(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年の遺伝子工学の発展に伴い、医療分野では、遺伝子による病気の診断或いは予防が可能となりつつある。これは遺伝子診断と呼ばれ、病気の原因となるヒトの遺伝子欠陥、変化を検出することで病気の発症前もしくは極めて初期段階での病気の診断や予測をすることが出来る。また、ヒトゲノムの解読とともに、遺伝子型と疫病との関連に関する研究が進み、各個人の遺伝子型に合わせた治療(テーラーメイド医療)も現実化しつつある。従って、遺伝子の検出並びに遺伝子型の決定を簡便に行うことは非常に重要となっている。
【0003】
核酸検出を行うデバイスの1つとして、DNAチップを用いたデバイスが挙げられる。DNAチップとは、基板上に複数の核酸プローブが固定化されているデバイスであり、一度に多数の核酸配列を検出できることを特徴とする。
【0004】
核酸検出法には、放射性同位体を使用するもの、蛍光色素ラベルを使用したものがある。前者は検出を行なう場所が限定され、また操作が煩雑である。後者は蛍光色素検出するための高価な装置が必要である。
【0005】
これらの手法とは別に、電極の表面に固定化された核酸プローブに対して試料核酸をハイブリダイズさせた後、核酸認識体を添加し、電気化学的検出を行なう手法が確立されている。この核酸検出を電気化学的に行なう手法(電流検出方式)は、1枚のDNAチップ上で複数の反応を行なう、「Lab-on-a-chip」に適していることから、様々な開発が進められている。
【0006】
一方、1つのデバイス内において、複数の試薬が関わる複数の反応を順次行うことのできるμ−TASと呼ばれるデバイスが盛んに研究開発されている。これらは、試薬保持領域、核酸の反応領域(増幅領域)、センサ領域などから成り、それらをつなぐ流路を備えることが特徴である。
【0007】
さらに、上記電流検出方式のDNAチップを内蔵した核酸検出用デバイスを用いて核酸を検出するための核酸検出装置も開発されている。このようなデバイス内で核酸検出を行う場合、複数の試薬を使用し、複数の反応を行う必要がある。例えば、核酸抽出反応、核酸精製反応、核酸増幅反応、核酸ハイブリダイゼーション反応などである。
【0008】
これらの反応のうち、核酸増幅反応や核酸ハイブリダイゼーション反応については、反応温度の影響を大きく受けるため、DNAチップ、反応溶液の温度を厳密に制御する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら、種々の実施形態について説明する。なお、実施形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0017】
図1は、実施形態に係る核酸検出用デバイス(核酸検出用カセット)10の一例となる概略構成を示す斜視図である。
図2は、実施形態に係る核酸検出用デバイス10の一例となる上面図である。
図3は、実施形態に係る流路形成部材113が重ねられたDNAチップ14の一例となる上面図である。核酸検出デバイス10は、流路パッキン11、上プレート12、下プレート13,DNAチップ14の要素を備える。核酸検出用デバイス10は、流路パッキン11及びDNAチップ14を上プレート12と下プレート13で挟み込んで構成されている略矩形状である。なお、核酸検出デバイス10の長辺がX軸に対応し、長辺と直交する短辺がY軸に対応するものとする。DNAチップ14は、流路パッキン11と下プレート13で挟まれている。なお、下プレート13、DNAチップ14、流路パッキン11、上プレート12の順で重なり合って積層される方向を核酸検出用デバイス10の積層方向というものとする。長辺及び短辺と直交する積層方向は、Z軸に対応するものとする。さらに、核酸検出用デバイス10の積層方向における上プレート12の外面を核酸検出用デバイス10の表面というものとする。同様に、核酸検出用デバイス10の積層方向における下プレート13の外面を核酸検出用デバイス10の裏面というものとする。
【0018】
