(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記撮像部は、X線源と、そのX線源から照射されるX線を検出するX線検出素子を2次元アレイ状に配列して構成されたX線平面検出器と、複数の前記X線検出素子を仮想的に結合して、前記医用画像を構成する1画素分の透過X線信号を検出するビニング機能部と、を含み、
前記キャリブレーションデータ生成部は、前記較正画像を撮像したときの前記1画素分の透過X線信号を検出するために用いられたX線検出素子の数と、前記計測対象画像を撮像したときの前記1画素分の透過X線信号を検出するために用いられたX線検出素子の数と、の差に応じて、前記対物キャリブレーションデータを補正し、
前記適用可否選択部は、前記補正後の前記キャリブレーションデータを前記操作画面に表示し、これを前記物理量の計測に適用するか否かの選択を受け付け、
前記物理量計測部は、前記適用可否選択部において、前記適用することが選択されると、前記補正後の前記対物キャリブレーションデータを用いて前記物理量の計測を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像診断装置。
前記キャリブレーションデータ生成部は、前記画面に表示された前記計測対象画像に、前記対物キャリブレーションデータを生成したときに、前記較正画像上で指定された前記実寸法を相当する範囲を示す計測線、前記較正体の実寸法を示す数値、及び前記対物キャリブレーションデータを適用して計測した前記計測対象画像の画像サイズを示す数値、のうちの少なくとも一つを表示する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載の画像診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明に係る実施形態について説明する。各図において、同一の構成には同一符号を付して、重複説明を省略する。
図1に基づいて、本実施形態に係る画像診断装置の概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像診断装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0010】
図1に示す画像診断装置1は、被写体を撮像して画像信号を生成する撮像部10と、画像信号を基に医用画像を生成し、その医用画像上で計測処理を実行する医用画像処理装置20と、医用画像を表示する表示部30と、医用画像処理装置20に対する入力操作を行うための入力部40と、を備える。以下の説明では、画像診断装置として、X線画像診断装置を例に挙げて説明するので、X線画像診断装置1と記載するが、画像診断装置は、X線画像診断装置に限らず、X線CT装置、磁気共鳴イメージング装置、PET装置など、被検体を撮像して医用画像を生成するものであれば、その種類は問わない。
【0011】
撮像部10は、X線管を含むX線源11と、X線源11から照射されたX線を検出し、その強度に応じた画像信号を出力するX線検出素子を2次元アレイ状に配列して構成されたX線平面検出器12と、X線源11とX線平面検出器12との間の距離(SID:Source Image Distance=線源入射面間距離)を計測するSID計測部13と、複数のX線検出素子を仮想的にひとまとめにして、医用画像に含まれる1画素(1ピクセルともいう)に対応する受光面積を調整するビニング機能部14と、を備える。SID計測部13及びビニング機能部14は、第三実施形態で用いられるものであり、第一及び第二実施形態では必須ではない。なお、上記では、X線検出器としてX線平面検出器12を例に挙げて説明したが、後述する第一実施形態から第四実施形態のうち、SIDを判断指標として用いる態様においては、X線検出器は、X線平面検出器に限定されない。
【0012】
医用画像処理装置20は、画像信号に基づいて医用画像を生成する画像生成部21と、対物キャリブレーション処理(詳細は後述する)を経て、キャリブレーションデータを生成するキャリブレーションデータ生成部22と、上記キャリブレーションデータを記憶するキャリブレーションデータ記憶部23と、医用画像上で計測対象範囲を設定する計測対象範囲設定部24と、計測対象範囲を特徴づける物理量を計測する物理量計測部25と、物理量計測部25による計測処理に、キャリブレーションデータ記憶部23に記憶された対物キャリブレーションデータを適用するか否かを選択する操作を受け付ける適用可否選択部26と、物理量計測部25による計測結果を出力する結果出力部27と、を含む。医用画像処理装置20は、CPUやMPUなどの演算・制御回路と、メモリやハードディスクなど、データを一時的又は固定的に保存する記憶回路及び記憶装置と、撮像部10と医用画像処理装置20との間の画像信号や各種制御信号の送受信を行うためのインターフェースと、を含むハードウェアを用いて構成される。そして、医用画像処理装置20の機能を実現するためのプログラムと、上記ハードウェアとが協働することにより、医用画像処理装置20による処理が実行される。
