位置ひいては成形ローラ15のワーク径方向の位置を検出してその位置をフィードバック信号として制御装置4へ入力してフィードバック制御するので、制御装置4からの位置指令信号通りに正確に成形ローラ15のワーク径方向での進出移動及び後退移動が制御される。また、ワーク回転軸方向の所定位置において成形ローラ15がワーク径方向へ進出移動してワークWの外周に押し当てた状態でワーク径方向の設置位置に達すると、制御装置4は、サーボモータ24cを回転停止させ油圧ポンプ23cを停止させる制御を行い、そのときの油圧回路内の圧力状態を保持させて成形ローラ15のワーク径方向位置を保持させる。
【0024】
以上のスピニング加工機1によれば、各油圧ユニット2ごとに、サーボモータ24の回転を制御して、必要な時だけ必要な速度で双方向回転油圧ポンプ23を回転駆動するので、エネルギー効率が高く且つ低騒音とすることができる。しかも、双方向回転油圧ポンプ23の作動油の温度を無駄に上昇させることがなく作動油の温度上昇の影響も受けに難いので、成形ローラ15を高精度に移動させて成形金型12にセットしたワークWを高精度にスピニング加工することができる。また、成形ローラ15を複数台設けて同時に可動させることで省電力且つ低騒音を実現しつつスピニング加工時間を大幅に短縮することができ、生産性を向上することができる。
【0025】
例えば、成形ローラ15は、ワークWの周囲に等間隔に4台設置され、各成形ローラ15には、各々独立して上述の油圧ユニット2により構成された送り機構20b,20cを備える構成とすることができる。そして、4台の成形ローラ15のうち2台は、成形金型12側に押し当てて車両用ホイールのリヤリム部をスピニング加工するための粗絞りローラ15と仕上げローラ15とし、残りの2台は、心押し金型13側に押し当てて車両用ホイールのフロントリム部をスピニング加工するための粗絞りローラ15と仕上げローラ15とする。この場合、ワークWを跨いで対向した一方側の2台の成形ローラ15,15を粗絞りローラとし、他方側の対向した2台の成形ローラ15,15を仕上げローラとしてもよいし、また、隣接した一方側の2台の成形ローラ15,15を粗絞りローラとし、他方側に隣接した2台の成形ローラ15,15を仕上げローラとしてもよい。
【0026】
そして、ワークWのスピニング加工は、まず、リヤリム部用の粗絞りローラ15とフロントリム部用の粗絞りローラ15とを同時に可動させてワークWに対してリヤリム部とフロントリム部を同時に粗絞り加工し、次に、リヤリム部用の仕上げローラ15とフロントリム部用の仕上げローラ15とを同時に可動させて粗絞り加工後のワークWに対してリヤリム部とフロントリム部を同時に仕上げ加工するように4台の成形ローラ15の各々の送り機構20b,20cを独立して制御する。このようにして、成形金型12に取り付けたワークWに対して、車両用ホイールのリヤリム部とフロントリム部のスピニング加工を同時に行うことで、スピニング加工時間を大幅に短縮することができ、生産性を向上することができる。しかも、このように成形ローラ15を複数台設置した場合でも、各成形ローラ15の送り機構20b,20cを構成する油圧ユニット2が各々独立して構成され、各々の油圧ユニット2を必要な時だけ運転させるから、省電力且つ低騒音のスピニング加工機が得られる。
【0027】
上述のように2台の粗絞りローラ15によるワークWの粗絞り加工後に他の2台の仕上げローラ15を可動してワークWの仕上げ加工を行うことでもよいが、粗絞りローラ15を可動させてこれよりわずかに遅れて仕上げローラ15を可動させるようにし、ワークWに対して粗絞り加工を先行させつつこれに続いて仕上げ加工を行い、粗絞り加工と仕上げ加工とを並行して行うようにすることができる。ワークWへの粗絞り加工を開始すると引き続いて仕上げ加工を開始して粗絞りローラによる粗絞り加工と仕上げローラによる仕上げ加工とをほぼ同時に行うようにする。これにより、更にスピニング加工時間を大幅に短縮することができ、更なる生産性の向上を図ることができる。
【0028】
また、
図4に示すように、成形金型12には可動台80に設けた複数のワーク取り外し用エジェクター棒8を備えており、このエジェクター棒8の可動機構20dは、心押し金型13及び成形ローラ15の各送り機構20a,20b,20cとは独立した油圧ユニットによって構成されている。エジェクター棒8の可動機構20dを構成する油圧ユニットは、