流路パッキン11は、薄型の部材で構成されている。流路パッキン11は、例えば、シリコーン、エラストマーなどの軟質材料(弾性材料)で構成されている。流路パッキン11は、流路パッキン11に含まれる要素が一体構成されている。流路パッキン11における上プレート12と相対する(対向する)面を流路パッキン11の表面というものとする。同様に、流路パッキン11における下プレート13またはDNAチップ14と相対する面を流路パッキン11の裏面というものとする。流路パッキン11は、注入口部材111a、注入口部材111b、注入口部材111c.検体シリンジ112a、洗浄シリンジ112b、挿入剤シリンジ112c、流路形成部材113、廃液シリンジ114、逆止弁部材115a、逆止弁部材115b、逆止弁部材115cを備える。
【0019】
注入口部材111aは、核酸検出用デバイス10内に液体の検体(核酸サンプルともいう)を充填するために、検体を注入するための開口を備える。注入口部材111aの開口は、核酸検出用デバイス10の表面において、上プレート12によって覆わることなく剥き出しになっている。注入口部材111bは、核酸検出用デバイス10内に洗浄液(洗浄試薬ともいう)を充填するために、洗浄液を注入するための開口を備える。注入口部材111bの開口は、核酸検出用デバイス10の表面において、上プレート12によって覆わることなく剥き出しになっている。注入口部材111cは.核酸検出用デバイス10内に酸化還元反応用の挿入剤を充填するために、挿入剤(検出試薬ともいう)を注入するための開口を備える。注入口部材111cの開口は、核酸検出用デバイス10の表面において、上プレート12によって覆わることなく剥き出しになっている。
【0020】
検体シリンジ112aは、容器形状で構成されている。検体シリンジ112aは、注入口部材111aを介して注入される検体を貯める。洗浄シリンジ112bは、容器形状で構成されている。洗浄シリンジ112bは、注入口部材111bを介して注入される洗浄液を貯める。挿入剤シリンジ112cは、容器形状で構成されている。挿入剤シリンジ112cは、注入口部材111cを介して注入される挿入剤を貯める。
【0021】
流路形成部材113は、後述するDNAチップ14と相対する部材である。流路形成部材113は、裏面に溝部113aを備える。溝部113aは、注入口113bから排出口113cにかけて設けられている。溝部113aは、後述するDNAチップ14と相対する流路形成部材113の裏面に形成されている。溝部113aは、後述するDNAチップ14に設けられた各センサ部142と相対する。つまり、溝部113aは、各センサ部142の並びに沿った形状である。溝部113aは、各センサ部142上に試薬を送液するための流路として機能する。つまり、溝部113aは、核酸抽出反応、核酸精製反応、核酸増幅反応、核酸ハイブリダイゼーション反応、核酸検出などを処理するため領域を規定する。なお、溝部113aは、一方向(例えばX軸)に沿った略直線部分を4列並列で備え、さらにこれらを繋ぐ3つの折返し部分を備えるように流路形成部材113に形成されている。ここでは、溝部113aは、X軸に沿った略直線部分を4列並列で備えているものとして説明する。注入口113bは、検体シリンジ112aから検体が、洗浄シリンジ112bから洗浄液が、挿入剤シリンジ112cから挿入剤が流入する。
廃液シリンジ108は、容器形状で構成されている。廃液シリンジ108は、流路形成部材113の排出口113cから流出する液体を貯める。
逆止弁部材115aは、検体シリンジ112aと溝部113aとを繋ぐ流路の所定位置に設けられている。弁部材115aは、検体が検体シリンジ112aに逆流することを防止する。逆止弁部材115bは、洗浄シリンジ112bと溝部113aとを繋ぐ流路の所定位置に設けられている。逆止弁部材115bは、洗浄液が洗浄シリンジ112bに逆流することを防止する。逆止弁部材115cは、挿入剤シリンジ112cと溝部113aとを繋ぐ流路の所定位置に設けられている。逆止弁部材115cは、挿入剤が挿入剤シリンジ112cに逆流することを防止する。
【0022】