【0013】
表示部30は、医用画像を表示する画面を含む表示装置であり、例えばCRT、液晶モニタなどにより構成される。
【0014】
入力部40は、医用画像処理装置20に対し、操作者が指示を入力するためのインターフェースとなる操作装置であり、例えば、マウス、トラックボール、タッチパネルなどのポインティングデバイスや、キーボードなどが用いられる。
【0015】
次に、上記「対物キャリブレーション」処理について説明する。X線画像診断装置1で被写体を撮像して医用画像を生成する場合、被写体がX線平面検出器12のX線入射面上にあれば、X線平面検出器のX線入射面の実寸法を用いて、医用画像を構成する1画素あたりの大きさ(以下「ピクセルサイズ」という)を算出することができる。例えば、X線入射面がa×b(a、bはX線入射面の長辺及び短辺の長さ(cm、インチ)を示す)であり、医用画像がPa×Pb(Pa、Pbはピクセル数を示す)とすれば、下式(1)により医用画像1画素(1ピクセル)に対する大きさであるピクセルサイズを決定することができる。
【0016】
ピクセルサイズ=a/Pa
=b/Pb・・・・・(1)
【0017】
しかし、実際のX線撮像では、被写体がX線平面検出器から若干離れた位置にあることが多い。この場合、被写体が、X線平面検出器の入射面から離れるほど、拡大されて医用画像上に撮像される。従って、もし、X線平面検出器の入射面上に被写体が載置された位置関係、いわゆるゼロ距離の位置関係にあれば、医用画像に撮像された被写体の像(以下「被写体像」と略記する)の長さがP
1ピクセルで撮像される場合に、X線平面検出器の入射面と被写体とが離れた位置では、被写体像の長さがP
2ピクセル(P
1<P
2)となる。従って、このP
2ピクセルに、上記式(1)で算出したピクセルサイズを適用して長さを計測すると、実際の長さよりも、被写体像の長さは長くなり、正確な計測が行えない。
【0018】
そこで、実際の検査および読影の際は、X線平面検出器―被写体の距離と同一距離の位置に、正確な寸法(実寸法)が分かる較正体を載置して撮像を行い、較正体の実寸法値を、その較正体が医用画像に撮像された領域(較正体像)の長さ(医用画像上での較正体像の長さに相当する線分上に並んだピクセル数)で除算して、医用画像を構成する1ピクセルあたりの長さ(ピクセルサイズ)を計測する、という処理を行う。このように、実寸法が既知の較正体を撮像して、1ピクセルの大きさを求める処理を「対物キャリブレーション」という。
【0019】
本実施形態は、X線平面検出器―被写体の距離が一定である場合に、初回の医用画像上で対物キャリブレーションを行い、次回以降の医用画像上での物理量の計測処理において、前回の対物キャリブレーションの結果を適用(再利用)することで、再度の対物キャリブレーションを省く実施形態である。下記では、計測する物理量として距離を用いて説明するが、対物キャリブレーションの結果得られるピクセルサイズを用いて、面積や体積を計測することも可能である。
【0020】
<第一実施形態>
第一実施形態は、X線平面検出器―被検体の位置関係が一定という条件下で、複数枚の医用画像を撮像し、何れか一枚の医用画像上で行った対物キャリブレーションの結果を、他の医用画像上で行う距離計測処理に適用する実施形態である。以下、
図2乃至
図4に基づいて、第一実施形態について説明する。
図2は、第一実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。
図3は、キャリブレーションダイアログの画面表示例を示す説明図であって、(a)は実行モードにおける表示例を示し、(b)は結果表示モードにおける表示例を示す。
図4は、適用ダイアログの画面表示例を示す説明図であって、(a)は前回の計測線を表示した例を示し、(b)は画像サイズを表示した例を示す。
【0021】
図2の処理の開始に先立ち、撮像部10により、被写体を撮像して画像信号を生成する。画像生成部21は、その画像信号を基に医用画像を生成し、表示部30の画面上に表示する。