図3に示した油圧ユニット2と同様に、往復駆動するピストンロッド22dを有する油圧シリンダ21dと、油圧シリンダ21dに接続され且つ油圧シリンダ21dのピストンロッド22dを往復駆動するための作動油を給排する2つの給排ポートを有する双方向回転油圧ポンプ23dと、双方向回転油圧ポンプ23dを正方向と逆方向のいずれかに回転駆動するサーボモータ24dと、制御装置4の制御信号に基づいてサーボモータ24dに回転数及び回転方向の指令信号を出力するサーボアンプ25dとを備える。そして、スピニング加工が完了し心押し金型13がワークWから離間した所定のワーク取り出しタイミングの際、制御装置4が指令信号をエジェクター棒用のサーボアンプ25dに出力してサーボモータ24dの回転数と回転方向を制御することにより、これに倣って双方向回転油圧ポンプ23dの作動油の吐出量及び吐出方向が制御されて油圧シリンダ21dのピストンロッド22dの位置が制御され、ひいてはエジェクター棒の突き出し及び引っ込みの動作が行われる。これにより、成形金型12からスピンニング加工後のワークWを円滑に取り出すことができ、しかも、エジェクター棒8の可動機構20dの油圧ユニット2は必要な時だけ運転されるから、省電力且つ低騒音のスピニング加工機が得られる。
【0029】
(他の実施形態(
図5))
図5に示す他の実施形態は、油圧ユニット2において大油量と小油量の2台の双方向回転油圧ポンプ231,232がサーボモータ24cと同軸に連結されたものである。大油量双方向回転油圧ポンプ231は、制御弁6を介して引き側経路29に接続されており、制御弁6は、ノーマル位置では大油量双方向回転油圧ポンプ231を引き側経路29に接続する位置に設定されている。なお、この
図5に示す油圧ユニット2は、例えば、成形ローラ15のワーク径方向への送り機構20c及び心押し金型13のワーク押さえ方向への送り機構20aの各々の油圧ユニット2に適用される。
【0030】
例えば、成形ローラ15のワーク径方向への送り機構20cにおいて、成形ローラ15をワークWの外周へ向けて移動させる際、サーボモータ24cが正回転すると、制御弁6がノーマル位置にあって2台の双方向回転油圧ポンプ23は協同して引き側経路29から作動油を吸引して押し側経路28へ送出する。従って、油圧シリンダ21cのヘッド側ポートへ大油量の作動油が供給され、油圧シリンダ21cのピストンロッド22cの進出動作が高速移動となり、成形ローラ15がワークW外周へ向けて高速移動される。
【0031】
そして、成形ローラ15がワークWに接触すると、ピストンロッド22cの進出が減速して押し側経路28の作動油の圧力が急上昇する。このとき、圧力計7の検知圧力値が設定圧力値に達すると、制御装置4の指令信号により制御弁6の動作位置を動かし、大油量双方向回転油圧ポンプ231を引き側経路29から切り離してアンロード運転とし、小油量双方向回転油圧ポンプ232が単独で必要な高圧力の作動油を押し側経路28へ送出する。従って、小油量双方向回転油圧ポンプ232の能力は、成形時に必要な最小限の能力を備えたものでよい。
【0032】
次に、成形ローラ15によるスピニング加工が完了して、サーボモータ24cが逆回転すると、押し側経路28の作動油の圧力が急降下し、圧力計7の検知圧力値が設定圧力値を下回ると、制御装置4の指令信号により制御弁6の動作位置をノーマル位置に戻す。すると、大油量双方向回転油圧ポンプ231が引き側経路29に接続されて2台の双方向回転油圧ポンプ231,232が協同して押し側経路28から作動油を吸引して引き側経路29へ送出する。従って、油圧シリンダ21cのロッド側ポートへ大油量の作動油が供給され、油圧シリンダ21cのピストンロッド22cの後退動作が高速移動となり、成形ローラ15がワークWから外方へ向けて高速移動される。
【0033】
このように、
図5の他の実施形態では、成形開始と成形終了後において成形ローラ15は速やかに移動するので、スピニング加工に要する全体時間を大幅に削減することができ、生産性を向上することができる。また、2台の双方向回転油圧ポンプ231,232の必要能力として、小油量双方向回転油圧ポンプ232は成形時に必要な最小限の能力のものとし、大油量双方向回転油圧ポンプ231は高速移動動作を補う低圧能力のものとし、成形時と移動時とで使い分けることにより、サーボモータ24cの負荷が軽減されて大幅な省電力化を図ることができる。