上プレート12は、薄型の部材で構成されている。上プレート12は、流路パッキン11よりも硬い材料で構成されている。上プレート12は、例えば、プラスチック、ガラス、金属等の硬質材料で構成されている。上プレート12は、上プレート12は、流路パッキン11またはDNAチップ14と密着して接する。つまり、上プレート12は、流路パッキン11及びDNAチップ14を密封するために用いられる。上プレート12は、開口部121a、開口部121b、開口部121c、開口部122、開口部123を備える。開口部121a、開口部121b、開口部121cは、注入口部材111a、注入口部材111b、注入口部材111cとそれぞれ相対する位置に設けられている。開口部121a、開口部121b、開口部121cは、注入口部材111a、注入口部材111b、注入口部材111cそれぞれが貫通可能な形状で構成されている。
【0023】
開口部122は、後述するDNAチップ14に設けられた(配置された)複数の電極パッド143で構成される電極パッド領域1431と相対する位置に設けられている。開口部122は、電極パッド領域1431と略同じ形状で設けられている。同様に、開口部123は、後述するDNAチップ14に設けられた(配置された)複数の電極パッド144で構成される電極パッド領域1441と相対する位置に設けられている。開口部122は、電極パッド領域1441と略同じ形状で設けられている。
【0024】
下プレート13は、薄型の部材で構成されている。下プレート13は、流路パッキン11よりも硬い材料で構成されている。下プレート13は、例えば、プラスチック、ガラス、金属等の硬質材料で構成されている。下プレート13は、流路パッキン11またはDNAチップ14と密着して接する。つまり、下プレート13は、流路パッキン11及びDNAチップ14を密封するために用いられる。下プレート13は、後述するDNAチップ14に設けられた(配置された)各センサ部142近傍の領域、つまり、溝部113aにより流路として規定されるDNAチップ14の領域と相対する位置に開口部131(
図5参照)を備える。
【0025】
DNAチップ14は、基板141、複数のセンサ部142、複数の電極パッド143、複数の電極パッド144を備える。DNAチップ14(基板141)における上プレート12と相対する面をDNAチップ14の表面というものとする。同様に、DNAチップ14(基板141)における下プレート13と相対する面をDNAチップ14の裏面というものとする。
基板141は、X軸に沿う2辺とY軸に沿う2辺を備える略矩形状で構成され、センサ部142、電極パッド143、電極パッド144が表面上に設けられる。
センサ部142は、DNAチップ14の表面におけるY軸の略中央部分に設けられている。センサ部142は、導電性部材で構成されたセンサ(電極)である。センサ部142は、標的となる核酸を検出するための各種核酸プローブがそれぞれ固定化され、標的となる核酸を検出する。なお、1つのセンサ部142は、
図3では3つのセンサで構成されているが、1以上のセンサで構成されていればよい。各センサ部142を構成するセンサは、略同じ大きさである。センサ部142は、溝部113aと相対するように、一方向(例えばX軸)に沿った4列の略直線状に配置され、一列当たり複数並べられている。ここでは、各センサ部142は、X軸に沿って配置されているものとして説明する。なお、基板141の表面における各センサ部142近傍の領域、つまり、基板141の表面上において、流路形成部材113の溝部113aにより流路として規定される基板141の領域をセンサ領域1421というものとする。なお、センサ領域1421は、溝部113aにより流路として規定される領域にも対応するため、流路領域ともいうものとする。なお、センサ部142は、X軸に沿った4列以外の偶数列で略直線状に配置され、一列当たり複数並べられていてもよい。この場合、溝部113aの略直線部分は、センサ部142の列数に対応する数の偶数列でX軸に沿って流路形成部材113に形成されている。なお、溝部113aの折返し部分の数が多くなることは、不要な試薬量が多くなる。そのため、流路形成部材113は、折返し部分は3ヶ所以下、つまり、X軸に沿った略直線部分が4列以下の溝部113aが形成されていることが好ましい。
【0026】