【0022】
(ステップS1)
操作者は、距離計測処理の開始を指示するための操作、例えば、距離計測開始を入力するためのアイコン(図示を省略)のクリックを行なう(S1)。
【0023】
(ステップS2)
キャリブレーションデータ生成部22は、キャリブレーションデータ記憶部23に前回の対物キャリブレーションの結果を示す対物キャリブレーションデータが格納されているか否かを判断する。格納されていなければステップS3へ進み、格納されていればステップS5へ進む(S2)。
【0024】
(ステップS3)
キャリブレーションデータ生成部22は、対物キャリブレーション処理を行うための操作を要求し、操作者は、対物キャリブレーションを実行する(S3)。表示部30の画面上に、実寸法が既知である被写体からなる較正体を撮像した画像(以下「較正画像」という)が撮像されている状態であれば、この較正画像を用いて対物キャリブレーションを実行する。もし、表示中の医用画像に較正体が撮像されていなければ、操作者は、較正画像に表示切替を行い、対物キャリブレーションを実行する。
【0025】
較正画像は、較正体のみを撮像した画像でもよいし、被検体とともに較正体を撮像し、較正画像が被検体画像を兼ねてもよい。例えば、較正体として、被検体内に挿入された径が既知のカテーテルを用いる場合には、較正画像が、被検体を撮像した医用画像である被検体画像を兼ねる。また、較正体として、被検体とは別体の物体、例えば、定規を用いる場合には、定規とX線平面検出器12との距離が、被検体(の中央位置)とX線平面検出器12との距離に一致するように、X線平面検出器12のX線入射面上に、X線入射面上から被検体厚の中央位置までの高さとほぼ同じ高さを有する台(例えばアクリル台)を載置し、その台の上に定規を搭載して撮像する。このとき、被検体の脇に定規を載置して被検体と較正体とを同時に撮像し、較正画像が被検体画像を兼ねてもよい。また、台上に載置した較正体のみを撮像して較正画像を生成してよい。
【0026】
キャリブレーションデータ生成部22は、対物キャリブレーションを実行するための画面を、表示部30に表示する。
図3の(a)を基に、この画面について説明する。
図3の(a)に示す画面50には、較正画像60と、画面に表示中の医用画像の付帯情報を表示する書誌事項表示欄70と、対物キャリブレーション時に較正体の長さを入力するためのキャリブレーションダイアログ80と、が表示される。
【0027】
較正画像60には、被検体の骨が撮像された被検体像61と、較正体として用いられた定規が撮像された定規像62と、が含まれる。また、対物キャリブレーションデータ生成部22は、較正画像60上に、較正体の像の長さを指定するための計測線84を表示する。
【0028】
較正画像60を含むX線画像診断装置1で撮像された医用画像には、較正画像60とともに、画像付帯情報が関連付けられて記憶されている。書誌事項表示欄70には、上記画像付帯情報65に含まれる画像付帯情報が表示される。
図3の(a)では、画像付帯情報として、被検体名66と、医用画像を固有に識別する画像ID67と、被検体が受診した検査種別を示す検査種別情報68と、各検査の中で実施される手技種別情報69と、が表示される。ここでいう検査とは、被検体が受診した手術、処置、撮像など、一連の術式を意味し、手技とは、各検査内で行われる撮影条件が異なる個々の撮像を意味する。例えば、検査種別として「心臓IVR」が行われている場合、「心臓IVR」の術中に行われる血管造影前の「単純撮像」、血管造影を伴う「DSA撮像」のそれぞれが手技に相当する。
【0029】
キャリブレーションダイアログ80には、較正体の実測値の数値を入力する数値欄81と、実測値の単位、例えばmm/cm/Fr(フレンチ)/Inchを選択して入力する単位欄82と、対物キャリブレーションにおける計測開始を指示する「開始」ボタン83と、を含む。
【0030】
操作者は、較正画像60上で、定規像62の長さと計測線84の長さが一致するように、入力部40を操作する。また、操作者は、キャリブレーションダイアログ80の数値欄81及び単位欄82に、較正体の実寸法を入力し、「開始」ボタン83をクリックする。キャリブレーションデータ生成部22は、計測線84上に並んだ画素数(ピクセル数)をカウントする。そして、キャリブレーションダイアログ80で入力された較正体の実寸法を、カウントされたピクセル数で除算し、1ピクセルあたりの大きさ(ピクセルサイズ)を算出する。キャリブレーションデータ生成部22は、キャリブレーションダイアログ80を、ピクセルサイズの算出結果を含む表示モードに変更する。