【0034】
(他の実施形態(
図6))
図6に示す他の実施形態は、油圧ユニット2として、サーボモータ24と双方向回転油圧ポンプ23とを連結し、双方向回転油圧ポンプ23に油圧シリンダ21を接続した油圧回路において油空圧シリンダ9を設けたものである。なお、油圧ユニット2は、ピストンロッド22の位置検知を行うリニアスケール5、サーボモータ24に指令信号を出力するサーボアンプ25、サーボアンプ25に制御信号を出力する制御装置4等も備える。油圧シリンダ21は、片ロッド復動形であってロッド側室21Bの容積がヘッド側室21Aの容積よりも小さくなっている。双方向回転油圧ポンプ23は、2つの給排ポートの各々の作動油吐出量が等しく、ピストンロッドの出力端に装備する装置(例えば、クロステーブル、成形ローラ等)も含めた物体を移動させる程度の能力(例えば、20MPa)を有し、当該物体を希望する高速移動を行うことができる作動油吐出量に設定されている。
【0035】
油空圧シリンダ9は、空気室91と油室92とを有し、空気室91は一定のエアー圧(例えば、5〜8kg/cm
2)に保たれて油室92を加圧する構成とし、油室92側が油圧回路に接続される。具体的に、油空圧シリンダ9は、油圧シリンダ21のロッド側室21Bから双方向回転油圧ポンプ23につながる引き側経路29に第1パイロットチェック弁VL1及び常開型ソレノイドバルブS1を介して接続されるとともに、油圧シリンダ21のヘッド側室21Aから双方向回転油圧ポンプ23につながる押し側経路28に第2パイロットチェック弁VL2を介して接続されている。この
図6に示す油圧ユニット2は、例えば、成形ローラ15のワーク径方向への送り機構20cや心押し金型13のワーク押さえ方向への送り機構20aの各々の油圧ユニット2に適用することができる。
【0036】
次に、
図6の油圧ユニット2を成形ローラ15のワーク径方向への送り機構20cに適用した場合の動作を説明する。
スピニング成形開始前、大きな力が要求されず成形ローラ15を原点から成形ポイントまで高速移動させる期間では、ソレノイドバルブS1を通電して閉弁位置とし、油空圧シリンダ9と引き側経路29とをクローズにする。そして、成形ローラ15を原点位置からワークWの成形ポイントまで移動させるため、サーボモータ24を正回転駆動し双方向回転油圧ポンプ23を正方向へ回転させて、油圧シリンダ21の作動油をロッド側室21Bから吸引してヘッド側室21Aに供給する。この場合、油圧シリンダ21は、ピストンロッド22に装備した成形ローラ15等の物体の重量分の負荷しか受けないので、押し側経路28の作動油の油圧は高くない。また、このときの押し側経路28の作動油の油圧よりも油空圧シリンダ9のエアー圧の方が高い。従って、ロッド側室21Bの容積がヘッド側室21Aの容積よりも小さいためにヘッド側室21Aでの不足分の作動油は、油空圧シリンダ9から順方向の第2パイロットチェック弁VL2を通して押し側経路28に補充されてヘッド側室21Aに供給される。すると、油空圧シリンダ9のエアー圧がヘッド側室21Aに作用してピストンヘッド22aが押し込まれる。この状態で、双方向回転油圧ポンプ23は、ロッド側室21Bの作動油を吸引しているので、ロッド側室21Bの作動油の吸引量によって油空圧シリンダ9のエアー圧により押し込まれているピストンヘッド22aの移動速度ひいてはピストンロッド22の出力端の成形ローラ15の移動速度が制御される。その結果、双方向回転油圧ポンプ23によってロッド側室21Bの作動油を素早く吸引することで、油空圧シリンダ9のエアー圧により成形ローラ15を高速移動させることができ、原点から成形ポイントまでの移動に要する時間を短縮することができる。
【0037】