電極パッド143は、上プレート12の開口部122と相対するように基板141の表面上に設けられている。電極パッド143は、基板141のX軸に沿った第1辺に沿って複数設けられている。電極パッド143は、第1辺の略全体または一部にわたって第1辺に沿った複数列の略直線状に配置され、一列当たり複数並べられている。電極パッド143は、導電性部材で構成されている。電極パッド143は、センサ部142の検出信号を取り出し、後述の核酸検出装置20に伝達するためのものである。なお、1つの電極パッド143は、1つのセンサ部142と基板141上に設けられた配線(図示せす)で接続されている。なお、基板141の表面において電極パッド143が設けられている領域を第1のパッド領域1431というものとする。つまり、第1のパッド領域1431は、配列された複数の電極パッド143全てを包含し、配列された複数の電極パッド143全てのうちで外側に配置されている電極パッド143の外縁を結んで規定される領域である。なお、電極パッド143は、第1のパッド領域1431が略矩形状となるように設けられているが、これに限定されない。同様に、電極パッド144は、上プレート12の開口部123と相対するように基板141の表面上に電極パッド143と異なる位置に設けられている。電極パッド144は、基板141のX軸に沿った第1辺と逆側の略平行な第2辺に沿って複数設けられている。電極パッド144は、第2辺の略全体または一部にわたって第2辺に沿った複数列の略直線状に配置され、一列当たり複数並べられている。電極パッド144は、導電性部材で構成されている。電極パッド144は、センサ部142の検出信号を取り出し、後述の核酸検出装置20に伝達するためのものである。なお、1つの電極パッド144は、1つのセンサ部142と基板141上に設けられた配線(図示せす)で接続されている。なお、基板141の表面において電極パッド144が設けられている領域を第2のパッド領域1441というものとする。つまり、第2のパッド領域1441は、配列された複数の電極パッド144全てを包含し、配列された複数の電極パッド144全てのうちで外側に配置されている電極パッド144の外縁を結んで規定される領域である。なお、電極パッド144は、第2のパッド領域1441が略矩形状となるように設けられているが、これに限定されない。つまり、第1のパッド領域1431(電極パッド143)と第2のパッド領域1441(電極パッド144)は、基板141のY軸おいて相対する2辺に沿って並行に設けられている。さらに、第1のパッド領域1431(電極パッド143)と第2のパッド領域1441(電極パッド144)は、Y軸においてセンサ領域1421を挟むように異なる2箇所に設けられている。
【0027】
なお、注入口部材111aと検体シリンジ112aとを繋ぐ流路、注入口部材111bと洗浄シリンジ112bとを繋ぐ流路、注入口部材111cと挿入剤シリンジ112cとを繋ぐ流路、検体シリンジ112a、洗浄シリンジ112b及び挿入剤シリンジ112c並びに溝部113aを繋ぐ流路、溝部113aと廃液シリンジ114とを繋ぐ流路は、流路パッキン11、上プレート12、下プレート13のいずれか1つで形成されていてもよく、流路パッキン11、上プレート12、下プレート13の少なくとも2つの組み合わせによって形成されていてもよい。
核酸検出用デバイス10は、上述のような構成により、溝部113aと基板141で構成される流路(センサ領域1421)内において、核酸増幅反応から核酸検出までを行うことができる。
【0028】
次に、核酸検出用デバイス10を用いて核酸を検出するための核酸検出装置20の構成について説明する。
図4は、実施形態に係る核酸検出装置20の概略構成を示す図である。
図5は、核酸検出用デバイス10の
図1におけるA−A断面図である。なお、
図5は、核酸検出装置20に挿入された核酸検出用デバイス10と接触する核酸検出装置20を構成する要素も示す。核酸検出装置20は、核酸検出用デバイス10をX軸に沿って挿入される。つまり、溝部113a(センサ部142、センサ領域1421も同様)は、核酸検出用デバイス10の核酸検出装置20への挿入方向に沿った複数列で設けられている。核酸検出装置20は、コネクタ201、コネクタ202、温度制御部203を備える。
【0029】