図3の(b)に示す画面50aは、算出結果を含む表示モードのキャリブレーションダイアログ80aを含む。キャリブレーションダイアログ80aには、算出したピクセルサイズを表示する結果表示欄85と、そのピクセルサイズを算出した日時を示すタイムスタンプ欄86と、対物キャリブレーションデータの結果を保存する「保存」ボタン87と、キャリブレーション処理の結果を破棄する「キャンセル」ボタン87と、を含む。
【0031】
(ステップS4)
操作者が、「保存」ボタン87をクリックすると、キャリブレーションデータ生成部22は、結果表示欄85に表示中のピクセルサイズと、タイムスタンプ欄86に表示中のタイムスタンプとを関連付けて、キャリブレーションデータ記憶部23に記憶し、ステップS7へ進む。「キャンセル」ボタン88を押すと、算出結果を破棄して、ステップS3へ戻り、対物キャリブレーション処理を再実行する(S4)。
【0032】
(ステップS5)
キャリブレーションデータ生成部22は、前回の対物キャリブレーション結果を適用するか否かを確認するダイアログを、表示部30の画面に表示する(S5)。
図4の(a)の画面90は、計測対象の医用画像(以下「計測対象画像」という)100と、前回の対物キャリブレーション結果を適用するかどうかを選択するため操作画面110と、を含む。本実施形態では、上記操作画面として、対物キャリブレーションの適用可否を選択するためのソフトアイコン等の入力要素及び適用の可否を問うテキストデータを含み、画面上の最前面にポップアップ表示される操作画面(以下「適用ダイアログ」という)を用いる。なお、
図4の(a)の計測対象画像100(画像ID002)は、
図3の較正画像60(画像ID001)とは異なる画像である。
【0033】
計測対象画像100には、被検体の骨が撮像された被検体像101が表示される。適用ダイアログ110には、前回の対物キャリブレーション結果を示す結果表示欄111と、そのピクセルサイズを算出した日時を示すタイムスタンプ欄112と、対物キャリブレーションデータの結果を適用することを指示するための「適用」ボタン113と、前回のキャリブレーション処理の再利用をしないことを指示するための「キャンセル」ボタン114と、を含む。
【0034】
適用ダイアログ110の結果表示欄111を視認することで、操作者はピクセルサイズを確認することができるが、その視認性を向上させるために、キャリブレーションデータ生成部22は、前回の対物キャリブレーション時に用いた計測線84と、計測線84の実寸法を示す数値(C
1)89と、を計測対象画像100に重畳表示しても良い。また、
図4の(b)に示す画面90aのように、キャリブレーションデータ生成部22は、前回の対物キャリブレーションの結果を適用したときの画像サイズの実寸法を算出し、計測対象画像100に、画像の幅(横方向サイズ)を示す計測線102及び幅を示す数値(V
1)103と、画像の長さ(縦方向サイズ)を示す計測線104及び長さを示す数値(H
1)105と、を重畳表示しても良い。
【0035】
(ステップS6)
操作者が、前回の対物キャリブレーション結果の適用の可否を判断し、その判断結果を入力する。適用することを意味する「適用」113ボタンを選択・入力操作するとステップS7へ進み、適用しないことを意味する「キャンセル」ボタン114を選択して入力操作するとステップS3へ進む(S6)。このとき、間違った対物キャリブレーションデータを用いて、次の物理量の算出を行なうといった不具合を回避するために、ステップS6からステップS3へ移行した場合には、キャリブレーションデータ記憶部23に記憶された前回の対物キャリブレーションデータを消去してもよい。
【0036】
(ステップS7)
操作者が、表示部30の画面上で、計測対象範囲の指定操作を行う(S7)。本実施形態では、距離計測を行うので、計測対象範囲設定部24は、線状の範囲指定カーソル106を表示する。操作者は、マウスなどの入力部30を用いて、範囲指定カーソル106を、距離計測の対象範囲の一端部から他端部までの長さに一致させる操作を行う。
【0037】
(ステップS8)
物理量計測部25は、範囲指定カーソル106の線状に並んだ医用画像を構成するピクセル数を計算する。そして、そのピクセル数及び前回の対物キャリブレーション結果を用いて、範囲指定カーソル106により指定された範囲の長さを算出する。具体的には、対物キャリブレーションデータは、1ピクセルあたりの大きさ(長さ)が定義されているので、範囲指定カーソル106の線状に沿って並んだピクセル数に、1ピクセルあたりの大きさを乗算することにより、距離計測の対象範囲の長さの実測値が算出できる。結果出力部27は、算出された値(x