一方、成形ローラ15が成形ポイントに達して成形ローラ15においてワークWのスピニング成形時の大きな力が要求される成形動作の期間では、ソレノイドバルブS1を通電停止して開弁位置とし、油空圧シリンダ9と引き側経路29とをオープンにする。そして、成形ローラ15をワークWに押し付けるため、サーボモータ24を正回転駆動し双方向回転油圧ポンプ23を正方向へ回転させて、油圧シリンダ21の作動油をロッド側室21Bから吸引してヘッド側室21Aに供給する。この場合、油圧シリンダ21は、成形ローラ15のワークWへの押し付けよる負荷を受けるので、押し側経路28の作動油の油圧が高くなる一方、引き側経路29の作動油の油圧が低くなる。このとき、第2パイロットチェック弁VL2は、押し側経路28の作動油の高い油圧がかかるため、油空圧シリンダ9から押し側経路28への作動油の供給を阻止する。また、このときの引き側経路29の作動油の油圧よりも油空圧シリンダ9のエアー圧の方が高い。従って、ロッド側室21Bの容積がヘッド側室21Aの容積よりも小さいためにヘッド側室21Aでの不足分の作動油は、油空圧シリンダ9からソレノイドバルブS1及び第1パイロットチェック弁VL1を通して引き側経路29に補充される。すると、双方向回転油圧ポンプ23は、油空圧シリンダ9から補充される作動油とロッド側室21Bから吸引する作動油とを合流してヘッド側室21Aに供給する。よって、双方向回転油圧ポンプ23による油圧がヘッド側室21Aに作用してピストンヘッド22aが押し込まれ、双方向回転油圧ポンプ23の油圧によりピストンロッド22に連結した成形ローラ15をワークWに対して大きな力で加圧することができる。
なお、成形ローラ15をワークWから後退させるため、サーボモータ24を逆回転駆動し双方向回転油圧ポンプ23を逆方向へ回転させると、双方向回転油圧ポンプ23は、油圧シリンダ21におけるヘッド側室21Aの作動油をロッド側室21Bに供給し、ヘッド側室21Aの余分な作動油は、引き側経路29からのパイロット圧で逆流可能となった第2パイロットチェック弁VL2を逆流して油空圧シリンダ9へ送出される。
【0038】
以上の構成の油圧ユニット2によれば、移動時には油空圧シリンダ9のエアー圧によって成形ローラ15を高速移動させることができ、成形時には双方向回転油圧ポンプ23の油圧によって成形ローラ15に必要な成形力を確保させることができる。
【0039】
ところで、
図7に示すように、一般に油圧ポンプの特性は、一定電流によるモータ駆動の下、吐出量(Q)(ポンプ回転数)が多くなるに従って油圧(P)は低くなる関係を有する。また、
図7より明らかなとおり、油圧ポンプは、低油圧大吐出量(X2)と高油圧小吐出量(X1)とで使用電力が等しいポイント(X1,X2)を有している。従って、モータ駆動する油圧ポンプにより油圧シリンダを作動させる回路では、駆動モータの一定使用電力により、油圧ポンプのポンプ回転数を高くして作動油の吐出量を多くすれば、油圧シリンダを高速駆動できるが、油圧力は低くなる。一方、油圧回路によるスピニング加工機では、スピニング加工時は所定の高い成形力、すなわち油圧シリンダによる高い油圧力が求められる。
【0040】
そこで、
図6の他の実施形態による油圧回路において、双方向回転油圧ポンプ23は、その最大吐出量として、油圧シリンダ21におけるロッド側室21Bの受圧面積に対して油圧シリンダ21に連結した成形ローラ15が所定の高速移動速度となるのに必要な能力(設定吐出量)に設定し、一方、油空圧シリンダ9は、空気室91のエアー圧として、油圧シリンダ21におけるヘッド側室21Aの受圧面積に対して油圧シリンダ21に連結した成形ローラ15がワークWのスピニング加工に必要な成形力となるのに必要な能力(設定エアー圧)に設定する。
【0041】
従って、双方向回転油圧ポンプ23は、上記の設定吐出量を実現可能な小型のものが利用可能となり、また、サーボモータ24は、双方向回転油圧ポンプ23を設定吐出量に回転させることが可能な消費電力の少ない小型のものが利用可能となり、また、油空圧シリンダ9は、上記の設定エアー圧を実現可能な小型のものが利用可能となる。よって、以上の構成を備えた
図6の油圧ユニット2によれば、必要最小限のポンプ能力を具備する小型の双方向回転油圧ポンプ23により、そのポンプ能力を最大に利用して、成形ローラ15における高い成形力と高速移動を省エネルギーで実現するスピニング加工機が提供されるという効果を発揮することができる。
【0042】
なお、本発明に係るスピニング加工機は、車両用ホイールの鋳造素材又は鍛造素材のワークWのスピニング加工として粗絞り加工や仕上げ加工を行うことができ
、また、ワークWを塑性加工するフォーミングにも使用することができる。また、このスピニング加工機は、縦型のみならず横型にも適用することができる。