コネクタ201は、核酸検出用カセット10が核酸検出装置20に挿入された際に、開口部122と相対する位置に設けられている。コネクタ201は、開口部122に対して挿抜可能な大きさである。コネクタ201は、電流測定用のコネクタピン2011を介して、電極パッド領域1431の各電極パッド143に押し当てるように接触する。同様に、コネクタ202は、核酸検出用カセット10が核酸検出装置20に挿入された際に、開口部123と相対する位置に設けられている。コネクタ202は、開口部123に対して挿抜可能な大きさである。コネクタ202は、電流測定用のコネクタピン2021を介して、電極パッド領域1441の各電極パッド144に押し当てるように接触する。コネクタ201及びコネクタ202は、電極パッド143、電極パッド144それぞれから検出信号を取り出す。核酸検出装置20は、コネクタ201、コネクタ202にそれぞれ接続されている配線2012、2022を介して取り出した検出信号に基づいて核酸検出を行い、標的とする核酸の有無を判定する。
【0030】
温度制御部
203は、核酸検出用カセット10が核酸検出装置20に挿入された際に、下プレート13に設けられた開口部131と相対する位置に設けられている。
【0031】
温度制御部
203は、開口部131に対して挿抜可能な大きさである。温度制御部202は、センサ領域1421と相対する基板141の裏面に押し当てるように接触する。温度制御部202は、基板141の裏面側から、溝部113a内の流路、つまりセンサ領域1421の温度(液温)を最適に制御する。
【0032】
上述のように構成されたDNAチップ14は、以下のような特徴を有する。(1)パッド領域1431(電極パッド143)、パッド領域1441(電極パッド144)が2箇所に分かれている。(2)センサ領域1421は、X軸に比較的細長く設けられている。
(3)溝部113aはDNAチップ14のY軸の略中央部分に設けられ、DNAチップ14のX軸に沿った2辺(外縁)にほとんど近接していない。(4)溝部113aは3回のみ折り返されている。(5)液体取扱い部である溝部113aと電気取扱い部であるパッド領域1431、パッド領域1441の境界部分が多い。
上述の(1)の特徴については、DNAチップ14は、表面のY側の端部(Y軸において相対する2辺両側近傍)においてコネクタ201、202が押し当てられ、裏面のY軸の略中央部分において温度制御部203が押し当てられるように構成されているため、コネクタ201、202と温度制御部203とのDNAチップ14にかける力のバランスは取れている。そのため、DNAチップ14と温度制御部
203との密着性は良くなる。その結果、DNAチップ14(より具体的にはセンサ領域1421)の熱容量を均一にすることができるため、面内温度分布は小さくなる。上述の(2)、(3)の特徴については、溝部113a(センサ領域1421)内の熱が逃げにくいため、DNAチップ14(より具体的にはセンサ領域1421)の面内温度分布は小さくなる。上述の(4)の特徴については、溝部113aの折り返しが少ないため、不要な試薬量を低減できる。さらに、溝部113aは、X軸に沿った略直線部分を偶数列の並列で形成されているため、注入口113b及び排出口113cは、X軸の略同位置、つまり相対する基板141の同一辺側に近接して流路形成部材113に形成されている。これにより、流路形成部材113は、注入口113b及び排出口113cのインターフェースを一体化して構成することができるので、核酸検出用デバイス10の構成が容易になる。上述の(5)の特徴については、流路形成部材113とDNAチップ14の密着性が向上するため、液体のリークによる故障リスクは低い。
【0033】
次に、実施形態の変形例について説明する。
図6は、実施形態に係る流路形成部材113が重ねられたDNAチップ14の変形例となる上面図である。
図6に示すDNAチップ14は、Y軸においてセンサ領域1421を挟むように、基板141のY軸において相対する2辺に沿った2箇所に並行に設けられた第1のパッド領域1431と第2のパッド領域1441を備える。さらに、DNAチップ14は、注入口113b及び排出口113cと相対する基板141辺と逆側の辺近傍において、Y軸に沿った複数列の略直線状に配置され、一列当たり複数並べられた電極パッド145を備える。なお、基板141の表面において電極パッド145が設けられている領域を第3のパッド領域1451というものとする。つまり、第3のパッド領域1451は、配列された複数の電極パッド145全てを包含し、配列された複数の電極パッド145全てのうちで外側に配置されている電極パッド145の外縁を結んで規定される領域である。つまり、基板141の表面において、センサ領域1421は、注入口113b及び排出口113cと相対する基板141の辺以外の3辺近傍が複数のパッド領域で略コ字型となるように囲まれている。なお、DNAチップ14は、注入口113b及び排出口113cと相対する基板141辺近傍においても電極パッド145が設けられていてもよい。