1)を、表示部30の画面上の結果表示欄107に表示する(S8)。
【0038】
(ステップS9)
距離計測処理を継続する場合にはステップS10へ進み、継続しない場合には、一連の処理を終了する(S9)。一連の処理を終了した際に、間違った対物キャリブレーションデータを用いて、次の物理量の算出を行なうといった不具合を回避するために、処理が終了したことを示す入力操作が行なわれると、キャリブレーションデータ記憶部23に記憶された対物キャリブレーションデータを消去してもよい。
【0039】
(ステップS10)
操作者は、距離計測を行う医用画像の変更の要否を判断する。変更が必要であれば、新たに表示対象となる医用画像を選択し、表示部30の画面に新たな医用画像を表示する。その後ステップS2へ戻る。変更が不要、すなわち、表示部30上に、同一の医用画像が表示されて続けている場合には、ステップS7へ戻る。物理量計測部25が、前回の対物キャリブレーションの結果を用いて、再度指定された計測対象範囲の物理量を計測する。これにより、同一の医用画像で複数個所の計測を行う場合に、適用ダイアログ110を一度表示するだけで、前回の対物キャリブレーション結果の再利用が可能になる。
【0040】
本実施形態によれば、異なる医用画像で行なった対物キャリブレーションの結果を再利用することができる。その結果、医用画像が変わる度に対物キャリブレーションを行う必要ことによる操作者のわずらわしさを解消することができる。
【0041】
<第二実施形態>
第二実施形態は、前回の対物キャリブレーション結果があり、更に所定の条件を満たす場合にのみ、適用ダイアログを表示する実施形態である。以下、
図5に基づいて、第二実施形態について説明する。
図5は、第二実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。以下、
図5の各ステップ順に沿って説明する。
【0042】
(ステップS20)
ステップS2の終了後、キャリブレーションデータ生成部22は、対物キャリブレーションデータの計測を行った較正画像の画像付帯情報に含まれる検査種別情報と、計測対象画像の検査種別情報と、を比較し、これらが一致するか否かを判断する。一致すれば、ステップS5へ進み、適用ダイアログを表示する。不一致であれば、ステップS3へ進み、対物キャリブレーション操作を要求する(S20)。このとき、間違った対物キャリブレーションデータを用いて、次の物理量の算出を行なうといった不具合を回避するために、ステップS20からステップS3へ移行すると、キャリブレーションデータ記憶部23に記憶された対物キャリブレーションデータを消去してもよい。
【0043】
同一の検査で取得される複数の医用画像には、同一被検体が撮像されている。検査が短ければ、被検体の位置、姿勢が変わらずに複数の医用画像が撮像されることがあり、この場合、被検体とX線平面検出器との間の距離は変わらない蓋然性が高い。一方、検査が異なれば、被検体とX線平面検出器との位置関係が変化する可能性が高い。よって、前回の対物キャリブレーションの結果を再利用できる可能性が高い場合にのみ適用ダイアログを表示して、前回の対物キャリブレーションの結果を再利用することにより、再度の対物キャリブレーションに係る手間を省くことができる。
【0044】
上記では、検査種別情報の一致、不一致に応じて、適用ダイアログを表示したが、検査種別情報に代えて、手技種別情報の一致、不一致に応じて、適用ダイアログの表示、非表示を判断しても良い。これにより、同一検査であっても、検査時間が長く、複数の手技が行なわれる場合には、被検体とX線平面検出器との位置関係が一定に保たれる蓋然性が更に高いと考えら得る手技の同一性を判断指標として、適用ダイアログの表示が行なえる。
【0045】
また、本実施形態の変形例として、X線平面検出器12を基準とする被検体の位置がずれたか否かを基準に、適用ダイアログを表示してもよい。被検体の位置ずれの検出手法は様々な手法がありうるが、例えば、キャリブレーションデータ生成部22が、前回の対物キャリブレーションを行なった較正画像と、計測対象画像と、の差分処理を行い、差分値が予め定められた所定の閾値の範囲(許容範囲)内にあれば、被検体の位置ずれが生じていないと判断する。この場合、前回の対物キャリブレーションデータを再利用できる可能性が高いので、適用ダイアログを表示する。一方、上記差分値が許容範囲外であれば、較正画像と計測対象画像との間で、被検体の位置ずれが生じていると判断し、物理量の計測の正確性を期すために、再度の対物キャリブレーションを要求してもよい。本実施形態によれば、X線平面検出器に対する被検体の位置がずれていない場合に適用ダイアログを表示し、対物キャリブレーションの再実行に係る手間を軽減することができる。