【0034】
なお、1以上の電極パッドで構成されているパッド領域は、基板141のX軸またはY軸の辺に沿って設けられている例について説明したが、パッド領域の配置は、これに限定されない。例えば、1以上の電極パッドで構成されているパッド領域は、基板141の4つの隅近傍に設けられていてもよい。また、1以上の電極パッドで構成されているパッド領域は、基板141の4つの隅のうち少なくとも隣り合わない2つの隅近傍に設けられていてもよい。つまり、DNAチップ14は、1以上の電極パッドで構成されている少なくとも2つのパッド領域を異なる位置に基板141上に備える。さらに、あるパッド領域に含まれる電極パッド及び他のパッド領域に含まれる電極パッドは、基板141の表面において、センサ領域1421の少なくとも一部を挟むように設けられている。つまり、センサ領域1421の少なくとも一部は、あるパッド領域に含まれる電極パッドと他のパッド領域に含まれる電極パッドとを結ぶ線上に位置するように、基板141上に設けられている。
【0035】
図7は、実施形態に係る流路形成部材113が重ねられたDNAチップ14の変形例となる上面図である。
図8は、実施形態に係る流路形成部材113が重ねられたDNAチップ14の変形例となる上面図である。
図7に示すDNAチップ14を用いた核酸検出用デバイス10の上面図である。
【0036】
センサ部142は、溝部113aと相対するように、X軸に沿った3列の略直線状に配置され、一列当たり複数並べられている。溝部113aは、X軸に沿った略直線部分を3列並列で備え、さらにこれらを繋ぐ2つの折返し部分を備えるように流路形成部材113に形成されている。なお、センサ部142は、X軸に沿った3列以外の奇数列で略直線状に配置され、一列当たり複数並べられていてもよい。この場合、溝部113aの略直線部分は、センサ部142の列数に対応する数の奇数列でX軸に沿って流路形成部材113に形成されている。溝部113aは、X軸に沿った略直線部分を奇数列の並列で形成されているため、注入口113b及び排出口113cは、X軸の異なる位置、つまり基板141の2辺それぞれの近傍と相対するように流路形成部材113に形成されている。そのため、廃液シリンジ114は、X軸において、DNAチップ14(またはこれと相対する流路形成部材113)を挟んで検体シリンジ112a等とは逆側に設けられている。
図7及び
図8に示す核酸検出用デバイス10によれば、検体シリンジ112a等から流路形成部材113までの流路長、及び流路形成部材113から廃液シリンジ114までの流路長を短くできる。そのため、核酸検出用デバイス10における余計な流路を減らすことができる。
【0037】
図9は、実施形態に係る流路形成部材113が重ねられたDNAチップ14の変形例となる上面図である。センサ部142は、
図3に示す例と異なりX軸ではなくY軸に沿った複数列(偶数列、奇数列を問わない)で略直線状に配置され、一列当たり複数並べられている。この場合、流路形成部材113は、センサ部142の列数に対応する列数のY軸に沿った略直線部分を備える溝部113aが形成される。注入口113b及び排出口113cは、X軸の異なる位置、つまり基板141の2辺それぞれの近傍と相対するように流路形成部材113に形成されている。そのため、廃液シリンジ114は、X軸において、DNAチップ14(またはこれと相対する流路形成部材113)を挟んで検体シリンジ112a等とは逆側に設けられている。なお、注入口113b及び排出口113cは、X軸の略同位置、つまり流路形成部材113と相対する基板141の同一辺側に近接するように、流路形成部材113に形成されていてもよい。この場合、
図2に示す例と同様に、廃液シリンジ114は、X軸において、DNAチップ14(またはこれと相対する流路形成部材113)よりも検体シリンジ112a側に形成されている。