【0046】
<第三実施形態>
第三実施形態は、撮影条件が変化したときに適用ダイアログを表示すると共に、撮影条件の変化量に応じて対物キャリブレーションデータを補正し、補正後の対物キャリブレーションデータを用いて物理量の計測を行う実施形態である。以下、
図6及び
図7に基づいて第三実施形態について説明する。
図6は、第三実施形態に係る処理の流れを示すフローチャートである。
図7は、第三実施形態の処理内容を示す説明図であって、(a)はSIDが変化した状態を示し、(b)はビニング機能の内容を示す。
【0047】
本実施形態では、前述の画像付帯情報は、医用画像撮像時の撮影条件として、X線平面検出器12とX線源11との間の距離であるSIDが保存されていることを前提とする。以下、
図6の各ステップ順に沿って説明する。
【0048】
(ステップS30)
ステップS2終了後、SID計測部13は、計測対象画像の撮影時におけるSIDを計測し、その結果をキャリブレーションデータ生成部22に出力する。キャリブレーションデータ生成部22は、較正画像撮像時のSIDと計測対象画像撮像時のSIDとを比較し、計測対象画像撮像時のSIDが較正画像撮像時のSIDを基準として変化しているか否かを判断する。この判断には、完全一致する場合の他、測定誤差程度の許容範囲を設け、較正画像のSID及び計測対象画像のSIDの比較結果が許容範囲内であれば、一致すると判断しても良い(S30)。変化していればステップS31へ進み、変化していなければステップS5へ進む。
【0049】
(ステップS31)
キャリブレーションデータ生成部22は、SIDの変化量に応じて前回の対物キャリブレーションデータの補正を行う(S31)。
図7の(a)に、較正画像撮像時のSIDと、計測対象画像撮像時のSIDとを示す。
図7の(a)では、較正画像撮像時と計測対象画像撮像時とではSIDは変化しているが、X線平面検出器12に対する被検体2の位置は不変である。よって、SIDの違いによる拡大率の変化は生じているが、X線平面検出器12に対する被検体2の位置の違いによる拡大率の変化は生じていない。従って、SID変化量に応じて較正画像撮像時の拡大率を補正することで、計測対象画像の拡大率が求められる。一方、較正画像のピクセルサイズは、X線平面検出器の検出素子のサイズ(これはX線入射面と同一面にある画像上におけるピクセルサイズに相当する。)と較正画像撮像時の拡大率から求められるので、較正画像撮像時の拡大率を、上記SID変化量に応じて修正した計測対象画像の拡大率に置換すると、計測対象画像のピクセルサイズが求められる。すなわち、較正画像からピクセルサイズP1が得られているとする。この場合、下式(2)により、修正後のピクセルサイズP2を求めることができる。
【0051】
本ステップにおいて、ピクセルサイズを補正した場合には、キャリブレーションデータ記憶部23に記憶されている、補正前の対物キャリブレーションデータを上書きする。
【0052】
(ステップS5、S6)
キャリブレーションデータ生成部22は、適用ダイアログを表示し(S5)、操作者が再利用の可否を選択する(S6)。ステップS31からステップS5へ遷移した場合、適用ダイアログには、ステップS31でSID変化量に応じて補正されたピクセルサイズが表示され、キャリブレーションデータ記憶部23には補正後の対物キャリブレーションデータが記憶されている。一方、ステップS30からステップS5へ遷移した場合、適用ダイアログには、前回の対物キャリブレーションデータ、すなわち、ステップS2においてキャリブレーションデータ記憶部23に記憶されていた対物キャリブレーションデータが示すピクセルサイズが表示される。再利用しない場合には、ステップS3へ進み、再度対物キャリブレーション処理を要求する。このとき、間違った対物キャリブレーションデータを用いて、次の物理量の算出を行なうといった不具合を回避するために、ステップS6からステップS3へ移行すると、キャリブレーションデータ記憶部23に記憶された対物キャリブレーションデータを消去してもよい。再利用する場合には、ステップS7へ進む。