【0038】
次に、実施形態に適用される流路形成部材113の溝部113aの形状について説明する。
図10は、実施形態に係る流路形成部材113の一例となる上面図である。溝部113aは、一方向に沿って略直線状に配置された複数のセンサ部142と相対する部分が直線形状で流路形成部材113に形成されている。溝部113aは、Z軸の断面積が同じである。
図11は、実施形態に係る流路形成部材113の変形例となる上面図である。溝部113aは、X軸(またはY軸)に沿って略直線状に配置された複数のセンサ部142と相対する部分がX軸(またはY軸)に沿って僅かに蛇行して形成されている。溝部113aは、Z軸の断面積が同じである。
図12は、実施形態に係る流路形成部材113の変形例となる上面図である。溝部113aは、X軸(またはY軸)に沿って略直線状に配置された複数のセンサ部142と相対する部分がX軸(またはY軸)に沿ってくびれ形状で形成されている。センサ部142近傍の溝部113aの幅(溝部113aが形成される方向と直交する方向における幅)は、隣接するセンサ部142を繋ぐ溝部113aの幅よりも大きい。つまり、溝部113aは、流路形成部材113に形成されるZ軸の高さは同じであるが、Z軸の断面積は異なる。なお、溝部113aは、
図10〜12に示されるような形状に限定されるものではなく、他の形状で流路形成部材に113に形成されていてもよい。
【0039】
実施形態によれば、DNAチップ14のペルチェに対する押し当てが均一となり、DNAチップ14の面内温度分布が改善し、センサ領域1421における温度分布を低減することができる。センサ部142に固定された核酸プローブと核酸サンプルとのハイブリダイゼーション反応時のセンサ領域1421の温度分布は、0.3℃以上、1℃以内にまで低減でききる。また、核酸検出用デバイス10で必要な試薬量を低減することができる。
【0040】
(実施例1)
以下に、上述の実施形態に係る核酸検出用デバイス10及び核酸検出装置20を用いた核酸検出の具体的例を説明する。
【0041】
1.核酸検出用デバイス内蔵カセットの準備
1−1.核酸検出用デバイスの準備
核酸検出用デバイス10上の各電極(以下、各センサ部142を構成するセンサに対応するものとする)に、以下の表1に示す5種類の核酸プローブ(配列A〜E)を固定化した。各核酸プローブを含む溶液を各電極組に滴下し、その後余分な核酸プローブを洗浄除去することによって固定化を行った。なお、下記1、2番電極組、3、4番電極組、5、6番電極組、7、8番電極組、9、20番電極組は、それぞれ別のセンサ部142を構成している。
【0042】
1)ネガティブコントロール用…1、2番電極
2)HPV−A検出用…3、4番電極
3)HPV−B検出用…5、6番電極
4)HPV−C検出用…7,8番電極
5)HPV−D検出用…9,10番電極
【表1】
【0043】
1−2.核酸検出用デバイスの組立て
DNAチップ14上に反応領域を形成できる流路形成部材113を備える流路パッキン11を取り付けて核酸検出用デバイス10を構成した。流路形成部材113には注入口113bが形成されており、流路形成部材113は、液体が漏れ出さないようDNAチップ14に固定されている。
なお、洗浄試薬は、SSC、検出試薬は、ヘキスト33258である。
【0044】
2.核酸検出用デバイス10を用いた核酸検出
まず、増幅済みのHPV−B配列を持つ核酸サンプルを溝部113aへ送液し、45℃で10分保持することでDNAチップ14上の核酸検出用プローブとハイブリダイゼーション反応を行った。洗浄試薬を溝部113aへ送液し、30℃で5分保持することで、非特異的に吸着した核酸を除去した。検出試薬を溝部113aへ送液し、室温で3分保持することで検出試薬を核酸と反応させた。最後にDNAチップ14の各電極から得られる電流値を測定することによって核酸検出を行った。
【0045】
3.結果
HPV−B検出用のプローブが固定化された電極からは、他の電極と比較して有意に大きな電流値が得られていることから、サンプル中のHPV−B配列が正常に検出されたことがわかった。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。