【0053】
(ステップS7)
操作者は、計測対象画像上で、計測対象範囲の指定操作を行なう(S7)。
【0054】
(ステップS32)
物理量計測部25は、キャリブレーションデータ記憶部23に記憶された対物キャリブレーションデータを用いて距離計測処理を実行する(S32)。よって、ステップS31を経て本ステップに遷移した場合には、補正後の対物キャリブレーションデータを用いて距離計測処理を実行することとなる。また、ステップS30からステップS5へ遷移した場合には、前回の対物キャリブレーションデータを用いて距離計測処理が実行される。
【0055】
本実施形態によれば、SIDが変化した場合にも、X線平面検出器12に対する被検体の位置が変化していない場合には、SIDの変化量を用いて前回の対物キャリブレーションデータを補正して物理量の測定ができるので、対物キャリブレーションのやり直しが不要となり、検査のスループットを向上させることが期待できる。
【0056】
本実施形態の別態様として、適用ダイアログの表示・非表示の判断指標として、SIDに代えてビニング機能の適用の可否を用いてもよい。ここでいう「ビニング」とは、X線検出素子が2次元アレイ状に配置されたX線平面検出器12において、隣合う複数のX線検出素子のひとまとめに扱うことにより、画像1ピクセルあたりの受光面積を仮想的に大きくして、検出感度を高める機能を意味する。例えば、
図7の(b)に示すように、X線平面検出器12には、X線検出素子121、122、123、124、125、126、127、128が2次元アレイ状に配列されているとする。ビニング機能がOFFの場合、1画素の画素値は、1つのX線検出素子の出力信号を基に求められる。例えば、医用画像160の画素161、162に対し、X線検出素子121、122のそれぞれが対応しているとする。一方、ビニング機能がONの場合、医用画像160の画素161の画素値は、m×m(例えば2×2)のX線検出素子121、122、123、124を仮想的に結合し、これら4つのX線検出素子の出力信号を基に求められる。同様に、医用画像160の画素162の画素値は、X線検出素子125、126、127、128を仮想的に結合し、これら4つのX線検出素子の出力信号を基に求められる。
【0057】
ビニング機能のON/OFFを判断指標とする場合、医用画像の画像付帯情報に、ビニング機能部のON/OFF情報を格納しておく。そして、
図6のステップS30において、較正画像の撮像時におけるビニング機能のON/OFFと、計測対象画像の撮像時におけるビニング機能のON/OFFが一致しているか否かを判断し、これが一致の場合はステップS7へ進み、不一致の場合には、ステップS5へ進み、適用ダイアログを表示する。
【0058】
操作者が、ステップS6において、再利用しないことを選択すると、対物キャリブレーション処理を要求し、実行する。このとき、間違った対物キャリブレーションデータを用いて、次の物理量の算出を行なうといった不具合を回避するために、ステップS6からステップS3へ移行すると、キャリブレーションデータ記憶部23に記憶された対物キャリブレーションデータを消去してもよい。
【0059】
再利用することを選択すると、キャリブレーションデータ生成部22は、前回の対物キャリブレーションデータの補正を行う。対物キャリブレーションデータの補正について説明する。例えば、ビニング機能がOFFの場合に、画像1ピクセルが、X線検出素子の1素子と対応し、ビニング機能がONの場合に、画像1ピクセルが、X線検出素子のn×n素子の出力信号をひとまとめとして画像1ピクセルのデータとして用いるとする。
【0060】
この場合、下式(3)により、ビニング機能がOFFのときの1ピクセルの大きさを、ビニング機能がONのときの1ピクセルの大きさに変換することができる。
【0061】
C2=C1×n・・・(3)
但し、C1:ビニングなし時の1画素の大きさ
C2:ビニングあり時の1画素の大きさ
【0062】
次いで、操作者が計測対象範囲の指定操作を行ない(S7)、物理量計測部25は、補正後の対物キャリブレーションデータを用いて距離計測処理を実行する。
【0063】
本実施形態によれば、ビニング機能のON/OFFが変化した場合にも、X線平面検出器に対する被検体の位置が変化していない場合には、ビニング機能のON/OFFに応じて、前回の対物キャリブレーションデータを補正して物理量の測定ができるので、対物キャリブレーションのやり直しが不要となり、検査のスループットを向上させることが期待できる。